(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6945967
(24)【登録日】2021年9月17日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】投与量調整具、およびそれを備えたシリンジ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20210927BHJP
A61M 5/24 20060101ALI20210927BHJP
【FI】
A61M5/315 502
A61M5/24
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-70851(P2016-70851)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-176617(P2017-176617A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年12月11日
【審判番号】不服2020-10491(P2020-10491/J1)
【審判請求日】2020年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 朋彦
【合議体】
【審判長】
芦原 康裕
【審判官】
佐々木 一浩
【審判官】
井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−517844(JP,A)
【文献】
特表2014−515683(JP,A)
【文献】
実開昭60−175249(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状で外部からガスケットの先端を視認可能なように少なくとも一部分が透明とされた投与量調整具であって、
シリンジのバレルを保持し、
プランジャロッドの鍔と当接して前記プランジャロッドの長手方向の移動を規制することで薬剤の投与量を調整することが可能であり、
前記投与量調整具の内周面は前記シリンジのバレルの外周面に螺合し、
前記投与量調整具の透明とされた部分の表面には目盛りが付されており、前記投与量調整具の長さは前記ガスケットの先端から前記プランジャロッドの鍔までの長さと等しい、投与量調整具。
【請求項2】
前記投与量調整具は、第一部材および第二部材を有し、前記第一部材および前記第二部材によって前記バレルを保持する、請求項1に記載の投与量調整具。
【請求項3】
前記第一部材および前記第二部材は半筒形状である、請求項2に記載の投与量調整具。
【請求項4】
バレル、およびそのバレルに嵌合するプランジャロッドと、
前記バレルを保持する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の投与量調整具とを備えた、シリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は投与量を調整するための投与量調整具、およびそれを備えるシリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、投与量を調整可能なシリンジは、たとえば特開2000−93511号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−93511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のシリンジでは、薬液量調整補助具に目盛りが付与され、補助具が注射器のバレルに着脱自在に保持される構造を有する。このような構成では、補助具が離脱して目盛りが所定の位置よりずれてしまうおそれがあり、正確な投与量の調整が困難であった。
【0005】
そこで、この発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、所定の位置からのずれを防ぎ正確な投与量を調整することができる、投与量調整具およびそれを備えたシリンジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従った投与量調整具は、筒状の投与量調整具であって、シリンジのバレルを保持し、プランジャロッドと当接してプランジャロッドの長手方向の移動を規制することで薬剤の投与量を調整することが可能である。
【0007】
このように構成された投与量調整具では、投与量調整具は筒状であるため、筒状でないものと比較して正確な投与量を規定することができる。
【0008】
好ましくは、投与量調整具はバレルに螺合する。この場合、投与量調整具はバレルに螺合するため、確実にバレルを保持する。また、投与量調整具はバレルに螺合しているため、投与量調整具を回転させることで投与量調整の位置を調整できる。これにより、投与量を変更できる。
【0009】
好ましくは、投与量調整具は、第一部材および第二部材を有する。第一部材および第二部材によってバレルを保持する。この場合、第一部材および第二部材を組み合わせることで投与量調整具を構成することが出来るため、投与量調整具が一体形状である場合と比較して、容易に投与量調整具を構成することが出来る。
【0010】
好ましくは、第一部材および第二部材は半筒形状である。
好ましくは、投与量調整具の表面には目盛りが付されている。この場合、目盛りを基準として投与量を調整することが出来る。
【0011】
この発明に従ったシリンジは、バレル、およびそのバレルに嵌合するプランジャロッドと、バレルを保持する上記の投与量調整具とを備える。
【0012】
このように構成されたシリンジでは、投与量調整具は筒状であるため、筒状でないものと比較して正確な投与量を規定することができる。
【発明の効果】
【0013】
所定の位置からのずれを防ぎ正確な投与量を調整することが出来る投与量調整具およびそれを備えたシリンジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明の実施の形態1に従った投与量調整具を有するシリンジの斜視図である。
【
図3】
図2で投与量調整具の第一部材の斜視図である。
【
図4】
図2で投与量調整具の第二部材の斜視図である。
【
図6】
図2で示すプランジャロッドの斜視図である。
【
図7】この発明の実施の形態1に従った投与量調整具を有するシリンジの平面図である。
【
図8】この発明の実施の形態1に従った投与量調整具を有するシリンジの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
(全体構成の説明)
図1から
図6で示すように、シリンジ1は、先端に設けられたバレル3、バレルの外周面に係合する投与量調整具4、バレル3に挿入されるガスケット400、ガスケット400に嵌合するプランジャロッド60を有する。
【0016】
図1、
図2および
図5で示すように、バレル3の先端には開口する注射針接続部31が形成されている。注射針接続部31の内周面にはネジ溝35が設けられている。バレル3の基端が開口し、基端外壁には螺旋状の突条32が設けられている。突条32には、一定の間隔を隔てて複数の突起33が設けられている。
【0017】
図2および
図6で示すように、プランジャロッド60のボトムロッド本体63の先端にはネジ溝62が設けられ、ネジ溝62にガスケット400が螺合する。ボトムロッド本体63の基端に鍔632が形成されている。ボトムロッド本体63は長手方向に延びる十字形状の突条631を有する。
【0018】
図1から
図4で示すように、投与量調整具4は、第一部材141および第二部材241を有する。第一部材141および第二部材241はともに半円筒形状である。第一部材141に第二部材241に係合することで円筒体41を構成する。投与量調整具4は円筒体41を有する。
【0019】
第一部材141および第二部材241の外周面には、第一部材141および第二部材241の長手方向と直交する方向、すなわち、円筒体41の円周方向に沿って延びる目盛り142,242および「ゼロ」示す目盛り1420,2420が付与されている。なお、この実施の形態では、投与量調整具4は円筒形状を有するが、投与量調整具4は角筒形状、楕円筒形状を有していてもよく、またいずれの形状であっても目盛りを備えている必要はない。
【0020】
第一部材141および第二部材241の外周面には、第一部材141および第二部材241の長手方向と直交する方向に延びるフランジ部144,244が設けられている。フランジ部144,244はともに板状である。フランジ部144,244が互いに係合してフランジ44を構成する。
【0021】
第一部材141および第二部材241の内周面には複数の突起143a,143b,243a,243bが設けられている。複数の突起143a間に溝が形成されている。複数の突起143b間に溝が形成されている。複数の突起243a間に溝が形成されている。複数の突起243b間に溝が形成されている。
【0022】
これらの溝には螺旋状の突条32が螺合する。そのため、投与量調整具4はバレル3に螺合しており、投与量調整具4をバレル3に対して回転させると、投与量調整具4はバレル3に対して先端方向または基端方向に移動する。
【0023】
突条32には、所定の間隔を隔てて複数の突起33が配置されている。突起33が突起143a,143b,243a,243bに当接する位置で投与量調整具4のバレルに対する回転が停止する。そこからさらに投与量調整具4を回転させるためには、投与量調整具4にさらなる回転力を付与する必要がある。回転力が付与されれば、突起33は、突起143a,143b,243a,243bを乗り越えることができる。
【0024】
この実施の形態では、突条32は右ネジ形状である。その結果、投与量調整具4を右方向(
図1中の矢印R1で示す方向)に回転させれば投与量調整具4はシリンジ1先端側へ移動する。
【0025】
これに対して、投与量調整具4を左方向(
図1中の矢印R2で示す方向)に回転させれば投与量調整具4はシリンジ1の基端側へ移動する。なお、突条32は必ずしも右ネジ形状である必要は無く、左ネジ形状であってもよい。
【0026】
投与量調整具4およびバレル3は透明である。そのため、使用者は外部から、バレル3および投与量調整具4内のプランジャロッド60およびガスケット400を視認することができる。この例では、投与量調整具4およびバレル3の全体が透明であるが、投与量調整具4およびバレル3の一部分が透明であってもよい。使用者がガスケット400の先端を視認できればよい。
【0027】
(投与量の調整)
図7で示すように、プランジャロッド60をバレル3側に押し込んで鍔632が投与量調整具4に当接する状態ではガスケット400の先端は、「ゼロ」を示す目盛り1420に位置する。投与量調整具4およびバレル3が透明であるため、使用者はバレル3内のガスケット400位置を視認できる。
【0028】
この状態から投与量調整具4を矢印R1で示す方向に回転させる。すると、
図8で示すように、投与量調整具4は先端方向に移動する。これにともない、ガスケット400は目盛り1420から離れる。
【0029】
投与量調整具4の移動が終了すると、ガスケット400の先端はある目盛りの部分に位置する。その目盛りは、次回、プランジャロッド60をバレル3側に押圧して鍔632が投与量調整具4に当接するまでにシリンジ1から投与される薬剤の量となる。このように、投与量調整具4を回転させることで、シリンジ1からの薬剤の投与量を調整することができる。
【0030】
なお、目盛りが設けられていない場合であっても、投与量調整具4の移動量とバレル3内の薬剤の量とが関連付けられていればよい。さらに、投与量調整具4はバレル3に螺合している必要は無い。投与量調整具4はバレル3の表面に沿って移動できればよい。投与量調整具4をバレル3に沿って案内するためのガイドが設けられていてもよい。
【0031】
(効果)
投与量調整具4は筒状で外部から内部を視認可能である。その表面には目盛り142,242,1420,2420が付与されている。投与量調整具4は、シリンジ1のバレル3に螺合する。
【0032】
このような構成を採用することで、投与量調整具4がバレル3に螺合しているため、投与量調整具4がバレル3から脱落し所定の投与量を調整できなくなることを防止できる。
【0033】
さらに、投与量調整具4はプランジャロッド60の鍔632と当接してプランジャロッド60の長手方向の移動を規制することで薬剤の投与量を確実に調整することができる。
【0034】
投与量調整具4は第一部材141および第二部材241から構成される分割構造である。その結果、第一部材141および第二部材241をバレル3に係合させることにより、簡単にバレル3に投与量調整具4を取り付けることができる。なお、例示している実施例では、投与量調整具4は第一部材141と第二部材241からなる分割構造であるが、投与量調整具4を一体成形品とすることや、第一部材141と第二部材241をヒンジなどを用いてつなぎ合わせる構造も可能である。
【0035】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明は、シリンジ、特に薬液がバレルに封入されるプレフィルドシリンジの分野に適用され得る。
【符号の説明】
【0037】
1 シリンジ、3 バレル、4 投与量調整具、31 注射針接続部、32,631 突条、33,143a,143b,243a,243b 突起、35,62 ネジ溝、41 円筒体、44 フランジ、60 プランジャロッド、63 ボトムロッド本体、141 第一部材、142,242,1420,2420 目盛り、144,244 フランジ部、241 第二部材、400 ガスケット、632 鍔。