(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6945973
(24)【登録日】2021年9月17日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】ピペット針の接触を検出する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20210927BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20210927BHJP
【FI】
G01N35/10 C
G01N35/10 D
G01N1/00 101K
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-131238(P2016-131238)
(22)【出願日】2016年7月1日
(65)【公開番号】特開2017-15706(P2017-15706A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2019年6月10日
(31)【優先権主張番号】15175186.4
(32)【優先日】2015年7月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510259921
【氏名又は名称】シーメンス ヘルスケア ダイアグノスティクス プロダクツ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・ヴィーデキント−クライン
【審査官】
北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−013005(JP,A)
【文献】
特開2011−166240(JP,A)
【文献】
特表2013−516600(JP,A)
【文献】
特開2008−070264(JP,A)
【文献】
特開2000−171470(JP,A)
【文献】
特開平09−133686(JP,A)
【文献】
特開2012−037236(JP,A)
【文献】
特開2000−055713(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0207322(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/10
G01N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビトロ診断システム(1)におけるピペット針の液体面との接触を検出する方法であって、
前記ピペット針(18)は、特定の電圧に達するまで帯電され、特定の電圧に達すると、ゼロ電圧に達するまで再び放電するように、ピペット針(18)と基準電位との間で印加される電圧または電流によって周期的に帯電され、それに続く前記ピペット針(18)と基準電位との間の電気的接続によって再び放電され、
ピペット針(18)と基準電位との間の目下の静電容量の特性変数が、帯電および/または放電の間に検出されるいくつかの測定値から確立され、
変数の時間曲線はいくつかの所定の基準に基づいて継続的に監視され、所定の基準が満たされた場合に接触信号が生成され、そして、所定の期間内における帯電および放電プロセスの数は、ピペット針(18)と基準電位との間の静電容量に対する特性変数として使用される、ここで、所定の基準は、変数が所定の期間内に所定の最小値を越えて変動することによって与えられる、前記方法。
【請求項2】
所定の期間は10ms未満であり、そして、最小値は、変数のノイズの強度に応じて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
固定の最小値が予め定められる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
追加の基準は、前記所定の期間に時間的に続く第2の所定の期間に関して、変数がある範囲内で一定のままであることによって与えられ、第2の所定の期間は10ms超過である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
変数が一定のままである範囲が予め定められる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
変数が一定のままである範囲は、変数のノイズの強度に応じて決定される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
目下の静電容量の時間平均値が目下の静電容量として使用される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
変数の所定の第1の基準値未満であった場合、および/または変数の所定の第2の基準値を超過した場合に、誤差信号が出力される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
帯電は定電流源を用いて実行され、所定の電圧に達すると放電が開始され、ゼロ電圧に達した後に新たな帯電によって新しいサイクルが開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
インビトロ診断システム(1)の接触検出装置であって、定電流源と、ピペット針と、抵抗器と、比較器とを含み、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法を実行するように具体化される、前記接触検出装置。
【請求項11】
請求項10に記載の接触検出装置を含む、インビトロ診断システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インビトロ診断システムにおけるピペット針の接触を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、体液試料または生物試料における生理学的パラメータを決定するためのいくつかの検出および分析方法は、対応するインビトロ診断システム内で自動化して大量に実施されている。この目的のため、試料、試薬、および実際の検出反応に適している、キュベットと呼ばれる容器が利用される。血液試料は、血液試料管内のデバイスに供給される。血液試料管は、通常、透明なプラスチックまたはガラスから製造され、その先端にカニューレ専用のコネクタを備える。
【0003】
現在のインビトロ診断システムは、1つの試料を使用して複数の検出反応および分析を実施することができる。この目的のため、かかるデバイスは、通常、反応器のためのレセプタクル位置と、レセプタクル位置と関連付けられた分析システムとを含む。複数の検査を自動化して実施できるようにするため、自動化されたピペッティングを多数のポイントで用いて、少量の液体を対応するコンテナから取ることが必要である。したがって、例えば、一定分量の血液試料を血液試料管から取らなければならず、または正確に所定分の試薬を試薬コンテナから取り、それぞれの検査に対して提供される反応器内へと移送しなければならない。この目的のため、複数の適切なピペッティングシステムが、使用目的に応じて、システム内に提供される。
【0004】
かかるピペッティングシステムは、通常、例えば輸送アームまたはスイベルアームなどの能動的可動要素にピペット針を有し、ピペット針は、ピペットアーム上の針ホルダに締結される。ピペット針は、制御液の有無にかかわらず、圧力または負圧を用いた動作の下で自動化して、規定量の試料を取り込むことができる、中空針として構成される。ピペット針は、それぞれの容器の中心軸に沿って挿入され、封止された容器の場合は必要であれば弾性封止プラグを貫通し、液体に浸漬される。浸漬、即ち液体面との接触は、適切な接触検出装置を用いて検出され、圧力制御の下で所定の量が吸引される。次に、取り除かれた量が適切な分析に供給される。その後、ピペット針は適切な装置内ですすがれ、次の使用のために利用可能になる。
【0005】
上述のプロセスでは、第一に液体の充填量を判断するために、また第二に空気がピペットで取られていないことを確実にするために、液体の表面との接触を確実に識別することが必須である。この場合に問題となるのは、検出される液体の量が非常に少なく(ひとつには、数μL)、そのため、例えば浮き、誘導率、または伝導率を用いるなど、充填量を測定する知られている技術が、ほとんど使用可能でないことである。
【0006】
したがって、従来、インビトロ診断システムは一般に、演算増幅器に基づいた純粋なアナログ切換え技術として実現された、容量測定を使用してきた。必要な感度は、容量の変化を検出し、それを次に電圧パルスによって制御エレクトロニクスに報告することによってのみ達成することが可能であった。
【0007】
ここでの欠点は、例えば静電気放電および高周波電界などの外乱の発生が、かかる電圧パルスを同様に発生させることがあるという点である。したがって、今日まで、知られているシステムにおける接触信号として、外乱と実際の電圧パルスとを区別することは不可能であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の1つの目的は、ピペット針によるより信頼性の高い接触の判断を可能にし、外乱に対して特に低感度である、最初に記述したタイプの方法を指定することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、この目的は、
ピペット針が、ピペット針と基準電位との間で印加される電圧または電流によって周期的に帯電され、それに続くピペット針と基準電位との間の電気的接続によって再び放電され、
ピペット針と基準電位との間の
目下の静電容量の特性変数が、帯電および/または放電の間に検出されるいくつかの測定変数から確立され、
変数の時間曲線がいくつかの所定の基準に基づいて継続的に監視され、所定の基準が満たされた場合に接触信号が生成されることによって、達成される。
【0010】
ここでは、本発明は、より信頼性の高い接触の検出が、ポイント毎の相対測定のみの代わりに継続的な絶対容量測定が実施されることによって達成できるという概念に由来する。これは、ピペット針と基準電位を構成するピペット針の周囲との間の容量を基準変数として使用することによって、特に単純に実現可能である。ピペット針の周期的な帯電および放電プロセスの間の測定値を考慮することによって、帯電プロセスの間所定の電圧または電流で伝達される電荷が容量に依存するので、ピペット針と基準電位との間の
目下の静電容量に関して特徴的である、適切な変数を確立することが可能である。ピペット針とその周囲との間の容量を表すこの変数は、継続的な監視に対する基底変数として使用することができ、接触の検出に対する適切な基準を予め定めることが可能である。これは、充填レベル検出の分野で適用する場合に、ファラド単位の絶対変数に対する回路の校正が必須ではないためである。
【0011】
しかしながら、例として、容量に対して特徴的な変数は、同様に、例えばSI単位のファラドで指定される、容量自体でもあり得る。
【0012】
ここで、所定の基準の1つは、有利には、変数が所定の期間内に最小値分増加することによって指定される。これは、ピペット針が浸漬されると、測定容量が増加するためである。容量を特徴付ける変数のこの増加は、指定の期間内での増加を予め定めることによって識別することができる。この指定の所定期間は、有利には、10ms未満、特に5ms未満である。これは、容量の変化が液体への浸漬に際してジャンプするようなものであり、それによってこの短い期間内に容量の著しい増加が測定可能なためである。
【0013】
容量のこのジャンプの高さに関して、固定の最小値を、有利には、方法の範囲内で指定することができる。例として、前記最小値を、試験測定に基づいて前もって決定することができる。
【0014】
しかしながら、方法の代替の有利な改善例では、最小値はまた、容量に対して特徴的な変数のノイズの強度に応じて、動的に決定することもできる。例として、変数の基本ノイズの強度または予期される液体量の因子に対応することがあり得る。
【0015】
さらに、液体面との接触の検出に関する追加の基準は、有利には、時間内で所定の期間に続く第2の所定の期間に関して、変数がある範囲内で一定のままであることによって提供される。これは、表面と接触する際のジャンプに加えて、容量曲線がジャンプ後の新しい値のままである値によって特徴付けられるためである。この目的のため、上部および下部偏差を備えた値のウィンドウを予め定めることができ、その値は、指定の期間に対してその範囲内に留まっていなければならない。
【0016】
残りのこの第2の所定期間は、有利には10msよりも長い。この結果として、特に、電磁的外乱信号はより短い期間しか持続しないため、例えばかかる信号によって引き起こされるジャンプに対して、接触の検出が誤って反応するような場合を除外することが可能である。
【0017】
第1の有利な改善例では、ジャンプ高さと同様に、上述の値のウィンドウに対して固定範囲を予め定めることができる。前記範囲は、次いで、試験測定を用いて前もって決定することができる。
【0018】
あるいは、範囲は、有利には、容量に対して特徴的な変数のノイズの強度、または予期される液体の量に応じて、同様に動的に決定することができる。
【0019】
容量に対して特徴的な変数を確立する際のノイズの影響を最小限に抑えるために、前記変数を確立するとき、有利には時間平均値が形成される。この結果、ノイズによって起こる短期のジャンプが均等化される。
【0020】
従来技術と比較した、上述の絶対容量測定のさらなる利点は、表面の検出に直接関係しない、付加的な誤差の検出が可能である点にある。この目的のため、変数の所定の第1の基準値未満であった場合、および/または変数の所定の第2の基準値を超過した場合に、誤差信号が有利には出力される。これは、既知の基準値と比較して容量の残りの値が小さすぎる場合、ピペット針が存在しないか、または適正に接続されていないことによる。既知の基準値と比較して容量の残りの値が大きすぎる場合、ピペット針は欠陥があるかまたは伝導性表面に接触している。
【0021】
帯電および放電の間に伝達される電荷と実質的にリンクした、異なる測定変数を、容量に対して特徴的な変数として使用することができる。しかしながら、特に実現しやすい方法の改善例は、所定の期間内における帯電および放電プロセスの数を変数として使用することによってもたらされる。容量が大きいほど、所定の電圧までにかかる帯電プロセスが長くなる。
【0022】
この変数の確立は、有利には、定電流源を用いて帯電が実施され、所定の電圧に達すると放電が開始され、ゼロ電圧に達した後に新たな帯電によって新しいサイクルが開始されることによって、特に単純に達成される。この目的のため、それに関与する電気回路内に比較器を提供することができる。
【0023】
インビトロ診断システムの接触検出装置は、有利には、記載した方法を実施するように具体化される。
【0024】
インビトロ診断システムは、有利には、かかる接触検出装置を含む。
【0025】
本発明によって得られる利点は、特に、電磁的外乱の結果としての誤差信号が、主に、ピペット針と基準電位との間の絶対容量に基づいた接触の検出によって排除され、その結果、インビトロ診断システムにおいて、より信頼性の高いピペッティングが可能になることからなる。この方策により、さらに、液体輸送に使用されるピペット針を直接使用できるので、専用の測定電極を用いた投薬が可能になる。さらに、分離された針または伝導性表面との接触などのエラー状態を確実に識別することができる。例として、これはまた、可動部品(例えば、輸送アーム)の調節にも使用することができる。
【0026】
本発明の例示的な実施形態について、図面に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】インビトロ診断システムを示す概略図である。
【
図2】インビトロ診断システムの輸送アームに締結されたピペット針を示す概略図である。
【
図3】ピペット針の浸漬および取出しプロセスの間の容量に対して特徴的な変数の曲線を示すグラフである。
【
図5】電磁的外乱信号の場合における容量に対して特徴的な変数の曲線を示すグラフである。
【
図6】例えばゆるい接続によって連続性に外乱がある場合における、容量に対して特徴的な変数の曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
すべての図面において、同じ部分は同じ参照記号を備える。
【0029】
図1は、構成要素の一部が中に収容されているインビトロ診断システム1の概略図を示す。ここでは、各構成要素の個別部品をここで大幅に詳細に示すことなく、インビトロ診断システム1の基本的な機能性を説明するため、最も重要な構成要素のみがはるかに簡略化された形で示されている。
【0030】
インビトロ診断システム1は、ユーザの作業を必要とすることなく、完全に自動で血液または他の体液の大幅に異なるタイプの分析を実施するように具体化される。その代わりに、前記作業は、保守または修理、および例えばキュベットまたは試薬を再充填する必要がある場合の、再充填作業に制限される。
【0031】
インビトロ診断システム1では、試料は、供給レール2のスレッド(本明細書でこれ以上詳細には図示しない)上に供給される。この場合、試料毎に実施される分析に関する情報を、例えば、バーコードを試料容器に適用し、前記バーコードをインビトロ診断システム1で読み出すことによって伝達することができる。
図2でさらに詳細に示されるピペット針を用いて、一定分量がピペッティング装置4内の試料からと取られる。
【0032】
一定分量は、同様に、キュベット(本明細書でこれ以上詳細には図示しない)に供給され、そこで、例えば光度計など、大幅に異なる測定機器6を用いて実際の分析が実施される。キュベットはキュベット収納部(cuvette storage)8から取られる。それに加えて、実施される分析に応じて必要とされるさらなる試薬を、上述したように
図2に示されているさらなるピペット針を用いて、試薬収納部10からそれぞれのキュベットに供給することができる。
【0033】
インビトロ診断システム内で、キュベットは、例えば移送アームなど、大幅に異なる空間方向で可動であって、キュベットを保持する把持装置を有する、輸送装置(本明細書ではこれ以上詳細には図示しない)を用いて輸送される。プロセス全体は、例えば、データ線12によって接続され、インビトロ診断システム1およびその構成要素内の複数のさらなる電子回路(本明細書ではこれ以上詳細には図示しない)およびマイクロプロセッサによって支援される、コンピュータ14などの制御装置を用いて制御される。
【0034】
図2は、インビトロ診断システム1内に存在するピペット針18を備えたピペッティングデバイス16の1つを概略的に示す。ピペット針18は、ホルダ20を用いて移送アーム22に締結され、ピペット針18の軸に沿って、少なくとも移動方向Aで、液体を備えた容器24に挿入できるようにするために、また液体をピペッティングするために、自動化して可動である。
【0035】
ピペッティング中の液体面との接触を検出するために、インビトロ診断システム1は接触検出装置を含み、その装置は、最初に電気回路を備えたプリント回路基板26を有し、その結果、上側のフェムトファラド範囲または下側のピコファラド範囲で絶対容量を測定するのを可能にするものであり、装置については後述する。
【0036】
プリント回路基板26の電気回路は、電気的接続28を用いて、ピペット針18に対して電荷を加えることができる、定電流源を含む。基準電位として使用されるゼロ地点レベルに関して、ピペット針18は、測定される、したがって帯電される容量を形成する。さらに、電気回路は抵抗器を有し、それを用いて容量を再び放電することができ、即ち、電気的接続28によって電荷をピペット針18から再び散逸させることができる。さらに、電気回路は比較器を有し、それが帯電状態を知らせ、したがって特に、ピペット針18とゼロ地点レベルとの間の指定の電圧に達したことを示すことができる。
【0037】
デジタルコントローラがここで、多くの周期的な帯電および放電プロセスを継続して実施するが、各プロセスの持続時間はわずか1〜10μsである。ここで、ピペット針18は、特定の電圧に達するまで帯電され、特定の電圧に達すると、ゼロ電圧に達するまで再び放電される。次に、新しい帯電プロセスが始まる。一実施形態では、プリント回路基板26は、各帯電プロセスに対して、接続30を用いて制御装置32に信号を転送する。しかしながら、より詳細に後述する実施形態では、プリント回路基板26は、集積回路として、全体の容量測定値を計数などとともに評価し、その結果を、即ち容量の大きさを、制御装置32に単に転送する。制御装置32は、
図1によるコンピュータ14であることができ、または、インビトロ診断システム1に統合された集積回路の形態である、制御装置32としての上流側の特定回路であることができる。
【0038】
プリント回路基板26上の回路は、帯電および放電プロセスを制御し評価する。帯電プロセスの長さは、ピペット針18とゼロ地点レベルとの間の容量が増加するのに伴って増加する。したがって、単位時間当たりに行われる帯電および放電プロセスの数は、絶対容量に対して特徴的な変数である。例えばプロセッサ部分で実施される、平均値の形成を用いて、プリント回路基板26上の回路は、容量を表す変数の測定値を決定する。これらの測定値は、測定容量を特性化する無単位の数値である。
図3〜6では、これらの数値がms単位の時間に伴ってプロットされている。液面との接触を検出する分野で適用する場合、回路をファラド単位の絶対値に合わせて校正する必要はない。
【0039】
制御装置32において、接続30によって供給される信号を使用する評価アルゴリズムを用いて、接触が検出される。ここで、評価アルゴリズムは、ピペット針18の容量値に対して特徴的な変数の曲線を分析し、絶対値、変化率、変化の勾配、および変化の連続性など、様々な側面にしたがって後者を分析する。この変数の曲線は、
図3〜6において、時間に伴うグラフとしてプロットされている。
【0040】
このアルゴリズムの基本的原理は、針を浸漬した際、または伝導性表面と接触した際に、測定容量が増加するという事実である。
図3は、試料管に浸漬する際に容量信号がどのように挙動するか(領域34における均一な増加)、およびその後の液体面と接触する際に容量信号がどのように挙動するか(領域36におけるジャンプするような変化)を示す。領域36は、
図4に拡大した形で示されている。重畳された信号ノイズも容易に識別可能であるが、使用される信号の評価可能性を損なうものではない。
【0041】
領域36における接触の瞬間、容量はジャンプするように変化し、その後、新しい値に留まる。当然、このプロセスは、液体が離れるかまたは接触が終わるときの、逆の場合にも当てはまる(
図3の領域38を参照)。この目的のため、アルゴリズムは変数の曲線を評価する。ここでは、不連続性のポイント、即ち、1ms未満の短い期間内に変数が所定の最小値を超えて増加する領域を探し、さらに、新しい信号レベルがそのままであるか否か、またどの程度の時間そのままであるかを監視する。この目的のため、一実施形態では、10msを超える期間の間指定の範囲内に留まらなければならない曲線が提供される。最小値および最小範囲を設定するとき、信号ノイズの強度を動的に含めることができる。あるいは、固定値を予め定めることが可能である。
【0042】
外乱は、アルゴリズムを利用して、液体の表面との適正な接触と区別することができる。
図5および6は、一般的な外乱のシナリオを示す。領域40で、
図5は、電磁的外乱によるノイズの大きさの点状の片勾配を示す。領域42で、
図6は、例えばゆるい接触による、変数の曲線における短い降下を示す。しかしながら、これらの信号は、短い持続時間による接触信号として誤って解釈されない。使用される信号がこの場合も評価可能なままであると識別することは、容易に可能である。両方の場合が、従来技術(単なる容量変化の検出)を使用した誤った測定に結び付くであろう。
【0043】
アルゴリズムのさらなる機能はこれ以上詳細には図示されず、基準値は予め定められ、いずれの場合も前記基準値を超過するか前記基準値未満であった場合に誤差信号が出力されるが、これは、既知の基準値と比較して容量の残りの値が小さすぎる場合、ピペット針18が存在しないか、または不適当に接続されているためである。既知の基準値と比較して容量の残りの値が大きすぎる場合、ピペット針18は欠陥があるかまたは伝導性表面と接触している。後者の信号は、ピペット針18の調節にも使用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 インビトロ診断システム
2 供給レール
4 ピペッティング装置
6 測定機器
8 キュベット収納部
10 試薬収納部
12 データ線
14 コンピュータ
16 ピペッティングデバイス
18 ピペット針
20 ホルダ
22 移送アーム
24 容器
26 プリント回路基板
28 電気的接続
30 接続
32 制御装置
34、36、38、40、42 容量信号曲線の領域
A 移動方向