(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の二酸化炭素捕捉剤は、表面に炭酸カルシウム層が形成された水酸化カルシウム粒子からなるものである。
【0015】
前記二酸化炭素捕捉剤の原料として用いられる水酸化カルシウム粒子の製造方法は特に限定されない。石灰石(CaCO
3)を加熱して得られる生石灰(CaO)と水を反応させることにより消石灰(Ca(OH)
2)を得る方法を用いることもできるが、カルシウム塩と、アルカリ金属の水酸化物とを反応させることにより水酸化カルシウム粒子を得る方法が好ましい。当該方法によって得られた水酸化カルシウム粒子を用いることにより、捕捉効率がさらに高い二酸化炭素捕捉剤が得られる。
【0016】
前記製造方法に用いられるカルシウム塩としては、塩化カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられ、なかでも、塩化カルシウムが好ましい。前記製造方法に用いられるアルカリ金属の水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられ、なかでも、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0017】
前記カルシウム塩と、前記アルカリ金属の水酸化物とを反応させる方法としては、カルシウム塩の水溶液とアルカリ金属の水酸化物の水溶液とを混合することにより水酸化カルシウムを析出させる方法等が挙げられる。このとき、アルカリ金属の水酸化物の水溶液に対してカルシウム塩の水溶液を添加することが好ましい。前記カルシウム塩の水溶液の濃度は、通常0.01mol/L以上である。前記アルカリ金属の水酸化物の水溶液の濃度は、通常0.01mol/L以上である。前記カルシウム塩の水溶液や前記アルカリ金属の水酸化物の水溶液は飽和水溶液であっても構わない。前記カルシウム塩と、前記アルカリ金属の水酸化物とを反応させる際の温度は、通常0〜100℃である。
【0018】
前記製造方法において、カルシウム塩1モルに対して、アルカリ金属の水酸化物を0.1モル以上混合して反応させることが好ましい。このときのアルカリ金属の水酸化物の量は、1モル以上がより好ましく、2モル以上がさらに好ましい。一方、このときのアルカリ金属の水酸化物の量は、40モル以下が好ましく、20モル以下がより好ましく、10モル以下がさらに好ましい。捕捉効率が特に高い二酸化炭素捕捉剤が得られる観点からは、カルシウム塩1モルに対して、アルカリ金属の水酸化物を2.1モル以上混合することが好ましく、2.5モル以上混合することがより好ましい。
【0019】
本発明の二酸化炭素捕捉剤は、前記カルシウム塩と、前記アルカリ金属の水酸化物とを反応させることにより得られた水酸化カルシウム粒子の表面に炭酸カルシウム層が形成されたものであることが好ましい。当該二酸化炭素捕捉剤は、さらに高い捕捉効率を有する。
【0020】
原料の水酸化カルシウム粒子の平均粒子径は特に限定されないが、0.1〜1000μmが好ましい。前記平均粒子径は、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましく、20μm以下が特に好ましい。水酸化カルシウム粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡観察によって測定された粒子径を算術平均することにより求めることができる。
【0021】
水酸化カルシウム粒子の表面に炭酸カルシウム層を形成させる方法として、二酸化炭素の存在下で水酸化カルシウム粒子を加熱する方法が好ましい。このとき、二酸化炭素の分圧が0.01気圧以上の雰囲気下で水酸化カルシウム粒子を加熱することが好ましい。二酸化炭素の分圧が0.01気圧未満の場合、炭酸カルシウム層が十分形成されないおそれがある。二酸化炭素の分圧が0.1気圧以上であることがより好ましく、0.5気圧以上がさらに好ましい。一方、炭酸カルシウム層を形成させる際の二酸化炭素の分圧は100気圧以下が好ましく、10気圧以下がより好ましく、2気圧以下がさらに好ましく、1気圧以下が特に好ましい。
【0022】
水酸化カルシウム粒子を加熱する際の温度は、120〜250℃が好ましい。このように比較的低温で炭酸カルシウム層を形成させることにより、二酸化炭素の捕捉効率がさらに向上する。前記温度は、130℃以上がより好ましく、145℃以上がさらに好ましい。一方、前記温度は、220℃以下がより好ましく、180℃以下がさらに好ましく、155℃以下が特に好ましい。
【0023】
水酸化カルシウム粒子を加熱する時間は、通常、1〜120時間である。水酸化カルシウム粒子を加熱する時間は、20時間以上が好ましい。
【0024】
こうして表面に炭酸カルシウム層が形成された水酸化カルシウム粒子からなる本発明の二酸化炭素捕捉剤は高い二酸化炭素の捕捉効率を有する。特に、当該二酸化炭素捕捉剤は、二酸化炭素の分圧が低い場合であっても高い捕捉効率を有する。通常、水酸化カルシウムと二酸化炭素との反応は平衡反応であるため、反応効率は二酸化炭素の分圧に依存して変化する。したがって、二酸化炭素の分圧が低い場合、水酸化カルシウムと二酸化炭素との反応が進まないため、二酸化炭素を捕捉することが難しい。それに対して、表面に炭酸カルシウム層が形成された水酸化カルシウム粒子からなる本発明の二酸化炭素捕捉剤を用いた場合には、二酸化炭素の分圧が低い場合でも、水酸化カルシウムと二酸化炭素との反応が効率的に進み、炭酸カルシウムが生成される。すなわち、驚くべきことにこのときの水酸化カルシウムと二酸化炭素との反応は非平衡反応であると考えられる。このような非平衡反応が進む理由は明らかではないが、表面の炭酸カルシウム層が寄与しているものと考えられる。
【0025】
前記炭酸カルシウム層の厚みが0.5〜100nmであることが好ましい。このように薄い炭酸カルシウム層によって水酸化カルシウム粒子が覆われることによって、二酸化炭素の捕捉効率がさらに向上する。前記厚みは、50nm以下がより好ましく、20nm以下がさらに好ましく、10nm以下が特に好ましく、5nm以下が最も好ましい。前記炭酸カルシウム層の厚みは、後述する実施例に記載された方法により測定される。
【0026】
前記炭酸カルシウム層が表面に形成された水酸化カルシウム粒子の平均粒子径は特に限定されないが、0.1〜1000μmが好ましい。前記平均粒子径は、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましく、20μm以下が特に好ましい。前記炭酸カルシウム層が表面に形成された水酸化カルシウム粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡観察によって測定された粒子径を算術平均することにより求めることができる。
【0027】
本発明において、水酸化カルシウム粒子の表面の炭酸カルシウム層が、二酸化炭素の存在下で、水酸化カルシウム粒子を加熱することにより形成されてなるものであることが好ましい。このような炭酸カルシウム層が形成された水酸化カルシウム粒子からなる二酸化炭素捕捉剤を用いることによって、二酸化炭素の捕捉効率がさらに向上する。
図2は、炭酸カルシウム層が形成されていない水酸化カルシウム粒子の一例の電子顕微鏡写真である。
図3は、加熱により表面に炭酸カルシウム層が形成された水酸化カルシウム粒子の一例の電子顕微鏡写真である。
図2及び
図3の水酸化カルシウムの部分には、規則性の高い縞模様が観察されていることから、水酸化カルシウムは結晶化度が高いものと考えられる。
図3には、水酸化カルシウム粒子の表面に厚さ約2nmの薄い炭酸カルシウム層が形成されていることが示されている。この炭酸カルシウム層の部分には、前記水酸化カルシウム部分のような規則性が高い縞模様は観察されておらず、当該炭酸カルシウムは結晶化度がそれほど高くないものと考えられる。このように当該炭酸カルシウム層の結晶化度はそれほど高くなく硬すぎないため、炭酸カルシウム層にひび割れ等が生じにくいものと考えられる。このような炭酸カルシウム層によって内部の水酸化カルシウムが密封されることによって、後述するような当該水酸化カルシウムの非平衡反応が進むものと考えられる。
【0028】
こうして得られた二酸化炭素捕捉剤を用いて、300〜650℃の雰囲気中の二酸化炭素を捕捉する方法が本発明の好適な実施態様である。本発明の二酸化炭素捕捉剤は、安価であり、なおかつ二酸化炭素の捕捉効率が高い。特に、二酸化炭素分圧が低い場合でも、高い効率で二酸化炭素を捕捉することが可能である。二酸化炭素を捕捉する際の温度は、350℃以上が好ましく、450℃以上がより好ましい。一方、当該温度は、550℃以下が好ましい。二酸化炭素を捕捉する際の時間は、目的に応じて適宜調整すればよい。
【0029】
なかでも、前記二酸化炭素捕捉剤を用いて、二酸化炭素の分圧が10
−9〜1気圧である雰囲気中の二酸化炭素を捕捉することが好適である。本発明の二酸化炭素捕捉剤は、このような分圧である二酸化炭素を効率良く捕捉することができる。特に、前記二酸化炭素捕捉剤を用いて、酸化カルシウムと炭酸カルシウムが平衡状態であるときの二酸化炭素分圧曲線よりも低い二酸化炭素分圧である雰囲気中から二酸化炭素を捕捉することが好ましい。
図9は、「Thermochemical properties of inorganic substances, Springer-Verlag Berlin Heidelberg New York, (1973), p.174-181」に記載された酸化カルシウムと炭酸カルシウムが平衡状態であるときの二酸化炭素分圧曲線と、「J. Appl. Chem., 18 (1968) p.5-8」に記載された水酸化カルシウムと酸化カルシウムが平衡状態であるときの水の分圧曲線を示した図である。通常、水酸化カルシウムと二酸化炭素との反応は平衡反応であるため、
図9に示される二酸化炭素分圧曲線よりも二酸化炭素の分圧が低い場合には、炭酸カルシウムが生成せず、二酸化炭素を捕捉することが難しい。それに対して、表面に炭酸カルシウム層が形成された水酸化カルシウム粒子からなる本発明の二酸化炭素捕捉剤を用いた場合には、水酸化カルシウムと二酸化炭素との反応が非平衡で進行するため、前記二酸化炭素分圧曲線よりも二酸化炭素の分圧が低い場合であっても、効率良く炭酸カルシウムが生成される。したがって、本発明の二酸化炭素捕捉剤は、半導体製造プロセスにおける雰囲気中の二酸化炭素分圧の低減や温暖化対策のための二酸化炭素排出量の削減等のために好適に用いられる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
【0031】
実施例1
純水を沸騰させて二酸化炭素を除去した。この純水を用いて、濃度0.25mol/Lの塩化カルシウム水溶液と濃度0.75mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液とを調整した。真空デシケータ中で、前記水酸化ナトリウム水溶液に対して、前記前記塩化カルシウム水溶液を加えて沈殿物(水酸化カルシウム)を得た。このとき、塩化カルシウム1モルに対して、水酸化ナトリウム3モルとなるように前記塩化カルシウム水溶液を添加した。また前記操作は各水溶液の温度が室温に戻る前に行った。水酸化カルシウムが析出した液を吸引ろ過することにより、水酸化カルシウム粉末を得た。当該水酸化カルシウム粉末を真空デシケータ中で24時間乾燥させた。電子顕微鏡観察によって測定された水酸化カルシウム粒子の粒子径は0.25〜0.5μmであった。
【0032】
TA Instruments社製熱重量分析装置「Q50」を用いて、得られた水酸化カルシウム粉末を40mg(100質量部)加熱処理することにより、水酸化カルシウム粒子の表面に炭酸カルシウム層を形成させた。当該処理は、前記装置内に二酸化炭素(純度99.95体積%、流量2ml/min、二酸化炭素分圧1気圧)を吹き込みながら、150℃にて48時間行った。このときの熱重量分析の結果を
図1に示す。加熱処理前と加熱処理後の水酸化カルシウム粒子の電子顕微鏡写真をそれぞれ撮影した。
図2に加熱処理前の水酸化カルシウム粒子の電子顕微鏡写真を示す。
図3に加熱処理後の水酸化カルシウム粒子の電子顕微鏡写真を示す。電子顕微鏡観察によって測定された加熱後の水酸化カルシウム粒子の粒子径は0.25〜0.5μmであった。加熱処理後の水酸化カルシウム粒子の顕微ラマン分光スペクトルを測定した。その結果を
図4に示す。
【0033】
図2の加熱処理前の水酸化カルシウム粒子の電子顕微鏡写真には、規則性の高い縞模様が観察されていることから、水酸化カルシウムが高度に結晶化しているものと考えられる。そして、
図3の加熱処理後の水酸化カルシウム粒子の電子顕微鏡写真には、水酸化カルシウム部分(規則性の高い縞模様部分)の外側に、当該部分とは異なる模様の層が厚み約2nmで形成されていることが確認できる。当該層の厚みは、電子顕微鏡観察により測定された値を算術平均することにより求めた。
図4の加熱後の水酸化カルシウム粒子の顕微ラマン分光スペクトルにおいて、炭酸カルシウムと水酸化カルシウムのピークが観察されているが、酸化カルシウムのピークは観察されていない。この結果から、加熱後の水酸化カルシウム粒子の表面には、炭酸カルシウム層が形成されているものと考えられる。当該炭酸カルシウム層には、水酸化カルシウム部分のような規則性の高い縞模様が見られないことから、結晶化度がそれほど高くないものと考えられる。
【0034】
図1の水酸化カルシウム粒子の熱重量分析の結果から、加熱後の水酸化カルシウム粒子は、加熱前の水酸化カルシウム粒子に対して0.2%の重量の増加が確認された。この重量変化から、水酸化カルシウム(分子量74.1)のうち、炭酸カルシウム(分子量100.1)に変化したものの割合(炭酸化率)を求めたところ、0.6モル%であった。
【0035】
[炭酸化(二酸化炭素の捕捉)]
TA Instruments社製熱重量分析装置「Q50」に、加熱処理されて表面に炭酸カルシウム層が形成された水酸化カルシウム粉末を40mg(100質量部)配置し、装置内にアルゴンガス(二酸化炭素濃度1ppm、流量80ml/min)を吹き込みながら、1℃/minで昇温することにより、当該粉末の炭酸化(二酸化炭素の捕捉)を行った。後述する実施例2と同様にして、温度に対して重量をプロットした後、重量が最大となった点における見かけの炭酸化率を求めたところ、77モル%であった。
【0036】
実施例2
カルシウム1モルに対して、水酸化ナトリウム2モルとなるように、水酸化ナトリウム水溶液に対して塩化カルシウム水溶液を添加したこと及び水酸化カルシウム粉末の加熱時間を72時間に変更したこと以外は実施例1と同様にして表面に炭酸カルシウム層が形成された水酸化カルシウム粉末を作製した。実施例1と同様にして、当該水酸化カルシウム粉末熱重量分析(炭酸化)を行った。このときの温度に対して重量をプロットした図を
図5に示す。
【0037】
実施例3
実施例1と同様にして加熱処理されて表面に炭酸カルシウム層が形成された水酸化カルシウム粉末を作製した。アルゴンガスを吹き込まずに大気中で炭酸化を行ったこと以外は、実施例1と同様にして当該水酸化カルシウム粉末の炭酸化を行った。このときの熱重量分析の結果を
図5に示す。
【0038】
比較例1
カルシウム1モルに対して、水酸化ナトリウム2モルとなるように、水酸化ナトリウム水溶液に対して塩化カルシウム水溶液を添加したこと以外は実施例1と同様にして水酸化カルシウム粉末(炭酸カルシウム層が形成されていない加熱処理前のもの)を得た。得られた炭酸カルシウム層が形成されていない水酸化カルシウム粉末の炭酸化を実施例1と同様にして行った。このときの熱重量分析の結果を
図5に示す。
【0039】
図5は、1℃/minで昇温させた場合の各水酸化カルシウム粉末の重量変化を示した図である。100重量部の水酸化カルシウム(分子量74.1)が完全に炭酸化(炭酸カルシウム、分子量100.1)された場合に生成される炭酸カルシウムの重量は135.1重量部であり、水酸化カルシウムが完全に脱水(酸化カルシウム、分子量56.1)された場合に生成される酸化カルシウムの重量は75.6重量部である。
図5に示されるとおり、加熱処理することによって表面に炭酸カルシウム層が形成された水酸化カルシウム粉末を用いた場合、アルゴンガス中(実施例2)、大気中(実施例3)のいずれの雰囲気下においても重量の増加が観察され、二酸化炭素が捕捉されたことが確認された。一方、炭酸カルシウム層が形成されていない加熱処理前の水酸化カルシウム粉末を用いた場合、水酸化カルシウムがほぼ完全に脱水されて酸化カルシウムとなり、二酸化炭素を捕捉することができなかった。
【0040】
実施例4〜7
カルシウム1モルに対して、水酸化ナトリウム2モルとなるように、水酸化ナトリウム水溶液に対して塩化カルシウム水溶液を添加したこと及び水酸化カルシウム粉末の加熱時間を72時間に変更したこと以外は実施例1と同様にして表面に炭酸カルシウム層が形成された水酸化カルシウム粉末を作製した。等温(実施例4:400℃、実施例5:500℃、実施例6:550℃、実施例7:600℃)で炭酸化を行ったこと以外は実施例1と同様にして、加熱処理されて表面に炭酸カルシウム層が形成された水酸化カルシウム粉末の炭酸化を行った。このときの熱重量分析の結果を
図6に示す。
【0041】
比較例2〜4
比較例1と同様にして水酸化カルシウム粉末(炭酸カルシウム層が形成されていない加熱処理前のもの)を得た。等温(比較例2:400℃、比較例3:550℃、比較例4:600℃)で炭酸化を行ったこと以外は実施例1と同様にして、加熱処理前の炭酸カルシウム層が形成されていない水酸化カルシウム粉末の炭酸化を行った。このときの熱重量分析の結果を
図7に示す。
【0042】
図6に示されるとおり、加熱処理することによって表面に炭酸カルシウム層が形成された水酸化カルシウム粉末を用いた場合には、二酸化炭素分圧が極めて低いアルゴンガス(二酸化炭素濃度1ppm)雰囲気下であっても二酸化炭素が効率良く捕捉された。一方、
図7に示されるとおり、炭酸カルシウム層が形成されていない加熱処理前の水酸化カルシウム粉末を用いた場合、水酸化カルシウムがほぼ完全に脱水されて酸化カルシウムとなり、二酸化炭素を捕捉することができなかった。
【0043】
実施例8
カルシウム1モルに対して、水酸化ナトリウム2モルとなるように、水酸化ナトリウム水溶液に対して塩化カルシウム水溶液を添加したこと以外は実施例1と同様にして表面に炭酸カルシウム層が形成された水酸化カルシウム粉末の作製及び熱重量分析(炭酸化)を行った。実施例2(
図5)と同様にして、温度に対して重量をプロットした後、重量が最大となった点における見かけの炭酸化率を求めたところ、47モル%であった。
図8に、炭酸カルシウム層を形成させる際の水酸化カルシウム粉末の加熱処理温度を横軸に、見かけの炭酸化率を縦軸にプロットした。
図8に、実施例1において、水酸化カルシウム粉末の炭酸化を行った際の見かけの炭酸化率も合わせて示す。また、得られた水酸化カルシウム粒子の顕微ラマン分光スペクトルを測定した。その結果を
図4に示す。
【0044】
実施例9〜14
水酸化カルシウム粉末を加熱処理する際の温度について検討した。水酸化カルシウム粉末を加熱処理する際の温度を変更(実施例9:100℃、実施例10:140℃、実施例11:160℃、実施例12:170℃、実施例13:200℃、実施例14:300℃)したこと以外は実施例8と同様にして表面に炭酸カルシウム層が形成された水酸化カルシウム粉末の作製及び炭酸化(熱重量分析)を行った。実施例8と同様にして、加熱処理された各水酸化カルシウム粉末における、見かけの炭酸化率を求めた。
図8に、各水酸化カルシウム粉末の加熱処理温度を横軸に、見かけの炭酸化率を縦軸にプロットした。
【0045】
図8に示されるように、驚くべきことに、150℃付近で加熱処理することによって炭酸カルシウム層が形成された水酸化カルシウム粉末(実施例8)は顕著に高い炭酸化率を示した。さらに驚くべきことに、塩化カルシウムに対して、過剰の水酸化ナトリウム(塩化カルシウム1モルに対して、水酸化ナトリウム3モル)を混合することにより、炭酸化率が顕著に向上した。