(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧縮機に供給する潤滑油を貯留する油タンクと、回転数が可変とされ、前記油タンクの潤滑油を前記圧縮機に供給する油ポンプとを備えるターボ冷凍機に適用される油ポンプ制御装置であって、
前記油ポンプが吸い込む冷媒ガス量を吸込み冷媒ガス量として演算する吸込み冷媒ガス量演算部と、
前記吸込み冷媒ガス量と前記圧縮機が必要とする潤滑油量である必要潤滑油量とを用いて、供給潤滑油量を演算する供給潤滑油量演算部と、
前記供給潤滑油量に基づいて、前記油ポンプの回転数指令値を生成する指令値生成部と
を具備する油ポンプ制御装置。
圧縮機に供給する潤滑油を貯留する油タンクと、回転数が可変とされ、前記油タンクの潤滑油を前記圧縮機に供給する油ポンプとを備えるターボ冷凍機に適用される油ポンプ制御方法であって、
前記油ポンプが吸い込む冷媒ガス量を吸込み冷媒ガス量として演算する工程と、
前記吸込み冷媒ガス量と前記圧縮機が必要とする潤滑油量である必要潤滑油量とを用いて、供給潤滑油量を演算する工程と、
前記供給潤滑油量に基づいて、前記油ポンプの回転数指令値を生成する工程と
を有する油ポンプ制御方法。
圧縮機に供給する潤滑油を貯留する油タンクと、回転数が可変とされ、前記油タンクの潤滑油を前記圧縮機に供給する油ポンプとを備えるターボ冷凍機に適用される油ポンプ制御プログラムであって、
前記油ポンプが吸い込む冷媒ガス量を吸込み冷媒ガス量として演算する処理と、
前記吸込み冷媒ガス量と前記圧縮機が必要とする潤滑油量である必要潤滑油量とを用いて、供給潤滑油量を演算する処理と、
前記供給潤滑油量に基づいて、前記油ポンプの回転数指令値を生成する処理と
をコンピュータに実行させるための油ポンプ制御プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フォーミングの発生量が多いと、油ポンプに冷媒ガスが噛みこんでしまい、圧縮機軸受けに所定の給油量を供給することができず、圧縮機損傷の可能性が高まる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、油タンク内のフォーミング発生による圧縮機への影響を低減させることのできる油ポンプ制御装置、制御方法、及び制御プログラム並びにターボ冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一態様は、圧縮機に供給する潤滑油を貯留する油タンクと、回転数が可変とされ、前記油タンクの潤滑油を前記圧縮機に供給する油ポンプとを備えるターボ冷凍機に適用される油ポンプ制御装置であって、前記油ポンプが吸い込む冷媒ガス量を吸込み冷媒ガス量として演算する吸込み冷媒ガス量演算部と、前記吸込み冷媒ガス量と前記圧縮機が必要とする潤滑油量である必要潤滑油量とを用いて、供給潤滑油量を演算する供給潤滑油量演算部と、前記供給潤滑油量に基づいて、前記油ポンプの回転数指令値を生成する指令値生成部とを具備する油ポンプ制御装置である。
【0008】
上記油ポンプ制御装置によれば、吸込み冷媒ガス量演算部によって油ポンプが吸い込む冷媒ガス量が吸込み冷媒ガス量として演算され、この吸込み冷媒ガス量と圧縮機が必要とする潤滑油量である必要潤滑油量とを用いて供給潤滑油量が供給潤滑油量演算部によって演算される。そして、この供給潤滑油量に基づいて油ポンプの回転数指令値が指令値生成部によって生成される。
このように、油ポンプが吸込む冷媒ガス量を考慮して供給潤滑油量を演算し、この供給潤滑油量に応じて油ポンプの回転数が制御されるので、フォーミングが発生することによる圧縮機への潤滑量の供給不足を回避することが可能となる。
【0009】
上記油ポンプ制御装置において、前記吸込み冷媒ガス量演算部は、前記油タンク内の潤滑油から発生する冷媒ガス量を演算する第1演算部と、前記第1演算部によって演算された前記冷媒ガス量を用いて前記油ポンプが吸い込む冷媒ガス量を演算する第2演算部とを備えていてもよい。
【0010】
上記油ポンプ制御装置によれば、第1演算部によって油タンク内に貯留されている潤滑油全体から発生する冷媒ガス量が演算され、演算された冷媒ガス量のうち、ポンプが吸い込む冷媒ガス量が第2演算部によって演算される。これにより、圧縮機に供給される潤滑油量に影響を与える冷媒ガス量を得ることができ、適切な供給潤滑油量を演算することが可能となる。
【0011】
本発明の第二態様は、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機によって圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器から導かれた液冷媒を膨張させる膨張弁と、前記膨張弁によって膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記圧縮機に供給する潤滑油を貯留する油タンクと、回転数が可変とされ、前記油タンクの潤滑油を前記圧縮機に供給する油ポンプと、上記油ポンプ制御装置とを備えるターボ冷凍機である。
【0012】
本発明の第三態様は、圧縮機に供給する潤滑油を貯留する油タンクと、回転数が可変とされ、前記油タンクの潤滑油を前記圧縮機に供給する油ポンプとを備えるターボ冷凍機に適用される油ポンプ制御方法であって、前記油ポンプが吸い込む冷媒ガス量を吸込み冷媒ガス量として演算する工程と、前記吸込み冷媒ガス量と前記圧縮機が必要とする潤滑油量である必要潤滑油量とを用いて、供給潤滑油量を演算する工程と、前記供給潤滑油量に基づいて、前記油ポンプの回転数指令値を生成する工程とを有する油ポンプ制御方法である。
【0013】
本発明の第四態様は、圧縮機に供給する潤滑油を貯留する油タンクと、回転数が可変とされ、前記油タンクの潤滑油を前記圧縮機に供給する油ポンプとを備えるターボ冷凍機に適用される油ポンプ制御プログラムであって、前記油ポンプが吸い込む冷媒ガス量を吸込み冷媒ガス量として演算する処理と、前記吸込み冷媒ガス量と前記圧縮機が必要とする潤滑油量である必要潤滑油量とを用いて、供給潤滑油量を演算する処理と、前記供給潤滑油量に基づいて、前記油ポンプの回転数指令値を生成する処理とをコンピュータに実行させるための油ポンプ制御プログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、油タンク内のフォーミング発生による圧縮機への影響を低減させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施形態に係る油ポンプ制御装置、制御方法、及び制御プログラム並びにターボ冷凍機について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るターボ冷凍機を示した概略構成図である。
図1に示されるように、ターボ冷凍機1は、冷媒を圧縮する圧縮機3と、圧縮機3によって圧縮された高温高圧のガス冷媒を凝縮する凝縮器5と、凝縮器5から導かれた液冷媒を膨張させる膨張弁7と、膨張弁7によって膨張された液冷媒を蒸発させる蒸発器9と、ターボ冷凍機1を制御する冷凍機制御装置10とを備えている。
【0017】
冷媒として、HFO−1233zd(E)といった低圧冷媒が用いられている。
圧縮機3は、例えば、ターボ圧縮機が用いられる。圧縮機3は、インバータによって回転数制御された電動機11によって駆動される。インバータは、冷凍機制御装置10によってその出力が制御される。なお、本実施形態では、可変速の圧縮機を例示して説明するが、固定速の圧縮機を用いることとしてもよい。
圧縮機3の冷媒吸入口には、吸入冷媒流量を制御するインレットガイドベーン(以下「IGV」という。)13が設けられており、ターボ冷凍機1の容量制御が可能となっている。IGV13の開度制御は、冷凍機制御装置10によって行われる。
【0018】
圧縮機3は、回転軸3b周りに回転する羽根車3aを備えている。回転軸3bには、増速歯車15を介して電動機11から回転動力が伝達される。回転軸3bは、軸受3cによって支持されている。
【0019】
凝縮器5は、シェルアンドチューブ型やプレート型等の熱交換器である。凝縮器5には、冷媒を冷却するための冷却水が供給されるようになっている。凝縮器5に導かれる冷却水は、図示しない冷却塔や空気熱交換器において外部へと排熱された後に、再び凝縮器5へと導かれるようになっている。
【0020】
膨張弁7は、電動式とされており、冷凍機制御装置10によって開度が設定されるようになっている。
【0021】
蒸発器9は、シェルアンドチューブ型やプレート型等の熱交換器とされている。蒸発器9には、図示しない外部負荷へ供給される冷水が導かれるようになっている。冷水は、蒸発器9にて冷媒と熱交換することによって、定格温度(例えば7℃)まで冷却され、外部負荷へと送られる。蒸発器9に冷水を供給する配管には、冷水入口温度を計測するための温度センサ24が設けられている。また、蒸発器9によって冷却された冷水を外部負荷へ供給する配管には、冷水流量を計測するための流量センサ26が設けられている。温度センサ24によって計測された冷水入口温度及び流量センサ26によって計測された冷水流量は、冷凍機制御装置10に送信され、後述する油ポンプ制御部50(
図3参照)によって用いられる他、ターボ冷凍機全体の制御に用いられる。
【0022】
圧縮機3の軸受3cや増速歯車15には、油タンク17から潤滑油が供給されるようになっている。潤滑油としては、例えば、合成油や鉱物油が用いられる。
油タンク17内には、油ポンプ20(
図2参照)が設けられており、これにより、所定の流量にて油供給配管19を介して潤滑油が供給される。圧縮機3内で潤滑を終えた潤滑油は、油返送配管21を介して油タンク17内へと戻される。油ポンプ20は、回転数が可変の可変速ポンプとされており、例えば、インバータ(図示略)によって回転数制御された電動機(図示略)によって駆動される。インバータは、冷凍機制御装置10によってその出力が制御される。
【0023】
油タンク17と蒸発器9との間には、これらの間を連通する均圧管23が設けられており、油タンク17内の圧力と蒸発器9内の圧力が均圧されるようになっている。このように油タンク17内を低圧にすることで、潤滑油に対する冷媒溶け込み量を低く保つようになっている。
【0024】
油タンク17には、圧力センサ25と温度センサ27とが設けられている。圧力センサ25によって計測された油タンク17内の圧力及び温度センサ27によって計測された油タンク17内の温度(具体的には潤滑油温度)は、冷凍機制御装置10へ送信される。
【0025】
図2は、油タンク17の構成を模式的に示した図である。
図2に示すように、油タンク17内には、油タンク17内に貯留されている潤滑油を加熱するためのオイルヒータ31が設けられている。オイルヒータ31は、例えば、温度センサ27によって計測される温度に基づいて、油タンク内の潤滑油が略一定の温度になるように冷凍機制御装置10によってオンオフが制御される。
【0026】
オイルヒータ31は、例えば、油タンク17の底面から上方に所定距離離れた位置に設けられている。このような位置にオイルヒータ31が設けられていることにより、オイルヒータ31の設置位置よりも下方の領域には比較的温度の低い潤滑油が滞留し、オイルヒータ31の設置位置よりも上方の領域には比較的温度の高い潤滑油が滞留することとなる。このような潤滑油の温度分布は、オイルヒータ31の発停ごとに発生することとなる。
【0027】
油ポンプ20の起動時には、低圧側の圧力低下速度や、上述した油タンク17内における潤滑油の温度分布等の種々の要因により、フォーミングが発生しやすい。例えば、上述のように、潤滑油の温度分布が大きい場合には、油ポンプ20の吸込口付近において、比較的温度の高い潤滑油と比較的温度の低い潤滑油とが接触することから、冷媒ガスが発生する。
【0028】
冷凍機制御装置10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等を備えて構成されている。冷凍機制御装置10が各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラム(例えば、油ポンプ制御プログラム)の形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等である。
【0029】
図3は、冷凍機制御装置10が備える各種機能のうち、フォーミングに関する圧縮機3への影響を低減させるための機能の一つである油ポンプ制御部(油ポンプ制御装置)50を抽出して示した機能ブロック図である。
本実施形態においては、ターボ冷凍機1を制御する冷凍機制御装置10が油ポンプ制御部50を有する場合を例示して説明するが、この例に限定されず、例えば、ターボ冷凍機を制御する冷凍機制御装置10とは別に、油ポンプ20を制御するための油ポンプ制御部を独立して設ける構成としても良い。
【0030】
油ポンプ制御部50は、記憶部51、吸込み冷媒ガス量演算部52、供給潤滑油量演算部53、及び指令値生成部54を主な構成として備えている。
【0031】
記憶部51には、油ポンプ制御部50が油ポンプ20を制御するために必要な各種情報が格納されている。その一つとして、冷媒溶解度と圧力とが関連付けられた冷媒溶解度情報が格納挙げられる。この冷媒溶解度情報の記述形式は、マップ形式でもよいし、近似式等を用いた関係式としてもよい。
図4に冷媒溶解度情報の一例を示す。
図4において、横軸は潤滑油に対する冷媒の溶け込み量の割合を質量比で示した冷媒溶解度[mass%(質量パーセント)]であり、縦軸は圧力[MPa]である。
図4に示された各曲線は、それぞれの温度(例えば、潤滑油温度)における冷媒溶解度を示している。
図4からわかるように、各曲線は上に凸の形状とされており、圧力が低いほど冷媒溶解度が小さく、また圧力が低い領域ほど冷媒溶解度の変化が大きい。更に、同じ圧力で比較した場合、潤滑油温度が高いほど冷媒溶解度が小さいことがわかる。
【0032】
吸込み冷媒ガス量演算部52は、記憶部51に格納されている冷媒溶解度情報を用いて冷媒溶け出し量を演算する第1演算部61と、第1演算部61によって演算された冷媒溶け出し量を用いて油ポンプ20が吸い込む冷媒ガス量を吸込み冷媒ガス量として演算する第2演算部62とを備えている。
ここで、上記「冷媒溶け出し量」とは、油タンク17に貯留されている潤滑油に溶け込んでいた冷媒がガスとなり潤滑油から放出される冷媒ガスの体積を意味する。また、上記「吸込み冷媒ガス量」は、上記「冷媒溶け出し量」のうち、油ポンプ20に吸い込まれると推定される冷媒ガスの体積を意味する。なお、第1演算部61及び第2演算部62による詳細な処理内容については後述する。
【0033】
供給潤滑油量演算部53は、吸込み冷媒ガス量演算部52の演算結果である吸込み冷媒ガス量と圧縮機3が必要とする潤滑油量である必要供給量とを用いて、供給潤滑油量を演算する。例えば、供給潤滑油量演算部53は、吸込み冷媒ガス量に必要供給量を加算することにより、供給潤滑油量を演算する。ここで、必要供給量は、例えば、機械構成(例えば、軸受やギアのサイズ等)から決定される予め設定された値であり、運転条件によらず一定である。
【0034】
指令値生成部54は、供給潤滑油量演算部53によって演算された供給潤滑油量に基づいて、油ポンプ20の回転数指令値を生成する。例えば、指令値生成部54は、油ポンプ20の回転数と給油量(吐出量)とが関連付けられたポンプ特性情報を有しており、このポンプ特性情報から供給潤滑油量に対応する回転数を取得し、これを回転数指令値として、油ポンプ20を駆動する駆動部(図示略)に出力する。
【0035】
次に、本実施形態に係る油ポンプ制御部50によって実行される油ポンプ制御方法について
図5を参照して説明する。
図5は、油ポンプ制御部50によって実行される油ポンプ制御の処理手順を示したフローチャートである。なお、以下に示す油ポンプ制御は、例えば、圧縮機の起動時のようにフォーミングが発生しやすい状態にある場合、及び蒸発圧力が変動する過渡運転時において実行されるとよい。
【0036】
まず、吸込み冷媒ガス量演算部52の第1演算部61により、「冷媒溶け出し量」が演算される(SA1〜SA5)。
具体的には、ステップSA1において、冷媒溶け出し量を演算するのに必要となる各種情報を取得する。例えば、Pe(tc−i)、Pe(tc)、Toil、TL1、Fchを取得する。ここで、Pe(tc−i)はi秒前(例えば、10秒前)の蒸発圧力、Pe(tc)は現在の蒸発圧力であり、いずれも圧力センサ25の計測値である。上述したように、油タンク17と蒸発器9との間には、これらの間を連通する均圧管23が設けられているため、油タンク17内の圧力は蒸発圧力と同じ値となる。
また、Toilは現在の油タンク温度であり、例えば、温度センサ27の計測値が用いられる。TL1は現在の冷水入口温度であり、温度センサ24の計測値である。Fchは現在の冷水流量であり、流量センサ26の計測値である。
【0037】
次に、過去i秒間の圧力変化量ΔPe=Pe(tc)−Pe(tc−i)からi秒後の蒸発圧力Pe(tc+i)を演算する(SA2)。ここでは、同じ圧力変化量で蒸発圧力が変化することを想定し、i秒後の蒸発圧力Pe(tc+i)を以下の(1)式で演算する。ここで、iは任意に設定される整数であり、例えば、10秒が挙げられる。
【0038】
Pe(tc+i)=Pe(tc)+ΔPe (1)
【0039】
続いて、現在の冷媒溶解質量を演算する(SA3)。具体的には、現在の油タンク温度Toilと現在の蒸発圧力Pe(tc)と
図4に示した冷媒溶解度情報とから、現在の冷媒溶解度を取得し、取得した冷媒溶解度と、現在の潤滑油密度と、油タンク17に貯留されている潤滑油量とから現在の冷媒溶解質量を演算する。例えば、現在の冷媒溶解度と、現在の潤滑油密度と、油タンク17に貯留されている潤滑油量とを乗じることにより、現在の冷媒溶解質量を演算する。
【0040】
次に、同様の手順で、i秒後の冷媒溶解質量を演算する(SA4)。具体的には、現在の油タンク温度Toilとi秒後の蒸発圧力Pe(tc+i)と
図4に示した冷媒溶解度情報とから、i秒後の冷媒溶解度を取得し、取得した冷媒溶解度と、現在の潤滑油密度と、油タンクに貯留されている潤滑油量とを乗じることにより、i秒後の冷媒溶解質量を演算する。
【0041】
次に、ステップSA3で演算した現在の冷媒溶解質量と、ステップSA4で演算したi秒後の冷媒溶解質量とを用いて、i秒間における冷媒溶け出し量を演算する(SA5)。例えば、以下の(2)式によりi秒間における冷媒溶け出し量Vrefdを演算する。
【0043】
上記(2)式において、Vrefdはi秒間における冷媒溶け出し量、Mre(tc)は、ステップSA3で演算した現在の冷媒溶解質量、Mre(tc+i)はステップSA4で演算したi秒後の冷媒溶解質量、ρrefg(tc+i)は、i秒後の冷媒ガス密度である。ここで、i秒後の冷媒ガス密度は、i秒後の蒸発圧力Pe(tc+i)と、i秒後の過熱度とをパラメータとする関数によって決定される値である。ここで、冷媒ガス密度は、蒸発圧力が低い方が小さい、換言すると、同じ出現質量で出現ガス量が大きくなるため、安全側をとり、i秒後の値を用いている。また、飽和ガス密度を用いると実際よりもガス密度が大きく、換言すると、冷媒ガス出現体積が小さくなるため、安全側を取り加熱ガス密度(過熱度)を採用している。
【0044】
このようにして、第1演算部61によってi秒間における冷媒溶け出し量(油タンク17から発生するフォーミング量)が演算されると、続いて、第2演算部62によって、i秒間における吸込み冷媒ガス量(油ポンプに吸い込まれるフォーミング量)が演算される(SA6)。
【0045】
具体的には、第1演算部61によって演算されたi秒間における冷媒溶け出し量と、現在の油ポンプの吐出量と、油タンク17に貯留されている潤滑油量とを用いて吸込み冷媒ガス量を演算する。例えば、油タンク17に貯留されている潤滑油量のうち、油ポンプ20から吐出される潤滑油量の割合をi秒間における冷媒溶け出し量に乗じることにより、i秒後の吸込み冷媒ガス量を演算する。例えば、i秒後の吸込み冷媒ガス量は、以下の(3)式で表される。
【0047】
上記(3)式において、Foilp(tc)は現在の油ポンプの吐出量、Voilは油タンク17に貯留されている潤滑油量、Vrefdは第1演算部61によって演算されたi秒間における冷媒溶け出し量である。
【0048】
続いて、供給潤滑油量演算部53によって、供給潤滑油量が演算される(SA7)。具体的には、第2演算部62によって演算されたi秒後の吸込み冷媒ガス量と、圧縮機3が必要とする潤滑油量である必要供給量とを加算することにより、供給潤滑油量を演算する。
例えば、1分間における供給潤滑油量Foilp(tc+i)は、以下の(4)式で表される。
【0050】
上記(4)式において、Foil_rは必要供給量である。
【0051】
続いて、指令値生成部54によって油ポンプ20の回転数指令値が生成される(SA8)。具体的には、指令値生成部54は、供給潤滑油量演算部53によって演算された供給潤滑油量が油ポンプ20の仕様値(例えば、回転数上限値に対応する吐出量)を上回るか否かを判定し、仕様値を上回る場合には、供給潤滑油を仕様値に置き換え、仕様値に基づいて回転数指令値を生成する。一方、供給潤滑油が仕様値以下である場合には、供給潤滑油に対応する回転数指令値を生成する。
【0052】
そして、上述した処理を所定の時間間隔で繰り返し行うことにより、圧縮機3へ供給する潤滑油の不足を防止することが可能となる。なお、上述した油ポンプ制御の流れは一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0053】
以上説明してきたように、本実施形態に係る油ポンプ制御装置、制御方法、及び制御プログラム並びにターボ冷凍機によれば、吸込み冷媒ガス量演算部52によって油ポンプ20が吸い込む冷媒ガス量が吸込み冷媒ガス量として演算され、この吸込み冷媒ガス量と圧縮機3が必要とする潤滑油量である必要潤滑油量とを用いて供給潤滑油量が供給潤滑油量演算部53によって演算される。そして、この供給潤滑油量に基づいて油ポンプ20の回転数指令値が指令値生成部54によって生成される。
このように、油ポンプ20が吸込む冷媒ガス量を加味して供給潤滑油量を演算し、この供給潤滑油量に応じて油ポンプ20の回転数が制御されるので、フォーミングが発生することによる圧縮機3への潤滑量の供給不足を回避することが可能となる。
これにより、油タンク内のフォーミング発生による圧縮機3への影響を低減させることができるという効果を奏する。
【0054】
なお、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。また、上記実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0055】
例えば、本実施形態では、低圧冷媒の一例としてHFO−1233zd(E)を挙げて説明したが、他の低圧冷媒にも本発明を適用することができ、また、油タンク内のフォーミングのおそれがある場合には高圧冷媒に対しても本発明を適用することができる。
【0056】
また、本実施形態におけるターボ冷凍機1は、フォーミングによる影響を低減させるための機能として油ポンプ制御部50を有していたが、これに加えて、例えば、適切な速度で蒸発器9の圧力を減圧させる蒸発圧力調整機能を有していても良い。
この蒸発圧力調整機能は、例えば、以下のような事象の発生を防止するための機能である。
例えば、フォーミングが発生した場合、潤滑油が泡状となって油面が上昇し、油タンク17から均圧管23を通じて蒸発器9に潤滑油が流れるときがある。このような場合に蒸発器9の熱交換用のチューブに潤滑油がついてしまうと、蒸発器9の性能(熱交換量)が低下するおそれがある。また、潤滑油から放出される冷媒ガスは一定時間内に生じる圧力差に応じて決まる。このため、減圧速度が大きい場合には一気に放出される冷媒ガスにより油面が急上昇するおそれがある。このため、上記のような事象が発生しないように、適切な速度で蒸発圧力を調整することにより、フォーミング発生量を調整する必要がある。
【0057】
そして、この蒸発圧力調整機能は、例えば、上述した第1演算部61と同様の手法でi秒間における冷媒ガス溶け出し量を演算し、この冷媒ガス溶け出し量と、油タンク17の容量と、油タンク内に常に貯留されている潤滑油量とから油タンクの油面上の空間がどの程度空いているかを判断する。そして、油タンク17の上部に常に空間が保たれる程度にフォーミング発生量を抑制するように、蒸発圧力を調整する。なお、具体的には、蒸発器9における冷水出口温度の設定値を調整することで、蒸発圧力を制御する。
上記のように、蒸発圧力調整機能によれば、冷媒ガス溶け出し量を考慮して蒸発圧力を段階的にまたは徐々に下げていくので、フォーミングによる影響を低下させることが可能となる。
そして、上述した蒸発圧力調整機能と本実施形態に係る油ポンプ制御機能とを併せ持つことにより、フォーミング発生による圧縮機3等への影響を更に低減することができるという効果を奏する。