特許第6946252号(P6946252)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6946252
(24)【登録日】2021年9月17日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】磁気記憶装置
(51)【国際特許分類】
   G11C 11/16 20060101AFI20210927BHJP
   H01L 21/8239 20060101ALI20210927BHJP
   H01L 27/105 20060101ALI20210927BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20210927BHJP
【FI】
   G11C11/16 240
   H01L27/105 447
   H01L43/08 Z
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-202186(P2018-202186)
(22)【出願日】2018年10月26日
(65)【公開番号】特開2020-68046(P2020-68046A)
(43)【公開日】2020年4月30日
【審査請求日】2020年9月4日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人 科学技術振興機構「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」「無充電で長期間使用できる究極のエコIT機器の実現」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157901
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(72)【発明者】
【氏名】井口 智明
(72)【発明者】
【氏名】鴻井 克彦
(72)【発明者】
【氏名】下村 尚治
(72)【発明者】
【氏名】杉山 英行
(72)【発明者】
【氏名】與田 博明
【審査官】 堀田 和義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−112351(JP,A)
【文献】 特開2014−45196(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/159432(WO,A1)
【文献】 特開2018−22796(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/025838(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11C 11/16
H01L 21/8239
H01L 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶部と、
制御部と、
を備え、
前記記憶部は、
第1部分と、第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分と、を含む第1導電部材と、
前記第3部分に設けられた複数の磁気素子と、
を含み、
前記制御部は、前記第1部分、前記第2部分、及び、前記複数の磁気素子と電気的に接続され、
前記複数の磁気素子は、第1〜第N磁気素子(Nは、以上の整数)を含み、
前記第1〜前記第N磁気素子は順に並び、
前記制御部は、前記第1〜前記第N磁気素子を第1記憶状態とする第1動作を実施し、
前記制御部は、前記第1〜前記第N磁気素子に含まれる第i磁気素子(iは1以上(N−1)以下の整数)を前記第1記憶状態とは異なる第2記憶状態とするときに第2動作を実施し、
前記第1動作において、前記制御部は、前記第1部分を第1電位とし前記第2部分を第2電位としつつ、前記第1〜前記第N磁気素子のそれぞれの電位を第3電位または浮遊電位とし、前記第2電位は前記第1電位よりも高く、前記第3電位は前記第1電位とは異なり前記第2電位とは異なり、
前記第2動作において、前記制御部は、前記第1部分及び前記第2部分を第1電位状態としつつ、第(i+1)磁気素子を第4電位に設定し、前記第i磁気素子を第5電位に設定して、前記第i磁気素子を前記第2記憶状態とし、
前記第1電位状態において、前記第1部分は第6電位であり前記第2部分は第7電位である、または、前記第1部分及び前記第2部分の少なくともいずれかは浮遊電位であり、
前記制御部は、前記第2動作を、前記iを順に変化させて行う、磁気記憶装置。
【請求項2】
前記第(i+1)磁気素子と前記第1部分との間の距離は、第i磁気素子と前記第1部分との間の距離よりも長い、請求項記載の磁気記憶装置。
【請求項3】
前記第(i+1)磁気素子と前記第1部分との間の距離は、第i磁気素子と前記第1部分との間の距離よりも短い、請求項記載の磁気記憶装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2動作を、前記iを1から前記(N−1)へ上昇させて順に行う、請求項またはに記載の磁気記憶装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第2動作を、前記iを前記(N−1)から1へ下降させて順に行う、請求項またはに記載の磁気記憶装置。
【請求項6】
前記第1電位は、前記第2電位と前記第3電位の間である、請求項1〜のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【請求項7】
前記第6電位は、前記第4電位と前記第5電位との間であり、
前記第7電位は、前記第4電位と前記第5電位との間である、請求項1〜のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【請求項8】
複数の前記記憶部が設けられ、
前記制御部は、前記複数の記憶部の少なくとも2つについて前記第1動作を並列で実施した後に、前記複数の記憶部の前記少なくとも2つについて前記第2動作を並列で実施する、請求項1〜のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記憶装置において、安定した動作が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6270934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、安定した動作が可能な磁気記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、磁気記憶装置は、記憶部及び制御部を含む。前記記憶部は、第1部分と、第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分と、を含む第1導電部材と、前記第3部分に設けられた複数の磁気素子と、を含む。前記制御部は、前記第1部分、前記第2部分、及び、前記複数の磁気素子と電気的に接続される。前記制御部は、前記複数の磁気素子を第1記憶状態とする第1動作を実施する。前記制御部は、複数の磁気素子の1つを前記第1記憶状態とは異なる第2記憶状態とするときに第2動作を実施する。前記第1動作において、前記制御部は、前記第1部分を第1電位とし前記第2部分を第2電位としつつ、前記複数の磁気素子のそれぞれの電位を第3電位または浮遊電位とする。前記第2電位は前記第1電位よりも高い。前記第3電位は前記第1電位とは異なり前記第2電位とは異なる。前記第2動作において、前記制御部は、前記第1部分及び前記第2部分を第1電位状態としつつ、前記複数の磁気素子の1つを第4電位に設定し、前記複数の磁気素子の別の1つを第5電位に設定して、前記複数の磁気素子の前記別の1つを前記第2記憶状態とする。前記第1電位状態において、前記第1部分は第6電位であり前記第2部分は第7電位であり、前記第7電位は前記第6電位以上である、または、前記第1部分及び前記第2部分の少なくともいずれかは浮遊電位である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式図である。
図2図2は、第1実施形態に係る磁気記憶装置の動作を例示する模式図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、第1実施形態に係る磁気記憶装置の動作を例示する模式図である。
図4図4(a)及び図4(b)は、第1実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式図である。
図5図5は、第1実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式図である。
図6図6は、第1実施形態に係る磁気記憶装置の動作を例示する模式図である。
図7図7は、第1実施形態に係る磁気記憶装置の動作を例示する模式図である。
図8図8は、第1実施形態に係る磁気記憶装置の動作を例示する模式図である。
図9図9は、実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式図である。
図10図10は、第3実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式図である。
図11図11は、第4実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式図である。
図1に示すように、実施形態に係る磁気記憶装置110は、記憶部MP及び制御部70を含む。
【0009】
記憶部MPは、第1導電部材21と、複数の磁気素子MEと、を含む。第1導電部材21は、第1部分21a、第2部分21b及び第3部分21cを含む。第3部分21cは、第1部分21aと第2部分21bとの間に設けられる。例えば、第3部分21cは、第1部分21aと連続し、第2部分21bと連続する。
【0010】
複数の磁気素子MEは、第3部分21cに設けられる。例えば、第3部分21cの上に、複数の磁気素子MEが設けられる。例えば、第3部分21cの下に、複数の磁気素子MEが設けられても良い。例えば、第3部分21cと、複数の磁気素子MEと、は電気的に接続される。例えば、複数の磁気素子MEは、第3部分21cと接しても良い。例えば、複数の磁気素子MEと、第3部分21cと、の間に別の層が設けられても良い。
【0011】
制御部70は、第1部分21a、第2部分21b、及び、複数の磁気素子MEと電気的に接続される。
【0012】
例えば、制御部70は、第1部分21aの電位及び第2部分21bの電位の少なくともいずれかを制御可能である。制御部70は、第1部分21a及び第2部分21bを介して第1導電部材21に電流を供給可能である。例えば、制御部70は、複数の磁気素子MEのそれぞれの電位を制御可能である。例えば、制御部70は、複数の磁気素子MEのそれぞれに電流を供給しても良い。
【0013】
例えば、配線70aにより、制御部70と第1部分21aとが電気的に接続される。例えば、配線70bにより、制御部70と第2部分21bとが電気的に接続される。例えば、配線70cにより、制御部70と、複数の磁気素子MEのそれぞれと、が、電気的に接続される。
【0014】
この例では、配線70cの電流経路にスイッチSWが設けられている。スイッチSWに動作により、制御部70による、複数の磁気素子MEのそれぞれの制御が行われる。例えば、スイッチSWのゲートの電位が制御部70により制御され、スイッチSWにおいて、導通状態(オン状態)または非導通状態(オフ状態)が切り替えられる。
【0015】
この例では、複数の磁気素子MEは、第1〜第N磁気素子M(1)〜M(N)(Nは、2以上の整数)を含む。第1〜第N磁気素子M(1)〜M(N)は、順に並ぶ。この例では、第1〜第N磁気素子M(1)〜M(N)は、第1部分21aから第2部分21bに向けて、順に並ぶ。
【0016】
第1〜第N磁気素子M(1)〜M(N)に含まれる1つの磁気素子MEを第i磁気素子とする。「i」は、1以上、N以下の整数である。例えば、第(i+1)磁気素子M(i+1)と第1部分21aとの間の距離は、第i磁気素子M(i)と第1部分21aとの間の距離よりも長い。
【0017】
例えば、複数の磁気素子ME(第1〜第N磁気素子M(1)〜M(N)のそれぞれは、第1磁性層11、第1対向磁性層11c及び第1非磁性層11nを含む。第1対向磁性層11cは、第1磁性層11と、第1導電部材21(第3部分21c)と、の間に設けられる。第1非磁性層11nは、第1磁性層11と第1対向磁性層11cとの間に設けられる。
【0018】
第1磁性層11及び第1対向磁性層11cは、例えば、強磁性層である。第1磁性層11及び第1対向磁性層11cは、例えば、Fe、Co及びNiよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0019】
第1非磁性層11nは、例えば、Mg、Ca、Sr、Ti、V、Nb及びAlよりなる群から選択された少なくとも1つと、酸素と、を含む。第1非磁性層11nは、例えば、MgOを含む。第1非磁性層11nは、トンネルバリア層である。
【0020】
1つの例において、第1非磁性層11nと第1対向磁性層11cとは、互いに接する。第1非磁性層11nと第1対向磁性層11cとの間に別の層が設けられても良い。1つの例において、第1磁性層11と第1対向磁性層11cとは、互いに接する。第1磁性層11と第1対向磁性層11cとの間に別の層が設けられても良い。
【0021】
第1導電部材21は、例えば、Ta、W、Pt及びAuよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0022】
後述すように、例えば、第1導電部材21の第1部分21aと第2部分21bとの間に、電流が供給される。この電流により、磁気素子MEの電気抵抗を変化させることができる。例えば、電流により、第1対向磁性層11cにおいて、第1導電部材21からスピン軌道トルクの作用が生じると考えられる。スピン軌道トルクの作用により、第1対向磁性層11cの磁化の向きが制御できる。一方、第1磁性層11の磁化の向きは、実質的に固定される。例えば、電流により、第1対向磁性層11cの磁化と、第1磁性層11の磁化と、の間の角度が変化する。これにより、磁気素子MEの電気抵抗が変化すると考えられる。
【0023】
複数の磁気素子MEのそれぞれは、1つの記憶セルに対応する。第1磁性層11は、例えば、参照層に対応する。第1対向磁性層11cは、磁化自由層(記憶層)に対応する。制御部70は、複数の磁気素子ME(例えば、第1〜第N磁気素子M(1)〜M(N))のそれぞれに含まれる第1磁性層11と電気的に接続される。
【0024】
磁気素子MEにおける複数の電気抵抗の状態は、記憶セルにおける複数の記憶状態に対応する。制御部70により、複数の磁気素子MEにおける電気抵抗の状態が制御される。
【0025】
制御部70は、第1動作及び第2動作を行う。第1動作においては、制御部70は、複数の磁気素子MEを第1記憶状態とする。第2動作において、制御部70は、複数の磁気素子MEのいずれかを第2記憶状態とする。第2記憶状態は、第1記憶状態とは異なる。
【0026】
複数の磁気素子MEの1つにおいて、第1記憶状態における電気抵抗は、第2記憶状態における電気抵抗とは異なる。第1記憶状態における電気抵抗は、高抵抗状態及び低抵抗状態の一方である。第2記憶状態における電気抵抗は、例えば、高抵抗状態及び低抵抗状態の他方である。高抵抗状態における電気抵抗は、低抵抗状態における電気抵抗よりも高い。例えば、第1記憶状態は高抵抗状態であり、第2記憶状態は低抵抗状態である。例えば、第1記憶状態において、第1磁性層11の磁化と、第1対向磁性層11cの磁化とは、「反平行」である。例えば、第2記憶状態において、第1磁性層11の磁化と、第1対向磁性層11cの磁化とは、「平行」である。
【0027】
例えば、第1記憶状態は、「0」及び「1」の一方である。例えば、第2記憶状態は、「0」及び「1」の他方である。実施形態において、これらの記憶状態が入れ替えられても良い。
【0028】
実施形態においては、第1動作により、例えば、複数の磁気素子MEが第1記憶状態にされる。そして、例えば、複数の磁気素子MEの1つを第2記憶状態とするときに、複数の磁気素子MEのその1つについて第2動作が行われる。例えば、複数の磁気素子MEのその1つが第1記憶状態のままで良い場合には、上記の第2動作が行われない。後述するように、例えば、複数の磁気素子MEのその1つが第1記憶状態のままで良い場合には、例えば第2動作とは異なる第3動作が行われても良い。
【0029】
以下、磁気記憶装置110における制御部70の動作の例について説明する。
【0030】
図2は、第1実施形態に係る磁気記憶装置の動作を例示する模式図である。
図2は、第1動作OP1に対応する。第1動作OP1において、制御部70は、第1部分21aを第1電位V1とし第2部分21bを第2電位V2としつつ、複数の磁気素子MEのそれぞれの電位を第3電位V3または浮遊電位FLTとする。例えば、第2電位V2は、第1電位V1よりも高い。第3電位V3は第1電位V1とは異なり、第2電位V2とは異なる。
【0031】
例えば、第1電位V1は、第2電位V2と第3電位V3の間である。1つの例において、第1電位V1は、例えば、0V(ボルト)であり、第2電位V2は、例えば、0.2Vである。0Vは、例えば、グランド電位である。このとき、第3電位V3は、例えば、−0.8Vである。例えば、第3電位V3は、第1電位V1よりも低い。
【0032】
例えば、スイッチSWが導通状態(オン状態)とされ、制御部70により、複数の磁気素子MEの第1磁性層11は、第3電位V3に設定される。または、スイッチSWが非導通状態とされ、複数の磁気素子MEの第1磁性層11は、浮遊電位FLTとされる。制御部70は、第1動作OP1により、複数の磁気素子MEを第1記憶状態ST1とする。例えば、第1〜第N磁気素子M(1)〜M(N)は、第1記憶状態ST1となる。
【0033】
第1動作OP1においては、上記のように、第2部分21bの電位が第1部分21aの電位よりも高くされる。これにより、第1導電部材21中を電流I1が流れる。電流I1は、第2部分21bから第1部分21aへの向きを有する。このように、第1動作OP1において、制御部70は、第2部分21bから第1部分21aへの向きの電流I1を第1導電部材21に供給する。
【0034】
電流I1により、第1対向磁性層11cにスピントランスファトルクが作用する。この作用により、第1対向磁性層11cの向きが特定の方向になる。一方、複数の磁気素子MEにおいて、第1磁性層11の磁化の向きは実質的に固定される。
【0035】
第1動作OP1において、複数の磁気素子MEの第1対向磁性層11cにおける磁化の向きが、特定の向きに設定され、これにより、複数の磁気素子MEに第1記憶状態ST1が形成される。第1動作OP1は、複数の磁気素子MEに第1記憶状態ST1を書き込む動作に対応する。
【0036】
図3(a)及び図3(b)は、第1実施形態に係る磁気記憶装置の動作を例示する模式図である。
図3(a)は、第2動作OP2に対応する。第2動作OP2において、制御部70は、第1部分21a及び第2部分21bを第1電位状態としつつ、複数の磁気素子MEの1つを第4電位V4に設定し、複数の磁気素子MEの別の1つを第5電位V5に設定する。これにより、制御部70は、複数の磁気素子MEの上記の別の1つを第2記憶状態ST2とする。このとき、複数の磁気素子MEの上記の1つは、第1記憶状態ST1が維持される。この例では、第1磁気素子M(2)の第1磁性層11が第4電位V4に設定され、第2磁気素子M(1)の第1磁性層11が第5電位V5に設定される。
【0037】
既に説明したように、第2記憶状態ST2は、第1記憶状態ST1とは異なる。第2動作OP2は、複数の磁気素子MEの上記の別の1つを第2記憶状態ST2に書き込む(書き換える)動作に対応する。
【0038】
上記の第1電位状態の1つの例において、第1部分21aは第6電位V6であり第2部分21bは第7電位V7である。第7電位V7は第6電位V6以上である。または、第1電位状態の別の例において、第1部分21a及び第2部分21bの少なくともいずれかは浮遊電位FLTである。第7電位V7は、第6電位V6以上である。
【0039】
第7電位V7が第6電位V6よりも高いとき、第1導電部材21に電流が流れても良い。この電流の向きは、図2に例示した電流I1の向きと同じである。一方、第7電位V7が第6電位V6と同じときには、第1部分21aと第2部分21bとの間に、電流I1は、実質的に流れない。第1部分21a及び第2部分21bの少なくともいずれかが浮遊電位FLTのときも、第1部分21aと第2部分21bとの間に、電流I1は、実質的に流れない。
【0040】
例えば、第6電位V6は、第4電位V4と第5電位V5との間である。例えば、第7電位V7は、第4電位V4と第5電位V5との間である。1つの例において、第6電位V6及び第7電位V7は、0Vである。第4電位V4は、例えば、0.8Vである。第5電位V5は、例えば、−0.8Vである。
【0041】
このような第1電位状態が設けられた状態で、複数の磁気素子MEが第4電位V4または第5電位V5に設定される。これにより、第5電位V5に設定された磁気素子ME(複数の磁気素子MEの上記の別の1つ)は、第2記憶状態ST2となる。第4電位V4に設定された磁気素子ME(複数の磁気素子MEの上記の1つ)は、第2動作OP2の後において、第1記憶状態ST1を維持する。
【0042】
例えば、第2動作OP2において、第4電位V4に設定された磁気素子MEから、第5電位V5に設定された磁気素子MEに向けて電流I2が流れると考えられる。この電流I2が第5電位V5に設定された磁気素子MEに流れることで、この磁気素子MEが第2記憶状態ST2に移行すると考えられる。この移行は、例えば、スピントランスファトルクの作用、及び、電圧による磁気異方性変化の作用の少なくともいずれかによると考えられる。このような作用により、例えば、第1対向磁性層11cの磁化の向きが反転する。第1対向磁性層11cから第1磁性層11に向けて電流I2が流れることで、第2記憶状態ST2への移行が生じると考えられる。
【0043】
一方、第4電位V4に設定された磁気素子MEにおいては、電流I2は、第1磁性層11から第1対向磁性層11cへの向きを有する。このとき、第1対向磁性層11cの磁化の向きの反転が生じない。
【0044】
実施形態においては、例えば、第1動作OP1において第1導電部材21に供給される電流により、第1記憶状態が形成される。一方、第2動作OP2において複数の磁気素子MEの1つと別の1つとが異なる電位に設定され、この電位差により、第2記憶状態ST2が形成される。複数の記憶状態が、異なる動作により形成される。例えば、異なる記憶状態のそれぞれが安定して形成される。実施形態によれば、安定した動作が可能な磁気記憶装置を提供できる。
【0045】
上記の第2動作OP2は、複数の磁気素子MEの上記の別の1つ(第1磁気素子M(1))について行われ、第2記憶状態ST2が得られる。複数の磁気素子MEの他においては、第1記憶状態ST1が維持される。
【0046】
1つの例において、第3磁気素子M(3)〜第N磁気素子M(N)は、第4電位V4に設定される(図3(a)参照)。第3磁気素子M(3)〜第N磁気素子M(N)は、第8電位V8に設定されても良い。第8電位V8は、第5電位V5とは異なる。第3磁気素子M(3)〜第N磁気素子M(N)は、浮遊電位FLTに設定されても良い。これにより、第3磁気素子M(3)〜第N磁気素子M(N)において、第1記憶状態ST1が維持される。
【0047】
このようにして、複数の磁気素子MEの1つ(上記の別の1つ)の記憶状態が、第2記憶状態ST2に書き込まれる。
【0048】
一方、複数の磁気素子MEの1つ(上記の別の1つであり、この例では、第1磁気素子M(1))の記憶状態を第2記憶状態ST2にせず、第1記憶状態ST1が維持される場合は、上記の第2動作OP2が実施されない。または、以下に説明する第3動作OP3が実施される。
【0049】
図3(b)は、第3動作OP3に対応する。図3(b)に示すように、制御部70は、複数の磁気素子MEの上記の1つ(この例では、第1磁気素子M(1))を第2記憶状態ST2としないときに、第3動作OP3を実施する。第3動作OP3において、複数の磁気素子MEの上記の1つ(例えば、第2磁気素子M(2))の電位の状態を、複数の磁気素子MEの上記の別の1つ(例えば、第1磁気素子M(1))の電位の状態と、実質的に同じにする。
【0050】
第3動作OP3の1つの例において、第1磁気素子M(1)及び第2磁気素子M(2)の両方は、第4電位V4、または、第5電位V5、または、浮遊電位FLTにされる。このとき、第3磁気素子M(3)〜第N磁気素子M(N)は、第4電位V4、第5電位V5、第8電位V8または浮遊電位FLTに設定されても良い。
【0051】
一方、第3動作OP3において、第1部分21a及び第2部分21bは、上記の第1電位状態とされても良い。例えば、第1導電部材21の第1部分21aは第6電位V6に設定され、第2部分21bは、第7電位V7に設定されても良い。または、第1部分21a及び第2部分21bの少なくともいずれかは、浮遊電位FLTに設定されても良い。第7電位V7は、第6電位V6以上である。
【0052】
このように、実施形態においては、第1動作OP1を実施して複数の磁気素子MEを第1記憶状態ST1にした後に、第2動作OP2が実施されて、複数の磁気素子MEの1つが第2記憶状態ST2にされる。複数の磁気素子MEにおいて、例えば順番に、第2動作OP2を実施することで、複数の磁気素子MEのうちの所望の素子を第2記憶状態ST2にすることができる。
【0053】
例えば、第1磁気素子M(1)についての第2動作OP2の実施の後に、第2磁気素子M(2)についての「第2動作の実施」が行われる。「第2動作の実施」は、「第2動作OP2を実施せずに第1記憶状態ST1を維持すること」、または、「第3動作OP3の実施により第1記憶状態ST1を維持すること」を含む。
【0054】
例えば、複数の磁気素子MEにおいて、「第2動作の実施」が順番に実施される。以下、任意の磁気素子MEに第2動作OP2が実施される例について説明する。以下に説明する第2動作OP2または第3動作OP3は、第1動作OP1の後に実施される。
【0055】
図4(a)及び図4(b)は、第1実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式図である。
図4(a)に示すように、制御部70は、第i磁気素子M(i)を第2記憶状態ST2とするときに、第2動作OP2を実施する。第i磁気素子M(i)は、第1〜第N磁気素子M(1)〜M(N)に含まれる。「i」は、1以上(N−1)以下である。第i磁気素子M(i)は、第1磁気素子M(1)〜第(N−1)磁気素子M(N−1)の1つである。
【0056】
図4(a)の例では、第i磁気素子M(i)は、第2磁気素子M(2)に対応し、第(i+1)磁気素子M(i+1)は、第3磁気素子M(3)に対応する。
【0057】
このとき、図4(a)に示すように、第2動作OP2において、制御部70は、第1部分21a及び第2部分21bを上記の第1電位状態としつつ、第(i+1)磁気素子M(i+1)を第4電位V4に設定し、第i磁気素子M(i)を第5電位V5に設定する。これにより、第i磁気素子M(i)が第2記憶状態ST2となる。第7電位V7は、第6電位V6以上である。
【0058】
第2動作OP2において、例えば、第(i+1)磁気素子M(i+1)から第i磁気素子M(i)への電流I2が流れる。例えば、第2動作OP2において、第i磁気素子M(i)において、第3部分21cから第1磁性層11に向かう電流(電流I2)が流れる。
【0059】
第i磁気素子M(i)の第1記憶状態ST1における電気抵抗は、第i磁気素子M(i)の第2記憶状態ST2における電気抵抗とは異なる。
【0060】
制御部70は、このような第2動作OP2を、上記の「i」を1から(N−1)へ上昇させて順に行われても良い。
【0061】
上記の第i磁気素子M(i)において第2動作OP2が実施されているときにおける、他の磁気素子MEの状態の例について、以下に説明する。
【0062】
図4(a)に示すように、上記の「i」が2以上である場合、第2動作OP2において、制御部70は、第1部分21a及び第2部分21bを上記の第1電位状態としつつ、第(i−1)磁気素子M(i−1)を第4電位V4または浮遊電位FLTに設定する。図4(a)の例では、第(i−1)磁気素子M(i−1)は、第1磁気素子M(1)である。第1磁気素子M(1)は、第1記憶状態ST1が維持されていても良く、第2記憶状態ST2に移行した後でも良い。第(i−1)磁気素子M(i−1)(この例では、第1磁気素子M(1))が第4電位V4または浮遊電位FLTに設定されることで、第(i−1)磁気素子M(i−1)における記憶状態が維持される。
【0063】
例えば、第2動作OP2が実施されているときに、第1〜第(i−2)磁気素子M(1)〜M(i−2)において、第(i−1)磁気素子M(i−1)と同様に、第4電位V4または浮遊電位FLTに設定されても良い。
【0064】
一方、図4(a)に示すように、上記の「i」が、(N−2)以下である場合、第2動作OP2において、制御部70は、第1部分21a及び第2部分21bを上記の第1電位状態としつつ、第(i+2)磁気素子M(i+2)〜第N磁気素子M(N)を第8電位V8または浮遊電位FLTに設定する。第8電位V8は、第5電位V5とは異なる。第8電位V8は、第4電位V4と同じでも良い。これにより、第(i+2)磁気素子M(i+2)〜第N磁気素子M(N)において、第1記憶状態ST1が維持される。
【0065】
制御部70は、第i磁気素子M(i)を第2記憶状態ST2としないときに上記の第2動作OP2を実施しない。または、制御部70は、第i磁気素子M(i)を第2記憶状態ST2としないときに、以下の第3動作OP3を実施しても良い。
【0066】
図4(b)は、第3動作OP3に対応する。図4(b)に示すように、第3動作OP3において、第i磁気素子M(i)を第2記憶状態ST2としないときに、第i磁気素子M(i)の電位の状態を、第(i+1)磁気素子M(i+1)の電位の状態と、実質的に同じにする。
【0067】
第3動作OP3の1つの例において、第i磁気素子M(i)及び第(i+1)磁気素子M(i+1)の両方は、第4電位V4、または、第5電位V5、または、浮遊電位FLTにされる。このとき、第1〜第(i−1)磁気素子M(i−1)も、第4電位V4、または、第5電位V5、または、浮遊電位FLTに設定されても良い。第1〜第(i−1)磁気素子M(i−1)の記憶状態が維持される。このとき、第(i+2)磁気素子M(i+2)〜第N磁気素子M(N)は、第4電位V4、第5電位V5、第8電位V8または浮遊電位FLTに設定されても良い。第8電位V8は、第4電位V4と同じでも良い。第(i+2)磁気素子M(i+2)〜第N磁気素子M(N)において、第1記憶状態ST1が維持される。
【0068】
上記の第3動作OP3において、第1部分21a及び第2部分21bは、上記の第1電位状態とされても良い。例えば、第1導電部材21の第1部分21aは第6電位V6に設定され、第2部分21bは、第7電位V7に設定されても良い。または、第1部分21a及び第2部分21bは、浮遊電位FLTに設定されても良い。第7電位V7は、第6電位V6以上である。
【0069】
このような第2動作OP2または第3動作OP3を順次行った後、最後の磁気素子ME(この例では、第N磁気素子M(N))について、以下の第4動作OP4が実施されても良い。
【0070】
図5は、第1実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式図である。
図5は、第4動作OP4を例示している。図5に示すように、制御部70は、第N磁気素子M(N)を第2記憶状態ST2とする場合に、第2動作OP2の後に第4動作OP4をさらに実施する。第4動作OP4において、制御部70は、第1部分21aの電位を第2部分21bの電位以下としつつ、第N磁気素子M(N)の電位を第9電位V9とする。第9電位V9は、第2部分21bの電位よりも低い。この第4動作OP4は、例えば、第1〜第(N−1)磁気素子M(N−1)の少なくとも一部に関する「第2動作の実施」の後に行われる。
【0071】
第4動作OP4において、第1部分21a及び第2部分21bは、上記の第1電位状態とされても良い。例えば、第1導電部材21の第1部分21aは第6電位V6に設定され、第2部分21bは、第7電位V7に設定されても良い。または、第1部分21a及び第2部分21bは、浮遊電位FLTに設定されても良い。第7電位V7は、第6電位V6以上である。
【0072】
第4動作OP4において、例えば、第2部分21bからの電流I4が第N磁気素子M(N)に流れる。この例では、この電流I4は、第3磁気素子M(N)において、第1対向磁性層11cから第1磁性層11に向かって流れる。これにより、第N磁気素子M(N)において、第2記憶状態ST2が形成される。
【0073】
1つの例において、制御部70は、第2動作OP2を、上記の「i」を1から(N−1)へ上昇させて順に行う。実施形態において、制御部70は、第2動作OP2を、上記の「i」を(N−1)から1へ下降させて順に行っても良い。
【0074】
上記の例においては、第1部分21aから第2部分21bへの向きに、第1〜第N磁気素子M(1)〜M(N)がこの順で並ぶ。第1磁気素子M(1)と第1部分21aとの間の距離は、第N磁気素子M(N)と第1部分21aとの間の距離よりも短い。そして、第1〜第N磁気素子M(1)〜M(N)の順に、「第2動作の実施」が逐次行われる。
【0075】
実施形態において、第1〜第N磁気素子M(1)〜M(N)が逆の順に並んでも良い。
【0076】
図6は、第1実施形態に係る磁気記憶装置の動作を例示する模式図である。
図6に示すように、実施形態に係る磁気記憶装置111において、第1磁気素子M(1)と第1部分21aとの間の距離は、第N磁気素子M(N)と第1部分21aとの間の距離よりも長い。図6においては、第1〜第N磁気素子M(1)〜M(N)は、図2に例示した順番とは逆に並ぶ。
【0077】
このとき、図6に示すように、第1〜第N磁気素子M(1)〜M(N)を第1記憶状態ST1にする第1動作OP1が実施される。第1動作OP1において、制御部70は、第1部分21aを第1電位V1とし第2部分21bを第2電位V2としつつ、複数の磁気素子MEのそれぞれの電位を第3電位V3または浮遊電位FLTとする。この場合も、第2電位V2は第1電位V1よりも高い。第3電位V3は、第1電位V1とは異なり第2電位V2とは異なる。このような第1動作OP1により、第1〜第N磁気素子M(1)〜M(N)において、第1記憶状態ST1が生じる。
【0078】
図7は、第1実施形態に係る磁気記憶装置の動作を例示する模式図である。
図7は、第2動作OP2に対応する。制御部70は、第i磁気素子M(i)(iは1以上(N−1)以下の整数)を第2記憶状態ST2とするときに、第2動作OP2を実施する。この例では、第i磁気素子M(i)は、第2磁気素子M(2)である。第(i+1)磁気素子M(i+1)は、第3磁気素子M(3)である。
【0079】
第2動作OP2において、制御部70は、第1部分21a及び第2部分21bを第1電位状態としつつ、第(i+1)磁気素子M(i+1)を第4電位V4に設定し、第i磁気素子M(i)を第5電位V5に設定する。これにより、第i磁気素子M(i)が第2記憶状態ST2となる。
【0080】
制御部70は、第i磁気素子M(i)を第2記憶状態ST2としないときに、第2動作OP2を実施しない、または、以下の第3動作OP3を実施する。
【0081】
図8は、第1実施形態に係る磁気記憶装置の動作を例示する模式図である。
図8は、第3動作OP3に対応する。制御部70は、第3動作OP3において、第i磁気素子M(i)の電位の状態を、第(i+1)磁気素子M(i+1)の電位の状態と、実質的に同じにする。例えば、第i磁気素子M(i)及び第(i+1)磁気素子M(i+1)の両方は、第4電位V4、または、第5電位V5、または、浮遊電位FLTにされる。このとき、他の磁気素子MEは、第4電位V4、第5電位V5、第8電位V8または浮遊電位FLTに設定されても良い。第8電位V8は、第4電位V4と同じでも良い。
【0082】
さらに第N磁気素子M(N)において、上記の第4動作OP4が行われても良い。この場合の第4動作OP4においては、制御部70は、第1部分21aの電位を第2部分21bの電位以下としつつ、第N磁気素子M(N)の電位を、第1部分21aの電位よりも低くする。このような第4動作OP4により、第N磁気素子M(N)を第2記憶状態ST2にできる。
【0083】
このような動作が逐次行われることで、逆の順番に並ぶ第1〜第N磁気素子M(1)〜M(N)を所望の記憶状態にすることができる。
【0084】
上記の実施形態において、第1記憶状態ST1の形成において、例えば、スピンホール効果によるスピントランスファトルクが利用される。第1記憶状態ST1の形成においては、例えば、第1導電部材21に流れる電流I1が利用される。
【0085】
第2記憶状態ST2の形成において、例えば、スピントランスファトルク、及び、電圧による磁気異方性変化の少なくともいずれかが作用すると考えられる。第2記憶状態ST2の形成においては、例えば、磁気素子MEに流れる電流I2が利用される。この電流は、例えば、第1対向磁性層11cから第1磁性層11への向きを有する。
【0086】
磁気素子MEにおいて、第1対向磁性層11cと第1磁性層11との間の面積抵抗は、例えば、1Ω・μm以上200Ω・μm以下である。1つの例において、複数の磁気素子MEの1つの平面形状の長さ(例えば1辺の長さ)は、例えば、10nm以上100nm以下である。1つの例において、複数の磁気素子MEの間の距離は、例えば、10nm以上100nm以下である。
【0087】
一方、第1導電部材21の電気抵抗率は、例えば、50μΩ・cm以上1000μΩ・cm以下である。1つの例において、第1導電部材21の厚さは、例えば、20nm以上200nm以下である。1つの例において、第1導電部材21の幅は、例えば、5nm以上20nm以下である。
【0088】
(第2実施形態)
第2実施形態においては、第2記憶状態ST2の形成に関する第2動作OP2において、第1動作OP1における電流の向きは逆向きの電流が第1導電部材に流れても良い。第2実施形態に係る磁気記憶装置における記憶部MPの構成は、第1実施形態に係る磁気記憶装置における記憶部MPの構成(例えば図1参照)と同じでも良い。
【0089】
第2実施形態に係る磁気記憶装置は、例えば、記憶部MP及び制御部70を含む(図1参照)。この場合も、記憶部MPは、第1導電部材21、及び、複数の磁気素子MEを含む。第1導電部材21は、第1部分21aと、第2部分21bと、第1部分21aと第2部分21bとの間の第3部分21cと、を含む。複数の磁気素子MEは、第3部分21cに設けられる(図1参照)。制御部70は、第1部分21a、第2部分21b、及び、複数の磁気素子ME(第1磁性層11)と電気的に接続される。
【0090】
複数の磁気素子MEは、第1〜第N磁気素子M(1)〜M(N)を含む。「N」は、2以上の整数である。第1〜第N磁気素子M(1)〜M(N)は、順に並ぶ。
【0091】
制御部70は、第1〜第N磁気素子M(1)を第1記憶状態ST1とする第1動作OP1を実施する(例えば、図2参照)。
【0092】
制御部70は、第i磁気素子M(i)を第2記憶状態ST2とするときに、第2動作OP2を実施する(例えば、図3(a)参照)。第i磁気素子M(i)は、第1〜第N磁気素子M(1)〜M(N)に含まれる。「i」は、1以上(N−1)以下の整数である。第2記憶状態ST2は、第1記憶状態ST1とは異なる。第2記憶状態ST2における第i磁気素子M(i)の電気抵抗は、第1記憶状態ST1における第i磁気素子M(i)の電気抵抗とは異なる。
【0093】
第1動作OP1において、制御部70は、第1部分21aを第1電位V1とし第2部分21bを第2電位V2としつつ、第1〜第N磁気素子M(1)のそれぞれの電位を第3電位V3または浮遊電位FLTとする(例えば、図2参照)。第2電位V2は、第1電位V1よりも高い。第3電位V3は、第1電位V1とは異なり、第2電位V2とは異なる。
【0094】
第2動作OP2において、制御部70は、第1部分21a及び第2部分21bを第1電位状態としつつ、第(i+1)磁気素子M(i+1)を第4電位V4に設定し、第i磁気素子M(i)を第5電位V5に設定して、第i磁気素子M(i)を第2記憶状態ST2とする(例えば、図4(a)参照)。
【0095】
上記の第1電位状態において、第1部分21aは第6電位V6であり、第2部分21bは第7電位V7である。または、第1電位状態において、第1部分21a及び第2部分21bの少なくともいずれかは浮遊電位FLTである。例えば、制御部70は、このような第2動作OP2を、「i」を順に変化させて行う。
【0096】
既に説明した第1実施形態においては、第7電位V7は第6電位V6以上である。これに対して、第2実施形態においては、第1部分21aの第6電位V6は、第2部分21bの第7電位V7よりも高くても良い。この場合、第2実施形態における第2動作OP2において、第1導電部材21に第1部分21aから第2部分21bへの向きを有する電流が流れても良い。
【0097】
第2実施形態においては、第2動作OP2(第2記憶状態ST2の形成)において、例えば、スピントランスファ効果に加えて、スピンホール効果が利用される。第2動作OP2において第1導電部材21に流れる電流の向きは、第1動作OP1(第1記憶状態ST1の形成)において第1導電部材21に流れる電流の向きとは逆である。
【0098】
このような第2動作OP2が、「i」を変化させて逐次行われることで、第2記憶状態ST2とすべき磁気素子MEが第2記憶状態ST2に設定される。このようにして、第2記憶状態ST2が書き込まれる。
【0099】
第2実施形態においても、例えば、異なる記憶状態のそれぞれが安定して形成される。実施形態によれば、安定した動作が可能な磁気記憶装置を提供できる。
【0100】
第2実施形態の1つの例において、第(i+1)磁気素子M(i+1)と第1部分21aとの間の距離は、第i磁気素子M(i)と第1部分21aとの間の距離よりも長い。例えば、第1〜第N磁気素子M(1)〜M(N)は、この順で、第1部分21aから第2部分21bへの向きに並ぶ(例えば、図3(a)参照)。
【0101】
第2実施形態の別の例において、第(i+1)磁気素子M(i+1)と第1部分21aとの間の距離は、第i磁気素子M(i)と第1部分21aとの間の距離よりも短くても良い。例えば、第1〜第N磁気素子M(1)〜M(N)は、この順で、第2部分21bから第1部分21aへの向きに並ぶ(例えば、図7参照)。
【0102】
第2実施形態の1つの例において、例えば、制御部70は、第2動作OP2を、「i」を1から(N−1)へ上昇させて順に行う(図4(a)参照)。
【0103】
第2実施形態の別の例において、制御部70は、第2動作OP2を、「i」を(N−1)から1へ下降させて順に行っても良い。
【0104】
第2実施形態において、「i」が2以上である場合、第2動作OP2において、制御部70は、第1部分21a及び第2部分21bを、第2実施形態に係る第1電位状態としつつ、第1磁気素子M(1)〜第(i−1)磁気素子M(i−1)を第4電位V4または浮遊電位FLTに設定する(例えば、図4参照)。
【0105】
第2実施形態において、「i」は、(N−2)以下である場合、第2動作OP2において、制御部70は、第1部分21a及び第2部分を第2実施形態に係る第1電位状態としつつ、第(i+2)磁気素子M(i+2)〜第N磁気素子M(N)を第8電位V8または浮遊電位FLTに設定する(例えば、図4(a)参照)。第8電位V8は第5電位V5とは異なる。1つの例において、第8電位V8は、第4電位V4と同じである。
【0106】
第2実施形態において、制御部70は、第N磁気素子M(N)を第2記憶状態ST2とする場合に、第1〜第(N−1)磁気素子M(1)〜M(N−1)に関する第2動作OP2の後に第4動作OP4をさらに実施しても良い(図5参照)。第4動作OP4において、制御部70は、第N磁気素子M(N)の電位を、第4動作OP4における第2部分21bの電位よりも低くする。第2実施形態における第4動作OP4においては、制御部70は、第1部分21aの電位を第2部分21bの電位以下としても良い。第2実施形態における第4動作OP4においては、制御部70は、第1部分21aの電位を第2部分21bの電位よりも高くしても良い。
【0107】
図9は、実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式図である。
図9に示すように、実施形態に係る磁気記憶装置112は、複数の記憶部MPと、制御部と、を含む。複数の記憶部MPの数は、「M」である。Mは2以上の整数である。複数の記憶部MPは、例えば、第1〜第M記憶部MP1〜MPMを含む。
【0108】
複数の記憶部MPのそれぞれは、第1導電部材21と、複数の磁気素子MEと、を含む。1つの導電部材21に設けられる複数の磁気素子MEの数を「m」とする。「m」は、2以上の整数である。
【0109】
この例では、複数の記憶部MPのそれぞれは、複数のスイッチを含む。例えば、第1記憶部MP1は、複数の第1スイッチSW1を含む。複数の第1スイッチSW1の1つにおいて、1つの端部は、第1記憶部MP1に含まれる複数の磁気素子MEの1つの第1磁性層11(図1参照)と電気的に接続される。複数の第1スイッチSW1の上記の1つにおいて、別の端部は、配線WL1と電気的に接続される。複数の第1スイッチSW1の上記の1つにおいて、ゲートは、配線LL1〜LLmの1つと電気的に接続される。
【0110】
例えば、例えば、第M記憶部MPMは、複数の第1スイッチSWMを含む。複数の第MスイッチSWMの1つにおいて、1つの端部は、第M記憶部MPMに含まれる複数の磁気素子MEの1つの第1磁性層11(図1参照)と電気的に接続される。複数の第MスイッチSWMの上記の1つにおいて、別の端部は、配線WLMと電気的に接続される。複数の第MスイッチSWMの上記の1つにおいて、ゲートは、配線LL1〜LLmの1つと電気的に接続される。
【0111】
同様の構成が、複数の記憶部MPのそれぞれに設けられる。例えば、第2記憶部MP2の第2スイッチSW2の1つの端は、配線WL2と電気的に接続される。第2スイッチSW2の別の端は、第2記憶部MP2に含まれる磁気素子MEに含まれる第1磁性層11と電気的に接続される。第2スイッチSW2のゲートは、配線LL1〜LLmの1つと電気的に接続される。
【0112】
例えば、第3記憶部MP3の第4スイッチSW4の1つの端は、配線WL4と電気的に接続される。第3スイッチSW3の別の端は、第3記憶部MP3に含まれる磁気素子MEに含まれる第1磁性層11と電気的に接続される。第3スイッチSW3のゲートは、配線LL1〜LLmの1つと電気的に接続される。
【0113】
配線WL1〜WLMは、第1回路75aと電気的に接続される。配線LL1〜LLmは、第2回路75bと電気的に接続される。これらの回路は、例えば、デコーダを含む。
【0114】
磁気記憶装置112において、例えば、第1動作OP1の少なくとも一部が、複数の記憶部MPの少なくとも一部において同時に行われても良い。
【0115】
磁気記憶装置112において、例えば、第2動作OP2の少なくとも一部が、複数の記憶部MPの少なくとも一部において同時に行われても良い。
【0116】
磁気記憶装置112において、例えば、第3動作OP3の少なくとも一部が、複数の記憶部MPの少なくとも一部において同時に行われても良い。
【0117】
磁気記憶装置112において、例えば、第4動作OP4の少なくとも一部が、複数の記憶部MPの少なくとも一部において同時に行われても良い。
【0118】
図9は、第1動作OP1の後に行われる第2動作OP2を例示している。例えば、図中の右端の磁気素子MEにおいて、「第2動作の実施」が行われる。
【0119】
例えば、配線LL1は第5電位V5とされ、配線LL2は、第4電位V4とされる。例えば、第1記憶部MP1の第1スイッチSW1、及び、第M記憶部MPMの第MスイッチSWMは、導通状態である。例えば、第2記憶部MP2の第2スイッチSW2、及び、第3記憶部MP3の第3スイッチSW3は、非導通状態(例えば絶縁状態であり、浮遊電位FLT)である。
【0120】
これにより、第1記憶部MP1及び第M記憶部MPMの右端の磁気素子MEにおいて、第2記憶状態ST2が形成される。例えば、第2記憶部MP2及び第3記憶部MP3の右端の磁気素子MEにおいて、第1記憶状態ST1が維持される。第2記憶部MP2及び第3記憶部MP3の右端の磁気素子MEにおいて、第2動作OP2が実施されない、または、第3動作OP3が実施される。
【0121】
このような「第2動作の実施」が、複数の磁気素子ME(m個の磁気素子ME)に関して、例えば、逐次行われる。
【0122】
このように、実施形態において、複数の記憶部MPが設けられても良い。制御部70は、複数の記憶部MPの少なくとも2つについて、第1動作OP1を並列で実施しても良い。そして、制御部70は、複数の記憶部MPの少なくとも2つについて、第1動作OP1を並列で実施した後に、複数の記憶部MPの上記の少なくとも2つについて、第2動作OP2を並列で実施しても良い。
【0123】
磁気記憶装置112には、第1実施形態に関して説明した第2動作OP2及び第2実施形態に関して説明した動作OP2が適用できる。例えば、磁気記憶装置112には、第1実施形態に係る第1電位状態、及び、第2実施形態に係る第1電位状態のいずれかが適用できる。
【0124】
第1実施形態及び第2実施形態においては、第2動作OP2は、「i」を増大または減少させて逐次行われる。
【0125】
(第3実施形態)
第3実施形態においては、任意の磁気素子MEに関して、第2動作OP2が実施される。
図10は、第3実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式図である。
図10に示すように、磁気記憶装置113においては、任意の第i磁気素子M(i)について第2動作OP2が行われる。この第2動作OP2は、第1〜第N磁気素子M(1)〜M(N)についての第1動作OP1(図2参照)が行われた後に実施される。
【0126】
第3実施形態において、第2動作OP2において、制御部70は、第1部分21a及び第2部分21bを第1電位状態としつつ、第(i+1)磁気素子M(i+1)を第4電位V4に設定し、第i磁気素子M(i)を第5電位V5に設定して、第i磁気素子M(i)を第2記憶状態ST2とする。
【0127】
第3実施形態における第1電位状態は、例えば、第2実施形態における第1電位状態と同じでも良い。例えば、第1電位状態において、第1部分21aは第6電位V6であり、第2部分21bは第7電位V7である。または、第1電位状態において、第1部分21a及び第2部分21bの少なくともいずれかは、浮遊電位FLTである。
【0128】
第3実施形態における第1電位状態は、例えば、第1実施形態における第1電位状態と同じでも良い。
【0129】
第3実施形態においても、例えば、異なる記憶状態のそれぞれが安定して形成される。実施形態によれば、安定した動作が可能な磁気記憶装置を提供できる。
【0130】
(第4実施形態)
第3実施形態においては、任意の複数の磁気素子MEに関して、第2動作OP2が実施される。
図11は、第4実施形態に係る磁気記憶装置を例示する模式図である。
図11に示すように、磁気記憶装置114においては、複数の磁気素子ME(この例では、磁気素子ME(A)及び磁気素子ME(B))について第2動作OP2が行われる。この第2動作OP2は、例えば、第1〜第N磁気素子M(1)〜M(N)についての第1動作OP1(図2参照)が行われた後に実施される。
【0131】
第4実施形態において、第2動作OP2において、制御部70は、第1部分21a及び第2部分21bを第1電位状態としつつ、磁気素子ME(A)及び磁気素子ME(B)を第5電位V5に設定し、磁気素子ME(A)及び磁気素子ME(B)を除く磁気素子MEを第4電位V4に設定する。これにより、磁気素子ME(A)及び磁気素子ME(B)が第2記憶状態ST2とされる。
【0132】
第4実施形態における第1電位状態は、例えば、第2実施形態における第1電位状態と同じでも良い。例えば、第1電位状態において、第1部分21aは第6電位V6であり、第2部分21bは第7電位V7である。または、第1電位状態において、第1部分21a及び第2部分21bの少なくともいずれかは、浮遊電位FLTである。
【0133】
第4実施形態における第1電位状態は、例えば、第1実施形態における第1電位状態と同じでも良い。
【0134】
第4実施形態においても、例えば、異なる記憶状態のそれぞれが安定して形成される。実施形態によれば、安定した動作が可能な磁気記憶装置を提供できる。
【0135】
実施形態において、第1磁性層11は、SAF構造を有しても良い。この場合、第1磁性層11は、複数の磁性膜を含む。複数の磁性膜の1つのMs・t(磁気膜厚)は、複数の磁性膜の別の1つのMs・t(磁気膜厚)と異なっても良い。これにより、漏洩磁界が生じる。この漏洩磁界が第1対向磁性層11cに作用しても良い。これにより、第1対向磁性層11cの磁化の向きを適度に制御できる。動作がさらに安定になる。
【0136】
上記のように、実施形態においては、例えば、第1導電部材21に電流を供給して、複数の磁気素子MEを第1記憶状態ST1とする。この後、所望の磁気素子MEの電位を制御する第2動作OP2を行い、第2記憶状態ST2を形成する。この「第2動作の実施」を逐次行う。
【0137】
例えば、第1記憶状態ST1の形成、及び、第2記憶状態ST2の形成の両方に、第1導電部材21に流れる電流を利用する参考例がある。この参考例においては、磁気素子MEの面積抵抗は小さくされる。参考例においては、意図しない磁気素子MEに意図しない電流が流れ、この電流が第1導電部材21に流入する場合がある。これにより、実効的な書き込み電流が変動する場合がある。参考例においては、磁気素子MEの面積抵抗は小さく、書き込み電流の変動が無視できない大きさになる。参考例においては、例えば、書き込むデータに依存して書き込み電流が変動する。このため、データの組み合わせによってはエラー率が上昇する場合がある。
【0138】
これに対して、本実施形態においては、特殊な書き込みシーケンスにより、エラー率の上昇が抑制できる。
【0139】
実施形態によれば、動作がより安定になる。実施形態によれば、小さい電流においても安定した動作が可能になり、消費エネルギーが低減できる。
【0140】
実施形態は、例えば、以下の構成(例えば技術案)を含んでも良い。
(構成1)
記憶部と、
制御部と、
を備え、
前記記憶部は、
第1部分と、第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分と、を含む第1導電部材と、
前記第3部分に設けられた複数の磁気素子と、
を含み、
前記制御部は、前記第1部分、前記第2部分、及び、前記複数の磁気素子と電気的に接続され、
前記制御部は、前記複数の磁気素子を第1記憶状態とする第1動作を実施し、
前記制御部は、複数の磁気素子の1つを前記第1記憶状態とは異なる第2記憶状態とするときに第2動作を実施し、
前記第1動作において、前記制御部は、前記第1部分を第1電位とし前記第2部分を第2電位としつつ、前記複数の磁気素子のそれぞれの電位を第3電位または浮遊電位とし、前記第2電位は前記第1電位よりも高く、前記第3電位は前記第1電位とは異なり前記第2電位とは異なり、
前記第2動作において、前記制御部は、前記第1部分及び前記第2部分を第1電位状態としつつ、前記複数の磁気素子の1つを第4電位に設定し、前記複数の磁気素子の別の1つを第5電位に設定して、前記複数の磁気素子の前記別の1つを前記第2記憶状態とし、
前記第1電位状態において、前記第1部分は第6電位であり前記第2部分は第7電位であり、前記第7電位は前記第6電位以上である、または、前記第1部分及び前記第2部分の少なくともいずれかは浮遊電位である、磁気記憶装置。
【0141】
(構成2)
前記制御部は、複数の磁気素子の前記1つを前記第2記憶状態としないときに、前記第2動作を実施しない、または、第3動作を実施し、
前記第3動作において、前記複数の磁気素子の前記1つの電位の状態を、前記複数の磁気素子の前記別の1つの電位の状態と、実質的に同じにする、構成1記載の磁気記憶装置。
【0142】
(構成3)
前記第2動作の後において、前記複数の磁気素子の前記1つは、前記第1記憶状態である、構成1または2に記載の磁気記憶装置。
【0143】
(構成4)
前記第1動作において、前記制御部は、前記第2部分から前記第1部分への向きの電流を供給する構成1〜3のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【0144】
(構成5)
前記複数の磁気素子の前記1つの前記第1記憶状態における電気抵抗は、前記複数の磁気素子の前記1つの前記第2記憶状態における電気抵抗とは異なる、構成1〜4のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【0145】
(構成6)
前記複数の磁気素子は、第1〜第N磁気素子(Nは、2以上の整数)を含み、
前記第1〜前記第N磁気素子は順に並び、
前記制御部は、前記第1〜前記第N磁気素子に含まれる第i磁気素子(iは1以上(N−1)以下の整数)を前記第2記憶状態とするときに前記第2動作を実施し、
前記第2動作において、前記制御部は、前記第1部分及び前記第2部分を前記第1電位状態としつつ、第(i+1)磁気素子を前記第4電位に設定し、前記第i磁気素子を前記第5電位に設定する、構成1〜4のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【0146】
(構成7)
記憶部と、
制御部と、
を備え、
前記記憶部は、
第1部分と、第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の第3部分と、を含む第1導電部材と、
前記第3部分に設けられた複数の磁気素子と、
を含み、
前記制御部は、前記第1部分、前記第2部分、及び、前記複数の磁気素子と電気的に接続され、
前記複数の磁気素子は、第1〜第N磁気素子(Nは、2以上の整数)を含み、
前記第1〜前記第N磁気素子は順に並び、
前記制御部は、前記第1〜前記第N磁気素子を第1記憶状態とする第1動作を実施し、
前記制御部は、前記第1〜前記第N磁気素子に含まれる第i磁気素子(iは1以上(N−1)以下の整数)を前記第1記憶状態とは異なる第2記憶状態とするときに第2動作を実施し、
前記第1動作において、前記制御部は、前記第1部分を第1電位とし前記第2部分を第2電位としつつ、前記第1〜前記第N磁気素子のそれぞれの電位を第3電位または浮遊電位とし、前記第2電位は前記第1電位よりも高く、前記第3電位は前記第1電位とは異なり前記第2電位とは異なり、
前記第2動作において、前記制御部は、前記第1部分及び前記第2部分を第1電位状態としつつ、第(i+1)磁気素子を第4電位に設定し、前記第i磁気素子を第5電位に設定して、前記第i磁気素子を前記第2記憶状態とし、
前記第1電位状態において、前記第1部分は第6電位であり前記第2部分は第7電位である、または、前記第1部分及び前記第2部分の少なくともいずれかは浮遊電位であり、
前記制御部は、前記第2動作を、前記iを順に変化させて行う、磁気記憶装置。
【0147】
(構成8)
前記第(i+1)磁気素子と前記第1部分との間の距離は、第i磁気素子と前記第1部分との間の距離よりも長い、構成6または7に記載の磁気記憶装置。
【0148】
(構成9)
前記第(i+1)磁気素子と前記第1部分との間の距離は、第i磁気素子と前記第1部分との間の距離よりも短い、構成6または7に記載の磁気記憶装置。
【0149】
(構成10)
前記制御部は、前記第2動作を、前記iを1から前記(N−1)へ上昇させて順に行う、構成8または9に記載の磁気記憶装置。
【0150】
(構成11)
前記制御部は、前記第2動作を、前記iを前記(N−1)から1へ下降させて順に行う、構成8または9に記載の磁気記憶装置。
【0151】
(構成12)
前記iは、2以上であり、
前記第2動作において、前記制御部は、前記第1部分及び前記第2部分を前記第1電位状態としつつ、前記第1磁気素子〜前記第(i−1)磁気素子を前記第4電位または前記浮遊電位に設定する、構成6〜11のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【0152】
(構成13)
前記iは、前記(N−2)以下であり、
前記第2動作において、前記制御部は、前記第1部分及び前記第2部分を前記第1電位状態としつつ、前記第(i+2)磁気素子〜前記第N磁気素子を前記第5電位とは異なる第8電位または前記浮遊電位に設定する、構成6〜12のいずれか1つ記載の磁気記憶装置。
【0153】
(構成14)
前記第8電位は、前記第4電位と同じである、構成13記載の磁気記憶装置。
【0154】
(構成15)
前記制御部は、前記第N磁気素子を前記第2記憶状態とする場合に前記第2動作の後に第4動作をさらに実施し、
前記第4動作において、前記制御部は、前記第1部分の前記電位を前記第2部分の前記電位以下としつつ、前記第N磁気素子の電位を、前記第2部分の前記電位よりも低くする、構成6〜14のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【0155】
(構成16)
前記第i磁気素子の前記第1記憶状態における電気抵抗は、前記第i磁気素子の前記第2記憶状態における電気抵抗とは異なる、構成6〜15のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【0156】
(構成17)
前記第1〜前記第N磁気素子のそれぞれは、第1磁性層と、前記第1磁性層と前記第1導電部材との間に設けられた第1対向磁性層と、前記第1磁性層と前記第1対向磁性層との間に設けられた第1非磁性層と、を含み、
前記制御部は、前記第1〜前記第N磁気素子のそれぞれに含まれる前記第1磁性層と電気的に接続される、構成6〜16のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【0157】
(構成18)
前記第1電位は、前記第2電位と前記第3電位の間である、構成1〜17のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【0158】
(構成19)
前記第6電位は、前記第4電位と前記第5電位との間であり、
前記第7電位は、前記第4電位と前記第5電位との間である、構成1〜18のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【0159】
(構成20)
複数の前記記憶部が設けられ、
前記制御部は、前記複数の記憶部の少なくとも2つについて前記第1動作を並列で実施した後に、前記複数の記憶部の前記少なくとも2つについて前記第2動作を並列で実施する、構成1〜19のいずれか1つに記載の磁気記憶装置。
【0160】
実施形態によれば、安定した動作が可能な磁気記憶装置が提供できる。
【0161】
本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0162】
以上、例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの例に限定されるものではない。例えば、磁気記憶装置に含まれる記憶部、制御部、導電部材、磁性層、非磁性層及び導電部材などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0163】
各例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0164】
本発明の実施の形態として上述した磁気記憶装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての磁気記憶装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0165】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0166】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0167】
11…第1磁性層、 11c…対向磁性層、 11n…非磁性層、 21…第1導電部材、 21a〜21c…第1〜第3部分、 70…制御部、 70a〜70c…配線、 75a、75b…第1、第2回路、 110〜114…磁気記憶装置、 FLT…浮遊電位、 I1、I2、I4…電流、 LL1〜LLm…配線、 M(1)〜M(N)…第1〜第N磁気素子、 M(i)…第i磁気素子、 ME、ME(A)、ME(B)…磁気素子、 MP…記憶部、 MP1〜MPM…第1〜第M記憶部、 OP1〜OP4…第1〜第4動作、 ST1、ST2…第1、第2記憶状態、 SW…スイッチ、 SW1〜SWM…第1〜第Mスイッチ、 V1〜V9…第1〜第9電位、 WL1〜WLM…配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11