【実施例】
【0038】
[実施例1]
トウモロコシグルテン原料の分析
本開示の発明者らは、固体状態発酵のための原材料としてトウモロコシグルテンを使用した。このため、微生物発酵に適する、原材料中の水溶性サッカライド含有量のレベルを測定した。
【0039】
トウモロコシグルテンを水中に溶解させて10%溶液を調製し、60℃の温度で3時間抽出した。得られた抽出物を遠心分離機(8,000rpm、10分)にかけ、そこから上澄液を収集し、ろ過シート(Whatman No.2)を通してろ過した。ろ液を活性炭で処理し、次いで、60℃の温度で30分間反応させ、ろ過シートを使用してろ過し、イオン交換(カチオン、アニオン)樹脂で処理して、そこからイオン性材料を除去した。最終試料中の水溶性サッカライド含有量を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析で測定した。
【0040】
トウモロコシグルテン中の水溶性サッカライド含有量は約0.4%と低かった。その結果、より高いタンパク質含有量比率への微生物発酵の寄与は無視してもよいと考えられる(表1を参照)。
【0041】
【表1】
【0042】
[実施例2]
トウモロコシグルテン中の構造性炭水化物の推定
実施例1において微生物によって使用されるトウモロコシグルテン原料中の水溶性サッカライド含有量が非常に少ないということを確認した後、微生物が使用できる成分の量を増加させるために、酵素処理を行った。酵素スクリーニングの前に、トウモロコシグルテン中の構造性炭水化物を分解して、トウモロコシグルテンを構成する炭水化物の主要モノサッカライドを同定し、その結果に基づいて酵素の標的基質を推定した。
【0043】
トウモロコシグルテンの構造性炭水化物を以下のように分析した。国立再生可能エネルギー研究所(NREL)の成分分析法に従って、基準材料のグルコース、キシロース、ガラクトース、アラビノース、マンノース、フルクトース、トウモロコシグルテン原料(各試料について、この分析を3回行った)を調製した。これらの材料の各々を0.3gの量でガラス試験管に充填し、次いで、それに72%硫酸3mlを添加した。得られた管を30℃の水浴中に配置して、酸加水分解を2時間行い、続いて、ガラス棒を用いて10分〜20分の間隔で撹拌した。蒸留水4mlを酸水和物試験管に添加し、得られた溶液を別の容器に充填し、合計重量が80gになるように蒸留水をそれに添加した。第2の加水分解では、第1水和物をオートクレーブにおいて121℃の温度で1時間加水分解した。第2水和物を冷却し、次いで、炭酸カルシウムをそれに添加して中和した。トウモロコシグルテン試料を酸加水分解に繰り返し付し、得られた酸水和物を、前述の方法を使用して分析した。
【0044】
トウモロコシグルテンの構造性炭水化物を完全に分解し、次いで、HPLCで分析した。結果は、主要モノサッカライドがグルコースであることを示している(表2及び
図1を参照)。即ち、トウモロコシグルテンの構造性炭水化物は、ほとんどがデンプン又はセルロースであると推定される。
【0045】
【表2】
【0046】
[実施例3]
酵素処理に起因する原料成分の変化
微生物によって使用されるトウモロコシグルテン原料中の水溶性サッカライド含有量は非常に少ない。しかし、トウモロコシグルテンの主要炭水化物として推定される成分を分解するグルコアミラーゼを用いてトウモロコシグルテン原料を事前処理すると、トウモロコシグルテンのサッカライド成分が変化した。実施例1で使用した実験方法を実施した。
【0047】
この実験では、トウモロコシグルテンに不溶な炭水化物を分解する酵素の中からのデンプン分解酵素であるグルコアミラーゼを使用すると、グルコース含有量が10倍以上増加することが確認された。しかし、デンプン分解酵素を使用しなかった場合、グルコース、フルクトース、及びスクロースの各々の含有量は非常に少なかった(表3及び
図2を参照)。
【0048】
【表3】
【0049】
[実施例4]
固体状態発酵に適する調製条件
微生物発酵のための炭素源を酵素処理により得た。しかし、通常、トウモロコシグルテンのpHは4以下なので、バシラス菌株はそこでは増殖しない。したがって、本実験では、バシラス菌株を接種してトウモロコシグルテンを発酵させるために、トウモロコシグルテンのpHを、バシラスの増殖に最適な範囲である6〜7の範囲に調整した。
【0050】
最初に、トウモロコシグルテンの含水量を約43%に調整し、様々な濃度のNaOH溶液をそれに添加した。得られたものを100℃の温度で30分間熱処理し、次いで、そのpHを測定した。様々な濃度のNaOH溶液におけるトウモロコシグルテンのpHを表4に示す。その結果、2%NaOH溶液を使用したとき、そのpHがバシラスの増殖に最適であったことが確認された。
【0051】
【表4】
【0052】
[実施例5]
酵素に応じた微生物によって得られたタンパク質増加効果の比較
実施例3で確認したように、デンプン分解酵素を使用すると、トウモロコシグルテン中の水溶性サッカライド含有量が増加した。市販のデンプン分解酵素は、様々な酵素活性及び反応条件を有する。したがって、それらは、様々なデンプン分解効果、水溶性サッカライド含有量レベル、及び固体状態発酵由来のタンパク質増加比率を有する。本実験では、酵素スクリーニングによって、トウモロコシグルテン中のタンパク質の濃縮に適するデンプン分解酵素を選別した。
【0053】
酵素添加ポイント及び反応温度を酵素の特性によって変える方法で、酵素スクリーニングを行った。
【0054】
グルコアミラーゼ処理群及び中温性α-アミラーゼ処理群の場合、2%NaOH溶液をトウモロコシグルテンに添加して、得られるものの含水量を約43%に調整し、得られたトウモロコシグルテンを100℃の温度で30分間熱処理し、次いで、大気中で放冷し、各々が0.1%の濃度を有する各酵素を用いて処理し、60℃の温度で1時間反応させた。
【0055】
好熱性α-アミラーゼ処理群の場合、2%NaOH溶液をトウモロコシグルテンに添加して、その含水量を約43%に調整し、0.1%酵素をそれに添加し、得られたものを100℃の温度で30分間熱処理した。熱処理後、酵素反応のための時間は設けなかった。
【0056】
バシラス・アミロリケファシエンスK2G(バシラス・アミロリケファシエンス、受託番号KCCM11471P、韓国特許第10-1517326号を参照)10%(v/w原料)を、酵素と完全に反応させたトウモロコシグルテンに接種し、次いで、トウモロコシグルテンを、恒温及び恒湿バスにおいて37℃の温度及び95%の湿度で24時間発酵させた。発酵により得られたものを乾燥、粉砕し、その中のタンパク質の量を、ケルダール分解装置を使用して測定した(表5を参照)。
【0057】
発酵の結果、酵素はすべて同様の生菌個体数を示した。しかし、それらは実質的に異なるタンパク質増加比率を示した。酵素は使用しないが、2%溶液を添加し、且つ熱処理を行った場合、条件は微生物の増殖に基本的に適していたが、原材料中の水溶性サッカライド含有量が少なく、その結果、タンパク質増加は約2%になった。また、それらの様々なデンプン分解効果並びに不十分な反応温度及び時間のために、各酵素が様々な発酵結果を示したと考えられた。それにより、これらの条件においてトウモロコシグルテン中のデンプンを分解することによって得られるタンパク質増加比率を比較的高くする酵素として、グルコアミラーゼを選択した。
【0058】
【表5】
【0059】
[実施例6]
酵素を使用した又は使用しなかった場合に得られた発酵パターン及び性質の比較
実施例5によって得られた結果に示されるように、24時間の発酵後、グルコアミラーゼ及び固体状態発酵に起因するタンパク質増加効果があった。さらに明らかにするために、タンパク質増加効果に加えて、発酵過程及び発酵の性質へのグルコアミラーゼ処理効果、微生物の増殖パターン、含水量変化、タンパク質の増加、並びにタンパク質分解性及びタンパク質溶解性を測定した。発酵は実施例5と同じ方式で行い、実験群をグルコアミラーゼ0.5%処理群及び酵素非処理群として分類し、試料を各群から4時間ごとに採取した(表6を参照)。
【0060】
酵素で処理しなかった場合、トウモロコシグルテンは、微生物による発酵に起因したタンパク質含有量比率の増加が約2.5%であった。しかし、酵素処理後に発酵に付したトウモロコシグルテンの場合は、タンパク質含有量比率の増加が約8%と高くなった。これは、酵素処理により、トウモロコシグルテン材料中のデンプンがグルコースに分解され、次いで、それがバシラス細菌の増殖時に使用されたからである。その結果、タンパク質が比較的濃縮されて、タンパク質含有量比率の増加効果がもたらされた。これに関して、トウモロコシグルテンのpHを、微生物が酵素処理とは関係なく増殖するレベルに調整した場合、生菌個体数は同レベルにあった。しかし、酵素処理は、トウモロコシグルテン中のタンパク質含有量比率の増加に使用することができる。
【0061】
トウモロコシグルテン原料中の粗タンパク質(DS含有量)は71.7%であり、実施例1のように、微生物の増殖に使用された水溶性サッカライド含有量は0.4%であった。したがって、水溶性サッカライドが使用され、且つタンパク質が損なわれずに存在する場合、タンパク質増加比率は約0.3%と少ないであろう。しかし、実際は、タンパク質増加比率は2%超であり、実施例8によれば、酵素処理を行わなかった場合、発酵産物中のデンプン含有量はトウモロコシグルテン原料中のデンプン含有量と比べて減少した。トウモロコシグルテン中の水溶性サッカライド含有量に対する高いタンパク質含有量比率は、トウモロコシグルテンを酵素で処理しなかった場合でさえ、微生物発酵中に菌株により産生されるアミラーゼの活性に起因することがある。この結果は、高アミラーゼ活性を有する菌株を使用することによって発酵がタンパク質含有量比率の増加に良い影響を及ぼすことを示している。
【0062】
【表6】
【0063】
[実施例7]
酵素反応に応じて得られた実験結果の比較
本開示は、酵素前処理及び微生物発酵を同時に行うことによってトウモロコシグルテン中のタンパク質含有量を増加させる方法に関する。酵素処理の直後に別個の酵素反応なしで発酵を行った場合、トウモロコシグルテン中のタンパク質比率を増加させるプロセス及びトウモロコシグルテンを製造するプロセスが単純化され、また、製造費を下げることができる。この仮定を確認するために、別個の酵素反応の必要性を以下の2つの実験結果を比較することで明らかにした:実施例5と同じ方式で発酵を行い、酵素の添加後、酵素反応を60℃の温度で1時間行った。実施例5と同じ方式で発酵を行い、酵素反応の時間を設けずに、微生物を接種した。
【0064】
その結果、酵素反応の時間を設けた場合(表7の酵素反応ありを参照)と酵素反応の時間を設けなかった場合(表7の酵素反応なしを参照)の間のタンパク質増加比率の違いは実質上なかった。この結果は、酵素反応の時間を設けなくても、発酵中に酵素反応が十分に起こったことを示している(表7を参照)。
【0065】
【表7】
【0066】
[実施例8]
酵素の濃度に応じたデンプン含有量及びタンパク質含有量比率の比較
酵素の濃度に応じたトウモロコシグルテン中のデンプン含有量の減少とタンパク質含有量比率の増加の関係を明らかにした。原材料中のデンプンは、酵素処理なしであっても、微生物発酵に起因して、あるレベルの量に減少した。また、酵素の濃度が高いほど、原材料中のデンプン含有量が少なかった。その結果、タンパク質含有量比率は相対的に増加した(表8を参照)。
【0067】
一方、トウモロコシグルテンは、トウモロコシデンプンを製造するときに生じる副生成物であり、トウモロコシグルテン中のタンパク質含有量は、トウモロコシデンプンの収量に応じて変化し得る。即ち、トウモロコシグルテン中のタンパク質含有量が低いほど、デンプン含有量が相対的に高くなる。したがって、グルコースは、デンプン分解酵素によってさらに分解され、それ故、微生物発酵によるタンパク質含有量比率増加効果は増大する可能性がある。表9は、トウモロコシグルテン中のタンパク質が66%及び70%のときのトウモロコシグルテン原料を使用することで得られた発酵結果を示している。発酵を行う際、原料中のタンパク質含有量以外は、グルコアミラーゼ0.1%、バシラス10%接種などを含めた同一条件を使用した。その結果、トウモロコシグルテン中のタンパク質含有量が66%のとき、タンパク質はより増加した。この実験では、各々の原料のデンプン価は測定しなかった。したがって、デンプンがタンパク質より確実に多かったことを証明するのは困難である。しかし、タンパク質含有量が低いためにデンプン価がより高い場合、グルコースは酵素によってさらに分解され、その結果、タンパク質増加比率が高くなることが推定され得る。
【0068】
【表8】
【0069】
【表9】
【0070】
[実施例9]
トウモロコシグルテンの酵母による発酵の確認
上記実施例に記載したように、トウモロコシグルテンが、バシラスによって発酵され、酵素の添加に起因するタンパク質含有量比率増加効果を有することを確認した。本開示の発明者らは、微生物によるトウモロコシグルテンの発酵特性を比較するために、バシラス以外に酵母によってトウモロコシグルテンが発酵するかどうかを確認する実験をさらに実施した。
【0071】
この実験では、サッカロミケス・カールスベルゲンシスを酵母として使用して、発酵を行った。バシラスによる発酵と同様に、水をトウモロコシグルテンに添加して、含水量を約43%に調整し、得られたものを100℃の温度で30分間熱処理した。熱処理したトウモロコシグルテンを大気中で放冷し、酵素処理群の場合、グルコアミラーゼを原材料に対して0.5%の量で使用し、酵素非処理群の場合、酵素を使用せず、両群に、サッカロミケス・カールスベルゲンシス培養物を原材料に対して10%の量で添加した。得られたものを、恒温及び恒湿バス(温度30℃及び湿度95%)において48時間発酵に付した。酵母の最適増殖温度は30℃なので、バシラスの温度とは異なる温度で発酵を行った。酵母はバシラスよりゆっくり増殖するので、発酵時間は48時間であった。
【0072】
酵母は酸性条件で十分に増殖すると仮定して、pHを調整しなかった。単に、酵素処理あり又はなしで得られた発酵結果を比較した。比較結果は、酵母がトウモロコシグルテンのpHをまったく調整しなくても増殖し、タンパク質増加比率が酵素処理に応じて変化したことを示している。酵素処理なしの場合、微生物の増殖に使用される水溶性サッカライドの量がトウモロコシグルテン中に少なく、したがって、発酵由来のタンパク質濃縮効果は比較的小さく、タンパク質増加比率は1%未満であった。しかし、酵素で処理した場合、トウモロコシグルテンは9%以上のタンパク質増加比率を有した(表10を参照)。
【0073】
【表10】
【0074】
[実施例10]
トウモロコシグルテンの乳酸菌による発酵の確認
上記実施例に記載したように、トウモロコシグルテンが、バシラス又は酵母によって発酵され、グルコアミラーゼ酵素の添加に起因するタンパク質含有量比率増加効果を有することを確認した。本開示の発明者らは、微生物に応じたトウモロコシグルテンの発酵特性を比較するために、バシラス及び酵母以外に乳酸菌によってトウモロコシグルテンが発酵するかどうかを確認する実験をさらに実施した。
【0075】
乳酸菌による発酵では、ラクトバシラス・プランタラムを使用した。バシラス発酵と同様に、水又は2%NaOHをトウモロコシグルテンに添加して、含水量を約43%に調整した。通常、乳酸菌は、酸性又は中性条件で増殖する。しかし、ラクトバシラス・プランタラムは、酸性の原材料であるトウモロコシグルテン中では増殖しない。したがって、pHの調整なしで水を添加したトウモロコシグルテン及びpHを調整したトウモロコシグルテンの両方を発酵に使用した。バシラス発酵及び酵母発酵に関連して使用した方法と同様に、トウモロコシグルテンを100℃の温度で30分間熱処理し、大気中で放冷した後、酵素処理群の場合、グルコアミラーゼを原材料に対して0.5%の量で添加し、酵素非処理群の場合、酵素を添加しなかった。ラクトバシラス・プランタラム培養物を原材料に対して10%の量で接種し、37℃の温度で嫌気的発酵を行った。乳酸菌もバシラスよりゆっくり増殖するので、発酵を48時間行った。
【0076】
乳酸菌発酵の結果、酵素を添加してもしなくても、pHを調整しなかったトウモロコシグルテン中では乳酸菌が増殖しなかったことが確認された。しかし、pHを調整したトウモロコシグルテンの場合には、生菌個体数が増加した。この結果は、トウモロコシグルテン中でのラクトバシラス・プランタラムの増殖には必ずpH調整が必要であることを示している。また、pHの減少は、有機酸が乳酸菌発酵によって産生されたことを示している。しかし、酵素処理及びpH調整に関係なく、すべての実験群はタンパク質増加比率効果を示さなかった。これから、嫌気的発酵がタンパク質を濃縮する効果をもたらさなかったと推定される。酵素処理群と酵素非処理群の間の違いは、pHを制御しなかったときよりもpHを制御したときの方がpHの減少が大きいことである。また、酵素処理群では、乳酸菌を増殖させるモノサッカライド成分がたくさんあるので、代謝が速く起こり、有機酸がより多く産生されたと推定される。一方、24時間の発酵で産生された有機酸のためにトウモロコシグルテンのpHは乳酸菌が増殖できないレベルに低下したので、酵素処理群及びpH制御群における生菌個体数は、48時間の発酵後に減少した(表11を参照)。
【0077】
【表11】
【0078】
本開示の主要な技術的価値は、酵素反応によりトウモロコシグルテン中のデンプンが水溶性サッカライドに変換され、微生物がその水溶性サッカライドを使用して増殖することが可能になることにある。バシラス及び酵母の場合、微生物の好気増殖特性のために、サッカライドが消費され、CO
2に変換されて、濃縮タンパク質がもたらされる。しかし、乳酸菌の場合、サッカライドが消費され、且つ微生物が増殖する場合でも、微生物の嫌気増殖特性のために有機酸が生成されるので、タンパク質濃縮効果を得ることはできなかった。しかし、生成された有機酸の特性により、乳酸菌は、プロバイオティクスとして高い価値がある。これまでは、トウモロコシグルテンを原材料として使用する場合、発酵に使用することができる水溶性サッカライドが不足しているために、乳酸菌の代謝に起因する有機酸の生成は限定的である。しかし、本開示の重要な技術であるデンプン分解は、乳酸菌の代謝に寄与するものである。
【0079】
[実施例11]
微生物による発酵に起因するタンパク質分解性の比較
タンパク質増加効果以外の他の指標における任意の違いを明らかにするために、トウモロコシグルテンのタンパク質分解性をSDS-PAGEで分析した。SDS-PAGE分析に使用した試料は、以下の方法を使用して調製した。
【0080】
様々な時点で収集した各々の発酵産物に関して、発酵産物約100mgを8Mの尿素溶媒に懸濁させ、超音波処理し、遠心分離機にかけた(8000rpm、10分)。タンパク質含有量比率を測定するために、得られた抽出物をBCA定量法に付し、SDS-PAGEでは、同量のタンパク質を装填し、様々な時点でのタンパク質分解性パターンを同定した。SDS-PAGEに使用したマーカーのサイズは、250、150、100、75、50、37、25、20、15、又は10kDaであった。
【0081】
実験結果は、タンパク質分解性が微生物の特性によって変化したことを示している。例えば、プロテアーゼを生成するバシラス群の場合、発酵のために、トウモロコシグルテン原料のペプチドは約20kDaのレベルに分解された(
図3を参照)。しかし、プロテアーゼを生成することができない酵母及び乳酸菌の場合、酵素処理又はpH調整に関係なく、発酵中、原材料中のペプチドは分解されなかった(
図4及び5を参照)。
【0082】
バシラス発酵によるトウモロコシグルテンタンパク質のペプチドへの分解は、飼料の消化を促進させることができる。一方、酵母及び乳酸菌の場合にはタンパク質分解性は生じなかったが、機能性成分、例えば、酵母の細胞壁に存在するベータグルカンなどが免疫機能を有し、且つ乳酸菌がプロバイオティクスとして使用され得るので、飼料材料の機能を高めることができると推定される。
【0083】
本開示の実施形態による穀物粉中のタンパク質を濃縮する方法を使用した場合、原材料中の水溶性サッカライドの量は、穀物粉を酵素で処理することによって増加し、増加した水溶性サッカライドは、穀物粉に細菌又は酵母を接種し発酵させることによって除去される。それにより、タンパク質含有量比率増加効果が高められ、タンパク質源としての穀物粉の性能を向上させることができる。
【0084】
本明細書に記載の実施形態は、限定のためではなく記述的な意味のみにおいて考慮すべきであることを理解されたい。各実施形態内の特徴又は態様の説明は、他の実施形態内の他の同様の特徴又は態様に利用可能なものとして通常考えられるべきである。
【0085】
1種以上の実施形態を、図面を参照して説明してきたが、添付の特許請求の範囲で定義されるその趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細において種々の変更を行い得ることが当業者なら理解されるであろう。
以下、本発明の実施形態を示す。
(1)穀物粉中のタンパク質を濃縮する方法であって、
穀物粉を酵素で処理して、構造性炭水化物を分解するステップ、及び
前記穀物粉に細菌を接種して、発酵を行うステップ、
を含む、前記方法。
(2)酵素を用いた前記処理の前に、塩基溶液を前記穀物粉に添加して、前記穀物粉中での前記細菌の増殖に最適なpHに調整するステップをさらに含む、(1)記載の方法。
(3)前記細菌が、バシラス属である、(1)記載の方法。
(4)前記バシラス属が、枯草菌、バシラス・リケニホルミス、バシラス・トヨイ、バシラス・コアギュランス、バシラス・ポリファメンチクス、及びバシラス・アミロリケファシエンスK2Gから成る群より選択される少なくとも1種の菌株を含む、(3)記載の方法。
(5)前記細菌が、乳酸菌である、(1)記載の方法。
(6)前記乳酸菌が、ラクトバシラス属、ラクトコッカス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属、及びビフィドバクテリウム属から成る群より選択される少なくとも1種の菌株を含む、(5)記載の方法。
(7)穀物粉中のタンパク質を濃縮する方法であって、
穀物粉を酵素で処理して、構造性炭水化物を分解するステップ、及び
前記穀物粉に酵母を接種して、発酵を行うステップ、
を含む、前記方法。
(8)前記酵母が、サッカロミケス属である、(7)記載の方法。
(9)前記穀物粉が、トウモロコシグルテンである、(1)又は(7)記載の方法。
(10)前記発酵が、固体状態発酵である、(1)又は(7)記載の方法。
(11)前記構造性炭水化物が、デンプン、セルロース、ヘミセルロース又はペクチンから成る群より選択される少なくとも1種を含む、(1)又は(7)記載の方法。
(12)前記酵素が、α-アミラーゼ又はグルコアミラーゼである、(1)又は(7)記載の方法。
(13)前記酵素が、100重量部の前記穀物粉に対して0.1〜1重量部の量で使用される、(1)又は(7)記載の方法。
(14)(1)又は(7)記載の方法を使用することによって濃縮されたタンパク質を含む穀物粉。
(15)(14)記載の濃縮タンパク質を含有する穀物粉を含む飼料添加物。