(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0022】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係るシート製造システム1の構成を示す図である。
本実施形態に記載のシート製造システム1は、例えば、原料としての機密紙等の使用済みの古紙(シート)を乾式で解繊して繊維化した後、加圧、加熱、切断することによって、新しい紙を製造するのに好適な装置である。繊維化された原料に、さまざまな添加物を混合することによって、用途に合わせて、紙製品の結合強度や白色度を向上したり、色、香り、難燃等の機能を付加したりしてもよい。また、紙の密度や厚さ、形状をコントロールして成形することで、A4やA3のオフィス用紙、名刺用紙等、用途に合わせて、さまざまな厚さ・サイズの紙を製造することができる。
【0023】
シート製造システム1は、第1の装置100Aと、第2の装置100Bとで構成される。第1の装置100Aと第2の装置100Bは、別体で構成されるともに、各々独立して動作可能な装置である。
第1の装置100Aは、原料となる古紙に粗砕及び解繊等を行い、解繊繊維を製造する装置(粗砕・解繊装置、又は解繊装置とも言う)であり、供給部10、粗砕部12、解繊部20、選別部30、及び繊維処理部40を有する。第2の装置100Bは、解繊繊維を原料としてシートを製造する装置(シート製造装置、シート製造部とも言う)であり、繊維供給部45、添加物混合部50、堆積部60、シート形成部70、及び切断部90を有する。
【0024】
供給部10は、粗砕部12に原料を供給する。原料は、繊維を含むものであればよく、例えば、紙、パルプ、パルプシート、不織布を含む布、或いは織物等が挙げられる。本実施形態では、古紙を原料とする構成を例示する。供給部10は、例えば、古紙が載置されるトレイ(給紙トレイ)を有し、トレイに載置された古紙を粗砕部12に連続的に投入する自動投入ユニットである。
【0025】
粗砕部12(細断部)は、供給部10によって供給された原料を粗砕刃14によって粗砕(細断)し、粗砕片(以下、粗砕物と言う)にする。粗砕物は、いわゆるシュレッダーで細断したシュレッダー片と同じ状態である。粗砕刃14は、大気中(空気中)等の気中で原料を粗砕するための刃である。粗砕部12は、原料を挟んで粗砕する一対の粗砕刃14と、粗砕刃14を回転させる駆動部とを備え、いわゆるシュレッダーと同様の構成とすることができる。粗砕片の形状や大きさは任意であり、解繊部20における解繊処理に適していればよい。例えば、粗砕部12は、原料を、1〜数cm四方またはそれ以下のサイズの紙片に粗砕する。
粗砕部12によって粗砕された原料は、ホッパー1で受けてから管2を介して、解繊部20に移送(搬送)される。
【0026】
解繊部20は、粗砕部12で粗砕された粗砕物を解繊する。より具体的には、解繊部20は、粗砕部12によって粗砕された原料(粗砕物)を解繊処理し、解繊繊維を生成する。ここで、「解繊する」とは、複数の繊維が結着されてなる原料(被解繊物)を、繊維1本1本に解きほぐすことをいう。解繊部20は、原料に付着した樹脂粒やインク、トナー、にじみ防止剤等の物質を、繊維から分離させる機能も有する。
【0027】
解繊部20を通過したものを「解繊物」という。「解繊物」には、解きほぐされた解繊繊維の他に、繊維を解きほぐす際に繊維から分離した樹脂(複数の繊維同士を結着させるための樹脂)粒や、インク、トナー等の色剤や、にじみ防止剤、紙力増強剤等の添加物を含んでいる場合もある。解きほぐされた解繊繊維の形状は、ひも(string)状や平ひも(ribbon)状である。解きほぐされた解繊繊維は、他の解きほぐされた解繊繊維と絡み合っていない状態(独立した状態)で存在してもよいし、他の解きほぐされた解繊繊維と絡み合って塊状になった状態(いわゆる「ダマ」を形成している状態)で存在してもよい。
【0028】
解繊部20は、乾式で解繊を行う。ここで、液体中ではなく、大気中(空気中)等の気中において、解繊等の処理を行うことを乾式と称する。本実施形態では、解繊部20がインペラーミルを用いる構成とする。具体的には、解繊部20は、高速回転するローター(図示略)、及び、ローターの外周に位置するライナー(図示略)を備える。粗砕部12で粗砕された粗砕片は、解繊部20のローターとライナーとの間に挟まれて解繊される。
【0029】
解繊部20は、ローターの回転により気流を発生させる。この気流により、解繊部20は、原料である粗砕片を管2の導入口22から吸引し、解繊物を排出口24へと搬送する。解繊物は排出口24から管3に送り出され、管3を介して選別部30に移送される。なお、解繊部20から選別部30に解繊物を搬送させるための気流は、解繊部20が発生させる気流を利用してもよいし、ブロアー等の気流発生装置を設け、その気流を利用してもよい。
【0030】
選別部30は、管3から解繊部20により解繊された解繊繊維を含む解繊物が気流とともに流入する導入口32を有する。選別部30は、導入口32に導入する解繊物を、繊維の長さによって選別する。詳細には、選別部30は、解繊物のうち、予め定められたサイズ以下の解繊物を第1選別物とし、第1選別物より大きい解繊物を第2選別物として、選別する。第1選別物は解繊繊維の他に、小さい粒子等を含み、第2選別物は、例えば、大きい繊維、未解繊片(十分に解繊されていない粗砕片)、解繊された繊維が凝集し、或いは絡まったダマ等を含む。
【0031】
本実施形態で、選別部30は、ドラム部31(篩部)と、ドラム部31を収容するハウジング部33(覆い部)と、第1ウェブ形成部35と、を有する。ドラム部31は、モーターによって回転駆動される円筒の篩である。ドラム部31は、網(フィルター、スクリーン)を有し、篩(ふるい)として機能する。この網の目により、ドラム部31は、網の目開き(開口)の大きさより小さい第1選別物と、網の目開きより大きい第2選別物とを選別する。ドラム部31の網は、例えば、金網、切れ目が入った金属板を引き延ばしたエキスパンドメタル、金属板にプレス機等で穴を形成したパンチングメタルである。
【0032】
導入口32に導入された解繊物は気流とともにドラム部31の内部に送り込まれ、ドラム部31の回転によって第1選別物がドラム部31の網の目から下方に落下する。ドラム部31の網の目を通過できない第2選別物は、導入口32からドラム部31に流入する気流により流されて排出口34に導かれ、管8に送り出される。
管8は、ドラム部31の内部と管2とを連結する。管8を通って流される第2選別物は、粗砕部12により粗砕された粗砕片とともに管2に供給され、解繊部20の導入口22に導かれる。これにより、第2選別物は解繊部20に戻されて、解繊処理される。
【0033】
また、ドラム部31により選別される第1選別物は、ドラム部31の網の目を通って空気中に分散し、ドラム部31の下方に位置する第1ウェブ形成部35のメッシュベルト36に向けて降下する。
【0034】
第1ウェブ形成部35(分離部)は、メッシュベルト36(分離ベルト)と、ローラー37と、吸引部38(サクション機構)と、を含む。メッシュベルト36は無端形状のベルトであって、3つのローラー37に懸架され、各ローラー37の回転により、図中矢印で示す方向に搬送される。メッシュベルト36の表面は所定サイズの開口が並ぶ網で構成される。選別部30から降下する第1選別物のうち、網の目を通過するサイズの微粒子はメッシュベルト36の下方に落下し、網の目を通過できないサイズの繊維(解繊繊維)がメッシュベルト36に堆積し、メッシュベルト36とともに矢印方向に搬送される。メッシュベルト36から落下する微粒子は、解繊物の中で比較的小さいものや密度の低いもの(樹脂粒や色剤や添加剤等)を含み、シート製造システム1がシートの製造に使用しない除去物である。
【0035】
メッシュベルト36は、第1の装置100Aの通常動作中、一定の速度V1で移動する。ここで、通常動作中とは、第1の装置100Aの始動時、及び停止時を除く動作中である。従って、解繊部20で解繊処理された解繊物は、選別部30で第1選別物と第2選別物とに選別され、第2選別物は、管4を介して解繊部20に戻される。また、第1選別物から、第1ウェブ形成部35によって除去物が除かれる。第1選別物から除去物を除いた残りは、シートの製造に適した解繊繊維であり、解繊繊維はメッシュベルト36に堆積して第1ウェブW1を形成する。
【0036】
吸引部38は、メッシュベルト36の下方から空気を吸引する。吸引部38の吸引力によって、メッシュベルト36上における第1ウェブW1の形成が促進され、かつ、除去物が速やかに除去される。
【0037】
なお、第1の装置100Aにおいて、第1解繊物と第2解繊物とを選別し、分離する構成は、ドラム部41を備える選別部30に限定されない。例えば、解繊部20で解繊処理された解繊物を、分級機によって分級する構成を採用してもよい。分級機としては、例えば、サイクロン分級機、エルボージェット分級機、エディクラシファイヤーを用いることができる。これらの分級機を用いれば、第1選別物と第2選別物とを選別し、分離することが可能である。さらに、上記の分級機により、解繊物の中で比較的小さいものや密度の低いもの(樹脂粒や色剤や添加剤等)を含む除去物を、分離して除去する構成を実現できる。
【0038】
第1の装置100Aは、メッシュベルト36に堆積した第1ウェブW1を分断する回転体39を備える。第1ウェブW1は、メッシュベルト36がローラー37により折り返す位置で、メッシュベルト36から剥離して、回転体39により分断される。
【0039】
回転体39の構成は任意であるが、本実施形態では、板状の羽根を有し回転する回転羽形状とすることができる。回転体39は、メッシュベルト36から剥離する第1ウェブW1と羽根とが接触する位置に配置される。回転体39の回転(例えば図中矢印Rで示す方向への回転)により、メッシュベルト36から剥離して搬送される第1ウェブW1に羽根が衝突して分断し、細分化される。
なお、回転体39は、回転体39の羽根がメッシュベルト36に衝突しない位置に設置される。例えば、回転体39の羽根の先端とメッシュベルト36との間隔を、0.05mm以上0.5mm以下とすることができ、この場合、回転体39によって、メッシュベルト36に損傷を与えることなく第1ウェブW1を効率よく分断できる。
【0040】
回転体39により分断された第1ウェブW1は、管7を通って繊維処理部40に供給される。繊維処理部40は、解繊繊維からなる第1ウェブW1をカートリッジ200(容器)に収容する処理を行うことによって、解繊繊維を可搬形態にする装置である。繊維処理部40には、例えば、空気吹き込み法によってカートリッジ200内に解繊繊維を充填する充填装置、又はスクリュー等のコンベアによってカートリッジ200内に解繊繊維を圧入(充填)する圧入装置を適用することができる。
このようにして、第1の装置100Aは、繊維を含む原料である古紙を粗砕する粗砕装置、粗砕物を解繊する解繊装置、及び解繊繊維をカートリッジ200に収容する繊維処理装置とを一体に備えた装置に構成されている。以下、説明の便宜上、第1の装置100Aを機能的に表記する場合、「粗砕・解繊装置」と適宜に表記する。
【0041】
カートリッジ200は、内部に充填された解繊繊維を外に流出させることなく保持可能な容器であり、ユーザーが容易に持ち運ぶことができる。このカートリッジ200は、剛性を有する金属製容器又は樹脂製容器でもよいし、柔軟性を有する袋体等の容器でもよい。
【0042】
繊維処理部40は、解繊繊維を収容したカートリッジ200を外部から取り出し自在に排出する排出部42を有する。これによって、ユーザーは、カートリッジ200を容易に取り出し、第2の装置100Bに持ち運ぶことができる。なお、ユーザーとは、シート製造システム1を利用する者であり、このシート製造システム1の機能の一部のみを利用する者でもよい。例えば、ユーザーは、第1の装置100Aの設置場所にいる者(後述するオフィスで働く者等)、シート製造システム1の操作、保守、管理等を行う者、古紙のセット又は解繊繊維の持ち運びを行う作業員等である。
【0043】
本構成では、解繊繊維をカートリッジ200に収容するので、解繊繊維の飛散を防止し、且つ異物の混入を抑制しながら、解繊繊維を可搬できる。また、解繊繊維をカートリッジ200に収容(充填)する際の圧力又は負圧の設定によって、カートリッジ200への解繊繊維の充填率を容易に高めることができる。この場合の圧力は、第2の装置100Bにおいて、シートの製造に支障が生じない程度の値に設定され、例えば、後述する繊維供給部45によって解繊繊維を取り出し可能な値に設定される。
【0044】
繊維処理部40は、解繊繊維を真空パックの技術を用いて袋体に収容(充填)する装置(真空パック装置)でもよい。真空パックの場合、解繊繊維の充填率をより高めることができる。
なお、繊維処理部40は、解繊繊維を、カートリッジ200や袋体等の容器に収容する装置に限定されず、解繊繊維を形状保持性を有する状態に処理する装置でもよい。具体的には、繊維処理部40に、ローラー等により解繊繊維を板形状に圧縮加工する圧縮加工装置を適用してもよいし、型等により解繊繊維を直方体形状、又は球形状等の予め定めた立体形状に圧縮成型する圧縮成型装置を適用してもよい。
【0045】
解繊繊維を板形状に固めた場合には、重ね易くなり、まとめて移動させやすくなる。また、解繊繊維を直方形状、球形状等の予め定めた立体形状に固めることによって、箱等の収容ケースに入れやすくなり、これによってもまとめて移動させやすくなる。この場合、ユーザーが手で把持し易い形状、及び大きさにすることにより、解繊繊維の持ち運び、及び第2の装置100Bの供給口46への供給作業等がし易くなる。カートリッジ200を使用しない分、カートリッジ200に関する構成が不要となり、構成を簡易化し易くなる。なお、解繊繊維を形状保持性を有する程度に固めればよく、全体を一様に固める方法に限定されず、一部だけ(例えば外周部だけ)を固めるようにしてもよい。また、固めやすくするために水分を付与してもよい。
【0046】
第2の装置100Bにおいて、繊維供給部45は、可搬形態の解繊繊維が供給される供給口46を有する。解繊繊維がカートリッジ200に収容される場合、供給口46はカートリッジ200を着脱自在に構成される。繊維供給部45は、供給口46にセットされたカートリッジ200から可搬形状の解繊繊維を取り出し、管8に排出する。
この繊維供給部45には、例えば、送風又は吸引によってカートリッジ200内の解繊繊維を排出させる装置、又はカートリッジ200内の解繊繊維を掻き出す装置を適用可能である。また、繊維供給部45には、カートリッジ200の下部を開放させ、重力を利用して解繊繊維を取り出す装置を適用してもよい。
【0047】
繊維供給部45は、添加物混合部50で添加物を混合し易いように、可搬形状の解繊繊維を細分化する構成を有することが好ましい。例えば、繊維供給部45が、カートリッジ200内の解繊繊維を掻き出す場合、掻き出しにより解繊繊維を分断し、細分化することが好ましい。また、繊維供給部45が送風又は吸引によってカートリッジ200内の解繊繊維を排出させる場合、気流によって解繊繊維を細分化することも可能である。
【0048】
また、カートリッジ200を使用せず、繊維処理部40が解繊繊維を形状保持性を有する程度に固める上記処理を行う場合、固めた解繊繊維(可搬形態の解繊繊維)は供給口46に投入される。この場合、繊維供給部45は、固めた解繊繊維をほぐしてから、例えば、送風又は吸引を利用したり、投入された解繊繊維を掻き出したり、ベルト搬送をしたり、又は、重力を利用したりすることによって、解繊繊維を管8に排出可能である。
【0049】
管8に排出された解繊繊維は、添加物混合部50に供給される。添加物混合部50は、樹脂を含む添加物を供給する添加物供給部52と、繊維供給部45から排出される解繊繊維を添加物混合部50に流す気流を、管8内に発生させる混合ブロアー56とを備える。
添加物混合部50では、混合ブロアー56によって気流を発生させ、管8及び混合ブロアー56の下流に繋がる管9において、解繊繊維と添加物とを混合させながら搬送する。また、解繊繊維は、管8、9を流れる過程で更にほぐされて、より細かい繊維状となる。
【0050】
添加物供給部52(樹脂収容部)は、添加物を蓄積する添加物カートリッジ(図示略)に接続され、添加物カートリッジ内部の添加物を管8に供給する。添加物カートリッジは、添加物供給部52に着脱可能な構成であってもよい。また、添加物カートリッジに添加物を補充する構成を備えてもよい。添加物供給部52は、例えば、添加物カートリッジ内部の微粉または微粒子からなる添加物をいったん貯留し、貯留された添加物をスクリューフィーダー等を用いて管8に供給する装置である。
【0051】
添加物供給部52が供給する添加物は、複数の繊維を結合させるための結合剤等の樹脂を含む。添加物に含まれる樹脂は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂であり、例えば、AS樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、等である。これらの樹脂は、単独、又は適宜混合して用いてもよい。すなわち、添加物は、単一の物質を含んでもよいし、混合物であってもよく、それぞれ単一または複数の物質で構成される、複数種類の粒子を含んでもよい。また、添加物は、繊維状であってもよく、粉末状であってもよい。
添加物に含まれる樹脂は、加熱により溶融して複数の繊維を互いに結着させる。従って、樹脂を繊維と混合させた状態で、樹脂が溶融する温度まで加熱されていない状態では、繊維同士は結着されない。
【0052】
また、添加物供給部52が供給する添加物は、結合剤の他、製造されるシートの種類に応じて、繊維を着色するための着色剤や、繊維の凝集や樹脂の凝集を抑制するための凝集抑制剤、繊維等を燃えにくくするための難燃剤を含んでもよい。また、着色剤を含まない添加物は、無色、或いは無色と見なせる程度に薄い色であってもよいし、白色であってもよい。
【0053】
なお、解繊繊維と添加物とを混合させる機構は、特に限定されず、高速回転する羽根により攪拌するものであってもよいし、V型ミキサーのように容器の回転を利用するものであってもよく、これらの機構を混合ブロアー56の前または後に設置してもよい。
【0054】
堆積部60は、解繊部20で解繊された解繊物を堆積させる。より具合的には、堆積部60は、添加物混合部50を通過した混合物を導入口62から導入し、絡み合った解繊物(解繊繊維)をほぐして、空気中で分散させながら降らせる。さらに、堆積部60は、添加物供給部52から供給される添加物の樹脂が繊維状である場合、絡み合った樹脂をほぐす。これにより、堆積部60は、シート形成部70に、混合物を均一性よく堆積させることができる。
【0055】
堆積部60は、ドラム部61(ドラム)と、ドラム部61を収容するハウジング部63(覆い部)とを有する。ドラム部61は、モーターによって回転駆動される円筒の篩である。ドラム部61は、網(フィルター、スクリーン)を有し、篩(ふるい)として機能する。この網の目により、ドラム部61は、網の目開き(開口)のより小さい繊維や粒子を通過させ、ドラム部61から下降させる。ドラム部61の構成は、例えば、ドラム部31の構成と同じである。
【0056】
なお、ドラム部61の「篩」は、特定の対象物を選別する機能を有していなくてもよい。すなわち、ドラム部61として用いられる「篩」とは、網を備えたもの、という意味であり、ドラム部61は、ドラム部61に導入された混合物の全てを降らしてもよい。
【0057】
シート形成部70は、第2ウェブ形成部71、加圧部82、及び加熱部84を有する。第2ウェブ形成部71は、ドラム部61の下方に配置され、堆積部60を通過した通過物を堆積させ、第2ウェブW2(堆積物)を形成する。第2ウェブ形成部71は、メッシュベルト72(ベルト)と、ローラー74と、サクション機構76とを有する。
【0058】
メッシュベルト72は無端形状のベルトであって、複数のローラー74に懸架され、ローラー74の回転により、図中矢印で示す方向に搬送される。メッシュベルト72は、例えば、金属製、樹脂製、布製、あるいは不織布等である。メッシュベルト72の表面は所定サイズの開口が並ぶ網で構成される。ドラム部61から降下する繊維や粒子のうち、網の目を通過するサイズの微粒子はメッシュベルト72の下方に落下し、網の目を通過できないサイズの繊維がメッシュベルト72に堆積し、メッシュベルト72とともに矢印方向に搬送される。メッシュベルト72は、シートを製造する動作中には、一定の速度V2で移動する。
【0059】
メッシュベルト72の網の目は微細であり、ドラム部61から降下する繊維や粒子の大半を通過させないサイズとすることができる。
サクション機構76は、メッシュベルト72の下方(堆積部60側とは反対側)に設けられる。サクション機構76は、サクションブロアー(図示略)の吸引力によって、下方に向く気流(堆積部60からメッシュベルト72に向く気流)を発生させることができる。
【0060】
サクション機構76によって、堆積部60により空気中に分散された混合物をメッシュベルト72上に吸引する。これにより、メッシュベルト72上における第2ウェブW2の形成を促進し、堆積部60からの排出速度を大きくすることができる。さらに、サクション機構76によって、混合物の落下経路にダウンフローを形成することができ、落下中に解繊物や添加物が絡み合うことを防ぐことができる。
【0061】
以上のように、堆積部60及び第2ウェブ形成部71(ウェブ形成工程)を経ることにより、空気を多く含み柔らかくふくらんだ状態の第2ウェブW2が形成される。メッシュベルト72に堆積された第2ウェブW2は、シート形成部70へと搬送される。
メッシュベルト72の搬送経路において、堆積部60の下流側には、加湿部78によって、ミストを含む空気が供給される。これにより、加湿部78が生成するミストが第2ウェブW2に供給され、第2ウェブW2が含む水分量が調整される。これにより、静電気によるメッシュベルト72への繊維の吸着等を抑制できる。
【0062】
シート形成部70は、メッシュベルト72に堆積し搬送部79により搬送された第2ウェブW2を、加圧部82及び加熱部84によって加圧加熱してシートSに成形する。第2ウェブW2が含む解繊物の繊維、及び添加物に熱を加えることにより、混合物中の複数の繊維が、互いに添加物(樹脂)を介して結着する。
加圧部82は、一対のカレンダーローラー85で構成され、第2ウェブW2を所定のニップ圧で挟んで加圧する。第2ウェブW2は、加圧されることによりその厚さが小さくなり、第2ウェブW2の密度が高められる。一対のカレンダーローラー85の一方は、加圧部駆動モーター(図示略)により駆動される駆動ローラーであり、他方は従動ローラーである。カレンダーローラー85は、加圧により高密度になった第2ウェブW2を、加熱部84に向けて搬送する。
【0063】
加熱部84は、例えば、加熱ローラー(ヒーターローラー)、熱プレス成形機、ホットプレート、温風ブロアー、赤外線加熱器、フラッシュ定着器を用いて構成できる。本実施形態では、加熱部84は、一対の加熱ローラー86を備える。加熱ローラー86は、内部または外部に設置されるヒーターによって、予め設定された温度に加温される。加熱ローラー86は、カレンダーローラー85によって加圧された第2ウェブW2を挟んで熱を与え、
図1中、符号Sで示すシートを形成する。
このように、堆積部60で形成された第2ウェブW2は、シート形成部70で加圧及び加熱されて、シートSとなる。
【0064】
一対の加熱ローラー86の一方は、加熱部駆動モーター(図示略)により駆動される駆動ローラーであり、他方は従動ローラーである。加熱ローラー86は、加熱したシートSを、切断部90に向けて搬送する。
なお、加圧部82が備えるカレンダーローラー85の数、及び加熱部84が備える加熱ローラー86の数は、特に限定されない。
【0065】
切断部90(カッター部)は、シート形成部70によって成形されたシートSを切断する。本実施形態では、切断部90は、図中符号Fで示すシートSの搬送方向と交差する方向にシートSを切断する第1切断部92と、搬送方向Fに平行な方向にシートSを切断する第2切断部94とを有する。第2切断部94は、例えば、第1切断部92を通過したシートSを切断する。
【0066】
切断部90により、A4サイズ等の所定サイズの単票のシートSが成形される。切断された単票のシートSは、排出部96に排出される。排出部96は、所定サイズのシートSを排紙する排紙トレイ、或いは、シートSを蓄積するスタッカーを備える。
このようにして、第2の装置100Bは、カートリッジ200内の解繊繊維、つまり、可搬形態の解繊繊維を供給する繊維供給装置、及び解繊繊維を利用してシートSを製造するシート製造装置(シート製造部)とを一体に備えた装置に構成されている。以下、説明の便宜上、第2の装置100Bを機能的に表記する場合、「シート製造装置」と適宜に表記する。
【0067】
図2はシート製造システム1の制御系を含む構成を示すブロック図である。
第1の装置100Aは、制御装置101A、操作部102A、表示部103A及び残量センサー104Aを有し、制御装置101Aの制御の下、独立して動作可能である。
制御装置101Aは、メインプロセッサー、ROM及びRAM等により構成されるコンピューターシステムである。制御装置101Aは、メインプロセッサーがROMに記憶される基本制御プログラムを実行することにより、第1の装置100Aの各部(供給部10、粗砕部12、解繊部20、選別部30、及び圧入部40)を制御する。操作部102Aは、第1の装置100Aに対する各種の指示を入力する。操作部103Aは、例えば、操作スイッチ又はタッチパネルを有する。
【0068】
制御装置101Aは、第1の装置100Aの電源がオンにされ、起動シーケンスを実行した後、第1の装置100Aの各部を制御可能になる。この場合、制御装置101Aは、操作部102Aを介して、第1ウェブW1(解繊繊維)の製造開始指示、製造条件(第1ウェブW1の製造量等)、製造開始日時(スケジュール)等の入力を受け付けることができる。そして、制御装置101Aは、製造指示が入力されると、又は、予め設定された製造開始日時に至ると、第1の装置100Aの各部を動作させる。これによって、古紙を粗砕及び解繊させて第1ウェブW1を製造し、第1ウェブW1が充填されたカートリッジ200を排出させることができる。
【0069】
表示部103Aは、制御装置101Aの制御の下、第1の装置100Aに関する各種の情報を表示する。表示部103Aは、例えば、液晶表示装置である。残量センサー104Aは、第1の装置100A内の原料(古紙)の残量を検出し、検出結果を制御装置101Aに出力する。この残量センサー104Aは、一個に限定されず、複数でもよい。本構成の残量センサー104Aは、供給部10における古紙の残量を検出するセンサーを少なくとも備えている。
【0070】
制御装置101Aは、残量センサー104Aによって、供給部10に残存する古紙(原料)の残量が設定値を下回ったことを検出すると、古紙の不足を報知する報知処理を行う。報知処理は、表示部103Aへの表示又は不図示の音声出力ユニットによる音声出力等である。なお、この第1の装置100Aが通信ネットワークを介して外部の装置(例えば、ユーザーが操作するPC(パーソナルコンピューター))と接続されている場合、外部の装置に古紙の不足(供給部10への古紙補充)を通知するようにしてもよい。
【0071】
また、粗砕部12における粗砕物の残量を検出する残量センサーを更に有してもよい。この場合、制御装置101Aは、この残量センサー104Aによって、粗砕物の残量が設定値を下回ったことを検出した際に、供給部10から古紙を粗砕部12に供給させ、粗砕部12に粗砕させるようにしてもよい。粗砕物を常に確保しておくことで、第1ウェブW1の製造開始時に、粗砕物を直ぐに解繊部20に供給でき、第1ウェブW1を迅速に製造できる。
【0072】
また、制御装置101Aは、第1の装置100Aの動作履歴を不図示のメモリーに記録するとともに、この動作履歴に基づいて繊維処理量を示す古紙処理量を計測する計測処理を行う。動作履歴は、例えば、供給部10による古紙の供給量(供給枚数)と供給された日時とを対応づけた情報である。また、本構成では、制御装置101Aが、動作履歴に基づいて供給部10による古紙の供給量(供給枚数)を計数し、この計数値を古紙処理量としてメモリー(図示略)に記録する。
【0073】
計測処理は、この方法に限定されず、古紙処理量を計測可能な方法を広く適用可能である。例えば、流量、重量又は距離等を計測するセンサーを利用して、解繊部20で解繊された解繊繊維の量、粗砕部12で粗砕された粗砕物の量、第1ウェブW1の製造量、又はカートリッジ200に充填した繊維の量を計測し、計測結果を古紙処理量としてもよい。また、第1の装置100Aが排出するカートリッジ200の本数(回数)を計数し、計数結果を古紙処理量としてもよい。制御装置101Aは、古紙処理量を表示部103Aに表示することによって、ユーザー等に古紙処理量を通知することができる。
【0074】
図2に示すように、第2の装置100Bについても、第1の装置100Aと同様に、制御装置101B、操作部102B、表示部103B及び残量センサー104Bを有し、制御装置101Bの制御の下、独立して動作可能である。
制御装置101Bは、メインプロセッサー、ROM及びRAM等により構成されるコンピューターシステムである。制御装置101Bは、メインプロセッサーがROMに記憶される基本制御プログラムを実行することにより、第2の装置100Bの各部(繊維供給部45、添加物混合部50、堆積部60、シート形成部70、及び切断部90)を制御する。操作部102Bは、第2の装置100Bに対する各種の指示を入力する。操作部103Bは、例えば、操作スイッチ又はタッチパネルを有する。
【0075】
制御装置101Bは、第2の装置100Bの電源がオンにされ、起動シーケンスを実行した後、第2の装置100Bの各部を制御可能になる。この場合、制御装置101Bは、操作部102Bを介して、シートSの製造開始指示、製造条件(シートSの密度(坪量)、形状(サイズ、厚さ)、色、製造量(製造枚数)等)、製造開始日時(スケジュール)等の入力を受け付けることができる。そして、制御装置101Bは、製造指示が入力されると、又は、予め設定された製造開始日時に至ると、第2の装置100Bの各部を動作させることによって、シートSを製造させる。
【0076】
ここで、制御装置101Bは、例えば、シート形成部70のメッシュベルト72の速度V2の調整、及びドラム部61から下降させる繊維の量の調整の少なくともいずれかを行うことによって、シートSの密度を制御する。また、制御装置101Bは、添加物供給部52(
図1)が添加する着色剤の種類及び量を制御することによって、シートSの色を制御する。また、制御装置101Bは、切断部90によってシートSのサイズを制御し、加圧部82によってシートSの厚さを制御する。これによって、予め設定された製造条件に従ったシートSが製造される。
【0077】
表示部103Bは、制御装置の制御の下、第2の装置100Bに関する各種の情報を表示する。表示部103Bは、例えば、液晶表示装置である。残量センサー104Bは、第2の装置100B内の原料の残量、及び/又は製造したシートSの残量を検出し、検出結果を制御装置101Bに出力する。本構成の残量センサー104Bは、繊維供給部45に装着されるカートリッジ200内の第1ウェブW1(解繊繊維)の残量(以下、カートリッジ200の残量と言う)を検出する残量センサーを少なくとも備えている。
【0078】
制御装置101Bは、残量センサー104Bによって、カートリッジ200の残量が設定値を下回ったことを検出すると、カートリッジ200の残量の不足を報知する報知処理を行う。報知処理は、表示部103Bへの表示又は不図示の音声出力ユニットによる音声出力等である。なお、この第2の装置100Bが通信ネットワークを介して外部の装置と接続される場合、外部の装置に繊維(原料)の不足(カートリッジ200の交換)を通知してもよい。
【0079】
また、排出部96に残存するシートSの残量を検出する残量センサーを更に有してもよい。この場合、制御装置101Bは、この残量センサーによって、排出部96に残存するシートSの残量が設定値を下回ったことを検出すると、シートSの不足を報知する報知処理を行うようにしてもよい。この報知処理は、上記と同様に、表示、音声出力又は外部の装置への通知のいずれでもよい。
【0080】
また、制御装置101Bは、第2の装置100Bの動作履歴を不図示のメモリーに記録するとともに、この動作履歴に基づいて繊維処理量を示すシート製造量を計測する計測処理を行う。動作履歴は、例えば、シートSの製造枚数と製造した日時とを対応づけた情報である。また、本構成では、制御装置101Bが、動作履歴に基づいてシートSの製造量(製造枚数)を計数し、この計数値をシート製造量としてメモリー(図示略)に記録する。制御装置101Bは、シート製造量を表示部103Aに表示することによって、ユーザー等にシート製造量を通知することができる。なお、シートSの製造枚数を計測する方法に代えて、カートリッジ200内から取り出した繊維の量、又は第2ウェブW2の製造量を計測するようにしてもよい。
【0081】
上記したように、第1の装置100A及び第2の装置100Bは各々独立して動作可能であるので、同一の場所に配置する必要がない。また、第1の装置100A及び第2の装置100Bは、大規模な水設備を必要としない乾式で構成される。これにより、繊維を含む原料を水に投入し、繊維を離解して抄き直す湿式(湿式抄紙法等)で構成する場合と比べて、水関係の設備を不要、又は簡略化でき、配置場所の自由度が高い。
例えば、シート製造装置である第2の装置100Bを、シートSの需要があるオフィスに配置し、粗砕・解繊装置である第1の装置100Aを、バックヤードに配置することができる(
図2参照)。この配置を配置パターンAと表記する。
【0082】
オフィスは主に事務作業を行うエリアであり、バックヤードは、事務作業を主としないエリア、例えば倉庫、作業場である。オフィスは、シートSを印刷媒体として使用可能な印刷装置が相対的に多く存在する等、シートSを必要とする機械が相対的に多いエリアである。
【0083】
配置パターンAの場合、ユーザーは、オフィス等で発生する古紙をバックヤードへ持ちこみ、第1の装置100Aの供給部10にセットする。次に、ユーザーは、第1の装置100Aを作動させることによって、古紙を粗砕及び解繊させて第1ウェブW1を製造させ、第1ウェブW1が充填されたカートリッジ200を排出させる。例えば、ユーザーは、処分対象の機密文書(以下、機密紙と言う)を第1の装置100Aにセットし、装置100Aを作動させることにより、直ちに機密紙を読み取り不能にできる。
このようにして、ユーザーは、バックヤードにて古紙を処分し、シートSの原料となる解繊繊維を調達できる。また、粗砕及び解繊に伴う振動や騒音がオフィスで発生する事態を回避できる。
【0084】
次いで、ユーザーは、カートリッジ200を持ってオフィスに移動し、カートリッジ200を、第2の装置100Bの繊維供給部45にセットする。そして、ユーザーは、第2の装置100Bを作動させることにより、カートリッジ200内の第1ウェブW1を原料としてシートSを製造させることができる。
その後、ユーザーは、製造されたシートSをオフィスの印刷装置(図示略)にセットすることによって、そのシートSへの印刷を開始することができる。すなわち、印刷に必要なシートSをオンデマンドで製造することができる。なお、第2の装置100Bの排出部96に製造済みのシートSがある場合、そのシートSを印刷装置にセットすれば、シートSが製造されるまでの待ち時間が生じることなく、ユーザーは、シートSを利用して印刷が可能である。
これにより、オフィス等で発生する古紙のリサイクルが可能になるとともに、機密紙を処分できる。
【0085】
配置パターンAでは、シートSを利用するエリアであるオフィスに、シート製造装置である第2の装置100Bを配置するので、ユーザーがシートSを利用し易くなる。また、粗砕及び解繊を行う第1の装置100Aをバックヤードに配置するので、第1の装置100Aをオフィスに配置する場合と比べて、粗砕及び解繊に伴う振動や騒音が問題とならない。また、機密紙等の古紙を、オフィスとバックヤードとの間で移動させるだけなので、外部のリサイクル業者に古紙の処分を依頼する場合と比べて、機密の漏洩防止に有利である。
従って、配置パターンAは、製造したシートSをオフィス内で調達可能にしながら、粗砕及び解繊等に伴う振動や騒音がオフィスで発生する事態を回避可能である。
【0086】
なお、シート製造システム1の配置場所としてのバックヤードは、オフィスの一部であってもよい。例えば、印刷装置が相対的に少ないか印刷装置が存在しないエリア、又は、シートSを利用する者が相対的に少ないエリアを広く適用可能である。例えば、ビルの一室を構成するオフィス空間を複数のエリアに区画した場合、各エリアのうち相対的にシートSの需要が高いエリアに第1の装置100Aを配置し、相対的にシートSの需要が低いエリアに第2の装置100Bを配置してもよい。
【0087】
また、配置パターンAに限定されず、配置パターンA以外の配置も可能である。
図3は複数の配置パターン例を示した図である。
図3に示す配置パターンBは、第1の装置100Aと第2の装置100Bとをオフィスに配置する。この場合、ユーザーは、オフィスに配置された第1の装置100Aによって機密紙等の古紙を粗砕及び解繊させる。従って、機密紙をオフィスから持ち出すことなく読み取り不能にでき、機密の漏洩防止に有利である。さらに、ユーザーは、シートSが必要な場合に、オフィスから移動することなく、第2の装置100BによってシートSをオンデマンドで製造可能である。
【0088】
例えば、ユーザーは、第1の装置100Aから排出されるカートリッジ200を保管しておき、第2の装置100Bの原料である解繊繊維が足りなくなったら、保管しておいたカートリッジ200を第2の装置100Bにセットする。これにより、オフィス内だけで古紙のリサイクルを完了させることができる。
また、第1の装置100Aと第2の装置100Bとは各々独立して動作するので、オフィス内の異なる場所に各装置100A、100Bを配置可能である。例えば、オフィス内において、ユーザーから離れた場所に第1の装置100Aを配置し、ユーザーや印刷装置に近い場所に第2の装置100Bを配置する等の配置が可能である。この場合、第1の装置100Aによる振動及び騒音がユーザーに影響し難くなり、また、ユーザーは近くの第2の装置100BからシートSを調達できる。
【0089】
このように、配置パターンBは、機密の漏洩防止を優先しながら、製造したシートSをオフィスで調達可能にする場合に有利である。なお、配置パターンBの配置は、第1の装置100Aがオフィス内で使用可能な程度に騒音及び振動が低減されている場合、又は、オフィス内に振動や騒音が問題となり難い場所がある場合等に好適である。
【0090】
図3に示す配置パターンCは、第1の装置100Aをオフィスに配置し、第2の装置100Bをバックヤードに配置する。この場合、ユーザーは、配置パターンBと同様に、機密紙をオフィスから持ち出すことなく読み取り不能にでき、機密の漏洩防止に有利である。また、第1の装置100Aによって得られた解繊繊維入りのカートリッジ200は、ユーザーによってバックヤードへ運び込まれる。
【0091】
そして、ユーザーは、シートSを製造する場合にバックヤードに移動し、解繊繊維入りのカートリッジ200を調達する。次いで、ユーザーは、解繊繊維をバックヤードに配置された第2の装置100Bにセットし、第2の装置100Bを作動させることによって、シートSを製造させることができる。
このように、配置パターンCは、機密の漏洩防止を優先しながら、オフィスのスペース低減を抑えたり、バックヤードを有効利用したりする場合等に好適である。
【0092】
以上説明したように、シート製造システム1は、解繊部20と、解繊部20が解繊した解繊繊維を可搬形態にする繊維処理部40と、可搬形態の解繊繊維を利用してシートSを製造する第2の装置100B(シート製造部)と、を備える。解繊した解繊繊維を可搬形態にするので、第2の装置100Bと、解繊部20及び繊維処理部40とを分離できる。従って、第2の装置100B、及び/又は解繊部20等を、材料となる古紙が生じ、且つ製造したシートの需要があるオフィス等に配置し易くなる。
【0093】
例えば、解繊による振動や騒音がオフィスで問題となる程度に大きい場合には、第2の装置100Bだけをオフィスに配置することで、解繊による振動や騒音がオフィスで発生しないようにすることができる。また、解繊による振動や騒音が比較的小さい場合には、第2の装置100Bをオフィスに配置するとともに、解繊部20を、オフィスのうち振動や騒音が問題となり難い場所に配置する、といった対処が可能である。
【0094】
また、繊維処理部40は、解繊繊維をカートリッジ200又は袋体等の容器に収容するので、解繊繊維の取り扱いが容易になり、解繊繊維を容易に持ち運ぶことができる。
また、繊維処理部40が、解繊繊維を、形状保持性を有する状態に処理する場合、カートリッジ200等の容器が不要になり、装置構成を簡易化し易くなる。この場合、解繊繊維を板形状、直方体形状、球形状のいずれかの状態に処理することにより、解繊繊維をまとめて移動させやすくなる等の効果を期待できる。なお、解繊繊維をカートリッジ200又は袋体等の容器に収容する場合にも、解繊繊維を板形状、直方体形状、球形状のいずれかの状態に処理してもよい。この場合、カートリッジ200に入れやすくなる等の効果を期待できる。また、容器の形状が、板形状、直方体形状、球形状のいずれかの状態であってもかまわない。
【0095】
また、繊維処理部40が、解繊繊維を真空パックすることによって可搬形態にする場合には、解繊繊維の充填率を効率良く高めることができるとともに、解繊繊維の取り扱いが容易になる。ここで、解繊部20は乾式であるので、解繊のために給排水設備を備える必要がない。また、水分を使用しないので、解繊部が湿式の場合と比べて、解繊繊維をカートリッジ200等の容器に収容したり、真空パックしたりするプロセスが容易である。
【0096】
なお、解繊繊維を可搬形態にする態様は上記の形態に限定されない。例えば、繊維を結合させるための結合剤を解繊繊維に含ませた後に、繊維処理部40に供給することによって、可搬形態の解繊繊維が結合剤を含むようにしてもよい。これにより、第2の装置100Bにて、結合剤を用意する必要がなくなる。また、可搬形態の解繊繊維に、結合剤以外の材料、例えば、着色剤、凝集抑制剤、難燃剤等を含ませてもよい。例えば、添加物供給部52の一部又は全ての構成を、繊維処理部40の上流側(つまり、第1の装置100A側)に設けることが可能である。
【0097】
また、シート製造システム1は、解繊部20を有する第1の装置100Aと、シートSを製造する第2の装置100Bとで構成されるので、第2の装置100Bをオフィス等に配置しつつ、第1の装置100Aを、解繊による振動や騒音が問題とならない場所に配置することができる。
しかも、第1の装置100Aと第2の装置100Bとは、それぞれ独立して動作可能であるので、これらの配置および稼働の自由度が向上し、オンデマンドでシートを製造することができる。
【0098】
(第2実施形態)
図4は第2実施形態に係るシート製造システム1の制御系を含む構成を示すブロック図である。
第2実施形態は、第1実施形態の第1の装置100Aの代わりに、解繊部20を有する第1の装置110Aと、粗砕部12を有する第3の装置110Cとを有している。なお、第1実施形態と同様の箇所は同一の符号を付して示して説明を省略し、異なる部分を詳述する。
【0099】
第3の装置110Cは、供給部10、粗砕部12及び粗砕物処理部40Aを備える。粗砕物処理部40Aは、粗砕部12で粗砕された粗砕物をカートリッジ210(容器)に充填し、排出部42Aに排出する。粗砕物処理部40A及び排出部42Aは、上記繊維処理部40及び排出部42と略同様の構成である。以下、説明の便宜上、第3の装置110Cを機能的に表記する場合、「粗砕装置」と適宜に表記する。
【0100】
また、第3の装置110Cは、制御装置111C、操作部112C、表示部113C及び残量センサー114Cを有し、制御装置111Aの制御の下、独立して動作可能である。制御装置111Cは、メインプロセッサー、ROM及びRAM等により構成されるコンピューターシステムである。制御装置111Cは、メインプロセッサーがROMに記憶される基本制御プログラムを実行することにより、第3の装置110Cの各部(供給部10、粗砕部12、粗砕物処理部40A)を制御する。操作部112Cは、第3の装置110Cに対する各種の指示を入力する。
【0101】
制御装置111Cは、第3の装置110Cの電源がオンにされ、起動シーケンスを実行した後、第3の装置110Cの各部を制御可能になる。この場合、制御装置111Cは、操作部112Cを介して、粗砕物の製造開始指示、製造条件(粗砕物の製造量等)、製造開始日時(スケジュール)等の入力を受け付けることができる。そして、制御装置111Cは、製造指示が入力されると、又は、予め設定された製造開始日時に至ると、第3の装置110Cの各部を動作させることによって、古紙を粗砕させ、粗砕物が充填されたカートリッジ210を排出させる。
【0102】
表示部113Cは、制御装置111Cの制御の下、第3の装置110Cに関する各種の情報を表示する。残量センサー114Cは、第3の装置110C内の原料(古紙)の残量を検出し、検出結果を制御装置に出力する。この残量センサー114Cは、一個に限定されず、複数でもよい。本構成の残量センサー114Cは、供給部10における古紙の残量を検出するセンサーを少なくとも備えている。
【0103】
制御装置111Cは、残量センサー114Cによって、供給部10に残存する古紙の残量が設定値を下回ったことを検出すると、古紙の不足を報知する報知処理を行う。報知処理は、表示部113Cへの表示又は不図示の音声出力ユニットによる音声出力等である。なお、この第3の装置110Cが通信ネットワークを介して外部の装置(例えば、ユーザーが操作するPC)と接続される場合、外部の装置に古紙の不足(供給部10への古紙補充)を通知してもよい。
【0104】
また、制御装置111Cは、第3の装置110Cの動作履歴を不図示のメモリーに記録するとともに、この動作履歴に基づいて繊維処理量を示す古紙処理量を計測する計測処理を行う。動作履歴は、例えば、供給部10による古紙の供給量(供給枚数)と供給された日時とを対応づけた情報である。また、本構成では、制御装置111Aが、動作履歴に基づいて供給部10による古紙の供給量(供給枚数)を計数し、この計数値を古紙処理量としてメモリー(図示略)に記録する。なお、計測処理は、この方法に限定されず、古紙処理量を計測可能な方法を広く適用可能である。制御装置111Cは、古紙処理量を表示部113Cに表示することによって、ユーザー等に古紙処理量を通知することができる。
【0105】
第1の装置110Aは、粗砕物供給部45A、解繊部20、選別部30、及び繊維処理部40を備える。粗砕物供給部45Aは、カートリッジ210を着脱自在な供給口46Aを有し、供給口46Aにセットされたカートリッジ210から粗砕物を取り出し、解繊部20に供給する。解繊部20、選別部30、及び繊維処理部40は、第1実施形態の第1の装置100Aと同じである。以下、説明の便宜上、第1の装置110Aを機能的に表記する場合、「解繊装置」と適宜に表記する。
【0106】
また、第1の装置110Aは、制御装置111A、操作部112A、表示部113A及び残量センサー114Aを有し、制御装置111Aの制御の下、独立して動作可能である。制御装置111Aは、メインプロセッサー、ROM及びRAM等により構成されるコンピューターシステムである。制御装置111Aは、メインプロセッサーがROMに記憶される基本制御プログラムを実行することにより、第1の装置110Aの各部(粗砕物供給部45A、解繊部20、選別部30、繊維処理部40)を制御する。操作部112Aは、第1の装置110Aに対する各種の指示を入力する。
【0107】
制御装置111Aは、第1の装置110Aの電源がオンにされ、起動シーケンスを実行した後、第1の装置110Aの各部を制御可能になる。この場合、制御装置111Aは、操作部112Aを介して、第1ウェブW1(解繊繊維)の製造開始指示、製造条件(第1ウェブW1の製造量等)、製造開始日時(スケジュール)等の入力を受け付けることができる。そして、制御装置111Aは、製造指示が入力されると、又は、予め設定された製造開始日時に至ると、第1の装置110Aの各部を動作させる。これによって、古紙を解繊させて第1ウェブW1を製造し、第1ウェブW1が充填されたカートリッジ200を排出させることができる。
【0108】
表示部113Aは、制御装置111Aの制御の下、第1の装置110Aに関する各種の情報を表示する。残量センサー114Aは、第1の装置110A内の原料となる繊維の残量を検出し、検出結果を制御装置111Aに出力する。この残量センサー114Aは、例えば、粗砕物供給部45Aに装着されるカートリッジ210内の粗砕物の残量を検出する。
【0109】
制御装置111Aは、残量センサー114Aによって、第1の装置110A内の粗砕物の残量が設定値を下回ったことを検出すると、粗砕物の不足(例えばカートリッジ210の交換)を報知する報知処理を行う。報知処理は、表示部113Aへの表示又は不図示の音声出力ユニットによる音声出力等である。なお、この第1の装置110Aが通信ネットワークを介して外部の装置(例えば、ユーザーが操作するPC)と接続される場合、外部の装置に粗砕物の不足を通知してもよい。
【0110】
また、制御装置111Aは、第1の装置110Aの動作履歴を不図示のメモリーに記録するとともに、この動作履歴に基づいて繊維処理量を示す古紙処理量を計測する計測処理を行う。動作履歴は、例えば、解繊部20で解繊された解繊繊維の量と、解繊した日時とを対応づけた情報である。また、本構成では、制御装置111Aが、動作履歴に基づいて、解繊繊維の量を計数し、この計数値を古紙処理量としてメモリー(図示略)に記録する。なお、解繊繊維の量は、例えば、流量、重量又は距離等を計測するセンサーを利用して計測でき、また、第1ウェブW1の製造量、又はカートリッジ200に充填した繊維の量を、解繊繊維の量(古紙処理量)として計測してもよい。制御装置111Aは、古紙処理量を表示部113Aに表示することによって、ユーザー等に古紙処理量を通知することができる。
【0111】
第2の装置100Bは、第1実施形態と同じである。
本実施形態では、シート製造システム1を構成する第1の装置110A、第2の装置100B及び第3の装置110Cが各々独立して動作可能であるので、同一の場所に配置する必要がない。また、各装置110A、100及び110Cは、大規模な水設備を必要としない乾式で構成されるので、湿式で構成する場合と比べて、水関係の設備を不要、又は簡略化でき、オフィス等への設置が容易である。
例えば、シート製造装置である第2の装置100Bは、シートSの需要があるオフィスに配置され、粗砕装置である第3の装置110Cについても、粗砕対象の古紙が発生するオフィスに配置される。また、解繊装置である第1の装置110Aはバックヤードに配置される(
図4)。この配置を配置パターンDと表記する。
【0112】
配置パターンDの場合、ユーザーは、オフィスに配置された第3の装置110Cによって機密紙等の古紙を粗砕させることができる。従って、機密紙をオフィスから持ち出すことなく読み取り不能にでき、機密の漏洩防止に有利である。また、第3の装置110Cによって得られた粗砕物は、ユーザー等によってバックヤードへ運び込まれる。
これによって、ユーザーは、バックヤードにて粗砕物入りのカートリッジ210)を調達し、バックヤードに配置された第2の装置110Bによって解繊繊維入りのカートリッジ200を得ることができる。この場合、バックヤードで解繊が行われるので、解繊に伴う振動や騒音がオフィスで発生する事態が回避される。
【0113】
次いで、ユーザーは、バックヤードで得られた解繊繊維入りのカートリッジ200を持ってオフィスに移動し、オフィスに配置された第2の装置100Bによって、シートSを製造させることができる。ユーザーは製造されたシートSをオフィスの印刷装置にセットすることにより、そのシートSへの印刷を直ちに開始することができる。
【0114】
配置パターンDでは、機密紙等の古紙をオフィス内で粗砕するので、機密の漏洩防止に有利であり、且つ、シートSをオフィスで製造するので、シートSをオンデマンドで製造し易くなり、シートSの印刷利用を図り易くなる。また、解繊をバックヤードで行うので、解繊に伴う振動や騒音がオフィスで発生する事態を回避することができる。
一般に、乾式の解繊はインペラーミル等を使用するので、粗砕を行う場合より振動や騒音が大きくなり易い。配置パターンDでは、解繊時の振動や騒音によるオフィスへの影響を回避しながら、オフィスのユーザーの利便性を向上可能である。
【0115】
図5は複数の配置パターン例を示した図である。
図5に示す配置パターンA’は、シート製造システム1を2台の装置100A,100Bで構成した場合の配置パターンAに類似する。つまり、シート製造装置である第2の装置100Bをオフィスに配置し、粗砕及び解繊を行う第3の装置110C及び第1の装置110Aをバックヤードに配置する。
この配置パターンA’によれば、配置パターンAで得られる効果に加えて、バックヤードに配置される装置が2台になるので、バックヤードでの配置および稼働の自由度が向上する。また、第3の装置110Cは、第1の装置110Aに比べて、起動・停止が容易なので、機密紙等を即座に粗砕することができる。したがって、機密の漏洩防止に有利である。
【0116】
また、
図5に示す配置パターンEは、粗砕装置である第3の装置110Cを、粗砕対象の古紙が発生するオフィスに配置し、解繊装置である第1の装置110A及びシート製造装置である第2の装置100Bをバックヤードに配置する。
配置パターンEの場合、ユーザーは、オフィスに配置された第3の装置110Cによって機密紙等の古紙を粗砕させることができ、機密の漏洩防止に有利である。また、第3の装置110Cによって得られた粗砕物は、ユーザー等によってバックヤードへ運び込まれる。
【0117】
ユーザーは、バックヤードにて粗砕物を調達し、バックヤードに配置された第2の装置110Bにより、シートSの原料となる解繊繊維を得ることができる。バックヤードには、シート製造装置である第2の装置100Bも配置されているので、解繊繊維を容易に第2の装置100Bにセットし、シートSを製造させることができる。従って、ユーザーはバックヤードにてシートSを容易に調達することができる。
【0118】
配置パターンEは、機密の漏洩防止に有利であり、且つ、バックヤードで解繊及びシート製造を行うので、解繊に伴う振動や騒音がオフィスで発生しないようにすることができる。
【0119】
また、
図5に示す配置パターンC’は、シート製造システム1を2台の装置100A,100Bで構成した場合の配置パターンCに類似する。つまり、粗砕装置である第3の装置110C及び第1の装置110Aをオフィスに配置し、シート製造装置である第2の装置100Bをバックヤードに配置する。
この配置パターンC’によれば、配置パターンCで得られる効果に加えて、オフィスに配置される装置が2台になるので、オフィスでの配置および稼働の自由度が向上する。すなわち、第3の装置110Cは、オフィスの古紙が発生する場所に配置し、第1の装置110Aは、オフィスの中の振動や騒音の影響が少ない場所に配置することができる。
【0120】
(第3実施形態)
図6は第3実施形態に係るシート製造システム1の制御系を含む構成を示すブロック図である。
第3実施形態は、第2実施形態の第1の装置110A及び第2の装置100Bが、一台の装置(以下、第4の装置)120Aで構成される点が、第2実施形態と異なる。なお、上記の各実施形態と同様の箇所は同一の符号を付して示して説明を省略し、異なる部分を詳述する。
第4の装置120Aは、粗砕物供給部45A、解繊部20、選別部30、添加物混合部50、堆積部60、シート形成部70、及び切断部90を備える。つまり、第4の装置120Aは、解繊及びシート製造を行う装置として機能する。以下、説明の便宜上、第4の装置120Aを機能的に表記する場合、「解繊・シート製造装置」と適宜に表記する。
【0121】
また、第4の装置120Aは、制御装置121A、操作部122A、表示部123A及び残量センサー124Aを有し、制御装置121Aの制御の下、独立して動作可能である。制御装置121Aは、メインプロセッサー、ROM及びRAM等により構成されるコンピューターシステムである。制御装置121Aは、メインプロセッサーがROMに記憶される基本制御プログラムを実行することにより、第4の装置120Aの各部(粗砕物供給部45A、解繊部20、選別部30、添加物混合部50、堆積部60、シート形成部70、及び切断部90)を制御する。操作部122Aは、第4の装置120Aに対する各種の指示を入力する。
【0122】
制御装置121Aは、第4の装置120Aの電源がオンにされ、起動シーケンスを実行した後、第4の装置120Aの各部を制御可能になる。この場合、制御装置121Aは、操作部122Aを介して、シートSの製造開始指示、製造条件(シートSの密度(坪量)、形状(サイズ、厚さ)、色、製造量(製造枚数)等)、製造開始日時(スケジュール)等の入力を受け付けることができる。そして、制御装置121Aは、製造指示が入力されると、又は、予め設定された製造開始日時に至ると、第4の装置120Aの各部を動作させることによって、カートリッジ210内の粗砕物を、解繊し、解繊繊維から製造条件に従ったシートSを製造する。
【0123】
表示部123Aは、制御装置121Aの制御の下、第4の装置120Aに関する各種の情報を表示する。残量センサー124Aは、第4の装置120A内の原料、及び/又は製造したシートSの残量を検出し、検出結果を制御装置121Aに出力する。本構成の残量センサー124Aは、例えば、粗砕物供給部45Aに装着されるカートリッジ210内の粗砕物の残量を検出する。
【0124】
制御装置121Aは、第4の装置120A内の粗砕物の残量が設定値を下回ったことを検出すると、粗砕物の不足(例えばカートリッジ210の交換)を報知する報知処理を行う。報知処理は、表示部123Aへの表示又は不図示の音声出力ユニットによる音声出力等である。なお、この第4の装置120Aが通信ネットワークを介して他の装置(例えば、ユーザーが操作するPC)と接続される場合、他の装置に粗砕物の不足を通知してもよい。
【0125】
また、制御装置121Aは、第4の装置120Aの動作履歴を不図示のメモリーに記録するとともに、この動作履歴に基づいて繊維処理量を示すシート製造量を計測する計測処理を行う。動作履歴は、例えば、シートSの製造枚数と製造した日時とを対応づけた情報である。また、本構成では、制御装置121Aが、動作履歴に基づいてシートSの製造量(製造枚数)を計数し、この計数値をシート製造量としてメモリー(図示略)に記録する。制御装置121Aは、シート製造量を表示部123Aに表示することによって、ユーザー等にシート製造量を通知することができる。なお、シートSの製造枚数を計測する方法に代えて、カートリッジ210内から取り出した粗砕物の量、又は第2ウェブW2の製造量を計測するようにしてもよい。
【0126】
例えば、粗砕装置である第3の装置110Cはオフィスに配置され、解繊・シート製造装置である第4の装置120Aはバックヤードに配置される(
図6参照)。この配置を配置パターンE’と表記する。
配置パターンE’は、シート製造システム1を3台の装置110C、110A、及び100Bで構成した場合の配置パターンEに類似する。
配置パターンE’の場合、ユーザーは、オフィスに配置された第3の装置110Cによって機密紙等の古紙を粗砕させることができ、機密の漏洩防止に有利である。また、第3の装置110Cによって生成された粗砕物は、ユーザー等によってバックヤードへ運び込まれる。
【0127】
ユーザーは、バックヤードにて粗砕物を調達し、バックヤードに配置された第4の装置120Aによって、シートSを製造させることができる。これにより、配置パターンEと同様の効果、つまり、機密の漏洩防止に有利であり、且つ、バックヤードで解繊及びシート製造を行うので、解繊に伴う振動や騒音がオフィスで発生しないようにすることができる、といった効果が得られる。
【0128】
(第4実施形態)
図7は第4実施形態に係るシート製造システム1の概要構成を示す図である。
第4実施形態は、複数のオフィスX1、X2、X3でシートSを製造可能にする。以下、第1実施形態と異なる点を説明する。
シート製造装置である第2の装置100Bは、オフィスX1、X2、X3の各々に配置される。また、粗砕・解繊装置である第1の装置100Aは、バックヤードに配置される。つまり、第4実施形態は、上記した配置パターンAに対応する配置である。
【0129】
オフィスX1、X2、X3の各々には、各オフィスにて古紙を回収するための回収ボックス11が配置されるとともに、各オフィスにて古紙を細断するためのシュレッダーとして機能する粗砕部12Xが配置される。粗砕部12Xは、単独で古紙を粗砕可能な装置であり、例えば、第1の装置100A内の粗砕部12と同様の構成が適用される。
【0130】
図7に示すように、第1の装置100Aには、
図7に矢印で示すように、各オフィスX1、X2、X3の回収ボックス11に回収された古紙が供給される供給口12Kが設けられる。供給口12Kは、粗砕部12に古紙を供給するための部分である。つまり、各オフィスX1、X2、X3のユーザー等は、古紙をバックヤードに持ち運んで供給口12Kに投入し、第1の装置100Aを作動させることによって、シートSの原料となる解繊繊維を得ることができる。
【0131】
各オフィスX1、X2、X3には、単独で動作可能な粗砕部12Xが配置されるので、機密紙等の古紙をオフィス内で粗砕することもでき、機密の漏洩防止に有利である。例えば、機密性の高くない古紙は、オフィスの回収ボックス11に入れられてバックヤードにて粗砕する一方、機密性の高い古紙は、オフィス内の粗砕部12Xにて粗砕することが可能である。
【0132】
また、第1の装置100Aには、
図7に矢印で示すように、各オフィスX1、X2、X3内の粗砕部12Xによって粗砕された粗砕物が供給される供給口20Kが設けられる。供給口20Kは、解繊部20に粗砕物を供給するための部分である。つまり、各オフィスX1、X2、X3のユーザー等は、オフィス内の粗砕物をバックヤードに持ち運んで供給口20Kに投入し、第1の装置100Aを作動させることによって、解繊繊維を得る。そして、得られた解繊繊維を各オフィスX1、X2、X3に持ち込み、オフィスX1、X2、X3に配置された第2の装置100Bに投入し、第2の装置100Bを作動させることによって、シートSを製造させることができる。
【0133】
このように、各オフィスX1、X2、X3でシートSを製造可能にしながら、粗砕・解繊装置である第1の装置100Aについては各オフィスX1、X2、X3のユーザーで共用することができる。従って、配置パターンAの効果を得ながら第1の装置100Aの台数を低減できる。
上記したように、各オフィスX1、X2、X3に配置される第2の装置100Bでは、制御装置101B(
図2)によってシート製造量が計測される。これらシート製造量をユーザー等が確認することによって、各オフィスX1、X2、X3のシート製造量を比較することができる。この比較結果は、第1の装置100A及び第2の装置100Bの配置を向上させる有効な情報となる。例えば、シート製造量が少ないオフィスについては第2の装置100Bの配置を止めたり、他のオフィスに第2の装置100Bを移動したり、といった対処がし易くなる。また、シート製造量が多いオフィスに近い位置に、第1の装置100Aを移動する等の対処もし易くなる。また、各オフィスに、印刷装置が配置してある場合、各オフィスでの印刷量を把握し、印刷量が多いオフィスに近い位置に、第1の装置100Aを移動する等の対処をしてもよい。
【0134】
(第5実施形態)
図8は第5実施形態に係るシート製造システム1の概要構成を示す図である。
第5実施形態は、複数のオフィスX1、X2、X3でシートSを粗砕及び解繊可能にする。以下、第1実施形態と異なる点を説明する。
粗砕・解繊装置である第1の装置100Aは、オフィスX1、X2、X3の各々に配置される。また、シート製造装置である第2の装置100Bは、バックヤードに配置される。つまり、第5実施形態は、上記した配置パターンCに対応する配置である。
【0135】
オフィスX1、X2、X3の各々には、各オフィスにて古紙を回収するための回収ボックス11が配置される。また、
図8には、各オフィスX1〜X3のユーザーが使用するPC(
図8中、符号1X、2X、3Xを付して示す)と、各オフィスX1〜X3にてユーザーが印刷するための印刷装置(
図8中、符号1Y、2Y、3Yを付して示す)とを示している。各PC1X、2X、3Xと印刷装置1Y、2Y、3Yとは、通信ネットワークNWを介して通信可能に接続されている。通信ネットワークNWは、有線又は無線の通信ネットワークであり、公知の通信ネットワークを広く適用可能である。
【0136】
図8に示すように、各オフィスX1、X2、X3には、粗砕・解繊装置である第1の装置100Aが配置されるので、ユーザーは、機密紙等の古紙をオフィス内で粗砕及び解繊させることができ、機密の漏洩防止に有利である。また、各オフィスX1、X2、X3には、回収ボックス11が配置されるので、回収ボックス11に回収された古紙についても、第1の装置100Aによりオフィス内で粗砕及び解繊させることができる。
【0137】
また、
図8に矢印で示すように、第1の装置100Aから排出されたカートリッジ200は、バックヤードに持ち運ばれ、バックヤードに配置された第2の装置100Bにセットされ、シートSの製造に利用される。そして、製造されたシートSは、バックヤードから各オフィスX1、X2、X3に運ばれ、各オフィスX1、X2、X3の印刷装置1Y、2Y、3Yにセットされる。これにより、各オフィスX1〜X3のPC1X、2X、3Xからの印刷データによって、シートSに印刷することができる。
【0138】
このように、各オフィスX1、X2、X3で古紙を粗砕及び解繊可能にしながら、シート製造装置である第2の装置100Bについては各オフィスX1、X2、X3のユーザーで共用することができる。従って、配置パターンCの効果を得ながら第2の装置100Bの台数を低減できる。
【0139】
上記したように、各オフィスX1、X2、X3に配置される第1の装置100Aでは、制御装置101Aによって、粗砕及び解繊の量を示す古紙処理量が計測される。これらシート製造量をユーザー等が確認することによって、各オフィスX1、X2、X3の古紙処理量を比較することができる。この比較結果は、第1の装置100Aの配置を向上させる有効な情報となる。例えば、古紙処理量が少ないオフィスについては第1の装置100Aの配置を止めたり、他のオフィスに第1の装置100Aを移動したり、といった対処がし易くなる。また、古紙処理量が多いオフィスに近い位置に、第2の装置100Bを移動する等の対象も可能になる。
【0140】
(第6実施形態)
第6実施形態は、シート製造装置である第2の装置100Bが、シートSに印刷する印刷部1Zを有する点が第1実施形態と異なる。
図9は第6実施形態の第2の装置100Bの制御系を含む構成を示すブロック図である。第2の装置100Bには、排出部96に排出されたシートSを印刷部1Zに供給するシート供給機構(図示略)が設けられ、印刷部1Zによって、製造したシートSに印刷可能である。
【0141】
また、第2の装置100Bには、通信ネットワークNWを介して外部の機器(
図9の例ではPC1X、2X、3X等)と通信するための通信部105Bが設けられる。第2の装置100Bの制御装置101Bは、通信部105Bによって、外部の機器であるPC1X、2X、3X等から印刷データを受信する。そして、印刷データを受信した場合、制御装置101Bは、印刷データに対応する印刷画像を印刷部1ZによってシートSに印刷させる印刷制御を行う。この構成によれば、別体の印刷装置を配置する場合と比べて、機器の設置効率が向上する。
【0142】
ここで、制御装置101Bは、印刷データを印刷開始指示として受信した場合に、印刷開始指示をトリガーとしてシートSを製造してもよい。
図10は印刷開始指示をトリガーとしてシートSを製造する場合の動作例を示すフローチャートである。
制御装置101Bは、印刷データ(印刷開始指示に相当)を受信すると(ステップS1D;YES)、印刷データによって特定される印刷量に基づき、シートSの製造が必要か否かを判定する(ステップS2D)。
【0143】
シートSの製造が必要か否かは、排出部96に残存するシートSの残量に基づいて判定する。例えば、制御装置101Bは、残量センサー104Bによって、排出部96に残存するシートSの残量を検出可能に構成され、シートSの残量が、印刷量以上の場合、シートSの製造が不要と判定する(ステップS2D;NO)。この場合、制御装置101Bは、排出部96に残存するシートSを印刷部1Zに給紙する制御を開始する(ステップS3D)。次に、制御装置101Bは、給紙を終了するか否かを判定する(ステップS4D)。制御装置101Bは、印刷対象のシートSを印刷量だけ印刷部1Zに供給すると、給紙を終了すると判定し(ステップS4D;YES)、給紙を停止する(ステップS5D)。
【0144】
ステップS2Dにおいて、制御装置101Bは、排出部96に残存するシートSが印刷量未満の場合(印刷量を満たさない場合)に、シートSの製造が必要と判定する(ステップS2D;YES)。なお、シートSの残量が印刷量以上であっても、予め設定した設定残量よりも少ない場合は、シートSの製造が必要と判定するようにしてもよい。シートSの製造が必要と判定した場合(ステップS2D;YES)、制御装置101Bは、ステップS6Dの処理に移行し、不足するシートSを製造対象のシートとして、不足する枚数を確保する目標製造量を特定する。目標製造量は、不足する枚数と同一でもよいし、不足する枚数よりも多い枚数に設定してもよい。次いで、制御装置101Bは、製造対象のシートSの製造を開始する(ステップS7D)。
【0145】
制御装置101Bは、シートSの製造を終了するか否かを判定し(ステップS8D)、製造を終了する場合、第2の装置100Bの各部の動作を停止させる(ステップS9D)。製造を終了する場合とは、シートSの製造量が目標製造量に到達した場合等である。
続いて、制御装置101Bは、製造されたシートSを、排出部96を経由して印刷部1Zに給紙する制御を開始する(ステップS10D)。また、制御装置101Bは、シートSの給紙を終了するか否かを判定し(ステップS11D)、給紙を終了する場合、給紙する制御を停止させる(ステップS12D)。給紙を終了する場合とは、印刷量に相当する枚数のシートSを印刷部1Zに供給した場合である。以上により、印刷対象のシートSが不足する場合、不足するシートSを製造し、印刷部1Zに給紙することができる。
【0146】
このように、印刷開始指示をトリガーとしてシートSを製造するので、印刷開始指示に応じてオンデマンドでシートSを製造することができる。しかも、シートSの残量に基づいてシートSを製造するか否かを判定するので、シートSの残量に合わせてシートSを適切に自動補充させることができる。また、シート製造装置である第2の装置100Bと印刷部1Zとが一体であるので、シートSの製造と、製造されたシートSへの印刷とを円滑に行うことができる。なお、シートSの製造をしながら、シートSへの印刷を並行して実施してもかまわない。
【0147】
第6実施形態において、第2の装置100Bを、静電式でシートSを製造する構成にしてもよい。
図11は静電式でシートSを製造する場合の要部(以下、シート製造部75と表記する)を示す模式図である。
シート製造部75は、シートSの原料となる繊維含有材料を搬送ベルト401(被転写体)に静電転写し、表面性状を整える後処理を行うことによって、シートSを製造する。
このシート製造部75は、繊維含有材料を供給する供給部410、供給された繊維含有材料を担持する担持体420(第2担持体)、担持された繊維含有材料が静電転写される搬送ベルト401、及び後処理を行う後処理部430を有する。
【0148】
このシート製造部75では、繊維含有材料を担持体420から被転写体(搬送ベルト401)に静電転写する。これにより、被転写体(搬送ベルト401)に付着した繊維含有材料の付着量にばらつきが生じるのを防止できる、すなわち、被転写体(搬送ベルト401)に繊維含有材料が過不足なく付着する。その結果、繊維含有材料から得られるシートSを、厚さが均一なものとして安定して製造できる。
【0149】
原料となる繊維含有材料は、セルロース繊維と、セルロース繊維の少なくとも一部を被覆している疎水性材料とを含む複合体で構成され、後処理部430によって加圧加熱されることによって、シートSが形成される。
セルロース繊維は、古紙等のセルロース製品由来のものでも、バージンパルプ由来のものでもよいし、セルロースを含む繊維を広く適用可能である。例えば、古紙を解繊処理して得られるセルロース繊維を利用することができる。
【0150】
疎水性材料は、セルロース繊維同士を結着させることによりシートSを形成する。さらに、疎水性材料は、セルロース繊維を被覆し、複合体の帯電特性が安定化する。これにより、静電塗布によりシートSを好適に形成できる。疎水性材料には、例えば、熱可塑性樹脂、又は硬化性樹脂等を用いることができる。
また、疎水性材料は、所望の帯電特性を得るための帯電制御剤(電荷制御剤)、又はシートSの色を調整するための着色剤を含んでもよい。
【0151】
図11に示すように、供給部410は、ハウジング部411内に、貯留部412、攪拌機413(アジテーター)、ローラー414、第1担持体415、及びブレード416を収納する。
貯留部412は、セルロース繊維と熱可塑性樹脂とを含む繊維含有材料を貯留する。攪拌機413は、貯留部412内で繊維含有材料を攪拌し、攪拌時の摩擦によって繊維含有材料を帯電させる。この繊維含有材料は、ローラー414の回転により第1担持体415に供給される。第1担持体415は、ローラー414との間に電位差を有し、繊維含有材料が静電付着する。ブレード416は、第1担持体415に付着した繊維含有材料の厚さ(付着量)を調整して所定厚のシート状に調整(薄膜化)するとともに、摩擦によって繊維含有材料を帯電させる。
【0152】
担持体420は、第1担持体415との間に電位差を有し、繊維含有材料が静電付着する。担持体420は、回転するローラー部材であり、担持体420に担持した繊維含有材料を、搬送ベルト401に転写させる。
担持体420の周囲には、担持体420の外周面421を帯電させる帯電部422、及び外周面421の電位を調整する露光部423が設けられる。さらに、担持体420の周囲には、担持体420との間の電位差で生じる静電気力によって、繊維含有材料を搬送ベルト401に転写させる転写部424が設けられる。
【0153】
また、転写部424は、搬送ベルト401に転写された繊維含有材料を担持体420との間で加圧し、繊維含有材料の厚さを均一な厚さに調整する。搬送ベルト401は、無端形状のベルトで構成され、複数のローラー402によって搬送される。搬送ベルト401は、繊維含有材料が転写される面が中・高抵抗(体積抵抗率107〜1011Ω・cm)を有する樹脂で構成されているのが好ましい。このような構成材料としては、特に限定されず、例えば、フッ素系樹脂にカーボンブラックが混練されたものを用いることができる。これにより、繊維含有材料の粉体が電位差で搬送ベルト401に転写され、さらに搬送ベルト401上で静電保持し易くなる。
【0154】
後処理部430は、搬送ベルト401に転写された繊維含有材料の表面を平滑化する均し処理部431、繊維含有材料を加圧する加圧処理部432、繊維含有材料の表面を半固化させる半固化処理部433、及び、層状をなす繊維含有材料を固化する固化部434を備える。均し処理部431は、少なくとも外周面が金属面の均しローラー435を有し、均しローラー435によって繊維含有材料の表面を平滑化するとともに、アース線436を介して繊維含有材料に対して除電を行う。
【0155】
加圧処理部432は、加圧ローラー437による加圧によって繊維含有材料同士を結合させ、密度を均一化させる。半固化処理部433は、断熱材で構成されたチャンバー438と、チャンバー438内に設けられるヒーター439とを有し、ヒーター439による加熱によって繊維含有材料の表面を半固化させる。
【0156】
固化部434は、固化ローラー440と、固化ローラー440内に設けられるヒーター441とを有し、ヒーター441への通電によって固化ローラー440を加熱し、固化ローラー440によって繊維含有材料を加熱しながら、繊維含有材料を層厚が減少する方向に加圧する。これにより、繊維含有材料内の熱可塑性樹脂が溶融し、溶融した熱可塑性樹脂が、固化ローラー440を通過した後に、例えば自然に冷却されて、結着し、固化する。このようにして、過不足なく固化した繊維含有材料、つまり、シートSが製造される。
後処理部430の下流には、シートSの搬送ベルト401からの剥離を促進する送風ファン(図示略)、及び切断部90(図示略)等が設けられる。
【0157】
このシート製造部75は、ウェブ形成等を必要としないので、シートSの製造時間を短縮し易い。このため、
図10に示す制御等によってシートSを製造する場合に、シートSを短時間で製造することができる。
【0158】
なお、上記の各実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明を実施する具体的態様に過ぎず、本発明を限定するものではなく、各実施形態で説明した構成の全てが本発明の必須構成要件であることも限定されない。また、この発明は各実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0159】
例えば、各実施形態では、乾式のシート製造システム1に本発明を適用する場合を説明したが、これに限らない。例えば、繊維を含む原料を水に投入し、繊維を離解して抄き直す、いわゆる湿式(例えば湿式抄紙法)でシートを製造するシート製造システムに本発明を適用してもよい。
湿式の場合、例えば、粗砕物をバルパーへ投入して湿式で解繊し、それを抄いて圧縮せず、乾燥のみした状態でカートリッジ200に収容(充填)する。また、カートリッジ200に収容する方法に代えて、解繊繊維が水分を含むので、解繊繊維が形状保持性を有する程度に解繊繊維を絞る処理等を行うことにより、解繊繊維を容易に可搬形態にすることも可能である。この場合、解繊繊維を形状保持性を有する状態に処理し易い。
【0160】
また、シート製造システム1は、シートSに限らず、硬質のシート或いは積層したシートで構成されるボード状、或いは、ウェブ状の製造物を製造する構成であってもよい。また、シートSの性状は特に限定されず、筆記や印刷を目的とした記録紙(例えば、いわゆるPPC用紙)として使用可能な紙であってもよいし、壁紙、包装紙、色紙、画用紙、ケント紙等であってもよい。また、シートSが不織布である場合、一般的な不織布のほか、繊維ボード、ティッシュペーパー、キッチンペーパー、クリーナー、フィルター、液体吸収材、吸音体、緩衝材、マット等としてもよい。
【0161】
また、本発明は、シート製造システム1に適用する場合に限定されず、解繊部20を有する解繊装置だけ、又は、解繊繊維を利用してシートSを製造するシート製造装置だけに本発明を適用してもよい。この場合、解繊装置は、少なくとも解繊部20と繊維処理部40とを有する装置に構成され、例えば、第1の装置100A、110Aの構成が採用される。この構成によれば、解繊繊維を容易に持ち運び可能にすることができ、解繊装置をオフィス等に設置しやすくなる。また、シート製造装置は、可搬形態の解繊繊維が供給される供給口46を有し、供給口46に供給された可搬形態の解繊繊維を利用してシートSを製造する装置に構成され、例えば、第2の装置100Bの構成が採用される。この構成によれば、可搬形態の解繊繊維を利用してシートを製造でき、シート製造装置をオフィス等に設置し易くなる。
【0162】
また、製造されたシートSを利用する利用側装置は、印刷装置1Y、2Y、3Y及び印刷部1Zに限定されず、シートSを利用可能な装置を広く適用可能である。また、各図に示した機能ブロックのうちの少なくとも一部は、ハードウェアで実現してもよいし、ハードウェアとソフトウェアの協働により実現される構成としてもよく、独立したハードウェア資源を配置する構成に限定されない。また、実行するプログラムは、不揮発性記憶部、又は他の記憶装置(図示略)に記憶されてもよい。また、外部の装置に記憶されたプログラムを受信して実行する構成としてもよい。