特許第6946810号(P6946810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6946810
(24)【登録日】2021年9月21日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F01M 5/00 20060101AFI20210927BHJP
【FI】
   F01M5/00 N
   F01M5/00 M
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-141052(P2017-141052)
(22)【出願日】2017年7月20日
(65)【公開番号】特開2019-19796(P2019-19796A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】五味 智紀
【審査官】 小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−174698(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0074131(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関は、オイルポンプと、前記オイルポンプから吐出されたオイルの温度を調節する油温調節部と、を備え、
前記制御装置は、前記油温調節部による温度調節前の第1油温を検出するための第1油温センサと、前記油温調節部による温度調節後の第2油温を検出するための第2油温センサと、前記油温調節部を制御するように構成された制御ユニットと、を備え、
前記制御ユニットは、前記内燃機関の負荷が所定の閾値より大きいときには、前記第1油温センサにより検出された第1油温に基づき前記油温調節部を制御し、前記内燃機関の負荷が前記閾値以下のときには、前記第2油温センサにより検出された第2油温に基づき前記油温調節部を制御し、
前記制御ユニットは、第1油温および第2油温が高いほど、オイルの冷却量が大きくなるように前記油温調節部を制御し、
前記制御ユニットは、同一の値の第1油温および第2油温について、第2油温に基づき前記油温調節部を制御する際のオイル冷却量が第1油温に基づき前記油温調節部を制御する際のオイル冷却量より小さくなるように、前記油温調節部を制御する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記制御ユニットは、第1油温とオイル冷却量の関係を定めた第1マップと、第2油温とオイル冷却量の関係を定めた第2マップとを予め記憶し、第1油温に基づき前記油温調節部を制御するときには前記第1マップを参照し、第2油温に基づき前記油温調節部を制御するときには前記第2マップを参照し、
前記第2マップにおける第2油温に対応するオイル冷却量は、前記第1マップにおける、第2油温と同一の値の第1油温に対応するオイル冷却量より小さい
請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記油温調節部は、前記オイルポンプの下流側に設けられた油温調節バルブ、油温調節ギャラリおよびオイルクーラを有し、
前記油温調節バルブは、前記オイルポンプから供給されたオイルを前記油温調節ギャラリおよび前記オイルクーラに分配するように構成され、
前記油温調節ギャラリは、前記油温調節バルブから供給されたオイルと、前記オイルクーラを通過した後のオイルとを混合させ、
前記制御ユニットは、オイル冷却量を増加するとき、前記オイルクーラへのオイル分配量を増大するように前記油温調節バルブを制御する
請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両用の内燃機関において、オイルポンプから吐出されたオイルの温度を調節する油温調節部を備えたものが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−120420号公報
【特許文献2】特開平6−117212号公報
【特許文献3】特開2012−12963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる内燃機関にあっては、従来、内燃機関の運転状態に拘わらず、油温調節部による温度調節前の油温に基づき、油温調節部を制御していた。すなわち、当該油温が高くなるにつれオイル冷却量を増大し、油温を低下させるよう、油温調節部を制御していた。
【0005】
しかしこれだと、内燃機関が低負荷運転状態となったとき、オイルが過度に冷却されてしまう問題がある。オイルが過度に冷却されると、オイル粘度増加による機械損失の増大、燃費悪化、および油温を再上昇させるのに必要なエネルギの無駄な消費等に繋がる虞がある。
【0006】
そこで本発明は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、内燃機関が低負荷運転状態となったときのオイルの過度の冷却を抑制することができる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様によれば、
内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関は、オイルポンプと、前記オイルポンプから吐出されたオイルの温度を調節する油温調節部と、を備え、
前記制御装置は、前記油温調節部による温度調節前の第1油温を検出するための第1油温センサと、前記油温調節部による温度調節後の第2油温を検出するための第2油温センサと、前記油温調節部を制御するように構成された制御ユニットと、を備え、
前記制御ユニットは、前記内燃機関の負荷が所定の閾値より大きいときには、前記第1油温センサにより検出された第1油温に基づき前記油温調節部を制御し、前記内燃機関の負荷が前記閾値以下のときには、前記第2油温センサにより検出された第2油温に基づき前記油温調節部を制御し、
前記制御ユニットは、第1油温および第2油温が高いほど、オイルの冷却量が大きくなるように前記油温調節部を制御し、
前記制御ユニットは、同一の第1油温および第2油温について、第2油温に対応するオイル冷却量が第1油温に対応するオイル冷却量より小さくなるように、前記油温調節部を制御する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置が提供される。
【0008】
好ましくは、前記制御ユニットは、第1油温とオイル冷却量の関係を定めた第1マップと、第2油温とオイル冷却量の関係を定めた第2マップとを予め記憶し、第1油温に基づき前記油温調節部を制御するときには前記第1マップを参照し、第2油温に基づき前記油温調節部を制御するときには前記第2マップを参照し、
前記第2マップにおける第2油温に対応するオイル冷却量は、前記第1マップにおける、第2油温と同一の第1油温に対応するオイル冷却量より小さい。
【0009】
好ましくは、前記油温調節部は、前記オイルポンプの下流側に設けられた油温調節バルブ、油温調節ギャラリおよびオイルクーラを有し、
前記油温調節バルブは、前記オイルポンプから供給されたオイルを前記油温調節ギャラリおよび前記オイルクーラに分配するように構成され、
前記油温調節ギャラリは、前記油温調節バルブから供給されたオイルと、前記オイルクーラを通過した後のオイルとを混合させ、
前記制御ユニットは、オイル冷却量を増加するとき、前記オイルクーラへのオイル分配量を増大するように前記油温調節バルブを制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、内燃機関が低負荷運転状態となったときのオイルの過度の冷却を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の構成を示す概略図である。
図2】第1および第2油温とバイバスバルブ開度との関係を定めた第1および第2マップを示す。
図3】油温制御ルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお本発明は以下の実施形態に限定されない点に留意すべきである。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る内燃機関(エンジンともいう)に搭載された潤滑用オイル供給システムを示す。エンジンは車両用ディーゼルエンジンであり、車両はトラック等の大型車両である。しかしながら、車両およびエンジンの種類、形式、用途等に特に限定はなく、例えば車両は乗用車等の小型車両であってもよいし、エンジンはガソリンエンジンであってもよい。
【0014】
エンジン(便宜上、Eで示す)は、オイルを貯留するオイルパン1と、オイルパン1に貯留されたオイルを吸引して吐出するオイルポンプ2とを備える。オイルポンプ2は、エンジンのクランクシャフト3により回転駆動される。オイルポンプ2は周知の可変容量型オイルポンプであり、その吐出流量を可変にするための可変機構4を一体的に備える。なお可変機構4は別体で設けられてもよい。
【0015】
オイルポンプ2の下流側には、バイパスバルブ5、入口ギャラリ6およびオイルクーラ7が設けられる。これらバイパスバルブ5、入口ギャラリ6およびオイルクーラ7は、オイルポンプ2から吐出されたオイルの温度を調節する油温調節部Bを構成する。
【0016】
バイパスバルブ5は、三方電磁弁からなり、オイルポンプ2から供給されたオイルを所定の分配比で入口ギャラリ6およびオイルクーラ7に分配する。オイルクーラ7は水冷式であり、冷媒としてのエンジン冷却水が流される冷却水通路8を有する。オイルクーラ7を通過して冷却された後のオイルは入口ギャラリ6に送られ、ここで、バイパスバルブ5から供給されオイルクーラ7を通過してない未冷却のオイルと混合、合流される。これによりオイルの温度調節が実行される。バイパスバルブ5は油温調節バルブをなし、入口ギャラリ6は油温調節ギャラリをなす。
【0017】
ここで、バイパスバルブ5から入口ギャラリ6に直接向かうオイルの流れをメインの流れとし、バイパスバルブ5からオイルクーラ7を経て入口ギャラリ6に向かうオイルの流れをバイパスの流れとする。また、バイパスバルブ5において、オイルポンプ2から供給されたオイルを全量入口ギャラリ6に流し、オイルクーラ7に流さないバルブ状態を全閉状態、すなわち開度=0(%)の状態とする。他方、オイルポンプ2から供給されたオイルを全量オイルクーラ7に流し、入口ギャラリ6に流さないバルブ状態を全開状態、すなわち開度=100(%)の状態とする。バイパスバルブ5の開度は、0(%)から100(%)の間で連続的に可変であり、それ故供給されたオイルを、任意の分配比で入口ギャラリ6およびオイルクーラ7に分配可能である。バイパスバルブ5の開度を増大し、オイルクーラ7へのオイル分配量を増大するほど、オイル冷却量を増大し、入口ギャラリ6における合流後のオイルの温度を低下させることができる。それ故、バイパスバルブ5の開度は、油温調節部Bにおけるオイル冷却量に相関する値である。
【0018】
入口ギャラリ6に貯留されたオイルは、オイルフィルタ9とオーバーフローバルブ10を通じて、メインのオイルギャラリ11に送られる。ここでは二つのオイルフィルタ9が並列して設置されているが、その数は任意である。オーバーフローバルブ10は、その入口側すなわち入口ギャラリ6の油圧が所定の開弁圧以上になったときに開弁するバルブであり、例えばオイルフィルタ9の閉塞時等に開弁してシステムを保護する。
【0019】
オイルギャラリ11は、例えばシリンダブロックの内部に形成された比較的大容量のオイル溜めであり、ここからエンジンの各潤滑部に向けてオイルが供給される。かかる潤滑部には、例えば吸排気動弁機構Lb1、ターボチャージャLb2、EGRバルブLb3が含まれる。
【0020】
またエンジンには、ピストン(図示せず)に向けてオイルを噴射するオイルジェット12も備えられており、オイルギャラリ11からオイルジェット12にも向かってオイルが供給される。
【0021】
但し、オイルギャラリ11とオイルジェット12の間にはオイルジェットバルブ13が設けられ、オイルジェットバルブ13により、オイルギャラリ11からオイルジェット12へのオイルの供給、ひいてはオイルジェット12からのオイル噴射が制御されるようになっている。
【0022】
オイルジェットバルブ13は二方電磁弁からなり、その開度が、0(%)から100(%)の間で連続的に可変である。従ってオイルジェット12からは任意の流量のオイルを噴射できる。オイルジェットバルブ13の開度が100(%)のとき、すなわちオイルジェットバルブ13が全開状態のとき、オイルジェット12からの噴射流量は最大となる。逆にオイルジェットバルブ13の開度が0(%)のとき、すなわちオイルジェットバルブ13が全閉状態のとき、オイルジェット12からの噴射流量は最小となる。
【0023】
本実施形態では、オイルジェットバルブ13をバイパスして別のオイルフィルタ14が設けられ、オイルジェットバルブ13が全閉状態のときでも、極小流量のオイルがオイルギャラリ11からオイルフィルタ14を通じてオイルジェット12に流れ、オイルジェット12から常時排出されるようになっている。但しこうしたバイパスルートやオイルフィルタ14は必須ではなく、省略も可能である。
【0024】
他方、本実施形態に係る制御装置は、制御ユニットもしくはコントローラをなす電子制御ユニット(以下「ECU」と称す)100と、後述するセンサ類とを備える。ECU100はCPU、ROM、RAM、入出力ポートおよび記憶装置等を含む。ECU100は、オイルポンプ2の可変機構4、バイパスバルブ5、およびオイルジェットバルブ13を制御するように構成され、プログラムされている。
【0025】
センサ類に関しては、オイルパン1内の油温を検出するための第1油温センサ20と、オイルギャラリ11内の油圧を検出するための油圧センサ21と、オイルギャラリ11内の油温を検出するための第2油温センサ22とが設けられ、これらセンサの出力信号はECU100に送られる。
【0026】
第1油温センサ20は、油温調節部Bによる温度調節前の第1油温T1を検出するためのセンサである。従って、第1油温センサ20の設置位置はオイルパン1に限らず、変更可能であり、入口ギャラリ6の上流側かつオイルクーラ7の上流側の任意の位置に設置可能である。
【0027】
第2油温センサ22は、油温調節部Bによる温度調節後の第2油温T2を検出するためのセンサである。従って、第2油温センサ22の設置位置も、オイルギャラリ11に限らず、変更可能であり、例えば入口ギャラリ6に設置してもよいし、入口ギャラリ6の下流側の任意の位置に設置してもよい。
【0028】
次に、本実施形態の制御について説明する。
【0029】
従来は、エンジンの運転状態に拘わらず、油温調節部による温度調節前の油温(第1油温T1)に基づき、油温調節部を制御していた。すなわち、当該油温が高くなるにつれオイル冷却量を増大し、油温を低下させるよう、油温調節部を制御していた。
【0030】
しかしこれだと、エンジンが低負荷運転状態となったとき、オイルが過度に冷却されてしまう問題がある。オイルが過度に冷却されると、オイル粘度増加による機械損失の増大、燃費悪化、および油温を再上昇させるのに必要なエネルギの無駄な消費等に繋がる虞がある。
【0031】
なお、原因は必ずしも明らかでないが、従来の制御だと、エンジンが低負荷運転状態となったとき、温度調節後の油温(第2油温T2)が、温度調節前の油温(第1油温T1)と、オイルクーラ出口直後かつ合流前の油温との間でハンチングを起こし、温度調節後の油温が不安定となる問題がある。
【0032】
そこで、上記問題を解決するため、本実施形態では、エンジンの運転状態に応じて、油温調節部Bの制御の基礎となる油温パラメータを変更する。すなわちECU100は、エンジンの負荷Lが所定の閾値Lthより大きいときには、第1油温センサ20により検出された第1油温T1に基づき油温調節部Bを制御し、エンジンの負荷Lが閾値Lth以下のときには、第2油温センサ22により検出された第2油温T2に基づき油温調節部Bを制御する。
【0033】
エンジン負荷Lは、これに相関するパラメータ、例えばアクセル開度、エンジンの燃料噴射量または目標トルクに基づき決定される。またエンジン負荷の閾値Lthは、エンジンが低負荷運転状態であることを示す値に設定される。例えば閾値Lthは、アクセルペダルが踏み込まれておらずエンジンが無負荷(アイドル)運転状態であるときのエンジン負荷に等しく設定される。これにより、アクセルペダルを完全に解放したエンジンの減速時およびアイドル時にはエンジン負荷Lが閾値Lth以下と判断される。またアクセルペダルを踏み込んだときにはエンジン負荷Lが閾値Lthより大きいと判断される。
【0034】
あるいは、閾値Lthは、エンジンが無負荷(アイドル)運転状態であるときのエンジン負荷より僅かに大きい値に設定される。これにより、アクセルペダルを完全に解放してはいないが大きく戻したときのエンジン減速時や、アクセルペダルを僅かに踏み込んだエンジンの低負荷運転時にも、エンジン負荷Lが閾値Lth以下と判断される。
【0035】
なお、典型的に、車両の降坂走行時にはエンジン負荷Lが閾値Lth以下となり、車両の登坂走行時および定常走行時にはエンジン負荷Lが閾値Lthより大となる。
【0036】
次にECU100は、第1油温T1および第2油温T2が高いほど、オイルの冷却量が大きくなるように油温調節部Bを制御する。
【0037】
具体的にはECU100は、図2に示すような、第1油温T1とバイパスバルブ開度Vとの関係を線L1の如く定めた第1マップ(関数でもよい。以下同様)と、第2油温T2とバイパスバルブ開度Vとの関係を線L2の如く定めた第2マップとを予め記憶している。なお図では便宜上、二つのマップを併記している。バイパスバルブ開度Vがオイル冷却量に相関するので、第1マップは、第1油温T1とオイル冷却量の関係を定めているに等しく、第2マップは、第2油温T2とオイル冷却量の関係を定めているに等しい。
【0038】
そしてECU100は、エンジン負荷Lが閾値Lthより大きく、第1油温T1に基づき油温調節部Bを制御するときには、第1マップを参照し、第1油温T1に対応したバイパスバルブ開度Vを目標バルブ開度として求める。他方、ECU100は、エンジン負荷Lが閾値Lth以下であり、第2油温T2に基づき油温調節部Bを制御するときには、第2マップを参照し、第2油温T2に対応したバイパスバルブ開度Vを目標バルブ開度として求める。
【0039】
最後にECU100は、求めたバイパスバルブ開度Vに実際のバイパスバルブ開度が一致するよう、バイパスバルブ5の開度を制御する。
【0040】
図2の特性線L1,L2から理解されるように、第1油温T1および第2油温T2が高いほど、バイパスバルブ開度Vは増大される。ここで前述したように、バイパスバルブ開度Vの増大は油温調節部Bにおけるオイル冷却量の増大を意味し、バイパスバルブ開度Vの減少は油温調節部Bにおけるオイル冷却量の減少を意味する。図示例の特性線L1,L2は単純な比例直線とされるが、これは変更可能で、曲線とされてもよい。
【0041】
ここで、特性線L2は特性線L1よりバイパスバルブ開度Vの減少側、すなわちオイル冷却量の減少側に設定される。従って、同一の値Taの第1油温T1および第2油温T2について(T1=T2=Ta)、特性線L2から得られるバイパスバルブ開度V2は、特性線L1から得られるバイパスバルブ開度V1よりも小さく、オイル冷却量減少側である。よって第2マップにおける第2油温T2に対応するオイル冷却量は、第1マップにおける、第2油温T2と同一の第1油温T1に対応するオイル冷却量より小さい。
【0042】
従ってエンジン負荷Lが、閾値Lthより大きい値から、閾値Lth以下の値に変化したとき、使用マップが第1マップから第2マップに切り替わり、バイパスバルブ開度Vの目標値は、仮にT1=T2=Taであれば、図2に実線矢印で示す如く減少する。これにより、オイル冷却量を減少し、エンジンが低負荷運転状態となったときのオイルの過度の冷却を抑制することができる。
【0043】
なお通常、第2油温T2は第1油温T1より低温である。従ってエンジン負荷Lが上記のように変化し、基礎となる油温がある第1油温(例えばT1=Ta)から、それより低温の第2油温(例えばT2=Tb)に低下したとき、図2に破線矢印で示すように、バイパスバルブ開度Vの目標値は減少する。よって上記特性線L1,L2の設定と相俟って、バイパスバルブ開度Vひいてはオイル冷却量を確実に減少することができる。
【0044】
このように本実施形態によれば、ECU100が、同一の第1油温および第2油温(T1=T2=Ta)について、第2油温に対応するオイル冷却量(V2)が第1油温に対応するオイル冷却量(V1)より小さくなるように、油温調節部Bを制御するので、エンジンが低負荷運転状態となったときのオイルの過度の冷却を抑制することができる。そしてこの過冷却に伴う種々の問題も抑制できる。また、エンジンが低負荷運転状態となったときの温度調節後油温のハンチングも抑制し、油温を安定化し、エンジンの耐久性を向上できる。
【0045】
次に、図3を参照して本実施形態の油温制御ルーチンを説明する。図示するルーチンはECU100により所定の演算周期τ(例えば10msec)毎に繰り返し実行される。
【0046】
ステップS101において、ECU100は、エンジン負荷Lが閾値Lthより大きいか否かを判断する。イエスの場合、ECU100は、ステップS102に進み、第1マップを参照して、第1油温T1の検出値に対応したバイパスバルブ開度V(目標バルブ開度)を算出する。そしてECU100は、ステップS103に進み、算出した目標バルブ開度Vに実際のバイパスバルブ開度が一致するよう、バイパスバルブ5の開度を制御する。
【0047】
他方、ステップS101がノーの場合、すなわちエンジン負荷Lが閾値Lth以下の場合、ECU100は、ステップS104に進み、第2マップを参照して、第2油温T2の検出値に対応したバイパスバルブ開度V(目標バルブ開度)を算出する。そしてECU100は、ステップS103に進み、その目標バルブ開度Vに一致するようバイパスバルブ5の開度を制御する。
【0048】
以上、本発明の実施形態を詳細に述べたが、本発明の実施形態は他にも様々考えられる。
【0049】
(1)油温調節部Bの構成は変更可能である。例えば、オイルクーラ7へのバイパスルートを設けることなく、単にバイパスバルブ5、オイルクーラ7および入口ギャラリ6を上流側から直列に接続し、オイルクーラ7への冷却水流量を調節することで油温調節部Bのオイル冷却量を調節してもよい。
【0050】
(2)他の部分の構成も変更可能である。例えばオイルフィルタ9は必ずしも図示の位置になくてもよく、省略してもよい。またオイルポンプは、クランクシャフトではなく電動モータにより駆動される電動式であってもよい。
【0051】
本発明の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本発明に含まれる。従って本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
2 オイルポンプ
5 バイパスバルブ
6 入口ギャラリ
7 オイルクーラ
20 第1油温センサ
22 第2油温センサ
100 電子制御ユニット(ECU)
E 内燃機関(エンジン)
B 油温調節部
図1
図2
図3