特許第6946845号(P6946845)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6946845電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6946845
(24)【登録日】2021年9月21日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/147 20060101AFI20210930BHJP
   G03G 5/02 20060101ALI20210930BHJP
   G03G 5/05 20060101ALN20210930BHJP
【FI】
   G03G5/147 504
   G03G5/02 101E
   !G03G5/05 104
【請求項の数】7
【全頁数】52
(21)【出願番号】特願2017-157002(P2017-157002)
(22)【出願日】2017年8月16日
(65)【公開番号】特開2019-35856(P2019-35856A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2020年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 俊行
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 真優子
(72)【発明者】
【氏名】堀口 治男
【審査官】 川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−164663(JP,A)
【文献】 特開2006−208572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/02
G03G 5/147
G03G 5/05
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に、少なくとも感光層を含む複数の層を有する電子写真感光体であって、
前記複数の層が、前記感光層の表面側に表面保護層を有しており、
前記表面保護層が、下記一般式(1)で表される、アミノエーテル構造を有するヒンダードアミン化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化1】
[一般式(1)中、Yは水素原子以外の任意の構造を表す。Zは、有機基を表す。ただし、Y及びZは、N−CH結合及びN−H結合を有さない。]
【請求項2】
前記一般式(1)中、Zが表す有機基が、炭素数8以上のアルキル基又は炭素数4以上のシクロアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記ヒンダードアミン化合物の含有量が、当該ヒンダードアミン化合物を含有する層のバインダー樹脂100質量部に対して、2〜15質量部の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記表面保護層が、前記ヒンダードアミン化合物、バインダー用重合性化合物、及び電荷輸送剤を含有する組成物の硬化物であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記電荷輸送剤として導電性微粒子を含有することを特徴とする請求項に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
請求項又は請求項に記載の電子写真感光体を製造する電子写真感光体の製造方法であって、
前記組成物に、アシルフォスフィンオキサイド構造又はO−アシルオキシム構造を有する重合開始剤を含有したものを硬化させ、前記表面保護層を形成する工程を有することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の電子写真感光体を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法及び画像形成装置に関する。本発明は、特に、耐メモリー性及び耐摩耗性に優れ、かつ像流れし難い電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真感光体の表面を帯電させた後、露光することにより当該電子写真感光体上に静電潜像を形成し、形成した静電潜像を現像剤により現像し、これを転写することで用紙上に画像を形成する電子写真方式の画像形成装置が提供されている。
【0003】
一般に、電子写真感光体(以下、感光体ともいう。)は、導電性支持体上に、中間層、電荷発生層、電荷輸送層及び表面保護層等が積層されて構成されている。また、このような感光体を用いた電子写真画像の形成工程では、帯電極にて発生するオゾンや窒素酸化物等の放電生成物の影響により、表面抵抗が低下して像流れが発生するという問題がある。
この対策として、酸化防止剤を添加することが経験的に知られているが(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)、酸化防止剤の添加量を多くすると、残留電位が上昇する等の問題が発生するため、像流れ対策と電位性能の両立は困難であった。
【0004】
また、近年、感光体は、高画質化(耐メモリー性の向上)及び長寿命化(耐摩耗性の向上)を両立する目的で、表面保護層の検討が積極的になされており、例えば、表面を硬化型バインダー樹脂によって形成された層とすること等が知られている。
しかし、このような表面保護層は、当該表面保護層を形成する際に使用した重合開始剤に由来する副生成物が残存していることがあるため、放電生成物が吸着しやすく、像流れがより発生しやすくなるという問題があった。このように、像流れの防止と耐メモリー性の向上を両立することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−58779号公報
【特許文献2】特開2010−237241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、耐メモリー性及び耐摩耗性に優れ、かつ像流れし難い電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、電子写真感光体の導電性支持体上に形成する複数の層のうち少なくとも1層に、アミノエーテル構造を有するヒンダードアミン化合物を含有させることで、耐メモリー性及び耐摩耗性に優れ、かつ像流れし難い電子写真感光体を提供できることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る課題は、以下の手段により解決される。
【0008】
1.導電性支持体上に、少なくとも感光層を含む複数の層を有する電子写真感光体であって、
前記複数の層が、前記感光層の表面側に表面保護層を有しており、
前記表面保護層が、下記一般式(1)で表される、アミノエーテル構造を有するヒンダードアミン化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化1】
[一般式(1)中、Yは水素原子以外の任意の構造を表す。Zは、有機基を表す。ただし、Y及びZは、N−CH結合及びN−H結合を有さない。]
【0009】
2.前記一般式(1)中、Zが表す有機基が、炭素数8以上のアルキル基又は炭素数4以上のシクロアルキル基であることを特徴とする第1項に記載の電子写真感光体。
【0010】
3.前記ヒンダードアミン化合物の含有量が、当該ヒンダードアミン化合物を含有する層のバインダー樹脂100質量部に対して、2〜15質量部の範囲内であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の電子写真感光体。
【0012】
.前記表面保護層が、前記ヒンダードアミン化合物、バインダー用重合性化合物、及び電荷輸送剤を含有する組成物の硬化物であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【0013】
.前記電荷輸送剤として導電性微粒子を含有することを特徴とする第項に記載の電子写真感光体。
【0014】
.第項又は第項に記載の電子写真感光体を製造する電子写真感光体の製造方法であって、
前記組成物に、アシルフォスフィンオキサイド構造又はO−アシルオキシム構造を有する重合開始剤を含有したものを硬化させ、前記表面保護層を形成する工程を有することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【0015】
.第1項から第項までのいずれか一項に記載の電子写真感光体を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐メモリー性及び耐摩耗性に優れ、かつ像流れし難い電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、及び当該電子写真感光体を備えた画像形成装置を提供することができる。
【0017】
本発明の効果の発現機構又は作用機構は明確になっていないが、以下のように推察している。
これまで、像流れを防止するための酸化防止剤としては、ヒンダードアミン化合物やヒンダードフェノール化合物などが検討されてきた。
しかし、ヒンダードアミン化合物がN−H結合又はN−CH結合を有する構造である場合、塩基性が強いため、ホールをトラップしやすく、電位性能を低下させやすい。
一方で、ヒンダードフェノール化合物は、塩基性が低いため、電位性能の低下は抑制できるが、像流れの防止に対する効果は小さい。
これに対して、本発明で用いるヒンダードアミン化合物は、アミノエーテル構造を有している。当該ヒンダードアミン化合物は、塩基性が比較的弱く、電荷輸送におけるホールのトラップがされにくいため、電位性能の低下を防ぐことができたと考えられる。さらに、実際にアミノエーテル構造を有するヒンダードアミン化合物を用いて感光層を形成したところ、耐摩耗性にも優れていることが分かった。これは、バインダー樹脂との相溶性が高いためであると推察している。
【0018】
したがって、本発明に係るアミノエーテル構造を有するヒンダードアミン化合物を用いて電子写真感光体の表面を構成する層を形成することで、耐メモリー性及び耐摩耗性に優れ、かつ像流れし難い電子写真感光体を得ることができたと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の電子写真感光体の一例を示す概略断面図
図2】本発明の電子写真感光体を備える画像形成装置の一例を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に、少なくとも感光層を含む複数の層を有する電子写真感光体であって、前記複数の層の少なくとも1層に、アミノエーテル構造を有するヒンダードアミン化合物を含有することを特徴とする。この特徴は、下記実施態様に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0021】
本発明の実施態様としては、本発明の効果を有効に得る観点から、前記ヒンダードアミン化合物の前記アミノエーテル構造を構成する有機基が、炭素数8以上のアルキル基又は炭素数4以上のシクロアルキル基であることが好ましい。
【0022】
本発明の実施態様としては、本発明の効果を有効に得る観点から、前記ヒンダードアミン化合物の含有量が、当該ヒンダードアミン化合物を含有する層のバインダー樹脂100質量部に対して、2〜15質量部の範囲内であることが好ましい。
【0023】
本発明の実施態様としては、耐摩耗性向上の観点から、前記複数の層が、前記感光層の表面側に表面保護層を有しており、前記表面保護層が、前記ヒンダードアミン化合物を含有することが好ましい。
【0024】
本発明の実施態様としては、本発明の効果を有効に得る観点から、前記表面保護層が、前記ヒンダードアミン化合物、バインダー用重合性化合物、及び電荷輸送剤を含有する組成物の硬化物であることが好ましい。
【0025】
本発明の実施態様としては、耐摩耗性向上の観点から、前記電荷輸送剤として導電性微粒子を含有することが好ましい。
【0026】
本発明の電子写真感光体の製造方法としては、耐摩耗性向上の観点から、前記組成物に、アシルフォスフィンオキサイド構造又はO−アシルオキシム構造を有する重合開始剤を含有したものを硬化させ、前記表面保護層を形成する工程を有することが好ましい。
【0027】
また、本発明の電子写真感光体は、画像形成装置に好適に具備され得る。
【0028】
以下、本発明の構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。また、以下の説明において、具体例を挙げて化合物を列挙する場合においては、当該化合物の立体異性体も含まれるものとする。
【0029】
[電子写真感光体]
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に、少なくとも感光層を含む複数の層を有する電子写真感光体であって、前記複数の層の少なくとも1層に、アミノエーテル構造を有するヒンダードアミン化合物を含有するものである。
【0030】
《アミノエーテル構造を有するヒンダードアミン化合物》
本発明の「アミノエーテル構造を有するヒンダードアミン化合物」とは、下記一般式(1)で表されるように、アミノエーテル(−NOZ)構造を有するヒンダードアミン化合物をいう。ただし、本発明でいうアミノエーテル(−NOZ)構造には、アミノエステル(−NOCO−)構造となるものは含まないものとする。
【0031】
【化1】
【0032】
一般式(1)中、Yは水素原子以外の任意の構造を表す。Yは、本発明の効果を阻害しない限り任意の構造を選択できる。
また、Zは、本発明に係るヒンダードアミン化合物のアミノエーテル(−NOZ)構造を構成する有機基を表す。Zは、本発明の効果を阻害しない限り任意の有機基を選択することができるが、炭素数8以上のアルキル基又は炭素数4以上のシクロアルキル基であることが、本発明の効果を有効に得る観点から好ましい。また、これらの炭素数の上限は本発明の効果を阻害しない限り特に限られないが、本発明の効果を有効に得る観点からは、炭素数6以下のアルキル基又は炭素数11以下のシクロアルキル基であることが好ましい。
【0033】
上記一般式(1)で表されるアミノエーテル(−NOZ)構造を有するヒンダードアミン化合物としては、例えば、BASFジャパン株式会社製のTinuvin 123(下記化合物A5)、Tinuvin 152(下記化合物A7)、Tinuvin NOR 371 FF、Tinuvin XT850 FF、Tinuvin XT855 FF、Flamestab NOR 116 FF(下記化合物A1)、株式会社ADEKA製のアデカスタブLA−81(下記化合物A4)等が挙げられる。
以下、本発明に係るアミノエーテル(−NOZ)構造を有するヒンダードアミン化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。なお、下記化合物A1のRで表される化学構造式中の「*」は、窒素原子との結合箇所を示している。
【0034】
【化2】
【0035】
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に、少なくとも感光層を含む複数の層を有し、当該複数の層の少なくとも1層に、酸化防止剤として上記アミノエーテル構造を有するヒンダードアミン化合物を含有している。当該ヒンダードアミン化合物は、塩基性が比較的弱く、電荷輸送におけるホールのトラップがされにくいため、酸化防止剤として像流れの防止の効果を得つつ、電位性能の低下も防ぐことができると考えられる。さらに、当該アミノエーテル構造を有するヒンダードアミン化合物を用いて形成した層は、耐摩耗性にも優れていることが分かった。これは、バインダー樹脂との相溶性が高いためであると推察している。
【0036】
また、本発明の効果を有効に得る観点からは、本発明に係るアミノエーテル構造を有するヒンダードアミン化合物の含有量が、当該ヒンダードアミン化合物を含有する層のバインダー樹脂100質量部に対して、2〜15質量部の範囲内であることが好ましい。
【0037】
《電子写真感光体表面の層構成》
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に、少なくとも感光層を含む複数の層を有している。
ここで、感光層は、光を吸収して電荷を発生する機能と電荷を輸送する機能の両方を有する。感光層の層構成としては、電荷発生物質と電荷輸送物質を含有する単層構造であっても良く、また、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層との積層構造であっても良い。また、必要に応じて導電性支持体と感光層の間に中間層を設けても良い。感光層は、その層構成を特に制限するものではなく、表面保護層及び中間層を含めた具体的な層構成として、例えば以下に示すものがある。
【0038】
(1)導電性支持体上に、電荷発生層と電荷輸送層とからなる感光層及び表面保護層が順次積層された層構成
(2)導電性支持体上に、電荷輸送物質と電荷発生物質とが含有された単層の感光層及び表面保護層が順次積層された層構成
(3)導電性支持体上に、中間層、電荷発生層と電荷輸送層とからなる感光層、及び表面保護層が順次積層された層構成
(4)導電性支持体上に、中間層、電荷輸送物質と電荷発生物質とが含有された単層の感光層、及び表面保護層が順次積層された層構成
【0039】
本発明の電子写真感光体は、上記(1)〜(4)のいずれの層構成でも良く、これらの中でも、上記(3)の層構成のものが特に好ましい。
【0040】
また、図1は、本発明の電子写真感光体の層構成の一例を示す断面図である。
図1に示すとおり、本発明の電子写真感光体200は、例えば、導電性支持体201上に、中間層202、感光層203及び表面保護層204が順次積層されて構成されている。表面保護層204には、耐摩耗性向上の観点から、電荷輸送剤として導電性微粒子205を含有することが好ましい。
感光層203は、電荷発生層203a及び電荷輸送層203bから構成されている。
なお、本発明に係る電子写真感光体200は、必ずしも表面保護層204を設ける必要はなく、表面保護層204を設けない層構成としてもよい。
【0041】
なお、本発明の電子写真感光体は、有機感光体であり、有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能が有機化合物によって発現される電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能とを高分子錯体で構成した感光体などを含むものとする。
【0042】
また、本発明に係るアミノエーテル構造を有するヒンダードアミン化合物は、導電性支持体上に形成される複数の層のうち少なくとも1層に含有されていれば、本発明の効果を得ることができる。
以下の説明では、表面保護層にアミノエーテル構造を有するヒンダードアミン化合物を含有する実施態様の例を説明するが、表面保護層以外の他の層に含有してもよい。例えば、当該ヒンダードアミン化合物を、電荷輸送層に含有してもよく、電荷輸送層と表面保護層の両方に含有してもよい。
【0043】
《表面保護層》
本発明の実施態様としては、必ずしも表面保護層204を設ける必要はないが、本発明の効果を有効に得る観点からは、導電性支持体201上に形成される複数の層が、感光層203の表面側に表面保護層204を有しており、表面保護層204が、本発明に係るアミノエーテル構造を有するヒンダードアミン化合物を含有することが好ましい。
また、本発明に係る表面保護層は、本発明に係るアミノエーテル構造を有するヒンダードアミン化合物、バインダー用重合性化合物、及び電荷輸送剤等を含有する組成物の硬化物であることが、本発明の効果を有効に得る観点から好ましい。また、本発明に係る表面保護層には、耐摩耗性向上させ、かつ表面粗さの変動を抑制する観点からは、上記組成物に更に無機粒子が含有されていることが好ましい。また、表面保護層を形成する際には、上記組成物に、重合開始剤を含有させたものを硬化させ、表面保護層を形成することが好ましい。
以下、表面保護層を形成するための材料である、[1]重合開始剤、[2]バインダー用重合性化合物、[3]電荷輸送剤、[4]無機粒子、[5]その他添加剤について順に説明する。
【0044】
[1]重合開始剤
本発明に係る重合開始剤としては、耐摩耗性向上の観点から、例えば、アシルフォスフィンオキサイド構造や、O−アシルオキシム構造を有する一分子系の重合開始剤を用いることが好ましい。これらは1種単独で使用しても良いし、複数種を併用しても良い。なお、本発明において一分子系の重合開始剤とは、一分子が単独で重合開始剤として機能するものをいい、二分子系の重合開始剤とは、二分子以上が揃って初めて重合開始剤として機能するものをいう。
【0045】
アシルフォスフィンオキサイド構造を有する重合開始剤の具体例を以下に示す。
【化3】
【0046】
また、上記化合物PI−1であるイルガキュア819(BASFジャパン社製)と、上記化合物PI−2であるイルガキュアTPO(BASFジャパン社製)の二つのうちでは、イルガキュア819(BASFジャパン社製)の方が好ましい。
【0047】
また、O−アシルオキシム構造を有する重合開始剤としては、常州強力電子新材料株式会社製のPBG−304(下記化合物PI−3)や、BASFジャパン社製のイルガキュアOXE02(下記化合物PI−4)等が挙げられる。以下、これらの具体例を示すが、本発明に係るO−アシルオキシム構造を有する重合開始剤はこれらに限定されるものではない。
【0048】
【化4】
【0049】
また、本発明において、O−アシルオキシム構造を有する重合開始剤としては、下記一般式(4)で表される構造を有する重合開始剤が好ましい。
【0050】
【化5】
【0051】
一般式(4)中、R11及びR12は、各々独立に、水素原子、置換基を有していても良い炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数3〜6のシクロアルキル基又は置換基を有していても良いアリール基を表す。
13は、水素原子、置換基を有しても良い炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数1〜6のアルコキシ基、置換基を有していても良いアリール基、ハロゲノ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、又は置換基を有していても良いカルボニル基を表す。
なお、一般式(4)におけるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアルコキシ基の具体例としては、後述の一般式(2)においてR及びRで表される置換基として挙げられるアルキル基、シクロアルキル基及びアルコキシ基、並びに後述の一般式(2)においてR及びRで表される芳香族炭化水素環基と同様である。また、一般式(4)における置換基の具体例としては、後述の一般式(2)においてR及びRで表される置換基と同様である。
【0052】
上記一般式(4)で表される構造を有する化合物の具体例を以下に示す。
【0053】
【化6】
【0054】
【化7】
【0055】
【化8】
【0056】
【化9】
【0057】
なお、O−アシルオキシム構造を有する重合開始剤の市販品としては、例えば、上記例示化合物B−1のイルガキュアOXE01(BASFジャパン社製)の他に、化合物中にジスルフィド構造を有するO−アシルオキシム系開始剤であるPBG−305やPBG−329(いずれも常州強力電子新材料社製)等が挙げられる。
【0058】
また、本発明に係る重合開始剤としては、上記一分子系の重合開始剤に限られるものではなく、二分子系の重合開始剤を用いることもできる。二分子系の重合開始剤としては、例えば、ヘキサアリールビスイミダゾール構造を有する化合物とチオール化合物との組み合わせを挙げることができる。
【0059】
二分子系の重合開始剤に用いられるヘキサアリールビスイミダゾール構造を有する化合物の具体例を以下に示す。
【0060】
【化10】
【0061】
また、二分子系の重合開始剤に用いられるチオール化合物の具体例を以下に示す。
【0062】
【化11】
【0063】
また、本発明に係る重合開始剤の添加割合は、バインダー用重合性化合物100質量部に対して0.1〜20質量部の範囲内であることが好ましく、0.5〜10質量部の範囲内であることがより好ましい。また、上述した重合開始剤の他に、公知のその他の重合開始剤を更に含有していても良い。
【0064】
[2]バインダー用重合性化合物
本発明に係るバインダー用重合性化合物としては、ラジカル重合性官能基を有し、ラジカル重合開始剤により重合(硬化)して感光体のバインダー樹脂を構成するモノマーが用いられることが好ましい。バインダー樹脂としては、例えば、ポリスチレンやポリアクリレート等を挙げることができる。なお、本発明に係るバインダー用重合性化合物には、本発明に係る電荷輸送剤は含まれない。
【0065】
バインダー用重合性化合物としては、高い耐久性を維持する観点から、架橋性の重合性化合物を用いることが好ましい。架橋性の重合性化合物としては、具体的には、2個以上のラジカル重合性官能基を有する重合性化合物(以下、「多官能ラジカル重合性化合物」ともいう。)が挙げられる。
【0066】
上記多官能ラジカル重合性化合物とともに、ラジカル重合性官能基を1個有する化合物(以下、「単官能ラジカル重合性化合物」ともいう。)を併用することもできる。単官能ラジカル重合性化合物を用いる場合においては、その割合は、バインダー樹脂を形成するためのモノマー全量に対して20質量%以下が好ましい。
ラジカル重合性官能基としては、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等が挙げられる。
【0067】
多官能ラジカル重合性化合物としては、少ない光量又は短い時間での硬化が可能であることから、ラジカル重合性官能基としてアクリロイル基(CH=CHCO−)又はメタクリロイル基(CH=CCHCO−)を2個以上有するアクリル系モノマー又はこれらのオリゴマーであることが特に好ましい。したがって、樹脂としてはアクリル系モノマー又はそのオリゴマーにより形成されるアクリル系樹脂が好ましい。
【0068】
本発明においては、多官能ラジカル重合性化合物は単独で用いても、複数種を混合して用いても良い。また、これらの多官能ラジカル重合性化合物は、モノマーを用いても良いが、オリゴマー化して用いても良い。
【0069】
以下、多官能ラジカル重合性化合物の具体例を示す。
【0070】
【化12】
【0071】
【化13】
【0072】
上記の例示化合物M1〜M14を示す化学式において、Rは、アクリロイル基(CH=CHCO−)を表し、R′はメタクリロイル基(CH=CCHCO−)を表す。
【0073】
[3]電荷輸送剤
本発明でいう電荷輸送剤とは、電荷キャリアを輸送する機能を有する化合物をいう。
【0074】
また、本発明に係る電荷輸送剤は、分光吸収スペクトルにおいて405±50nmの範囲内に極大吸収波長を有する化合物であることが、本発明の効果を有効に得る観点から好ましい。ここで、本発明において、電荷輸送剤の極大吸収波長は、電荷輸送剤をテトラヒドロフランで1.0×10−5mol/Lの濃度で溶解させた溶液の吸収波長を、通常の吸収分光光度計にて25℃で測定したときの吸収ピークの極大点をいう。極大吸収波長は、必ずしも最大吸収波長でなく、極大点は複数存在しても良い。
【0075】
また、本発明に係る電荷輸送剤の添加割合は、バインダー用重合性化合物100質量部に対して10〜100質量部の範囲内であることが好ましく、20〜60質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0076】
[3.1]一般式(2)で表される構造を有する化合物
本発明に係る電荷輸送剤としては、下記一般式(2)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
【0077】
【化14】
【0078】
上記一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を表し、R及びRのうち少なくとも一つは、炭素数1〜5のアルキレン基で連結されたメタクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基を表す。m及びnは、それぞれ独立に、0〜5の整数を表す。ただし、m及びnがともに0を表すことはない。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換若しくは無置換の芳香族環基を表す。
【0079】
一般式(2)において、R及びRで表される置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、(t)ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ベンジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)から選ばれるいずれかの基が挙げられる。中でも、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等であることが好ましい。
なお、これらの置換基は更に上記の置換基によって置換されていても良いし、また、それらが互いに縮合して更に環を形成していても良い。また、これらの置換基におけるカッコ内の具体例はこれらに限定されるものではない。また、一般式(2)におけるmが2〜5の整数を表す場合においては、Rで表される置換基は互いに異なっていても良く、一般式(2)におけるnが2〜5の整数を表す場合においても同様である。
【0080】
一般式(2)において、R及びRのうち少なくとも一つは、炭素数1〜5のアルキレン基で連結されたメタクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基を表すが、中でも、メチレン基で連結されたメタクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基を表すことが好ましい。
【0081】
一般式(2)において、R及びRで表される芳香族環基としては、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等の芳香族炭化水素環基(アリール基ともいう。)、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す。)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等の芳香族複素環基等が挙げられる。また、これらの基は、更に上記R及びRで表される置換基によって置換されていても良いし、また、それらが互いに縮合して更に環を形成していても良い。
【0082】
また、上記一般式(2)で表される構造を有する化合物は、下記一般式(3)で表される構造を有する化合物であることがより好ましい。
【0083】
【化15】
【0084】
上記一般式(3)中、Rは、置換基を表し、少なくとも一つは炭素数1〜5のアルキレン基で連結されたメタクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基を表す。mは、1〜5の整数を表す。R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換若しくは無置換の芳香族環基を表す。
【0085】
一般式(3)において、Rで表される置換基としては、上記一般式(2)におけるR及びRで表される置換基と同様のものが挙げられる。
一般式(3)において、R〜Rで表される置換又は無置換の芳香族環基としては、上記一般式(2)におけるR及びRで表される置換又は無置換の芳香族環基と同様のものが挙げられる。
【0086】
[3.2]具体例
上記一般式(2)又は(3)で表される構造を有する化合物の具体例を以下に示すが、これらに限られるものではない。
【0087】
【化16】
【0088】
【化17】
【0089】
【化18】
【0090】
【化19】
【0091】
【化20】
【0092】
【化21】
【0093】
また、本発明に係る電荷輸送剤であって、上記一般式(2)又は(3)で表される構造を有しない化合物の具体例を以下に示すが、これに限られるものではない。
【0094】
【化22】
【0095】
[3.3]合成例
以下に、一般式(2)又は(3)で表される構造を有する化合物の合成例を、上記化合物RCTM−27を例にとって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
化合物RCTM−27は以下のステップA〜Dに従って合成できる。
【0096】
(ステップA)
まず、特開2000−275887号公報の段落0073と同様にして、アルゴンガス導入装置及び撹拌装置を取り付けた100mLコルベンに、t−BuOK2.5g及びDMF(N,N-dimethylformamide)150mLを投入し、アルゴンガス雰囲気にした。これに化合物(1)5.0g及び化合物(2)9.0gを加え、室温で1時間撹拌した。撹拌後の溶液を大過剰の水に添加し、トルエンにて抽出し、抽出液を水洗した後、硫酸ナトリウムにて乾燥後、濃縮してからカラム精製を行い、化合物(3)を10.6g得た。
【0097】
【化23】
【0098】
(ステップB)
次に、特開2013−254136号公報の段落0171と同様にして、窒素気流下、冷却管を取り付けた四頭フラスコに酢酸パラジウム0.37g(1.6mmol)及びトリ−tert−ブチルホスフィン1.33g(6.6mmol)を入れ、室温で30分間撹拌した。次に、化合物(4)3.51g(32.8mmol)、化合物(3)7.99g(22mmol)及びトルエン20mL、ナトリウム−tert−ブトキシド6.29g(65.5mmol)を加え、2時間還流した。放冷後、水100mLを加えて10分間撹拌し、水層が中性になるまで有機層を水洗した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、トルエンを留去した。
【0099】
【化24】
【0100】
(ステップC)
次に、特開2000−275887号公報の段落0072と同様にして、温度計、滴下ロート、アルゴンガス導入装置及び撹拌装置を取り付けた100mLコルベンをアルゴンガス雰囲気にし、これにステップBで得られた化合物(5)7g、トルエン50mL及び塩化ホスホリル3gを投入した。室温下で撹拌しながら、DMF2gをゆっくりと滴下し、その後約80℃に昇温して16時間撹拌した。撹拌後の溶液を約70℃の温水に添加してから冷却した。これをトルエンにて抽出し、抽出液を水のpHが7になるまで水洗した。硫酸ナトリウムにて乾燥した後に濃縮し、カラム精製により化合物(6)を5g得た。
【0101】
【化25】
【0102】
(ステップD)
次に、特開2000−275887号公報の段落0068と同様にして、化合物(6)35.1g及びエタノール100mLをコルベンに投入し撹拌した。これに水素化ホウ素ナトリウム1.9gを徐々に添加した後、液温を40〜60℃に保ち、約2時間撹拌を行った。次に、反応液を約300mLの水に徐々に添加し、撹拌して結晶を析出させた。濾過後十分水洗して乾燥し、化合物(7)を得た。収量は33gであった。
【0103】
【化26】
【0104】
次に、50mLのジクロロメタンに溶解させた化合物(7)と2当量のトリエチルアミンと触媒量のDMAP(ジメチルアミノピリジン)を氷冷して0℃まで冷却する。ここに1.5当量の塩化アクリルをゆっくりと添加し、その後徐々に昇温し24時間撹拌する。この溶液を100mLの水に添加し、ジクロロメタンで抽出し、飽和の炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄する。その後、ジクロロメタン溶液で抽出し、飽和の炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄する。この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶剤を留去する。混合物を酢酸エチル:ヘキサン=3:1の溶液にて、カラム精製することによりメタクリレートモノマーである化合物RCTM−27が得られる。
【0105】
【化27】
【0106】
[3.4]その他の電荷輸送剤
また、表面保護層に含有される電荷輸送剤として、上記電荷輸送剤以外にも、従来公知の電子写真感光体の表面保護層に含有される電荷輸送剤を用いることとしてもよい。具体的には、例えば、特開2015−230437号公報、特開2016−143021号公報、特開2017−116628号公報等に記載の公知の電荷輸送剤を用いることができる。
また、表面保護層には、耐摩耗性向上の観点から、電荷輸送剤として公知の導電性微粒子を含有することが好ましい。導電性微粒子については、「[4]無機粒子」で後述する。
【0107】
[4]無機粒子
本発明の表面保護層には、無機粒子が含有されていることが好ましく、無機粒子として金属酸化物粒子が含有されていることがより好ましい。
金属酸化物粒子としては、遷移金属も含めた金属酸化物微粒子が好ましい。例えば、シリカ(二酸化ケイ素)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウム等の金属酸化物微粒子が例示される。中でも、酸化スズ微粒子、酸化チタン微粒子、酸化亜鉛微粒子及びアルミナ微粒子のいずれかであることが、表面保護層の耐摩耗性を向上できるため好ましい。
【0108】
また、金属酸化物微粒子のうち導電性微粒子を用いることが好ましい。導電性を有する金属酸化物微粒子は、電子又は正孔を輸送する機能も有するため、上記耐摩耗性を向上という効果も得つつ、電荷輸送剤として用いることができる。
電荷輸送剤としても用いることができる導電性微粒子としては、酸化スズ、酸化亜鉛、及び酸化チタン等が挙げられる。
【0109】
上記金属酸化物粒子は、公知の方法、例えば気相法、塩素法、硫酸法、プラズマ法及び電解法等の一般的な製造法で作製されたものが好ましい。
【0110】
上記金属酸化物粒子の個数平均一次粒径は、例えば、1〜300nmの範囲内であることが好ましく、3〜100nmの範囲内であることが特に好ましい。
【0111】
また、金属酸化物粒子の添加割合は、例えば、バインダー用重合性化合物100質量部に対して1〜250質量部の範囲内であることが好ましく、10〜200質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0112】
[4.1]金属酸化物粒子の粒径の測定法
上記金属酸化物粒子の粒径(個数平均一次粒径)は、走査型電子顕微鏡(日本電子製)により10000倍の拡大写真を撮影し、ランダムに300個の粒子をスキャナーにより取り込んだ写真画像(凝集粒子は除いた。)を自動画像処理解析装置「ルーゼックス AP(LUZEX(登録商標)AP)」((株)ニレコ製)ソフトウェアVer.1.32を使用して、2値化処理し、それぞれ水平方向フェレ径を算出、その平均値を個数平均一次粒径として算出する。ここで、水平方向フェレ径とは、金属酸化物粒子の画像を2値化処理したときの外接長方形の、x軸に平行な辺の長さをいう。
【0113】
[4.2]表面修飾
本発明において、金属酸化物粒子は、反応性有機基を有することが好ましい。すなわち、分散性及び感光体の耐摩耗性の観点から、反応性有機基を有する表面修飾剤で表面修飾されたものであることが好ましい。
【0114】
表面修飾剤としては、表面修飾前の金属酸化物粒子の表面に存在するヒドロキシ基などと反応する表面修飾剤を用いても良く、このような表面修飾剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。
また、本発明においては、表面保護層の硬度を更に高める目的で、反応性有機基を有する表面修飾剤を用いることが好ましく、反応性有機基がラジカル重合性官能基であるものを用いることがより好ましい。ラジカル重合性官能基を有する表面修飾剤を用いることにより、表面保護層に含有されるバインダー用重合性化合物や電荷輸送剤とも反応するために強固な保護膜を形成することができる。
ラジカル重合性官能基を有する表面修飾剤としては、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するシランカップリング剤を用いることが好ましく、このようなラジカル重合性官能基を有する表面修飾剤としては、下記に記すような公知の化合物が例示される。
【0115】
S−1:CH=CHSi(CH)(OCH
S−2:CH=CHSi(OCH
S−3:CH=CHSiCl
S−4:CH=CHCOO(CHSi(CH)(OCH
S−5:CH=CHCOO(CHSi(OCH
S−6:CH=CHCOO(CHSi(OC)(OCH
S−7:CH=CHCOO(CHSi(OCH
S−8:CH=CHCOO(CHSi(CH)Cl
S−9:CH=CHCOO(CHSiCl
S−10:CH=CHCOO(CHSi(CH)Cl
S−11:CH=CHCOO(CHSiCl
S−12:CH=C(CH)COO(CHSi(CH)(OCH
S−13:CH=C(CH)COO(CHSi(OCH
S−14:CH=C(CH)COO(CHSi(CH)(OCH
S−15:CH=C(CH)COO(CHSi(OCH
S−16:CH=C(CH)COO(CHSi(CH)Cl
S−17:CH=C(CH)COO(CHSiCl
S−18:CH=C(CH)COO(CHSi(CH)Cl
S−19:CH=C(CH)COO(CHSiCl
S−20:CH=CHSi(C)(OCH
S−21:CH=C(CH)Si(OCH
S−22:CH=C(CH)Si(OC
S−23:CH=CHSi(OCH
S−24:CH=C(CH)Si(CH)(OCH
S−25:CH=CHSi(CH)Cl
S−26:CH=CHCOOSi(OCH
S−27:CH=CHCOOSi(OC
S−28:CH=C(CH)COOSi(OCH
S−29:CH=C(CH)COOSi(OC
S−30:CH=C(CH)COO(CHSi(OC
S−31:CH=CHCOO(CHSi(CH(OCH
S−32:CH=CHCOO(CHSi(CH)(OCOCH
S−33:CH=CHCOO(CHSi(CH)(ONHCH
S−34:CH=CHCOO(CHSi(CH)(OC
S−35:CH=CHCOO(CHSi(C1021)(OCH
S−36:CH=CHCOO(CHSi(CH)(OCH
【0116】
表面修飾剤としては、上記S−1〜S−36以外にも、ラジカル重合反応を行うことができる反応性有機基を有するシラン化合物を用いることができる。これらの表面修飾剤は、単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0117】
また、表面修飾剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、修飾前の金属酸化物粒子100質量部に対して、0.1〜100質量部の範囲内であることが好ましい。
【0118】
[4.3]金属酸化物粒子の表面修飾方法
金属酸化物粒子の表面修飾は、具体的には、修飾前の金属酸化物粒子と表面修飾剤とを含むスラリー(固体粒子の懸濁液)を湿式粉砕することにより、金属酸化物粒子を微細化すると同時に粒子の表面修飾を進行させ、その後、溶媒を除去して粉体化することによって行うことができる。
【0119】
スラリーは、修飾前の金属酸化物粒子100質量部に対し、表面修飾剤0.1〜100質量部、溶媒50〜5000質量部の割合で混合されたものであることが好ましい。
【0120】
また、スラリーの湿式粉砕に用いる装置としては、湿式メディア分散型装置が挙げられる。
湿式メディア分散型装置とは、容器内にメディアとしてビーズを充填し、更に回転軸と垂直に取り付けられた撹拌ディスクを高速回転させることにより、金属酸化物粒子の凝集粒子を砕いて粉砕・分散する工程を有する装置であり、その構成としては、金属酸化物粒子に表面修飾を行う際に金属酸化物粒子を十分に分散させ、かつ表面修飾できる形式であれば問題なく、例えば、縦型・横型、連続式・回分式等、種々の様式のものを用いることができる。具体的には、サンドミル、ウルトラビスコミル、パールミル、グレンミル、ダイノミル、アジテータミル、ダイナミックミル等を使用することができる。これらの分散型装置は、ボール、ビーズ等の粉砕媒体(メディア)を使用して衝撃圧壊、摩擦、剪断、ズリ応力等によって微粉砕及び分散が行われる。
【0121】
湿式メディア分散型装置で用いるビーズとしては、例えば、ガラス、アルミナ、ジルコン、ジルコニア、スチール、フリント石等を原材料としたボールを用いることができるが、特にジルコニア製やジルコン製のものを用いることが好ましい。また、ビーズの大きさとしては、通常、直径1〜2mm程度のものを使用するが、本発明では、例えば、0.1〜1.0mm程度のものを用いることが好ましい。
【0122】
湿式メディア分散型装置に使用するディスクや容器内壁には、例えば、ステンレス製、ナイロン製、セラミック製等種々の素材のものを使用することができるが、本発明では特にジルコニア又はシリコンカーバイドといったセラミック製のディスクや容器内壁であることが好ましい。
【0123】
[5]その他の添加剤
本発明に係る表面保護層には、バインダー用重合性化合物(バインダー樹脂)、電荷輸送剤、重合開始剤及び無機粒子の他に、他の成分が含有されていても良く、例えば、各種の酸化防止剤や、フッ素原子含有樹脂粒子などの各種の滑剤粒子を加えることもできる。フッ素原子含有樹脂粒子としては、例えば、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、六フッ化塩化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂、及びこれらの共重合体の中から1種又は2種以上を適宜選択することが好ましいが、特に四フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂が好ましい。
【0124】
《導電性支持体》
導電性支持体は、導電性を有するものであれば良く、例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛、ステンレス等の金属をドラム又はシート状に成形したもの、アルミニウムや銅などの金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウム、酸化スズ等をプラスチックフィルムに蒸着したもの、導電性物質を単独又はバインダー樹脂とともに塗布して導電層を設けた金属、プラスチックフィルム又は紙などが挙げられる。
【0125】
《中間層》
本発明の電子写真感光体においては、導電性支持体と感光層との間にバリアー機能と接着機能を有する中間層を設けることもできる。種々の故障防止などを考慮すると、中間層を設けることが好ましい。
【0126】
このような中間層は、例えば、バインダー樹脂(以下、「中間層用バインダー樹脂」ともいう。)及び必要に応じて導電性粒子や金属酸化物粒子が含有されてなるものである。
【0127】
中間層用バインダー樹脂としては、例えば、カゼイン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸コポリマー、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ゼラチン等が挙げられる。これらの中でも、アルコール可溶性のポリアミド樹脂が好ましい。
【0128】
中間層には、抵抗調整の目的で各種の導電性粒子や金属酸化物粒子を含有させることができる。例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス等の各種金属酸化物粒子を用いることができる。また、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ又は酸化ジルコニウム等の超微粒子を用いることができる。
このような金属酸化物粒子の個数平均一次粒径は、例えば、0.3μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。当該金属酸化物粒子の個数平均一次粒径は、表面保護層に含有される金属酸化物粒子の個数平均一次粒径の測定方法と同様の方法で測定することができる。
これら金属酸化物粒子は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いても良い。2種以上を混合した場合には、固溶体又は融着の形をとっても良い。
導電性粒子又は金属酸化物粒子の含有割合は、例えば、中間層用バインダー樹脂100質量部に対して20〜400質量部の範囲内であることが好ましく、50〜350質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0129】
中間層の厚さは、例えば、0.1〜15μmの範囲内であることが好ましく、0.3〜10μmの範囲内であることがより好ましい。
【0130】
《電荷発生層》
電荷発生層は、電荷発生物質及びバインダー樹脂(以下、「電荷発生層用バインダー樹脂」ともいう。)が含有されてなるものである。
【0131】
電荷発生物質としては、例えば、スーダンレッド、ダイアンブルー等のアゾ原料、ピレンキノン、アントアントロン等のキノン顔料、キノシアニン顔料、ペリレン顔料、インジゴ又はチオインジゴ等のインジゴ顔料、ピランスロン、ジフタロイルピレン等の多環キノン顔料、フタロシアニン顔料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、多環キノン顔料、チタニルフタロシアニン顔料が好ましい。
これらの電荷発生物質は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いても良い。
【0132】
電荷発生層用バインダー樹脂としては、公知の樹脂を用いることができ、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、又はこれらの樹脂のうち二つ以上を含む共重合体樹脂(例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂)、ポリ−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。
【0133】
電荷発生層中の電荷発生物質の含有割合は、例えば、電荷発生層用バインダー樹脂100質量部に対して1〜600質量部の範囲内であることが好ましく、50〜500質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0134】
電荷発生層の厚さは、電荷発生物質の特性、電荷発生層用バインダー樹脂の特性、含有割合等により異なるが、例えば、0.01〜5μmの範囲内であることが好ましく、0.05〜3μmの範囲内であることがより好ましい。
【0135】
《電荷輸送層》
電荷輸送層は、電荷輸送物質及びバインダー樹脂(以下、「電荷輸送層用バインダー樹脂」ともいう。)が含有されてなるものである。
【0136】
電荷輸送層の電荷輸送物質としては、電荷を輸送する物質として、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物等が挙げられる。
【0137】
電荷輸送層用バインダー樹脂は、公知の樹脂を用いることができ、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリルニトリル共重合体樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体樹脂等が挙げられるが、ポリカーボネート樹脂が好ましい。さらには、BPA(ビスフェノールA)型、BPZ(ビスフェノールZ)型、ジメチルBPA型、BPA−ジメチルBPA共重合体型のポリカーボネート樹脂等が、耐クラック、耐摩耗性及び帯電特性の点で好ましい。
【0138】
電荷輸送層中の電荷輸送物質の含有割合は、例えば、電荷輸送層用バインダー樹脂100質量部に対して、10〜500質量部の範囲内であることが好ましく、20〜250質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0139】
電荷輸送層の厚さは、電荷輸送物質の特性、電荷輸送層用バインダー樹脂の特性、含有割合等によって異なるが、例えば、5〜40μmの範囲内であることが好ましく、10〜30μmの範囲内であることがよりに好ましい。
【0140】
電荷輸送層中には、例えば、酸化防止剤、電子導電剤、安定剤、シリコーンオイル等を添加しても良い。酸化防止剤は、特開2000−305291号公報、電子導電剤は、特開昭50−137543号公報、同58−76483号公報等に開示されているものが好ましい。
【0141】
[電子写真感光体の製造方法]
本発明の電子写真感光体の製造方法としては、本発明に係るアミノエーテル構造を有するヒンダードアミン化合物、バインダー用重合性化合物、電荷輸送剤及び重合開始剤を含有する組成物を硬化させ、表面保護層を形成する工程を有することが好ましい。また、当該組成物中に含有する重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド構造又はO−アシルオキシム構造を有する化合物であることが好ましい。硬化する方法としては、バインダー用重合性化合物の種類に応じて、適宜、紫外線硬化、熱硬化、電子線硬化等の方法を用いることができる。また、以下の電子写真感光体の製造方法の実施態様の説明では、これらのうち紫外線硬化の方法について、具体例を挙げて説明する。
【0142】
本発明の電子写真感光体の製造方法としては、例えば、下記工程を経ることにより製造することができる。
工程(1):導電性支持体の外周面に中間層形成用の塗布液を塗布し、乾燥することにより、中間層を形成する工程
工程(2):導電性支持体上に形成された中間層の外周面に電荷発生層形成用の塗布液を塗布し、乾燥することにより電荷発生層を形成する工程
工程(3):中間層上に形成された電荷発生層の外周面に電荷輸送層形成用の塗布液を塗布し、乾燥することにより電荷輸送層を形成する工程
工程(4):電荷発生層上に形成された電荷輸送層の外周面に、表面保護層形成用の塗布液を塗布して塗膜を形成し、この塗膜に紫外線を照射して硬化させることにより、表面保護層を形成する工程
以下、各工程について説明する。
【0143】
(工程(1):中間層の形成)
中間層は、溶媒中に中間層用バインダー樹脂を溶解させて塗布液(以下、「中間層形成用塗布液」ともいう。)を調製し、必要に応じて導電性粒子や金属酸化物粒子を分散させた後、当該塗布液を導電性支持体上に一定の層厚に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥することにより形成することができる。
【0144】
中間層形成用塗布液中に導電性粒子や金属酸化物粒子を分散する手段としては、例えば、超音波分散機、ボールミル、サンドミル、ホモミキサー等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0145】
中間層形成用塗布液の塗布方法としては、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、スライドホッパー法、円形スライドホッパー法等の公知の方法が挙げられる。
【0146】
塗膜の乾燥方法は、溶媒の種類、層厚等に応じて適宜選択することができるが、熱乾燥が好ましい。
【0147】
中間層の形成工程において使用する溶媒としては、導電性粒子や金属酸化物粒子を良好に分散し、中間層用バインダー樹脂を溶解するものであれば良い。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール等の炭素数1〜4のアルコール類が、バインダー樹脂の溶解性と塗布性能とに優れていることから好ましい。また、保存性、粒子の分散性等を向上するために、上記溶媒と併用でき、好ましい効果を得られる助溶媒としては、例えば、ベンジルアルコール、トルエン、ジクロロメタン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0148】
中間層形成用塗布液中の中間層用バインダー樹脂の濃度は、中間層の層厚や生産速度に合わせて適宜選択される。
【0149】
(工程(2):電荷発生層の形成)
電荷発生層は、溶媒中に電荷発生層用バインダー樹脂を溶解させた溶液中に、電荷発生物質を分散して塗布液(以下、「電荷発生層形成用塗布液」ともいう。)を調製し、当該塗布液を中間層上に一定の層厚に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥することにより形成することができる。
【0150】
電荷発生層形成用塗布液中に電荷発生物質を分散する手段としては、例えば、超音波分散機、ボールミル、サンドミル、ホモミキサー等が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0151】
電荷発生層形成用塗布液の塗布方法としては、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、スライドホッパー法、円形スライドホッパー法等の公知の方法が挙げられる。
【0152】
塗膜の乾燥方法は、溶媒の種類、層厚等に応じて適宜選択することができるが、熱乾燥が好ましい。
【0153】
電荷発生層の形成に用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸t−ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジン、ジエチルアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0154】
(工程(3):電荷輸送層の形成)
電荷輸送層は、溶媒中に電荷輸送層用バインダー樹脂及び電荷輸送物質を溶解させた塗布液(以下、「電荷輸送層形成用塗布液」ともいう。)を調製し、当該塗布液を電荷発生層上に一定の層厚に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥することにより形成することができる。
【0155】
電荷輸送層形成用塗布液の塗布方法としては、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、スライドホッパー法、円形スライドホッパー法等の公知の方法が挙げられる。
【0156】
塗膜の乾燥方法は、溶媒の種類、層厚等に応じて適宜選択することができるが、熱乾燥が好ましい。
【0157】
電荷輸送層の形成に用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジン、ジエチルアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0158】
(工程(4):表面保護層の形成)
表面保護層は、本発明に係るアミノエーテル構造を有するヒンダードアミン化合物、バインダー用重合性化合物、電荷輸送剤及び重合開始剤を含有する組成物に紫外線を照射して硬化させ、形成することができる。
【0159】
具体的には、まず、例えば、本発明に係るアミノエーテル構造を有するヒンダードアミン化合物、バインダー用重合性化合物、電荷輸送剤及び重合開始剤を含有する組成物、必要に応じて無機粒子及び他の成分を公知の溶媒に添加して塗布液(以下、「表面保護層形成用塗布液」ともいう。)を調製する。そして、この表面保護層形成用塗布液を工程(3)により形成された電荷輸送層の外周面に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥し、紫外線を照射することによって塗膜中のバインダー用重合性化合物を硬化処理することにより表面保護層を形成することができる。
【0160】
表面保護層の硬化処理においては、塗膜に紫外線を照射してラジカルを発生させ、バインダー用重合性化合物をラジカル重合性官能基を有する電荷輸送剤とともに重合反応させ、かつ、分子間及び分子内で架橋反応による架橋結合を形成させて硬化させることにより、当該バインダー用重合性化合物が架橋型硬化性樹脂として形成されることが好ましい。
【0161】
表面保護層形成用塗布液においては、本発明に係るアミノエーテル構造を有するヒンダードアミン化合物は、例えば、バインダー用重合性化合物100質量部に対して2〜15質量部の範囲内であることが好ましい。
また、無機粒子は、例えば、バインダー用重合性化合物100質量部に対して5〜60質量部の範囲内で含有されることが好ましく、より好ましくは10〜60質量部の範囲内である。
また、電荷輸送剤は、例えば、バインダー用重合性化合物100質量部に対して5〜75質量部の範囲内で含有されることが好ましく、より好ましくは5〜50質量部の範囲内である。
また、重合開始剤は、例えば、バインダー用重合性化合物100質量部に対して0.1〜20質量部の範囲内で含有されることが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量部の範囲内である。
【0162】
表面保護層形成用塗布液中に無機粒子及び電荷輸送剤を分散する手段としては、例えば、超音波分散機、ボールミル、サンドミル、ホモミキサー等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0163】
表面保護層の形成に用いられる溶媒としては、本発明に係るアミノエーテル構造を有するヒンダードアミン化合物、バインダー用重合性化合物、電荷輸送剤、重合開始剤、無機粒子等を溶解又は分散させることができればいずれのものも使用できる。例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール、ベンジルアルコール、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジン、ジエチルアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0164】
表面保護層形成用塗布液の塗布方法としては、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、スライドホッパー法、円形スライドホッパー法等の公知の方法が挙げられる。
【0165】
塗膜に対しては、乾燥させることなく硬化処理を行っても良いが、自然乾燥又は熱乾燥を行った後、硬化処理を行うことが好ましい。
【0166】
乾燥の条件は、溶媒の種類、層厚等によって適宜選択できる。乾燥温度は、好ましくは室温(25℃)〜180℃の範囲内であり、特に好ましくは80〜140℃の範囲内である。乾燥時間は、好ましくは1〜200分間であり、特に好ましくは5〜100分間である。
【0167】
紫外線光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、フラッシュ(パルス)キセノン等を用いることができる。
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、例えば、紫外線の照射量は、通常5〜500mJ/cmの範囲内、好ましくは5〜100mJ/cmの範囲内である。
ランプの電力は、好ましくは0.1〜5kWの範囲内であり、特に好ましくは0.5〜3kWの範囲内である。
【0168】
必要な紫外線の照射量を得るための照射時間としては、例えば、0.1秒間〜10分間が好ましく、作業効率の観点から0.1秒間〜5分間がより好ましい。
【0169】
表面保護層の形成の工程においては、紫外線を照射する前後、及び紫外線を照射中に乾燥を行うことができ、乾燥を行うタイミングはこれらを組み合わせて適宜選択できる。
【0170】
《画像形成装置》
本発明の画像形成装置は、上記した電子写真感光体を備えて構成される。本発明の画像形成装置は、更に、当該電子写真感光体の表面を帯電させる第1帯電手段と、当該電子写真感光体の表面に光を照射して静電潜像を形成する露光手段と、静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を用紙に転写する転写手段と、用紙にトナー像を転写した後に電子写真感光体の表面を帯電させる第2帯電手段と、電子写真感光体上の残留トナーを除去するクリーニング手段とを備えることが好ましい。
【0171】
図2は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
画像形成装置100は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bk、無端ベルト状中間転写体ユニット7、給紙手段21、定着手段24等を備えている。画像形成装置100の装置本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0172】
イエロー色の画像を形成する画像形成ユニット10Yは、ドラム状の感光体1Yの周囲に感光体1Yの回転方向に沿って順次配置された、第1帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、一次転写ローラー5Y、第2帯電手段9Y及びクリーニング手段6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成ユニット10Mは、ドラム状の感光体1Mの周囲に感光体1Mの回転方向に沿って順次配置された、第1帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写ローラー5M、第2帯電手段9M及びクリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成ユニット10Cは、ドラム状の感光体1Cの周囲に感光体1Cの回転方向に沿って順次配置された、第1帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写ローラー5C、第2帯電手段9C及びクリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成ユニット10Bkは、ドラム状の感光体1Bkの周囲に感光体1Bkの回転方向に沿って順次配置された、第1帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、一次転写ローラー5Bk、第2帯電手段9Bk及びクリーニング手段6Bkを有する。感光体1Y、1M、1C、1Bkとしては、上記した本発明の電子写真感光体を用いる。
【0173】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bk上に形成するトナー像の色が異なるのみで、同様に構成される。したがって、画像形成ユニット10Yを例にとって詳細に説明し、画像形成ユニット10M、10C、10Bkの説明を省略する。
【0174】
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体1Yの周囲に、第1帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、一次転写ローラー5Y、第2帯電手段9Y及びクリーニング手段6Yを配置し、感光体1Y上にイエロー(Y)のトナー像を形成するものである。また、本実施形態においては、画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体1Y、第1帯電手段2Y、現像手段4Y、第2帯電手段9Y及びクリーニング手段6Yが一体化されて設けられている。
【0175】
第1帯電手段2Yは、感光体1Yに対して一様な電位を与える手段であって、例えば、コロナ放電型の帯電器が用いられる。
【0176】
露光手段3Yは、第1帯電手段2Yによって一様な電位を与えられた感光体1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段である。露光手段3Yとしては、例えば、感光体1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子とから構成されるもの、又はレーザー光学系が用いられる。
【0177】
現像手段4Yは、例えば、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ及び感光体1Yとこの現像スリーブとの間に直流及び/又は交流バイアス電圧を印加する電圧印加装置よりなるものである。
【0178】
一次転写ローラー5Yは、感光体1Y上に形成されたトナー像を無端ベルト状の中間転写体70に転写する手段である。一次転写ローラー5Yは、中間転写体70と当接して配置されている。
【0179】
第2帯電手段9Yは、中間転写体70にトナー像を転写した後に感光体1Yの表面を帯電(除電)させる除電手段であり、プレクリーニング部材として設けられている。第2帯電手段9Yとしては、例えば、コロナ放電型の帯電器が用いられる。
本発明の画像形成装置100によれば、本発明の電子写真感光体を備えることに加え、第2帯電手段9Yが設けられていることにより、十分な感光体の長寿命及び高画質を得ることができる。また、画像形成装置100は本発明の電子写真感光体を備えていることにより、第2帯電手段9Yが設けられていない、又は第2帯電手段9Yを使用しない画像形成条件においても、十分な感光体の長寿命及び高画質を得ることができる。
【0180】
クリーニング手段6Yは、クリーニングブレードと、このクリーニングブレードより上流側に設けられたブラシローラーとにより構成される。
【0181】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラー71、72、73、74により巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状の中間転写体70を有する。無端ベルト状中間転写体ユニット7には、中間転写体70上にトナーを除去するクリーニング手段6bが配置されている。
【0182】
また、上記画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とにより筐体8が構成されている。筐体8は、装置本体Aから支持レール82L、82Rを介して引き出し可能に構成されている。
【0183】
定着手段24は、例えば、内部に加熱源を備えた加熱ローラーと、この加熱ローラーに定着ニップ部が形成されるよう圧接された状態で設けられた加圧ローラーとにより構成されてなる熱ローラー定着方式のものが挙げられる。
【0184】
なお、上記した実施形態においては、画像形成装置100が、カラーのレーザープリンターであるものとしたが、モノクロのレーザープリンター、コピー機、複合機等であっても良い。また、露光光源は、レーザー以外の光源、例えばLED光源等であっても良い。
【0185】
《画像形成方法》
本発明に係る画像形成方法は、本発明の電子写真感光体を備える上記画像形成装置100を用いて以下のようにして行うことができる。
【0186】
すなわち、まず、第1帯電手段2Y、2M、2C、2Bkにより感光体1Y、1M、1C、1Bkの表面に放電して負に帯電させる。次いで、露光手段3Y、3M、3C、3Bkで、感光体1Y、1M、1C、1Bkの表面を画像信号に基づいて露光し、静電潜像を形成する。次いで、現像手段4Y、4M、4C、4Bkにより、感光体1Y、1M、1C、1Bkの表面にトナーを付与して現像し、トナー像を形成する。
【0187】
次いで、一次転写ローラー5Y、5M、5C、5Bkにより、感光体1Y、1M、1C、1Bk上にそれぞれ形成した各色のトナー像を、回動する中間転写体70上に逐次転写(一次転写)させて、中間転写体70上にカラー画像を形成する。
【0188】
そして、感光体1Y、1M、1C、1Bkの表面を第2帯電手段9Y、9M、9C、9Bkによって除電する。その後、感光体1Y、1M、1C、1Bkの表面に残存したトナーを、クリーニング手段6Y、6M、6C、6Bkで除去する。そして、次の画像形成プロセスに備えて、帯電手段2Y、2M、2C、2Bkにより感光体1Y、1M、1C、1Bkを負に帯電させる。
【0189】
一方、給紙カセット20から給紙手段21により用紙Pを給紙し、複数の中間ローラー22A、22B、22C、22D、レジストローラー23を経て二次転写部5bに搬送する。そして、二次転写部5bにより、用紙P上にカラー画像を転写(二次転写)する。
【0190】
このようにしてカラー画像が転写された用紙Pを、定着手段24で定着処理した後、排紙ローラー25で挟持して装置外に排紙し、排紙トレイ26上に載置する。また、用紙Pが中間転写体70から分離された後、クリーニング手段6bにより中間転写体70上の残存トナーを除去する。
以上のようにして、用紙P上に画像を形成することができる。
【実施例】
【0191】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0192】
また、実施例で用いた化合物の構造式を以下に示す。なお、下記化合物A1のRで表される化学構造式中の「*」は、窒素原子との結合箇所を示している。
また、表面保護層の形成に用いた下記電荷輸送剤についての極大吸収波長(nm)は、テトラヒドロフランで1.0×10−5mol/Lの濃度で溶解させた溶液の吸収波長を、吸収分光光度計(日立ハイテクサイエンス製、UH4150)にて25℃で測定したときの吸収ピークの極大点であり、その結果を表Iに記載している。
また、下記化合物M1及び化合物M2において、Rは、アクリロイル基(CH=CHCO−)を表し、R′はメタクリロイル基(CH=CCHCO−)を表す。
【0193】
【化28】
【0194】
【化29】
【0195】
【化30】
【0196】
【化31】
【0197】
【化32】
【0198】
[電子写真感光体の作製]
《電子写真感光体101の作製》
(導電性支持体の用意)
まず、直径60mmの円筒形アルミニウム支持体の表面を切削加工し、導電性支持体を用意した。
【0199】
(中間層の形成)
下記組成の分散液を同じ混合溶媒にて1.5倍に希釈し、一夜静置後に、日本ポール社製リジメッシュ5μmフィルターを使用して濾過し、中間層形成用塗布液を調製した。
中間層用バインダー樹脂:ポリアミド樹脂CM8000(東レ社製)
100質量部
金属酸化物粒子:酸化チタンSMT500SAS(テイカ社製)
120質量部
金属酸化物粒子:酸化チタンSMT150MK(テイカ社製)
155質量部
溶媒:エタノール/n−PrOH/テトラヒドロフラン(体積比60:20:20)
1290質量部
調製した上記中間層形成用塗布液に対し、分散機としてサンドミルを用いて、バッチ式で5時間の分散を行った。次に、分散後の中間層形成用塗布液を導電性支持体上に浸漬塗布法で塗布し、乾燥後の層厚が2μmの中間層を形成した。
【0200】
(電荷発生層の形成)
下記成分を混合し、サンドミルを用いて10時間分散し、電荷発生層形成用塗布液を調製した。調製した電荷発生層形成用塗布液を中間層上に浸漬塗布法で塗布し、乾燥後の層厚が0.3μmの電荷発生層を形成した。
電荷発生物質:チタニルフタロシアニン顔料(Cu−Kα特性X線回折スペクトル測定で、少なくとも27.3°の位置に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料)
20質量部
電荷発生層用バインダー樹脂:ポリビニルブチラール樹脂#6000−C(デンカ社製)
10質量部
溶媒:酢酸t−ブチル 700質量部
溶媒:4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン 300質量部
【0201】
(電荷輸送層の形成)
下記成分を混合し、溶解させて電荷輸送層形成用塗布液を調製した。調製した電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布法で塗布し、乾燥後の層厚が20μmの電荷輸送層を形成した。これにより、電荷発生層と電荷輸送層からなる感光層を形成した。このようにして電子写真感光体101を作製した。
電荷輸送剤:上記化合物CTM−1 225質量部
電荷輸送層用バインダー樹脂:ポリカーボネート(ユピゼータFPC6535A:三菱ガス化学社製)
300質量部
添加剤:Flamestab NOR116 FF(上記化合物A1、BASFジャパン社製)
6質量部
溶媒:テトラヒドロフラン 1600質量部
溶媒:トルエン 400質量部
レベリング剤:シリコーンオイル(KF−54:信越化学社製)
1質量部
【0202】
《電子写真感光体102の作製》
中間層から電荷輸送層までは電子写真感光体101と同様に作製した。
(表面保護層の形成)
下記成分を混合撹拌し、十分に溶解・分散し、表面保護層形成用塗布液を調製した。調製した表面保護層形成用塗布液を感光層上に円形スライドホッパー塗布機を用いて塗布し、水銀キセノンランプを用いて紫外線(波長:365nm)を1分間照射後、80℃で70分間乾燥を行った。これにより、乾燥後の層厚が3.0μmの表面保護層を形成した。このようにして電子写真感光体102を作製した。
ラジカル重合性化合物:上記例示化合物M1 100質量部
電荷輸送剤:上記化合物CTM−2 43質量部
添加剤:Flamestab NOR116 FF(上記化合物A1、BASFジャパン社製)
15質量部
重合開始剤:イルガキュア819(上記化合物PI−1、BASFジャパン社製)
10質量部
溶媒:2−ブタノール 160質量部
溶媒:2−メチルテトラヒドロフラン 160質量部
【0203】
《電子写真感光体103の作製》
上記電子写真感光体101の作製において、電荷輸送層形成用塗布液に含有される添加剤をBHT(ジ−tert−ブチルヒドロキシトルエン:上記化合物C1)に変更した以外は同様にして、感光層までを作製した。
【0204】
(表面保護層の形成)
下記成分を混合撹拌し、十分に溶解・分散し、表面保護層形成用塗布液を調製した。調製した表面保護層形成用塗布液を感光層上に円形スライドホッパー塗布機を用いて塗布し、水銀キセノンランプを用いて紫外線(波長:365nm)を1分間照射後、80℃で70分間乾燥を行った。これにより、乾燥後の層厚が3.0μmの表面保護層を形成した。このようにして電子写真感光体103を作製した。
ラジカル重合性化合物:上記例示化合物M1 100質量部
酸化スズ粒子(個数平均一次粒径:20nm) 150質量部
添加剤:Flamestab NOR116 FF(上記化合物A1、BASFジャパン社製)
6質量部
重合開始剤:イルガキュア819(上記化合物PI−1、BASFジャパン社製)
10質量部
溶媒:2−ブタノール 160質量部
溶媒:2−メチルテトラヒドロフラン 160質量部
【0205】
《電子写真感光体104の作製》
上記電子写真感光体103の作製において、電荷輸送層形成用塗布液までは同様に作製し、表面保護層は以下のように作製した。
(表面保護層の形成)
下記成分を混合撹拌し、十分に溶解・分散し、表面保護層形成用塗布液を調製した。調製した表面保護層形成用塗布液を感光層上に円形スライドホッパー塗布機を用いて塗布し、水銀キセノンランプを用いて紫外線(波長:365nm)を1分間照射後、80℃で70分間乾燥を行った。これにより、乾燥後の層厚が3.0μmの表面保護層を形成した。このようにして電子写真感光体104を作製した。
ラジカル重合性化合物:上記例示化合物M1 100質量部
酸化スズ粒子(個数平均一次粒径:20nm) 150質量部
電荷輸送剤:上記化合物CTM−2 20質量部
添加剤:Flamestab NOR116 FF(上記化合物A1、BASFジャパン社製)
6質量部
重合開始剤:イルガキュア819(上記化合物PI−1、BASFジャパン社製)
10質量部
溶媒:2−ブタノール 160質量部
溶媒:2−メチルテトラヒドロフラン 160質量部
【0206】
《電子写真感光体105〜126の作製》
上記電子写真感光体104の作製において、下記表Iに記載のとおりに変更した以外は同様にして電子写真感光体105〜120、122〜126を作製した。
また、電子写真感光体121は、電子写真感光体101の作製において、電荷輸送層の形成の際に、添加剤であるFlamestab NOR116 FF(上記化合物A1、BASFジャパン社製)を添加しなかったこと以外は同様にして作製した。
また、表Iにおいて、重合開始剤のPI−1はイルガキュア819(BASFジャパン社製)、PI−2はイルガキュアTPO(BASFジャパン社製)、PI−3はPBG−304(常州強力電子新材料株式会社製)、B−1はイルガキュアOXE01(BASFジャパン社製)である。
なお、表Iにおいて、重合開始剤の添加量は、表面保護層を形成する際に用いた表面保護層形成用塗布液に添加した重合開始剤の添加量(質量部)を示している。
また、表Iに示すように、電子写真感光体105〜114、117、119、123〜126の表面保護層形成用塗布液には、2種類の重合開始剤を添加している。
また、電子写真感光体105〜116、118、119、122、123、126では、表面保護層形成用塗布液に、導電性微粒子である酸化スズ粒子の代わりに表Iに記載の無機粒子を添加している。
また、表IIには、添加剤中に含有されているアミノエーテル構造を有するヒンダードアミン化合物である化合物A1〜A6について、アミノエーテル(−NOZ)構造を構成する有機基(Z)の種類と炭素数について示している。
【0207】
【表1】
【0208】
【表2】
【0209】
[感光体の評価方法]
上記のようにして作製した電子写真感光体101〜126について、以下のようにして評価した。評価機として、コニカミノルタ社製「bizhub PRESS C1070」を用い、該評価機に各感光体を搭載して、評価を行った。23℃・50%RH環境において、画像面積比率6%の文字画像をA4横送りで、各400000枚両面連続でプリントを行う耐久試験を実施し、耐久試験中又は耐久試験後に、下記評価を行った。
【0210】
(1)耐メモリー性の評価
前記耐久試験後に、べた黒部とべた白部の混在した画像を10枚連続して印刷し、続いて均一なハーフトーン画像(マクベス濃度計で相対反射濃度0.4)を印刷し、該ハーフトーン画像中に前記べた黒部とべた白部の履歴が現れている(メモリー発生)か否(メモリー発生なし)かで判定した。
◎:メモリー発生なし(良好)
○:印刷時にべた黒部であった箇所と、べた白部であった箇所との境界部分のみメモリーが視認できる(事実上問題なし)
×:印刷時にべた黒部であった箇所と、べた白部であった箇所との境界部分以外にもはっきりしたメモリーが発生(事実上問題あり)
【0211】
(2)耐摩耗性(α値)の評価
前記耐久試験前後における導電性支持体上に形成された層の層厚を測定し、層厚減耗量を算出し、評価した。
導電性支持体上に形成された層の層厚は均一層厚部分(塗布の先端部及び後端部の層厚変動部分について、層厚プロフィールを作成して除く)をランダムに10か所測定し、その平均値により算出した。
層厚測定器は渦電流方式の層厚測定器EDDY560C(HELMUT FISCHER GmbH CO製)を用いて行い、実写試験前後の感光層の層厚差を層厚減耗量とする。100krot(10万回転)あたりの減耗量をα値として下記表IIIに記載する。0.20μm以下であれば、本発明内においては基準を満たすレベルといえる。
【0212】
(3)像流れの評価
前記耐久試験後、10℃・15%RH環境下、画像面積比率5%の文字画像をA4横送りで連続5000枚印字した後、直ぐに実機の主電源を停止した。停止してから12時間後に電源を入れ、画出し可能状態にした後、直ちにA3中性紙全面にハーフトーン画像(マクベス濃度計で相対反射濃度0.4)とA3全面の6dot格子画像を印字した。印字画像の状態を観察し以下の評価を行った。
◎:ハーフトーン画像及び格子画像において、感光体長軸方向の薄い帯状濃度低下は認められない(画像ボケの発生なし:良好)
○:ハーフトーン画像のみに感光体長軸方向の薄い帯状濃度低下が認められる(実用上問題なし)。
×:ハーフトーン画像及び格子画像において、感光体長軸方向の薄い帯状濃度低下が認められ(画像ボケの発生あり)、格子画像において格子画像の欠損又は線幅の細りが全面的に発生している(実用上問題あり)。
【0213】
【表3】
【0214】
表IIIに示すように、本発明の電子写真感光体は、耐メモリー性及び耐摩耗性に優れ、かつ像流れし難いことが分かった。これに対し比較例の電子写真感光体は、いずれかの項目について劣るものであった。
【符号の説明】
【0215】
100 画像形成装置
1Y、1M、1C、1Bk、200 電子写真感光体
201 導電性支持体
202 中間層
203 感光層
203a 電荷発生層
203b 電荷輸送層
204 表面保護層
205 導電性微粒子
図1
図2