【実施例1】
【0026】
図1は本発明の実施例1の画像形成装置の説明図である。
図1において、実施例1の画像形成装置の一例としての複写機Uは、記録部の一例であって、画像記録装置の一例としてのプリンタ部U1を有する。プリンタ部U1の上部には、読取部の一例であって、画像読取装置の一例としてのスキャナ部U2が支持されている。スキャナ部U2の上部には、原稿搬送装置の一例としてのオートフィーダU3が支持されている。実施例1のスキャナ部U2には、入力部の一例としてのユーザインタフェースU0が支持されている。前記ユーザインタフェースU0は、操作者が入力をして、複写機Uの操作が可能である。
【0027】
オートフィーダU3の上部には、媒体の収容容器の一例としての原稿トレイTG1が配置されている。原稿トレイTG1には、複写しようとする複数の原稿Giが重ねて収容可能である。原稿トレイTG1の下方には、原稿の排出部の一例としての原稿の排紙トレイTG2が形成されている。原稿トレイTG1と原稿の排紙トレイTG2との間には、原稿の搬送路U3aに沿って、原稿の搬送ロールU3bが配置されている。
【0028】
スキャナ部U2の上面には、透明な原稿台の一例としてのプラテンガラスPGが配置されている。実施例1のスキャナ部U2には、プラテンガラスPGの下方に、読取り用の光学系Aが配置されている。実施例1の読取り用の光学系Aは、プラテンガラスPGの下面に沿って、左右方向に移動可能に支持されている。なお、読取り用の光学系Aは、通常時は、
図1に示す初期位置に停止している。
読取り用の光学系Aの右方には、撮像部材の一例としての撮像素子CCDが配置されている。撮像素子CCDには、画像処理部GSが電気的に接続されている。
画像処理部GSは、プリンタ部U1の書込回路DLに電気的に接続されている。書込回路DLは、潜像の形成装置の一例としての露光装置ROSに電気的に接続されている。
【0029】
プリンタ部U1には、像保持手段の一例としての感光体ドラムPRが配置されている。感光体ドラムPRの周囲には、帯電手段の一例としての帯電ロールCR、現像装置G、転写装置の一例としての転写ユニットTU、清掃器の一例としてのドラムクリーナCLpが配置されている。
【0030】
転写ユニットTUの下方には、媒体の収容容器の一例としての給紙トレイTR1〜TR4が配置されている。各給紙トレイTR1〜TR4から、搬送路SH1が延びている。搬送路SH1には、媒体の取り出し部材の一例としてのピックアップロールRp、捌き部材の一例としての捌きロールRs、搬送部材の一例としての搬送ロールRa、送出部材の一例としてのレジロールRrが配置されている。
転写ユニットTUの左方には、加熱ロールFhや加圧ロールFpを有する定着装置Fが配置されている。定着装置Fから、排紙トレイTRhの間は排出路SH2で接続されている。排出路SH2とレジロールRrとの間は、反転路SH3で接続されている。排出路SH2には、正逆回転可能な搬送ロールRbや排出ロールRhが配置されている。
【0031】
(画像形成動作の説明)
前記原稿トレイTG1に収容された複数の原稿Giは、プラテンガラスPG上の原稿の読み取り位置を順次通過して、原稿の排紙トレイTG2に排出される。
前記オートフィーダU3を使用して自動的に原稿を搬送して複写を行う場合は、読取り用の光学系Aは初期位置に停止した状態で、プラテンガラスPG上の読み取り位置を順次通過する各原稿Giを露光する。
原稿Giを作業者が手でプラテンガラスPG上に置いて複写を行う場合、読取り用の光学系Aが左右方向に移動して、プラテンガラスPG上の原稿が、露光されながら走査される。
原稿Giからの反射光は、読取り用の光学系Aを通って、撮像素子CCDに集光される。前記撮像素子CCDは、撮像面上に集光された原稿の反射光を電気信号に変換する。
【0032】
画像処理部GSは、撮像素子CCDから入力された読取信号を、デジタルの画像信号に変換して、プリンタ部U1の書込回路DLに出力する。前記書込回路DLは、入力された画像書込信号に応じた制御信号を、露光装置ROSに出力する。
露光装置ROSは、レーザービームLを出力して、帯電ロールCRで帯電された感光体ドラムPRの表面に潜像を形成する。感光体ドラムPRの表面の潜像は、現像装置Gで可視像に現像される。転写ユニットTUの転写ロールTRは、感光体ドラムPRの表面の可視像を、搬送路SH1を搬送されてきた媒体の一例としての記録シートSに転写する。記録シートSに転写された可視像は、定着装置Fで定着される。定着装置Fを通過した記録シートSは、両面印刷がされる場合には、反転路SH3に搬送され、排紙トレイTRhに排出される場合には、排出ロールRhで排出される。
【0033】
(帯電部材の説明)
図2は実施例1の像保持体および帯電部材の説明図である。
図2において、実施例1の感光体ドラムPRは、有機材料性の感光層1と、感光層1の表面に積層された硬化層2とを有する。なお、有機感光材料を使用した有機感光体は、従来公知であり、種々の構成を採用可能である。一例として、フタロシアニン系やビスアゾ系顔料を分散させた光キャリア発生層とヒドラゾン系やアリールアミン系の化合物を樹脂に相溶させたキャリア輸送層を有する従来公知の有機感光材料を使用可能であるため、詳細な説明は省略する。また、硬化層2としては、一例として、シロキサン系やアクリル系の有機硬化樹脂や酸化ガリウム等の無機材料からなる従来公知の硬化層2を使用可能であるため、詳細な説明は省略する。さらに、感光体ドラムPRは、硬化層2を有しない場合は、有機感光体に限定されず、アモルファスシリコン(α−Si)等の無機感光材料を使用した従来公知の無機感光体を使用することも可能である。
実施例1の帯電ロールCRには、電源供給手段の一例としての電源回路Eから帯電バイアスが印加される。電源回路Eは、制御部Cにより制御される。なお、実施例1の帯電ロールCRには、直流バイアスVdcに、交番バイアスの一例としての交流バイアスVacが重畳された帯電バイアスが印加可能である。
【0034】
図2において、制御部Cは、外部との信号の入出力等を行う入出力インターフェースI/Oを有する。また、制御部Cは、必要な処理を行うためのプログラムおよび情報等が記憶されたROM:リードオンリーメモリを有する。また、制御部Cは、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM:ランダムアクセスメモリを有する。また、制御部Cは、ROM等に記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU:中央演算処理装置を有する。したがって、実施例1の制御部Cは、小型の情報処理装置、いわゆるマイクロコンピュータにより構成されている。よって、制御部Cは、ROM等に記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現する。
【0035】
実施例1の制御部Cは、以下の機能(プログラムモジュール)を有する。
交換予測動作の開始判別手段C1は、帯電ロールCRの交換時期になったかを検出するための交換予測動作を開始する時期になったか否かを判別する。実施例1の交換予測動作の開始判別手段C1は、開始時期の一例としての複写機Uの電源オン時に、交換予測動作を開始する時期になったと判別する。なお、電源オン時に限定されず、例えば、予め設定された時刻(「毎週月曜日朝9時」とか)を使用したり、累計の印刷枚数が1万枚(=10kpV)ごとに行う等、開始時期は、設計や仕様等に応じて任意に変更可能である。
【0036】
帯電バイアス制御手段C2は、画像形成動作時の帯電バイアス制御手段C2aと、交換予測動作時の帯電バイアス制御手段C2bとを有する。帯電バイアス制御手段C2は、電源回路Eを介して帯電ロールCRへの帯電バイアスの供給を制御する。
画像形成動作時の帯電バイアス制御手段C2aは、画像形成動作時に帯電ロールCRへの帯電バイアスの供給を制御する。実施例1の画像形成動作時の帯電バイアス制御手段C2aは、直流バイアスVdcに、第2の交番バイアスの一例としての第2交流バイアスVac2が重畳された帯電バイアスが供給される。第2交流バイアスVac2は、放電バイアスVthの2倍に達するバイアスが予め設定されている。一例として、感光体ドラムPRと帯電ロールCRとの間で放電が発生する放電バイアスVthが600[V]であった場合、交流波形の極大値と極小値の差、いわゆる、ピーク間電圧Vpp2が放電バイアスの2倍を超える1.4[kV]を有する交流バイアスVac2=Vpp2・(1/2)・sin2πftが設定されている。なお、実施例1では、直流バイアスVdcは−600[V]に設定されているが、直流バイアスVdcは設計や仕様等に応じて変更可能である。また、交流の周波数は、一例として、f=2.4kHzに設定することが可能であるが、適宜変更可能である。
【0037】
交換予測動作時の帯電バイアス制御手段C2bは、交換予測動作時に帯電ロールCRへの帯電バイアスの供給を制御する。実施例1の交換予測動作時の帯電バイアス制御手段C2bは、直流バイアスVdcに、第1の交番バイアスの一例としての第1交流バイアスVac1が重畳された帯電バイアスが供給される。第1交流バイアスVac1は、放電バイアスVthの2倍に達しないバイアスが予め設定されている。一例として、放電バイアスVth=600[V]に対して、ピーク間電圧Vpp1が放電バイアスの2倍未満の500[V]に設定されている。なお、Vpp1,Vpp2,Vdcの値は、例示した数値に限定されず、Vthの値や、画像形成時の環境や使用する紙種、要求される画質等に応じて適宜変更可能である。また、実施例1では、交換予測動作時の直流バイアスVdcは、画像形成動作時と同一の直流バイアスが印加されているが、これに限定されず、交換予測精度等に応じて変更可能である。
【0038】
縦筋画像読み取り手段C3は、交換予測動作時に、予め設定された設定画像の一例としてのサンプル画像が印刷された記録シートSを読み取る。実施例1の縦筋画像読み取り手段C3は、プリントアウトされた記録シートSを作業者がスキャナ部U2にセットして、読み取り開始ボタンを入力した場合に画像を読み取る。なお、スキャナ部U2を利用して画像を読み取る構成に限定されない。例えば、定着後の搬送路に画像を読み取るセンサ、いわゆるインラインセンサ(読み取り部材、図視せず)を配置して、印刷された画像を搬送中に読み取る構成とすることも可能である。
【0039】
縦筋グレード判別手段C4は、縦筋画像読み取り手段C3が読み取った画像に基づいて、縦筋状の画像欠陥の程度の一例としての縦筋グレードを判別する。縦筋グレード判別手段C4は、縦筋状の画像欠陥、すなわち、記録シートSの搬送方向、副走査方向に沿った筋状の画像欠陥において、縦筋の幅(太さ)と長さ、個数に応じて、幅が太いほど、長さが長いほど、個数が多いほど、縦筋グレードが悪いと判別する。なお、幅の太さの判別値や長さの判別値、個数の判別値と縦筋グレードの関係は、予め実験で測定され、設定されている。
【0040】
図3は実施例1の特定情報の一例の説明図であり、
図3Aは残寿命テーブルの一例の説明図、
図3Bは横軸に累積印刷枚数を取り縦軸に縦筋レベルを取った場合の帯電ロールの寿命の一例のグラフの説明図である。
特定情報記憶手段の一例としての残寿命テーブル記憶手段C5は、交換予測動作時に形成される画像と帯電ロールCRの寿命との関係を特定する特定情報の一例としての残寿命テーブルが予め設定されている。実施例1では、残寿命テーブルとして、
図3Aに示すように、縦筋グレードが1の場合は残寿命が40kpv、縦筋グレードが2の場合は残寿命が25kpv、縦筋グレードが3の場合は残寿命が20kpv、縦筋グレードが4の場合は残寿命が5kpv、縦筋グレードが5の場合は残寿命が0kpv、が予め実験等で測定され、残寿命テーブルとして記憶されている。
【0041】
一例として、
図3Bにおいて、
図3Bの実線で示すように、画像形成動作時の第2帯電バイアスVdc+Vac2を印加した場合に縦筋が発生する時期に対して、交換予測動作時の第1帯電バイアスVdc+Vac1を印加した場合に縦筋が発生する時期は、
図3Bの破線で示すように早い時期となる。したがって、この実験結果から、画像形成動作時にグレード1の縦筋が発生する時期(130kpv)に対して、交換予測動作時の第1帯電バイアスVdc+Vac1を印加した場合に、グレード1の縦筋が発生するのが40kpv前、グレード2の縦筋が発生するのが25kpv前、…といった結果が得られる。よって、これらの実験結果に基づいて、残寿命テーブルが予め設定される。
【0042】
判別結果の補正手段C6は、連続印刷枚数判別手段C6aと、平均画像密度判別手段C6bと、環境判別手段C6cと、用紙種類判別手段C6dとを有する。判別結果の補正手段C6は、複写機Uの状況に応じて、判別結果の補正を行う。
連続印刷枚数判別手段C6aは、交換予測動作が開始される直前の画像形成動作(いわゆる直前ジョブ)における連続印刷枚数を判別する。実施例1では、直前のジョブにおける連続印刷枚数が、設定値を超えていれば、紙粉等が多く帯電ロールCRの寿命にとって厳しい状況であると判別して、残寿命に、実験等で予め設定された係数α1(<1)を乗算する補正する処理を判別結果の補正手段C6は行う。なお、補正係数を使用して補正を行う場合に限定されず、連続印刷枚数が設定値を超えている場合と超えていない場合とで異なる別々のテーブルを予め記憶しておき、いずれかのテーブルを選択するようにすることも可能である。
【0043】
平均画像密度判別手段C6bは、交換予測動作が開始されるまでの画像形成動作における平均画像密度を判別する。実施例1では、いままでのジョブにおける平均画像密度が、設定値を超えていれば、高濃度印刷で外添剤が多く帯電ロールCRが汚れやすく、寿命にとって厳しい状況であると判別して、残寿命に、実験等で予め設定された係数α2(<1)を乗算する補正する処理を判別結果の補正手段C6は行う。
環境判別手段C6cは、交換予測動作が実行される際の環境温度および環境湿度を判別する。実施例1では、環境温度と環境湿度が、予め設定された設定値に達していなければ、低温低湿で帯電ロールCRの寿命にとって厳しい状況であると判別して、残寿命に、実験等で予め設定された係数α3(<1)を乗算する補正する処理を判別結果の補正手段C6は行う。
【0044】
用紙種類判別手段C6dは、交換予測動作が開始される直前の画像形成動作(いわゆる直前ジョブ)において使用された記録シートSの種類を判別する。実施例1では、直前のジョブにおいて使用された記録シートSが、紙であるか、OHP等のプラスチックシートであるかを判別し、紙の場合は、紙粉等が多く帯電ロールCRの寿命にとって厳しい状況であると判別して、残寿命に、実験等で予め設定された係数α4(<1)を乗算する補正する処理を判別結果の補正手段C6は行う。
なお、前記各補正において、残寿命の補正を行う構成に限定されず、例えば、
図3Bのグラフの縦軸の縦筋グレードに別の係数(>1)をかけたり、0.5段階悪化させる補正を行うとか、
図3Bのグラフの横軸のpvを大きな値になるように補正を行うとか、
図3のグラフの傾斜角を大きくする補正を行う等、補正方法は任意に変更可能である。
【0045】
寿命予測手段の一例としての交換時期判別手段C7は、縦筋グレード判別手段C4で判別された縦筋グレードと残寿命テーブルとから演算された残寿命を、判別結果の補正手段C6で補正を行って、残寿命を導出して、寿命を予測する。実施例1の交換時期判別手段C7は、導出された残寿命が、予め設定された交換告知用の設定値(例えば、5kpv)に達しない場合は、利用者に帯電ロールCRの交換時期になったことをユーザインタフェースU0に表示して告知する。
【0046】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1の複写機Uでは、交換予測動作の時期になると、交換予測動作が実行される。交換予測動作では、画像形成動作時に比べて、Vppが小さい第1帯電バイアスVdc+Vac1が印加されて、現像が行われる。なお、交換予測動作では、露光装置ROSで画像を形成せずに現像を行っているが、何らかのサンプル画像を形成する構成とすることも可能である。
そして、プリントアウトされた記録シートSが読み取られて、縦筋状の画質欠陥のグレードの判定が行われる。そして、縦筋グレードと残寿命テーブルから、帯電ロールCRの残りの寿命が導出される。なお、実施例1では、導出された残寿命に、複写機Uの状況に応じた補正が行われて、最終的な残寿命が導出される。そして、実施例1の複写機Uでは、帯電ロールCRの汚れに伴う帯電ロールCRの寿命を予測する。そして、残寿命から、交換時期になったか否かの判別が行われ、利用者に告知がされる。
【0047】
従来の構成において、通常の有機感光体は表面が、無機感光体に比べて軟らかく、寿命が比較的短い。感光体ドラムの寿命は、帯電ロールやクリーニング部材との摩耗が主な要因となるため、特許文献1に記載の技術のように、感光体に流れる電流から感光体の膜厚を予測して寿命を予測して、感光体の交換時期の目安としている。しかしながら、無機感光体や保護層を有する有機感光体は、保護層を有しない有機感光体に比べて表面が硬く、摩耗しにくい。したがって、感光体が摩耗するまでの期間に比べて、帯電ロールCRが汚れで画質欠陥がでるまでの期間のほうが短くなってきている。したがって、感光体ドラムPRの寿命ではなく、帯電ロールCRの寿命を判定する必要がある。
なお、特許文献2に記載の技術のような「横筋」状の画像欠陥は、主に感光体の膜厚が厚い状態で、DCバイアスを印加した場合に発生しやすい。よって、累積印刷枚数が少ない時期に出やすく、感光体が摩耗してくると発生しにくくなる。したがって、横筋の画像欠陥は、感光体ドラムPRに起因する画像欠陥であり、帯電ロールCRに起因する画像欠陥ではない。
【0048】
図4は直流バイアスのみを印加した場合の感光体表面の電位の説明図であり、横軸に印加電圧を取り、縦軸に感光体表面電位を取ったグラフである。
図5は直流バイアスに交流バイアスを印加した場合の感光体表面電位の説明図であり、横軸にピーク間電圧をとり、縦軸に感光体表面電位を取ったグラフである。
図4に示すように、直流バイアスを大きくしていくと、感光体の表面電位が上がっていくが、
図4の測定を行った構成では、印加電圧が600V以下になると、感光体の表面電位が0になる。すなわち、帯電させるための放電が発生しないことがわかる。よって、この構成では、放電バイアスVthは600Vとなる。
図5において、直流バイアスに交流バイアスを重畳した場合、交流バイアスのピーク間電圧Vppを大きくしていくと、Vpp=1200Vまでは感光体表面電位が上昇するが、それ以降は感光体の表面電位が上昇しないことが分かる。すなわち、放電バイアスVth=600Vの2倍である1200V以上にVppがなると、それ以上は直流バイアスに応じた表面電位に安定して収束することが知られている。したがって、実施例1では、余裕を持たせて、画像形成時の第2交流バイアスVac2は、Vpp2=1400Vに設定されている。
【0049】
図6は帯電領域の前後での感光体の帯電の説明図であり、
図6Aは帯電領域の説明図、
図6Bは放電バイアスの2倍に達するピーク間電圧を印加した帯電バイアスAC+DCでの表面電位の説明図、
図6Cは直流バイアスのみで帯電した場合の感光体の表面電位の説明図、
図6Dは放電バイアスの2倍に達しないピーク間電圧を印加した帯電バイアスAC+DCでの表面電位の説明図である。
図7は放電バイアスと表面電位の説明図であり、
図7Aは
図6Bの場合の説明図、
図7は
図6Dの場合の説明図である。
【0050】
図6Aにおいて、感光体ドラムPRと帯電ロールCRとの接触領域11に対して、感光体ドラムPRの回転方向の上流側および下流側にくさび状の隙間12,13が形成され、この領域12,13で放電が発生することとなる。このとき、感光体ドラムPRの表面と、帯電ロールCRとの電位差が、放電バイアスVthに達していないと放電がほとんど発生しない。
図7において、感光体ドラムPRの表面が帯電されていない(0V)状態では、直流バイアスVdc(600V)が放電バイアスVth(600V)に達しており、さらに交流バイアスVacが印加される。したがって、放電が発生しやすい。このとき、感光体の表面電位は、直流バイアスVdcまで一気に帯電されにくく、直流バイアスVdcよりも低い表面電位V1に帯電されることが多い。
図7Aにおいて、感光体ドラムPRの表面が表面電位V1の状態では、VppがVthの2倍を超えていれば、ピークP1の近傍では、帯電バイアスのピーク値(Vdc−(Vpp2)/2)と表面電位V1との間の電位差がVthを超える。したがって、再び放電が発生して、(Vdc−(Vpp2)/2)よりも低い表面電位V2に帯電される。同様にして、ピークP2でも、帯電バイアスと表面電位V2との電位差がVthを超えて、表面電位V3に帯電される。
図6Bにおいて、これを繰り返して、上流側の領域12と下流側の領域13を通過した感光体ドラムPRの表面は、繰り返しの放電で、直流バイアスVdcに収束しやすい。
【0051】
一方、
図7Bに示すように、VppがVthの2倍に達しない場合、最初の何度かは、帯電バイアスと感光体ドラムPRの表面の電位との電位差が、放電バイアスVthに達して放電が行われるが、数回の放電後、帯電バイアスと感光体ドラムPRの表面との電位差が放電バイアスVthに達しなくなり、ほとんど放電が発生しなくなる。すなわち、VppがVthの2倍に達する場合に比べて、繰り返しの放電が発生しにくい。よって、
図6Dに示すような放電状態となる。
放電回数が少ない状態では、感光体ドラムPRの表面の電位が安定しにくい。そして、帯電ロールCRが外添剤や紙粉等で周方向に汚れてしまうと、汚れた部分が高抵抗になり放電しづらくなって、感光体ドラムPRの表面電位が下がりやすい。感光体ドラムPRの表面電位が下がった部分は、現像時に副走査方向に延びる縦筋として印刷される。したがって、VppがVthの2倍に達しないバイアスを印加する場合は、画像形成時の帯電バイアスを印加する場合に比べて、早期に帯電ロールCRの汚れを検出することができる。そして、この状況で画像形成を継続していくと、どのくらい経過すると、画像形成時にも縦筋が発生してしまうか予測することが可能である。したがって、縦筋を意図的に発生させて、帯電ロールCRの寿命を予測している。
また、実施例1の複写機Uでは、複写機Uの状況に応じて残寿命を補正している。したがって、補正しない場合に比べて、寿命の予測精度が向上している。
【0052】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H05)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、画像形成装置の一例としての複写機Uを例示したが、これに限定されず、例えば、プリンタ、FAX、あるいはこれらの複数または全ての機能を有する複合機等により構成することも可能である。
【0053】
(H02)前記実施例において、複写機Uは、単色の現像剤が使用される構成を例示したが、これに限定されず、例えば、2色以上の多色の画像形成装置にも適用可能である。
(H03)前記実施例において、Vthの2倍に達しない交番バイアスとして、Vpp=500Vの交流バイアスを印加する構成を例示したが、これに限定されない。例えば、Vppの値は設計や仕様等に応じて変更可能であるし、Vpp=0の交番バイアス、すなわち、交番バイアスが実質的に重畳されず、直流バイアスのみで、交換予測動作を実行する構成とすることも可能である。なお、直流バイアスのみのときは、
図6Cに示す状態となり、
図6Dの場合と同様に、縦筋が発生しやすくなる。
【0054】
(H04)前記実施例において、交番バイアスは、正弦波形のバイアスに限定されない。例えば、矩形波状や三角波状、のこぎり波状等、任意の交番バイアスを採用可能である。
(H05)前記実施例において、連続印刷枚数や平均画像密度、環境温度、湿度、用紙種類に応じて補正を行う構成を例示したが、これに限定されない。例示した以外のパラメータをふかしたり、例示したパラメータのいずれかまたは複数を使用しない構成とすることも可能である。また、補正は行うことが望ましいが、補正を行わない構成とすることも可能である。