(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第一実施形態は、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、およびブラックトナーを含むカラートナーを用いる画像形成方法であって、静電潜像担持体の表面を帯電および露光し形成された静電潜像上に前記カラートナーを現像して、トナー像を形成するトナー像形成工程と、前記トナー像を記録媒体に転写しカラートナー画像を形成する転写工程と、前記カラートナー画像を前記記録媒体上に定着させる定着工程と、を有し、前記イエロートナー、前記マゼンタトナー、前記シアントナーおよび前記ブラックトナーは、それぞれ少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤、および層状ケイ酸塩化合物を含有し、前記イエロートナー、前記マゼンタトナー、前記シアントナーおよび前記ブラックトナーの体積平均粒子径は4〜6μmであり、波長分散型蛍光X線分析によるNet強度で表される前記イエロートナー中のアルミニウム元素の含有量をAl(Y)(単位:kcps)、波長分散型蛍光X線分析によるNet強度で表される前記マゼンタトナー中のアルミニウム元素の含有量をAl(M)(単位:kcps)、波長分散型蛍光X線分析によるNet強度で表される前記シアントナー中のアルミニウム元素の含有量をAl(C)(単位:kcps)、波長分散型蛍光X線分析によるNet強度で表される前記ブラックトナー中のアルミニウム元素の含有量をAl(K)(単位:kcps)、としたとき、下記式(1)〜(3)を満たす、画像形成方法である。
【0017】
また、本発明の第二実施形態は、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、およびブラックトナーを含むトナーセットであって、前記イエロートナー、前記マゼンタトナー、前記シアントナーおよび前記ブラックトナーは、それぞれ少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤、および層状ケイ酸塩化合物を含有し、前記イエロートナー、前記マゼンタトナー、前記シアントナー、および前記ブラックトナーの体積平均粒子径は4〜6μmであり、波長分散型蛍光X線分析によるNet強度で表されるイエロートナー中のアルミニウム元素の含有量をAl(Y)(単位:kcps)、波長分散型蛍光X線分析によるNet強度で表されるマゼンタトナー中のアルミニウム元素の含有量をAl(M)(単位:kcps)、波長分散型蛍光X線分析によるNet強度で表されるシアントナー中のアルミニウム元素の含有量をAl(C)(単位:kcps)、波長分散型蛍光X線分析によるNet強度で表されるブラックトナー中のアルミニウム元素の含有量をAl(K)(単位:kcps)、としたとき、下記式(1)〜(3)を満たす、静電潜像現像用トナーセットである。
【0019】
なお、ここでいうトナーセットとは、記録媒体上に転写される際に異なる画像形成層を形成するトナーの組み合わせを指す。
【0020】
本発明に係る画像形成方法によれば、初期および長期間使用時の各色のトナー間の帯電量の差を低減し、長期間使用時のカラー画像の色再現性を向上させることができる。また、本発明に係る静電潜像現像用トナーセットを用いることによってもまた、上記と同様の効果が得られる。かかる本発明の構成により上記効果が得られる作用機序は不明であるが、以下のように考えられる。
【0021】
近年求められるトナーの使用量削減を解決する手段の一つとして、トナーの小径化があるが、トナーのクリーニング性が低下するため、特許文献1に記載の技術のように、層状無機化合物をトナーに添加しトナーを異形化させ、クリーニング性を向上させることが試みられている。また、層状無機化合物を添加することにより、トナーの帯電量の調整が容易になり、帯電安定性に効果があるとしている。
【0022】
しかしながら、小径トナーは表面積が大きいことから、層状無機化合物添加による帯電量変化の影響が大きくなる。特に、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、およびブラックトナーを含むカラートナーにおいては、各色の着色剤の帯電性が異なることから、トナー粒子の帯電量が異なってくるため、長期間使用時にトナーの帯電安定性や、カラー画像での色再現性が低下するという問題があった。
【0023】
このような課題に対し、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、各色のトナーのアルミニウム元素の含有量について、上記式(1)〜(3)の関係を満足させることにより、課題が解決することを見出した。
【0024】
イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、およびブラックトナーにおいては、着色剤の帯電性の影響により、ブラックトナーおよびシアントナーの帯電量が、イエロートナーおよびマゼンタトナーの帯電量よりも高いという傾向があった。本発明では、各色のトナーにおいて、トナーの過剰帯電を抑制するアルミニウム元素の含有量を上記式(1)〜(3)の関係とすることにより、各色のトナー間の帯電量の差を低減することができ、帯電安定性が向上する。また、これにより、各色のトナーの現像性および転写性を長期的に安定に維持することが可能となり、長期間使用時のトナーの帯電安定性やカラー画像での色再現性を向上させることができる。
【0025】
なお、上記メカニズムは推測によるものであり、本発明は上記メカニズムに何ら制限されるものではない。
【0026】
以下、本発明の画像形成方法について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみには限定されない。また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」はXおよびYを含み「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で行う。本明細書において、(メタ)アクリルとはアクリルとメタクリルの総称である。
【0027】
さらに、本明細書において、トナー母体粒子とは、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤および層状ケイ酸塩化合物を含む粒子であって、必要に応じて、その他の内添剤を含有する粒子であることを意味する。トナー母体粒子に外添剤が添加されることによってトナー粒子となり、トナー粒子の集合体がトナーとなる。
【0028】
また、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、およびブラックトナーを、まとめて「YMCKトナー」とも称する。
【0029】
[カラートナー]
本発明の画像形成方法および静電潜像現像用トナーセットは、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、およびブラックトナーを含むカラートナーを用いるものであり、前記イエロートナー、前記マゼンタトナー、前記シアントナーおよび前記ブラックトナーは、それぞれ少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤、および層状ケイ酸塩化合物を含有する。また、必要に応じて、たとえば荷電制御剤などの内添剤や、外添剤を含んでもよい。
【0030】
〔結着樹脂〕
YMCKトナーを構成する結着樹脂としては、スチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル共重合体樹脂、オレフィン樹脂などのビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスルホン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂などの公知の種々の樹脂を用いることができる。これらは、単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。また、結着樹脂としては、これらの樹脂を変性したものを用いることもできる。さらに、結着樹脂としては、非晶性樹脂または結晶性樹脂であってもよく、両者を併用してもよい。
【0031】
なかでも、結着樹脂は、ビニル樹脂、未変性ポリエステル樹脂、および変性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。以下では、ビニル樹脂、未変性ポリエステル樹脂、および変性ポリエステル樹脂について説明する。
【0032】
(ビニル樹脂)
ビニル樹脂を構成する重合性単量体としては、重合性(樹脂粒子の形成性)の観点から、下記(1)〜(9)のビニル単量体を含むことが好ましい。これらビニル単量体は、1種単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
【0033】
(1)スチレンまたはスチレン誘導体
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンなど。
【0034】
(2)メタクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル誘導体
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸3−ヒドロキシブチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコールモノメタクリレートなど。
【0035】
(3)アクリル酸エステルまたはアクリル酸エステル誘導体
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシブチル、アクリル酸3−ヒドロキシブチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコールモノアクリレートなど。
【0036】
(4)オレフィン類
エチレン、プロピレン、イソブチレンなど。
【0037】
(5)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなど。
【0038】
(6)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなど。
【0039】
(7)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなど。
【0040】
(8)N−ビニル化合物類
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなど。
【0041】
(9)カルボキシル基を有する単量体
アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなど。
【0042】
(10)その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリル酸またはメタクリル酸誘導体;メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩などのビニル結合を有する反応性界面活性剤など。
【0043】
上記ビニル単量体の中でも、重合反応安定化の点から、(1)スチレンまたはスチレン誘導体、(2)メタクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル誘導体、(3)アクリル酸エステルまたはアクリル酸エステル誘導体、(9)カルボキシル基を有する単量体、およびビニル結合を有する反応性界面活性剤が好ましい。より好ましくは、スチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩である。
【0044】
ビニル樹脂の製造方法は、特に制限されず、上記単量体の重合に通常用いられる過酸化物、過硫酸塩、過硫化物、アゾ化合物などの任意の重合開始剤を用い、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、ミニエマルション法、分散重合法など公知の重合手法により重合を行う方法が挙げられる。また、分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、たとえば、アルキルメルカプタン、メルカプト脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
【0045】
ビニル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10,000〜500,000が好ましく、20,000〜200,000がより好ましい。
【0046】
なお、本明細書において、樹脂の重量平均分子量(Mw)の測定は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて下記の条件により行う。すなわち、濃度1mg/mLになるように測定試料をテトラヒドロフランに溶解させる。溶解条件としては、室温にて超音波分散機を用いて5分間行う。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理した後、GPCへ10μL試料溶解液を注入する。試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出する。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いる。
【0047】
ビニル樹脂の含有量は、トナー母体粒子の全質量に対し、5〜15質量%であることが好ましい。
【0048】
ビニル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、0〜100℃であることが好ましく、10〜80℃であることがより好ましい。
【0049】
なお、本明細書において、ビニル樹脂のガラス転移温度は、ASTM D3418に準拠して、示差走査熱量計(株式会社島津製作所製:DSC−60A)を用いて測定することができる。この装置(DSC−60A)の検出部の温度補正は、インジウムの融点と亜鉛の融点とを用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/分で昇温し、200℃で5分間ホールドし、200℃から0℃まで液体窒素を用いて−10℃/分で降温し、0℃で5分間ホールドし、再度0℃から200℃まで10℃/分で昇温を行い、2度目の昇温時の吸熱曲線から解析をおこない、オンセット温度をTgとする。
【0050】
(未変性ポリエステル樹脂)
本発明で使用することができる未変性ポリエステル樹脂は、通常ポリオールとポリカルボン酸との重縮合によって得られるものである。該ポリオールとしては、ジオールおよび3価以上のポリオールが挙げられ、ジオール単独、またはジオールと少量の3価以上のポリオールとの混合物が好ましい。ジオールの例としては、たとえば、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物である。3価以上のポリオールとしては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のポリフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0051】
また、ポリカルボン酸としては、ジカルボン酸および3価以上のポリカルボン酸が挙げられ、ジカルボン酸単独、またはジカルボン酸と少量の3価以上のポリカルボン酸との混合物が好ましい。ジカルボン酸としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など);などが挙げられる。3価以上のポリカルボン酸としては、たとえば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)などが挙げられる。なお、ポリカルボン酸としては、上述の化合物の酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてもよい。
【0052】
上記ポリオールおよびポリカルボン酸は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0053】
未変性ポリエステル樹脂の製造方法は特に制限されず、たとえば、必要に応じて公知のエステル化触媒を利用して、上記ポリオールおよびポリカルボン酸を重縮合する(エステル化する)方法が挙げられる。
【0054】
製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等の第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;およびアミン化合物等が挙げられる。入手容易性等を考慮すると、酸化ジブチルスズ(ジブチルスズオキサイド)、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩や、テトラノルマルブチルチタネート(オルトチタン酸テトラブチル、Ti(O−n−Bu)
4)、テトライソプロピルチタネート(チタンテトライソプロポキシド)、テトラメチルチタネートなどを用いることが好ましい。これらは単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。
【0055】
重縮合(エステル化)の温度は特に限定されるものではないが、150〜250℃であることが好ましい。また、重縮合(エステル化)の時間は特に限定されるものではないが、0.5〜15時間であることが好ましい。重縮合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
【0056】
未変性ポリエステル樹脂の含有量は、トナー母体粒子の全質量に対して、50〜75質量%であることが好ましい。
【0057】
(変性ポリエステル樹脂)
変性ポリエステル樹脂は、未変性ポリエステル樹脂の側鎖や末端の官能基をイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物等で変性することにより得られる。
【0058】
具体的には脂肪族、脂環式または芳香族のイソシアネート化合物;脂肪族、脂環式または芳香族のモノエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、トリエポキシ化合物;1級アミノ基または2級アミノ基を含有する脂肪族、脂環式または芳香族のモノアミン化合物、ジアミン化合物、トリアミン化合物、テトラアミン化合物などが挙げられる。
【0059】
なかでも、トナーにおける層状ケイ酸塩化合物の分散性向上の観点から、未変性ポリエステル樹脂をイソシアネート化合物およびアミン化合物で変性することにより得られる、ウレア変性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0060】
本発明で用いられるウレア変性ポリエステル樹脂を製造する方法は、特に制限されないが、有機溶媒中に活性水素基を有する化合物と反応可能な部位を有する重合体とを添加し、水系媒体中で造粒する際に活性水素基を有する化合物と該重合体とを反応させる高分子量化工程を含む方法が挙げられる。活性水素基を有する化合物と反応可能な部位を有する重合体としては、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーが好ましく、活性水素基を有する化合物としてはアミン化合物が好ましい。
【0061】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーは、ポリオールとポリカルボン酸との重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステル樹脂を、さらにイソシアネート化合物と反応させることによって得ることができる。この場合、ポリエステル樹脂の有する活性水素基としては、ヒドロキシ基(アルコール性ヒドロキシ基およびフェノール性ヒドロキシ基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち、より好ましいものはアルコール性ヒドロキシ基である。
【0062】
ポリオールおよびポリカルボン酸の例、およびこれらを重縮合する方法としては、上記未変性ポリエステル樹脂で説明した化合物および方法と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0063】
上記イソシアネート化合物としては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;などの1種または2種以上が挙げられる。
【0064】
上記アミン化合物としては、ポリアミンおよび/または活性水素含有基を有するアミン化合物が用いられる。この場合の活性水素含有基には、ヒドロキシ基やメルカプト基が包含される。このようなアミン化合物としては、ジアミン、3価以上のポリアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸、およびこれら化合物のアミノ基をブロックしたものなどが挙げられる。ジアミンとしては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上のポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコールとしては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタンとしては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。また、これらアミン化合物のアミノ基をブロックした化合物も使用でき、具体例としては、上記アミン化合物とケトン化合物(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)とから得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。
【0065】
これらアミン化合物のうち好ましいものは、上記アミン化合物のアミノ基をブロックした化合物である。
【0066】
ウレア変性ポリエステル樹脂の含有量は、トナー母体粒子の全質量に対して、1〜85質量%であることが好ましい。
【0067】
(ポリエステル樹脂の重量平均分子量)
ポリエステル樹脂(未変性ポリエステル樹脂、変性ポリエステル樹脂)の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、5,000〜100,000の範囲であることが好ましく、5,000〜50,000の範囲であることがより好ましい。
【0068】
〔層状ケイ酸塩化合物〕
本発明に係るYMCKトナーは、層状ケイ酸塩化合物を含む。層状ケイ酸塩化合物を添加することによって、トナーを異形化することができ、クリーニング性を向上させることができる。後述の好ましいトナーの製造方法においては、トナー材料液を界面活性剤、樹脂粒子の存在下、水系媒体中で乳化させる際に、トナー材料液中の層状ケイ酸塩化合物が有機溶媒および/またはモノマー油滴と水系媒体との界面に移動し、乳化分散体(反応物)の表面近傍に集まると考えられる。その結果、トナーの表面近傍に層状ケイ酸塩化合物が存在しやすくなり、トナーが異形化されトナーの感光体からの離型性が向上し、クリーニング性が向上すると考えられる。
【0069】
また、層状ケイ酸塩化合物に含まれるアルミニウム元素は、トナーの過剰帯電を抑制する働きを有することから、アルミニウム元素の含有量を上記式(1)〜(3)の関係とすることにより、各色のトナー間の帯電量の差を低減することができ、帯電安定性が向上する。また、これにより、各色のトナーの現像性および転写性を長期的に安定に維持することが可能となり、長期間使用時のトナーの帯電安定性やカラー画像での色再現性を向上させることができる。
【0070】
本発明において用いられる層状ケイ酸塩化合物とは、アルミニウム(Al)元素とケイ素(Si)元素とを含有するケイ酸塩化合物であって、厚さ1nm〜数nmの層が重ね合わさってできている化合物のことを言う。該層状ケイ酸塩化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択して使用することができる。具体的には、たとえば、スメクタイト群粘土鉱物(モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト等)、カオリン群粘土鉱物(カオリナイト等)、ベントナイト、アタパルジャイト、マガディアイト、カネマイトなどが挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。中でも、凹凸制御性の観点でモンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、アタパルジャイトが好ましく、トナーへの帯電性の付与が容易であるという観点からモンモリロナイトがより好ましい。
【0071】
本発明で用いられる層状ケイ酸塩化合物は、天然物であってもよく、合成品であってもよく、市販品であってもよく、これらの混合物であってもよい。層状ケイ酸塩化合物の合成方法としては、たとえば、水熱合成反応法、固相反応法、溶融合成法等が挙げられる。
【0072】
トナーへの含有のさせやすさの観点から、本発明に係る層状ケイ酸塩化合物は、層間に存在するイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した層状ケイ酸塩化合物(以下、単に「有機変性層状ケイ酸塩化合物」とも称する)であることが好ましい。有機変性層状ケイ酸塩化合物を添加すると、トナーを構成する材料を含有する液体がチクソ性を有するようになり、攪拌中は粘度が低く、粒度分布が狭く均一になり、攪拌を止めると直ちに粘度が高くなるという現象が見られるようになる。よって、界面張力によるトナー材料の球形化を防止し、攪拌中の形状を維持できると考えられる。
【0073】
ここで、有機物イオンで変性するとは、層間に存在するイオンとして有機物イオンを導入することを言う。これを広義にはインターカレーションという。有機変性層状ケイ酸塩化合物としては、前述した層状ケイ酸塩化合物を有機カチオンで変性したものが好ましい。
【0074】
上記有機変性層状ケイ酸塩化合物の有機カチオン変性剤としては、第4級アルキルアンモニウム塩、ホスホニウム塩やイミダゾリウム塩などが挙げられるが、第4級アルキルアンモニウム塩が好ましい。第4級アルキルアンモニウム塩としては、トリメチルステアリルアンモニウム塩、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム塩、ジメチルジオクタデシルアンモニウム塩、オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0075】
有機変性層状ケイ酸塩化合物の市販品としては、Bentone(登録商標)3、Bentone(登録商標)38、Bentone(登録商標)38V(以上、レオックス社製)、チクソゲルVP(United catalyst社製)、クレイトン(登録商標)34、クレイトン(登録商標)40、クレイトン(登録商標)XL(以上、サザン・クレイ・プロダクツ社製)等のクオタニウム−18ベントナイト;Bentone(登録商標)27(レオックス社製)、チクソゲルLG(United catalyst社製)、クレイトン(登録商標)AF、クレイトン(登録商標)APA(以上、サザン・クレイ・プロダクツ社製)等のステアラルコニウムベントナイト;クレイトン(登録商標)HT、クレイトン(登録商標)PS(以上、サザン・クレイ・プロダクツ社製)等のクオタニウム18/ベンザルコニウムベントナイト、GARAMITE(登録商標)1958、LAPONITE(登録商標)1958RD(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製)が挙げられる。特に好ましいのはクレイトン(登録商標)AF、クレイトン(登録商標)APA、LAPONITE(登録商標)1958RDがあげられる。
【0076】
上述したように、後述の好ましいトナーの製造方法によりYMCKトナーを製造した場合、層状ケイ酸塩化合物は、トナーの表面近傍に存在しやすくなる。ここで、トナーの表面近傍とは、トナーの表面から1μm以内の厚さの範囲をいう。トナーの表面近傍に層状ケイ酸塩化合物が存在するか否かは、トナーの断面を透過型電子顕微鏡(TEM)により撮影した写真により確認することができる。
【0077】
具体的な確認方法は以下のとおりである。まず、トナー粒子を常温硬化性のエポキシ樹脂中に十分分散させた後、包埋し、粒子径100nm程度のスチレン粉末に分散させた後加圧成形する。必要により得られたブロックを、四酸化ルテニウムおよび四酸化オスミウムを併用し染色を施した後、ダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用い薄片状のサンプルを切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて約40,000〜約150,000倍にて写真撮影すると、層状ケイ酸塩化合物の断面が観察される。
【0078】
<アルミニウム元素の含有量>
本発明においては、波長分散型蛍光X線分析によるNet強度で表されるイエロートナー中のアルミニウム元素の含有量をAl(Y)(単位:kcps)、波長分散型蛍光X線分析によるNet強度で表されるマゼンタトナー中のアルミニウム元素の含有量をAl(M)(単位:kcps)、波長分散型蛍光X線分析によるNet強度で表されるシアントナー中のアルミニウム元素の含有量をAl(C)(単位:kcps)、波長分散型蛍光X線分析によるNet強度で表されるブラックトナー中のアルミニウム元素の含有量をAl(K)(単位:kcps)、としたとき、下記式(1)〜(3)を満たす。
【0080】
上記式(1)、(2)、および(3)の少なくとも一つを満たさない場合、初期および長期間使用時のYMCKトナー間の帯電量の差が大きくなり、長期間使用時のカラー画像の色再現性が低下する。
【0081】
上記式(3)の〔Al(C)−Al(Y)〕は、好ましくは3.40〜7.87、より好ましくは4.13〜7.08、さらに好ましくは4.92〜6.29である。
【0082】
YMCKトナー中のアルミニウム元素の含有量は、蛍光X線分析装置「XRF−1700」(株式会社島津製作所製)を用いて測定することができる。具体的には、サンプル2gを加圧してペレット化し、定性定量分析にて下記条件で測定を行う。測定には、2θテーブルより、測定したい元素のKαピーク角度を決定して用いる:
・X線発生部条件/ターゲット Rh、管電圧 40kV、管電流 95mA、フィルタ なし
・分光系条件/スリット 標準、アッテネータ なし、分光結晶(Al=PET)、検出器(Al=FPC)。
【0083】
YMCKトナー中のアルミニウム元素の含有量は、層状ケイ酸塩化合物の添加量を調節することにより制御することができる。
【0084】
YMCKトナー中の層状ケイ酸塩化合物の添加量は、特に制限されない。しかしながら、一例を挙げれば、イエロートナー中の層状ケイ酸塩化合物の含有量は、0.01〜3.0質量%であることが好ましく、0.1〜2.0質量%であることがより好ましい。マゼンタトナー中の層状ケイ酸塩化合物の含有量は、0.01〜4.0質量%であることが好ましく、0.5〜2.5質量%であることがより好ましい。シアントナー中の層状無機化合物の含有量は、0.1〜7.0質量%であることが好ましく、1.5〜4.5質量%であることがより好ましい。ブラックトナー中の層状ケイ酸塩化合物の含有量は、0.01〜6.0質量%であることが好ましく、0.5〜3.5質量%であることがより好ましい。
【0085】
上記Al(Y)、Al(M)、Al(C)、およびAl(K)は、下記式(4)〜(10)を満たすことが好ましい。下記式(4)〜(10)を満たすことにより、YMCKトナーの帯電量の平均値が好適な範囲となり(好ましくは25〜55μC/g)、トナーの転写性および現像性が良好となる。
【0087】
上記Al(Y)、Al(M)、Al(C)、およびAl(K)は、下記式(11)〜(15)を満たすことがより好ましい。下記式(11)〜(15)を満たすことにより、初期および長期間使用時のYMCKトナー間の帯電量の差がより低減し、長期間使用時のカラー画像の色再現性がより向上する。
【0089】
上記Al(Y)、Al(M)、Al(C)、およびAl(K)は、下記式(16)〜(20)を満たすことがさらに好ましい。下記式(16)〜(20)を満たすことにより、初期および長期間使用時のYMCKトナー間の帯電量の差がさらに低減し、長期間使用時のカラー画像の色再現性がさらに向上する。
【0091】
上記Al(Y)、Al(M)、Al(C)、およびAl(K)は、下記式(21)〜(25)を満たすことが特に好ましい。下記式(21)〜(25)を満たすことにより、初期および長期間使用時のYMCKトナー間の帯電量の差がよりさらに低減し、長期間使用時のカラー画像の色再現性がよりさらに向上する。
【0093】
加えて、上記Al(C)およびAl(K)は、下記式(26)を満たすことが好ましい。下記式(26)を満たすことにより、初期および長期間使用時のシアントナーとブラックトナーとの間の帯電量の差がより一層低減し、長期間使用時のカラー画像の色再現性がより一層向上する。
【0095】
〔着色剤〕
本発明に係るYMCKトナーに用いられる着色剤としては、下記に例示するような有機または無機の各種、各色の顔料を使用することができ、必要に応じて、色ごとに2つ以上の着色剤を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
具体的には、ブラックトナー用の着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラックなどを使用することができる。カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられ、また、磁性体としてはフェライト、マグネタイトなどが挙げられる。
【0097】
イエロートナー用の着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントイエロー2、同6、同14、同15、同16、同19、同21、同33、同44、同56、同61、同77、同79、同80、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162などが挙げられ、また、顔料としてC.I.ピグメントイエロー1、同3、同5、同11、同12、同13、同14、同15、同17、同62、同65、同73、同74、同81、同83、同93、同94、同97、同138、同139、同147、同150、同151、同154、同155、同162、同168、同174、同176、同180、同183、同185、同191などが挙げられ、これらの混合物も使用することができる。
【0098】
マゼンタトナー用の着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122などが挙げられ、顔料としてC.I.ピグメントレッド2、同3、同4、同5、同6、同7、同8、同13、同15、同16、同21、同22、同23、同31、同48:1、同48:2、同48:3、同48:4、同49:1、同53:1、同57:1、同60、同63、同63:1、同64、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同112、同114、同122、同123、同139、同144、同146、同149、同150、同163、同166、同169、同170、同175、同176、同177、同178、同184、同185、同188、同202、同206、同207、同208、同209、同210、同222、同238、同254、同255、同266、同268、同269などが挙げられ、これらの混合物も使用することができる。
【0099】
シアントナー用の着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95などが挙げられ、顔料としてC.I.ピグメントブルー2、同3、同15、同15:2、同15:3、同15:4、同16、同17、同60、同62、同66などが挙げられ、これらの混合物も使用することができる。
【0100】
着色剤の含有量は、トナー中、1〜30質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましい。着色剤の数平均一次粒子径は、特に制限されないが、概ね10〜200nm程度が好ましい。
【0101】
また、着色剤としては、表面改質されたものを使用することもできる。表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等を用いることができる。
【0102】
〔離型剤〕
本発明に係るYMCKトナーは、離型剤を含む。離型剤としては特に制限されず、公知の種々のワックスが用いられる。具体例としては、たとえば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナウバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘニル、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックス等を用いることができる。
【0103】
離型剤の含有量は、トナー中、0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましい。離型剤の添加量が0.1質量%以上であれば、定着部材と画像の剥離不良による画像欠陥の抑制の点で好ましい。また、離型剤の添加量が30質量%以下であれば、良好な画質を得ることができる点で好ましい。
【0104】
〔荷電制御剤〕
本発明に係るカラートナーは、荷電制御剤を含んでもよい。荷電制御剤としては、水系媒体中に分散することができる公知の種々の化合物を用いることができ、具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩あるいはその金属錯体などが挙げられる。
【0105】
荷電制御剤の含有量は、トナー中、0〜10質量%であることが好ましく、0〜5質量%であることがより好ましい。
【0106】
〔外添剤〕
本発明に係るトナー母体粒子の表面は、流動性や帯電性を制御する目的で、外添剤を含んでもよい。
【0107】
外添剤としては、従来公知の金属酸化物粒子を使用することができ、たとえば、シリカ粒子、酸化チタン粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、酸化亜鉛粒子、酸化クロム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化タングステン粒子、酸化スズ粒子、酸化テルル粒子、酸化マンガン粒子、および酸化ホウ素粒子等が挙げられる。これらは、単独でもまたは2種以上を併用してもよい。
【0108】
また、スチレン、メタクリル酸メチル等の単独重合体やこれらの共重合体等の有機粒子を外添剤として使用してもよい。
【0109】
外添剤として用いられる金属酸化物粒子は、カップリング剤等の公知の表面処理剤により表面の疎水化処理が施されているものが好ましい。上記表面処理剤としては、ジメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、メチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、シリコーンオイル等が好ましい。
【0110】
クリーニング性や転写性をさらに向上させるために外添剤として滑剤や研磨剤を使用することも可能である。滑剤としては、たとえば、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩等の高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。
【0111】
研磨剤としては、たとえばチタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム、アルミナなどが挙げられる。
【0112】
これら外添剤の添加量の総量は、トナー母体粒子100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
【0113】
本発明に係るYMCKトナーは、いわゆる単層構造を有するものであってもよいし、コアシェル構造(コア粒子の表面にシェル層を形成する樹脂を凝集、融着させた形態)を有するものであってもよい。なお、コアシェル構造は、シェル層がコア粒子を完全に被覆した構造のものに限定されるものではなく、たとえば、所々コア粒子が露出しているものも含む。
【0114】
上述のトナーの形態(コアシェル構造の断面構造など)は、たとえば、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型プローブ顕微鏡(SPM)等の公知の手段を用いて確認することが可能である。
【0115】
〔平均円形度〕
本発明に係るYMCKトナーの粒子の平均円形度は、0.920〜0.980であることが好ましい。かような範囲であれば、現像性、クリーニング性が良好なトナーとなる。
【0116】
平均円形度は、たとえば、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス株式会社製)を用いて測定することができる。具体的には、以下の方法で測定することができる。トナー粒子を界面活性剤水溶液に湿潤させ、超音波分散を1分間行い、分散させる。その後、「FPIA−3000」を用い、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3,000〜10,000個の適正濃度で測定し、下記式により各粒子の円形度を算出する。算出された各粒子の円形度を足し合わせ、測定した全粒子数で除した値が平均円形度である;
円形度=(粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)。
【0117】
[トナーの粒子径]
本発明に係るトナー(YMCKトナー)は、体積平均粒子径が4〜6μmである。体積平均粒子径が4μm未満の場合、トナーのクリーニング性が低下し、またキャリアのスペントが発生し、長期間使用時における帯電安定性が低下する。一方、6μmを超える場合、トナー飛散が発生しやすくなる。当該体積平均粒子径は、好ましくは4.5〜5.5μmである。
【0118】
当該体積平均粒子径は、トナー製造時に用いるトナー材料液を作製する際の攪拌速度、攪拌時間、分散剤の種類および添加量等を調節することにより制御することができる。
【0119】
トナーの体積平均粒子径は、コールターカウンターマルチサイザー3(ベックマン・コールター株式会社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステム(ベックマン・コールター株式会社製)を接続した装置を用いて測定、算出することができる。
【0120】
測定手順としては、まず、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20mlで馴染ませる(トナーの分散性向上が目的。界面活性剤溶液は、たとえば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で希釈したもの)。その後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を作製する。このトナー分散液を、サンプルスタンド内のISOTONII(ベックマン・コールター株式会社製)の入ったビーカーに、測定器表示濃度が5%〜10%になるまでピペットにて注入する。この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値が得られる。測定器において、測定粒子カウント数を25,000個、アパーチャ−径を100μmに設定し、測定範囲である2.0〜60μmの範囲を256分割して頻度値を算出し、体積積算分率が大きい方から50%の粒子径を体積基準のメジアン径(体積D50%径)とする。
【0121】
[トナーの製造方法]
本発明に係るカラートナー(YMCKトナー)は、以下の手順によって製造することができる。ただし、以下では製造方法の一例を示しているに過ぎず、本発明に係るカラートナーの製造方法が、以下の製造方法に制限されることはない。
【0122】
(1)結着樹脂製造工程
結着樹脂の一成分としてビニル樹脂を用いる場合は、当該ビニル樹脂を製造する。ビニル樹脂の製造方法は、上記で説明したため、ここでは説明を省略する。乳化重合でビニル樹脂を製造した場合、得られたビニル樹脂粒子の水系分散液を、そのまま次工程以降に用いることができる。
【0123】
上記水系分散液中のビニル樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、60〜1,000nmの範囲が好ましく、80〜500nmの範囲がより好ましい。なお、この体積基準のメジアン径は、重合時の機械的エネルギーの大きさなどによってコントロールすることができる。
【0124】
結着樹脂の一成分として未変性ポリエステル樹脂を用いる場合は、当該未変性ポリエステル樹脂を製造する。未変性ポリエステル樹脂の製造方法は、上記で説明したため、ここでは説明を省略する。
【0125】
結着樹脂の一成分としてウレア変性ポリエステル樹脂を用いる場合は、まず、当該ウレア変性ポリエステル樹脂のプレポリマーを製造する。具体的には、上記ポリオールと上記ポリカルボン酸とを、ジブチルスズオキサイド、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどの公知のエステル化触媒の存在下で、好ましくは150〜280℃に加熱し、必要により減圧しながら生成する水を留去して、上記ジカルボン酸成分およびジオール成分を重縮合する(エステル化する)ことにより、ヒドロキシ基を有するポリエステル樹脂を製造する。次いで、好ましくは40〜140℃の温度で、ポリイソシアネート化合物を反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーを得る。さらに、後述する(4)ポリエステルプレポリマー反応工程において、前記ポリエステルプレポリマーにアミン化合物を反応させ、ウレア変性ポリエステル樹脂を製造する。
【0126】
(2)トナー材料液作製工程
この工程は、結着樹脂、着色剤、離型剤、および層状ケイ酸塩化合物等のトナー構成材料を有機溶媒中に分散させトナー材料液を作製する工程である。
【0127】
トナー材料液の作製に使用される有機溶媒としては、沸点が100℃未満で揮発性を有する溶媒が、トナー母体粒子形成後に除去が容易である点から好ましい。具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンなどを、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0128】
本工程でのトナー材料液の作製方法は、上記トナー構成材料を全て同時にトナー材料液に分散させる方法、数回に分けて分散させる方法、または後述の(3)トナー材料液乳化工程において層状ケイ酸塩化合物を添加する方法など、トナー材料液中のトナー構成材料を略均一に分散させることができるのであれば、特に制限されない。
【0129】
着色剤を添加する場合は、樹脂と複合化しマスターバッチとした後添加してもよい。該樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、たとえば、スチレンまたはその置換体の(共)重合体、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリブチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンなどが挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。
【0130】
(3)トナー材料液乳化工程
この工程は、前述のトナー材料液を水系媒体中に添加、分散させ、乳化液を作製する工程である。
【0131】
トナー材料液の乳化分散に使用可能な水系媒体は、水単独の他に、アルコール類(メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などの有機溶媒を含有するものも使用可能である。
【0132】
また、トナー材料液の分散性を向上させるために、水系媒体中に界面活性剤や樹脂粒子等の分散剤を添加することも可能である。
【0133】
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波式、ホモミクサーなどの公知の分散機が適用できる。この中でも、分散体に含まれる粒子の大きさを好適な範囲とするために高速せん断式分散機が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、好ましくは1,000〜30,000rpm、より好ましくは5,000〜20,000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜30分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)である。
【0134】
(4)ポリエステルプレポリマー反応工程
この工程は、トナー材料液乳化工程で作製された乳化液にアミン化合物を添加し、トナー材料液中のイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーと反応させ、結着樹脂の一成分であるウレア変性ポリエステル樹脂を作製し、トナー母体粒子分散液を作製する工程である。
【0135】
なお、この工程を前述のトナー材料液乳化工程と分けて記載しているが、実際はトナー材料液乳化工程での乳化分散と同時にアミン化合物を添加して、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとの反応を行うものである。
【0136】
この反応は、ポリエステル樹脂の分子鎖を架橋化したり伸長させたりすることを伴うものである。反応時間は、ポリエステルプレポリマーの有するイソシアネート構造とアミン化合物との反応性に基づいて設定することが可能で、具体的には10分〜40時間が好ましく、2〜24時間がより好ましい。また、反応温度は、0〜150℃が好ましく、30〜98℃がより好ましい。また、必要に応じてジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレートなどの触媒を使用することができる。
【0137】
(5)洗浄工程
この工程は、上記で得られたトナー母体粒子分散液を冷却し、冷却後、トナー母体粒子分散液からトナー母体粒子を固液分離し、トナー母体粒子から界面活性剤などを除去する工程である。即ち、この工程では、異形化処理を終えたトナー母体粒子分散液よりトナー母体粒子を固液分離してトナーケーキ(ウェット状態にあるトナー母体粒子をケーキ状に凝集させた集合物)を形成し、得られたトナーケーキから界面活性剤等の付着物を除去するものである。具体的な固液分離、洗浄方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用する減圧濾過法、フィルタープレス等を使用する濾過法等が挙げられ、これらは、特に限定されるものではない。
【0138】
(6)乾燥工程
この工程は、洗浄工程で洗浄処理されたトナー母体粒子を乾燥処理する工程である。乾燥工程で使用可能な乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、熱風乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機、循風乾燥機等が挙げられ、これらは特に限定されるものではない。なお、乾燥処理されたトナー母体粒子中の水分量は、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0139】
(7)外添剤添加工程
この外添剤添加工程は、乾燥処理されたトナー母体粒子に、流動性、帯電性の改良およびクリーニング性の向上などの目的で、荷電制御剤や種々の無機粒子、有機粒子、または滑剤などの外添剤を添加する工程であって、必要に応じて行われる。外添剤を添加するために使用される装置としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー(登録商標)、ナウターミキサー(登録商標)、V型混合機、サンプルミルなどの種々の公知の混合装置を挙げることができる。また、トナーの粒度分布を適当な範囲とするため、必要に応じ篩分級を行ってもよい。
【0140】
[現像剤]
本発明に係るカラートナー(YMCKトナー)は、各々、磁性または非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
【0141】
本発明に用いられるキャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライトが好ましい。
【0142】
フェライトは、式:(MO)
x(Fe
2O
3)
yで表される化合物であり、フェライトを構成するFe
2O
3のモル比yを30〜95モル%とすることが好ましい。かような範囲であれば、所望の磁化を得やすく、キャリア付着を起こしにくいキャリアを作製できる等のメリットを有する。式中のMは、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、コバルト(Co)、リチウム(Li)等の金属原子で、これらを単独または複数種類組み合わせて使用することが可能である。中でも、残留磁化が低く好適な磁気特性が得られるという観点から、マンガン、マグネシウム、ストロンチウム、リチウム、銅、亜鉛が好ましく、マンガン、マグネシウム、ストロンチウムがより好ましい。
【0143】
また、磁性粒子(芯材粒子)の表面を樹脂などの被覆層で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体粉末を分散してなるバインダー型キャリア(樹脂分散型キャリア)などを用いてもよい。
【0144】
コートキャリアを構成する被覆樹脂としては、特に制限されないが、たとえばオレフィン樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。前記被覆樹脂は、脂環式(メタ)アクリレートモノマーなどの(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位を有する樹脂を含むことが好ましい。
【0145】
コートキャリアが有する被覆層には、上記の被覆樹脂以外に、必要に応じて荷電制御粒子や、導電性粒子などが含有されてもよい。荷電制御粒子としては、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、酸化マグネシウム、アジン化合物、第4級アンモニウム塩、トリフェニルメタンなどが挙げられる。導電性粒子としては、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化スズなどが挙げられる。
【0146】
バインダー型キャリア(樹脂分散型キャリア)を構成するバインダー樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、たとえばスチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂などを使用することができる。
【0147】
コートキャリアを用いる場合、芯材粒子の体積基準のメジアン径は、15〜100μmであることが好ましく、25〜80μmがより好ましい。キャリアの体積基準のメジアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0148】
芯材粒子の形状係数(SF−1)は、110〜140であることが好ましく、120〜130であることがより好ましい。かような範囲であれば、被覆層に厚さの分布を持たせることができる。被覆層が薄い部分では、低抵抗な性質を有する芯材粒子により、キャリアの体積抵抗率が低下するため、電子が移動しやすく、低温低湿下での過剰帯電が抑制される。また、被覆層が厚い部分では、電荷を保持することができるため、高温高湿下での帯電量の低下が抑制される。すなわち、上記範囲であれば、帯電量の環境差が小さいキャリアが得られる。かようなキャリアは、温湿度環境が変化してもトナーに一定の帯電量を付与することができる。
【0149】
芯材粒子の形状係数(SF−1)は、下記式(A)により算出される数値である。
【0151】
上記の式において、「MXLNG」は芯材粒子の最大径、「AREA」は芯材粒子の投影面積を示す。ここで、最大径とは、芯材粒子の平面上への投影像を2本の平行線ではさんだとき、その平行線の間隔が最大となる幅をいう。また、投影面積とは、芯材粒子の平面上への投影像の面積をいう。芯材粒子の最大径および投影面積は、下記の測定法により求められる。
【0152】
すなわち、ランダムに選択した100個以上の芯材粒子を走査型電子顕微鏡により150倍にて撮影し、その撮影画像をスキャナーに取り込み、画像処理解析装置LUZEX AP(株式会社ニレコ製)を用いて測定する。芯材粒子の形状係数は、上記式(A)によって算出される各芯材粒子の形状係数の平均値として算出される値とする。
【0153】
芯材粒子の飽和磁化は、2.5×10
−5〜1.0×10
−4Wb・m/kgであることが好ましい。かような磁気特性を有するキャリアを用いることにより、キャリアの部分的な凝集が生じにくい。このため、現像剤搬送部材の表面に二成分現像剤が均一分散され、濃度むらがなく、均一で高精細のトナー画像を形成することが可能になる。残留磁化は、フェライトを用いることにより小さくできる。なお、残留磁化が小さいと、キャリア自身の流動性が良好となり、均一なかさ密度の二成分現像剤を得ることができる。
【0154】
二成分現像剤は、上記のキャリアとトナーとを、混合装置を用いて混合することにより作製することができる。混合装置としては、たとえば、ヘンシェルミキサー(登録商標)、ナウターミキサー(登録商標)、V型混合機等が挙げられる。二成分現像剤を作製する際、トナーの配合量は、キャリア100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましい。
【0155】
[画像形成方法]
本発明の画像形成方法は、静電潜像担持体の表面を帯電および露光し形成された静電潜像上にカラートナーを現像して、トナー像を形成するトナー像形成工程と、前記トナー像を記録媒体に転写しカラートナー画像を形成する転写工程と、前記カラートナー画像を前記記録媒体上に定着させる定着工程と、を有する。
【0156】
本発明の画像形成方法に用いられる画像形成装置としては、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各々に係る4種類のカラー現像装置と、一つの静電潜像担持体(「電子写真感光体」または単に「感光体」とも称する)と、により構成される4サイクル方式の画像形成装置や、各色に係るカラー現像装置および静電潜像担持体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の画像形成装置等が挙げられる。
【0157】
本発明の画像形成方法の一例をより詳細に述べると、スコロトロン帯電器または帯電ローラーなどの帯電装置にて静電潜像担持体表面を均一に帯電(帯電工程)し、ポリゴンミラーなどにより静電潜像担持体の回転軸と平行に走査を行い、画像データに基づいて静電潜像担持体表面を像露光することにより静電潜像を形成する(露光工程)。その後、トナーから構成される一成分現像剤またはトナーおよびキャリアから構成される二成分現像剤が充填された現像装置において、攪拌部材、現像ローラー、規制ブレードまたは二成分現像剤中のキャリアでトナーを摩擦帯電させて、回転する現像ローラー上または現像スリーブ上のキャリアに保持されたトナーを、静電潜像上に静電的に搬送(現像)することにより顕像化させてトナー像を得る(トナー像形成工程)。そして、このトナー像を、搬送される転写ベルトなどの転写媒体、または用紙、フィルムなどの記録媒体に、転写手段により静電的に順次転写し、各色のトナー像を重ね合せることにより、カラートナー画像を形成する(転写工程)。その後、記録媒体上に転写されたカラートナー画像、または転写媒体から記録媒体上に二次転写手段により二次転写されたカラートナー画像を、接触加熱方式/非接触加熱方式等の定着処理によって加熱および/または加圧し、カラートナー画像を記録媒体に定着させることにより(定着工程)、フルカラーの画像を得ることができる。
【0158】
〔記録媒体〕
本発明の画像形成方法に用いられる記録媒体としては、特に制限されない。例えば、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙あるいはコート紙などの塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、合成紙、フィルムおよび布などの種々のものを用いることができる。これらのうちでは、合成紙およびフィルムが好ましい。
【0159】
ここに、合成紙の具体例としては、たとえば、ポリプロピレン合成紙が挙げられる。また、フィルムの具体例としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)、ポリエチレンナフタレートフィルムおよびポリイミドフィルムなどが挙げられる。
【実施例】
【0160】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明するが、本発明がこれらの実施形態に限定されるものではない。実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「質量部」あるいは「質量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHで行った。
【0161】
<各種物性の測定方法>
〔樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定〕
樹脂のガラス転移温度は、ASTM D3418に準拠して、示差走査熱量計(株式会社島津製作所製:DSC−60A)を用いて測定した。この装置(DSC−60A)の検出部の温度補正は、インジウムの融点と亜鉛の融点とを用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いた。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットした。昇温速度10℃/分で昇温し、200℃で5分間ホールドし、200℃から0℃まで液体窒素を用いて−10℃/分で降温し、0℃で5分間ホールドし、再度0℃から200℃まで10℃/分で昇温を行い、2度目の昇温時の吸熱曲線から解析をおこない、オンセット温度をTgとした。
【0162】
〔樹脂の重量平均分子量(Mw)の測定〕
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、以下のようにゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した。
【0163】
試料(樹脂)を濃度1mg/mLとなるようにテトラヒドロフラン(THF)中に添加し、室温において超音波分散機を用いて5分間分散処理した後、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して、試料液を調製した。GPC装置HLC−8120GPC(東ソー株式会社製)およびカラムTSKguardcolumn+TSKgelSuperHZ−m3連(東ソー株式会社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフランを流速0.2mL/分で流した。キャリア溶媒とともに、調製した試料液10μLをGPC装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて試料を検出し、単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて、試料の分子量分布を測定し、樹脂の重量平均分子量を求めた。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いた。
【0164】
・ブラックトナー1の作製
(ビニル樹脂粒子分散液の合成)
攪拌機および温度計をセットした反応容器に、水 683質量部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(三洋化成工業株式会社製、エレミノール(登録商標)RS−30)11質量部、スチレン 83質量部、メタクリル酸 83質量部、アクリル酸n−ブチル 110質量部、および重合開始剤である過硫酸アンモニウム 1質量部を仕込み、3,800rpmで30分間攪拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内の温度を75℃まで昇温し4時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液 30質量部を加え、75℃で6時間熟成してビニル樹脂((スチレン)−(メタクリル酸)−(アクリル酸n−ブチル)−(メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩)の共重合体)の水系分散液である[ビニル樹脂粒子分散液1]を得た。[ビニル樹脂粒子分散液1]中のビニル樹脂粒子について、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、LA−920)で測定した体積平均粒子径は110nmであった。[ビニル樹脂粒子分散液1]の一部を取り出し乾燥して、樹脂分を単離した。
【0165】
なお、上記ビニル樹脂の重量平均分子量(Mw)は130,000、ガラス転移温度(Tg)は58℃であった。
【0166】
(水相の調製)
水 990質量部、上記で得られた[ビニル樹脂粒子分散液1]83質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.3質量%水溶液(三洋化成工業株式会社製、エレミノール(登録商標)MON−7)37質量部、および酢酸エチル 90質量部を混合攪拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相1]とする。
【0167】
(未変性ポリエステル樹脂1の合成)
冷却管、攪拌機、および窒素導入管をセットした反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 724質量部、およびテレフタル酸 276質量部を添加し、常圧下、230℃で7時間重縮合し、さらに10〜15mmHgの減圧下で5時間反応させて、[未変性ポリエステル樹脂1]を得た。得られた未変性ポリエステル樹脂1の重量平均分子量(Mw)は6,700であった。
【0168】
(イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー1の合成)
冷却管、攪拌機、および窒素導入管をセットした反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 682質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 81質量部、テレフタル酸 283質量部、無水トリメリット酸 22質量部、およびジブチルスズオキサイド 2質量部を添加し、常圧下、230℃で7時間反応を行い、さらに10〜15mmHgの減圧下で5時間反応させ、[中間体ポリエステル樹脂1]を得た。
【0169】
次に、冷却管、攪拌機、および窒素導入管の付いた反応容器中に、上記で得られた[中間体ポリエステル樹脂1]410質量部、イソホロンジイソシアネート 89質量部、および酢酸エチル 500質量部を入れ、100℃で5時間反応させ、[イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー1]を得た。
【0170】
(ケチミン化合物1の合成)
攪拌機および温度計をセットした反応容器に、イソホロンジアミン 170質量部およびメチルエチルケトン 75質量部を仕込み、50℃で4.5時間反応させ、[ケチミン化合物1]を得た。
【0171】
(着色剤マスターバッチ1の作製)
水 800質量部、着色剤:カーボンブラック(オリオン・エンジニアドカーボンズ株式会社製、Printex(登録商標)35)800質量部[DBP吸油量=42ml/100mg、pH=9.5]、および未変性ポリエステル樹脂1,200質量部をヘンシェルミキサー(登録商標、日本コークス工業株式会社製)に加え混合した。得られた混合物を、オープンロール型混練機(ニーデックス、日本コークス工業株式会社製)を用いて、130℃で2時間混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕して、[着色剤マスターバッチ1]を得た。なお、水は、混練中にほぼ蒸発した。
【0172】
(着色剤・離型剤分散液(トナー材料液)1の作製)
攪拌機および温度計をセットした容器に、[未変性ポリエステル樹脂1]300質量部、離型剤であるパラフィンワックス(融点70℃)350質量部、および酢酸エチル 947質量部を仕込み、攪拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。次いで、容器に[着色剤マスターバッチ1]500質量部、層状ケイ酸塩化合物である有機変性モンモリロナイト(サザン・クレイ・プロダクツ社製、クレイトン(登録商標)APA、有機カチオン変性剤:第4級アルキルアンモニウム塩)34.8質量部、および酢酸エチル 500質量部を仕込み、1時間混合して、[原料溶解液1]を得た。
【0173】
[原料溶解液1]1,700質量部を容器に移し、ビーズミル(アイメックス株式会社製、ウルトラビスコミル)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、および3パスの条件で、着色剤および離型剤の分散を行った。次いで、[未変性ポリエステル樹脂1]の65質量%酢酸エチル溶液700質量部を加え、上記条件のビーズミルで2パスし、[着色剤・離型剤分散液1]を得た。
【0174】
(乳化〜脱溶剤)
上記で得られた[着色剤・離型剤分散液1]749質量部、[イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー1]100質量部、および[ケチミン化合物1]2.9質量部を容器に添加し、T.K.ホモミクサー(プライミクス株式会社製)で混合した後、容器に[水相1]1,500質量部を加え、さらにT.K.ホモミクサーにより15,900rpmで25分間混合し、[乳化スラリー1]を得た。
【0175】
攪拌機および温度計をセットした容器に、[乳化スラリー1]を投入し、30℃で7時間脱溶剤した後、45℃で7時間熟成を行い、[分散スラリー1]を得た。
【0176】
(洗浄〜乾燥)
[分散スラリー1]100質量部を減圧濾過し、濾過ケーキを得た;
(I)上記濾過ケーキにイオン交換水 100質量部を加え、T.K.ホモミクサーで混合した後濾過した;
(II)上記(I)で得られた濾過ケーキに、10質量%水酸化ナトリウム水溶液 100質量部を加え、T.K.ホモミクサーで混合した後、減圧濾過した;
(III)上記(II)で得られた濾過ケーキに、10質量%塩酸 100質量部を加え、T.K.ホモミクサーで混合した後濾過した;
(IV)上記(III)で得られた濾過ケーキに、イオン交換水 300質量部を加え、T.K.ホモミクサーで混合した後濾過する操作を2回行い、[濾過ケーキ1]を得た。
【0177】
[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、[トナー母体粒子1]を得た。その後、[トナー母体粒子1]100質量部に、疎水性シリカ 1質量部と、疎水性酸化チタン 1質量部とを加え、ヘンシェルミキサー(登録商標)にて混合し、ブラックトナー1を得た。
【0178】
・シアントナー1の作製
ブラックトナー1の作製において、着色剤を「C.I.ピグメントブルー15:3」に変更し、層状ケイ酸塩化合物の添加量を58.5質量部に変更したこと以外は同様にして、シアントナー1を作製した。シアントナー1の体積平均粒子径は5.0μm、平均円形度は0.956であった。
【0179】
・マゼンタトナー1の作製
ブラックトナー1の作製において、着色剤を「C.I.ピグメントレッド122」に変更し、層状ケイ酸塩化合物の添加量を27.2質量部に変更したこと以外は同様にして、マゼンタトナー1を作製した。
【0180】
・イエロートナー1の作製
ブラックトナー1の作製において、着色剤を「C.I.ピグメントイエロー74」に変更し、層状ケイ酸塩化合物の添加量を13.4質量部に変更したこと以外は同様にして、イエロートナー1を作製した。
【0181】
(ブラックトナー2〜18、シアントナー2〜18、マゼンタトナー2〜18、イエロートナー2〜18の作製)
ブラックトナー1、シアントナー1、マゼンタトナー1、およびイエロートナー1の作製において、層状ケイ酸塩化合物の添加量を、それぞれ下記表1に示した量に変更した。これに加え、トナーセット7(ブラックトナー7、シアントナー7、マゼンタトナー7、イエロートナー7)、トナーセット8(ブラックトナー8、シアントナー8、マゼンタトナー8、イエロートナー8)、トナーセット13(ブラックトナー13、シアントナー13、マゼンタトナー13、イエロートナー13)、およびトナーセット16(ブラックトナー16、シアントナー16、マゼンタトナー16、イエロートナー16)においては、上記(水相の調製)におけるドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの添加量、および上記(乳化〜脱溶剤)におけるホモミクサーの回転数を以下のように変更した。
【0182】
(トナーセット7の作製)
ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.3質量%水溶液の添加量を31質量部に、(乳化〜脱溶剤)におけるホモミクサーの回転数を13,000rpmにそれぞれ変更した。
【0183】
(トナーセット8の作製)
ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.3質量%水溶液の添加量を46質量部に、(乳化〜脱溶剤)におけるホモミクサーの回転数を19,800rpmにそれぞれ変更した。
【0184】
(トナーセット13の作製)
ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.3質量%水溶液の添加量を32質量部に、(乳化〜脱溶剤)におけるホモミクサーの回転数を22,700rpmにそれぞれ変更した。
【0185】
(トナーセット16の作製)
ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.3質量%水溶液の添加量を17質量部に、(乳化〜脱溶剤)におけるホモミクサーの回転数を12,200rpmにそれぞれ変更した。
【0186】
このようにして、ブラックトナー2〜18、シアントナー2〜18、マゼンタトナー2〜18、およびイエロートナー2〜18を作製した。
【0187】
【表1】
【0188】
・キャリアの作製
芯材粒子として、体積平均粒子径(体積基準のメジアン径)が30μmであり、形状係数(SF−1)が130であり、飽和磁化が8.2×10
−5Wb・m/kgであるMn−Mgフェライト粒子を100質量部、およびメタクリレート樹脂粒子(シクロヘキシルメタクリレート:メチルメタクリレート=5:5(質量比))4質量部を、攪拌羽根付き高速攪拌混合機に投入し、室温(25℃)で15分間混合攪拌した後、120℃で50分混合して樹脂被覆キャリアを作製した。
【0189】
・現像剤の作製
上記で得られた樹脂被覆キャリア100質量部と各色のトナー6質量部とを、V型混合機で5分間混合し、各色の二成分現像剤1〜18を調製した。
【0190】
(実施例1〜12、比較例1〜6)
下記表2に示す二成分現像剤セット(トナーセット)を用いて、各評価を行った。
【0191】
【表2-1】
【0192】
【表2-2】
【0193】
〔評価〕
<トナーの体積平均粒子径(体積基準のメジアン径)>
コールターカウンターマルチサイザー3(ベックマン・コールター株式会社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステム(ベックマン・コールター株式会社製)を接続した装置を用いて測定、算出した。
【0194】
測定手順としては、まず、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20mlで馴染ませた(トナーの分散性向上が目的。界面活性剤溶液は、たとえば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈したもの)。その後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を作製した。このトナー分散液を、サンプルスタンド内のISOTONII(ベックマン・コールター株式会社製)の入ったビーカーに、測定器表示濃度が5%〜10%になるまでピペットにて注入した。この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値が得られる。測定器において、測定粒子カウント数を25,000個、アパーチャ−径を100μmに設定し、測定範囲である2.0〜60μmの範囲を256分割して頻度値を算出し、体積積算分率が大きい方から50%の粒子径を体積基準のメジアン径(体積D50%径)とした。
【0195】
1つのトナーセットに含まれる4色のトナーの体積平均粒子径の平均値を、下記表3に示す。この体積平均粒子径の平均値の標準偏差は、すべての実施例および比較例において、0.3以内であった。
【0196】
<波長分散X線分光法によるアルミニウム元素のNet強度値>
トナー中のアルミニウム元素のNet強度値の測定は、蛍光X線分析装置「XRF−1700」(株式会社島津製作所製)を用いて行った。具体的には、サンプル2gを加圧してペレット化し、定性定量分析にて下記条件で測定を行った。なお、測定には、2θテーブルよりアルミニウム元素のKαピーク角度を決定して用いた;
・X線発生部条件/ターゲット Rh、管電圧 40kV、管電流 95mA、フィルタ なし
・分光系条件/スリット 標準、アッテネータ なし、分光結晶(Al=PET)、 検出器(Al=FPC)。
【0197】
<トナー帯電量(Q)>
市販の複写機「bizhub PRO(登録商標)C6500」(コニカミノルタ株式会社製)を準備し、上記で作製した二成分現像剤セットを順次装填し、50万枚のプリントを行った。プリントは、常温常湿(20℃、50%RH)の環境下で、印字率3%の文字画像をA4判の転写紙に50万枚行った。
【0198】
プリント初期(プリント10枚目、以下同じ)および50万枚プリント終了後の帯電量を、下記のブローオフ法で求めた。
【0199】
ブローオフ帯電量測定装置「TB−200(東芝ケミカル株式会社製)」を用い、測定する二成分現像剤を、400メッシュのステンレス製スクリーンを装着した上記のブローオフ帯電量測定装置にセットし、ブロー圧50kPaの条件で10秒間窒素ガスにてブローし、電荷を測定した。測定された電荷を飛翔したトナー質量で割ることにより帯電量(μC/g)を算出した。なお、下記表3中の各項目については、以下の方法で算出した。
【0200】
≪YMCK平均Q(単位:μC/g)≫
ブラックトナー、シアントナー、マゼンタトナー、およびイエロートナーの帯電量の平均値を、プリント初期および50万枚プリント終了後(500kp後)のそれぞれで求めた。帯電量の平均値が25〜55μC/gの範囲にあれば、トナーの現像性および転写性が良好となる。
【0201】
≪CK間ΔQ(単位:μC/g)≫
プリント初期におけるシアントナーおよびブラックトナーの帯電量の差の絶対値を算出した。この値が小さいほど、シアントナーおよびブラックトナー間での現像性および転写性の差が小さいことを示す。
【0202】
≪ΔQ(単位:μC/g)≫
プリント初期および50万枚プリント終了後(500kp後)において、各色のトナー帯電量を求め、その中で最大値の帯電量と最小値の帯電量との差を求めた。ΔQが15μC/g以下であれば、各色のトナー間での帯電量の差が小さく、各色のトナー間での現像性および転写性の差が低減され、実用可能であることを示す。ΔQが10μC/g未満であれば、各色のトナー間での現像性および転写性の差がさらに低減されていることを示す。
【0203】
<トナー飛散>
常温常湿(20℃、50%RH)の環境で、50万枚プリント終了後のトナー飛散量を以下のように測定した。精密天秤で計量した二成分現像剤2gを導電性スリーブの表面全体に均一になるように乗せ、導電性スリーブに円筒電極をかぶせた。導電性スリーブ内に設けられたマグネットロールの回転数を2,400rpmにした状態で30秒間放置して、トナーを円筒電極に収集し、収集したトナーの質量(収集トナー量(A))を精密天秤で測定した。次に、導電性スリーブに再度、同じ円筒電極をかぶせバイアス電源からスリーブに4kVの電圧を供給して、同様にマグネットロールの回転数を2,400rpmに回転し、30秒間放置して、トナーを円筒電極に収集し、収集したトナーの質量(収集トナー量(B))を精密天秤で測定した。得られた値から、以下の式によりトナー飛散量を算出し、下記評価基準により評価した。◎〜△であれば実用可能である;
トナー飛散量(%)=(収集トナー量(A)/収集トナー量(B))×100。
【0204】
トナー飛散量 評価基準
◎:5%未満
○:5%以上10%未満
△:10%以上15%未満
×:15%以上。
【0205】
<ΔE*abの変化幅>
プリント初期および50万枚プリント終了後において、グリーン(G)、レッド(R)、およびブルーのベタ画像(2cm×2cm)を作製した。このベタ画像を、分光光度計により測定し、L*a*b*表色系に表し、測定値よりΔE*abを求めた。なお、「L*a*b*表色系」は、色を数値化して表すのに有用に用いられる手段であり、L*軸方向が明度を示し、a*軸方向が赤−緑方向の色相を示し、b*軸方向が黄−青方向の色相を示すものである。L*、a*、およびb*は、分光光度計「Gretag Macbeth Spectrolino」(Gretag Macbeth社製)を用い、光源としてD65光源、反射測定アパーチャとしてΦ4mmのものを用い、測定波長域380〜730nmを10nm間隔で、視野角を2°とし、基準合わせには専用白タイルを用いた条件において測定を行った。
【0206】
プリント初期の画像と50万枚プリント終了後の画像のΔE*abの変化幅を、下記基準により評価した。ΔE*abの変化幅が5.0以下であれば、色再現性が合格であり、その中でも3.0以下であれば色再現性が良好であると判断した;
ΔE*abの変化幅 評価基準
◎:3.0以下
○:3.0を超えて5.0以下
×:5.0を超え、実用上問題となるレベル。
【0207】
各色トナーのアルミニウム元素のNet強度値を下記表3に、各種評価結果を下記表4にそれぞれ示す。
【0208】
【表3】
【0209】
【表4】
【0210】
上記表4の結果から明らかなように、実施例の画像形成方法(静電潜像現像用トナーセット)によれば、初期および長期間使用時の各色トナー間の帯電量の差が低減し、長期間使用時のカラー画像の色再現性が向上することが分かった。