特許第6946961号(P6946961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6946961
(24)【登録日】2021年9月21日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/90 20160101AFI20210930BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20210930BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20210930BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20210930BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20210930BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20210930BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20210930BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20210930BHJP
   B60W 30/17 20200101ALI20210930BHJP
   B60W 30/16 20200101ALI20210930BHJP
   B60L 53/12 20190101ALI20210930BHJP
   B60L 53/36 20190101ALI20210930BHJP
   B60L 53/38 20190101ALI20210930BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20210930BHJP
【FI】
   H02J50/90
   H02J7/00 P
   H02J7/00 301D
   H02J50/12
   H02J50/40
   H02J50/80
   B60M7/00 X
   B60L5/00 B
   B60L15/20 J
   B60W30/17
   B60W30/16
   B60L53/12
   B60L53/36
   B60L53/38
   B60L58/12
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-221589(P2017-221589)
(22)【出願日】2017年11月17日
(65)【公開番号】特開2019-92359(P2019-92359A)
(43)【公開日】2019年6月13日
【審査請求日】2020年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】長谷 智実
【審査官】 赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−213467(JP,A)
【文献】 特開2011−166877(JP,A)
【文献】 特開2013−236524(JP,A)
【文献】 特開2013−038991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00−50/90
H02J 7/00−7/12
H02J 7/34−7/36
B60L 1/00−13/00
B60L 15/00−58/40
B60M 7/00
B60W 30/16
B60W 30/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転を行う電動車両(EV)の制御装置(10)であって、
前記電動車両は、給電コイル(40)からの非接触給電が可能な走路である給電レーン(SLN)を走行しながら、供給された電力を蓄電池(20)に蓄えるように構成されており、
前記給電レーンにおいて前記給電コイルが設けられている位置、である給電位置を取得する位置取得部(120)と、
前記電動車両の走行を制御する走行制御部(110)と、を備え、
前記走行制御部は、
前記電動車両を停止させる際において、前方の前記給電位置に前記電動車両を停止させる処理を行い、
前記電動車両が、前記給電レーンとは異なるレーンを走行しているときにおいて、前記電動車両を停止させる可能性が生じたときは、
前記走行制御部は、予め前記電動車両を前記給電レーンに移動させる処理を行う制御装置。
【請求項2】
自動運転を行う電動車両(EV)の制御装置(10)であって、
前記電動車両は、給電コイル(40)からの非接触給電が可能な走路である給電レーン(SLN)を走行しながら、供給された電力を蓄電池(20)に蓄えるように構成されており、
前記給電レーンにおいて前記給電コイルが設けられている位置、である給電位置を取得する位置取得部(120)と、
前記電動車両の走行を制御する走行制御部(110)と、を備え、
前記走行制御部は、
前記電動車両を停止させる際において、前方の前記給電位置に前記電動車両を停止させる処理を行い、
前記走行制御部は、
前方を走行する他車両との間の車間距離を所定の目標距離以上に保ちながら、前記電動車両を前記給電位置に停止させる処理を行い、
前記電動車両を停止させる前記給電位置は、前記電動車両が停止した際において、前記他車両との間の車間距離を所定距離以上確保することができる前記給電位置、として設定される制御装置。
【請求項3】
前記目標距離は、前記給電レーンにおける前記給電コイルの配置ピッチよりも長い距離である、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記電動車両が前記給電位置に停止しているときにおいて、
前記走行制御部は、
前方に停止していた他車両が走行し始めて、当該他車両との間の車間距離が所定の発進距離以上となった後に、前記電動車両を発進させる、請求項1乃至のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記発進距離は、前記給電レーンにおける前記給電コイルの配置ピッチよりも長い距離である、請求項に記載の制御装置。
【請求項6】
自動運転を行う電動車両(EV)の制御装置(10)であって、
前記電動車両は、給電コイル(40)からの非接触給電が可能な走路である給電レーン(SLN)を走行しながら、供給された電力を蓄電池(20)に蓄えるように構成されており、
前記給電レーンにおいて前記給電コイルが設けられている位置、である給電位置を取得する位置取得部(120)と、
前記電動車両の走行を制御する走行制御部(110)と、を備え、
前記走行制御部は、
前記電動車両を停止させる際において、前方の前記給電位置に前記電動車両を停止させる処理を行い、
前記給電位置に他車両が存在することにより、前記電動車両を前記給電位置に停止させることができない場合には、当該他車両に対して移動するように要請する処理を行う制御装置。
【請求項7】
自動運転を行う電動車両(EV)の制御装置(10)であって、
前記電動車両は、給電コイル(40)からの非接触給電が可能な走路である給電レーン(SLN)を走行しながら、供給された電力を蓄電池(20)に蓄えるように構成されており、
前記給電レーンにおいて前記給電コイルが設けられている位置、である給電位置を取得する位置取得部(120)と、
前記電動車両の走行を制御する走行制御部(110)と、を備え、
前記走行制御部は、
前記電動車両を停止させる際において、前方の前記給電位置に前記電動車両を停止させる処理を行い、
前記電動車両が前記給電位置に停止しているときにおいて、
前記走行制御部は、
前記蓄電池の蓄電量が所定の下限値よりも大きい場合には、前記電動車両を前記給電位置から移動させる処理を行う制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動運転を行う電動車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両は、蓄電池に蓄えられた電力により回転電機を駆動し、当該回転電機の駆動力によって走行する車両である。このような電動車両としては、例えば回転電機の駆動力のみによって走行する電気自動車や、回転電機及び内燃機関のそれぞれの駆動力によって走行するハイブリッド自動車等が挙げられる。
【0003】
電動車両への充電は、電動車両と充電スタンドとの間をケーブルによって接続した状態で行われるのが一般的である。しかしながら近年では、電磁誘導や磁気共鳴を利用して、電動車両への充電を非接触で行うことも検討されている。更に、下記特許文献1に記載されているように、電動車両が走行するレーン(走路)に給電コイルを複数埋め込んでおき、当該レーンを走行中の電動車両に対して非接触で充電を行うことも検討されている。このように、走行中の電動車両に電力を供給し得るレーン(以下では「給電レーン」とも称する)は、今後の電動車両の普及に伴って順次設置されていくものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−51744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
給電レーンにおいても通常の走路と同様に、例えば渋滞や交通信号等によって電動車両が停止することがある。このときの電動車両の停止位置が、給電レーンのうち給電コイルが設けられていない位置であった場合には、給電レーン内であるにも拘らず充電を行うことができなくなる。このため、電動車両の停止時間が長くなった場合には蓄電量が不足してしまう可能性がある。
【0006】
本開示は、電動車両が給電レーンで停止した際において、電動車両への充電ができなくなってしまうことを防止することのできる制御装置、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る制御装置は、自動運転を行う電動車両(EV)の制御装置(10)である。制御対象である電動車両は、給電コイル(40)からの非接触給電が可能な走路である給電レーン(SLN)を走行しながら、供給された電力を蓄電池(20)に蓄えるように構成されている。この制御装置は、給電レーンにおいて給電コイルが設けられている位置、である給電位置を取得する位置取得部(120)と、電動車両の走行を制御する走行制御部(110)と、を備える。走行制御部は、電動車両を停止させる際において、前方の給電位置に電動車両を停止させる処理を行う。電動車両が、給電レーンとは異なるレーンを走行しているときにおいて、電動車両を停止させる可能性が生じたときは、走行制御部は、予め電動車両を給電レーンに移動させる処理を行う
【0008】
このような制御装置では、走行制御部が、電動車両を給電位置に停止させる処理を行う。給電位置とは、給電レーンにおいて給電コイルが設けられている位置である。このため、給電位置に停止した電動車両は、停止後も引き続き電力の供給を受けて充電を行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、電動車両が給電レーンで停止した際において、電動車両への充電ができなくなってしまうことを防止することのできる制御装置、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る制御装置を搭載した電動車両を模式的に示す図である。
図2図2は、本実施形態に係る電動車両が走行するレーンの構成例を示す図である。
図3図3は、本実施形態に係る電動車両の構成、及び給電レーンに配置された非接触給電装置の構成を模式的に示す図である。
図4図4は、本実施形態に係る電動車両の構成、及び給電レーンに配置された非接触給電装置の構成を模式的に示す図である。
図5図5は、電動車両の停止位置について説明するための図である。
図6図6は、制御装置によって実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図7図7は、電動車両の停止時に実行される処理について説明するための図である。
図8図8は、制御装置によって実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図9図9は、制御装置によって実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図10図10は、電動車両の停止時における車間距離について説明するための図である。
図11図11は、制御装置によって実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図12図12は、制御装置によって実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0012】
本実施形態に係る制御装置10は、図1に示されるように電動車両EVに搭載される装置であって、電動車両EVの走行や充電等を制御するための装置として構成されている。
【0013】
先ず電動車両EVについて説明する。本実施形態に係る電動車両EVは、自動運転を行う電動車両として構成されている。つまり、電動車両EVは、運転者の操作に基づくことなく、操舵や制動等の操作を自動的に行うことのできる「自動運転車両」である。
【0014】
電動車両EVは、蓄電池20及びモータージェネレータ21(図1では不図示。図3を参照)を備えている。蓄電池20は、電力を蓄えておくための車載バッテリーであって、例えばリチウムイオン電池である。モータージェネレータ21は、電動車両EVの駆動力を発生させるための回転電機である。モータージェネレータ21は、蓄電池20から供給される電力によって駆動力を発生させる他、電動車両EVの減速時におけるエネルギーによって発電し、発生した電力を蓄電池20に供給し充電することもできる。このように、電動車両EVは、モータージェネレータ21の駆動力のみによって走行する電気自動車として構成されている。このような態様に換えて、電動車両EVが、回転電機及び内燃機関のそれぞれの駆動力によって走行する「ハイブリッド自動車」として構成されていてもよい。
【0015】
電動車両EVは、レーン(走路)を走行しながら非接触で外部から電力の共有を受けて、当該電力を蓄電池20に蓄えることが可能となっている。これを実現するために、電動車両EVの底面部分には受電コイル30が設けられている。
【0016】
図1において電動車両EVが走行している給電レーンSLNは、給電コイル40からの非接触給電が可能な走路である。給電コイル40は、給電レーンSLNを走行中の電動車両EVに向けて電力を送出するためのコイルであって、給電レーンSLNに複数個設けられている。図1に示されるように、給電コイル40は、電動車両EVが走行する方向に沿って、所定の間隔を空けて複数並ぶように配置されている。
【0017】
図2には、レーンの一部に設けられた給電レーンSLNの例が複数示されている。図2(A)の例では、白線WLで区切られた2つのレーンLN1、LN2のうち、片側のレーンLN1の一部に給電レーンSLNが設けられている。図2(B)の例では、レーンLN1、LN2のそれぞれの一部に、左右に並ぶように給電レーンSLNが設けられている。
【0018】
図2(C)の例では、レーンLN1、LN2には給電レーンSLNが設けられておらず、左側のレーンLN1よりも更に左側のレーンLN0に給電レーンSLNが設けられている。つまり、車両が通常走行するレーンとは別に、給電を行う車両のみが走行する専用のレーンとして給電レーンSLNが設けられている。
【0019】
図2(D)の例では、白線WL1、WL2で区切られた3つのレーンLN1、LN2、LN3のそれぞれに、給電レーンSLN1、SLN2、SLN3が設けられている。この例では、左側のレーンLN1の制限速度は最も低くなっており、中央のレーンLN2の制限速度はそれよりも高くなっており、右側のレーンLN3の制限速度は最も高くなっている。このため、給電レーンSLN1、SLN2、SLN3のそれぞれにおける制限速度は互いに異なる速度となっている。
【0020】
非接触給電を実現するための構成について、図3を参照しながら説明する。図3のうち上方側には、電動車両EVに搭載された受電コイル30、整流器11、昇降圧コンバータ12、蓄電池20、モータージェネレータ21、及びインバータ13が示されている。また、図3のうち下方側には、給電レーンSLNに設けられた給電コイル40、インバータ41、降圧コンバータ42、AC/DCコンバータ43、及び電源44が示されている。給電レーンSLNに設けられたこれらの装置により構成される全体のことを、以下では「非接触給電装置400」とも称する。
【0021】
先ず、電動車両EV側の構成について説明する。受電コイル30は、既に述べたように電動車両EVの底面部分に設けられたコイルであって、後述の給電コイル40から供給される電力を非接触で受け入れるためのものである。受電コイル30は、その中心軸を上下方向に沿わせた状態で設けられている。
【0022】
受電コイル30が給電コイル40の直上にあるときには、給電コイル40に交流電流が流れた状態となっている。このとき、所謂磁気共鳴によって受電コイル30にも交流電流が流れる。つまり、給電コイル40から受電コイル30へと非接触で電力が供給される。非接触の電力供給が、上記のような磁気共鳴ではなく電磁誘導によって行われるような態様であってもよい。
【0023】
尚、受電コイル30と給電コイル40とが上面視において完全に重なってはおらず、受電コイル30の一部のみが給電コイル40に重なっているような状態でも、上記のような電力の供給は可能である。ただし、給電効率は、受電コイル30と給電コイル40とが完全に重なっている場合に比べると低くなる。
【0024】
整流器11は、受電コイル30からの交流電力を直流電力に変換するための電力変換器である。整流器11によって直流に変換された電力は、昇降圧コンバータ12に供給される。
【0025】
昇降圧コンバータ12は、整流器11からの電力を昇圧又は降圧するための電力変換器である。昇降圧コンバータ12によって昇圧又は降圧された直流電力は、蓄電池20に供給され充電される。以上のような整流器11及び昇降圧コンバータ12の動作は、後述の制御装置10によって制御される。これにより、蓄電池20への充電が適切に制御される。
【0026】
インバータ13は、蓄電池20から供給される直流電力を交流電力に変換し、当該電力をモータージェネレータ21に供給するための電力変換器である。インバータ13は、モータージェネレータ21に供給される電力の大きさを調整し、これにより駆動力を調整する。インバータ13の動作は制御装置10によって制御される。図3に示されるように、インバータ13から伸びる電力線は、蓄電池20と昇降圧コンバータ12との間となる位置に接続されている。
【0027】
続いて、非接触給電装置400側の構成について説明する。電源44は、給電コイル40から電動車両EVへと供給する電力の供給源となる交流電源である。電源44としては、例えば系統電源が用いられる。
【0028】
AC/DCコンバータ43は、電源44からの交流電力を一旦直流電力に変換するための電力変換器である。AC/DCコンバータ43によって直流に変換された電力は、降圧コンバータ42に供給される。
【0029】
降圧コンバータ42は、AC/DCコンバータ43からの電力を降圧するための電力変換器である。降圧コンバータ42によって降圧された直流電力は、インバータ41に供給される。インバータ41は、降圧コンバータ42からの直流電力を再び交流電力に変化するための電力変換器である。インバータ41は、それぞれの給電コイル40に対応して複数設けられており、降圧コンバータ42に対して互いに並列となるように接続されている。
【0030】
給電コイル40には、インバータ41からの交流電力が供給される。既に述べたように、当該電力が受電コイル30を介して電動車両EVへと供給され充電される。給電コイル40は、受電コイル30と同様に、その中心軸を上下方向に沿わせた状態で設けられている。
【0031】
非接触給電装置400の動作、具体的にはAC/DCコンバータ43、降圧コンバータ42、及びインバータ41のそれぞれの動作は、後述の給電制御装置45(図4を参照)によって制御される。これにより、給電コイル40から出力される電力の大きさが適切に調整される。
【0032】
電動車両EV、及び非接触給電装置400の構成について、図4を参照しながら更に説明する。電動車両EVは、既に説明した蓄電池20等の他に、車載カメラ151と、制動装置152と、操舵装置153と、駆動装置154と、通信装置155と、制御装置10と、を備えている。
【0033】
車載カメラ151は、電動車両EVの周囲、特に前方側を撮影するためのカメラである。車載カメラ151は、例えばCMOSセンサを用いたカメラである。車載カメラ151は、撮影により得られた画像のデータを制御装置10に送信する。制御装置10は、画像を解析することにより、電動車両EVの周囲における障害物や車線の位置などを把握することができる。これにより、障害物との衝突を回避するための操舵や制動、及びレーンに沿った走行を実現するための操舵等を自動的に行うことができる。
【0034】
また、制御装置10は、車載カメラ151で撮影された道路標識や路面標示等の情報に基づいて、走行中の走路における制限速度等を把握することもできる。更に、制御装置10は、車載カメラ151で撮影された画像に基づいて、前方側にある給電レーンSLNの有無や位置等を把握することもできる。
【0035】
制動装置152は、電力による制動力を生じさせ、これにより電動車両EVを減速又は停止させるための装置である。制動装置152は、運転者によるブレーキペダルの操作に基づくことなく、減速等のために必要な制動力の全てを生じさせることができる。制動装置152の動作は制御装置10によって制御される。
【0036】
操舵装置153は、電力による操舵力をステアリングシャフトに加えることにより、電動車両EVの操舵を行う装置である。操舵装置153は、運転者によるステアリング操作に基づくことなく、車線に沿った走行に必要な操舵力の全てを生じさせることができる。操舵装置153の動作は制御装置10によって制御される。
【0037】
駆動装置154は、電動車両EVの駆動力を制御するための装置である。図4においては、駆動装置154とモータージェネレータ21とが別のブロックとして描かれているのであるが、モータージェネレータ21は、図3に示されるインバータ13と共に、駆動装置154の一部となっている。駆動装置154の動作は制御装置10によって制御される。制御装置10は、駆動装置154及び制動装置152の動作をそれぞれ制御することにより、電動車両EVの車速(走行速度)を調整することができる。
【0038】
通信装置155は、外部と無線通信を行うための装置である。制御装置10は、通信装置155によって、給電制御装置45や、周囲を走行する他の車両との間で双方向の無線通信を行うことが可能となっている。尚、制御装置10と給電制御装置45との間における通信は、両者の間で直接行われてもよく、例えば管理センターに設置されたサーバー等を介して間接的に行われてもよい。制御装置10は、通信装置155によって、前方側にある給電レーンSLNの有無や位置等の情報を取得することができる。
【0039】
制御装置10は、電動車両EVの走行や充電等を制御するための装置であって、CPU、ROM、RAM等を有するコンピュータシステムとして構成されている。制御装置10は、機能的な制御ブロックとして、走行制御部110と、位置取得部120と、を有している。
【0040】
走行制御部110は、電動車両EVの走行を制御する部分である。走行制御部110は、先に説明した制動装置152、操舵装置153、及び駆動装置154のそれぞれの動作を制御し、これにより電動車両EVの自動運転を実行する。
【0041】
位置取得部120は、給電レーンSLNにおける給電位置を取得する部分である。「給電位置」とは、給電レーンSLNにおいて給電コイル40が設けられている位置のことである。電動車両EVが給電位置に在るときには、電動車両EVへの非接触充電が可能となる。尚、「電動車両EVが給電位置に在るとき」とは、受電コイル30と給電コイル40とが上面視において(一部又は全部が)互いに重なっており、非接触充電が効率的に行われるようなときのことである。位置取得部120は、無線通信により給電制御装置45から得られる情報に基づいて、上記の給電位置を取得することができる。また、位置取得部120は、給電コイル40から受電コイル30へと現時点で供給されている電力の大きさに基づいて、上記の給電位置を取得することもできる。
【0042】
図4には非接触給電装置400の構成が模式的に示されている。尚、非接触給電装置400には、図3に示される電源44、AC/DCコンバータ43、インバータ41が含まれているのであるが、図4においてはこれらの図示が省略されている。非接触給電装置400は、給電制御装置45を有している。給電制御装置45は、非接触給電装置400の全体の動作を制御するための装置であって、制御装置10と同様に、CPU、ROM、RAM等を有するコンピュータシステムとして構成されている。
【0043】
給電制御装置45は、電動車両EVが給電コイル40の上方を通過する時点において給電コイル40を電流が流れている状態となるように、インバータ41等の動作を制御する。また、給電制御装置45は、非接触給電装置400の仕様(給電コイル40の位置等)や動作状況を示す情報を、無線通信によって制御装置10へと送信する機能をも有している。
【0044】
給電レーンSLNを走行中の電動車両EVが停止する際に、制御装置10によって行われる制御の概要について、図5を参照しながら説明する。図5の(A)、(B)はいずれも、給電レーンSLNの途中に設けられた信号機SGが赤となり、信号機SGの手前となる位置で電動車両EVが停止しているときの状態が示されている。
【0045】
図5(A)の例では、電動車両EVが給電位置で停止しており、受電コイル30と給電コイル40とが上面視において互いに重なった状態となっている。このため、電動車両EVは、停止中においても引き続き給電コイル40からの電力の供給を受け、充電を行うことができる。
【0046】
一方、図5(B)の例では、電動車両EVが給電位置とは異なる位置で停止しており、受電コイル30と給電コイル40とが上面視において互いに重なってはいない状態となっている。このため、電動車両EVは、給電コイル40からの電力の供給を受けることができず、充電を行うことができない。
【0047】
例えば渋滞等により、図5(B)のように充電を行うことができない状態が長時間続いた場合には、蓄電量が不足して、電動車両EVが目的地まで走行できなくなってしまう可能性がある。
【0048】
そこで、本実施形態に係る制御装置10の走行制御部110は、走行中の電動車両EVを停止させる際において、前方の給電位置に電動車両EVを停止させ、図5(A)に示される状態とする処理を行うように構成されている。
【0049】
当該処理の具体的な内容について、図6を参照しながら説明する。図6に示される一連の処理は、電動車両EVが走行しているときにおいて実行されるものであって、所定の制御周期が経過する毎に、制御装置10によって繰り返し実行されるものである。
【0050】
当該処理の最初のステップS01では、周囲情報を取得する処理が行われる。「周囲情報」とは、電動車両EVの周囲の状況に関する情報である。周囲情報には、例えば前方における信号機の有無やその状態、前方における踏切の有無や遮断機の状態、及び前方における渋滞の有無など、電動車両EVを停止させる必要性について影響を及ぼし得る種々の情報、が含まれる。
【0051】
ステップS01に続くステップS02では、上記の周囲情報等に基づいて、電動車両EVを停止させる必要が有るか否かが判定される。例えば、前方の信号機が赤となっていた場合や、前方にある踏切の遮断機が閉じていた場合、前方に他の停止車両が存在している場合等には、電動車両EVを停止させる必要が有ると判定される。
【0052】
また、電動車両EVが目的地に到着する直前や、電動車両EVのドアロックが乗員によって解除されたときにも、電動車両EVを停止させる必要が有ると判定される。このように、ステップS02における判定は、ステップS01で取得された周囲情報とは別の情報に基づいて行われてもよい。
【0053】
ステップS02において、電動車両EVを停止させる必要が無いと判定された場合には、ステップS10に移行する。ステップS10では、必要に応じて、前方の他車両との間の車間距離を確保するための処理が行われる。当該処理の内容については後述する。ステップS02において電動車両EVを停止させる必要が有ると判定された場合には、ステップS03に移行する。
【0054】
ステップS03では、走行制御部110によって電動車両EVの減速を開始させるとともに、給電効率の取得を開始させる処理が行われる。「給電効率」とは、受電コイル30が受け取る電力の大きさを、給電コイル40から送出される電力の大きさで除したものである。給電効率は、電動車両EVと給電コイル40との位置関係によって変化する。電動車両EVが複数の給電コイル40の上を通過する際には、給電効率は、電動車両EVが給電コイル40の上を通過する毎に増減する。このため、電動車両EVが給電レーンSLNを走行しているときにおける給電効率は、周期的にその大きさが変化する。
【0055】
ステップS03に続くステップS04では、給電コイル40の位置に関する情報を、給電制御装置45から通信によって取得する処理が行われる。ここで取得される情報には、給電コイル40の位置や、走行方向に沿った長さ、及び間隔等が含まれる。当該情報により、制御装置10の位置取得部120は、給電レーンSLNに複数存在する給電位置のそれぞれを取得することができる。尚、ステップS04では、ステップS03で取得される給電効率の変化や周期に基づいて、位置取得部120がそれぞれの給電位置を取得することとしてもよい。
【0056】
ステップS04に続くステップS05では、電動車両EVが、前方にある複数の給電位置のうちの1つで停止可能かどうかが判定される。当該判定の方法について、図7を参照しながら説明する。
【0057】
図7には、給電レーンSLNを走行中の電動車両EVと、電動車両EVの前方側において停止している他車両OVと、が示されている。電動車両EVは、他車両OVへの追突を回避するために、図7の状態から減速して停止する必要が有る。
【0058】
図7に示される距離L1は、電動車両EVの前端から、受電コイル30の前端までの距離である。図7に示される距離L2は、他車両OVの後端から、給電コイル40の前端までの距離である。この距離L2は、それぞれの給電コイル40の位置に対応して個別に定まる距離である。
【0059】
図7に示される距離L3は、電動車両EVの制動に必要な制動距離である。尚、距離L3は、電動車両EVと他車両OVとの相対的な速度差を0とするまでに、電動車両EVが走行する距離である。このため、他車両OVが走行中であり、且つ上記の速度差が0である場合には、距離L3は0となる。このように、距離L3は、電動車両EV及び他車両OVのそれぞれの速度に応じて決定される。尚、距離L3には、制御装置10が他車両OVの状況を認知してから制動処理を開始するまでの走行距離や、車両毎の制動性能の差を考慮した走行距離や、所定の速度まで減速した後、給電コイル40の位置を検出して停車する場合には所定の速度まで減速してから停車するまでに必要とする距離等が、マージンとして加算されてもよい。図7に示される距離L4は、電動車両EVの停止時において最低限確保すべき車間距離である。図7に示される距離L5は、給電コイル40の後端から、その1つ前方にある給電コイル40の後端までの距離である。当該距離は、給電コイル40の「配置ピッチ」に該当する。
【0060】
図6のステップS05では、電動車両EVの前方側にある給電コイル40のうち、(距離L2)≧(距離L1)+(距離L4)を満たすような給電コイル40(図7では符号「40A」を付してある)の位置が、電動車両EVを停止させるべき給電位置として設定される。尚、上記の条件を満たすような給電コイル40が、電動車両EVの前方側には存在しなかった場合には、図6のステップS05では、電動車両EVが給電位置で停止不可能と判定される。
【0061】
尚、上記判定の処理においては、図7に示される複数の距離のうち、距離L3と距離L5とが用いられない。これらの距離は、後に説明する図8のステップS13の処理において用いられるものである。
【0062】
図6に戻って説明を続ける。ステップS05において、電動車両EVが給電位置で停止可能と判定された場合には、ステップS06に移行する。ステップS06では、電動車両EVを上記の給電位置で自動的に停止させる処理が、走行制御部110によって行われる。これにより、停止中においても充電を継続して行うことが可能となる。
【0063】
ステップS05において、電動車両EVが給電位置で停止不可能と判定された場合には、ステップS07に移行する。ステップS07では、電動車両EVが走行している給電レーンSLNに隣接する給電レーンSLN上に、停止可能な給電位置が存在するか否かが判定される。当該判定は、ステップS05における判定と同様の方法によって行われる。
【0064】
ステップS07において、停止可能な給電位置が、隣接する給電レーンSLN上に存在する場合には、ステップS08に移行する。ステップS08において、走行制御部110は、隣接する給電レーンSLNに電動車両EVを予め移動させた上で、上記給電位置で電動車両EVを停止させる処理を行う。これにより、ステップS06が行われた場合と同様に、停止中においても充電を継続して行うことが可能となる。
【0065】
ステップS07において、停止可能な給電位置が、隣接する給電レーンSLN上にも存在しなかった場合には、ステップS09に移行する。ステップS09に移行したということは、電動車両EVの前方側(隣接する給電レーンSLNを含む)に存在する給電位置のいずれにおいても他車両が存在することにより、電動車両EVを給電位置に停止させることができない、ということである。そこで、ステップS09では、近くの給電位置に停止している他車両に対し、給電位置から他の位置へ移動するように要請する処理を行う。当該要請は、無線通信によって他車両に伝達される。要請の対象となる他車両は複数であってもよい。
【0066】
その後、当該要請に応えて他車両が移動した場合には、走行制御部110は、空いた給電位置に電動車両EVを移動させ停止させる処理を行う。これにより、ステップS06が行われた場合と同様に、停止中においても充電を継続して行うことが可能となる。
【0067】
続いて図8を参照しながら、電動車両EVが走行中において実行される他の処理について説明する。図8に示される一連の処理は、図6のステップS10において行われる処理の具体的な内容である。
【0068】
最初のステップS11では、図6のステップS01と同様に、周囲情報を取得する処理が再度実行される。ここでは、ステップS01で取得された周囲情報をそのまま利用することとしてもよい。
【0069】
ステップS11に続くステップS12では、今後における電動車両EVの停止が予測されるか否かが判定される。尚、図6のステップS02では、電動車両EVを比較的短時間のうちに停止させる必要が有るかが判定されていたのであるが、ここでは、それよりも長い一定期間内に電動車両EVの停止が予測されるか否かが判定される。例えば、前方を走行中の他車両が減速を開始した場合や、所定速度よりも低速で走行している場合、もしくは前方側において渋滞が生じているとの交通情報が通信により取得された場合等には、電動車両EVの停止が予測されるとの判定がなされる。周辺の他車両との車両間通信に基づいて当該判定が行われることとしてもよい。
【0070】
ステップS12において、電動車両EVの停止が予測されなかった場合には、図8に示される一連の処理を終了し、電動車両EVの走行が継続される。電動車両EVの停止が予測された場合には、ステップS13に移行する。
【0071】
ステップS13では、目標距離が算出される。ここでいう「目標距離」とは、電動車両EVと、その前方を走行する他車両との間の車間距離についての目標値である。ここでは、図7を参照しながら説明した距離L3等を用いて、(目標距離)=(距離L3)+(距離L4)+(距離L5)の式によって目標距離が算出される。このように算出される目標距離は、給電レーンSLNにおける給電コイル40の配置ピッチ(つまり距離L5)よりも長い距離である。尚、距離L4が距離L5よりも長い場合には、(目標距離)=(距離L3)+(距離L4)の式によって目標距離が算出されることとしてもよい。また、距離L4が距離L5よりも短い場合には、(目標距離)=(距離L3)+(距離L5)の式によって目標距離が算出されることとしてもよい。
【0072】
ステップS13に続くステップS14では、前方の他車両との間の車間距離を、上記のように算出された目標距離以上に保つための処理が行われる。当該処理は、図6のステップS02においてYesの判定がなされるまで継続される。尚、このとき維持される車間距離は、電動車両EVが給電レーンSLNとは異なるレーンを走行する場合の車間距離(つまり、充電を行わない場合の車間距離)とは異なる距離となっている。
【0073】
その後、図6のステップS02においてYesの判定がなされると、既に述べたように電動車両EVを停止させるための処理が行われる。電動車両EVが停止したときには、電動車両EVは、前方の他車両との間の車間距離を、少なくとも距離L5よりも長い距離、すなわち給電コイル40の配置ピッチよりも長い距離だけ確保する。その結果、電動車両EVは、(距離L2)≧(距離L1)+(距離L4)を満たすような給電コイル40の手前で停車することができる。尚、電動車両EVの制動が開始された後の期間においては、確保すべき車間距離である目標距離が、(距離L3)+(距離L4)+(距離L5)から(距離L4)+(距離L5)に変更される、ということもできる。又は、目標距離が、(距離L3)+(距離L4)又は(距離L3)+(距離L5)から、(距離L4)又は(距離L5)に変更される、ということもできる。
【0074】
停止後の車間距離が上記のように確保されるので、電動車両EVと前方の他車両との間には、確実に給電位置が存在することになる。このため、停止位置から電動車両EVを更に前方側に移動させれば、電動車両EVを給電位置に停止させ、充電を継続して行うことが可能となる。
【0075】
このように、本実施形態における走行制御部110は、前方を走行する他車両との間の車間距離を、給電コイル40の配置ピッチ(距離L5)よりも長い目標距離以上に保ちながら、電動車両EVを給電位置に停止させる処理を行う。これにより、電動車両EVをより確実に給電位置に停止させることができる。
【0076】
続いて図9を参照しながら、電動車両EVが走行中において実行される他の処理について説明する。図9に示される一連の処理は、図8の処理と並行して、制御装置10によって繰り返し実行される処理である。
【0077】
当該処理の最初のステップS21では、図8のステップS12と同様に、今後における電動車両EVの停止が予測されるか否かが判定される。当該判定は、例えば図8のステップS11で取得された周囲情報に基づいて行われる。
【0078】
ステップS21において、電動車両EVの停止が予測されなかった場合には、図9に示される一連の処理を終了し、電動車両EVの走行が継続される。電動車両EVの停止が予測された場合には、ステップS22に移行する。
【0079】
ステップS22では、電動車両EVが非給電レーン(給電レーンSLNが設けられていないレーン)を走行中か否かが判定される。例えば、電動車両EVが図2(A)の例におけるレーンLN2を走行している場合には、電動車両EVが非給電レーンを走行中であると判定される。電動車両EVが給電レーンSLNを走行している場合には、図9に示される処理を終了し、その状態が維持される。電動車両EVが非給電レーンを走行している場合には、ステップS23に移行する。
【0080】
ステップS23に移行した場合には、電動車両EVがその後において非給電レーンで停止する可能性が高い。そこで、ステップS23では、電動車両EVを予め給電レーンSLNに移動するための処理が走行制御部110によって行われる。尚、このときの移動先のレーンは、給電レーンSLNであってもよいが、その前方側に給電レーンSLNが存在するレーン(例えば図2(A)の例におけるレーンLN1)であってもよい。つまり、電動車両EVがレーン移動した直後から給電レーンSLNを走行してもよく、レーン移動してからしばらく走行した後に給電レーンSLNに入ってもよい。
【0081】
このように、本実施形態では、電動車両EVが、給電レーンSLNとは異なるレーンを走行しているときにおいて、電動車両EVを停止させる可能性が生じたとき(ステップS21でYesのとき)は、走行制御部110は、予め電動車両EVを給電レーンSLNに移動させる処理を行う。これにより、その後においては、電動車両EVを給電位置で確実に停止させることが可能となる。
【0082】
電動車両EVが給電位置で停止した後に、制御装置10により実行される処理の概要について、図10を参照しながら説明する。図10には、給電レーンSLNにおいて、電動車両EVと他車両OVとの両方が停止している状態が示されている。図10では、電動車両EVと他車両OVとの間の車間距離が、距離L0として示されている。
【0083】
図10の例では、電動車両EVは、給電コイル40の直上となる位置、すなわち給電位置に停止している。図10では、電動車両EVの下にある給電コイル40に符号401が付してある。当該給電コイルのことを、以下では「給電コイル401」とも表記する。
【0084】
また、図10の例では、給電コイル401の1つ前に配置されている給電コイル40の直上となる位置に、他車両OVが停止している。図10では、他車両OVの下にある給電コイル40に符号402が付してある。当該給電コイルのことを、以下では「給電コイル402」とも表記する。
【0085】
図10に示される状態から他車両OVが発進すると、電動車両EVを直ちに発進させても問題ないように思われる。しかしながら、電動車両EV及び他車両OVが発進した直後において、他車両OVが何らかの原因で再び停止した場合には、電動車両EVが給電位置とは異なる位置で停止してしまうこととなる。例えば、電動車両EVが給電コイル401とは重ならない位置まで前進した直後に、他車両OVが給電コイル402の一部に重なるような位置で停止した場合には、電動車両EVは、その位置が給電位置ではないにも拘らず停止しなければならない。また、前方側の給電コイル402には他車両OVが存在するので、電動車両EVが前方の給電位置に移動することもできない。その結果、電動車両EVが充電を行えない状態になってしまう。
【0086】
このような事態を防止するために、本実施形態に係る制御装置10によって実行される処理の内容について説明する。図11に示される一連の処理は、電動車両EVが停止しているときに、制御装置10によって繰り返し実行されるものである。
【0087】
当該処理の最初のステップS31では、前方にある他車両OVの状態が取得される。「他車両OVの状態」とは、具体的には他車両OVの速度である。当該速度は、例えば車載カメラ151で撮影された画像を解析することによって行われる。このような態様に替えて、電動車両EVに搭載されたレーダーにより、前方にある他車両OVの速度が取得されることとしてもよい。
【0088】
ステップS31に続くステップS32では、前方の他車両OVが発進したか否かが判定される。当該判定は、ステップS31で取得された情報(他車両OVの車速)に基づいて行われる。他車両OVが発進していない場合には、ステップS33に移行する。ステップS33では、電動車両EVを引き続き停止させた状態のまま、停止中処理が実行される。「停止中処理」とは、電動車両EVが給電位置で停止している状態において、制御装置10によって実行される処理である。停止中処理の具体的な内容については後述する。
【0089】
ステップS32において、前方の他車両OVが発進していた場合には、ステップS34に移行する。ステップS34では、給電レーンSLNに設けられた各給電コイル40の位置を示す情報(具体的には、各給電コイル40に対応した給電位置を示す情報である)が、位置取得部120によって取得される。当該情報は、例えば、無線通信によって給電制御装置45から取得することができる。
【0090】
ステップS34に続くステップS35では、発進距離の算出が行われる。「発進距離」とは、電動車両EVが発進する前に、前方の他車両OVとの間において最低限確保しておくべき車間距離のことである。ここでは、図7を参照しながら説明した距離L4等を用いて、(発進距離)=(距離L4)+(距離L5)の式によって発進距離が算出される。尚、距離L4が距離L5よりも長い場合には、(発進距離)=(距離L4)の式によって発進距離が算出されることとしてもよい。また、距離L4が距離L5よりも短い場合には、(発進距離)=(距離L5)の式によって発進距離が算出されることとしてもよい。このように算出される発進距離は、給電レーンSLNにおける給電コイル40の配置ピッチ(つまり距離L5)よりも長い距離である。尚、(距離L4)+(距離L5)又は(距離L4)又は(距離L5)に対し、走行開始後における電動車両EVの制動距離を加えたものを、上記の発進距離として算出することとしてもよい。ただし、通常は、走行開始後における電動車両EVの制動距離は無視できる程度に短いと考えられるので、(距離L4)+(距離L5)又は(距離L4)又は(距離L5)を発進距離とすることが好ましい。
【0091】
ステップS36では、他車両OVとの間の車間距離(図10の距離L0)を取得した上で、当該車間距離が上記の発進距離以上であるか否かが判定される。車間距離が発進距離未満であった場合には、ステップS33に移行し、電動車両EVを停止させている状態が維持される。車間距離が発進距離以上であった場合には、ステップS37に移行する。
【0092】
ステップS37に移行した場合には、電動車両EVと前方の他車両OVとの間に、停止可能な給電位置が存在している。ステップS37では、他車両OVに続いて電動車両EVを発進させる処理が走行制御部110によって実行される。その後、もし他車両OVが停止した場合には、電動車両EVを給電位置で再び停止させる処理が行われることとなる。
【0093】
このように、電動車両EVが給電位置に停止しているときにおいて他車両OVが発進しても、走行制御部110は直ちには電動車両EVを発進させない。走行制御部110は、前方に停止していた他車両OVが走行し始めて、他車両OVとの間の車間距離が所定の発進距離(具体的には、給電コイル40の配置ピッチよりも長い距離)以上となった後に、電動車両EVを発進させる。これにより、他車両OVが再び停止した場合であっても、電動車両EVを給電位置で停止させることが可能となる。
【0094】
ステップS33で実行される停止中処理の具体的な内容について、図12を参照しながら説明する。既に述べたように、停止中処理とは、電動車両EVが給電位置で停止している状態において実行される処理である。
【0095】
停止中処理の最初のステップS41では、周辺の他車両から電動車両EVに対して、要請が送信されているか否かが判定される。この「要請」とは、給電レーンSLNで充電を行いたい他の電動車両から送信されるものであって、電動車両EVに対して他の位置へ移動することを求めるものである。つまり、電動車両EVが停止している給電位置を、他車両に譲るように求めるものである。尚、電動車両EVに対してこのような要請を送信する他車両は、電動車両EVの後方側に存在していることが多いと考えられる。
【0096】
他車両から要請が送信されていない場合には、図12に示される一連の処理を終了する。この場合は、電動車両EVは引き続き給電位置に停止し続ける。
【0097】
ステップS41において、他車両から要請が送信されていた場合には、ステップS42に移行する。ステップS42では、電動車両EVの前方側にある給電位置が空いているか否かが判定される。つまり、電動車両EVが停止可能な状態の給電位置が、前方側に存在するか否かが判定される。
【0098】
前方側の給電位置が空いている場合には、ステップS43に移行する。ステップS43では、電動車両EVを前方側に移動させ、上記給電位置に再び停止させる処理が、走行制御部110によって行われる。これにより、電動車両EVがそれまで停止していた給電位置は空くこととなるので、要請を送信した他車両が、その給電位置に停止して充電を行うことができるようになる。
【0099】
ステップS42において、電動車両EVの前方側にある給電位置が空いていなかった場合には、ステップS44に移行する。ステップS44では、電動車両EVが現在の給電位置において給電を行い得る状態のまま、電動車両EVを前方側に移動させることができるか否かが判定される。つまり、受電コイル30と給電コイル40とが上面視において重なった状態を維持した状態のまま、電動車両EVを前方側に少しだけ移動させ得る余地があるか否かが判定される。
【0100】
電動車両EVを前方側に移動させることができると判定した場合には、ステップS45に移動する。ステップS45では、電動車両EVを上記のように前方側に少しだけ移動させる処理が、走行制御部110によって行われる。これにより、後方側の他車両OVが移動し得る範囲が拡大するので、要請を出した他車両OVが給電位置まで移動し、充電を開始できる可能性が高くなる。尚、ステップS45では、現在の給電効率の値を参照しながら、給電効率が一定値以上である範囲において電動車両EVを移動させることとしてもよい。
【0101】
ステップS45の処理が行われる場合には、前方にある他車両との間の車間距離が、通常時における車間距離(例えば図7に示される距離L4)よりも短くなってもよい。
【0102】
ステップS44において、電動車両EVを前方側に移動させることができないと判定した場合には、ステップS46に移動する。ステップS46では、蓄電池20の蓄電量を取得する処理が行われる。当該処理は、蓄電池20に設けられたセンサからの信号に基づいて行われる。
【0103】
ステップS46に続くステップS47では、蓄電池20の蓄電量が、所定の下限値よりも大きいか否かが判定される。当該下限値は、例えば、電動車両EVが目的地まで走行するために必要な最低限の蓄電量として、予め設定されていたものである。蓄電量が下限値以下である場合には、図12に示される一連の処理を終了する。この場合は、電動車両EVは他車両からの要請には応えず、現在の給電位置に停止し続けることとなる。蓄電量が下限値よりも大きい場合には、ステップS48に移行する。
【0104】
ステップS48では、電動車両EVを、現在の給電位置から他の位置へと移動させる処理が、走行制御部110によって行われる。このように、電動車両EVが給電位置に停止しているときにおいて、蓄電池20の蓄電量が所定の下限値よりも大きい場合には、走行制御部110は、電動車両EVを給電位置から移動させる処理を行う。これにより、電動車両EVがそれまで停止していた給電位置に、要請を出した他車両OVが移動して停止し、充電を開始することができるようになる。
【0105】
以上の説明においては、制御装置10の制御対象である電動車両EVが、自動運転車両である場合について説明した。しかしながら、電動車両EVは、運転者の手動操作に基づいて走行する「手動運転車両」であってもよい。この場合、制御装置10は、例えば音声や画面表示などによって、電動車両EVが保つべき車間距離や、電動車両EVを停止させるべき位置等を運転者に伝えることで、電動車両EVを適切な給電位置に停止させることとすればよい。同様に、音声や画面表示などによって電動車両EVを発進させるべきタイミングを運転者に伝えることで、電動車両EVが給電位置とは異なる位置で再停止してしまうような事態を防止することとすればよい。
【0106】
電動車両EVが手動運転車両である場合には、制御における各種パラメータを、自動運転車両の場合とは異なるものとしてもよい。例えば、図8のステップS13で算出される目標距離や、図11のステップS35で算出される発進距離を、手動運転の場合と自動運転の場合とで異なるものとしてもよい。具体的には、手動運転の場合には停止や発進のタイミングが遅れることを考慮して、目標距離や発進距離を(自動運転の場合よりも)長めに算出することとすればよい。
【0107】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0108】
SLN:給電レーン
40:給電コイル
EV:電動車両
10:制御装置
110:走行制御部
120:位置取得部
20:蓄電池
図1
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図3
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図7
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図10
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