特許第6947089号(P6947089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6947089
(24)【登録日】2021年9月21日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】サイズ可変箱
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/355 20060101AFI20210930BHJP
   B65D 5/20 20060101ALI20210930BHJP
   B65D 5/26 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   B65D5/355
   B65D5/20 Z
   B65D5/26
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-44489(P2018-44489)
(22)【出願日】2018年3月12日
(65)【公開番号】特開2019-156438(P2019-156438A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2020年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】平山 佳子
【審査官】 田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−138520(JP,U)
【文献】 特開2010−095262(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3171869(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/355
B65D 5/20
B65D 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚のブランクシートから箱高さ又は底面積の異なる複数パターンの組み立て方が可能な包装箱であって,
4本の罫線(11)によって4辺が画定された四角形状の底面部(10)と,
前記底面部(10)を構成する平行な2辺にそれぞれ連接され,当該2辺に平行な複数の罫線(21)が形成された一対の高さ調整用側面部(20)と,
前記底面部(10)を構成する平行な別の2辺にそれぞれ連接され,当該別の2辺に平行な複数の罫線(31)が形成された一対の底面積調整用側面部(30)と,
前記一対の高さ調整用側面部(20)のそれぞれの左右両側に罫線を介して連接され,前記底面積調整用側面部(30)と同方向に延在する合計4つの接続用フラップ(40)とを備え,
前記接続用フラップ(40)は,前記高さ調整用側面部(20)に形成された複数の罫線(21)の少なくとも1つの延長線上に,切離し可能線(42)を有し,
変更可能な箱高さの段階数をNとした場合に,前記高さ調整用側面部(20)には,N本以上の罫線(21)が形成され,前記底面積調整用側面部(30)には,2N本以上の罫線(31)が形成されている
包装箱。
【請求項2】
前記高さ調整用側面部(20)は,
前記底面部(10)の罫線(11)から最も低い箱高さ(A)に対応した距離に形成された第1の罫線(21(a))と,
前記底面部(10)の罫線(11)から中程度の箱高さ(B)に対応した距離に形成された第2の罫線(21(b))と,
前記底面部(10)の罫線(11)から最も高い箱高さ(C)に対応した距離に形成された第3の罫線(21(c))とを有し,
前記切離し可能線(42)は,前記第1の罫線(21(a))と前記第2の罫線(21(b))の延長線上に形成されている
請求項1に記載の包装箱。
【請求項3】
一枚のブランクシートから箱高さ又は底面積の異なる6パターン以上の組み立て方が可能である
請求項2に記載の包装箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,サイズの変更が可能な包装箱に関する。具体的に説明すると,一枚のブランクシートからサイズ(箱高さ又は底面積)の異なる複数パターンの組み立て方が可能な包装箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,大きさの異なる商品や数量の異なる商品を効率よく包装することができる畳(たとう)紙タイプの包装箱が知られている(特許文献1)。この包装箱は,段ボールなどの一枚のブランクが用いられており,そのブランクの中央に罫線によって4角形の底面部が形成され,その底面部を中心に該ブランクの幅面方向と長さ面方向とに箱高さに対応する複数の寸法調節用罫線が平行状に設けられるとともに,この底面部の4隅に長さ面方向に向かって切離し可能なジッパーが設けられている。これにより,この包装箱は,長さ面方向の前後両端部と幅面方向の左右両端部をそれぞれ複数の罫線から選ばれた1つの罫線に沿って折り曲げて互いに重ね合わせることで,一枚のブランクから箱高さ及び底面積の異なる3種類の箱の組み立てが可能となっている。具体的には,特許文献1の包装箱は,箱高さ:最低・底面積:最大となる第1のパターン,箱高さ:中程度・底面積:中程度となる第2のパターン,箱高さ:最高・底面積:最小となる第3のパターンで組み立てが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−235148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,特許文献1の包装箱は,変更可能なサイズのパターンが3パターンに制限されており,包装対象となる商品の形状や数量によっては依然として包装状態が非効率になる場合がある。特に,特許文献1の包装箱は,箱高さを高くすると底面積が小さくなり,底面積を大きくすると箱高さが低くなるといったように,箱高さと底面積とが反比例の関係にある。商品を包装する際には,商品が箱内部で揺れ動くことを避けるために,箱高さを維持しつつ底面積を小さくしたいという要望が多く存在するが,特許文献1の包装箱のように箱高さと底面積とが反比例的に可変する構造では,このような要望に応えることが難しいという問題があった。
【0005】
そこで,本発明は,サイズの異なる複数パターンの組み立て方が可能な包装箱において,その変更可能なサイズのパターン数を増加させることを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者は,上記従来発明が抱える課題を解決する手段について鋭意検討した結果,特許文献1の包装箱の基本形状は維持しつつも,四隅に設けられた接続用フラップの所定箇所に切離し可能線を形成することで,変更可能なサイズのパターンを増加させることが可能になるという知見を得た。そして,本発明者は,上記知見に基づけば従来発明の課題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の構成を有する。
【0007】
本発明は,一枚のブランクシートから箱高さ又は底面積の異なる複数パターンの組み立て方が可能な包装箱に関する。なお,組み立て方のパターンとしては,箱高さと底面積のいずれか一方が異なっていれば一つのパターンとしてカウントする。本発明に係る包装箱は,少なくとも4パターン以上にサイズ変更可能であることが好ましく,5パターン以上又は6パターン以上にサイズ変更可能であることが特に好ましい。
【0008】
本発明に係る包装箱は,基本的に,底面部10と,一対の高さ調整用側面部20と,一対の底面積調整用側面部30と,4つの接続用フラップ40とを備える。底面部10は,4本の罫線11によって4辺が画定された四角形状をなす。高さ調整用側面部20は,底面部10を構成する平行な2辺にそれぞれ連接され,当該2辺に平行な複数の罫線21が形成されている。底面積調整用側面部30は,底面部10を構成する平行な別の2辺にそれぞれ連接され,当該別の2辺に平行な複数の罫線31が形成されている。接続用フラップ40は,一対の高さ調整用側面部20のそれぞれの左右両側に罫線を介して連接され,底面積調整用側面部30と同方向に延在している。接続用フラップ40は,包装箱の組立時に対向する他の接続用フラップ40と接続されるものである。接続方法は特に限定されず,接続用フラップ40に設けられた噛合溝や開口に係合させてもよいし,接続フラップ40同士の重畳部分を接着剤やステープルやメカニカルファスナーで固定してもよいし,接続フラップ40同士を別の部品を用いて固定してもよい。そして,本発明の包装箱は,接続用フラップ40のそれぞれが,高さ調整用側面部20に形成された複数の罫線21の少なくとも1つの延長線上に,切離し可能線42を有することを特徴とする。なお,切離し可能線42は,高さ調整用側面部20の罫線21の延長線上に存在していればよく,この高さ調整用側面部20に繋がっている必要はない。
【0009】
上記構成のように,各接続用フラップ40に底面積調整用の切離し可能線42を少なくとも1箇所(好ましくは複数箇所)に形成することで,包装箱のサイズのパターンを1つ以上増やすことができる。例えば,切離し可能線42を設けない場合に3パターンにサイズを変更可能な包装箱の構造であれば,上記切離し可能線42を設けることで6パターンまでパターン数を増やすことができる。特に,切離し可能線42を接続用フラップ40に設けることで,箱高さを維持しつつ底面積を小さくするといったサイズ変更が可能となる。これにより,包装箱内に緩衝材などを詰め込まなくても,包装箱の内壁に商品を密着させることができるため,商品の包装状態を効率化することができる。
【0010】
本発明に係る包装箱において,高さ調整用側面部20は,高さ調整用の第1から第3の罫線21(a〜c)を有することが好ましい。第1の罫線21(a)は,底面部10の罫線11から最も低い箱高さ(A)に対応した距離に形成される。第2の罫線21(b)は,底面部10の罫線11から中程度の箱高さ(B)に対応した距離に形成される。第3の罫線21(c)は,底面部10の罫線11から最も高い箱高さ(C)に対応した距離に形成される。この場合に,切離し可能線42は,第1の罫線21(a)と第2の罫線21(b)の両方の延長線上に形成されていることが好ましい。このように,底面積調整用の切離し可能線42の数を増やすことで,包装箱のサイズのパターン数をさらに増やすことができる。特に,本発明の包装箱によれば,箱高さ又は底面積の異なる6パターン以上の組み立て方が可能となる。
【0011】
本発明に係る包装箱は,変更可能な箱高さの段階数をNとした場合に,高さ調整用側面部20にはN本以上の罫線21が形成され,底面積調整用側面部30には2N本以上の罫線31が形成されていることが好ましい。特許文献1に記載された従来の包装箱は,変更可能な箱高さを3段階に変更可能であり,高さ調整用の側面部には3本の罫線が形成され,底面積調整用の側面部には5本の罫線が形成されている。これに対して,本発明では,底面積調整用側面部30に形成する罫線31の数を従来の包装箱よりも1本以上増やすことで,包装箱のサイズのパターン数が増えた場合であっても,組み上がった包装箱の形状を略直方体に維持しやすくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば,変更可能なサイズのパターン数を増加させた包装箱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は,一実施形態に係る包装箱のブランクシートを示している。
図2図2は,6パターンにサイズ変更可能な包装箱について,各サイズの箱高さと底面積の関係性を示している。
図3図3は,箱高さ:最低・底面積:最大となる第1のパターンの組み立て方を模式的に示している。
図4図4は,箱高さ:中程度・底面積:中程度となる第2のパターンの組み立て方を模式的に示している。
図5図5は,箱高さ:最高・底面積:最小となる第3のパターンの組み立て方を模式的に示している。
図6図6は,箱高さ:最低・底面積:中程度となる第4のパターンの組み立て方を模式的に示している。
図7図7は,箱高さ:最低・底面積:最小となる第5のパターンの組み立て方を模式的に示している。
図8図8は,箱高さ:最低・底面積:中程度となる第6のパターンの組み立て方を模式的に示している。
図9図9は,底面積のサイズに応じて折り曲げるべき罫線を示す標識の例を示している。
図10図10は,接続用フラップに形成された接続手段の別例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0015】
なお,本願明細書において「ほぼ」や「≒」といった表現は,±5mmの差を許容することを意味する。また,図1では,便宜上,X軸及びY軸の直交座標系を示している。本願明細書では,X軸方向を包装箱の左右方向とし,Y軸方向を包装箱の前後方向とする。
【0016】
図1は,包装箱100を組み立て前のブランクシートの状態の一例を示している。図1に示されるように,本発明の包装箱100は,一枚のブランクシートから組み立てることが可能である。包装箱100のブランクシートには,複数の罫線や切離し可能線が形成されている。包装箱100は,箱高さや底面積を調整して組み立てることができ,必要な箱高さや底面積を得るために適切な罫線で折り曲げたり,適宜切離し可能線でシートを切り離したりする作業を行う。包装箱100を構成するブランクシートの例は,段ボールシートであるが,その他に厚紙などの紙製シートや,プラスチックシート,あるいは金属製シート等を用いることもできる。
【0017】
図1に示されるように,ブランクシートの中心には,四角形状の底面部10が設けられている。この底面部10は,どのように包装箱100の底面積を変えたとしたも,必ず包装箱100の底面を構成する部位である。この底面部10に対して十字状に前後一対の高さ調整用側面部20と左右一対の底面積調整用側面部30とが連接されている。すなわち,底面部10は,4本の罫線11によって4辺が画定された四角形状の領域である。なお,図1に示した例において,底面部10は包装箱の前後方向(Y方向)を長手とした長方形状となっているが,底面部10の形状は正方形であってもよいし,包装箱の左右方向(X方向)を長手とした長方形状とすることもできる。包装箱の左右方向(X方向)と平行に延びる2本の罫線11(a)(b)には,それぞれ一対の高さ調整用側面部20が連接されている。高さ調整用側面部20のそれぞれは,包装箱の前後方向(X方向)に延在するパネルである。また,包装箱の前後方向(Y方向)と平行に延びる2本の罫線11(c)(d)には,それぞれ一対の底面積調整用側面部30が連接されている。底面積調整用側面部30のそれぞれは,包装箱の左右方向(Y方向)に延在するパネルである。
【0018】
高さ調整用側面部20には,それぞれ,包装箱100の高さを調整するための複数の罫線21が形成されている。高さ調整用側面部20の各罫線21は,包装箱の左右方向(X方向)と平行に延びる。図1に示した例において,高さ調整用側面部20の罫線21は,3本設けられており,底面部10の前後の罫線11(a,b)から近い順に,第1の罫線21(a),第2の罫線21(b),第3の罫線(c)となる。底面部10の罫線11(a,b)を起点として,第1の罫線21(a)までの距離は最も低い箱高さ(A)に対応し,第2の罫線21(b)までの距離は中程度の箱高さ(B)に対応し,第3の罫線21(c)までの距離は最も高い箱高さ(C)に対応する。
【0019】
箱高さを最も低くする場合には,ブランクシートを,底面部10の罫線11(a,b)と高さ調整用側面部20の第1の罫線21(a)で折り曲げる。箱高さを中程度とする場合には,ブランクシートを,底面部10の罫線11(a,b)と高さ調整用側面部20の第2の罫線21(b)で折り曲げる。箱高さを最も高くする場合には,ブランクシートを,底面部10の罫線11(a,b)と高さ調整用側面部20の第3の罫線21(c)で折り曲げる。このように,本実施形態では,包装箱100の高さを3段階に変更できる。すなわち,高さ調整用側面部20の罫線21の数は,変更可能な箱高さの段階数Nに対応する。このように,包装箱100を組み立てる際に,高さ調整用側面部20を折り曲げる罫線21(a〜c)を変えることで,包装箱10の箱高さを変えることが可能となる。それぞれの箱高さ(A〜C)は適宜設計することが可能であるが,例えばBはAの2倍,CはAの3倍などといったように設計すればよい。
【0020】
底面積調整用側面部30には,それぞれ,包装箱100の底面積を調整しつつ,底面積調整用側面部30の折り曲げ位置を高さ調整用側面部20の折り曲げ位置に合わせるための複数の罫線31が形成されている。底面積調整用側面部30の各罫線31は,包装箱の前後方向(Y方向)と平行に延びる。図1に示した例において,底面積調整用側面部30の罫線31は,6本設けられており,底面部10の左右の罫線11(c,d)から近い順に,第1の罫線31(a),第2の罫線31(b),第3の罫線31(c),第4の罫線31(d),第5の罫線31(e),第6の罫線31(f)となる。
【0021】
まず,包装箱100の底面積を調整するにあたり,底面積を最も小さくする場合には,ブランクシートを,底面部10の罫線11(c,d)で折り曲げる。底面積を中程度とする場合には,ブランクシートを,底面積調整用側面部30の第1の罫線31(a)で折り曲げる。底面積を最も大きくする場合には,ブランクシートを,底面積調整用側面部30の第2の罫線31(a)で折り曲げる。このように,本実施形態では,包装箱100の底面積を3段階に変更できるように設計されている。また,図1に示されるように,底面部10の罫線11(c,d),底面積調整用側面部30の第1の罫線31(a),及び第2の罫線31(b)のそれぞれには,そこでブランクシートを折り曲げた際の底面積の大きさを分かりやすく示すための標識が各罫線近傍に付与されている。
【0022】
ここで,箱高さを最大とし,且つ,底面積を最小とする「第1のパターン」の場合,ブランクシートを,底面部10の罫線11(c,d)と底面積調整用側面部30の第6の罫線31(f)で折り曲げる。このため,底面部10の罫線11(c,d)から底面積調整用側面部30の第6の罫線31(f)までの距離(C’)は,前述した最大の箱高さ(C)とほぼ等しく設計されている(C≒C’)。また,箱高さを中程度とし,且つ,底面積を中程度とする「第2のパターン」の場合,ブランクシートを,底面積調整用側面部30の第1の罫線31(a)と第5の罫線31(e)で折り曲げる。このため,底面積調整用側面部30の第1の罫線31(a)から第5の罫線31(e)までの距離(B’)は,前述した中程度の箱高さ(B)とほぼ等しく設計されている(B≒B’)。さらに,箱高さを中程度とし,且つ,底面積を最大とする「第3のパターン」の場合,ブランクシートを,底面積調整用側面部30の第2の罫線31(b)と第4の罫線31(d)で折り曲げる。このため,底面積調整用側面部30の第2の罫線31(b)から第4の罫線31(d)までの距離(A’)は,前述した最小の箱高さ(A)とほぼ等しく設計されている(A≒A’)。このように,A≒A’,B≒B’,及びC≒C’の関係を満足するように,各罫線間の距離が設定される。なお,これらの関係性は特許文献1にも開示されている。
【0023】
上記に加えて,本発明の包装箱100では,さらに,箱高さを最小とし,且つ,底面積を中程度とする「第4のパターン」,箱高さを最小とし,且つ,底面積を最小とする「第5のパターン」,及び,箱高さを中程度とし,且つ,底面積を最小とする「第6のパターン」にも包装箱のサイズを変形することができる。上記「第4のパターン」の場合,ブランクシートを,底面積調整用側面部30の第1の罫線31(a)と第3の罫線31(c)で折り曲げる。このため,底面積調整用側面部30の第1の罫線31(a)から第3の罫線31(c)までの距離(A1)は,前述した最小の箱高さ(A)とほぼ等しく設計されている(A≒A1)。また,上記「第5のパターン」の場合,ブランクシートを,底面部10の罫線11(c,d)と底面積調整用側面部30の第2の罫線31(b)で折り曲げる。このため,底面部10の罫線11(c,d)から底面積調整用側面部30の第2の罫線31(b)までの距離(A2)は,前述した最小の箱高さ(A)とほぼ等しく設計されている(A≒A2)。さらに,上記「第6のパターン」の場合,ブランクシートを,底面部10の罫線11(c,d)と底面積調整用側面部30の第4の罫線31(d)で折り曲げる。このため,底面部10の罫線11(c,d)から底面積調整用側面部30の第4の罫線31(d)までの距離(B1)は,前述した中程度の箱高さ(B)とほぼ等しく設計されている(B≒B1)。このように,本実施形態では,従来の第1から第3のパターンに加えて,さらに第4から第6のパターンで包装箱のサイズを変形できるように,底面積調整用側面部30に各種の罫線31が形成されている。なお,底面積調整用側面部30の第3の罫線31(c)は,特許文献1に開示されていない罫線である。また,本発明において,底面積調整用側面部30の罫線31の数は,変更可能な箱高さの段階数Nの2倍以上設けられていることが好ましい。例えば,箱高さを3段階に調整可能な構成では,底面積調整用側面部30には罫線31を6本以上又は7本以上設けることが好ましい。
【0024】
図1に示されるように,底面部10の四隅にはそれぞれ接続用フラップ40が設けられている。接続用フラップ40は,一対の高さ調整用側面部20それぞれの左右両側に罫線を介して連接されたフラップ状のパネルである。接続用フラップ40と高さ調整用側面部20の境界に位置する罫線は,底面部10と底面積調整用側面部30の境界に位置する罫線11(c,d)の延長線に相当する。包装箱の組立時に,ブランクシートを底面部10の罫線11(c,d)で折り曲げる場合には,接続用フラップ40もその罫線11(c,d)の延長線上で折り曲げる。また,接続用フラップ40には,底面積調整用側面部30の第1の罫線31(a)及び第2の罫線31(b)それぞれの延長線上に罫線が形成されている。包装箱の組立時に,ブランクシートを底面積調整用側面部30の第1の罫線31(a)又は第2の罫線31(b)で折り曲げる場合には,接続用フラップ40もそれぞれの罫線31(a,b)の延長線上で折り曲げる。各接続用フラップ40は,底面積調整用側面部30と同方向(すなわちX方向)に延在する。各接続用フラップ40のX軸方向の長さは,底面部10と底面積調整用側面部30の間の罫線11(c,d)の長さの半分以上に設計すればよい。
【0025】
また,図1に示されるように,接続用フラップ40は,上段(高さ調整用側面部20の第3の罫線21(c)から第2の罫線21(b)の間に対応する区間)と,中段(高さ調整用側面部20の第2の罫線21(b)から第1の罫線21(a)の間に対応する区間)と,下段(高さ調整用側面部20の第1の罫線21(a)から底面部10の罫線11(a,b)の間に対応する区間)に分かれる。接続用フラップ40の上段は,底面部10の罫線11(c,d)の延長線から底面積調整用側面部30の第1の罫線31(a)の延長線まで延出する。接続用フラップ40の中段は,底面部10の罫線11(c,d)の延長線から底面積調整用側面部30の第2の罫線31(b)まで延出する。接続用フラップ40の下段は,底面部10の罫線11(c,d)の延長線から所定の長さで延出する。ここにいう所定の長さとは,前述したように,底面部10と底面積調整用側面部30の間の罫線11(c,d)の長さの半分以上とすればよい。
【0026】
各接続用フラップ40と底面積調整用側面部30の間には,切れ目又は切離し可能線が形成されている。具体的に説明すると,接続用フラップ40は,底面部10の罫線11(c,d)から底面積調整用側面部30の第2の罫線31(b)までの範囲で,この底面積調整用側面部30と切離し可能線41を介して,切離し可能に連接している。この切離し可能線41は,主に箱高さを調整するために利用されるものである。この高さ調整用の切離し可能線41は,底面積調整用側面部30の第2の罫線31(b)から第1の罫線31(a)までの範囲に設けられた第1の切離し可能線41(a)と,底面積調整用側面部30の第1の罫線31(a)から底面部10の罫線11(c,d)までの範囲に設けられた第2の切離し可能線41(b)とに分けられる。他方で,接続用フラップ40は,底面積調整用側面部30の第2の罫線31(b)よりも左右方向外側の範囲では,切れ目によって底面積調整用側面部30から切り離されている。
【0027】
さらに,本発明の特徴点の一つとして,各接続用フラップ40は,高さ調整用側面部20に形成された罫線21の延長線上に,主に底面積を調整する際に利用する切離し可能線42が形成されている。すなわち,高さ調整用側面部20の第1の罫線21(a)の延長線上には,第3の切離し可能線42(a)と第4の切離し可能線42(b)が形成されている。第3の切離し可能線42(a)は,底面積調整用側面部30の第2の罫線31(b)の延長線から第1の罫線31(a)の延長線までの範囲に亘って設けられている。また,第4の切離し可能線42(b)は,底面積調整用側面部30の第1の罫線31(a)の延長線から底面部10の罫線11(c,d)の延長線までの範囲に亘って設けられている。さらに,高さ調整用側面部20の第2の罫線21(b)の延長線上には,第5の切離し可能線42(c)が形成されている。第5の切離し可能線42(c)は,第4の切離し可能線42(b)とほぼ等しい長さに設定される。すなわち,第5の切離し可能線42(c)は,底面積調整用側面部30の第1の罫線31(a)の延長線から底面部10の罫線11(c,d)の延長線までの範囲に亘って設けられている。接続用フラップ40は,第3から第5の切離し可能線42(a,b,c)により,その左右方向の端縁から高さ調整用側面部20に達する範囲まで,必要に応じて左右方向(X方向)に切り離されることとなる。
【0028】
また,接続用フラップ40の下段の先端側には,接続手段43が設けられている。接続手段43は,包装箱の組立時に,互いに対向する接続用フラップ40同士を接続して包装箱の形状を維持する機能を果たす。図1に示した例では,接続手段43としては,調整可能な底面積の段階数(本例では3段階)に応じて形成された複数の噛合溝が設けられている。噛合溝は,箱を組み立てた際に相対する接続用フラップ40の噛合溝に嵌合する。
【0029】
図2は,本実施形態において組み立て可能な包装箱のサイズのパターンと,そのパターンを組み立てるために利用する切離し可能線を模式的に示している。また,図3から図8では,前述した第1のパターンから第6のパターンを組み立てる際に折り曲げる罫線を“太線”で示し,破断させる切離し可能線を“ジグザグ線”で示している。
【0030】
図2及び図3に示されるように,包装箱のサイズを第1のパターン(箱高さ:最低,底面積:最大)とするためには,ブランクシートを,前後一対の底面11の罫線11(a,b),高さ調整用側面部20の第1の罫線21(a),底面積調整用側面部30の第2の罫線31(b),及び第4の罫線31(d)で折り曲げる。なお,第1のパターンでは,接続フラップ40の切離し可能線41,42を破断させる必要はない。
【0031】
図2及び図4に示されるように,包装箱のサイズを第2のパターン(箱高さ:中程度,底面積:中程度)とするためには,接続フラップ40の第1の切離し可能線41(a)を破断させた上で,ブランクシートを,前後一対の底面11の罫線11(a,b),高さ調整用側面部20の第2の罫線21(b),底面積調整用側面部30の第1の罫線31(a),及び第5の罫線31(e)で折り曲げる。
【0032】
図2及び図5に示されるように,包装箱のサイズを第3のパターン(箱高さ:最高,底面積:最小)とするためには,接続フラップ40の第1の切離し可能線41(a)及び第2の切離し可能線41(b)を破断させた上で,ブランクシートを,各底面11の罫線11(a,b,c,d),高さ調整用側面部20の第3の罫線21(c),及び底面積調整用側面部30の第6の罫線31(e)で折り曲げる。
【0033】
図2及び図6に示されるように,包装箱のサイズを第4のパターン(箱高さ:最低,底面積:中程度)とするためには,接続フラップ40の第1の切離し可能線41(a)及び第3の切離し可能線42(a)を破断させた上で,ブランクシートを,前後一対の底面11の罫線11(a,b),高さ調整用側面部20の第1の罫線21(a),底面積調整用側面部30の第1の罫線31(a),及び第3の罫線31(c)で折り曲げる。
【0034】
図2及び図7に示されるように,包装箱のサイズを第5のパターン(箱高さ:最低,底面積:最小)とするためには,接続フラップ40の第1の切離し可能線41(a),第2の切離し可能線41(b),第3の切離し可能線42(a),及び第4の切離し可能線42(b)を破断させた上で,ブランクシートを,各底面11の罫線11(a,b,c,d),高さ調整用側面部20の第1の罫線21(a),底面積調整用側面部30の第2の罫線31(a)で折り曲げる。
【0035】
図2及び図8に示されるように,包装箱のサイズを第6のパターン(箱高さ:中程度,底面積:最小)とするためには,接続フラップ40の第1の切離し可能線41(a),第2の切離し可能線41(b),及び第5の切離し可能線42(c)を破断させた上で,ブランクシートを,各底面11の罫線11(a,b,c,d),高さ調整用側面部20の第2の罫線21(b),底面積調整用側面部30の第4の罫線31(d)で折り曲げる。
【0036】
上記のとおり所望の箱高さと底面積に応じてブランクシートを折り曲げた後に,接続手段43を利用して対向する接続フラップ40を接続することで,適切なサイズの包装箱を組み立てることができる。
【0037】
図8(a)〜(e)は,それぞれ,底面積のサイズに応じて折り曲げるべき罫線を示した標識の例を示している。図8(a)では,罫線上に異なる種類のエンボスを付与している。図8(b)では,罫線上に異なるピッチのミシン目を形成している。図8(c)では,罫線の近傍に「大」「中」「小」といった文字を付与している。図8(d)では,罫線の近傍に「○○○」「○○」「○」といった記号を付与している。図8(e)では,罫線上に異なる種類の色を付与している。このように,底面積のサイズに応じて罫線に標識を付与することで,箱の組み立て方を理解しやすくなる。
【0038】
図9は,接続フラップ40に設ける接続手段の別例を示している。図9に示した例では,組立時に対向する一対の接続フラップ40のうちの一方に,ラチェット式の細かい刻み目が形成されたベルト部分が設けられ,他方に,このベルト部分を挿し込むための開口が設けられている。このため,一方の接続フラップ40のベルト部分を他方の接続フラップ40の開口に挿し込むことで,両者が接続するようになっている。このように,接続手段を無段階的な構造とすることも可能である。
【0039】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【0040】
例えば,図面に示した実施形態では,包装箱のサイズを6パターンに変形可能としているが,本実施形態を用いて説明した技術思想に倣って罫線の数と罫線間の距離を設計すれば,包装箱のサイズ変形のパターンを4パターンのみ,5パターンのみ,あるいは7パターン以上にすることも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は,サイズの変更が可能な包装箱に関する。従って,本発明は,包装箱の製造業などにおいて好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
10…底面部
11…底面部の罫線
20…高さ調整用側面部
21…高さ調整用の罫線
30…底面積調整用側面部
31…底面積調整用の罫線
40…接続フラップ
41…高さ調整用の切離し可能線
42…底面積調整用の切離し可能線
43…接続手段
100…包装箱
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10