特許第6947100号(P6947100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6947100
(24)【登録日】2021年9月21日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】導電路
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20210930BHJP
【FI】
   H02G3/04 087
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-62111(P2018-62111)
(22)【出願日】2018年3月28日
(65)【公開番号】特開2019-176617(P2019-176617A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2020年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤村 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】岡本 怜也
(72)【発明者】
【氏名】清水 宏
【審査官】 鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−048741(JP,A)
【文献】 特開2011−193677(JP,A)
【文献】 特開2005−044607(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/069208(WO,A1)
【文献】 特開2010−027577(JP,A)
【文献】 特開2017−135042(JP,A)
【文献】 特開2011−192578(JP,A)
【文献】 特開2011−146237(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/107050(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/062885(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H01B 7/42
H02G 3/04
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線と、
前記複数の電線が一つずつ配索される複数の配索溝を有するとともに、前記複数の配索溝を仕切る隔壁を有する金属製の配索部材と、
前記配索部材に取り付けられる第1取り付け部を有すると共に、熱溜め部材に取り付けられる第2取り付け部を有する金属製のブラケットと、
前記配索部材のうち前記第1取り付け部が取り付けられた部分に対応する領域において、前記隔壁に仕切られた前記複数の配索溝の内部に配されて前記電線と前記配索部材との間に介在する、空気よりも熱伝導率の大きな合成樹脂製の伝熱部材と、を備え
1つの前記伝熱部材には、前記複数の電線のうち1つの電線が配される導電路。
【請求項2】
前記伝熱部材は、前記電線の外周面に倣った形状をなす伝熱面を有する、請求項1に記載の導電路。
【請求項3】
前記伝熱部材は、弾性撓みすることで前記電線の前記伝熱面内への嵌込みを許容し、且つ弾性復帰した状態では前記電線に係止してその電線の離脱を規制可能な弾性係止部を備えている、請求項2に記載の導電路。
【請求項4】
導体の外周を絶縁被覆で包囲した電線と、
前記電線が配索される配索溝を有した金属製の配索部材と、
前記配索部材に取り付けられる第1取り付け部を有すると共に、熱溜め部材に取り付けられる第2取り付け部を有する金属製のブラケットと、
前記配索部材のうち前記第1取り付け部が取り付けられた部分に対応する領域において、前記配索溝の内部に配されて前記電線と前記配索部材との間に介在する、空気よりも熱伝導率の大きな合成樹脂製の伝熱部材と、を備え、
前記伝熱部材の上面には前記電線が載置される伝熱面が下方に陥没して形成されており、
前記電線の断面形状は円形状をなしており、前記伝熱面の断面形状は半円形状をなしており、
前記電線が前記伝熱部材の上面に載置された状態で、前記伝熱部材の上面から前記電線の前記絶縁被覆が露出している、導電路。
【請求項5】
前記配索部材には、前記配索溝を仕切る隔壁が設けられている、請求項4に記載の導電路。
【請求項6】
前記配索部材は、前記配索溝の開口部を塞ぐ金属製のカバーを有する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の導電路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示された技術は、電線が配索された導電路に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車、ハイブリッド車等の車両において、蓄電素子、インバータ装置、モータなどの機器には、比較的に大きな電流が流れる。このため、通電時において電線から発生する熱を効果的に放散させることが求められる。このような技術として、特開平8−235940号公報に記載のものが知られている。
【0003】
上記の技術においては、電線の絶縁被覆の外周面に、絶縁性を有すると共に高熱伝導性を有する放熱被覆材を設けるようになっている。通電時に電線から発生した熱は、絶縁被覆から放熱被覆材へと熱伝達され、放熱被覆材の内部を効率よく熱伝導し、放熱被覆材の外周面から外部へと、効率よく放散される。これにより、電線の放熱性を向上させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−235940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の構成によると、電線から絶縁被覆を経て放熱被覆材へ到達した熱は、放熱被覆材から空気中へと放散されるようになっている。空気の熱伝導性は比較的に小さいため、上記の技術によっては、電線の放熱性を十分に向上させることは困難であった。
【0006】
電線からの発熱量は、電線の断面積が大きいほど小さくなるので、電線の温度上昇値を小さくするためには電線の断面積を大きくすることが考えられる。しかし、この手法は、電線が大型化するので採用し得ない。
【0007】
本明細書に開示された技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電線の放熱性が向上された導電路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示された技術は、導電路であって、電線と、前記電線が配索される配索溝を有した金属製の配索部材と、前記配索部材に取り付けられる第1取り付け部を有すると共に、熱溜め部材に取り付けられる第2取り付け部を有する金属製のブラケットと、前記配索部材のうち前記第1取り付け部が取り付けられた部分に対応する領域において、前記配索溝の内部に配されて前記電線と前記配索部材との間に介在する、空気よりも熱伝導率の大きな合成樹脂製の伝熱部材と、を備える。
【0009】
上記の構成によれば、通電時に電線で発生した熱は、伝熱部材へと伝達される。伝熱部材へ伝達された熱は、伝熱部材内を熱伝導して金属製の配索部材へと伝達される。配索部材へと伝達された熱は、金属製のブラケットの第1取り付け部へと伝達される。第1取り付け部へ伝達された熱は、ブラケット内を熱伝導して、第2取り付け部へと到達する。第2取り付け部に到達した熱は、熱溜め部材へ伝達される。このように、上記の技術によれば、通電時に電線で発生した熱は、伝熱経路内に空気を介することなく、熱溜め部材へと速やかに熱を伝えることができる。これにより、電線の放熱性を向上させることができる。
【0010】
本明細書に開示された技術の実施態様としては以下の態様が好ましい。
【0011】
前記伝熱部材は、弾性撓みすることで前記電線の前記伝熱面内への嵌込みを許容し、且つ弾性復帰した状態では前記電線に係止してその電線の離脱を規制可能な弾性係止部を備えている。
【0012】
上記の構成によれば、車両の振動によって、電線が伝熱面から離間する方向の力を受けた場合でも、電線と伝熱面との接触を維持することができる。これにより、電線の放熱性を一層向上させることができる。
【0013】
前記伝熱部材は、前記電線の外周面に倣った形状をなす伝熱面を有する。
【0014】
上記の構成によれば、伝熱面は電線の外周面に倣った形状をなしているので、電線の外周面と伝熱部材の伝熱面との接触面積を大きくすることができる。これにより、電線から伝熱部材への伝熱効率を向上させることができるので、電線の放熱性を一層向上させることができる。
【0015】
前記配索部材には、前記配索溝を仕切る隔壁が設けられている。
【0016】
上記の構成によれば、配索溝が隔壁で仕切られることにより、配索部材に複数の電線を配索することができる。また、隔壁により配索部材の強度を向上させることができる。
【0017】
前記配索部材は、配索溝の開口部を塞ぐ金属製のカバーを有する。
【0018】
上記の構成によれば、配索溝の開口部がカバーによって塞がれるので、電線を電磁的にシールドすることができる。また、カバーによって配索部材の強度を更に向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本明細書に開示された技術によれば、導電路に配された電線の放熱性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態1に係る導電路において、配索部材とカバーとを示す斜視図
図2】導電路を示す横断面図
図3】導電路を示す一部切欠縦断面図
図4】実施形態2に係る導電路を示す横断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態1>
本明細書に開示された技術の実施形態1を図1から図3を参照しつつ説明する。本実施形態に係る導電路20は、電気自動車、ハイブリッド車等の車両(図示せず)に搭載された蓄電モジュール21(熱溜め部材の一例)と、電気接続箱22(熱溜め部材の一例)と、を接続する手段として用いられる。以下の説明においては、Z方向を上方とし、Y方向を前方とし、X方向を左方として説明する。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0022】
蓄電モジュール21は、複数の蓄電素子(図示せず)が金属製のケース50A内に収容されてなる。ケース50Aの側壁には、後述する電線10が挿通される挿通孔53Aが形成されているとともに、挿通孔53Aの左右両側方に位置する一対の雌ネジ孔54Aが形成されている。金属製のケース50Aは比較的に大きな体積を有するので、比較的に熱容量が大きい。蓄電モジュール21も金属製の部材を有しており、比較的に大きな体積を有するので、比較的に熱容量が大きい。
【0023】
電気接続箱22は、金属製のケース50B内に図示しない回路構成体が収容されてなる。ケース50Bの側壁には、電線10が挿通される挿通孔53Bが形成されているとともに、挿通孔53Bの左右両側方に位置する一対の雌ネジ孔54Bが形成されている。金属製のケース50Bは比較的に大きな体積を有するので、比較的に熱容量が大きい。電気接続箱22が放熱板を有する場合には、より熱容量が大きくなる。
【0024】
次に、本実施形態の導電路20について説明する。
導電路20は、3本の電線10と、3本の電線10が配索された配索部材31と、配索部材31に取り付けられたブラケット39と、電線10と配索部材31との間に介在する伝熱部材60と、を備える。
【0025】
電線10は、導体11の外周を絶縁被覆12で包囲したものであって、この電線10には、シールド電線の編組線からなるシールド層に相当するシールド部材は設けられていない。電線10の断面形状は円形状をなしており、電線10の外周面13は、円筒表面となっている。
【0026】
配索部材31は、アルミニウム合金製(これに限らず、鉄、銅、ステンレス等の金属材料を用いてもよい)の押出材からなる。したがって、配索部材31は、直線状に延びた形態であり、且つ長さ方向(=前後方向)と直角な横断面形状が全長に亘って一定である。配索部材31の横断面形状は、全体として櫛形をなし、前後方向に細長い水平な平板状をなす底壁32と、この底壁32の左右両側縁から底壁32と直角に立ち上がる一対の平板状をなす外壁33と、外壁33の間において底壁32の上面から直角に立ち上がる平板状をなす左右一対の隔壁34とを有している。隔壁34間のピッチは、外壁33間のピッチの1/3であり、隣り合う外壁33と隔壁34との間隔は、隔壁34同士の間隔とほぼ同じ寸法となっている。配索部材31には、底壁32、外壁33及び隔壁34により、前後方向に細長く上方へ開放された形態の3つの配索溝35が形成されている。3つの配索溝35は、左右に並ぶように配され、互いに隔壁34によって仕切られている。
【0027】
各配索溝35内には、夫々、個別に電線10が1本ずつ収容されている。ここで、配索溝35の幅寸法と高さ寸法とはほぼ同じ寸法とされ、その寸法は、円形をなす電線10の外径よりも少し大きい寸法に設定されている。したがって、各配索溝35内に収容された電線10の一部が配索溝35の外へ突出することはない。
【0028】
配索部材31には、配索部材31と同じくアルミニウム合金製(これに限らず、鉄、銅、ステンレス等の金属材料を用いてもよい)の押出材からなるカバー36が取り付けられている。カバー36は、配索部材31の上面と対応する水平な細長い覆い板37と、この覆い板37の左右両側縁から下向きに延出する一対の係止縁部38とからなる。かかるカバー36は、覆い板37で3つの配索溝35の上面側の開口部を一括して覆い隠し、覆い板37の左右両側縁部下面を外壁33の上端面に当接させるとともに、係止縁部38を外壁33の外面に密着させた状態で配索部材31に嵌合される。配索部材31の外壁33と、カバー36の係止縁部38とが密着することにより、配索部材31とカバー36とに包囲された空間内が電磁的にシールドされる。
【0029】
配索部材31の前後両端部においては、蓄電モジュール21及び電気接続箱22との接続手段として、左右両外壁33の外面に、夫々、L字形をなすブラケット39が溶接等の手段により固定されている。ブラケット39は、外壁33に密着する第1取り付け部40とこの第1取り付け部40の端縁から左右方向外向きに直角に延出する第2取り付け部41とからなり、第2取り付け部41には、前後方向に貫通するボルト孔42が形成されている。
【0030】
一方、カバー36の前後両端部においては、蓄電モジュール21及び電気接続箱22との接続手段として、及び配索部材31への固定手段として、左右両係止縁部38の外面に、夫々、L字形をなすブラケット46が溶接等の手段により固定されている。ブラケット46のうち係止縁部38と直角に左右方向外向きに延出する板部には、前後方向に貫通するボルト孔47が形成されている。
【0031】
カバー36を配索部材31に嵌合した状態では、ブラケット46がブラケット39に対してボルト孔42,47同士を整合させた状態で密着する。そして、この両ボルト孔42,47に貫通させたボルト(図示せず)の締め付けにより、カバー36と配索部材31とが嵌合状態に保持されるとともに、このカバー36と配索部材31とが蓄電モジュール21、及び電気接続箱22に接続されるようになっている。尚、カバー36を配索部材31に固定する手段としては、ボルト締めに限らず、挟持部材(図示せず)でカバー36と配索部材31とを上下に挟む、結束帯材(図示せず)をカバー36と配索部材31の外周に巻き付ける、溶接する等の手段を用いることもできる。
【0032】
配索部材31のうち、ブラケット39の第1取り付け部40が取り付けられた部分に対応する領域において、配索溝35の内部には、伝熱部材60が配設されている。伝熱部材60は、配索部材31に嵌着されていてもよく、また、接着されていてもよく、ネジ止めされていてもよく、公知の手段により配索部材31に取り付けられている。
【0033】
伝熱部材60は、空気よりも熱伝導率の大きな合成樹脂製である。伝熱部材60を構成する合成樹脂は、絶縁性を有していてもよいし、導電性を有していてもよい。また、伝熱部材60を構成する合成樹脂は、金属粉、金属片等、高い熱伝導性を有するフィラーを含有してもよい。合成樹脂としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、合成ゴム、天然ゴム等、必要に応じて任意の材料を適宜に選択することができる。
【0034】
伝熱部材60は、ブロック状をなしており、上面には、電線10が載置される伝熱面61が下方に陥没して形成されている。伝熱面61の形状は、電線10の外周面に倣った形状をなしている。本実施形態では、伝熱面61の断面形状は半円形状をなしており、伝熱面61を構成する半円の直径は、電線10の外径と実質的に同じに設定されている。実質的に同じとは、伝熱面61を構成する半円の直径が電線10の外径と同じ場合を含むと共に、伝熱面61を構成する半円の直径が電線10の外径とが異なっていても、実質的に同じと認められる程度に、僅かに小さいか、又は僅かに大きい場合を含む。
【0035】
電線10が伝熱部材60に載置された状態で、電線10の自重により、伝熱部材60の伝熱面61と電線10の外周面13の少なくとも一部が密着するようになっている。なお、伝熱部材60の伝熱面61の全てが、電線10の外周面13と密着していてもよい。
【0036】
伝熱部材60の左右方向の寸法は、隣り合う外壁33と隔壁34との間隔、又は、隔壁34同士の間隔とほぼ同じ寸法となっている。これにより、伝熱部材60は、配索部材31の底壁32に上方から密着すると共に、外壁33又は隔壁34と左右方向から密着するようになっている。
【0037】
図3において、前側に配された伝熱部材60の前端縁は、ブラケット39の前端縁と同じかやや後方の位置に設定されている。また、前側の伝熱部材の後端縁は、ブラケット39の後端縁と同じかやや後方に下がった位置に設定されていると共に、ブラケット46の後端縁と同じかやや前方の位置に設定されている。
【0038】
図3において、後側に配された伝熱部材60の後端縁は、ブラケット39の後端縁と同じかやや前方の位置に設定されている。また後側の伝熱部材の前端縁は、ブラケット39の前端縁と同じかやや後方に下がった位置に設定されていると共に、ブラケット46の前端縁と同じかやや後方の位置に設定されている。
【0039】
上記の導電路20の製造工程の一例を以下に説明する。導電路20の製造工程は、以下の記載に限定されない。
【0040】
押出成形により形成された配索部材31に、ブラケット39の第1取り付け部40を固定する。押出成形により形成されたカバー36に、ブラケット46を固定する。
【0041】
配索部材31の配索溝35内であって、ブラケット39に対応する位置に、伝熱部材60を配設する。電線10を各配索溝35内に収容すると共に、伝熱部材60の伝熱面61に載置する。配索部材31にカバー36を上方から嵌着する。
【0042】
かかる導電路20を蓄電モジュール21に接続する際には、まず、3つの電線10をケース50Aの挿通孔53A内に差し込む。次に、前側のブラケット39の第2取り付け部41をケース50Aの外面に当接させ、ブラケット39のボルト孔42、及びブラケット46のボルト孔47に差し込んだボルト(図示せず)をケース50Aの雌ネジ孔54Aに螺合して締め付ける。これにより、前側のケース50Aに対して導電路20の配索部材31及びカバー36が電気的に接続される。
【0043】
尚、導電路20と電気接続箱22との接続も、上記の蓄電モジュール21と同様に行われる。
【0044】
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態に係る導電路20は、電線10と、電線10が配索される配索溝35を有した金属製の配索部材31と、配索部材31に取り付けられる第1取り付け部40を有すると共に、蓄電モジュール21又は電気接続箱22に取り付けられる第2取り付け部41を有する金属製のブラケット39と、配索部材31のうち第1取り付け部40が取り付けられた部分に対応する領域において、配索溝35の内部に配されて電線10と配索部材31との間に介在する、空気よりも熱伝導率の大きな合成樹脂製の伝熱部材60と、を備える。
【0045】
上記の構成によれば、通電時に電線10で発生した熱は、伝熱部材60へと伝達される。伝熱部材60へ伝達された熱は、伝熱部材60内を熱伝導して金属製の配索部材31へと伝達される。配索部材31へと伝達された熱は、金属製のブラケットの第1取り付け部40へと伝達される。第1取り付け部40へ伝達された熱は、ブラケット39内を熱伝導して、第2取り付け部41へと到達する。第2取り付け部41に到達した熱は、蓄電モジュール21のケース50A又は電気接続箱22のケース50Bへ伝達される。このように、上記の技術によれば、通電時に電線10で発生した熱は、伝熱経路内に空気を介することなく、蓄電モジュール21のケース50A又は電気接続箱22のケース50Bへと速やかに熱を伝えることができる。これにより、電線10の放熱性を向上させることができる。
【0046】
また、伝熱部材60は、配索部材31の第1取り付け部40に対応する部分に配されているので、伝熱部材60を配索部材31の全長に亘って配する場合に比べて、コストを低減することができると共に、導電路20を軽量化することができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、伝熱部材60は、電線10の外周面13に倣った形状をなす伝熱面61を有する。
【0048】
上記の構成によれば、伝熱面61は電線10の外周面13に倣った形状をなしているので、電線10の外周面13と伝熱部材60の伝熱面61との接触面積を大きくすることができる。これにより、電線10から伝熱部材60への伝熱効率を向上させることができるので、電線10の放熱性を一層向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、配索部材31には、配索溝35を仕切る隔壁34が設けられている。
【0050】
上記の構成によれば、配索溝35が隔壁34で仕切られることにより、配索部材31に複数の電線10を配索することができる。また、隔壁34により配索部材31の強度を向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、配索部材31は、配索溝35を塞ぐ金属製のカバー36を有する。
【0052】
上記の構成によれば、配索溝35がカバー36によって塞がれるので、電線10を電磁的にシールドすることができる。また、カバー36によって配索部材31の強度を更に向上させることができる。
【0053】
<実施形態2>
次に、本明細書に開示された技術の実施形態2を、図4を参照しつつ説明する。本実施形態に係る導電路70は、伝熱部材80を上記実施形態1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0054】
伝熱部材80の上面には、伝熱面81の左右両側部に、上方に立ち上がる一対の弾性係止部82が、伝熱部材80と一体に形成されている。一対の弾性係止部82は、上端部が互いに接近するように形成されている。これにより、一対の弾性係止部82の左右方向の間隔は、電線10の直径寸法よりも小さく設定されている。一対の弾性係止部82の左右方向の厚さ寸法は比較的薄く形成されており、弾性変形が可能になっている。
【0055】
電線10を、上方から一対の弾性係止部82の間に押し込む。すると、一対の弾性係止部82が左右方向について拡開するように弾性変形する。更に電線10を下方に押し込むと、一対の弾性係止部82は閉じるように復帰変形する。これにより、電線10の外周面は、一対の弾性係止部82によって、伝熱面81に密着するように押圧される。
【0056】
上記のように本実施形態2の導電路70では、弾性撓みすることで電線10の伝熱面81への嵌込みを許容するとともに、弾性復帰した状態では電線10に係止してその電線10の離脱を規制可能な弾性係止部65を設けている。
【0057】
上記の構成によれば、車両の振動によって、電線10が伝熱面81から離間する方向の力を受けた場合でも、電線10と伝熱面81との接触を維持することができる。これにより、電線10の放熱性を一層向上させることができる。
【0058】
<他の実施形態>
本明細書に開示された技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に開示された技術の技術的範囲に含まれる。
【0059】
(1)本実施形態においては、熱溜め部材としては、蓄電モジュール21、電気接続箱22を例示したが、これに限られず、モータ等の機器でもよいし、金属フレーム、金属ケース、車体等の金属部材でもよい。
また、本実施形態に係る導電路は、複数の蓄電素子を有する電池パック内における電線の配索構造に適用してもよい。
【0060】
(2)1個の配索部材31に1本〜2本の電線10が配されていてもよいし、4本以上の電線10が配されていてもよい。また、隔壁34は省略してもよい。

【0061】
(3)本実施形態においては、1個の配索部材31の前端部と後端部にそれぞれブラケット39が取り付けられる構成としたが、これに限られず、1個の配索部材の中間部分などの任意の位置に、1個、又は3個以上のブラケットが取り付けられ、配索部材のうち対応する部分に伝熱部材が配される構成としてもよい。
【0062】
(4)本実施形態においては、配索部材31のうち、ブラケット39に対応する位置に伝熱部材60が配される構成としたが、これに限られず、配索部材31の全長に亘って伝熱部材が設けられていてもよい。
【0063】
(5)本実施形態においては、配索部材31にはカバー36が取り付けられる構成としたが、これに限られずカバー36は省略してもよい。
【0064】
(7)本実施形態においては、電線10の断面形状は円形状をなしていたが、これに限られず、電線10の断面形状は、矩形状、楕円形状、長円形状(2本の平行な直線の両端部が半円形状で連結された形状)でもよく、任意の形状を適宜に採用することができる。伝熱部材の伝熱面の形状は電線の外周面の形状に倣った形状であれば、U字状、C字状、半円形状等、任意の形状を適宜に採用することができる。
【0065】
(8)本実施形態においては、1個の伝熱部材60,80に1個の伝熱面61,81が形成される構成としたが、これに限られず、1個の伝熱部材に2個以上の複数の伝熱面が形成される構成としてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10:電線
13:外周面
20,70:導電路
21:蓄電モジュール
22:電気接続箱
31:配索部材
34:隔壁
35:配索溝
36:カバー
39:ブラケット
40:第1取り付け部
41:第2取り付け部
60,80:伝熱部材
61,81:伝熱面
82:弾性係止部
図1
図2
図3
図4