(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多成分系液化ガスにおける特定成分を希薄化した特定成分希薄ガスを供給するための第一ラインと、多成分系液化ガスにおける特定成分を濃縮化した特定成分濃縮ガスを供給するための第二ラインとを備え、
前記第一ラインにおいて、多成分系液化ガスを昇圧する第一ポンプと、昇圧された多成分系液化ガスを気化する第一気化器と、気化されたガスから特定成分を分離する膜分離装置を有し、
前記第二ラインにおいて、前記膜分離装置で分離された特定成分が濃縮された濃縮ガスを前記多成分系液化ガスに混合するインジェクタと、該インジェクタで混合された混合液を気化する第二気化器とを有し、
前記膜分離装置で分離された特定成分が濃縮された濃縮ガスを前記インジェクタに供給する濃縮ガス供給ラインを備えたことを特徴とする多成分系液化ガスの成分調整装置。
前記第一ライン及び前記第二ラインは、多成分系液化ガスが流れる多成分系液化ガスラインが分岐したものであることを特徴とする請求項1に記載の多成分系液化ガスの成分調整装置。
多成分系ガスにおける特定成分を希薄化した特定成分希薄ガスを供給するための第一ラインと、多成分系液化ガスにおける特定成分を濃縮化した特定成分濃縮ガスを供給するための第二ラインとを備え、
前記第一ラインにおいて、前記第二ラインの多成分系液化ガスよりも高圧の多成分系ガスから特定成分を分離する膜分離装置を有し、
前記第二ラインにおいて、前記膜分離装置で分離された特定成分が濃縮された濃縮ガスを前記多成分系液化ガスに混合するインジェクタと、該インジェクタで混合された混合液を気化する第二気化器とを有し、
前記膜分離装置で分離された特定成分が濃縮された濃縮ガスを前記インジェクタに供給する濃縮ガス供給ラインを備えたことを特徴とする多成分系液化ガスの成分調整装置。
前記濃縮ガス供給ラインに設けられて前記インジェクタに供給する濃縮ガスの量を調整する制御弁と、前記濃縮ガス供給ラインに供給される前記濃縮ガスの圧力、温度、流量及び組成と、前記インジェクタに供給される多成分系液化ガスの圧力、温度、流量及び組成とをそれぞれ検出して、前記インジェクタに供給される濃縮ガスの全量が前記インジェクタで液化するように前記制御弁を制御する第1の制御装置を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の多成分系液化ガスの成分調整装置。
前記濃縮ガス供給ラインに設けられて前記インジェクタに供給する濃縮ガスの量を調整する制御弁と、前記インジェクタの下流側において前記インジェクタから排出される混合液の圧力、温度及び組成を検出して、該混合液の相状態を判定して、前記混合液が液相状態になるように前記制御弁を制御する第2の制御装置を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の多成分系液化ガスの成分調整装置。
前記多成分系液化ガスが液化天然ガスであり、前記第一ラインが発電用の低発熱量ガスを供給するラインであり、前記第二ラインが都市ガス用の高発熱量ガスを供給するラインであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の多成分系液化ガスの成分調整装置。
【背景技術】
【0002】
多成分系液化ガスの例として、液化天然ガス(LNG)を挙げて説明する。
LNG基地においては、LNGを気化させて都市ガス向けの燃料ガス、および発電向けの燃料ガスが製造されている。
都市ガス向けの燃料ガスは、都市ガスとして規定された熱量範囲を満足するように熱量を調整して供給する必要がある。LNGを気化させた天然ガス(NG)の熱量は上述した規定熱量範囲より低い場合が多く、通常、増熱剤(LPG等)を混合して熱量調整する。
他方、発電向けの燃料ガスは、都市ガス向けのように熱量範囲が規定されているわけではなく、通常は熱量調整を行わずに供給されている。
【0003】
都市ガス向けの燃料ガスに混合される増熱剤はLNGとは別途調達する必要があり、そのコスト削減には大きなニーズがある。混合する増熱剤量を低減するための一方策として、熱量調整が要求されない発電向け燃料ガスからプロパン、ブタン等の重質成分を分離回収し、熱量調整に用いる技術が例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1においては、LNGを気化させたNGから重質成分を分離回収する分離回収装置として蒸留装置、ガス分離装置、吸着装置が実施の形態に開示されている。
しかし、蒸留装置は設備構成が複雑でありコストが高くなるし、吸着装置はバッチ式であるため、連続処理を行うには複数の吸着装置を組み合わせる必要があり構成が複雑でコストが高くなるという問題がある。
【0005】
他方、ガス分離膜装置は装置構造が単純でコストが低いという利点がある。なお、ガス分離装置に使用される分離膜は、ガスの種類によって透過しやすさが異なる性質を利用して多成分系ガスから特定成分のガスを分離するものであり、例えばゴム状高分子膜やガラス状高分子膜などがある。膜を透過して流出してくるガス(透過ガス)には、透過しやすいガス成分が濃縮されている。一方、膜を透過しないで流出してくるガス(非透過ガス)には、逆に透過しにくいガス成分が濃縮されている。膜を透過する際には圧力損失が生じ、透過ガスの圧力は、分離膜に供給される供給ガスの圧力より低下することになる。非透過ガスも多少の圧力低下は生じるが、その程度は透過ガスの圧力低下に比較して非常に小さい。
【0006】
ここで、特許文献1に記載された膜分離によるガス分離装置に関する第5実施の形態について検討する。
特許文献1の第5実施の形態では、特許文献1の
図5に示されるように、気化器で気化したガスを分岐して、一方はガス分離装置に他方は熱量調整装置に流し、ガス分離装置で膜分離されたガスは一旦ガスタンクに貯留して熱量調整装置に増熱剤として供給するようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のガス分離装置を用いたプロセスは、特許文献1の
図5に示されるようにガスの送出圧力において重質成分を分離し、概略同一圧力の送出ラインに混合している。ガス分離装置においてガスを膜分離するためには、透過側の圧力を装置入口より低くする必要がある。
メタンを透過しやすい分離膜を使用した場合、発電用ガスとして送出されるメタンガスは61のラインより必ず低圧である。発電用ガスとして要求される圧力を確保するためには、61のライン圧をその要求圧力より高くする必要がある。ここで、61のラインは、そのまま都市ガス向けラインに接続されている。一般に、発電用ガスと都市ガス向けガスの要求圧力は概略同じ場合が多い。都市ガス向けラインの圧力が、その要求圧力を満足するようにするためには、高圧状態の61のライン圧から減圧する必要があり、LNGポンプ17a、17bの昇圧動力の一部が無駄となり損失が生じていた。
【0009】
逆に、プロパン、ブタン等の重質成分を透過しやすい分離膜を使用した場合、41のラインを通る透過ガスは61のラインより必ず低圧である。この透過ガスを特許文献1の
図5の63に示される熱量調整装置にて61のラインを通る被混合ガスに混合して熱量調整に用いるには、透過ガスの圧力を被混合ガス以上にする必要があり、62に示される弁で61のラインを減圧せざるを得ず、損失が生じていた。
【0010】
もっとも、57のガス分離装置の上流もしくは下流にコンプレッサーを設けることで、弁62における減圧操作無しに、膜分離に必要な圧力差を確保した上で透過ガスの圧力を被混合ガス以上にできるが、この場合にはガスの昇圧に伴う消費動力が大きいという問題がある。
【0011】
なお、分離膜を用いたガス分離装置に関し、膜透過の差圧を確保する手段として、もともと圧力の低い昇圧装置のサクション側に透過ガスを戻すことが考えられ、そのようなプロセスの例が特許文献2に開示されている。
しかし、特許文献2に開示されているような気体と気体の混合では昇圧装置(
図2の7)としてコンプレッサーを用いる他無く、やはり大きな消費動力がかかる。
【0012】
上記のような課題は、LNGを気化して熱量調整する場合に限られず、例えば多成分系液化ガスである液体空気から酸素濃縮ガスをバーナーやボイラなどで支燃性ガスとして用いるような場合にも生ずる課題である。
【0013】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、多成分系液化ガスから特定成分を膜分離装置で分離し、分離された特定成分を混合することで成分調整するに際して消費動力が大きくなることなく効率的に特定成分を分離して混合調整することができる多成分系液化ガスの成分調整装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者は上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、膜分離装置で分離された特定成分を混合するに際して、気液混合器としてインジェクタを適用することを考えた。インジェクタは、気体と液体との直接接触により気体を凝縮しつつ、気体の保有するエネルギーで混合液を昇圧して吐出することができる装置である。このようなインジェクタを直接接触型混合器として適用することにより、昇圧された混合液を得ることができるので、後段のポンプを不要とする、又はポンプ動力を削減することができる。
本発明はかかる知見に基づくものであり、具体的には以下の構成からなるものである。
【0015】
(1)本発明に係る多成分系液化ガスの成分調整装置は、多成分系液化ガスにおける特定成分を希薄化した特定成分希薄ガスを供給するための第一ラインと、多成分系液化ガスにおける特定成分を濃縮化した特定成分濃縮ガスを供給するための第二ラインとを備え、
前記第一ラインにおいて、多成分系液化ガスを昇圧する第一ポンプと、昇圧された多成分系液化ガスを気化する第一気化器と、気化されたガスから特定成分を分離する膜分離装置を有し、
前記第二ラインにおいて、前記膜分離装置で分離された特定成分が濃縮された濃縮ガスを前記多成分系液化ガスに混合するインジェクタと、該インジェクタで混合された混合液を気化する第二気化器とを有し、
前記膜分離装置で分離された特定成分が濃縮された濃縮ガスを前記インジェクタに供給する濃縮ガス供給ラインを備えたことを特徴とするものである。
【0016】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記第一ライン及び前記第二ラインは、多成分系液化ガスが流れる多成分系液化ガスラインが分岐したものであることを特徴とするものである。
【0017】
(3)また、多成分系ガスにおける特定成分を希薄化した特定成分希薄ガスを供給するための第一ラインと、多成分系液化ガスにおける特定成分を濃縮化した特定成分濃縮ガスを供給するための第二ラインとを備え、
前記第一ラインにおいて、前記第二ラインの多成分系液化ガスよりも高圧の多成分系ガスから特定成分を分離する膜分離装置を有し、
前記第二ラインにおいて、前記膜分離装置で分離された特定成分が濃縮された濃縮ガスを前記多成分系液化ガスに混合するインジェクタと、該インジェクタで混合された混合液を気化する第二気化器とを有し、
前記膜分離装置で分離された特定成分が濃縮された濃縮ガスを前記インジェクタに供給する濃縮ガス供給ラインを備えたことを特徴とするものである。
【0018】
(4)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記濃縮ガス供給ラインに設けられて前記インジェクタに供給する濃縮ガスの量を調整する制御弁と、前記濃縮ガス供給ラインに供給される前記濃縮ガスの圧力、温度、流量及び組成と、前記インジェクタに供給される多成分系液化ガスの圧力、温度、流量及び組成とをそれぞれ検出して、前記インジェクタに供給される濃縮ガスの全量が前記インジェクタで液化するように前記制御弁を制御する第1の制御装置を備えたことを特徴とするものである。
【0019】
(5)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記濃縮ガス供給ラインに設けられて前記インジェクタに供給する濃縮ガスの量を調整する制御弁と、前記インジェクタの下流側において前記インジェクタから排出される混合液の圧力、温度及び組成を検出して、該混合液の相状態を判定して、前記混合液が液相状態になるように前記制御弁を制御する第2の制御装置を備えたことを特徴とするものである。
【0020】
(6)また、上記(1)乃至(5)のいずれかに記載のものにおいて、前記多成分系液化ガスが液化天然ガスであり、前記第一ラインが発電用の低発熱量ガスを供給するラインであり、前記第二ラインが都市ガス用の高発熱量ガスを供給するラインであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明においては、第一ラインで昇圧して気化した多成分系ガスを膜分離装置に供給し、分離された濃縮ガスを昇圧されていない第二ラインの多成分系液化ガスに供給するようにしたことで、膜分離装置における供給側と透過側で差圧を十分とることができ、膜分離圧力差が十分に確保され、分離効率を向上することができる。また、濃縮ガスを第二ラインの多成分系液化ガスに混合する気液混合装置として、インジェクタを用いたことで、インジェクタ内部が負圧になることで、膜分離差圧をさらに大きくすることができ、この点でも、膜分離効率の向上が期待できる。
しかも、第一ラインによる第一ポンプでの昇圧は液状態での昇圧であり、流体の昇圧動力はガス状態より液状態の方がはるかに小さいため、ガス圧縮機を用いる場合に比べてプロセスの消費動力を低く抑えられる。
また、第二ラインの多成分系液化ガスに濃縮ガスを混合する気液混合器としてインジェクタを用いたことで、昇圧された混合液を得ることができるので、第二ラインにおいて後段のポンプ動力が不要又は削減できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の多成分系液化ガスの成分調整装置(以下、単に「成分調整装置」という場合あり)を、貯留槽に貯留されたLNGを液化燃料ガスとして送出するラインを例に挙げて説明する。
したがって、本実施の形態では、LNGが本発明の多成分系液化ガスに相当する。LNGはメタンを主成分とし、この他に重質成分としてエタン、プロパン、ブタン等が含まれている。よって、重質成分が本発明の特定成分に相当し、重質成分が希薄となった低発熱量ガスが本発明の特定成分希薄ガスに相当する。また、重質成分が濃縮された都市ガス用の高発熱量ガスが本発明の特定成分濃縮ガスに相当する。
そして、第一ラインは重質成分が希薄となった低発熱量ガスを発電所等へ供給するラインであり、第二ラインは重質成分が濃縮された都市ガス用の高発熱量ガスを供給するラインである。
【0024】
本実施の形態の多成分系液化ガスの成分調整装置1は、
図1に示すように、LNGタンク(図示なし)から送出されたLNG(圧力:0.1MPaG)が、LNG送出ポンプ3によって例えば1.0MPaGに昇圧されて送出されたLNGが流れる液化燃料ガスライン5が分岐した、低発熱量ガスを供給する第一ライン7と、重質成分が濃縮された都市ガス用の高発熱量ガスを供給する第二ライン9とを備えている。
そして、第一ライン7には、LNGを昇圧する第一ポンプ11と、昇圧されたLNGを気化する第一気化器13と、気化されたNGから重質成分を分離する膜分離装置15とを設けている。
【0025】
また、第二ライン9には、膜分離装置15で分離された重質成分が濃縮された濃縮ガスをLNGに混合するインジェクタ17と、インジェクタ17で混合された混合液を昇圧する第二ポンプ19と、昇圧された混合液を気化する第二気化器21とを設けている。
さらに、第一ライン7と第二ライン9との間において、膜分離装置15で分離された重質成分が濃縮された濃縮ガスをインジェクタ17に供給する濃縮ガス供給ライン23を設けている。
【0026】
またさらに、本実施の形態では、第二ポンプ19に供給される混合液に気相が存在しないことが好ましいことに鑑みて、濃縮ガス供給ライン23に制御弁25を設けると共に、インジェクタ17に供給される濃縮ガスがインジェクタ17で全量液化するように制御弁25を制御する第1の制御装置27を設けている。
なお、本実施の形態の例えば第一ポンプ11等の各機器類は、第1の制御装置27又は図示しない制御装置によって運転制御される。
以下、各機器を詳細に説明する。
【0027】
<第一ラインに設置される機器>
《第一ポンプ》
第一ポンプ11は、第一ライン7を流れるLNGを発電所等に向けて送出するために昇圧するポンプである。第一ポンプによってLNGは例えば7.0MPaGに昇圧される。
【0028】
《第一気化器》
第一気化器13は、第一ポンプ11から送出されるLNGを完全に気化させる装置である。気化器には、例えば海水を加熱媒体とするものが使用できるが、特にその形式は問われない。
【0029】
《膜分離装置》
本実施例では、LNGを構成する成分ガスのうち、エタン、プロパン、ブタン等の重質成分が透過しやすい膜を使用した場合を示す。
膜分離装置15は、第一気化器13で気化されたNGを、ガス分離膜を介することで、非透過側で得られるメタンリッチの低発熱量ガスと、透過側で得られるエタン、プロパン、ブタン等の重質成分が濃縮された濃縮ガスとに分離する。分離されたメタンリッチの低発熱量ガスは発電所等へ供給され、濃縮ガスは、濃縮ガス供給ライン23に送られる。この時の、圧力は例えば、1.0MPaGである。
【0030】
<第二ラインに設置される機器>
《インジェクタ》
インジェクタ17は、膜分離装置15で分離された重質成分が濃縮された濃縮ガスを第二ラインのLNGに接触させて濃縮ガスを凝縮させ、凝縮した濃縮液とLNGを混合液として昇圧して(例えば、1.0MPaG→3.0MPaG)後段に送出する機能を有している。
インジェクタ17の基本構成と作動原理を、
図2に基づいて説明する。
【0031】
インジェクタ17は、LNGが供給される筒状のLNG供給部33と、LNG供給部33を覆うように設けられ、濃縮ガスが供給される濃縮ガス供給部35と、LNGと濃縮ガスが混合される混合部37と、混合部37の下流側で縮径されたスロート部39と、スロート部39の下流側で拡径されたディフューザ部41とを備えている。
【0032】
上記のように構成されたインジェクタ17において、LNG供給部33にLNGを、濃縮ガス供給部35に濃縮ガスをそれぞれ供給すると、混合部37において濃縮ガスとLNGが接触して濃縮ガスが凝縮する。濃縮ガスの凝縮によってインジェクタ17の内部(混合部37)の圧力が低下することにより、LNGと濃縮ガスを吸引する作用が発生する。
【0033】
濃縮ガスが吸引される際に高速流となり、この運動エネルギーが、濃縮ガスが凝縮する際にLNGに受け渡され、LNG(混合液)を加速する。このLNG(混合液)がスロート部39を通過後に拡径されたディフューザ部41において流速が低下し、これによって圧力回復されて、LNG(混合液)は昇圧されて吐出される。
【0034】
なお、上述したインジェクタ17は、濃縮ガス供給部35がLNG供給部33を覆うように設けられているが、これに限定されるものではなく、供給されたLNGと濃縮ガスが互いに接触しながら同一方向に流出する構造となっていればよい。例えば、上述したものとは逆に、LNG供給部33が筒状の濃縮ガス供給部35を覆うように設けても良い。
【0035】
また、インジェクタ17の起動時に内部の流体を流出しやすくするために、スロート部39またはその上流側にドレン管43を設け、ドレン管43にインジェクタ17から流出する方向のみに流体を流すような開閉弁、例えば逆止弁45を設けるようにしてもよい。このようにすることで、インジェクタ17の起動を容易にする効果が得られる。
【0036】
本実施の形態では、インジェクタ17を気液混合器として機能させているが、気液混合器は圧損が小さいほうが望ましいので、インジェクタ17を並列に複数設置するのが好ましい。インジェクタ17を並列に複数設置することにより、気液混合器としての圧力損失を低減することができる。
【0037】
インジェクタ17においては、被混合液の過冷度(顕熱)が、混合ガスである濃縮ガスの凝縮潜熱を上回っている場合に、濃縮ガスが完全に液化する。本実施の形態ではLNG送出ポンプ3によって混合前の第二ライン9のLNGの過冷度を増加させているが、LNGが予め十分な過冷度を持っている場合はLNG送出ポンプ3を省略してもよい。
【0038】
《第二ポンプ》
第二ポンプ19は、混合液を昇圧して(例えば、3.0MPaG→8.0MPaG)都市ガスの需要者に向けて送出するためのポンプである。
なお、本例では、インジェクタ17による昇圧を補う補助ポンプとして第二ポンプ19を設けているが、インジェクタ17による昇圧で十分な圧力が得られる場合には第二ポンプ19を省略することができる。
【0039】
《第二気化器》
第二気化器21は混合液を気化するための装置であり、例えば第一気化器13と同様に海水を加熱媒体とするものが使用できるが、特にその形式は問わない。
【0040】
<濃縮ガス供給ラインに設置される機器>
《制御弁》
制御弁25は、濃縮ガス供給ライン23に設けられ、第1の制御装置27に制御されて、インジェクタ17に供給する濃縮ガスの量を調整するものである。
【0041】
<第1の制御装置>
第1の制御装置27は、制御弁25を制御して、インジェクタ17に供給される濃縮ガス量をインジェクタ17で全量が液化する量に調整するものであり、濃縮ガス供給ライン23における制御弁25の下流側及び第二ライン9におけるインジェクタ17の上流側のそれぞれに設置された圧力検出器(P)、温度検出器(T)、流量検出器(F)及び組成検出器(A)の検出値を入力して全量が液化する混合可能な濃縮ガスの最大混合可能量を演算する第1演算部29と、第1演算部29の演算結果に基づいてインジェクタ17に供給される濃縮ガス量が最大混合可能量以下になるように制御弁25を制御する第1制御部31とを備えている。
【0042】
第1演算部29は、インジェクタ17に流入するLNGと濃縮ガスそれぞれの圧力、温度、流量、組成を基に、LNGの過冷度および濃縮ガスの凝縮潜熱を求め、濃縮ガスの最大混合可能量を計算する。
なお、濃縮ガスの混合量は、混合液の熱量が都市ガスの規定する熱量範囲の上限を超えないように制御する。
【0043】
濃縮ガスを最大混合可能量混合したとしても混合液の熱量が都市ガスで要求される規定値よりも低い場合もあり得ることから、第二ライン9におけるインジェクタ17の下流に熱量調整装置を設けるようにしてもよい。
また、濃縮ガス供給ライン23の途中にバッファタンクを設けることで、濃縮ガスの分離量と混合量に差をつけられる緩衝作用を持たせるようにしてもよい。
【0044】
インジェクタ17によって混合後の流体(混合液)が昇圧されるので、混合液の昇圧に用いる液ポンプ(第二ポンプ19)の動力を低減し、場合によっては省略することが可能になる。
【0045】
なお、
図1においては、インジェクタ17の上流側に圧力検出器(P)を設置しているが、インジェクタ17における圧力変化を考慮する場合には、インジェクタ17の下流側にも圧力検出器(P)を設置して検出値を第1の制御装置27に入力するようにすればよい。もっとも、インジェクタ17の圧力変化幅が推定できる場合には、圧力検出器(P)を設けることなく、推定値を第1の制御装置27に入力してもよい。
【0046】
上記のように構成された本実施の形態の動作を、
図1に基づいて説明する。
LNGタンク(図示なし)から送出されたLNGは、その一部が第一ライン7に流れ、残りが第二ライン9に流れる。第一ライン7に流れたLNGは第一ポンプ11で例えば7.0MPaGに昇圧され、第一気化器13に供給されて全量が気化される。第一気化器13で気化されたNGは膜分離装置15に供給されて、メタンリッチの低発熱量ガスと、エタン、プロパン、ブタン等の重質成分が濃縮された濃縮ガスに分離される。そして、低発熱量ガスは発電所等へ供給され、濃縮ガスは濃縮ガス供給ライン23に送られる。
【0047】
濃縮ガス供給ライン23に送られた濃縮ガスは、制御弁25の開度に応じた量が第二ライン9のインジェクタ17に供給される。
第二ライン9では、LNGがインジェクタ17に供給されており、このLNGに濃縮ガス供給ライン23から送られた濃縮ガスが供給されて混合される。このとき、膜分離装置15に供給されるNGは第一ポンプ11でLNG送出ポンプ3の吐出圧より昇圧されており、他方、第二ライン9ではLNG送出ポンプ3の吐出圧(1.0MPaG)でインジェクタ17に供給され、インジェクタ17の内部では濃縮ガスの凝縮により負圧となることから、さらに圧力が低下する。このため、膜分離装置15の供給側と透過側で差圧を十分とることができ、膜分離効率を向上することができる。すなわち、第一ポンプ11による昇圧分+インジェクタ17による減圧分の圧力差を膜分離に利用でき、従来技術より大きな膜分離圧力差を確保できるようになっている。
そして、膜分離は圧力差が大きいほど物質の透過速度が上昇するため、膜面積あたりの重質成分回収量の増大や透過ガス量あたりの必要膜面積の縮小が可能になる。
【0048】
インジェクタ17でLNGに濃縮ガスが混合され、重質成分が増加して昇圧された混合液は第二ポンプ19でさらに昇圧され、第二気化器21で気化されて高発熱量ガスとして都市ガスユーザに供給される。
第二ポンプ19は液ポンプであり、混合液に気相が残留しないことが望ましく、そのため、本実施の形態では、前述したように第1の制御装置27によって制御弁25が制御される。
【0049】
以上のように、本実施の形態では、第一ライン7で昇圧して気化したNGを膜分離装置15に供給し、分離された濃縮ガスを昇圧されていない第二ライン9のLNGに供給するようにしたことで、膜分離装置15における供給側と透過側で差圧を十分とることができ、膜分離圧力差が十分に確保され、分離効率を向上することができる。
また、気液混合装置として、インジェクタ17を用いたことで、濃縮ガスは負圧によって吸引されるため、さらに膜分離圧力差が大きくなっていることから、この意味でも分離効率がさらに向上している。
しかも、第一ライン7による第一ポンプ11での昇圧は液状態での昇圧であり、流体の昇圧動力はガス状態より液状態の方がはるかに小さいため、圧縮機を用いる場合に比べてプロセスの消費動力を低く抑えられる。
また、第1の制御装置27によって、インジェクタ17に供給される濃縮ガスの全量が液化して混合液には気相が残留しないようにしているので、第二ポンプ19で効率的に送液することができる。
また、さらにインジェクタ17によって混合液が昇圧されるので、第二ポンプ19の動力を低減し、場合によっては省略することができる。
【0050】
上記の第1の制御装置27は、制御弁25の制御に関していわゆるフィードフォワード制御であったが、第1の制御装置27に代えて、
図3に示すように、フィードバック制御によって制御弁25の制御を行う第2の制御装置47を適用してもよい。
第2の制御装置47は、インジェクタ17の下流側に設けた圧力検出器(P)、温度検出器(T)及び組成検出器(A)の検出値を入力して混合液の相状態を判定する第2演算部49と、第2演算部49の演算結果に基づいて制御弁25を制御する第2制御部51とを備えている。第2制御部51は、第2演算部49の判定結果によって気液混相、あるいは気相状態になるおそれがある場合には、制御弁25を絞ってインジェクタ17に供給される濃縮ガス量を少なくする。
【0051】
また、制御弁25の制御に関しては、フィードフォワード、フィードバックの他に両者を組み合わせて制御を行うようにしてよい。
【0052】
本実施の形態による熱量調整の具体例について、
図4に基づいて概説する。なお、
図4は、
図1から各検出器と第1の制御装置27の図示を省略すると共に、多成分系液化ガスの成分調整装置1の各位置を流れる流体の流量、熱量及び含有成分量(物質量%)を付記している。
図4、
図5におけるC1はメタン、C2はエタン、C3はプロパン、C4はブタンであるが、いずれも参考値である。
【0053】
図4に示す例では、LNG送出ポンプ3によって送られてきた190.9t/hのLNG(熱量:44.2MJ/Nm
3、C1:90.0%,C2:6.0%,C3:3.0%,C4:1.0%)は、67.5t/hが第一ライン7に流れて、膜分離装置15によって分離され、50t/hの低発熱量ガス(熱量:43.4MJ/Nm
3、C1:91.5%,C2:5.5%,C3:2.4%,C4:0.6%)が発電所等へ供給される。膜分離装置15で分離された17.5t/hの濃縮ガス(熱量:46.7MJ/Nm
3、C1:85.6%,C2:7.4%,C3:4.8%,C4:2.2%)がインジェクタ17に供給され、混合液(熱量:44.5MJ/Nm
3、C1:89.4%,C2:6.2%,C3:3.2%,C4:1.2%)となって、第二ポンプ19で昇圧されて第二気化器21で気化され、さらに熱量調整のために熱量調整器53によって9.1t/hのLPG(熱量:102MJ/Nm
3、C3:90.0%,C4:10.0%)が添加され、150t/hの高発熱量ガス(熱量:46.0MJ/Nm
3、C1:87.2%,C2:6.0%,C3:5.4%,C4:1.4%)として都市ガス需要者に供給される。
【0054】
比較例として、膜分離装置15を用いないで、熱量調整器53のみによって熱量調整した場合の具体例を
図5に示す。この場合には、熱量調整器53によって11.1t/hのLPGの添加が必要であり、本実施の形態の9.1t/hに比較してLPGの添加量が増加する。
このことから、本実施の形態によれば、膜分離装置15を一つ追加するだけのシンプルな構成によってLPGの添加量を少なくできるという効果が得られていることが分かる。
なお、上記の例では、膜分離装置15を一つ用いているが、膜分離装置を複数並列に配置する構成も考えられ、そのようにすれば膜分離装置のメンテナンスの際、一基を停止しても他の装置を運転することでプロセスを停止せずにメンテナンスを行うことが可能となるという効果が得られる。
【0055】
なお、上記の実施の形態においては、第一ライン7及び第二ライン9共に多成分系液化ガスの例としてLNGが流れる液化燃料ガスライン5を例に挙げて説明した。
しかし、本発明においては、第一ラインを流れるものは必ずしも多成分系液化ガスである必要はなく、地中から取り出される天然ガスのような多成分系ガスであってもよい。
天然ガス井からの噴出ガスは、LNGが流れる第二ラインの液化燃料ガスよりも高圧のガスであることもあり、この場合は、第一ラインには第一ポンプや第一気化器は不要となる。
また、インジェクタで濃縮ガスが全量液化するための制御装置としては、本実施の形態で示した
図1又は
図3に記載のものを適用できる。
【0056】
また、上記の実施の形態においては、第一ライン7及び第二ライン9は、LNG(多成分系液化ガス)が流れる液化燃料ガスライン5(多成分系液化ガスライン)が分岐したものである場合について説明した。
しかし、本発明においては、第一ライン及び第二ラインは多成分系液化ガスラインが分岐したものである場合に限定されるものではなく、例えば第一ラインと第二ラインがそれぞれ別々のLNGタンクに接続されているような場合であってもよい。