(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
掌部と、延在方向の一端部が前記掌部に接続されていると共に、前記延在方向に交差する方向でかつ互いに接近する方向にそれぞれ移動して把持対象物を把持する把持動作可能な複数の指部とを有し、前記複数の指部の少なくとも1つにおける前記延在方向の他端部に近接センサ部がそれぞれ設けられ、前記近接センサ部が、前記延在方向における前記把持対象物および周辺環境の物体に対する前記近接センサ部の接近または開離を検出可能であると共に、前記延在方向における前記近接センサ部に対する前記把持対象物および前記物体の接近または開離を検出可能に配置されたエンドエフェクタと、
前記エンドエフェクタの前記掌部および前記複数の指部の各々を駆動させる駆動装置と、
前記近接センサ部を前記把持対象物に対向させて前記近接センサ部により前記把持対象物および前記物体を検出可能な状態で、前記掌部を前記把持対象物に接近移動させる移動制御部と、
前記把持対象物における前記掌部が前記把持対象物に接近する掌接近方向まわりでかつ前記複数の指部の全てが前記把持対象物と前記物体との間に位置して前記把持動作により前記把持対象物を把持可能な把持位置よりも、前記掌接近方向において前記把持対象物から離れた接近位置を決定する接近位置決定部と
を備え、
前記移動制御部は、
前記エンドエフェクタが前記接近位置まで移動するときに、前記近接センサ部により検出された検出結果に基づいて、前記掌部および前記複数の指部の各々に対して前記把持対象物および前記物体が接触する可能性がある場合には、前記掌部の前記把持対象物への接近移動を停止させ、
前記移動制御部は、
前記掌接近方向において、前記エンドエフェクタが前記接近位置よりも前記把持対象物から離れた速度変更位置まで移動したときに、前記速度変更位置よりも前記把持対象物から離れた位置と前記速度変更位置との間の前記エンドエフェクタの移動速度である第1移動速度から、前記第1移動速度よりも小さい第2移動速度に変更する、エンドエフェクタ装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一例を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向あるいは位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した本開示の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本開示の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。さらに、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは必ずしも合致していない。
【0010】
本開示の一実施形態のエンドエフェクタ10は、例えば、
図1に示すように、マニピュレータなどのエンドエフェクタ装置1の一部を構成する。エンドエフェクタ装置1は、一例として、エンドエフェクタ10と、エンドエフェクタ10に接続されたアーム20と、エンドエフェクタ10およびアーム20を駆動する駆動装置30と、駆動装置30を制御する制御装置100と、制御装置100に接続された操作部40と、駆動装置30および制御装置100に電力を供給する電源50とを備えている。制御装置100は、操作部40で受け付けられた操作に基づいて、駆動装置30に指令を出力することで、エンドエフェクタ10およびアーム20の駆動を制御する。アーム20は、エンドエフェクタ10の後述する掌部11に接続され、駆動装置30によって、エンドエフェクタ10の位置および姿勢を任意に変更可能に運動することができる。駆動装置30は、掌部11および各指部12を駆動させる図示しないモータと、このモータの回転を検出する図示しないエンコーダとを有し、エンコーダで検出された情報が制御装置100に出力されるように構成されている。
【0011】
エンドエフェクタ10は、
図2に示すように、掌部11と、掌部11に接続された複数の指部12(この実施形態では、2本の指部12)とを備えている。各指部12は、その延在方向の基端部121(
図4参照)が掌部11に接続されていると共に、その延在方向に交差する方向でかつ互いに接近する方向にそれぞれ移動して把持対象物60を把持する把持動作可能に構成されている。
【0012】
各指部12は、一例として、略矩形の板状を有し、板面同士が対向するように配置されて、駆動装置30によって、板面に直交する方向に移動可能に構成されている。すなわち、各指部12の相互に対向する面は、各指部12の延在方向に交差(例えば、直交)し、把持対象物60に対向する把持面123(
図4参照)を構成している。なお、各指部12を駆動するモータは、例えば、リニアモータで構成することができる。
【0013】
図3に示すように、各指部12は、その延在方向の先端部122(
図4参照)に設けられた近接センサ部13を有している。各近接センサ部13は、一例として、容量式近接センサで構成され、各指部12の延在方向における近接センサ部13の物体に対する接近および開離を検出可能であると共に、各指部12の延在方向における物体の近接センサ部13に対する接近および開離を検出可能に構成されている。
【0014】
詳しくは、各近接センサ部13は、
図5に示すように、各指部12の延在方向から見て、各指部12の略矩形状の先端面124の縁部に沿って配置された枠状の電極131を有している。この電極131は、把持面123に直交しかつ把持面123の中心を通る中心線CLに対して対称に配置されている。すなわち、この電極131により、各指部12の先端面124の縁部を覆う第1検出領域14と、この第1検出領域14の内側に配置された第2検出領域15とが形成される。第1検出領域14および第2検出領域15で、各指部12の先端面124の略全体を覆っている。
【0015】
なお、前記エンドエフェクタ10では、各指部12のその延在方向の長さは略同一であり、各指部12の先端面124は、各指部の延在方向に直交する同一平面上に配置されている。すなわち、各指部12の近接センサ部13は、各指部12の延在方向における把持対象物60に対する距離が略同一になるように配置されている。
【0016】
このように、前記エンドエフェクタ10によれば、各指部12が、その延在方向の先端部に近接センサ部13を有し、この近接センサ部13が、各指部12の延在方向から見て、各指部12の延在方向の先端部122の縁部を覆う枠状の第1検出領域14を有している。この近接センサ部13により、各指部12の延在方向において、各指部12の先端部122に対する物体(例えば、
図20に示す把持対象物60または周辺環境の物体70)の接近および開離を検出可能であると共に、物体に対する各指部の先端部122の接近および開離を検出可能なエンドエフェクタ10を実現できる。
【0017】
また、各指部12の延在方向の先端部122の縁部を覆う枠状の第1検出領域14を有しているので、各指部12の先端部122の縁部の任意の位置において、把持対象物60あるいは周辺環境の物体70の接近または開離を検出して、各指部12の延在方向における各指部12と物体との位置関係を高い精度で把握することができる。その結果、例えば、エンドエフェクタ10を把持対象物50に向かって接近させているときに、各指部12が把持対象物50に接触することなく接近することができるか否かを高い精度で検出することができる。
【0018】
また、近接センサ部13が、容量式近接センサで構成されている。これにより、簡単な構成で、各指部12の延在方向において、各指部12の先端部122に対する物体の接近および開離を検出できると共に、物体に対する各指部の先端部122の接近および開離を検出できる。
【0019】
また、近接センサ部13が、各指部12の延在方向から見て、各指部12の先端部122の縁部に配置された枠状の電極131を有している。これにより、簡単な構成で、各指部12の延在方向において、各指部12の先端部122に対する物体の接近および開離を検出できると共に、物体に対する各指部の先端部122の接近および開離を検出できる。
【0020】
また、前記エンドエフェクタ装置1によれば、前記エンドエフェクタ10によって、各指部12の延在方向において、各指部12の先端部122に対する物体の接近および開離を検出可能であると共に、物体に対する各指部12の先端部122の接近および開離を検出可能なエンドエフェクタ装置1を実現できる。
【0021】
なお、前記エンドエフェクタ10は、複数の指部12を備えていればよく、2本の指部12を備えている場合に限らない。例えば、
図6に示すように、前記エンドエフェクタ10は、3本の指部12を備えるように構成することもできる。
【0022】
各指部12の先端部122は、各指部12の延在方向から見て、略矩形状を有する場合に限らない。例えば、
図7に示すように、各指部12の先端部122は、各指部12の延在方向から見て、円弧形状を有するように構成することもできる。また、先端部122の端面124は、指部の延在方向に直交する平面で構成されている場合に限らない。例えば、
図8および
図9に示すように、先端部122の端面124は、各指部の延在方向の先端部122側に突出する湾曲面125で構成してもよいし、各指部の延在方向に交差する傾斜面126で構成してもよい。
【0023】
近接センサ部13は、複数の指部12の少なくとも1つに設けられていればよく、複数の指部12の各々に設けられている場合に限らない。
【0024】
また、近接センサ部13は、少なくとも第1検出領域14、すなわち、各指部の延在方向から見て、各指部12の先端部122の縁部を覆う枠状の検出領域を有していればよく、枠状の電極131を有する容量式近接センサで構成されている場合に限らない。例えば、
図10〜
図18に示すように、任意の形状の電極131を有する1以上の容量式センサで構成することもできる。
【0025】
図10の近接センサ部13は、各指部12の先端面124の略全体を覆う1つのベタ電極131で構成されている。
図11の近接センサ部13は、大きさの異なる2つの枠状の電極131で構成され、一方の電極131の内側に他方の電極131が配置されている。
図12および
図13の近接センサ部13は、同じ大きさの2つの直線状の電極131で構成されている。
図14および
図15の近接センサ部13は、同じ大きさの2つの略C字状の電極131で構成されている。
図16の近接センサ部13は、同じ大きさの2つの枠状の電極131で構成されている。
図17および
図18の近接センサ部13は、同じ大きさの2つのベタ電極131で構成されている。
図12、
図14および
図17の近接センサ部13は、各電極131が、各指部12の先端面124における中心線CLに直交する一対の辺の各々に沿って配置され、
図13、
図15および
図18の近接センサ部13は、各電極131が、各指部12の先端面124における中心線CLに平行な一対の辺の各々に沿って配置されている。
【0026】
なお、
図11〜
図18の近接センサ部13では、各電極131が、各指部12の延在方向から見て、把持面123に直交しかつ把持面123の中心を通る中心線CLに対して対称に配置されている。このように、近接センサ部13は、各指部12の寸法構成、あるいは、把持対象物60の形状および大きさなどに応じて、その構成を任意に変更することができるので、設計の自由度の高いエンドエフェクタ10を実現できる。
【0027】
また、近接センサ部13は、容量式近接センサに限らず、光学式、誘導式、磁気式および超音波式などの任意の形式の近接センサで構成できる。
【0028】
図5、
図7および
図11〜
図15の近接センサ部13は、ループ電極であり、近接センサ部13の寄生容量を減らして、検出感度を高めることができる。
図10および
図16〜
図18の近接センサ部13は、ベタ電極であり、電極面積を大きくして検出感度を高めることができる。
図5、
図7および
図10の近接センサ部13は、単一の電極を有する自己容量式の近接センサであり、電極面積を大きくして検出感度を高めることができる。また、
図11〜
図18の近接センサ部13は、複数の電極を有し、複数の自己容量式近接センサ、または、1以上の相互容量式近接センサで構成することができる。例えば、
図12に示す近接センサ部13を複数の自己容量式近接センサで構成した場合、検出領域14の面画素を増やすことができるので、検出領域14に把持対象物60または周辺環境の物体70のエッジ部分が位置しているときに、各指部12をいずれの方向に動かせば把持対象物60または周辺環境の物体70に対する接触を回避できるかを判定することができる。
【0029】
図19に示すように、各指部12の少なくとも1つが、第1の補助近接センサ部16および第2の補助近接センサ部17のいずれか1つまたは両方を有するように構成してもよい。第1の補助近接センサ部16は、把持面123に設けられて、把持面123に対する把持対象物60の接近および開離を検出可能に配置されている。この第1の補助近接センサ部16により、把持対象物50を把持するときに、各指部12の把持面123と把持対象物50との間の位置関係をより正確に把握することができる。また、第2の補助近接センサ部17は、各指部12の延在方向に交差する方向において把持面123とは反対側の面127に設けられて、把持面123とは反対側の面127に対する物体(例えば、周辺環境の障害物)の接近および開離を検出可能に配置されている。この第2の補助近接センサ部17により、例えば、各指部12と周辺環境の障害物との間の位置関係をより正確に把握することができる。
【0030】
なお、第1および第2の補助近接センサ部16、17は、近接センサ部13と同様に、容量式、光学式、誘導式、磁気式および超音波式などの任意の形式の近接センサで構成できる。また、第1および第2の補助近接センサ部16、17は、容量式で構成する場合、任意の形状の電極を有する1以上の容量式センサで構成することができる。第1および第2の補助近接センサ部16、17で検出された検出結果は、例えば、制御装置100に出力される。
【0031】
次に、前記エンドエフェクタ装置1の制御装置100について説明する。
【0032】
前記制御装置100は、演算等を行うCPU、エンドエフェクタ10の制御などに必要なプログラムあるいはデータ等を記憶しておくROMおよびRAMなどの記憶媒体と、エンドエフェクタ装置1の外部との間で信号の入出力を行うインターフェース部とで構成され、
図1に示すように、接近位置決定部110と、指配置判定部120と、指移動判定部130と、移動制御部140とを有している。なお、接近位置決定部110、指配置判定部120、指移動判定部130および移動制御部140の各部は、CPUが所定のプログラムを実行することにより実現される機能である。
【0033】
なお、以下、
図20〜
図24を参照して、制御装置100を構成する各部についての説明を行っているが、
図20〜
図24では、エンドエフェクタ装置1の各構成のうち、エンドエフェクタ10のみを示し、その他の構成については省略している。
【0034】
接近位置決定部110は、エンドエフェクタ10の掌部11が把持対象物60に接近する掌接近方向(すなわち、
図21の矢印A方向)における近接センサ部13の把持対象物60に対する位置であって、後述する把持位置P2(
図24参照)よりも掌接近方向Aにおいて把持対象物60から離れた接近位置P1(
図22参照)を決定する。接近位置P1は、エンドエフェクタ10が対象物60および周辺環境の物体70に接触しない位置であり、要求されるエンドエフェクタ10の接近位置P1から把持位置P2までの移動時間、各近接センサ部13の性能、各指部12の寸法構成、あるいは、把持対象物60の形状および大きさなどに応じて決定される。なお、掌接近方向は、一例として、エンドエフェクタ10の各指部12の延在方向と略一致している。
【0035】
また、接近位置決定部110は、掌接近方向Aにおいて、接近位置P1よりも把持対象物60から離れた速度変更位置P3を決定する。速度変更位置P3は、掌部11を把持対象物60に接近させて接近位置P1まで移動させるときに、移動制御部140によって、速度変更位置P3よりも把持対象物60から離れた位置P0と速度変更位置P3との間の掌部11の移動速度である第1移動速度から、第1移動速度よりも小さい第2移動速度に変更される位置である。この速度変更位置P3は、要求されるエンドエフェクタ10の接近位置P1から把持位置P2までの移動時間、駆動装置30の性能、各指部12の寸法構成、あるいは、把持対象物60の形状および大きさなどに応じて決定される。
【0036】
なお、接近位置P1、速度変更位置P3、第1移動速度および第2移動速度の各々は、ユーザの入力により決定してもよいし、接近位置決定部110が予め記憶されている複数の値の中から選択することにより決定してもよいし、接近位置決定部110がユーザの入力により決定あるいは接近位置決定部110により選択された値を近接センサ部13により検出された検出結果に基づいて補正することにより決定してもよい。また、第2移動速度は、例えば、接近位置P1でエンドエフェクタ10が停止可能な範囲で、要求されるエンドエフェクタ10の接近位置P1から把持位置P2までの移動時間に応じて決定される。
【0037】
指配置判定部120は、エンドエフェクタ10で把持対象物60を把持するときに、近接センサ部13により検出された検出結果に基づいて、把持対象物60における掌部11が把持対象物60に接近する方向まわりでかつ複数の指部12の全てが把持対象物60と周辺環境の物体70との間の空間80に位置する把持位置P2(
図24参照)に、エンドエフェクタ10を物体70に接触することなく配置可能か否かの配置判定を行う。配置判定は、各指部12に対して、一例として、接近位置P1で行われる。なお、把持位置P2は、各指部12を把持動作させることで把持対象物60を把持可能な位置であり、例えば、エンドエフェクタ10の各指部12の寸法構成、あるいは、把持対象物60の大きさなどに基づいて予め決定される。
【0038】
例えば、指配置判定部120は、予め入力された把持対象物60の形状および大きさなどの情報から、掌接近方向Aにおける決定された接近位置P1から把持対象物60までの距離を算出する。そして、指配置判定部120は、各指部12の寸法構成の情報と、算出された距離と、各指部12の近接センサ部13によって検出された検出結果とに基づいて、掌接近方向Aに直交する方向における各指部12と、把持対象物60および周辺環境の物体70との間の位置関係を把握する。これにより、指配置判定部120は、把持対象物60と周辺環境の物体70との間の空間80に、各指部12を把持対象物60および周辺環境の物体70に接触することなく挿入可能か否かを判定する。この判定は、例えば、エンドエフェクタ10を接近位置P1に移動させる前、および、エンドエフェクタ10を接近位置P1に移動させた後、把持位置P2に移動させる前に行われる。
【0039】
また、指配置判定部120は、配置判定において、把持対象物60および周辺環境の物体70に接触することなく複数の指部12の各々を把持位置P2に配置不可能であるとする配置不可判定が複数の指部12の一部に対してなされた場合、移動制御部140によって後述する第1移動が行われた後、第1移動前に配置可判定がなされていた指部12が、第1移動後に把持対象物60または周辺環境の物体70に接触することなく把持位置P2に配置可能か否かの第1再配置判定を行う。第1再配置判定は、配置判定と同様の方法で行われる。
【0040】
第1再配置判定において、第1移動前に配置可判定がなされていた指部12が、第1移動後に把持位置P2に配置可能であるとする再配置可判定がなされた場合、指配置判定部120は、第1移動前に配置不可判定がなされていた指部12が、第1移動後に把持対象物60または周辺環境の物体70に接触することなく把持位置P2に配置可能か否かの第2再配置判定を行う。第2再配置判定は、配置判定と同様の方法で行われる。
【0041】
なお、指配置判定部120は、例えば、接近位置P1において、移動制御部140により各指部12の移動が行われる毎に、配置判定を行う。
【0042】
指移動判定部130は、指配置判定部120により行われた配置判定または第2再配置判定において配置不可判定がなされた場合に、複数の指部12の把持面123間に把持対象物60を配置できるように複数の指部12の各々を各指部12の延在方向に交差する方向に移動させることが可能か否かの移動判定を行う。この移動判定において、複数の指部12の把持面123間に把持対象物60を配置できるように複数の指部12の各々を各指部12の延在方向に交差する方向に移動させることができないとする移動不可判定がなされた場合、指移動判定部130は、把持対象物60を把持不可能であると判定する。
【0043】
なお、この実施形態では、
図21に示すように、複数の指部12の各々を把持方向B1(すなわち、各指部12の延在方向に交差する方向でかつ相互に接近する方向)に互いに接近させて閉じた状態で、エンドエフェクタ10を接近位置P1まで移動させるように構成されている。このため、移動制御部140は、配置判定において配置不可判定がなされた場合、複数の指部12の各々が相互に開離する方向を複数の指部12の移動方向として決定し、決定された方向に沿って複数の指部12の各々を段階的に移動させる。すなわち、配置可判定がなされることなく、複数の指部12が移動制御部140により決定された方向に移動できなくなった場合に、移動不可判定がなされる。
【0044】
移動制御部140は、接近位置決定部110、指配置判定部120および指移動判定部130で行われた判定の結果に基づいて駆動装置30を制御して、掌部11および各指部12を駆動させる。
【0045】
例えば、エンドエフェクタ10の接近位置P1への移動処理(以下、第1アプローチ処理という。)において、移動制御部140は、次のように掌部11および各指部を駆動させる。
【0046】
移動制御部140は、掌接近方向Aにおいて、接近位置P1よりも把持対象物60から離れた位置(例えば、
図20および
図21に示す位置P0)から、把持対象物60にエンドエフェクタ10を移動させる場合、近接センサ部13により検出された検出結果に基づいて、エンドエフェクタ10が接近位置P1まで移動したか否かを判定し、エンドエフェクタ10が接近位置P1まで移動したと判定された場合、エンドエフェクタ10の移動を停止させる。このとき、
図21に示すように、複数の指部12の各々を把持方向B1に互いに接近させて閉じた状態で、エンドエフェクタ10を接近位置P1まで移動させる。なお、エンドエフェクタ10が接近位置P1まで移動したか否かについては、近接センサ部13により検出された掌接近方向Aにおける把持対象物60までの距離に基づいて決定される。
【0047】
移動制御部140は、エンドエフェクタ10を接近位置P1に移動させる前に、指配置判定部120によって、掌接近方向Aにおけるエンドエフェクタ10に対する把持対象物60の位置が把握できないと判定された場合、掌接近方向Aにおけるエンドエフェクタ10に対する把持対象物60の位置が把握できると判定されるまで、掌部11を掌接近方向Aに交差(例えば、直交)する方向に移動させる。
【0048】
移動制御部140は、掌接近方向Aにおいて、掌部11を把持対象物60に向かって接近移動させてエンドエフェクタ10を接近位置P1まで移動させるときに、近接センサ部13により検出された検出結果に基づいて、掌部11および各指部12に対して把持対象物60および周辺環境の物体70が接触する可能性があるか否かを判定する。掌部11および各指部12に対して把持対象物60および周辺環境の物体70が接触する可能性があると判定された場合、移動制御部140は、掌接近方向Aにおける掌部11の把持対象物60への接近移動を停止させる。また、移動制御部140は、近接センサ部13により検出された検出結果に基づいて、エンドエフェクタ10が接近位置P1よりも把持対象物60から離れた速度変更位置P3(
図21参照)まで移動したか否かを判定し、エンドエフェクタ10が速度変更位置P3まで移動したと判定された場合、速度変更位置P3よりも把持対象物60から離れた位置P0(
図21に示す)と速度変更位置P3との間のエンドエフェクタ10の移動速度である第1移動速度から、第1移動速度よりも小さい第2移動速度に変更する。
【0049】
また、例えば、エンドエフェクタ10の把持位置P2への移動処理(以下、第2アプローチ処理という。)において、移動制御部140は、次のように掌部11および各指部を駆動させる。第2アプローチ処理は、第1アプローチ処理の終了後に行われる。
【0050】
移動制御部140は、配置判定または第2再配置判定において配置可判定がなされた場合、駆動装置30を制御して、掌部11を掌接近方向Aにおいて把持対象物60に接近移動させつつ、把持対象物60と周辺環境の物体70との間の空間80に、各指部12を把持対象物60および周辺環境の物体70に接触することなく挿入して、エンドエフェクタ10を把持位置P2に移動させる。
【0051】
移動制御部140は、配置判定において全てまたは一部の指部12に対して配置不可判定がなされた場合、駆動装置30を制御して、複数の指部12の全てを各指部12の延在方向に交差(例えば、直交)する方向に移動させる第1移動を行う。この実施形態では、第1移動は、各指部12の延在方向に交差する方向において、各指部12を相互に離れる方向B2に移動させて開く。
【0052】
移動制御部140は、第1再配置判定において配置不可判定がなされた場合、第1再配置判定が行われる前に配置不可判定された指部12が、指部12の延在方向に交差する方向において把持対象物60から離れるように(すなわち、第1再配置判定が行われる前に配置不可判定された指部12が、第1移動において移動した方向B2と同じ方向に)、掌部11を掌接近方向Aに交差する方向に移動させる第2移動を行う。
【0053】
なお、エンドエフェクタ10が接近位置P1、把持位置P2および速度変更位置P3に到達したか否かは、例えば、複数の近接センサ部13のうち、掌接近方向Aにおいて最も把持対象物60に近い近接センサ部13により検出された検出結果(すなわち、各近接センサ部13から把持対象物60までの距離)に基づいて判断する。この実施形態では、各指部12の近接センサ部13は、各指部12の延在方向における把持対象物60に対する距離が略同一になるように配置されているため、エンドエフェクタ10が各位置P1、P2、P3に到達したか否かの判断に、いずれの近接センサ部13を用いても構わない。
【0054】
また、エンドエフェクタ10が把持位置P2に到達したか否かの判断については、第1の補助近接センサ部16を用いることができる。例えば、第1の補助近接センサ部16が把持対象物60を認識したときに、移動制御部140は、エンドエフェクタ10が把持位置P2に到達したと判定する。
【0055】
続いて、
図25〜
図27を参照して、第1アプローチ処理および第2アプローチ処理について説明する。なお、以下に説明するこれらの処理は、制御装置100が所定のプログラムを実行することで実施される。また、第1アプローチ処理および第2アプローチ処理において、各指部12の互いに接近または開離させる方向B1、B2における移動量は、微小な量(例えば、1mm)であるとする。
【0056】
(第1アプローチ処理)
図25に示すように、第1アプローチ処理が開始されると、接近位置決定部110が、接近位置P1および速度変更位置P3を決定すると共に、第1移動速度および第2移動速度を併せて決定する(ステップS1)。
【0057】
接近位置P1および速度変更位置P3が決定されると、移動制御部140は、エンドエフェクタ10の複数の指部12の各々を把持方向B1に互いに接近させて閉じて(ステップS2)、近接センサ部13による検出を開始する。近接センサ部13による検出が開始されると、指配置判定部120が、近接センサ部13により検出された検出結果に基づいて、掌接近方向Aにおける掌部11に対する把持対象物60の位置が把握できるか否かの判定を行う(ステップS3)。
【0058】
掌接近方向Aにおけるエンドエフェクタ10に対する把持対象物60の位置が把握できないと判定された場合、移動制御部140は、掌部11を掌接近方向Aに交差する方向に移動させ(ステップS4)、掌接近方向Aにおけるエンドエフェクタ10に対する把持対象物60の位置が把握できると判定されるまで、ステップS3およびS4を繰り返す。
【0059】
掌接近方向Aにおける掌部11に対する把持対象物60の位置が把握できると判定された場合、移動制御部140は、掌接近方向Aにおいて、掌部11を把持対象物60に接近させてエンドエフェクタ10の接近位置P1への移動を開始させる(ステップS5)。
【0060】
エンドエフェクタ10の接近位置P1への移動が開始されると、移動制御部140は、まず、近接センサ部13により検出された検出結果に基づいて、掌部11および各指部12に対して把持対象物60および周辺環境の物体70が接触する可能性があるか否かを判定しつつ、エンドエフェクタ10が速度変更位置P3に到達したか否かを判定する(ステップS6)。このステップS6は、エンドエフェクタ10が速度変更位置P3に到達するまで繰り返される。なお、掌部11および各指部12に対して把持対象物60および周辺環境の物体70が接触する可能性があると判定された場合、移動制御部140は、掌接近方向Aにおける掌部11の把持対象物60への接近移動を停止させる。
【0061】
エンドエフェクタ10が速度変更位置P3に到達したと判定されると、移動制御部140は、エンドエフェクタ10の移動速度を第1移動速度から、第1移動速度よりも小さい第2移動速度に変更する(ステップS7)。
【0062】
エンドエフェクタ10の移動速度が第1移動速度から第2移動速度に変更されると、移動制御部140は、近接センサ部13により検出された検出結果に基づいて、エンドエフェクタ10が接近位置P1に到達したか否かを判定する(ステップS8)。このステップS8は、エンドエフェクタ10が接近位置P1に到達するまで繰り返される。
【0063】
エンドエフェクタ10が接近位置P1に到達したと判定されると、移動制御部140は、エンドエフェクタ10の移動を停止させ(ステップS9)、第1アプローチ処理が終了する。
【0064】
このように、前記エンドエフェクタ装置1では、複数の指部12の各々に近接センサ部13が設けられたエンドエフェクタ10と、エンドエフェクタ10の掌部11および各指部12を駆動させる駆動装置30と、掌部11を把持対象物60に接近させる移動制御部140と、把持対象物60における掌接近方向Aまわりでかつ複数の指部12の全てが把持対象物60と周辺環境の物体70との間に位置して把持動作により把持対象物60を把持可能な把持位置P2よりも、掌接近方向Aにおいて把持対象物60から離れた接近位置P1を決定する接近位置決定部110とを備え、移動制御部140が、近接センサ部13により検出された検出結果に基づいて、掌部11および各指部12に対して把持対象物60および周辺環境の物体70が接触する可能性がある場合には、掌部11の把持対象物60への接近移動を停止させる。このような構成により、把持対象物60および周辺環境の物体70に接触することなく、エンドエフェクタ10を接近位置に移動させることが可能なエンドエフェクタ装置1を実現できる。
【0065】
また、移動制御部140は、各指部12をその延在方向に交差する方向において互いに接近させて閉じた状態で、エンドエフェクタ10を接近位置P1まで移動させる。このような構成により、各指部12の近接センサ部13をアレイとして用いることができるので、掌接近方向Aのエンドエフェクタ10に対する把持対象物60および周辺環境の物体70の接近または開離をより正確に検出することができる。
【0066】
また、移動制御部140は、エンドエフェクタ10を把持対象物60に接近させる前に、近接センサ部13により検出された検出結果に基づいて、掌接近方向Aにおけるエンドエフェクタ10に対する把持対象物60の位置が把握できるか否かの判定を行う。掌接近方向Aにおけるエンドエフェクタ10に対する把持対象物60の位置が把握できないと判定した場合、移動制御部140は、掌接近方向Aにおけるエンドエフェクタ10に対する把持対象物60の位置が把握できると判定されるまで、エンドエフェクタ10を掌接近方向Aに交差する方向Bに移動させる。このような構成により、エンドエフェクタ10を把持対象物60に向かってより正確に移動させることができる。
【0067】
また、移動制御部140は、エンドエフェクタ10を把持対象物60に接近させて接近位置P1まで移動させるときに、掌接近方向Aにおいて、エンドエフェクタ10が接近位置P1よりも把持対象物60から離れた速度変更位置P3まで移動したときに、速度変更位置P3よりも把持対象物60から離れた位置P0と速度変更位置P3との間のエンドエフェクタ10の移動速度である第1移動速度から、第1移動速度よりも小さい第2移動速度に変更する。このような構成により、エンドエフェクタ10を接近位置P1まで移動させるときにおけるエンドエフェクタ10の把持対象物60に対する意図しない接触をより確実に回避することができる。
【0068】
なお、第1アプローチ処理において、ステップS2〜ステップS7は、必要に応じて、省略することができる。すなわち、エンドエフェクタ10を接近位置P1に移動させるときに、各指部12を閉じなくてもよいし、掌接近方向Aにおける掌部11に対する把持対象物60の位置が把握できるか否かの判定を行わなくてもよいし、エンドエフェクタ10の移動速度を変更しなくてもよい。また、ステップS2〜ステップS7のいずれか1つまたは複数を省略してもよいし、ステップS2〜ステップS7の全てを省略してもよい。
【0069】
例えば、第1アプローチ処理のステップS3を省略する場合、画像センサを用いて掌部11に対する把持対象物60の位置を把握するように構成することができる。
【0070】
また、近接センサ部13は、複数の指部12の少なくとも1つに設けられていればよく、複数の指部12の各々に設けられている場合に限らない。
【0071】
また、速度変更位置P3は、1つに限らず、2つ以上設けてもよい。すなわち、エンドエフェクタ10を接近位置P1まで移動させるときに、2箇所以上でエンドエフェクタ10の速度変更を行ってもよい。さらに、速度変更位置P3は、接近位置P1と同じ位置(すなわち、P1=P3)であっても構わない。この場合、第1アプローチ処理において、ステップS6およびステップS7が省略され、移動制御部140が、第2アプローチ処理において、第1アプローチ処理におけるエンドエフェクタ10の移動速度と同じか遅い速度で、エンドエフェクタ10を移動させる。
【0072】
また、ステップS3において、掌接近方向Aにおけるエンドエフェクタ10に対する把持対象物60の位置が把握できないと判定された場合、掌接近方向Aにおけるエンドエフェクタ10に対する把持対象物60の位置が把握できると判定されるまで、ステップS6を繰り返すのではなく、その時点で、第1アプローチ処理を終了するように構成してもよい。
【0073】
(第2アプローチ処理)
図26および
図27に示すように、第2アプローチ処理では、移動制御部140が、入力された把持対象物60の情報に基づいて、エンドエフェクタ10の複数の指部12の各々を互いに離れる方向B2に移動させて開いた後(ステップS11)、指配置判定部120が、全ての指部12が把持位置P2に配置可能か否かの配置判定を行う(ステップS12)。この配置判定において、全ての指部12に対して配置不可判定がなされた場合の処理を
図26に示し、複数の指部12の一部に対して配置不可判定がなされた場合の処理を
図27に示す。
【0074】
なお、例えば、第1アプローチ処理が各指部12を閉じずに開いたままで行われた場合、移動制御部140は、ステップS11で、各指部12を互いに接近する把持方向B1に段階的に移動させて閉じるように構成される。
【0075】
図26に示すように、ステップS12の配置判定において、全ての指部12に対して配置可判定がなされた場合、移動制御部140は、エンドエフェクタ10を把持位置P2に移動させて(ステップS13)、第2アプローチ処理が終了する。
【0076】
一方、ステップS12の配置判定において、全ての指部12に対して配置不可判定がなされた場合、指移動判定部130は、各指部12を互いに離れる方向に移動させて開くことができるか否かの移動判定を行う(ステップS14)。この移動判定において、各指部12を互いに離れる方向B2に移動させて開くことができるとする移動可判定がなされた場合、移動制御部140が、各指部12を互いに離れる方向B2に移動させて開き(ステップS15)、ステップS12に戻って、再び指配置判定部120によって配置判定が行われる。
【0077】
移動判定により、各指部12を互いに離れる方向B2に移動させて開くことができないとする移動不可判定がなされた場合、指移動判定部130は、把持対象物60を把持不可能であると判定して(ステップS16)、第2アプローチ処理が終了する。
【0078】
図27に示すように、ステップS12の配置判定において、一部の指部12に対して配置不可判定がなされた場合、指移動判定部130が、各指部12を互いに離れる方向に移動させて開くことができるか否かの移動判定を行う(ステップS21)。この移動判定において移動可判定がなされた場合、移動制御部140が、各指部12を互いに離れる方向B2に移動させて開く第1移動を行う(ステップS22)。
【0079】
第1移動が行われると、指配置判定部120は、第1移動前に配置可判定がなされていた指部12が、第1移動後に把持対象物60または周辺環境の物体70に接触することなく把持位置P2に配置可能か否かの第1再配置判定を行う(ステップS23)。この第1再配置判定において配置可判定がなされた場合、指配置判定部120は、第1移動前に配置不可判定がなされていた指部12が、第1移動後に把持対象物60または周辺環境の物体70に接触することなく把持位置P2に配置可能か否かの第2再配置判定を行う(ステップS24)。
【0080】
第2再配置判定において配置可判定がなされた場合、あるいは、ステップS12およびステップS24において、全ての指部12に対して配置可判定がなされた場合、移動制御部140は、エンドエフェクタ10を把持位置P2に移動させて(ステップS13)、第2アプローチ処理が終了する。
【0081】
ステップS21の移動判定において移動不可判定がなされた場合、指移動判定部130は、把持対象物60を把持不可能であると判定して(ステップS16)、第2アプローチ処理が終了する。
【0082】
ステップS23の第1再配置判定において配置不可判定がなされた場合、移動制御部140は、第1再配置判定が行われる前に配置不可判定された指部12が、指部12の延在方向に交差する方向において把持対象物60から離れるように、掌部11を掌接近方向Aに交差する方向に移動させる第2移動を行う(ステップS25)。第2移動が行われると、ステップS12に戻って、再び指配置判定部120によって配置判定が行われる。
【0083】
ステップS24の第2再配置判定において配置不可判定がなされた場合、ステップS21に戻って、再び指移動判定部130によって移動判定が行われる。
【0084】
なお、ステップS11において、各指部12を互いに接近する把持方向B1に段階的に移動させて閉じる場合、ステップS25では、第1再配置判定が行われる前に配置不可判定された指部12が、指部12の延在方向に交差する方向において把持対象物60に接近するように第2移動が行われる。
【0085】
このように、前記エンドエフェクタ装置1では、複数の指部12の各々に近接センサ部13が設けられたエンドエフェクタ10と、エンドエフェクタ10の掌部11および各指部12を駆動させる駆動装置30と、複数の指部12の各々を把持対象物60および周辺環境の物体70に接触することなく把持位置P2に配置可能か否かの配置判定を行う指配置判定部120と、配置判定において配置可判定がなされたときにエンドエフェクタ10を把持位置P2に移動させ、配置判定において配置不可判定がなされた場合、各指部12をその延在方向に交差する方向に移動させる移動制御部140とを備えている。このような構成により、把持対象物60および周辺環境の物体に接触することなく、把持対象物60を把持可能な位置(すなわち、把持位置P2)に配置可能なエンドエフェクタ装置1を実現できる。
【0086】
また、指配置判定部120は、配置判定において、配置不可判定が複数の指部12の一部に対してなされた場合に複数の指部12の全てをその延在方向に交差する方向に移動させる第1移動が、移動制御部140によって行われた場合に、第1移動前に配置可判定がなされていた指部12が、第1移動後に把持対象物60または周辺環境の物体70に接触することなく把持位置P2に配置可能か否かの再配置判定を行う。また、移動制御部140は、再配置判定において、配置不可判定がなされた場合、再配置判定が行われる前に配置不可判定された指部12がその延在方向に交差する方向において把持対象物60に対して接近または開離するように、掌部11を掌接近方向Aに交差する方向に移動させる第2移動を行う。このような構成により、エンドエフェクタ10を把持位置P2に移動させるときのアーム20の駆動量を低減することができる。
【0087】
また、配置判定において配置不可判定がなされた場合に、複数の指部12間に把持対象物60を配置できるように、複数の指部12の各々をその延在方向に交差する方向に移動させることが可能か否かの移動判定を行う指移動判定部130をさらに備える。この指移動判定部130は、移動判定により移動不可判定がなされた場合、把持対象物60を把持不可能であると判定する。このような構成により、把持対象物60を把持可能か否かについて正確かつ迅速に判定することができる。
【0088】
なお、第2アプローチ処理において、ステップS16およびステップS25については、省略することができる。すなわち、指移動判定部130を省略してもよいし、また、第1再配置判定において配置不可判定がなされた場合に第2移動を行わないようにしてもよい。
【0089】
また、ステップS12で配置判定が行われて、一部の指部12に対して配置不可判定がなされた場合、ステップS22で第1移動を行わずに、配置可判定がされた指部12が把持対象物60に接近するように掌部11を掌接近方向Aに交差する方向に移動させるようにしてもよい。このように構成することで、第2アプローチ処理を簡略して、制御装置100の負荷を軽減することができる。
【0090】
以上、図面を参照して本開示における種々の実施形態を詳細に説明したが、最後に、本開示の種々の態様について説明する。なお、以下の説明では、一例として、参照符号も添えて記載する。
【0091】
本開示の第1態様のエンドエフェクタ装置1は、
掌部11と、延在方向の一端部121が前記掌部11に接続されていると共に、前記延在方向に交差する方向でかつ互いに接近する方向にそれぞれ移動して把持対象物60を把持する把持動作可能な複数の指部12とを有し、前記複数の指部12の少なくとも1つにおける前記延在方向の他端部122に近接センサ部13がそれぞれ設けられ、前記近接センサ部13が、前記延在方向における前記把持対象物60および周辺環境の物体70に対する前記近接センサ部13の接近または開離を検出可能であると共に、前記延在方向における前記近接センサ部13に対する前記把持対象物60および前記物体70の接近または開離を検出可能に配置されたエンドエフェクタ10と、
前記エンドエフェクタ10の前記掌部11および前記複数の指部12の各々を駆動させる駆動装置30と、
前記近接センサ部13を前記把持対象物60に対向させて前記近接センサ部13により把持対象物60および周辺環境の物体70を検出可能な状態で、前記掌部11を前記把持対象物60に接近させる移動制御部140と、
前記把持対象物60における前記掌部11が前記把持対象物60に接近する掌接近方向Aまわりでかつ前記複数の指部12の全てが前記把持対象物60と前記物体70との間に位置して前記把持動作により前記把持対象物60を把持可能な把持位置P2よりも、前記掌接近方向Aにおいて前記把持対象物60から離れた接近位置P1を決定する接近位置決定部110と
を備え、
前記移動制御部140は、
前記エンドエフェクタ10が前記接近位置P1まで移動するときに、前記近接センサ部13により検出された検出結果に基づいて、前記掌部11および前記複数の指部12の各々に対して前記把持対象物60および前記物体70が接触する可能性がある場合には、前記掌部11の前記把持対象物60への接近移動を停止させる。
【0092】
第1態様のエンドエフェクタ装置1によれば、把持対象物60および周辺環境の物体70に接触することなく、エンドエフェクタ10を接近位置に移動させることが可能なエンドエフェクタ装置1を実現できる。
【0093】
本開示の第2態様のエンドエフェクタ装置1は、
前記エンドエフェクタ10は、
前記複数の指部12の各々に前記近接センサ部13がそれぞれ設けられており、
前記移動制御部140は、
前記複数の指部12の各々を前記延在方向に交差する方向において互いに接近させて閉じた状態で、前記エンドエフェクタ10を前記接近位置P1まで移動させる。
【0094】
第2態様のエンドエフェクタ装置1によれば、各指部12の近接センサ部13をアレイとして用いることができるので、掌接近方向Aのエンドエフェクタ10に対する把持対象物60および周辺環境の物体70の接近または開離をより正確に検出することができる。
【0095】
本開示の第3態様のエンドエフェクタ装置1は、
前記移動制御部140は、
前記エンドエフェクタ10を前記接近位置P1に移動させる前に、前記近接センサ部13により検出された検出結果に基づいて、前記掌接近方向Aにおける前記エンドエフェクタ10に対する前記把持対象物60の位置が把握できるか否かの判定を行う。
【0096】
第3態様のエンドエフェクタ装置1によれば、エンドエフェクタ10を把持対象物60に向かってより正確に移動させることができる。
【0097】
本開示の第4態様のエンドエフェクタ装置1は、
前記移動制御部140は、
前記掌接近方向Aにおける前記エンドエフェクタ10に対する前記把持対象物60の位置が把握できないと判定した場合、前記掌接近方向Aにおける前記エンドエフェクタ10に対する前記把持対象物60の位置が把握できると判定されるまで、前記エンドエフェクタ10を前記掌接近方向Aに交差する方向に移動させる。
【0098】
第4態様のエンドエフェクタ装置1によれば、エンドエフェクタ10を把持対象物60に向かってより正確に移動させることができる。
【0099】
本開示の第5態様のエンドエフェクタ装置1は、
前記移動制御部140は、
前記近接センサ部13により検出された検出結果に基づいて、前記エンドエフェクタ10が前記接近位置P1に移動したか否かを判定する。
【0100】
第5態様のエンドエフェクタ装置1によれば、エンコーダなどの機器を設けることなく、エンドエフェクタ10が接近位置P1に移動したか否かを判定することができる。
【0101】
本開示の第6態様のエンドエフェクタ装置1は、
前記移動制御部140は、
前記掌接近方向Aにおいて、前記エンドエフェクタ10が前記接近位置P1よりも前記把持対象物60から離れた速度変更位置P3まで移動したときに、前記速度変更位置P3よりも前記把持対象物60から離れた位置P0と前記速度変更位置P3との間の前記エンドエフェクタ10の移動速度である第1移動速度から、前記第1移動速度よりも小さい第2移動速度に変更する。
【0102】
第6態様のエンドエフェクタ装置1によれば、エンドエフェクタ10を接近位置P1まで移動させるときにおけるエンドエフェクタ10の把持対象物60に対する意図しない接触をより確実に回避することができる。
【0103】
なお、前記様々な実施形態または変形例のうちの任意の実施形態または変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせまたは実施例同士の組み合わせまたは実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態または実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。