(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6947275
(24)【登録日】2021年9月21日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】燃料電池船
(51)【国際特許分類】
B63B 19/28 20060101AFI20210930BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20210930BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20210930BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20210930BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20210930BHJP
H01M 8/04228 20160101ALI20210930BHJP
H01M 8/04303 20160101ALI20210930BHJP
B63H 21/17 20060101ALI20210930BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20210930BHJP
B63J 99/00 20090101ALI20210930BHJP
B63H 20/00 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
B63B19/28
H01M8/00 A
H01M8/00 Z
H01M8/04746
H01M8/04313
H01M8/04858
H01M8/04228
H01M8/04303
B63H21/17
B63B35/00 T
B63J99/00 A
B63H20/00 610
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-181151(P2020-181151)
(22)【出願日】2020年10月29日
(62)【分割の表示】特願2016-235932(P2016-235932)の分割
【原出願日】2016年12月5日
(65)【公開番号】特開2021-14263(P2021-14263A)
(43)【公開日】2021年2月12日
【審査請求日】2020年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】▲さこ▼ 孝太
【審査官】
伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−196408(JP,A)
【文献】
特開2008−234546(JP,A)
【文献】
特開2014−172481(JP,A)
【文献】
特開2007−296986(JP,A)
【文献】
特開昭56−120477(JP,A)
【文献】
特開2013−224103(JP,A)
【文献】
特開2016−132376(JP,A)
【文献】
特開2006−151121(JP,A)
【文献】
特開2011−119095(JP,A)
【文献】
特開2004−191164(JP,A)
【文献】
特開2010−108611(JP,A)
【文献】
米国特許第05469721(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 19/28
B63B 19/12
B63H 21/17
B63H 20/00
B63B 35/00
B63J 99/00
H01M 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動船外機と、前記電動船外機に電力を供給するための燃料電池ユニットと、前記燃料電池ユニットに水素燃料を供給するための水素燃料タンクと、前記燃料電池ユニットの補助電源の二次電池と、前記二次電池を収容する収納部と、冷却用ファンまたはヒータまたはライトの何れかと、を備えた燃料電池船において、
前記水素燃料タンクにはリリーフ弁が設けられ、
前記収納部には、前記二次電池を導入するための開口部と、前記開口部を密閉するための蓋部材と、前記蓋部材の不正開放を検知する手段が設けられ、
前記不正開放が検知された場合に、前記リリーフ弁が開放され、前記水素燃料タンクから水素が排出され、かつ、前記二次電池から前記冷却用ファンまたは前記ヒータへの給電または前記ライトの点灯が行われるように構成されていることを特徴とする燃料電池船。
【請求項2】
前記収納部には、前記不正開放が検知された場合の制御を行う制御装置が収容されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池船。
【請求項3】
前記燃料電池船の非使用時に前記制御装置が動作可能となることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盗難防止機能を備えた燃料電池船に関する。
【背景技術】
【0002】
電動船外機の電源として燃料電池を用いることが検討されている。例えば、特許文献1には、船体内部に燃料タンク及びバッテリを配置し、船体外部に燃料電池、電動モータ、プロペラを配置した燃料電池船が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−196408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、船外機に搭載されることが一般的な電動モータに比較して、燃料電池(発電装置)は大型であるうえ、水素燃料を供給するための配管で船体内部の燃料タンクと連結される必要があり、このレイアウトは現実的とは言えない。また、小型船舶にあっては盗難の問題も憂慮されるが、特許文献1には盗難対策に関する記載はない。
【0005】
本発明は従来技術の上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、盗難防止機能を備えた燃料電池船を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る燃料電池船は、
電動船外機(6)と、前記電動船外機に電力を供給するための燃料電池ユニット(2)と、前記燃料電池ユニットに水素燃料を供給するための水素燃料タンク(3)と、前記燃料電池ユニットの補助電源の二次電池(4)と、前記二次電池を収容する収納部(12)と、
冷却用ファン(20)またはヒータ(31)またはライトの何れかと、を備えた燃料電池船(1)において、前記水素燃料タンクにはリリーフ弁(30)が設けられ、前記収納部(12)には、前記二次電池を導入するための開口部(12c)と、前記開口部を密閉するための蓋部材(12b)と、前記蓋部材の不正開放を検知する手段(12a)が設けられ、前記不正開放が検知された場合に、前記リリーフ弁が開放され、前記水素燃料タンクから水素が排出され
、かつ、前記二次電池から前記冷却用ファンまたは前記ヒータへの給電または前記ライトの点灯が行われるように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る燃料電池船は、上記構成により、二次電池を収容する収納部の蓋部材が不正開放された場合に、水素燃料タンクから水素が積極的に排出されることで、素早く燃料を枯渇させ、盗難を防ぐうえで有利である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明実施形態に係る燃料電池船を示す平面図である。
【
図2】本発明実施形態に係る燃料電池船の収納部を示す要部平面図である。
【
図3】本発明実施形態に係る燃料電池船を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1〜
図3において、本発明実施形態に係る燃料電池船1は、推進力を得るための電動船外機6、電動船外機6に電力を供給するための発電装置である燃料電池ユニット2、燃料電池ユニット2に水素燃料を供給するための水素燃料タンク3、二次電池4、コンバータ5、降圧コンバータ7、低電圧二次電池8、電力管理装置9、制御装置14を備えており、これらのうち、電動船外機6以外は、船体の収納部10に収容されている。
【0011】
燃料電池ユニット2は、電解質膜を挟んで燃料極と空気極が配置されたセルが、それらに燃料(水素)や酸化剤(空気中の酸素)を供給する流路を画成するセパレータを介して多数積層されたフエルセルスタックと、燃料側ヘッダー、空気側ヘッダー、コンプレッサー(不図示)、および、コントローラ21などを備え、冷却用ファン20が付設されている。
【0012】
水素燃料タンク3は、水素を気体のまま貯蔵する高圧水素タンクや低圧水素タンクを用いることもできるが、容器の内部に水素を分子状態で吸蔵/放出可能な水素吸蔵合金を収容した水素吸蔵合金タンクが好適である。吸蔵合金の金属種は、特に限定されるものではないが、可及的低温かつ低圧で水素放出可能な金属種が好ましい。
【0013】
水素燃料タンク3の一端には燃料電池ユニット2に水素燃料を供給するための供給管33が接続され、他端には非常時に水素を排出するためのリリーフ弁30が設けられているが、これらの配置はこれ以外であってもよい。
【0014】
水素燃料タンク3の周囲には、加熱によりタンク内部における吸蔵合金からの水素放出を促進するためのヒータ31が設けられている。ヒータ31は、通電によって発熱する抵抗発熱体や電熱ヒータが好適に用いられる。
【0015】
二次電池4は、燃料電池ユニット2で発電される電気を充電しておき、二次電池4から電動船外機6のモータに給電することで、起動時に発電能力が低下する燃料電池ユニット2の特性を補い、電動船外機6の安定的な駆動を可能にするために搭載されており、リチウムイオンバッテリ(LIB)などが好適である。
【0016】
コンバータ5は、燃料電池ユニット2や二次電池4の電圧を調整するためのHVDC/DCコンバータである。本実施形態では、燃料電池ユニット2の出力電圧(約100V)を二次電池4の電圧(48V)まで降圧し、上述のように二次電池4から電動船外機6に電力を安定供給する降圧タイプが使用されるが、高出力が求められる場合には、燃料電池ユニット2や二次電池4の電圧を高電圧に変換して電動船外機6に供給する昇圧タイプを使用することもできる。
【0017】
降圧コンバータ7は、燃料電池ユニット2や二次電池4の電力の一部を低電圧に変換するための12VDC/DCコンバータであり、変換された電力は低圧用二次電池8(12Vバッテリ)に蓄電され、燃料電池ユニット2に付設されたコンプレッサー(ブロワ)や電磁バルブ、冷却用ファン20、コントローラ21、などの補機類、および、電力管理装置9や制御装置14に供給される。
【0018】
収納部10は、図示例では、船体後部に並設された2つの収納部11,12からなり、船体右側の第1収納部11に燃料電池ユニット2と水素燃料タンク3が収容され、船体左側の第2収納部12に二次電池4、コンバータ5、降圧コンバータ7、二次電池8、電力管理装置9、および、制御装置14が収容されている。なお、収納部11,12は、船体に備わる既存の収納部(デッキストレージ)を利用しても良いし、何れか一方または両方が既存の収納部とは別に設けられたケース等であっても良い。
【0019】
燃料電池ユニット2の出力側は、中央の連通部13に挿通された配線25により電力管理装置9を介してコンバータ5の入力側に接続されており、二次電池4の入出力は配線24により電力管理装置9を介して燃料電池ユニット2の出力側(充電時)またはコンバータ5の入力側(放電時)に選択的に接続されるようになっている。
【0020】
また、水素燃料タンク3のヒータ31は、中央の連通部13に挿通された配線43により二次電池4に接続され、二次電池4から電力が供給されるようになっている。なお、連通部13は配線25,43等が配策された後にシール材等で封止されることが好ましい。
【0021】
各収納部11,12は、船体甲板上の開口部11c,12cを密閉するための蓋部材11b,12b(ハッチ)を備えるとともに、蓋部材11bまたは12bの不正開放を検知するセンサ11a,12aが対応する収納部11,12内に設けられている。
【0022】
センサ11a,12aは、例えば、燃料電池船1の停泊中に、蓋部材11b,12bが不正開放された場合における収納部11,12の圧力変化を検知する圧力センサで構成されるが、蓋部材11b,12bに生じる開度を検知するスイッチや、蓋部材11b,12bの不正開放に伴う振動を検知するセンサとすることができる。また、第1収納部11内のセンサ11aは、第1収納部11内の酸素濃度を検知するセンサを利用することもできる。この場合、通常は運転直後の低酸素濃度状態から徐々に大気圧と同等まで上昇するので、急激に酸素濃度が変化した場合には不正開放されたものと推定できる。
【0023】
上記各場合において、センサやスイッチで蓋部材11b,12bの開状態が検知されることで、制御装置14がオンになるように構成することが好ましい。また、何れの場合も、一度オンになるとセンサやスイッチの復帰動作では制御装置14がオフにならないように構成することが好ましい。また、蓋部材11b,12bに施錠機構を設け、施錠操作によって上記センサやスイッチがアクティブになるように構成することもできる。このような構成とすることで、施錠機構の鍵が不正入手された場合の盗難を防止できる。
【0024】
なお、第1収納部11には、燃料電池ユニット2の冷却用および反応用の空気を導入するための吸気部と、冷却後の空気や燃料電池ユニット2から排出される水蒸気を排出するための排気部を兼ねた吸排気部15が設けられている。この吸排気部15は塩害対策のための耐塩フィルタを備え、非使用時に密閉するためのサブハッチ34を備えている。なお、吸気部と排気部は個別に設けられてもよい。
【0025】
以上のように構成された燃料電池船1は、非使用時には制御装置14およびセンサ11a,12aが動作可能な状態となり、盗難防止機能が有効になる。
【0026】
この状態において、蓋部材11b,12b(または吸排気部15のサブハッチ34)が開放された場合、すなわち、不正開放された場合には、センサ11aまたは12aからの検知信号が制御装置14に送られ、制御装置14は、電力管理装置9に内蔵されているブレーカによって配線25を遮断し、燃料電池ユニット2および二次電池4からコンバータ5(電動船外機6)側に給電できないようにする。
【0027】
しかし、配線25が遮断されるのみでは、直結配線等により、燃料電池ユニット2または二次電池4の何れかから電動船外機6に給電される虞があるので、制御装置14は、さらに以下の(i)〜(iii)の盗難防止措置を発動する。
【0028】
(i)水素燃料タンク3のリリーフ弁30を開放するとともに、二次電池4から配線43を通じてヒータ31に給電する。水素燃料タンク3が加熱されることで水素吸蔵合金から水素の放出が促進され、リリーフ弁30を通じて水素が排出される。
【0029】
(ii)燃料電池ユニット2を起動し、水素燃料タンク3内に残留する水素燃料が燃料電池ユニット2によっても消費されるようにする。この時、燃料電池ユニット2で発電される電力は電力管理装置9および配線24を介して二次電池4に充電に充当されるが、二次電池4からヒータ31に給電することで、二次電池4の電力も消費される。
【0030】
(iii)二次電池4からの給電によって冷却用ファン20が起動し、水素燃料タンク3からリリーフ弁30を通じて排出される水素燃料が外気に拡散されるようにするとともに、冷却用ファン20の作動により二次電池4の電力消費が促進されるようにする。
【0031】
以上のような盗難防止措置が発動されることで、直結配線等により、燃料電池ユニット2または二次電池4の何れかから電動船外機6側への給電が可能になったとしても、直結配線等の作業で時間が経過する間に、水素燃料タンク3の水素燃料および二次電池4の電力が枯渇し、燃料電池船1は走行不能な状態になっているので、盗難を阻止できる。
【0032】
なお、上記(i)〜(iii)の盗難防止措置のうち、上記(i)のみ発動するとともに、遮断弁32で燃料電池ユニット2への水素燃料の供給を遮断するように構成することもできる。さらに、この構成において、遮断弁32の作動後に、不正アクセスの履歴解除または直結配管等の手段で燃料電池ユニット2が起動された場合に、上記(ii)〜(iii)の盗難防止措置が発動するように構成することもできる。また、上記(iii)に加えて、二次電池4からの給電によって燃料電池船1のライトを点灯させ、二次電池4の電力消費が促進されるように構成することもできる。
【0033】
上記実施形態では、蓋部材11b,12bとしてヒンジやスライダにより開閉可能なハッチが使用される場合を想定しているが、ネジなどの締結手段やクランプなどの緊締手段により着脱開閉可能な蓋部材など、各種の蓋部材を使用でき、さらに、剛性部材以外の蓋部材、例えば、可撓性のシート材料からなる蓋部材の使用や併用を妨げるものではなく、その場合、蓋部材の周縁部と開口部の縁部との間をファスナーで開閉可能とすることができる。
【0034】
以上、本発明のいくつかの実施形態について述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらに各種の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 燃料電池船
2 燃料電池ユニット
3 水素燃料タンク
4 二次電池(リチウムイオンバッテリ)
5 コンバータ(HVDC/DCコンバータ)
6 電動船外機
7 降圧コンバータ(12VDC/DCコンバータ)
8 二次電池(12Vバッテリ)
9 電力管理装置(ブレーカ)
10 収納部
11 第1収納部
11a,12a センサ
11b,12b 蓋部材(ハッチ)
12 第2収納部
13 連通部
14 制御装置
15 吸排気部
20 冷却用ファン
30 リリーフ弁
31 ヒータ
34 サブハッチ