(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記目標値変更部は、前記処理液のライフタイムの途中で、一定時間毎に前記目標濃度を上昇させることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
前記目標値変更部は、前記処理液のライフタイムの途中で、前記目標濃度を上昇させるタイミングを変更することで、前記目標濃度の変更プロファイルを変更することを特徴と
する請求項1から4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
前記目標値変更部は、前記処理液のライフタイムの途中で、前記基板の処理が行われた場合に、前記目標濃度を上昇させることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
前記目標値変更部は、前記処理液のライフタイムの途中で、前記純水の供給が行われた場合に、前記目標濃度を上昇させることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
前記目標値変更部は、前記処理液のライフタイムの途中で、所定枚数の前記基板の処理が行われた場合に、前記目標濃度を上昇させることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
前記目標値変更部は、前記基板の処理における処理の程度を示す重み係数と前記基板の処理枚数とに基づく処理量が所定量となった場合に、前記目標濃度を上昇させることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
前記目標値変更部は、前記処理液のライフタイム中において、所定の待ち時間の間に前記基板の処理が行われない場合に、前記目標濃度を上昇させることを特徴とする請求項11または12に記載の基板処理装置。
前記目標値変更工程においては、前記目標濃度を上昇させるタイミングを変更することで、前記目標濃度の変更プロファイルを変更することを特徴とする請求項14から17のいずれか一項に記載の基板処理方法。
前記目標値変更工程においては、前記純水の供給が行われた場合に、前記目標濃度を上昇させることを特徴とする請求項14から17のいずれか一項に記載の基板処理方法。
前記目標値変更工程においては、所定枚数の前記基板の処理が行われた場合に、前記目標濃度を上昇させることを特徴とする請求項14から17のいずれか一項に記載の基板処理方法。
前記目標値変更工程においては、前記基板の処理における処理の程度を示す重み係数と前記基板の処理枚数とに基づく処理量が所定量となった場合に、前記目標濃度を上昇させることを特徴とする請求項14から17のいずれか一項に記載の基板処理方法。
前記目標値変更工程においては、前記処理液のライフタイム中において、所定の待ち時間の間に前記基板の処理が行われない場合に、前記目標濃度を上昇させることを特徴とする請求項24または25に記載の基板処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような状況を鑑みて発明されたものであり、その目的は、基板処理装置または基板処理方法において、処理槽における処理液の濃度をより確実に、該処理槽において行われる処理に適した濃度に維持することが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、一種以上の薬液及び純水を含む処理液に基板を浸漬させることで該基板に対して所定の処理を行う基板処理装置であって、
前記基板に前記所定の処理を行うための前記処理液が貯留された処理槽と、
前記処理槽中の前記処理液のライフタイムに合わせて該処理液を交換する処理液交換部
と、
前記処理液における純水または他の所定成分の濃度を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記濃度に基づいて、前記処理槽中の処理液に純水または前記他の所定成分を供給することで、前記濃度が所定の目標濃度になるように制御する濃度制御部と、
前記目標濃度を変更する目標値変更部と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
これによれば、前記処理液の状態によって検出部の検出値が変化してしまう場合など、見かけ上の前記純水または他の所定成分の濃度と実際の前記純水または他の所定成分の濃度との間の乖離、または、検出された濃度において予想される処理状況(例えばエッチングレート)と実際に得られた処理状況との間の乖離がある場合でも、目標濃度を変更することで、当該乖離をキャンセルし、より確実に、純水または他の所定成分の濃度を処理に応じた適切な値に制御することが可能となる。なお、ここで処理液のライフタイムとは、処理液の状態が変化し継続して当該処理液を使用し続けると処理自体が充分に行われなくなると判断される使用時間であり、予め実験等により定められる。また、「ライフタイムに合わせる」とは、ライフタイムの経過時であっても良いし、ライフタイム経過時に対して若干前後する時点であってもよい。
【0010】
また、本発明においては、前記目標値変更部は、前記処理液のライフタイムの途中で、前記目標濃度を上昇させるようにしてもよい。そうすれば、前記処理液のライフタイムの途中で、純水または他の所定成分をより多く供給することで、当該乖離をキャンセルし、純水または他の所定成分の濃度を処理に応じた適切な値に制御することが可能となる。この場合、前記純水または他の所定成分の濃度を低下させる制御と比較して、より容易に、純水または他の所定成分の濃度を処理に応じた適切な値に制御することが可能となる。
【0011】
また、本発明においては、前記
目標値変更部は、前記目標濃度に上限値を設けるようにしてもよい。これによれば、前記処理液のライフタイムの途中で、前記目標濃度が過剰に上昇してしまうことを防止できる。
【0012】
また、本発明においては、前記処理液は、リン酸、硝酸、酢酸の少なくとも一つ及び、純水を含む混酸水溶液であり、前記濃度制御部は、前記混酸水溶液に純水を供給することで前記混酸水溶液の純水濃度が所定の目標濃度になるように制御するようにしてもよい。これによれば、純水の供給量や供給タイミングを変更するという簡単な動作によって、純水の濃度を処理に応じた適切な値に制御することが可能となる。
【0013】
また、本発明においては、前記目標値変更部は、前記処理液のライフタイムの途中で、一定時間毎に前記目標濃度を上昇させるようにしてもよい。これによれば、前記目標濃度の急激な変化を抑制しつつ、より安定的に、純水または他の所定成分の濃度を処理に応じた適切な値に制御することが可能となる。
【0014】
また、本発明においては、前記目標値変更部は、前記処理液のライフタイムの途中で、前記目標濃度を上昇させるタイミングを変更することで、前記目標濃度の変更プロファイルを変更するようにしてもよい。これによれば、より高い自由度で前記処理液の状態に応じて、純水または他の所定成分の濃度を処理に応じた適切な値に制御することが可能となる。
【0015】
また、本発明においては、前記目標値変更部は、前記処理液のライフタイムの途中で、前記
目標濃度を上昇させる際の上昇幅を変更することで、前記目標濃度の変更プロファイルを変更するようにしてもよい。このことによっても、より高い自由度で前記処理液の状態に応じて、純水または他の所定成分の濃度を処理に応じた適切な値に制御することが可能となる。
【0016】
また、本発明においては、前記目標値変更部は、前記処理液のライフタイムの途中で、前記基板の処理が行われた場合に、前記目標濃度を上昇させるようにしてもよい。ここで、前記基板の処理が行われた場合には、基板から金属イオンが処理液中に溶出する傾向が強い。よって、前記基板の処理が行われた場合に、前記目標濃度を上昇させることで、より確実にまたは適時に、純水または他の所定成分の濃度を処理に応じた適切な値に制御することが可能となる。
【0017】
また、本発明においては、前記目標値変更部は、前記処理液のライフタイムの途中で、前記純水の供給が行われた場合に、前記目標濃度を上昇させるようにしてもよい。ここで、前記基板の処理が行われた場合に、純水の供給が行われる確率が高く、基板の処理タイミングと純水の供給タイミングとの間には高い相関が認められるので、純水の供給が行われた場合に、前記目標濃度を上昇させることによっても、より確実にまたは適時に、純水または他の所定成分の濃度を処理に応じた適切な値に制御することが可能となる。
【0018】
また、本発明においては、前記目標値変更部は、前記処理液のライフタイムの途中で、所定枚数の前記基板の処理が行われた場合に、前記目標濃度を上昇させるようにしてもよい。ここで、前記基板の処理が行われた場合に、処理される基板の枚数はいつも同じとは限らない。一方、基板から溶出される金属イオンの量が直接関連しているのは、基板の処理の回数よりも、むしろ、処理された基板の枚数である。よって、所定枚数の前記基板の処理が行われた場合に、前記目標濃度を上昇させることで、より精度よく、純水または他の所定成分の濃度を処理に応じた適切な値に制御することが可能となる。
【0019】
また、本発明においては、前記目標値変更部は、前記基板の処理における処理の程度を示す重み係数と前記基板の処理枚数とに基づく処理量が所定量となった場合に、前記目標濃度を上昇させるようにしてもよい。ここで、前記基板の処理が行われた場合に、基板の種類によって、1枚の基板を処理する際の処理の程度は異なる。この処理の程度とは、例えば、1枚の基板の処理において反応に用いられる処理液の量または、1枚の基板の処理による処理液の劣化度合いであってもよい。よって、処理液における純水または他の所定成分の濃度の変化は、処理された基板の枚数の他、1枚の基板を処理する際の処理の程度によって決まる。
【0020】
このことより、本発明においては、基板の処理における処理の程度を示す重み係数と基板の処理枚数とに基づく処理量が所定量となった場合に、目標濃度を上昇させることで、さらに精度よく、純水または他の所定成分の濃度を処理に応じた適切な値に制御することが可能となる。なお、重み係数と基板の処理枚数とに基づく処理量とは、例えば、重み係数と基板の処理枚数を乗じることにより算出されるものであってもよいし、基板の処理枚数を(重み係数)乗する等、他の計算式によるものであってもよい。
【0021】
また、本発明においては、前記処理液のライフタイム中に複数種類の基板を処理し、前記目標値変更部は、前記複数種類の基板のうちの各種類の基板についての、前記重み係数と前記基板の処理枚数とに基づく処理量の合計量が所定量となった場合に、前記目標濃度を上昇させるようにしてもよい。ここで、基板処理装置が、処理液のライフタイム中に複数種類の基板を処理する場合には、処理液の純水または他の所定成分の濃度の変化は、各々の種類の基板の処理量の合計量によって決まる。
【0022】
このことより、本発明においては、処理液のライフタイム中に複数種類の基板を処理する際には、複数種類の基板のうちの各種類の基板についての、重み係数と基板の処理枚数
とに基づく処理量の合計量が所定量となった場合に、目標濃度を上昇させることとした。これにより、基板処理装置が、処理液のライフタイム中に複数種類の基板を処理する場合にも、より精度よく、純水または他の所定成分の濃度を処理に応じた適切な値に制御することが可能となる。
【0023】
また、本発明においては、前記目標値変更部は、前記処理液のライフタイム中において、所定の待ち時間の間に前記基板の処理が行われない場合に、前記目標濃度を上昇させるようにしてもよい。ここで、処理液のライフタイム中において、長時間に亘って基板の処理が行われない場合には、そのことによっても、処理液における純水または他の所定成分の濃度が蒸発や分解によって変化する場合がある。よって、本発明においては、目標値変更部は、上述の重み係数と基板の処理枚数とに基づく基板の処理量(または、複数種類の基板の処理量の合計量)が所定量となった場合に、目標濃度を上昇させるとともに、所定の待ち時間の間に基板の処理が行われない場合にも、目標濃度を上昇させることとした。これによれば、基板の処理の重み係数と基板の処理枚数とに基づく処理量を処理液の濃度制御の基準にするとともに、基板の処理が長時間に亘り処理されないことも処理液の濃度制御の基準にすることができ、さらに精度よく、処理液における純水または他の所定成分の濃度を処理に応じた適切な値に制御することが可能となる。
【0024】
また、本発明は、一種以上の薬液及び純水を含み処理槽に貯留された処理液に基板を浸漬させることで該基板に対して所定の処理を行う基板処理方法であって、
前記処理液のライフタイムに合わせて該処理液を交換する処理液交換工程と、
前記処理液における純水または他の所定成分の濃度を検出する濃度検出工程と、
前記濃度検出工程において検出された前記濃度に基づいて、前記濃度が所定の目標濃度になるように前記処理槽中の前記処理液に純水または前記他の所定成分を供給する濃度制御工程と、
前記処理液のライフタイムの途中で前記目標濃度を変更する目標値変更工程と、
を備えることを特徴とする、基板処理方法であってもよい。
【0025】
また、本発明は、前記目標値変更工程においては、前記目標濃度を上昇させることを特徴とする、上記の基板処理方法であってもよい。
【0026】
また、本発明は、前記目標値変更工程においては、前記目標濃度に上限値が設けられたことを特徴とする、上記の基板処理方法であってもよい。
【0027】
また、本発明は、前記処理液は、リン酸、硝酸、酢酸の少なくとも一つ及び、純水を含む混酸水溶液であり、前記濃度制御工程においては、前記混酸水溶液の純水濃度が所定の目標濃度になるように前記混酸水溶液に純水を供給することを特徴とする、上記の基板処理方法であってもよい。
【0028】
また、本発明は、前記目標値変更工程においては、一定時間毎に前記目標濃度を上昇させることを特徴とする上記の基板処理方法であってもよい。
【0029】
また、本発明は、前記目標値変更工程においては、前記目標濃度を上昇させるタイミングを変更することで、前記目標濃度の変更プロファイルを変更することを特徴とする上記の基板処理方法であってもよい。
【0030】
また、本発明は、前記目標値変更工程においては、前記
目標濃度を上昇させる際の上昇幅を変更することで、前記目標濃度の変更プロファイルを変更することを特徴とする上記の基板処理方法であってもよい。
【0031】
また、本発明は、前記
目標値変更工程においては、前記基板の処理が行われた場合に、前記目標濃度を上昇させることを特徴とする上記の基板処理方法であってもよい。
【0032】
また、本発明は、前記目標値変更工程においては、前記純水の供給が行われた場合に、前記目標濃度を上昇させることを特徴とする上記の基板処理方法であってもよい。
【0033】
また、本発明は、前記目標値変更工程においては、所定枚数の前記基板の処理が行われた場合に、前記目標濃度を上昇させることを特徴とする上記の基板処理方法であってもよい。
【0034】
また、本発明は、前記目標値変更工程においては、前記基板の処理における処理の程度を示す重み係数と前記基板の処理枚数とに基づく処理量が所定量となった場合に、前記目標濃度を上昇させることを特徴とする上記の基板処理方法であってもよい。
【0035】
また、本発明は、前記処理液のライフタイム中に、複数種類の基板を処理し、
前記目標値変更工程においては、前記複数種類の基板のうちの各種類の基板についての、前記重み係数と前記基板の処理枚数とに基づく処理量の合計量が所定量となった場合に、前記目標濃度を上昇させることを特徴とする上記の基板処理方法であってもよい。
【0036】
また、本発明は、前記目標値変更工程においては、前記処理液のライフタイム中において、所定の待ち時間の間に前記基板の処理が行われない場合に、前記目標濃度を上昇させることを特徴とする上記の基板処理方法であってもよい。
【0037】
なお、上述した、課題を解決するための手段は適宜組み合わせて使用することが可能である。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、基板処理装置または基板処理方法において、処理槽における処理液の濃度をより確実に、該処理槽において行われる処理に適した濃度に維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
<実施例1>
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施例は、本願発明の一態様であり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。
図1は実施例1に係る基板処理装置1の概略構成を示す斜視図である。この基板処理装置1は、主として基板Wに対してエッチング処理や洗浄処理(以下、単に"処理"ともいう)を施すものである。基板処理装置1においては、
図1において右奥側に、基板Wをストックするバッファ部2が配置され、バッファ部2のさらに右奥側には、基板処理装置1を操作するための正面パネル(不図示)が設けられている。また、バッファ部2における正面パネルと反対側には、基板搬出入口3が設けられている。また、基板処理装置1の長手方向における、バッファ部2の反対側(
図1において左手前側)から、基板Wに対して処理を行う処理部5、7及び9が並設されている。
【0041】
各処理部5、7及び9は、各々二つの処理槽5a及び5b、7a及び7b、9a及び9bを有している。また、基板処理装置1には、複数枚の基板Wを各処理部5、7及び9における各処理槽の間でのみ
図1中の短い矢印の方向及び範囲に対して移動させるための副搬送機構43が備えられている。また、この副搬送機構43は、複数枚の基板Wを処理槽5a及び5b、7a及び7b、9a及び9bに浸漬しまたは、これらの処理槽から引き上げるため、複数枚の基板Wを上下にも移動させる。各々の副搬送機構43には、複数枚の基板Wを保持するリフタ11、13及び15が設けられている。さらに基板処理装置1には、複数枚の基板Wを各処理部5、7及び9の各々に搬送するために、
図1中の長い矢印の方向及び範囲で移動可能な主搬送機構17が備えられている。
【0042】
主搬送機構17は、二本の可動式のアーム17aを有している。これらのアーム17aには、基板Wを載置するための複数の溝(図示省略)が設けられており、
図1に示す状態で、各基板Wを起立姿勢(基板主面の法線が水平方向に沿う姿勢)で保持する。また、主搬送機構17における二本のアーム17aは、
図1中の右斜め下方向から見て、「V」の字状から逆「V」の字状に揺動することにより、各基板Wを開放する。そして、この動作により、基板Wは、主搬送機構17とリフタ11、13及び15との間で授受されることが可能となっている。
【0043】
図2には、基板処理装置1の機能ブロック図を示す。 上述した主搬送機構17、副搬
送機構43、処理部5、7、9は、制御部55によって統括的に制御されている。制御部55のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部55は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用アプリケーションやデータなどを記憶しておく磁気ディスク等を備えている。本実施例においては、制御部55のCPUが所定のプログラムを実行することにより、基板Wを各処理部5、7、9に搬送し、プログラムに応じた処理を施すように各部を制御する。上記のプログラムは、記憶部57に記憶されている。
【0044】
図3は、基板処理装置1の処理部5、7、9における各処理槽5a、7a、9aの処理液の制御に関わる構成を示す図である。
図3においては、処理部5、7、9における各処理槽5a、7a、9aのうち、処理槽7aを例にとって説明する。以下の処理槽7aの処理液についての制御と同等または類似の制御が、他の処理槽5a及び9aについても適用される。
【0045】
ここで、半導体ウェハの製造工程においては、例えばシリコン等の単結晶インゴッドをその棒軸方向にスライスし、得られたものに対して面取り、ラッピング、エッチング処理、ポリッシング等の処理が順次施される。その結果、基板表面の上には異なる材料による複数の層、構造、回路が形成される。そして、処理槽7aにおいて行われる基板Wのエッチング処理は、例えば、基板Wに残ったタングステン等のメタルを除去する目的で行われ、基板Wを処理液としての混酸(リン酸、硝酸、酢酸、純水)水溶液などに所定時間浸漬することにより行われる。なお、上記のエッチング処理は本発明における所定の処理の一例である。また、混酸におけるリン酸、硝酸、酢酸は、本発明における"他の所定成分"の一例である。
【0046】
図3において、処理槽7aは、混酸水溶液中に基板Wを浸漬させる内槽50aおよび内槽50aの上部からオーバーフローした混酸水溶液を回収する外槽50bによって構成される二重槽構造を有している。内槽50aは、混酸水溶液に対する耐食性に優れた石英またはフッ素樹脂材料にて形成された平面視矩形の箱形形状部材である。外槽50bは、内槽50aと同様の材料にて形成されており、内槽50aの外周上端部を囲繞するように設けられている。
【0047】
また、処理槽7aには、前述のように、貯留された混酸水溶液に基板Wを浸漬させるためのリフタ13が設けられている。リフタ13は、起立姿勢にて相互に平行に配列された複数(例えば50枚)の基板Wを3本の保持棒によって一括して保持する。リフタ13は、副搬送機構43によって上下左右の方向に移動可能に設けられており、保持する複数枚の基板Wを内槽50a内の混酸水溶液中に浸漬する処理位置(
図3の位置)と混酸水溶液から引き上げた受渡位置との間で昇降させるとともに、隣の処理槽7bへ移動させることが可能となっている。
【0048】
また、基板処理装置1は、混酸水溶液を処理槽7aに循環させる循環ライン20を備える。循環ライン20は、処理槽7aから排出された混酸水溶液を濾過・加熱して再び処理槽7aに圧送還流させる配管経路であり、具体的には処理槽7aの外槽50bと内槽50aとを流路接続して構成されている。また、循環ライン20から分岐して排液ライン30が分岐しており、混酸水溶液を処理槽7aに戻さず排液する場合には、排液切換えバルブ26及び、排液バルブ27を開閉することにより、外槽50bから排出された混酸水溶液をそのまま排液ライン30を介して廃棄する。
【0049】
循環ライン20の経路途中には、バルブ類以外では、上流側から循環ポンプ21、温調器22、フィルタ23及び、検出部としての濃度計24が設けられている。循環ポンプ21は、循環ライン20を介して混酸水溶液を外槽50bから吸い込むとともに内槽50aに向けて圧送する。温調器22は、循環ライン20を流れる混酸水溶液を所定の処理温度にまで再加熱する。なお、処理槽7aにも図示省略のヒータが設けられており、処理槽7aに貯留されている混酸水溶液も所定の処理温度を維持するように加熱されている。フィルタ23は、循環ライン20を流れる混酸水溶液中の異物を取り除くための濾過フィルタである。
【0050】
また、濃度計24は、循環ライン20によって内槽50aに回収される混酸水溶液の成
分のうち、純水濃度を測定する。この濃度計24によって測定される純水濃度が最適値となるように、処理槽7a内の混酸濃度が制御されている。ここで、濃度計24によって純水濃度が測定される処理は本実発明における濃度検出工程に相当する。また、処理槽7a内の混酸濃度が制御される処理は制御部55によって行われるがこの際の制御部55は濃度制御部に相当し、処理自体は本発明における濃度制御工程に相当する。より具体的には、制御部55は、
図3に示すように、処理槽内の混酸溶液の全液交換制御や、混酸水溶液の濃度のフィードバック制御等に係る処理の他、後述するように、混酸水溶液の濃度の目標値(下側基準値)の変更制御に関わる処理を行う。
【0051】
次に、上記構成を有する基板処理装置1の作用についてより詳細に説明する。まず、処理槽7aに貯留されている混酸水溶液中に基板Wが浸漬されているか否かに関わらず、循環ポンプ21は常時一定流量にて混酸水溶液を圧送している。循環ライン20によって処理槽7aに還流された混酸水溶液は内槽50aの底部から供給される。これによって、内槽50aの内部には底部から上方へと向かう混酸水溶液のアップフローが生じる。底部から供給された混酸水溶液はやがて内槽50aの上端部から溢れ出て外槽50bに流入する。外槽50bに流れ込んだ混酸水溶液は外槽50bから循環ライン20を介して循環ポンプ21に送られ、再び処理槽7aに圧送還流されるという循環プロセスが継続して行われる。
【0052】
このような循環ライン20による混酸水溶液の循環プロセスを実行しつつ、受渡位置にて複数の基板Wを受け取ったリフタ13が処理位置まで降下して内槽50a内に貯留された混酸水溶液中に基板Wを浸漬させる。これにより、所定時間の処理が行われ、処理が終了した後、リフタ13が再び受渡位置にまで上昇して基板Wを混酸水溶液から引き上げる。その後、リフタ13は水平移動及び降下して基板Wを隣の処理槽7bに浸漬させ、水洗処理が実施される。
【0053】
上記の他、基板処理装置1には、処理槽7aの混酸水溶液の濃度を制御するための濃度制御装置40が備えられている。この濃度制御装置40は、薬液供給源41と、薬液供給源41と処理槽7aとを結ぶ薬液ライン42と、純水供給源46と、純水供給源46と処理槽7aとを結ぶ純水ライン47とを有する。
【0054】
ここで、図示は省略するが、薬液供給源41には、混酸を構成するリン酸、硝酸、酢酸の各々を供給する供給源が独立に設けられており、薬液ライン42には、リン酸、硝酸、酢酸の各々を処理槽7aに導くラインが独立に設けられている。処理液を最初に生成するときは、供給速度が必要となるので太い配管から内槽50aに向けて処理液が投入されるが、処理液を補充するときは外槽50bに向けて補充され場合がある。薬液ライン42の各々のラインには、通過する薬液(リン酸、硝酸、酢酸)の流量を各々測定可能な薬液流量計44と、リン酸、硝酸、酢酸の各々の流量を調整可能な薬液補充バルブ45が備えられている。一方、純水ライン47には、純水ライン47を通過する純水の流量を測定する純水流量計48と、純水の流量を調整する純水補充バルブ49が備えられている。また、前述の制御部55が濃度計24の測定結果に基づいて薬液補充バルブ45及び、純水補充バルブ49を制御し、処理槽7a内の混酸水溶液の濃度を、処理に最適な濃度となるよう制御する。
【0055】
図4は、上記した処理槽7aにおける混酸水溶液の従来の濃度制御の態様を示すグラフである。より具体的には、内槽50aにおける混酸水溶液の濃度(純水濃度)の変化を示している。ここで横軸は時間、縦軸は混酸中の純粋濃度(W%)を示している。
図4のグラフにおいて、下部のパルス状の表示Aは、内槽50aに純水が供給されるタイミングを示している。また、上部における折れ線Bが純水濃度の変化を示している。
【0056】
図4では、時点t1において、混酸水溶液の全液交換が行われている。そして、時点t2において再度混酸水溶液の全液交換が行われている。時点t1と時点t2の間隔は、例えば5〜10時間程度であってもよい。これは、時点t1から時点t2の間に基板Wのエッチング処理が繰り返され、混酸水溶液内に基板Wから溶出した金属イオンの濃度が上昇するため、エッチング処理の品質に影響が及ぶ前に混酸水溶液を全部交換するものである。この全液交換の間の期間が、基板処理装置1における混酸水溶液のライフタイムと考えることができる。また、全液交換は制御部55によって実行されるが、この際の制御部55は処理液交換部に相当し、この制御は処理液交換工程に相当する。
【0057】
ここで、
図4のグラフ上部における水平の破線は、純水濃度の下側基準値を示している。すなわち、処理槽7aにおいて水分が時間とともに蒸発し、純水濃度が低下し、下側基準値に達した場合には適量(例えば、100ml)の純水を供給し、純水濃度を上昇させ、このような制御を繰り返す。この制御により、処理槽7aにおける混酸水溶液の濃度が下側基準値以上に維持される。また、一回で供給する純水量を規定しているため、純水濃度が許容範囲内より高くなることもない。
【0058】
なお、
図4においては、混酸水溶液の全液交換のタイミングで、混酸水溶液における純水濃度が一旦、下側基準値より大きく低下しているが、その後、パルス表示Aの間隔がライフタイムにおける他の期間と比較して短いことからも分かるように、純水の供給が短い間隔で繰り返され、比較的短期間に純水濃度が下側基準値以上に復帰している。これは、全液交換の際には、混酸水溶液における純水濃度が変動し易いので、一旦、純水濃度が目標値より低い状態とし、純水を頻繁に供給することで純水濃度を安定させようとする制御で、混酸水溶液を供給することで濃度制御するよりも制御が容易であるという理由から採用されている。
【0059】
ここで、
図4に示すように、混酸水溶液の濃度を一定に維持した場合には、混酸水溶液のライフタイムの中においても、時間の経過とともに、徐々に基板Wのエッチングレートが低下するという現象が見られる。これは、基板Wの処理中に基板Wから溶出した金属イオンの濃度が高くなり、これが濃度計24の測定精度を悪化させ、見かけ上の純水濃度と実際の純水濃度の間に乖離が生じたことにより起こると考えられる。
【0060】
また、混酸は、リン酸+硝酸+酢酸+純水という、複数の成分を混合することで形成されており、リン酸のように蒸発しづらい酸と、硝酸、酢酸のように蒸発し易い酸とを含んでいるので、硝酸及び酢酸の蒸発分による純水濃度の低下が発生し、見かけ上純水濃度が適正値に維持されていても、実際の純水濃度が低くなることの影響もあると考えられる。
【0061】
これに対し、本実施例においては、
図5に示すように、混酸水溶液のライフタイムの中で時間の経過とともに、混酸水溶液の濃度制御における下側基準値の値を変化させることにした。これにより、見かけ上の純水濃度と真の純水濃度との乖離をキャンセルし、実質的に処理槽7a内の混酸水溶液の濃度を適切な値に維持可能とした。
図5の例では、純水濃度の下側基準値を、混酸水溶液のライフタイムの間に、例えば、15(W%)から16(W%)まで増加させる。ここで純水濃度の下側基準値を増加させる処理は制御部55によって実行されるが、その際の制御部55は目標値変更部を構成する。また、純水濃度の下側基準値を増加させる処理は本発明の目標値変更工程に相当する。さらに、下側基準値は本発明における目標濃度に相当する。
【0062】
上記において目標変更部としての制御部55は、データテーブルに基づいて、下側基準値を変更してもよい。より具体的には、予め定められた変化プロファイルに沿った変化がなされるようなデータをテーブルとして格納しておいてもよい。この変化プロファイルは、時間(例えば、ライフタイムの始期t1からの経過時間)との関係において下側基準値
の変化を定義してもよい。上記のデータテーブルは、記憶部57に保存されていてもよいし、外部メモリに保存されていてもよい。また、この変化プロファイルに対応するデータテーブルは、操作者によって入力されてもよいし、予め複数の変化プロファイルに対応するデータテーブルが準備されており、操作者が適宜選択するようにしてもよい。操作者による入力や選択は、基板処理装置1の正面パネルからなされるようにしてもよいし、外部コンピュータやモバイル端末から通信により入力されるようにしてもよい。
【0063】
また、目標変更部としての制御部55は、予め定められた条件が満たされるタイミングで、下側基準値を変更してもよい。上記の条件とは、例えば、基板Wの処理が行われるタイミングであること、処理槽7aに純水が供給されたタイミングであること、処理済の基板Wの数が、所定数に達したタイミングであること、等であってもよい。また、上記の条件とは操作者によって下側基準値の変更が許可されたタイミングであることであってもよい。この場合には、装置による下側基準値を変更する旨の通知に対し、操作者がマニュアルで許可指示を出すことで下側基準値が変更されることになる。
【0064】
図6には、純水濃度の下側基準値を、混酸水溶液のライフタイムである時点t1から時点t2の間に、一定割合で増加させた(例えば、15%から16%など)場合の、下側基準値の変化の態様の例を示す。
図6の例では、混酸水溶液のライフタイムをn段階に等間隔に区分けし、n回に亘り一定のインターバルで下側基準値の値を一定量ずつ増加させている。こうすることで、混酸水溶液の濃度制御の目標値を直線的に増加させることができ、安定的に混酸水溶液の濃度を最適化することが可能となる。なお、
図6において下側基準値の変化を示すラインは、本発明における変更プロファイルに相当する。このことは以下に示す各図における下側基準値の変化のラインについても同じである。
【0065】
なお、本実施例においては、
図7に示すように、下側基準値に上限値を定めてもよい。
図7(a)及び
図7(b)では、下側基準値が基準値変動上限値(W%)に達した後は、下側基準値の増加を停止している。これによれば、混酸水溶液のライフタイムと、下側基準値の増加インターバルをどのように定めた場合でも、純水濃度の目標値が過剰に高くなってしまうことを防止できる。また、本実施例においては、
図7(b)に示したように、混酸水溶液の全液交換した後に、所定の開始遅延時間を設けてもよい。すなわち、混酸水溶液の全液交換後に、直ちに下側基準値を増加させ始める必要はなく、基板Wから溶出した金属イオン濃度が高くなってきたり、硝酸や酢酸の蒸発量が多くなってきたりしてから、下側基準値の増加を開始してもよい。これによれば、より高い自由度で、下側基準値を変化させることが可能である。
【0066】
また、本実施例においては、混酸水溶液のライフタイム中に、必ずしも等間隔で濃度制御の下側基準値を増加させる必要はない。
図8には、純水濃度の下側基準値を、混酸水溶液のライフタイムの一例である720分の間に例えば15(W%)から16(W%)まで増加させた場合の、下側基準値の変化の態様の例を示す。
図8の例では、初回変動開始遅延時間60分(3600秒)の経過後、濃度制御の下側基準値を変化させるインターバル時間を90分(5400秒)⇒60分(3600秒)⇒30分(1800秒)と変更し、その後、濃度制御の下側基準値の変化を一旦停止し(インターバル時間30分(1800秒)⇒0分(0秒))、さらに、インターバル時間を0分(0秒)⇒60分(3600秒)に変化させている。
【0067】
このように、混酸水溶液のライフタイムの中で、インターバル時間を自由に変更することが可能である。また、混酸水溶液のライフタイムの中で、混酸水溶液中に蓄積された金属イオン濃度が一定値以上に高くなり濃度計の測定精度への影響が顕著に表れるような場合には、混酸水溶液のライフタイムの一例である720分の中で、インターバル時間を徐々に短くする等の変化をさせてもよい。
【0068】
<実施例2>
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例1においては、混酸水溶液の濃度制御の下側基準値の増加を、変化量は一定とし変化時間に基づいて制御したのに対し、本発明の実施例2においては、混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を、その変化幅を変動させつつ制御する点で異なる。
【0069】
図9においては、初回変動開始遅延時間60分(3600秒)の経過後、濃度制御の下側基準値を変化させるインターバル時間を90分(5400秒)とし、最初の2回のインターバルに関してはインターバル毎にD(W%)の増加幅(オフセット)とし3度目と4度目のインターバル経過時においては2*D(W%)の増加幅(オフセット)とし、その後、濃度制御の下側基準値の変化を一旦停止し(増加幅(オフセット)=0)、さらに、D(W%)の増加幅(オフセット)に変化させている。
【0070】
また、本実施例においては、濃度制御の下側基準値の増加幅の変化量は一定にしてもよいし、
図10に示すように、インターバルの間の時間に、過去の増加幅の合計値を増加幅として、濃度制御の下側基準値を増加させても構わない。
図10においては、初回変動開始遅延時間60分(3600秒)の経過後、濃度制御の下側基準値を変化させるインターバル時間を90分(5400秒)とし、基本的にはインターバル毎にD(W%)の増加幅(オフセット)とし、所定のインターバルの間のタイミングで、過去の増加幅の合計値を増加幅として、濃度制御の下側基準値を増加させている。このタイミングは、予めプログラムによって決定するようにしてもよいし、使用者がマニュアルで増加させるようにしてもよい。
【0071】
<実施例3>
次に、本発明の実施例3について説明する。実施例3においては、混酸水溶液の濃度制御の下側基準値の増加を、基板Wの処理量と関連付けて制御する例について説明する。
【0072】
本実施例においては、例えば、
図11に示すように、混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を、純水の補充タイミングの度に増加させるようにしてもよい。
図11において、縦軸は純水濃度制御の下側基準値(W%)、横軸は時間を示す。また、グラフ下部のパルス状の表示は、純水の補充タイミングである。ここで、処理槽7aで基板Wの処理が行われた直後には純水が補充されることが多く、処理槽7aで基板Wの処理が行われるタイミングと、純水が補充されるタイミングの間には高い相関が見られる。
【0073】
よって、
図11に示したように、混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を、純水の補充タイミングの度に増加させるようにすれば、処理槽7aにおいて基板Wの処理が行われる事と、高い相関をもって、下側基準値を増加させることができる。これによれば、混酸水溶液の純水濃度をより容易に、適切な値に維持することが可能となる。
【0074】
また、本実施例においては、
図12に示すように、混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を、基板Wの処理(バッチ処理)が行われる度に、増加させるようにしてもよい。ここで、処理槽7aで基板Wの処理が行われた後には混酸水溶液中に蓄積される金属イオン量が増加する傾向がある。よって、
図12に示したように、混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を、基板Wの処理(バッチ処理)が行われる度に増加させるようにすれば、混酸水溶液中に蓄積される金属イオン量が増加するタイミングに合わせて、混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を増加させ、より純水の供給がされ易くなる制御を行うことができる。その結果、混酸水溶液の純水濃度をより確実に、適切な値に維持することが可能となる。
【0075】
なお、本実施例においては、基板Wの処理(バッチ処理)が行われる度に、混酸水溶液
の濃度制御の下側基準値を増加させるインターバルを短くしたり、基板Wの処理(バッチ処理)が行われる度に、混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を増加させる際の増加幅を大きくする等の制御を行っても構わない。
【0076】
その他、本実施例においては、例えば、
図13に示すように、混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を、処理槽7aにおいて処理された基板Wの枚数に応じて、増加させても構わない。
図13において、横軸は時間であり、縦軸は下側基準値と基板Wの処理枚数とを示している。図中破線で示すラインは基板Wの処理枚数を示しており、図中実線で示すラインは下側基準値を示している。そして、
図13においては、処理槽7aにおいて処理された基板Wの枚数が所定枚数(例えば、50枚)増加する度に、混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を増加させている。
【0077】
これによれば、処理された基板Wの数が例えば50枚増加することによって、混酸水溶液中に蓄積される金属イオン量が増加する事に、より直接的に対応することが可能となる。すなわち、混酸水溶液中に蓄積される金属イオン量は、処理された基板Wの数との相関が非常に高いと考えられるので、より確実に、混酸水溶液中に蓄積される金属イオンの増加による、見かけ上の純水濃度と実際の純水濃度の乖離に対応することができる。また、基板Wの処理(バッチ処理)毎に処理する半導体ウェハの枚数が異なっていたとしても、より精度よく、各時点において処理に最適な純水濃度の混酸水溶液を得ることが可能である。
【0078】
<実施例4>
次に、本発明の実施例4について説明する。実施例4においては、混酸水溶液の濃度制御の下側基準値の増加を、基板Wの処理量と関連付けて制御する例であって、混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を、処理槽におけるエッチング量の累積値に応じて、増加させる例について説明する。
【0079】
ここで、基板Wの種類によって一回の処理におけるエッチング量が異なり、同じ枚数を処理した場合であっても、基板Wの種類によって混酸水溶液の濃度変化が異なることが分かっている。よって、本実施例においては、基板Wの種類に応じて基板Wを1枚処理する毎のエッチング量について重み係数によって重み付けをしておく。そして、各基板Wの重み係数と処理枚数とに基づいてエッチング量の累積値を算出し、エッチング量の累積値が所定量に達する毎に混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を増加させることにした。
【0080】
図14には、本実施例において3種類の基板Wを処理した場合のエッチング量の累積値と、それに応じた混酸水溶液の濃度制御の下側基準値の変化の例を示す。
図14に示すように、本実施例においては、A、B、Cの3種類の基板Wについてバッチ処理を行う。そして、A、B、C各々の基板Wにおけるエッチング量の重み係数は10、2、30としている。また、本実施例では各基板Wに対して処理枚数×重み係数を計算し、それを全ての基板について合算することでエッチング量の累積値を算出する。そして、各基板Wの1回の処理における処理枚数をnとした場合に、エッチング量の累積値が12nに達する毎に混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を1段階増加させることとした。
【0081】
図14に示した例では、処理開始後、先ずn枚のA基板がバッチ処理される。A基板の重み係数は10であるので、この時点のエッチング量の累積値は10nである。次に、n枚のB基板がバッチ処理される。B基板の重み係数は2であるので、エッチング量2nが加算され、この時点でエッチング量の累積値が12nに達する。よって、この時点で混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を1段階増加させる。
【0082】
次に、本実施例ではn枚のC基板が処理される。C基板の重み係数は30であるので、
エッチング量30nが加算され、この時点でエッチング量の累積値が42nに達し、閾値12nの3倍を超える。よって、この時点で混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を2段階増加させる。
【0083】
その後、本実施例ではn枚のB基板の処理が3回繰り返される。B基板の重み係数は2であるので、処理の度に、エッチング量2nが加算され、エッチング量の累積値が44n、46n、48nと増加する。そして、この時点で閾値12nの4倍に達する。よって、この時点で混酸水溶液の濃度制御の下側基準値をさらに1段階増加させる。
【0084】
その後、本実施例ではn枚のB基板の処理が行われ、エッチング量の累積値が50nとなり、続いてn枚のC基板の処理が行われる。そうすると、エッチング量の累積値が80nとなり、この時点で閾値12nの6倍を超える。よって、この時点で混酸水溶液の濃度制御の下側基準値をさらに2段階増加させる。
【0085】
さらに、本実施例ではn枚のB基板の処理が行われ、エッチング量の累積値が82nとなり、続いてn枚のA基板の処理が行われる。そうすると、エッチング量の累積値が92nとなり、この時点で閾値12nの7倍を超える。よって、この時点で混酸水溶液の濃度制御の下側基準値をさらに1段階増加させる。
【0086】
以上、説明したように、本実施例においては、処理される基板毎に重み係数によってエッチング量の重み付けをし、各基板の重み係数と処理枚数とに基づいて、複数種類の基板のエッチング量の累積値を算出する。そして、このエッチング量の累積値が所定量に達する度に、混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を所定量増加させることとした。これによれば、より精度よく、混酸水溶液の純水または他の所定成分の濃度を適切な値に維持することが可能となる。なお、本実施例においては、処理液のライフタイム中に複数種類の基板が処理される場合について説明したが、処理液のライフタイム中に一種類のみの基板が処理する場合にも、当該基板Wのエッチング量の累積値を算出し、エッチング量の累積値が所定量に達する度に、混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を所定量増加させるようにしても構わない。
【0087】
<実施例5>
次に、本発明の実施例5について説明する。実施例5においては、実施例4と同じく、混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を、処理槽におけるエッチング量の累積値に応じて増加させる例であって、且つ、所定の待ち時間が経過しても基板の処理が行われない場合にも、混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を増加させる例について説明する。
【0088】
ここで、基板Wの処理が全く行われない場合であっても、ある程度の時間が経過すると、蒸発や分解によって、混酸水溶液の濃度が変化してしまうことが分かっている。よって、本実施例においては、処理される各基板の重み係数と処理枚数とに基づくエッチング量の累積値が所定量に達する度に、混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を所定量増加させ、且つ、所定の待ち時間が経過しても、いずれの基板Wの処理も行われなかった場合にも、混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を増加させることにした。
【0089】
図15には、本実施例において3種類の基板Wを処理した枚数と、それに応じた混酸水溶液の濃度制御の下側基準値の変化の例を示す。
図15に示すように、本実施例においても、A、B、Cの3種類の基板Wについてバッチ処理を行い、A、B、C各々の基板Wにおけるエッチング量の重み係数は10、2、30とする。
【0090】
また、本実施例においても各基板Wに対して処理枚数×重み係数を計算し、それを全ての基板について合算することでエッチング量の累積値を算出する。そして、各基板Wの1
回の処理における処理枚数をnとした場合に、エッチング量の累積値が12nに達する毎に混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を1段階増加させる。また、所定の待ち時間Tの間に、いずれの基板Wの処理も行われなかった場合にも、混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を増加させる。
【0091】
図15に示した例では、処理開始後、先ずn枚のA基板がバッチ処理される。A基板の重み係数は10であるので、この時点のエッチング量の累積値は10nである。次に、n枚のB基板がバッチ処理される。B基板の重み係数は2であるので、エッチング量2nが加算され、この時点でエッチング量の累積値が12nに達する。よって、この時点で混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を1段階増加させる。
【0092】
次に、本実施例ではn枚のC基板が処理される。C基板の重み係数は30であるので、エッチング量30nが加算され、この時点でエッチング量の累積値が42nに達し、閾値12nの3倍を超える。よって、この時点で混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を2段階増加させる。
【0093】
その後、本実施例では待ち時間Tの間、いずれの基板の処理も行われない。従って、エッチング量の累積値が42nに達した後、待ち時間Tが経過した時点で、混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を1段階増加させる。
【0094】
さらに、本実施例ではn枚のB基板の処理が行われ、エッチング量の累積値が44nとなり、続いてn枚のC基板の処理が行われる。そうすると、エッチング量の累積値が74nとなり、この時点で閾値12nの6倍を超える。よって、この時点で混酸水溶液の濃度制御の下側基準値をさらに3段階増加させる。
【0095】
その後、本実施例では待ち時間Tの間、いずれの基板の処理も行われない。従って、エッチング量の累積値が74nに達した後、待ち時間Tが経過した時点で、混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を1段階増加させる。
【0096】
以上、説明したように、本実施例においては、各基板の重み係数と処理枚数とに基づいて、複数種類の基板のエッチング量の累積値を算出し、このエッチング量の累積値が所定量に達する度に、混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を所定量増加させる。そして、待ち時間Tの間、いずれの基板の処理も行われない場合にも、混酸水溶液の濃度制御の下側基準値を所定量増加させることとした。これによれば、さらに精度よく、混酸水溶液の純水または他の所定成分の濃度を適切な値に維持することが可能となる。なお、本実施例に示した制御についても、処理液のライフタイム中に一種類のみの基板が処理する場合に適用することが可能である。
【0097】
上記の実施例においては、混酸水溶液の構成成分のうち、純水を供給することで純水濃度を制御する例について説明したが、混酸水溶液の他の所定成分すなわち、リン酸、硝酸、酢酸のうちのいずれかの成分を供給することで混酸の濃度制御を行っても構わない。また、上記の実施例は処理液が混酸水溶液である場合について説明したが、本発明はリン酸など他の処理液にも適用可能である。
【0098】
また、上記の実施例においては、濃度計24はインライン方式のものであったが、サンプリング方式のものを採用してもよい。また、混酸水溶液の濃度制御のために、純水などの成分の濃度ではなく、phや導電率など、濃度と相関の高い他のパラメータを検出することにより、濃度に換算してもよい。また、上記の実施例においては純水の補充は処理槽7aの内槽50aに行っていたが、これを外槽50bに行うようにしてもよい。さらに、上記の実施例では純水等の補充量の制御は純水補充バルブ49の開閉により行っていたが
、これをポンプの制御により適量を補充するようにしても構わない。
【0099】
加えて、上記の実施例においては、目標値変更部は、下側基準値を自動的に変化させたが、操作者(実際の人やオンライン上の操作端末を操作する人)に対して目標値を変更する可否を確認してもよい。具体的には、目標値を変更すべきである旨を正面パネルに表示し、操作者の許可があった場合には目標値を変化させ、不許可の場合は目標値を維持するようにしてもよい。