特許第6947455号(P6947455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 宮▲崎▼機械システム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6947455-面取機 図000002
  • 特許6947455-面取機 図000003
  • 特許6947455-面取機 図000004
  • 特許6947455-面取機 図000005
  • 特許6947455-面取機 図000006
  • 特許6947455-面取機 図000007
  • 特許6947455-面取機 図000008
  • 特許6947455-面取機 図000009
  • 特許6947455-面取機 図000010
  • 特許6947455-面取機 図000011
  • 特許6947455-面取機 図000012
  • 特許6947455-面取機 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6947455
(24)【登録日】2021年9月21日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】面取機
(51)【国際特許分類】
   B23B 5/16 20060101AFI20210930BHJP
   B23B 15/00 20060101ALI20210930BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALI20210930BHJP
   B23B 1/00 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   B23B5/16
   B23B15/00 A
   B23Q17/22 A
   B23B1/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-203101(P2020-203101)
(22)【出願日】2020年12月8日
【審査請求日】2020年12月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000161231
【氏名又は名称】宮▲崎▼機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】矢島 良胤
(72)【発明者】
【氏名】大島 幸雄
【審査官】 中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】 中国実用新案第206936964(CN,U)
【文献】 特開昭59−024945(JP,A)
【文献】 特開昭60−196272(JP,A)
【文献】 特開平10−235434(JP,A)
【文献】 特開平11−019844(JP,A)
【文献】 特開昭49−092689(JP,A)
【文献】 実開平01−175118(JP,U)
【文献】 実公昭48−034073(JP,Y1)
【文献】 特開昭54−133686(JP,A)
【文献】 特開2001−150201(JP,A)
【文献】 特開平02−053510(JP,A)
【文献】 特開平04−013557(JP,A)
【文献】 特開平10−166006(JP,A)
【文献】 特開2001−138105(JP,A)
【文献】 特開2002−113631(JP,A)
【文献】 特開2002−113633(JP,A)
【文献】 特開2002−219638(JP,A)
【文献】 特許第3590574(JP,B2)
【文献】 特開2012−157970(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第111001881(CN,A)
【文献】 特開2011−255454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00−25/06
B23C 1/00−9/00
B23Q 11/00−13/00
B23Q 17/00−23/00
B23Q 37/00−41/08
B65G 25/00−25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽伸機から送り出されたワークの受台の前側に配置され、抽伸機による引抜加工の最終工程において、受台から投入された棒状のワークの両端を同時に面取り加工する面取機であって、受台のワークを1本ずつ投入する供給部と、投入されたワークを一対のピンチローラで挟んで基準位置に向けて送り出す粗位置決め部と、粗位置決めされたワークを基準位置に対して精密位置決めする精密位置決め部と、位置決めされたワークの左右両側を挟んで固定する左右一対の固定部と、固定されたワークの左右両端を回転する切削工具によって切削して面取り加工する左右一対の切削部と、後側から順に投入されたワークを前側に向かって搬送する搬送部と、ピンチローラ、精密位置決め部および固定部が同時に動作するように制御するコントローラとを備え、切削工具は、主軸駆動モータによって回転されるフライホイールの運動エネルギを利用して回転されることを特徴とする面取機。
【請求項2】
固定部は、ワークを把持するクランプと、クランプを取り付けたスライダを移動させて、クランプを開閉する開閉体とを備え、スライダは駆動モータにより回転駆動されるラインシャフトに連結された開閉体によって移動され、スライダの移動によって粗位置決め部のピンチローラが近接離間し、搬送部は、ラインシャフトから駆動力を得るウォーキングビーム式とされたことを特徴とする請求項1記載の面取機。
【請求項3】
粗位置決め部、精密位置決め部、固定部および切削部が上下動する支持台に一体的に設けられて左右一対の加工ユニットとされ、搬送部は、左右方向に並んで配置された複数の搬送ユニットを有し、加工ユニットおよび搬送ユニットは左右方向に移動可能とされ、ワーク長に応じて加工ユニットおよび搬送ユニットが移動されて、各搬送ユニットが等ピッチで並ぶ位置に移動し、ワークの中心高さに合うようにワーク径に応じて切削部および固定部を上下方向に変位させる高さ調整部が設けられたことを特徴とする請求項1または2記載の面取機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状のワークの両端を同時に面取り加工する面取機に関する。
【背景技術】
【0002】
面取機は、切断された棒状の金属製ワークの両側の端面の面取り加工を行う。例えば特許文献1に記載のように、ワークの両端が同時に面取り加工される。順に搬送されてくる複数のワークを同時に面取り加工することにより、効率よく面取り加工を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−31901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のワークを同時に面取り加工を行うには、複数の切削工具をワークの搬送方向(前後方向)に沿って並べて配置しなければならない。ワークの両端を同時に面取り加工を行う場合、切削工具は左右一対に配置される。そのため、面取機は前後方向に長くなり、設置スペースが大きくなってしまう。設置スペースを小さくするためには、切削工具を単数にすればよい。このとき、高速で面取り加工を行うとともに、高速加工に合わせてワークの固定、切り屑の処理、搬送の処理能力を高めることにより、左右一対の切削工具であっても効率よく面取り加工を行うことができるようになる。
【0005】
本発明は、上記に鑑み、効率よく面取り加工を行える省スペースの面取機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の搬送されてきた棒状のワークの両端を同時に面取り加工する面取機は、搬送されてきたワークを基準位置に向けて粗位置決めする粗位置決め部と、粗位置決めされたワークを基準位置に対して精密位置決めする精密位置決め部と、位置決めされたワークの左右両側を挟んで固定する左右一対の固定部と、固定されたワークの左右両端を回転する切削工具によって切削して面取り加工する左右一対の切削部と、ワークの切削によって発生した切り屑を吸引して排出する吸引部と、後側から順に投入されたワークを前側に向かって搬送する搬送部とを備えている。後側から前側に向かって粗位置決め部と精密位置決め部と固定部とが順に並べられ、切削部は、主軸駆動モータによって回転されるフライホイールを備え、フライホイールを介して切削工具が回転される。搬送部は、固定部と駆動モータを共用して同時に動作して、各部に対してワークを同時に搬送する。ワークに対して順に粗位置決めと、精密位置決めと、固定および切削とが行われ、各動作が同時に行われる。切削工具はフライホイールの運動エネルギを利用して常に高速回転し、左右一対の切削工具だけで効率よく面取り加工を行える。
【0007】
固定されたワークの端面位置を検出するワーク端面検出部が設けられ、基準位置に対するワークの端面位置に基づいて切削部の作動が調整される。ワーク長のばらつきがあると、面取り加工の品質にもばらつきが生じるので、ワークの端面位置のずれに応じて切削部の作動を調整して、一定の面取り加工の品質を得られるようにする。
【0008】
切削部は、送りモータによって左右方向に移動可能とされ、切削部の移動とは別に切削部を左右方向に低周波振動させる振動部が設けられる。切削時に微振動を加えることにより、良好な加工面が得られるとともに、切り屑が細分化して、切り屑の処理がしやすくなる。固定部は、ワークを把持するクランプを備え、クランプは駆動モータにより回転駆動されるラインシャフトに連結された開閉体によって開閉され、搬送部は、ラインシャフトから駆動力を得るウォーキングビーム式とされる。クランプの動作と搬送動作とを容易に同期させることができ、加工処理時間の短縮を図れる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、左右一対の切削工具だけでワークの両端同時加工を高速で効率よく行うことができるようになるので、切削工具を前後方向に配置する必要がなくなり、省スペースの面取機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る抽伸機の下流側に設置された面取機の平面図
図2】面取機の概略平面図
図3】面取機の概略正面図
図4】搬送部の概略構成図
図5】搬送部と固定部の駆動系統を示す図
図6】搬送ユニットの移動機構を示す図
図7】粗位置決め部および精密位置決め部の概略斜視図
図8】(a)ピンチローラが閉じたときの粗位置決め部を示す図、(b)ピンチローラが開いたときの粗位置決め部を示す図
図9】(a)クランプが閉じたときの固定部の駆動系統を示す図、(b)クランプが開いたときの固定部の駆動系統を示す図
図10】(a)切削時の切削部の概略構成図、(b)待機時の概略構成図
図11】振動部の動作原理を示す図
図12】(a)従来の面取機の設置スペースを示す図、(b)本発明の面取機の設置スペースを示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る面取機を図1〜3に示す。面取機は、抽伸機1による、例えば棒鋼、鋼管といった金属製の棒状のワークWの引抜加工の最終工程において、ワークWの両端を同時に面取り加工することにより、ワークWの切断された端面の質感や美観を高めて、付加価値をつける。面取機は、抽伸機1の下流側に設置され、抽伸機1から送り出されたワークWの受台2の前側に配置され、面取機の前側に、面取り加工されたワークWを収納するクレードル3が配置される。そして、面取機は、受台2から投入されて搬送されてきたワークWを基準位置に向けて粗位置決めする粗位置決め部4と、粗位置決めされたワークWを基準位置に対して精密位置決めする精密位置決め部5と、位置決めされたワークWの左右両側を挟んで固定する左右一対の固定部6と、固定されたワークWの左右両端を回転する切削工具7によって切削して面取り加工する左右一対の切削部8と、ワークWの切削によって発生した切り屑を吸引して排出する吸引部9と、後側から投入された複数のワークWを前側に向かって順に搬送する搬送部10とを備えている。
【0012】
粗位置決め部4、精密位置決め部5、固定部6、切削部8、吸引部9が左右方向に移動可能な台車11上に設けられた支持台12に一体的に設けられてユニット化され、左右一対の加工ユニット13,14とされる。加工ユニット13,14において、後側から順に前側に向かって粗位置決め部4、精密位置決め部5、固定部6が並べられ、固定部6の左右方向の外側に切削部8が配置される。左右の加工ユニット13,14の間に搬送部10が設けられる。抽伸機1側に位置する左側の固定側加工ユニット13は定位置に固定され、抽伸機1から遠い側の移動側加工ユニット14はモータによって駆動されるラックピニオンにより左右方向に移動可能とされる。
【0013】
図4、5に示すように、搬送部10は、ウォーキングビーム搬送により複数のワークW、ここでは6本のワークWを同時に搬送し、受台2から投入されたワークWを各部に対して順に搬送して、最終的にワークWをクレードル3に払い出す。搬送部10は、ワークWを搬送する移動可能な搬送板15と、ワークWを載置する載置板16と、搬送板15を移動させる移動部17とを有する。
【0014】
搬送板15および載置板16の上部に、ワークWを保持する複数のV字状の溝18が形成され、搬送板15と載置板16とが対向して配置される。搬送板15と載置板16との間に、ワークWを転がして移動させる案内板19,20が前後にそれぞれ設けられている。後側の案内板19は、受台2から受け入れたワークWを載置板16に載るようにガイドする。前側の案内板20は、面取り加工されたワークWをクレードル3に入るようにガイドする。搬送部10は、受台2のワークWを後側の案内板19に送り込む供給部を有している。供給部は、受台2のワークWを1本ずつ後側の案内板19に向かって転がして、搬送部10に送り込む。供給部として、受台2と案内板19との間にV字状の溝受21が傾斜可能に設けられる。溝受21が案内板19側に傾くことにより、溝受21と案内板19とが面一となり、ワークWが載置版16の溝18に向かって転がり落ちる。
【0015】
対向する搬送板15と載置板16とによって搬送ユニット22が構成され、複数の搬送ユニット22が左右方向に並んで配置される。固定側加工ユニット13に近い搬送ユニット22と移動側加工ユニット14に近い搬送ユニット22では、搬送板15と載置板16との配置が左右逆になっている。
【0016】
そして、図6に示すように、搬送ユニット22はラックピニオンによって駆動されるチェーン23によって左右方向に移動可能とされる。搬送ユニット22にピニオン24が回動可能に取り付けられ、ピニオン24は移動側加工ユニット14に取り付けられたラック25によって回動される。搬送ユニット22のピニオン24と一体的にスプロケット26が設けられ、搬送ユニット22の左右両側にギア27が回動可能に取り付けられ、チェーン23が一側のギア27、スプロケット26、他側のギア27に掛けられる。なお、両側の加工ユニット13,14に近い搬送ユニット22は加工ユニット13,14に一体的に設けられ、チェーン駆動されない。チェーン23の両端は移動側加工ユニット14の左右にそれぞれ固定される。ギヤードモータ28の駆動によりギヤードモータ28に接続されたピニオン29が回動して、ラック25が左右方向に移動する。スプロケット26が回動して、チェーン23が駆動され、ワーク長に応じて各搬送ユニット22および移動側加工ユニット14が移動して、各搬送ユニット22および移動側加工ユニット14の位置が可変される。なお、スプロケット26の丁数は各搬送ユニット22の移動量に応じて設定され、各搬送ユニット22は等ピッチで近接離間する。
【0017】
搬送板15は、載置板16に移動可能に支持され、載置板16に対して円の軌跡を描くように移動する。搬送板15に3つのクランクアーム30が上下に取り付けられ、上側の2つのクランクアーム30の一端が搬送板15に回動可能に取り付けられ、他端が載置板16に取り付けられた支軸31に回動可能に支持される。下側のクランクアーム30の一端が搬送板15に回動可能に取り付けられ、他端が図示しない減速機の出力軸に取り付けられる。
【0018】
下側のクランクアーム30は減速機を介して伝達される駆動モータ33の駆動力によって回動される。駆動モータ33に伝動ベルト34を介してラインシャフト35が連結され、回転駆動されるラインシャフト35に入力ギア36が取り付けられ、減速機の入力側に接続されたギア37が入力ギア36に噛み合う。回転駆動されるラインシャフト35の駆動力がギア対、減速機を経て下側のクランクアーム30に伝達され、クランクアーム30が回動する。これにより、停止時に載置板16よりも下にある搬送板15が上昇して載置板16よりも上に出てから前側に向かって移動し、載置板16よりも下に移動して停止位置に戻る。このとき、載置板16に載置されているワークWが1つ前側の溝18に搬送される。このように、移動部17は、駆動モータ33、ラインシャフト35、ギア対、減速機、クランクアーム30によって構成され、駆動モータ33は間欠的に動作される。
【0019】
粗位置決め部4は、ワークWを位置決めする当て板40と、位置決めモータ41によって回転駆動される一対のピンチローラ42とから構成され、ピンチローラ42の回転によりワークWを当て板40に向けて送り出す。当て板40は固定側加工ユニット13に設けられ、ピンチローラ42が移動側加工ユニット14に設けられる。当て板40は、ワークWの基準位置に対応する位置に設置される。図7に示すように、各ピンチローラ42の回転軸43が開閉板44に回動可能にそれぞれ支持される。各開閉板44は移動側加工ユニット14に取り付けられたフレーム45に支軸46周りに回動可能に設けられる。各回転軸43がユニバーサルジョイント47を介してそれぞれギア48に連結され、互いのギア48は噛み合い、一方のギア48がモータ41に連結される。各ギア48および位置決めモータ41はフレーム45に取り付けられている。位置決めモータ41の駆動により一方のギア48が回転すると、他方のギア48も回転して、各ピンチローラ42が回転する。
【0020】
図8に示すように、開閉板44は、固定部6の動作に連動して動作する。後述の固定部6に設けられた作動板49が一方の開閉板44に当接し、作動板49の移動に伴って開閉板44が支軸46周りに回動して、2つの開閉板44が近接離間する。2つの開閉板44に押し当てられたガススプリング50が設けられ、ガススプリング50の付勢によって、一方の開閉板44の回動に連動して他方の開閉板44も回動し、ピンチローラ42が互いに近接離間する。開閉板44が開いたとき、ピンチローラ42は離れた状態となり、開閉板44が閉じると、ピンチローラ42がワークWを挟んだ状態となる。開閉板44が閉じている状態でピンチローラ42が回転すると、ワークWが当て板40に向かって送り出される。
【0021】
精密位置決め部5は、当て板40と、ワークWを当て板40に押し当てるプッシャ51から構成され、プッシャ51はエアシリンダ52によって動作する。プッシャ51がアーム53の上端に取り付けられ、アーム53はフレーム45に支軸54周りに回動可能に取り付けられる。アーム53の下端にエアシリンダ52が接続され、アーム53が支軸54周りに回動すると、プッシャ51が左右方向に移動して、ワークWを当て板40側に押し込む。
【0022】
図58、9に示すように、左右の加工ユニット13,14に設けられた固定部6は、ワークWを把持する開閉可能なクランプ60と、クランプ60を開閉する開閉体61とを備え、クランプ60は、前後一対のジョー62を有し、各ジョー62は前後一対のスライダ63にそれぞれ取り付けられ、スライダ63は前後方向に移動可能とされる。開閉体61は、駆動モータ33により回転駆動されるラインシャフト35から駆動力を得て作動する。開閉体61によってスライダ63が前後方向に移動され、クランプ60が開閉される。駆動モータ33の駆動力は搬送部10と共用され、固定部6と搬送部10が連動して作動することにより、搬送のタイミングと開閉のタイミングとの間に生じるタイムロスをなくすことができる。
【0023】
開閉体61は、板カム64、カムフォロア65、一対のベルクランク66、図示しない内部リンク、センタリングカム67、ガススプリング68によって構成される。各ベルクランク66が前後のスライダ63に回動可能にそれぞれ取り付けられる。2つのスライダ63はセンタリングカム67によって連結され、互いに近接離間するように同期して移動する。ラインシャフト35に取り付けられた入力ギア70に噛み合うギア71にウォーム式減速機72が接続され、板カム64がこの減速機72の出力側に接続される。板カム64に接触しているカムフォロア65に一方のベルクランク66が連結される。2つのベルクランク66は内部リンクによって連結され、前後のベルクランク66が連動して回動する。他方のベルクランク66に取り付けられたスライダ63を押し込むようにガススプリング68が設けられ、ガススプリング68の圧縮によって発生する圧縮力でジョー62にクランプ荷重を付加する。スライダ63に作動板49が取り付けられ、スライダ63の移動に伴って作動板49も移動する。このように、クランプ60の開閉に連動して粗位置決め部4が作動し、クランプ60が閉じたとき、ピンチローラ42が近接し、ワークWの固定と粗位置決めが同時に行われる。
【0024】
切削部8では、切削工具7として容易に交換可能なスローアウェイチップが用いられ、シャンク80がハイドロブッシュによりスピンドル81の先端に固定される。スピンドル81は主軸駆動モータ82によって回転駆動される。図10に示すように、主軸駆動モータ82からVプーリ83、伝動ベルト84を介して回転駆動力はフライホイール85に伝えられ、フライホイール85にスピンドル81が接続される。
【0025】
ここで、スピンドル81を工具メーカが推奨する切削条件域で高速回転、ここでは7000rpm(Max10000rpm)をさせることにより、高速で高品質な面取り加工を行える。しかし、面取り加工は間欠的かつ瞬間的に行われるが、高速回転させるためにモータ82を常時駆動させていると、エネルギ効率が悪くなる。そこで、フライホイール85を使用することにより、フライホイール85の回転の運動エネルギを利用して、切削工具7を常に高速回転させることができる。主軸駆動モータ82は、フライホイール85に運動エネルギを貯えるために駆動される。これにより、小さいトルクのモータ82でスピンドル81を高速回転させることができ、モータ82の小型化、小容量化を図ることができる。さらに、スピンドル81をグリスを封入したアンギュラベアリングで支持して、高速回転を維持し、モータ82の駆動力を伝達する伝動ベルト84にVベルトを用いることにより、駆動力の伝達効率を高めている。
【0026】
そして、左右の切削部8は、送りモータ90によって左右方向に移動可能とされ、切削部8の移動とは別に切削部8を左右方向に低周波振動させる振動部91が設けられる。切削部8は、支持台12上を左右方向にスライドする基台92に搭載され、基台92にボールねじ93が設けられ、ボールねじ93のねじ軸94がサーボモータからなる送りモータ90に接続されている。送りモータ90による回転運動がボールねじ93により直線運動に変換され、基台92がガイドレール95に沿ってスライドする。切削工具7はクランプ60によって固定されたワークWの端面より離れた位置で待機しており、面取り加工するときに送りモータ90が駆動されて、切削工具7がワークWの端面まで移動する。
【0027】
ところで、基準位置に合わせて位置決めされたワークWが搬送されて、クランプ60によって固定されたとき、ワーク長のばらつきによってワークWの端面位置が基準位置からずれている場合がある。例えば、ワーク長が設定されたワーク長よりも長いとき、当て板40側のワークWの端面は基準位置にあるが、プッシャ50側の端面は基準位置よりも切削工具7寄りにずれて位置する。ワーク長が設定されたワーク長よりも短いとき、当て板40側のワークWの端面が当て板40に当接しないと、基準位置からずれて位置する。また、精密位置決めされたワークWが固定部6に搬送されたとき、わずかに位置ずれすることがある。このようなずれが生じると、基準位置に合わせて設定された面取り加工量が得られなくなる。そこで、クランプ60によって固定されたワークWの左右両側の端面位置を検出するワーク端面検出部96が設けられ、基準位置に対するワークWの端面位置に基づいて面取り加工が調整される。
【0028】
ワーク端面検出部96は、レーザー測長機を用いてワークWの基準位置に対する位置決め誤差を検出する。レーザー測長機の発光器97と受光器98がワークWを挟んで上下方向に配置され、ワークWが遮断する範囲から端面位置が測定され、基準位置に対するワークWのずれ量が検出される。このずれ量に基づいて切削工具7の送り量が補正され、面取り加工が調整される。ワークWの端面位置が切削工具7に近い側にずれている場合、送り量が小さくされ、端面位置が切削工具7から遠い側にずれている場合、送り量が大きくされる。
【0029】
振動部91は、送りモータ90を保持する支持台12に設けられ、ねじ軸94を介して切削工具7が搭載されている基台92を微振動させる。振動部91では、モータ駆動される偏心カム100の偏心回転による振動が板ばね101に伝動され、左右方向に微振動が発生する。偏心回転の上下変位成分は板ばね101の撓みで吸収され、左右方向成分が板ばね101で支持台12上の送りモータ90からねじ軸94に伝達され、ボールねじ93を通じて基台92が左右方向に低周波で移動して、切削工具7が微振動する。これにより、切削荒れや面荒れしやすいワークWにおいて、バリのない良好な加工面が得られるとともに、切り屑も細分化する。なお、電動の偏心カムの代わりに、電磁式バイブレータを用いてもよい。
【0030】
吸引部9は、切削工具7の周囲から切り屑を吸引して、集塵装置102に回収する。切削工具7を取り囲む吸引フード103が設けられ、吸引フード103と台車11上に設けられた集塵装置102が吸引管104によって接続される。吸引フード103には、ワークWが挿入される小さい開口105だけが形成され、切り屑が周囲に飛散しないようになっている。吸引は送風機による送風あるいは圧縮空気によって吸い込む空圧式とされ、細分化された切り屑を残すことなく集塵装置102に集めることができる。集塵装置102は、サイクロンを利用して切り屑を回収する。
【0031】
面取機の動作はコントローラによって制御されている。コントローラは、粗位置決め部4、精密位置決め部5、固定部6、切削部8、吸引部9、搬送部10、振動部91、ワーク端面検出部96の各部を所定のタイミングで駆動制御して、短時間(1.8秒)の面取り加工のサイクルを繰り返す。
【0032】
ワークWの面取り加工が終了すると、固定部6と搬送部10が同時に動作して、クランプ60が開き、複数のワークWが同時に搬送される。ワークWが搬送されると、粗位置決め部4による粗位置決めと、精密位置決め部5による精密位置決めと、クランプ60が閉じることによるワークWの固定が同時に行われる。ワークWの固定後、ワーク端面検出部96が動作して、ワークWの端面位置が検出され、切削工具7の送り量が補正され、切削部8および吸引部9が動作して、面取り加工と切り屑の吸引が行われる。面取り加工が終了すると、次のサイクルが開始される。
【0033】
ところで、抽伸機1によって引き抜き加工されるワークWの仕様に応じてワーク長やワーク径が異なる。そのため、ワーク長に応じて両加工ワークWの間隔を変更したり、ワーク径に応じて搬送ユニット22に対する切削工具7の芯高さを変更する必要が生じる。面取機は、ワーク長やワーク径に応じて加工ユニット13,14や搬送ユニット22の位置変更と切削工具7の芯高さの変更を行う自動段取機能を有している。
【0034】
コントローラにワーク長が入力されると、コントローラは加工ユニット13,14および搬送ユニット22を移動させる自動段取替えを実行する。コントローラは、移動側加工ユニット14の台車11を移動させるとともに、チェーンを回して、各搬送ユニット22を移動させる。移動側加工ユニット14がワーク長に応じた位置に移動して、この移動に伴って各搬送ユニット22が等ピッチで並ぶ位置に移動する。
【0035】
コントローラにワーク径が入力されると、コントローラは切削工具7およびクランプ60を上下方向に移動させて、載置板16に載ったワークWの中心高さに合うように切削部8および固定部6の高さを変える自動段取替えを実行する。加工ユニット13,14において、台車11と支持台12との間に支持台12を上下動させる高さ調整部106が設けられる。
【0036】
高さ調整部106として、台車11上に傾斜台が左右方向に移動可能に設けられ、切削部および固定部を搭載した支持台12を支持するローラフォロアが傾斜台に載せられる。傾斜台はモータ駆動されるねじ軸により左右方向に移動する。ワーク径に応じて設定された距離だけ傾斜台が移動することにより、切削部8および固定部6が上下方向に変位して、切削工具7およびクランプ60の芯高さがワークWの中心高さと一致する。なお、高さ調整部106として、パンタグラフ式の昇降装置を用いてもよい。
【0037】
上記のように、切削工具7の高速回転を維持して両端同時加工を行うことにより、単数でも十分な処理能力が得られるので、左右一対に切削工具7を配置した面取機を提供することができる。図12に示すように、上記の面取機Bを使用すると、従来の面取機Aに比べて前後方向の長さを小さくすることができ、面取機の設置スペースが小さくなる。これによって、抽伸機1を前後方向に多く並べることが可能となり、多くのワークWを処理できるようになって、効率よく製品を製造することができる。
【0038】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加え得ることは勿論である。ワーク端面検出部96において、レーザー測長機の代わりにカメラを用いてもよく、ワークWの画像から端面位置を検出する。
【符号の説明】
【0039】
2 受台
3 クレードル
4 粗位置決め部
5 精密位置決め部
6 固定部
7 切削工具
8 切削部
9 吸引部
10 搬送部
33 駆動モータ
35 ラインシャフト
60 クランプ
61 開閉体
82 主軸駆動モータ
85 フライホイール
90 送りモータ
91 振動部
96 ワーク端面検出部
【要約】
【課題】効率よく面取り加工を行える省スペースの面取機を提供する。
【解決手段】ワークWを基準位置に向けて粗位置決めする粗位置決め部4と、粗位置決めされたワークWを基準位置に対して精密位置決めする精密位置決め部5と、位置決めされたワークWの左右両側を挟んで固定する左右一対の固定部6と、固定されたワークWの左右両端を切削工具7によって同時に切削して面取り加工する左右一対の切削部8と、切り屑を吸引して排出する吸引部9と、後側から順に投入されたワークWを前側に向かって搬送する搬送部10とを備えている。後側から前側に向かって粗位置決め部4、精密位置決め部5、固定部6が順に並べられ、切削部8は、主軸駆動モータ82によって回転されるフライホイール85を備え、フライホイール85を介して切削工具7が回転される。搬送部10は、固定部6と駆動モータ33を共用して同時に動作する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12