【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、実施例に記載の形態に限定されるものではない。
【0044】
実施例1〜5及び比較例1〜3で使用した原料は以下の通りである。
<ジイソシアネート>
・ミリオネート(登録商標)NM:東ソー株式会社製、モノメリックMDI(2,4’−MDI:4,4’−MDI=54:46)
・ミリオネート(登録商標)MT:東ソー株式会社製、モノメリックMDI(4,4’−MDI)
<イソシアネートと反応し得る官能基を1つ有する有機化合物(モノイソシアネート)>
・フェニルイソシアネート
<カルボジイミド化触媒>
・3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド
<溶媒>
・テトラヒドロフラン(THF)
【0045】
(実施例1:ポリカルボジイミド化合物(a)の合成〔原料のジイソシアネート化合物中、2,4’−MDI:54%、4,4’−MDI:46%〕)
ジイソシアネート化合物として、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)54%と、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)46%との混合物(東ソー株式会社製、モノメリックMDI;ミリオネート(登録商標)NM)100質量部、イソシアネートと反応し得る官能基を1つ有する有機化合物として、フェニルイソシアネート6.3質量部およびカルボジイミド化触媒として、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド0.6質量部を還流管および撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下100℃で2時間撹拌し、赤外吸収(IR)スペクトル測定による波長2270cm
−1前後のイソシアネート基による吸収ピークがほぼ消失したことを確認して、重合度16のポリカルボジイミド化合物(a)を得た。
ここで、「重合度」とは、前記一般式(1)中のnを表す。
【0046】
(実施例2:ポリカルボジイミド化合物(b)の合成〔2,4’−MDI:54%〕)
実施例1において、フェニルイソシアネートの配合量を9.5質量部に変更した以外は実施例1と同様にして重合度11のポリカルボジイミド化合物(b)を得た。
【0047】
(実施例3:ポリカルボジイミド化合物(c)の合成〔2,4’−MDI:54%〕)
実施例1において、フェニルイソシアネートの配合量を15.8質量部に変更した以外は実施例1と同様にして重合度6のポリカルボジイミド化合物(c)を得た。
【0048】
(実施例4:ポリカルボジイミド化合物(d)の合成〔2,4’−MDI:38%〕)
実施例2において、ジイソシアネート化合物として、2,4’−MDI54%と、4,4’−MDI46%との混合物(東ソー株式会社製、モノメリックMDI;ミリオネート(登録商標)NM)70.4質量部、及び4,4’−MDI(東ソー株式会社製、モノメリックMDI;ミリオネート(登録商標)MT)29.6質量部を用いた以外は実施例2と同様にして重合度11のポリカルボジイミド化合物(d)を得た。
【0049】
(実施例5:ポリカルボジイミド化合物(e)の合成〔2,4’−MDI:54%〕)
実施例1において、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を300質量部用い、溶媒還流下とした以外は実施例1と同様にして重合度16のポリカルボジイミド化合物(e)を得た。
【0050】
(比較例1:ポリカルボジイミド化合物(f)の合成〔4,4’−MDI:100%〕)
ジイソシアネート化合物として、4,4’−MDI(東ソー株式会社製、モノメリックMDI;ミリオネート(登録商標)MT)100質量部、イソシアネートと反応し得る官能基を1つ有する有機化合物として、フェニルイソシアネート9.5質量部およびカルボジイミド化触媒として、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド0.6質量部を還流管および撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下100℃で2時間撹拌したが、反応途中でゲル化した。
【0051】
(比較例2:ポリカルボジイミド化合物(g)の合成〔4,4’−MDI:100%〕)
ジイソシアネート化合物として、4,4’−MDI(東ソー株式会社製、モノメリックMDI;ミリオネート(登録商標)MT)100質量部、イソシアネートと反応し得る官能基を1つ有する有機化合物として、フェニルイソシアネート9.5質量部、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を300質量部およびカルボジイミド化触媒として、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド0.6質量部を還流管および撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、溶媒還流下で3時間撹拌し、赤外吸収(IR)スペクトル測定による波長2270cm
−1前後のイソシアネート基による吸収ピークがほぼ消失したことを確認した後、50℃の乾燥機でテトラヒドロフランを蒸発させて重合度11のポリカルボジイミド化合物(g)を得た。
【0052】
(比較例3:ポリカルボジイミド化合物(h)の合成〔2,4’−MDI:19%〕)
比較例2において、ジイソシアネート化合物として、2,4’−MDI54%と、4,4’−MDI46%との混合物(東ソー株式会社製、モノメリックMDI;ミリオネート(登録商標)NM)35.2質量部、及び4,4’−MDI(東ソー株式会社製、モノメリックMDI;ミリオネート(登録商標)MT)64.8質量部を用い、反応温度を100℃に変更した以外は比較例2と同様にして重合度11のポリカルボジイミド化合物(h)を得た。
【0053】
<評価項目>
(1)溶媒への溶解性
テトラヒドロフラン100質量部に対し、実施例1〜4および比較例2、3で得られたポリカルボジイミド化合物50質量部を添加して室温(25℃)で10分間撹拌した。均一溶液となったものを「溶解」、溶けきらなかったものを「不溶」として評価した。
また、テトラヒドロフランをシクロヘキサノン及びトルエンに変更して同様の操作によりポリカルボジイミド化合物の溶解性について評価した。結果を表1に示す。
【0054】
(2)保存安定性試験1:溶媒(トルエン)中での保存安定性
実施例1〜4および比較例3で得られたポリカルボジイミド化合物を、それぞれトルエン中に50wt%となるように溶解し、ポリカルボジイミド溶液を得た。このポリカルボジイミド溶液を密閉容器に入れ、常温(20℃)で放置し、ゲル化するまで(目視で固形物が析出するまで)の時間を測定した。結果を表1に示す。
なお、ゲル化するまでの時間が長いほどポリカルボジイミド化合物の保存安定性が良いことになる。
【0055】
(3)保存安定性試験2:100℃でのゲルタイム測定
実施例1〜4および比較例3で得られたポリカルボジイミド化合物を粉砕機で粉末にしてアルミシャーレに入れ、100℃に加熱したホットプレートに載せた。アルミシャーレを保持しながら内容物をスパチュラでかき混ぜ、ゲル化するまで(スパチュラでかき混ぜることができなくなるまで)の時間を測定した。結果を表1に示す。
なお、ゲル化するまでの時間が長いほどポリカルボジイミド化合物の保存安定性が良いことになる。
【0056】
【表1】
【0057】
実施例1〜4で得られたポリカルボジイミド化合物は、いずれの溶媒にも溶解し、トルエン中での保存安定性に優れていた。一方、ジイソシアネート化合物として、4,4’−MDIのみ用いてテトラヒドロフラン中で合成したポリカルボジイミド化合物は、いずれの溶媒にも溶解しなかった(比較例2)。また、2,4’−MDIの割合が本発明で規定する範囲よりも少ないポリカルボジイミド化合物は、いずれの溶媒にも溶解したが、トルエン中での保存安定性が低かった(比較例3)。
【0058】
実施例6〜13及び比較例4、5で使用した原料は以下の通りである。
<エポキシ樹脂>
・jER(登録商標)828:三菱ケミカル株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂
・NC−3000:日本化薬株式会社製、ビフェニル型エポキシ樹脂
<硬化剤>
・実施例1で合成したポリカルボジイミド化合物(a)
・実施例2で合成したポリカルボジイミド化合物(b)
・実施例3で合成したポリカルボジイミド化合物(c)
・実施例4で合成したポリカルボジイミド化合物(d)
・比較例2で合成したポリカルボジイミド化合物(g)
・比較例3で合成したポリカルボジイミド化合物(h)
<硬化促進剤>
・キュアゾールTBZ:四国化成工業株式会社製、イミダゾール系エポキシ樹脂硬化促進剤
【0059】
(実施例6)
エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;jER(登録商標)828)100質量部、粉砕機で粉末にした実施例1のポリカルボジイミド化合物(a)91質量部をアルミシャーレに入れて、100℃のホットプレートに載せて樹脂をスパチュラで混合し、ポリカルボジイミド化合物含有樹脂組成物を得た。
【0060】
(実施例7〜9及び比較例4)
ポリカルボジイミド化合物を表2に示した組成に変更した以外は実施例6と同様にして、実施例7〜9、及び比較例4のポリカルボジイミド化合物含有樹脂組成物を得た。なお、表2中、空欄は配合なしを表す。
【0061】
(実施例10)
エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、ビフェニル型エポキシ樹脂;NC−3000)100質量部、粉砕機で粉末にした実施例1のポリカルボジイミド化合物(a)73.3質量部、及び硬化促進剤(四国化成工業株式会社製、イミダゾール系エポキシ樹脂硬化促進剤;キュアゾールTBZ)0.2質量部をアルミシャーレに入れて、100℃のホットプレートに載せて樹脂を混合し、ポリカルボジイミド化合物含有樹脂組成物を得た。
【0062】
(実施例11〜13及び比較例5)
ポリカルボジイミド化合物を表3に示した組成に変更した以外は実施例10と同様にして、実施例11〜13、及び比較例5のポリカルボジイミド化合物含有樹脂組成物を得た。なお、表3中、空欄は配合なしを表す。
【0063】
(実施例14)
エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;jER(登録商標)828)100質量部、粉砕機で粉末にした実施例1のポリカルボジイミド化合物(a)91質量部をテトラヒドロフラン200重量部に溶解して、離形PETフィルムにキャストして100℃で5分乾燥させて、ポリカルボジイミド化合物含有樹脂組成物を得た。
【0064】
(実施例15〜17)
ポリカルボジイミド化合物を表4に示した組成に変更した以外は実施例14と同様にして、実施例15〜17のポリカルボジイミド化合物含有樹脂組成物を得た。なお、表4中、空欄は配合なしを表す。
【0065】
<評価項目>
(4)硬化性試験:120℃及び185℃でのゲルタイム測定
(4−1)120℃でのゲルタイム測定
実施例6〜13及び比較例4、5で得られたポリカルボジイミド化合物含有樹脂組成物を粉砕機で粉末にしてアルミシャーレに入れ、120℃に加熱したホットプレートに載せた。アルミシャーレを保持しながら内容物をスパチュラでかき混ぜ、ゲル化するまで(スパチュラでかき混ぜることができなくなるまで)の時間を測定した。結果を表2及び表3に示す。
なお、ゲル化するまでの時間が長いほどポリカルボジイミド化合物の低温での反応性が抑制されていることになる。
【0066】
(4−2)185℃でのゲルタイム測定
上記(4−1)におて、ホットプレートの温度を185℃に変更して、上記操作と同様にしてゲル化するまでの時間を測定した。結果を表2及び表3に示す。
なお、温度185℃でのゲルタイム測定は、ポリカルボジイミド化合物を硬化剤として用いる時の硬化反応性を示す。
【0067】
(5)ガラス転移温度
実施例6〜17及び比較例4〜5で得られたポリカルボジイミド化合物含有樹脂組成物を180℃で2時間加熱して成形体(縦2cm×横1cm×厚み100μm)を得た。得られた成形体を、動的粘弾性測定器(セイコーインスツル株式会社製、DMS6100)を用い、昇温速度10℃/min.の条件でガラス転移温度を測定した。結果を表2〜4に示す。
なお、ガラス転移温度が高いほど、耐熱性が高く、高温時の特性変化がなく信頼性が高いことが期待できる。
【0068】
【表2】
【0069】
実施例6〜9で得られたポリカルボジイミド化合物含有樹脂組成物の120℃でのゲルタイムは557〜784秒であり、比較例4のポリカルボジイミド化合物含有樹脂組成物と比較していずれも長く、ポリカルボジイミド化合物の低温での反応性が抑制されていることが分かる。また、185℃でのゲルタイムは長くなり過ぎず、十分な硬化反応性を示すことが分かる。さらに、該樹脂組成物の成形体のガラス転移温度はいずれも250℃以上と高く、耐熱性に優れていた。
【0070】
【表3】
【0071】
実施例10〜13で得られたポリカルボジイミド化合物含有樹脂組成物の120℃でのゲルタイムは503〜795秒であり、比較例5のポリカルボジイミド化合物含有樹脂組成物と比較していずれも長く、ポリカルボジイミド化合物の低温での反応性が抑制されていることが分かる。また、185℃でのゲルタイムは長くなり過ぎず、十分な硬化反応性を示すことが分かる。さらに、該樹脂組成物の成形体のガラス転移温度はいずれも260℃以上と高く、耐熱性に優れていた。
【0072】
【表4】
【0073】
実施例14〜17の結果から、本発明のポリカルボジイミド化合物を溶媒に溶解させてもガラス転移温度の高い硬化物が得られることがわかった。