(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6947515
(24)【登録日】2021年9月21日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】過行程指示装置を備えたガスシリンダアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F16F 9/02 20060101AFI20210930BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
F16F9/02
F16F9/32 U
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-48377(P2017-48377)
(22)【出願日】2017年3月14日
(65)【公開番号】特開2017-172797(P2017-172797A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2020年1月23日
(31)【優先権主張番号】102016000030722
(32)【優先日】2016年3月24日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】511212815
【氏名又は名称】スペシャル・スプリングス・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】SPECIAL SPRINGS S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】マッシーモ フィオレーゼ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ファンティナート
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト レッシュ
【審査官】
児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−181661(JP,A)
【文献】
特表2002−503791(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/193187(WO,A1)
【文献】
特開2016−034664(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0265070(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/00−15/28
20/00−21/12
F16F 9/00− 9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状のジャケット(11)と、
端壁(12)と、
ステム・ピストン(14)のための向かい側の環状ガイド(13)であって、前記ジャケット(11)から軸線方向(X)に突出する環状ガイド(13)と、
前記環状ガイド(13)を貫通して配置されたステム・ピストン(14)と、
前記ジャケット、前記端壁、前記ステム・ピストンのための前記環状ガイド及び前記ステム・ピストンによって規定された加圧ガス(15)のための室と、
前記ステム・ピストン(14)の過行程が発生したことを指示する指示装置(17)と
を具備し、
前記指示装置(17)は、
前記ジャケット(11;111;311)と前記環状ガイド(13;213)との間の対応した座(19)内に部分的に挿入され、前記環状ガイド(13;213)における端部(21;221)の外側面(20)を囲む環状本体(18;118;218)を含み、
前記環状本体は、前記ジャケット(11;111;311)内に径方向に突出した要素(22)に軸線方向(X)に当接し、塑性変形可能、又は、変形可能且つ破損可能、又は、塑性変形無しで破損可能な金属からなり、
前記環状本体の塑性変形又は破損は、過行程の状況が発生したことを際立たせる、
過行程指示装置を備えたガスシリンダアクチュエータ(10)。
【請求項2】
前記環状本体(18)は円筒状で且つ前記環状ガイド(13)における前記端部(21)の外側面と前記ジャケット(11)の内面(25)における軸線方向(X)の延長面(24)との間に規定された円筒状の占有空間(23)内に収まる輪郭をなし、前記延長面(24)は前記外側面(20)を囲んでいる、請求項1に記載のガスシリンダアクチュエータ。
【請求項3】
前記座(19)からの前記環状本体(18)の離座を防止すべく構成された引き抜き防止手段を更に具備する、請求項1又は2に記載のガスシリンダアクチュエータ。
【請求項4】
前記引き抜き防止手段は、前記環状本体(18;118)から突出する内周径方向突起(28)を含み、
該内周径方向突起(28)は、前記環状ガイド(13)の前記外側面(20)に形成された対応の外周座(29)内に挿入されている、請求項3に記載のガスシリンダアクチュエータ。
【請求項5】
前記引き抜き防止手段は、前記環状本体(118)から突出する外周径方向突起(130)を含み、
前記外周径方向突起(130)は、前記ジャケット(111)の内側面(125)に形成された対応の内周座(131)内に挿入されている、請求項3に記載のガスシリンダアクチュエータ。
【請求項6】
前記環状本体(218)は、前記環状ガイド(213)の前記端部(221)に締まり代をもって嵌合されている、請求項1〜5の何れかに記載のガスシリンダアクチュエータ。
【請求項7】
前記環状本体(318)は、前記ジャケット(311)の端部(341)内に前記環状本体(318)の一部(318a)が締まり代をもって挿入されることで、前ジャケット(311)に結合されている、請求項1〜5の何れかに記載のガスシリンダアクチュエータ。
【請求項8】
前記ジャケット(11)内に径方向に突出した前記要素(22)は引き抜き防止リングによって構成され、
前記引き抜き防止リングは、
前記ジャケット(11)の内面(25)に形成された座(32)内の第1部分と、
前記ジャケット(11)の内部に向けて径方向に突出する第2部分と
を有し、
前記第2部分は、向かい側の前記環状ガイド(13)の引き抜き防止肩(33)に当接している、請求項1〜7の何れかに記載のガスシリンダアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過行程指示装置を備えたガスシリンダアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ガスシリンダアクチュエータはガスを収容する管状のジャケットによって形成され、該ジャケットはその一端がガスを充填する弁を備えた端壁で、その他端がヘッド部分で密封して閉じられている。ヘッド部分にはピストンを備えたステムのための通路が貫通し、前記ピストンはジャケット内で並進運動する。ジャケット、端壁及びヘッド部分は
ピストンの移動空間を規定し、一方、ピストン自身はジャケット及び端壁と共にガスの圧縮膨脹室を規定する。
【0003】
また、このようなガスシリンダアクチュエータは排他的ではないが、典型的に成形型(mold die)、成形プレス等を使用する状況下にて使用され、該状況では高い内部圧又はプレス又は成形型に連携する部品でもって衝撃を受け、損傷を受け易い。このような損傷はガスシリンダアクチュエータを使用不能にし、その交換の必要性や、そのガスシリンダアクチュエータが作動すべく配置された機械又は設備の稼働停止を必然的にもたらす。また、制御不能な圧力上昇に起因した破裂、ステム・ピストン又はジャケット内にステム・ピストンを保持する部品の損傷に起因した破裂又は加圧ガスの制御不能な流出を伴う破損等の場合、前述の損傷はその近傍に偶然居合わせたオペレータを怪我させる虞がある。
【0004】
このような損傷を導く主要な理由の1つは、ピストンの「過行程」、即ち、特定のガスシリンダアクチュエータが対処する許容行程よりも大きなステム・ピストンの引き込み行程として知られている。
【0005】
例えば、そのような「過行程」は、ガスシリンダアクチュエータのステムに関し、予期しない行程の増大によって引き起こされ、これはガスシリンダアクチュエータの本体内に予知できない長さに亘ってステムを強制的に更に押し込み、ガスシリンダアクチュエータの全体構造によって支えきれない「過行程」を発生させる。
【0006】
従って、ガスシリンダアクチュエータは膨脹し或いは裂けて開き、又は、その構成部品が互いに結合されている点或いはシール要素が降伏する点で破損する。これらの場合の全てで、危険なものとなる急速なガス流出が予期せず且つ不所望に発生する。
【0007】
このような危険な過行程の状況が発生するのを防止するために、安全装置を含むガスシリンダアクチュエータが開発されており、該ガスシリンダアクチュエータは過行程の場合、加圧ガスを安全に制御して流出させるように適合されている。
【0008】
このようなガスシリンダアクチュエータは例えば、同一の出願人の名義のEP2406520に開示され且つ請求されている。
【0009】
その過行程安全装置を備えたガスシリンダアクチュエータは、ガスを収容する管状のジャケットであって、その一端が端壁で、他端がヘッド部分で密封して閉じられ、該ヘッド部分がピストンを備えたステムのための通路で貫通されている、ジャケットと、該ジャケット、端壁及びピストンで規定されたガスの圧縮膨脹室とを含み、圧縮膨脹室内にて、ジャケットの内面に少なくとも1つの低解放領域を有することに特徴付けられる。低解放領域は、ピストン又はヘッド部分の何れかと連携し且つジャケットの内面に対して働くシール手段によって提供されたシールを破断するように構成されている。低解放領域は前記ピストンの復帰ストローク又はヘッド部分の限界を規定する位置に備えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような過行程安瀬装置付きのガスシリンダアクチュエータは、非常に良く機能し且つ市場に広く評価されているもの、過行程安全装置がその役目を果たした事実の視認性に関しては改善されるべき余地を残している。
【0011】
事実上、過行程の状況が発生しても、ガスシリンダアクチュエータは完全に良好な状態に見えるものの、ガスの一部は制御されて逃げており、この結果、ガスシリンダアクチュエータの作動は最早、期待されるものではない。
【0012】
ステム・ピストンの過行程に際し、過行程安全装置の介在に起因したガスシリンダアクチュエータからのガスの流出は知覚されることがなく、ガスが部分的に排出されたガスシリンダアクチュエータの劣等な作動は、そのガスシリンダアクチュエータが配置された型又はプレスから取り出された製品が設計上の仕様を満たしていないときにのみ明らかとなる。
【0013】
それ故、本発明の狙いは、通常のガスシリンダアクチュエータの上述した制限を解消することができる過行程指示装置を備えたガスシリンダアクチュエータを提供することにある。
【0014】
前記狙いのうち、本発明の目的は、過行程安全装置が作動したことを明瞭に知覚することができるガスシリンダアクチュエータを提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、ガスシリンダアクチュエータが配置された型又は他の機械を十分に効率的にして、ユーザに速やかに回復させることができるガスシリンダアクチュエータを提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、通常のガスシリンダアクチュエータよりも低下しない機能を備えたガスシリンダアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記狙いや、目的及び他の目的はこの後により明らかとなり、請求項1の過行程指示装置を備えたガスシリンダアクチュエータによって達成される。
【0018】
本発明の更なる特徴及び利点は、本発明のガスシリンダアクチュエータの好適ではあるが、排他的でない4つの実施形態の説明から明らかとなり、これら実施形態は添付図面に制限されない一例として図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るガスシリンダアクチュエータの縦断面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係るガスシリンダアクチュエータの一部の縦断面図である。
【
図5】本発明の第3実施形態に係るガスシリンダアクチュエータの一部の縦断面図である。
【
図6】本発明の第4実施形態に係るガスシリンダアクチュエータの一部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照すれば、本発明に係る第1実施形態である過行程指示装置を備えたガスシリンダアクチュエータの全体が参照符号10で示されている。
【0021】
該ガスシリンダアクチュエータ10は、
ガスを収容する管状のジャケット11と、
端壁12と、
ステム・ピストン14のための向かい側の環状ガイド13であって、軸線方向Xにジャケット11から突出する環状ガイド13と、
環状ガイド13を貫通して配置されたステム・ピストン14と、
ジャケット、端壁、ステム・ピストン
のための環状ガイド及び
ステム・ピストン間で規定された加圧ガスのための室15と、
ステム・ピストン14の過行程が発生したことを示す指示装置17と
を具備する。
【0022】
指示装置17は環状本体18を含み、該環状本体18はジャケット11と環状ガイド13との間の対応した座19内に部分的に挿入され、環状ガイド13における端部21の外側面20を囲んでいる。
【0023】
環状本体18は後述する要素22に対して軸線方向Xに当接し、該要素22はジャケット11内で径方向に突出し、ジャケット11と一体化されている。
【0024】
環状本体18は円筒状で且つ円筒状の占有空間23内に収まる輪郭をなし、該占有空間23は環状ガイド13における端部21の外側面20とジャケット11における内面25の軸線方向Xの延長面24との間で規定され、延長面24は前記外側面20を囲んでいる。
【0025】
特に、環状本体18は、塑性変形可能、塑性変形可能且つ破断可能、又は、塑性変形無しで破断可能な金属からなっている。
【0026】
また、ガスシリンダアクチュエータ10は引き抜き防止手段を含み、該引き抜き防止手段は環状本体18が前記座19から離座するのを防止するように設定されている。
【0027】
第1実施形態において、引き抜き防止手段は内周径方向突起28を含み、該内周径方向突起28は
図2に示されるように環状ガイド13の外側面に形成された対応の外周座29内に挿入されている。
【0028】
本発明に係る第2実施形態のガスシリンダアクチュエータにおいて、該ガスシリンダアクチュエータは
図4中、参照符号110で示されている。引き抜き防止手段は外周径方向突起130を含み、該外周径方向突起130は環状本体118から突出し、
ジャケット111の内側面に形成された対応の内周座131内に挿入されている。
【0029】
図5に参照符号210で示されている本発明の第3実施形態に係るガスシリンダアクチュエータでは、環状本体218は環状ガイド213のヘッド部221に締まり代(with interference)をもって嵌合されている。
【0030】
本発明の第4実施形態に係るガスシリンダアクチュエータは、
図6中、参照符号310で示され、環状本体318は、ジャケット311の端部341内に環状本体318の一部が締まり代をもって嵌合されることで、ジャケット311に結合されている。
【0031】
ジャケット11内に径方向に突出し且つジャケット11と一体化された要素22は引き抜き防止リングによって構成されており、該引き抜き防止リングは、ジャケット11の内面に形成された座32内の第1部分と、ジャケット11の内部に向けて径方向に突出し、環状ガイド13の抜き出し防止肩33に当接する第2部分22と有する。
【0032】
例えばプレスのスライドに起因して過行程の状況が生じるとき、環状ガイド13は少なくとも部分的にジャケット11内に進入し、一方、要素22に当接する環状本体18は押し潰されるか又は破損される。このような環状本体18の塑性変形又は破損は、過行程の状況が発生したことの明瞭に際立たす。
【0033】
事実上、本発明はその所期の狙い及び目的を完全に達成するものとなる。
【0034】
特に、本発明によれば、ガスシリンダアクチュエータは過行程指示装置により、過行程安全装置が働いたことが明瞭に視認可能となるように工夫されている。
【0035】
このようなガスシリンダアクチュエータ10は、その交換により、該ガスシリンダアクチュエータが配置されている成形型(die)又は他のプレス機械を十分且つ効率的にして迅速に回復させることをユーザに可能にする。
【0036】
本発明によれば、ガスシリンダアクチュエータはその機能が通常のガスシリンダアクチュエータよりも低下しないように工夫されている。
【0037】
従って、本発明は、添付の特許請求の範囲内で多くの改良や変形が可能であると考えられる。更に、全ての細目は他の技術的に等価な要素に置換されてもよい。
【0038】
実際上、特定の使用に適合可能であれば、用いられる材料、不定の寸法及び形状は、要求及び技術の現況に従い如何なるものであってもよい。