特許第6947561号(P6947561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6947561
(24)【登録日】2021年9月21日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】携帯型巻き上げ装置
(51)【国際特許分類】
   B66D 3/20 20060101AFI20210930BHJP
【FI】
   B66D3/20 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-138990(P2017-138990)
(22)【出願日】2017年7月18日
(65)【公開番号】特開2019-18964(P2019-18964A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2019年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】安田 悠
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0023681(US,A1)
【文献】 実公平02−035684(JP,Y2)
【文献】 米国特許第03739728(US,A)
【文献】 米国特許第05474278(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/00−5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き上げ対象物を牽引するための牽引部材が巻回される筒状の回転体と、
前記回転体の内部に同軸的に配置されて遊星歯車機構からなる減速機構によって前記回転体を減速して回転駆動させるための電動モータと、
前記電動モータに電力を供給するための給電部と、
前記電動モータからの動力を減速して前記回転体に伝えるための動力伝達機構と、
前記回転体、前記電動モータ、前記給電部、及び、前記動力伝達機構を1つのユニットとして一体に組み込む筺体と、
前記筺体に設けられ、所定の設置対象物に対して前記筺体を着脱自在に取り付けるための取り付け部と、
を備え、
前記回転体、前記電動モータ、及び、前記動力伝達機構が装置本体を構成し、前記牽引部材の牽引方向における前記装置本体の投影面積の範囲内に前記給電部が位置され、
前記牽引部材の牽引方向で、前記取り付け部、前記電動モータ、及び、前記給電部が互いに直列的に配列されるとともに、前記給電部の前記牽引部材の繰り出し側の下側に前記装置本体が位置され、
前記筐体には、前記回転体に対して前記牽引部材を平行に巻回するレベルワインド装置が更にユニット化して設けられることを特徴とする携帯型巻き上げ装置。
【請求項2】
前記筺体内に組み込まれ、前記電動モータの駆動を制御する制御回路を実装して成る基板を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の携帯型巻き上げ装置。
【請求項3】
前記筺体は、前記基板及び前記電動モータを取り付けるための平面状の取り付け面を内部に有することを特徴とする請求項2に記載の携帯型巻き上げ装置。
【請求項4】
前記基板及び前記電動モータが共通の取り付け面に取り付けられることを特徴とする請求項3に記載の携帯型巻き上げ装置。
【請求項5】
前記筺体は、前記給電部を挿通して収容するためのハウジングを内側に形成することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の携帯型巻き上げ装置。
【請求項6】
前記取り付け部は、前記装置を持ち運ぶための取っ手としても機能することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の携帯型巻き上げ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、牽引部材を電動により巻き上げて(巻き取って)及び/又は繰り降ろして(繰り出して)対象物を昇降させるための巻き上げ装置に関し、特に、携帯性に優れたコンパクトな携帯型巻き上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの駆動力を利用して寝具、梱包類、仮設足場、建造物、漁労具等の対象物を所定位置まで巻き上げたり、降ろしたりする巻き上げ装置は、工業用のウインチも含めて、従来から一般的に知られている。
【0003】
このような様々なタイプの巻き上げ装置は、電動による駆動力を用いて対象物を最適な状態で巻き上げて降ろすことができるようにする様々な機構を組み込んでおり、また、様々な構造形態を成している(例えば、特許文献1乃至特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−182506号
【特許文献2】実開平7−35481号
【特許文献3】特開平3−95098号
【特許文献4】特開平5−338994号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような巻き上げ装置は、一般に、その設置に際しては工具を用いたボルト等による締結を伴う大がかりな組み立て作業を必要とし、また、一旦設置されると、その撤去が煩雑であり、一人の作業者が容易に設置して使用できるようなものではなかった。
【0006】
そのため、このような巻き上げ装置を作業者が携帯できる大きさまで小型化して、組み立てを要することなく使用できるようにすることも考えられるが、そのような場合、装置全体として携帯性に優れるだけでなく、巻き上げ装置が取り付けられるべき設置対象物に対して小さい取り付けスペースで設置可能なコンパクトな構造形態を実現することが望まれる。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、人が自由に持ち運んで組み立てを要することなく所定の設置対象物に対して簡単に取り付けて使用できるとともに、設置対象物に対して小さい取り付けスペースで設置可能なコンパクトな携帯型巻き上げ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の携帯型巻き上げ装置は、巻き上げ対象物を牽引するための牽引部材が巻回される回転体と、前記回転体を回転駆動させるための電動モータと、前記電動モータに電力を供給するための給電部と、前記電動モータからの動力を減速して前記回転体に伝えるための動力伝達機構と、前記回転体、前記電動モータ、前記給電部、及び、前記動力伝達機構を1つのユニットとして一体に組み込む筺体と、前記筺体に設けられ、所定の設置対象物に対して前記筺体を着脱自在に取り付けるための取り付け部とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、牽引部材を巻き取って及び/又は繰り出して対象物を昇降させるための巻き上げ機能の全てが1つのユニットとして一体化されているため、工具を用いたボルト等による締結を伴う煩雑な組み立て作業を必要とすることなく、それ自体で、又は、筺体の取り付け部を所定の設置対象物に対して取り付けるだけで、直ぐにでも使用可能になる(任意の場所で所定の設置対象物に対して容易に着脱して対象物の巻き上げ及び降ろし作業を迅速に行なえる)とともに、人が自由に持ち運びできる携帯性を容易に実現でき、設置対象物に対して小さい取り付けスペースで設置可能な小型軽量化(コンパクト化)も容易に実現できる。
【0010】
また、巻き上げ機能を果たす各構成要素を筺体で囲繞することにより、装置全体を凹凸部が無い幾何学的形態に仕上げることもでき、装置を持ち運ぶ際に凹凸部が障害物と衝突して損傷するといった事態を回避できる。
【0011】
更に、装置のコンパクト化に関しては、特に、回転体、電動モータ、及び、動力伝達機構が装置本体を構成する場合、牽引部材の牽引方向における装置本体の投影面積の範囲内に給電部が位置される(給電部の重心が装置本体の投影面積の範囲内に位置される)ことが好ましい。ユニットを形成する筐体内における給電部の位置は、装置全体のコンパクト化を図る上で特に重要である。これは、給電部が特にバッテリにより構成される場合には、様々な使用環境を考慮し且つ十分な使用時間を確保するためにある程度大きな体積が給電部に求められることから、筐体内における給電部の位置(レイアウト)が装置全体のコンパクト化を達成するための重要なファクタとなり得るからである。また、その場合、牽引部材の牽引方向で、取り付け部、電動モータ、及び、給電部が互いに直列的に配列され、これらが装置本体の投影面積の範囲内に収まることが特に好ましい。このような直列的な投影面積内の配置形態は、デッドスペースを少なくして取り付けスペースをコンパクトにできる(取り付けスペースを最小化するレイアウトを実現できる)だけでなく、牽引部材に張力が働いた際に、取り付け部、装置本体、牽引部材が一直線上にあるため、取り付け部によって装置を安定して設置対象物に対して固定でき、重量バランスの良い安定した装置を提供できる。
【0012】
なお、このような投影面積内の配置形態によって牽引部材の牽引方向で装置の寸法が大きくなっても、取り付けスペースのコンパクト化に悪影響を及ぼすことはない。これは、このような巻き上げ装置では、牽引部材の牽引方向に沿う空間が、巻き上げ対象物の移動搬送経路であり、もともと必要なスペースであることから、このスペース内(牽引方向)で装置の寸法が増大しても、取り付けスペースのコンパクト化が阻害されることにならないからである。
【0013】
また、上記構成では、ユニット化を更に促進させるために、電動モータの駆動を制御する制御回路を実装して成る基板を備える場合、その基板も筺体内に組み込まれることが好ましい。この場合、筺体は、基板及び電動モータを取り付けるための平面状の取り付け面を内部に有することが好ましく、基板及び電動モータが共通の取り付け面に取り付けられることが更に好ましい。基板及び電動モータが共通の取り付け面に取り付けられれば、電気部品を集約して配置でき、電気配線の配置形態を簡略化できるとともに、メンテナンスの作業性も良くなる。
【0014】
また、上記構成において、筺体は、給電部を挿通して収容するためのハウジングを内側に形成することが好ましい。この場合には、装置の製造時の組み立て性が良くなる。また、上記構成では、電動モータが回転体の内部に配置されてもよい。その場合には、装置全体を更にコンパクトにすることができる。
【0015】
また、上記構成において、取り付け部は、装置を持ち運ぶための取っ手としても機能することが好ましい。この場合には、装置を持ち運び易くなり、携帯性が向上する。また、取り付け部の形態としては、ベルト、アーム、フック、ボルト締結具などを挙げることができる。
【0016】
また、上記構成の携帯型巻き上げ装置は、寝具、梱包類、仮設足場、建造物、漁労具等の対象物を所定位置まで巻き上げたり、降ろしたりするために使用できるほか、ドローンに搭載してドローンから荷物を降ろし或いは上空のドローンへと荷物を巻き上げるなど、その適用分野は限定されない。
【0017】
なお、上記構成において、「給電部」とは、バッテリなどの蓄電手段を含むだけでなく、商用電源などの外部電源の電力を電動モータに直接に供給できるようにする給電手段も含み、要は、携帯型巻き上げ装置を容易に持ち運んで、使用される現場においてそれ自体で又は外部電源を使用して電動モータ2に電力を供給できる電力供給部を意味する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、人が自由に持ち運んで組み立てを要することなく所定の設置対象物に対して簡単に取り付けて使用できるとともに、設置対象物に対して小さい取り付けスペースで設置可能なコンパクトな携帯型巻き上げ装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態に係る携帯型巻き上げ装置の正面斜視図である。
図2図1の携帯型巻き上げ装置の下面図である。
図3図2のA−A線に沿う断面図である。
図4図2のB−B線に沿う断面図である。
図5図1の携帯型巻き上げ装置の内部の構成要素の配置形態を模式的に示す概略断面図である。
図6】(a)は、本発明の第2の実施形態に係る携帯型巻き上げ装置の内部の構成要素の配置形態を模式的に示す概略断面図、(b)は、(a)の配置形態におけるモータフレームと給電部との間の配置関係を示す概略側面図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係る携帯型巻き上げ装置の内部の構成要素の配置形態を模式的に示す概略断面図である。
図8】本発明の第4の実施形態に係る携帯型巻き上げ装置の内部の構成要素の配置形態を模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る携帯型巻き上げ装置の実施形態について具体的に説明する。なお、本発明の実施形態に係る携帯型巻き上げ装置は、コンテナのような重量体を上げ下げするものとは異なり、作業者が容易に設置して対象物を上げ下げするとともに、作業後は容易に取り外すことを可能にする、いわゆる軽量タイプのものを意図するものである。このため、装置としての全重量は100g〜10kg程度であり、耐荷重は、好ましくは、100kg以下の重量のものが対象となるように構成される。
【0021】
図1図5には、本発明の第1の実施形態に係る携帯型巻き上げ装置1が示される。特に図1図4に明確に示されるように、本実施形態に係る携帯型巻き上げ装置1は、電動式であり、回転駆動力を生起するための駆動力源としての電動モータ2と、この電動モータ2の正逆回転駆動によって正逆回転されて巻き上げ対象物を牽引するためのワイヤ、チェーン、ロープ等の牽引部材L(図1図4には図示せず;図5参照)を巻き取る及び/又は繰り出す(巻回する)筒状の回転体4と、電動モータ2に電力を供給するための給電部(本実施形態では、商用電源などの外部電源に依らず(有線を必要とせず)それ自体で直接に電力を電動モータ2に供給できるバッテリ)6と、電動モータ2からの動力を減速して回転体4に伝えるための動力伝達機構8とを備える。そして、これらの構成要素、すなわち、電動モータ2、回転体4、給電部6、及び、動力伝達機構8は、1つのユニットとして一体に筺体10内に組み込まれる。なお、筐体10は、本実施形態では複数のケーシング部材を組み合わせて一体に形成されているが、単一の部材により一体に形成されても構わない。また、本明細書中において、「給電部」とは、本実施形態のように蓄電手段としてのバッテリを含むだけでなく、商用電源などの外部電源の電力を電動モータ2に直接に供給できるようにする給電手段も含み、要は、携帯型巻き上げ装置1を容易に持ち運んで、使用される現場においてそれ自体で又は外部電源を使用して電動モータ2に電力を供給できる電力供給部を意味する。
【0022】
また、筺体10には、所定の設置対象物(図示しないが、例えば、建物(天井や手摺りなど)、仮設足場、ドローンなど)に対して筺体10を着脱自在に取り付けるための取り付け部12が設けられる。この取り付け部12は、携帯型巻き上げ装置1を持ち運ぶための取っ手としての機能も果たすことができ、例えば、ベルト、アーム、フック、ボルト締結具などの形態を成してもよい。
【0023】
また、上記構成において、回転体4は、軸受29を介して筐体10に回転可能に支持され、また、電動モータ2は、例えばモータハウジングに収容された状態で筒状の回転体4の内部に回転不能に支持固定されて同軸的に配置され、前述したように給電部6によって給電される(例えば、周知の魚釣用電動リールに類似した構造を成す)。
【0024】
また、電動モータ2及び回転体4は、動力伝達機構(動力伝達経路)8によって互いに動力伝達可能に連結されている。この場合、動力伝達機構8は、電動モータ2の回転を回転体4側に伝達するが回転体4の回転を電動モータ2側に伝達しない双方向クラッチを有してもよく、また、電動モータ2からの動力を減速して回転体4に伝える減速機構(本実施形態では遊星歯車機構)17を備える。
【0025】
なお、本実施形態に係る携帯型巻き上げ装置1には、回転体4に対して牽引部材Lを平行に巻回するためのレベルワインド装置15が設けられる。このレベルワインド装置15は、電動モータ2が回転駆動されると、それに連動して、回転体4から繰り出される牽引部材Lを挿通する案内体19が左右に往復移動するよう構成されており、牽引部材Lの巻き取り動作に伴って、回転体4に対して牽引部材Lを均等に巻回する機能を有する。
【0026】
また、本実施形態に係る携帯型巻き上げ装置1は、電動モータ2(したがって回転体4)の駆動を制御する制御回路を実装して成る基板20を更に備え、この基板20も筺体10内に組み込まれる。基板20には、給電部6と電動モータ2とを電気的に接続する給電ライン27や、回転体4のための操作部及び制御部(図示せず)に電気的に接続する制御ライン(図示せず)も接続され、また、基板20は、位置、温度、速度等の各種センサ信号や、ユーザからの操作信号を受けてもよい。
【0027】
図5に模式的に示されるように、筺体10は、基板20及び電動モータ2を取り付けるための平面状の取り付け面10A及び給電部6を取り付けるための平面状の取り付け面10Bを内部に有しており、特に、本実施形態では、基板20及び電動モータ2が共通の取り付け面10Aに取り付けられる(図5では、取り付け面10A,10Bと基板20、電動モータ2、及び、給電部6との間に隙間が描かれるが、実際には、基板20、電動モータ2、及び、給電部6は取り付け面10A,10B上に取り付けられる)。また、筺体10は、給電部6を挿通して収容するためのハウジング30を内側に形成している。このハウジング30からは、給電部6を再充電可能にする充電端子38が外部に突出している。
【0028】
また、図5に明確に示されるように、本実施形態では、回転体4、電動モータ2、及び、動力伝達機構8が装置本体40を構成しており、牽引部材Lの牽引方向(繰り出し方向;図中に矢印で示す)における装置本体40の投影面積の範囲R内に給電部6が位置されている。
【0029】
また、本実施形態では、この投影面積の範囲R内において、取り付け部12、電動モータ2(回転体4)、及び、給電部6が牽引部材Lの牽引方向で互いに直列的に配列されている。具体的には、取り付け部12が所定の設置対象物100に取り付けられた状態で、牽引部材Lは、回転体4から図中の下方に向けて繰り出されるようになっており、この状態で、筐体10の上端に位置される取り付け部12の下方に給電部6が投影面積の範囲R内で位置され、この給電部6の下側に投影面積の範囲R内で装置本体40(電動モータ2、回転体4、動力伝達機構8)が位置されるようになっている。なお、本実施形態において、基板20は、装置本体40(電動モータ2)の側方に取り付け面10Aを介して隣接して位置される。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の携帯型巻き上げ装置1によれば、牽引部材Lを巻き取って及び/又は繰り出して対象物を昇降させるための巻き上げ機能の全てが筐体10により1つのユニットとして一体化されているため、工具を用いたボルト等による締結を伴う煩雑な組み立て作業を必要とすることなく、それ自体で、又は、筺体10の取り付け部12を所定の設置対象物100に対して取り付けるだけで、直ぐにでも使用可能になる(任意の場所で所定の設置対象物100に対して容易に着脱して対象物の巻き上げ及び降ろし作業を迅速に行なえる)とともに、人が自由に持ち運びできる携帯性を容易に実現でき、設置対象物100に対して小さい取り付けスペースで設置可能な小型軽量化(コンパクト化)も容易に実現できる。
【0031】
また、本実施形態では、巻き上げ機能を果たす各構成要素を筺体10で囲繞するため、装置全体を例えば図5に示されるように凹凸部が無い幾何学的形態(例えば箱型)に仕上げることができ、装置を持ち運ぶ際に凹凸部が障害物と衝突して損傷するといった事態を回避できる。
【0032】
特に、本実施形態では、牽引部材Lの牽引方向における装置本体40の投影面積の範囲R内に給電部6が位置される(給電部6の重心が装置本体40の投影面積の範囲R内に位置される)とともに、牽引部材Lの牽引方向で、取り付け部12、電動モータ2、及び、給電部6が互いに直列的に配列され、これらが装置本体40の投影面積の範囲R内に収まるようになっているため、デッドスペースを少なくして取り付けスペースをコンパクトにできる(取り付けスペースを最小化するレイアウトを実現できる)だけでなく、牽引部材Lに張力が働いた際に、取り付け部12、装置本体40、牽引部材Lが一直線上にあるため、取り付け部12によって装置1を安定して設置対象物100に対して固定でき、重量バランスの良い安定した装置1を提供できる。また、本実施形態のように、牽引部材の繰り出し方向の反対側に取り付け部12を設けると、牽引部材を介して張力を受けた際に、取り付け部12と装置本体40とが張力方向に直線状に並ぶため、装置1に曲げ方向の力が加わることがなく、取り付け部12をベルト状の簡易なものとすることもできる。これは、力の発生が重力方向だけでなく、水平方向でも同様である。
【0033】
なお、前述したように、このような投影面積内の配置形態によって牽引部材Lの牽引方向で装置1の寸法が大きくなっても、取り付けスペースのコンパクト化に悪影響を及ぼすことはない。これは、巻き上げ装置1では、牽引部材Lの牽引方向に沿う空間が、巻き上げ対象物の移動搬送経路であり、もともと必要なスペースであることから、このスペース内(牽引方向)で装置1の寸法が増大しても、取り付けスペースのコンパクト化が阻害されることにならないからである。
【0034】
また、本実施形態では、基板20及び電動モータ2が共通の取り付け面10Aに取り付けられているため、電気部品を集約して配置でき、電気配線の配置形態を簡略化できるとともに、メンテナンスの作業性も良くなる。特に、本実施形態のように基板20を電動モータ2の側方に配置すると、電動モータ2の取り付け面から導出される配線と基板20とを近づけることができ、それにより、モータ配線の短縮及びノイズ低減を実現できるとともに、牽引部材Lを介して大きな張力が作用する際でもその張力を基板20が直接に受けることがない。
【0035】
また、本実施形態において、筺体10は、給電部6を挿通して収容するためのハウジング30を内側に形成するため、装置1の製造時の組み立て性が良くなる。また、本実施形態において、取り付け部12は、装置1を持ち運ぶための取っ手としても機能するため、装置1を持ち運び易くなり、携帯性が向上する。
【0036】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る携帯型巻き上げ装置1Aの内部の構成要素の配置形態を模式的に示す。図示のように、本実施形態の携帯型巻き上げ装置1Aでは、前述した第1の実施形態と異なり、装置本体40と給電部6との上下の配置関係が逆になっている。すなわち、本実施形態では、装置本体40の下側(牽引部材Lの繰り出し側)に給電部6が配置される。また、この場合、給電部6は、牽引部材Lの繰り出し及び/又は巻き取りを妨げないように(牽引部材Lの牽引経路と重なり合わないように)、レベルワインド装置15に対して奥側に位置されている(奥行き方向で逃がされている;図6の(b)参照)。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同じである。
【0037】
牽引部材Lから受ける荷重は、筐体10には回転体4を介して伝わるが、このように給電部6を下側に配置すると、回転体4を支持する筐体10の支持部と設置対象物100との間の距離を近づけることができるため、筐体10に直接に取り付け部12を取り付けることが容易となり、強度を確保をし易い。また、比較的重量が大きい給電部6が装置1の下部に配置されるため、装置1全体の重心が下がり、装置1を設置対象物100から吊り下げた際に装置1の姿勢が安定し易い。
【0038】
図7は、本発明の第3の実施形態に係る携帯型巻き上げ装置1Bの内部の構成要素の配置形態を模式的に示す。図示のように、本実施形態の携帯型巻き上げ装置1Bでは、電動モータ2が回転体4の外側で且つ回転体4の上側に配置されている。すなわち、牽引部材Lの繰り出し方向に沿って、上側から、取り付け部12、給電部6、電動モータ2、回転体4が順次に直列に配列されている。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同じである。
【0039】
このような配置形態によれば、回転体4が電動モータ2を内蔵しないため、回転体4を小型化できる。また、回転体4及び電動モータ2が取り付け部12から見て給電部6と上下に重合して配置されるため、設置対象物100に対する装置1の取り付け面積を小さくできる。また、この配置形態では、電動モータ2等の部品サイズや牽引部材Lの必要体積をうまく選択することで、取り付けスペースのコンパクト化を第1の実施形態よりも更に促進できる場合がある。
【0040】
図8は、本発明の第4の実施形態に係る携帯型巻き上げ装置1Cの内部の構成要素の配置形態を模式的に示す。図示のように、本実施形態の携帯型巻き上げ装置1Cでは、基板20が装置本体40の上側(給電部6と装置本体40との間)に位置されている。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同じである。
【0041】
このような配置形態によれば、取り付け部12から見て、基板20も給電部6及び電動モータ2と上下で重なり合うため、設置対象物100に対する装置1の取り付け面積を更に小さくできる。
【0042】
以上、図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明してきたが、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、前述した実施形態では、電動モータの駆動が、携帯電話、WiFi通信端末などを利用して遠隔制御されてもよい。また、前述した実施形態において、動力伝達機構は、減速機構を有するが、必要に応じて、クラッチ機構、ドラグ機構、ワンウェイクラッチ機構等を有してもよい。また、前述した実施形態では、減速機構として遊星歯車機構が採用されたが、減速機構としては、波動歯車装置、例えばハーモニックドライブ(登録商標)や、平歯車が採用されてもよい。また、前述した実施形態では、電動モータの正逆回転駆動によって回転体が正逆回転されて巻き上げ対象物を牽引するための牽引部材が巻き取られ及び/又は繰り出されるようになっているが、牽引部材の繰り出しは、電動モータの駆動力を用いることなく、クラッチ機構等により回転体を回転フリーにして牽引部材を繰り出すような形態であっても構わない。
【0043】
なお、前述した各実施形態の携帯型巻き上げ装置1,1A,1B,1Cは、寝具、梱包類、仮設足場、建造物、漁労具等の対象物を所定位置まで巻き上げたり、降ろしたりするために使用できるほか、ドローンに搭載してドローンから荷物を降ろし或いは上空のドローンへと荷物を巻き上げるなど(例えば、ドローンを利用して海面で溺れている遊泳者へ浮き輪を供給するなど)、その適用分野は限定されない。
【符号の説明】
【0044】
1 携帯型巻き上げ装置
2 電動モータ
4 回転体
6 給電部
8 動力伝達機構
10 筐体
10A,10B 取り付け面
12 取り付け部
20 基板
30 ハウジング
40 装置本体
100 設置対象物
L 牽引部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8