(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0053】
図1(A)は本発明の一態様の発光素子を示す図である。本発明の一態様の発光素子は、第1の電極101と第2の電極102と、EL層103を有し、EL層103は第1の電極101側から正孔注入層111、第1の正孔輸送層112−1、第2の正孔輸送層112−2、第3の正孔輸送層112−3、発光層113、第1の電子輸送層114−1及び第2の電子輸送層114−2を有している。なお、その他の機能層を有していても良い。
【0054】
本発明の一態様の発光素子においては、発光層113はホスト材料と発光材料を有し、正孔注入層111は有機アクセプタを、第1の正孔輸送層112−1は第1の正孔輸送材料を、第2の正孔輸送層112−2は第2の正孔輸送材料を、第3の正孔輸送層112−3は第3の正孔輸送材料を、第1の電子輸送層114−1は第1の電子輸送材料を、第2の電子輸送層114−2は第2の電子輸送材料を有する。なお、第1の正孔輸送材料、第2の正孔輸送材料、第3の正孔輸送材料、第1の電子輸送材料及び第2の電子輸送材料は各々異なる物質であるものとする。
【0055】
また、上記ホスト材料のHOMO準位は、第2の正孔輸送材料のHOMO準位よりも深い位置に存在し、第2の正孔輸送材料のHOMO準位は第1の正孔輸送材料のHOMO準位よりも深い位置に存在する。また、第3の正孔輸送材料のHOMO準位は、ホスト材料のHOMO準位と同じまたは深い位置に存在する。ただし、第2の正孔輸送材料のHOMO準位と第3の正孔輸送材料のHOMO準位の差は、有効数字一桁で0.3eV以下とする。
【0056】
また、ホスト材料は、3環以上6環以下の縮合芳香環骨格を含む物質であり、第1の電子輸送材料及び第2の電子輸送材料は複素芳香環骨格を含む物質である。ここで、本発明の一態様の発光素子ではホスト材料と第2の電子輸送材料のLUMO準位が、どちらも、第1の電子輸送材料よりも高い(浅い)位置にあるものとする。ただし、ホスト材料と第1の電子輸送材料とのLUMO準位の差は有効数字一桁で0.3eV以下であることが好ましい。この差が0.3eV以下であることによって、駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0057】
通常、発光素子の設計を行う際には、各層間のキャリア注入障壁を低減させ、駆動電圧の低減や、寿命の向上を図るために、正孔輸送層側では、陽極である第1の電極101側から発光層113に向けてそのHOMO準位が順に低く(深く)なるように、電子輸送層側では、陰極である第2の電極102側から発光層113に向けてそのLUMO準位が順に高く(浅く)なるように設計される。
【0058】
しかし本発明の一態様の発光素子では、ホスト材料と正孔輸送層を構成する材料のHOMO準位の関係および、ホスト材料と電子輸送層を構成する材料のLUMO準位の関係を上述のようなものとし、且つ、ホスト材料及び電子輸送層を構成する材料を特定の骨格を有する物質とすることで、従来の構成の発光素子よりも良好な寿命、効率、発光特性を有する発光素子を提供することが可能となる。
【0059】
ホスト材料は、3環以上6環以下の縮合芳香環骨格を有する材料が好ましい。これらの縮合芳香環は、可視光領域付近のエネルギーギャップを保ちつつ、電気化学的な安定性を確保することができるからである。特にアントラセン骨格は、青色の蛍光材料を励起するのに十分なエネルギーギャップが得られ、ホール、電子の双方を輸送できることから好適である。また、アントラセン誘導体は、そのLUMO準位を−2.7eV前後とすることが容易であり、上述した電子輸送層とのLUMO準位の関係を構築するのに好適でもある。
【0060】
一方、第1の電子輸送材料と第2の電子輸送材料は各々異なる複素芳香環骨格を含む材料であることが好ましい。このように、第1の電子輸送材料と第2の電子輸送材料の有する複素芳香環骨格を異ならせることにより、第1の電子輸送材料のLUMO準位を、ホスト材料及び第2の電子輸送材料のLUMO準位よりも低い(深い)位置とすることが可能になる。
【0061】
なお、本発明の一態様の発光素子は正孔注入層111を有し、当該正孔注入層111を構成する材料として有機アクセプタ材料を用いているため、従来よりも長寿命化できるのみならず、高輝度領域の効率低下、いわゆるロールオフ現象を低減し、高輝度且つ高効率な発光素子を実現することが可能となる。
【0062】
有機アクセプタは、LUMO準位の深い有機化合物である。当該有機アクセプタは、そのLUMO準位の値とHOMO準位の値が近い他の有機化合物との間で電荷分離を起こさせることによって、当該有機化合物に正孔を発生させることができる。すなわち、本実施の形態の発光素子では有機アクセプタと接する第1の正孔輸送材料に正孔が発生する。有機アクセプタは、電子吸引基(ハロゲン基やシアノ基)を有する化合物、例えば、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F
4−TCNQ)、3,6−ジフルオロ−2,5,7,7,8,8−ヘキサシアノキノジメタン、クロラニル、2,3,6,7,10,11−ヘキサシアノ−1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT−CN)等を用いると良い。特にHAT−CNは、アクセプタ性が高く、膜質も安定であるため好ましい。
【0063】
有機アクセプタのLUMO準位と第1の正孔輸送材料のHOMO準位の差は、有機アクセプタのアクセプタ性の強さで変わってくるため、特に限定されないが、おおむね準位の差が1eV以下程度であれば正孔を注入することができる。HAT−CNを有機アクセプタとして用いる場合、HAT−CNのLUMO準位はサイクリックボルタンメトリ測定から−4.41eVと見積もられるので、第1の正孔輸送材料のHOMO準位は、−5.4eV以上であることが好ましい。ただし、第1の正孔輸送材料のHOMO準位があまり高くなりすぎると、今度は第2の正孔輸送材料への正孔注入性が悪くなる。また、ITOのような陽極の仕事関数は−5eV前後であるため、それよりもHOMO準位の高い第1の正孔輸送材料を用いることは不利に働く。したがって、第1の正孔輸送材料のHOMO準位は、−5.0eV以下であることが好ましい。
【0064】
第1の正孔輸送材料に発生した正孔は、電界によって第2の電極102の方へ移動し、第2の正孔輸送層112−2へ注入される。第2の正孔輸送層112−2を構成する第2の正孔輸送材料のHOMO準位は、第1の正孔輸送材料のHOMO準位とホスト材料のHOMO準位との間に位置するため、容易に第1の正孔輸送層112−1から第2の正孔輸送層112−2へ正孔を注入することができる。なお、第1の正孔輸送材料と第2の正孔輸送材料のHOMO準位の差は、正孔をスムーズに注入するため0.3eV以下であることが好ましく、さらに容易に正孔注入を行うためにはその差が0.2eV以下であることがより好ましい。
【0065】
第2の正孔輸送層112−2へ注入された正孔は、電界によってさらに第2の電極102の方へ移動し、第3の正孔輸送層112−3へ注入される。第3の正孔輸送層112−3に含まれる第3の正孔輸送材料は、そのHOMO準位が、ホスト材料のHOMO準位と同じまたは深く、且つ第2の正孔輸送材料のHOMO準位との差が0.35eV未満(有効数字一桁で0.3eV以下)の材料である。第2の正孔輸送材料のHOMO準位と第3の正孔輸送材料のHOMO準位との差が0.3eV以下であるため、第2の正孔輸送層112−2から第3の正孔輸送層112−3への正孔の注入はスムーズに行われる。なお、よりスムーズに正孔を注入するために、第3の正孔輸送材料のHOMO準位と第2の正孔輸送材料のHOMO準位との差は0.25eV未満(有効数字一桁で0.2eV以下)であることが好ましい。
【0066】
第3の正孔輸送材料のHOMO準位はホスト材料のHOMO準位と同じまたは深いため、第3の正孔輸送層112−3から発光層113への正孔の注入障壁はない。さらに、第3の正孔輸送材料のHOMO準位がホスト材料のHOMO準位と同じまたは深いことから、正孔は発光材料に直接注入されるだけでなく、ホスト材料にも直接注入されやすくなる。発光材料に優先的に正孔が入ると、発光層内で正孔が極度に進みにくくなり、発光領域が正孔輸送層/発光層界面にかなり局在化してしまう。その結果、素子寿命に悪影響を及ぼす。しかし、本発明の一態様のように、ホスト材料にも正孔が入ることにより、正孔は発光層内では主としてホストを伝導しつつ、適度に発光材料のホールトラップの影響を受けるため、発光領域を適度に広げることができ、高効率と長寿命が得られる。発光領域が適度に広がるというのは、正孔が発光層内である程度輸送されつつも、突き抜けることがない状態である。なお、このことから、ホスト材料は正孔輸送性を有することが好ましく、具体的にはアントラセン骨格やカルバゾール骨格を有することが好ましい。また、ホスト材料は電子輸送性も有することが好ましいため、特にアントラセン骨格は好適である。すなわちホスト材料は、アントラセン骨格とカルバゾール骨格を同時に有することがさらに好ましい。また、カルバゾール骨格は、ベンゾカルバゾール骨格あるいはジベンゾカルバゾール骨格であることが好ましい。これらの構造は、カルバゾールに比べてHOMOが0.1eV程度高くなるため、正孔が入りやすくなる(それにより、上記の適度な発光領域の広がりを形成しやすくなる)ためである。このように、この第3の正孔輸送層112−3を有していることが、本発明の一態様の発光素子における特徴の一つである。
【0067】
ここで、発光材料のHOMO準位がホスト材料のHOMO準位よりも浅い場合、ホスト材料よりも浅いHOMO準位を有する正孔輸送材料から発光層へ正孔が注入されると、ホスト材料よりも発光材料に優先されて正孔が注入されてしまう。HOMO準位の浅い発光材料に正孔が注入されると、正孔がトラップされてしまう。正孔がトラップされ、正孔の流れが滞ってしまうと、電荷の蓄積や、再結合領域の集中による発光層の劣化の促進、発光効率の低下等の不都合が生じる。
【0068】
一方本実施の形態の発光素子のように、第3の正孔輸送層112−3を有し、そのHOMO準位がホスト材料のHOMO準位と同じまたは深い構成を有する発光素子では、正孔がまず発光材料ではなくホスト材料に優先的に注入される。その結果、正孔の流れを滞らせることなく、且つ適度に発光材料にも正孔がトラップされ、また、再結合領域も分散され、信頼性の向上、発光効率の向上といった様々な効果を奏する。
【0069】
続いて、上述の発光素子の詳細な構造や材料の例について説明する。本発明の一態様の発光素子は、上述のように第1の電極101と第2の電極102の一対の電極間に複数の層からなるEL層103を有している。EL層103は少なくとも、正孔注入層111、第1の正孔輸送層112−1、第2の正孔輸送層112−2、第3の正孔輸送層112−3、発光層113、第1の電子輸送層114−1、第2の電子輸送層114−2を有している。また、これらの層は、この順に第1の電極101側から接して設けられている。
【0070】
第1の電極101は、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いて形成することが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタリング法により成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して作製しても構わない。作製方法の例としては、酸化インジウム−酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成する方法などがある。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することもできる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。グラフェンも用いることができる。なお、後述する複合材料をEL層103における第1の電極101と接する層に用いることで、仕事関数に関わらず、電極材料を選択することができるようになる。
【0071】
EL層103の積層構造については、本実施の形態では、
図1(A)に示すように、正孔注入層111、第1の正孔輸送層112−1、第2の正孔輸送層112−2、第3の正孔輸送層112−3、発光層113、第1の電子輸送層114−1、および第2の電子輸送層114−2を有する構成、及び
図1(B)に示すように、正孔注入層111、第1の正孔輸送層112−1、第2の正孔輸送層112−2、第3の正孔輸送層112−3、発光層113、第1の電子輸送層114−1及び第2の電子輸送層114−2に加えて、電荷発生層116を有する構成の2種類の構成について説明する。各層を構成する材料について以下に具体的に示す。
【0072】
正孔注入層111は、有機アクセプタを含む層である。有機アクセプタとしては、電子吸引基(ハロゲン基やシアノ基)を有する化合物を用いることができ、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F
4−TCNQ)、3,6−ジフルオロ−2,5,7,7,8,8−ヘキサシアノキノジメタン、クロラニル、2,3,6,7,10,11−ヘキサシアノ−1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT−CN)等を用いることができる。有機アクセプタとしては、HAT−CNのように複素原子を複数有する縮合芳香環に電子吸引基が結合している化合物が、熱的に安定であり好ましい。有機アクセプタは、隣接する正孔輸送層(あるいは正孔輸送材料)から、少なくとも電界の印加により電子を引き抜くことができる。
【0073】
正孔注入層111を形成することによって、正孔の注入性が良好となり、駆動電圧の小さい発光素子を得ることができる。また、有機アクセプタは蒸着が容易で成膜がしやすいため、用いやすい材料である。
【0074】
正孔輸送層は、第1の正孔輸送層112−1、第2の正孔輸送層112−2及び第3の正孔輸送層112−3から構成されている。第1の正孔輸送層112−1乃至第3の正孔輸送層112−3はいずれも正孔輸送性を有する正孔輸送材料を含んでおり、第1の正孔輸送層112−1には第1の正孔輸送材料が、第2の正孔輸送層112−2には第2の正孔輸送材料、第3の正孔輸送層112−3には第3の正孔輸送材料が含まれている。正孔輸送材料としては、1×10
−6cm
2/Vs以上の正孔移動度を有していることが好ましい。また、各々の材料の間には、第2の正孔輸送材料のHOMO準位は第1の正孔輸送材料のHOMO準位よりも深く、発光層113に含まれるホスト材料のHOMO準位は第2の正孔輸送材料のHOMO準位よりも深く、第3の正孔輸送材料のHOMO準位はホスト材料のHOMO準位と同じまたは深く、第2の正孔輸送材料のHOMO準位と第3の正孔輸送材料のHOMO準位の差は0.3eV以下という関係が存在する。なお、第2の正孔輸送材料のHOMO準位と第3の正孔輸送材料のHOMO準位の差は0.2eV以下であることが好ましい。
【0075】
第1の正孔輸送材料としては、HOMO準位の比較的浅い正孔輸送材料を用いることが好ましく、そのような有機化合物としては、トリアリールアミンでありかつ、フルオレニルアミン骨格を有する物質が好ましい。
【0076】
第3の正孔輸送材料としては、HOMO準位の比較的深い正孔輸送材料を用いることが好ましい。アミンを含む有機化合物はHOMO準位が浅くなりがちであるので、アミンを含まない正孔輸送材料が好ましい。なお、このような正孔輸送材料としてはカルバゾール骨格を含む正孔輸送材料が好ましい。カルバゾール骨格とトリフェニレン骨格とを含む有機化合物や、カルバゾール骨格とナフタレン骨格を含む有機化合物等を好適に用いることができる。
【0077】
第2の正孔輸送材料としては、第1の正孔輸送材料と第3の正孔輸送材料の間のHOMO準位を有する正孔輸送材料が好ましい。具体的には、トリアリールアミンでありかつ、トリフェニルアミン骨格を含む正孔輸送材料が好ましい。なお、上記トリフェニルアミン骨格におけるフェニル基は縮環していないことが好ましい。
【0078】
発光層113は、ホスト材料と発光材料を含む層である。発光材料は蛍光発光物質であっても、りん光発光物質であっても、熱活性化遅延蛍光(TADF)を示す物質であってもいずれでも構わない。また、単層であっても、異なる発光材料が含まれる複数の層からなっていても良い。なお、本発明の一態様では、発光層113は蛍光発光を呈する層、特に、青色の蛍光発光を呈する層である場合により好適に適用することができる。
【0079】
発光層113において、蛍光発光物質として用いることが可能な材料としては、例えば以下のようなものが挙げられる。また、これ以外の蛍光発光物質も用いることができる。
【0080】
5,6−ビス[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−2,2’−ビピリジン(略称:PAP2BPy)、5,6−ビス[4’−(10−フェニル−9−アントリル)ビフェニル−4−イル]−2,2’−ビピリジン(略称:PAPP2BPy)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス[4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル]ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス[3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル]−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン(略称:TBP)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’−(2−tert−ブチルアントラセン−9,10−ジイルジ−4,1−フェニレン)ビス[N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPPA)、N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’−オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン−2,7,10,15−テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)、クマリン545T、N,N’−ジフェニルキナクリドン、(略称:DPQd)、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2−(2−{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−6−メチル−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2−{2−メチル−6−[2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)、2−{2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2−{2−tert−ブチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2−(2,6−ビス{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2−{2,6−ビス[2−(8−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)などが挙げられる。特に、1,6FLPAPrnや1,6mMemFLPAPrnのようなピレンジアミン化合物に代表される縮合芳香族ジアミン化合物は、ホールトラップ性が高く、発光効率や信頼性に優れているため好ましい。
【0081】
発光層113において、りん光発光物質として用いることが可能な材料としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0082】
トリス{2−[5−(2−メチルフェニル)−4−(2,6−ジメチルフェニル)−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル−κN2]フェニル−κC}イリジウム(III)(略称:[Ir(mpptz−dmp)
3])、トリス(5−メチル−3,4−ジフェニル−4H−1,2,4−トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz)
3])、トリス[4−(3−ビフェニル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrptz−3b)
3])のような4H−トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス[3−メチル−1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1−mp)
3])、トリス(1−メチル−5−フェニル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1−Me)
3])のような1H−トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、fac−トリス[1−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−フェニル−1H−イミダゾール]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrpmi)
3])、トリス[3−(2,6−ジメチルフェニル)−7−メチルイミダゾ[1,2−f]フェナントリジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(dmpimpt−Me)
3])のようなイミダゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C
2’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C
2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2−[3’,5’−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト−N,C
2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:[Ir(CF
3ppy)
2(pic)])、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C
2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIr(acac))のような電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配位子とする有機金属イリジウム錯体が挙げられる。これらは青色のりん光発光を示す化合物であり、440nmから520nmに発光のピークを有する化合物である。
【0083】
また、トリス(4−メチル−6−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)
3])、トリス(4−t−ブチル−6−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)
3])、(アセチルアセトナト)ビス(6−メチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)
2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(6−tert−ブチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)
2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[6−(2−ノルボルニル)−4−フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(nbppm)
2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[5−メチル−6−(2−メチルフェニル)−4−フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(mpmppm)
2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(4,6−ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)
2(acac)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(3,5−ジメチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr−Me)
2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(5−イソプロピル−3−メチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr−iPr)
2(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C
2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)
3])、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C
2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(ppy)
2(acac)])、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bzq)
2(acac)])、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(bzq)
3])、トリス(2−フェニルキノリナト−N,C
2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(pq)
3])、ビス(2−フェニルキノリナト−N,C
2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(pq)
2(acac)])のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:[Tb(acac)
3(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。これらは主に緑色のりん光発光を示す化合物であり、500nm〜600nmに発光のピークを有する。なお、ピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性や発光効率にも際だって優れるため、特に好ましい。
【0084】
また、(ジイソブチリルメタナト)ビス[4,6−ビス(3−メチルフェニル)ピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)
2(dibm)])、ビス[4,6−ビス(3−メチルフェニル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)
2(dpm)])、ビス[4,6−ジ(ナフタレン−1−イル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(d1npm)
2(dpm)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)
2(acac)])、ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)
2(dpm])])、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Fdpq)
2(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(1−フェニルイソキノリナト−N,C
2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(piq)
3])、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C
2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(piq)
2(acac)])のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)のような白金錯体や、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(DBM)
3(Phen)])、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(TTA)
3(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。これらは、赤色のりん光発光を示す化合物であり、600nmから700nmに発光のピークを有する。また、ピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、色度の良い赤色発光が得られる。
【0085】
また、以上で述べたりん光性化合物の他、公知のりん光性発光材料を選択し、用いてもよい。
【0086】
TADF材料としてはフラーレン及びその誘導体、プロフラビン等のアクリジン誘導体、エオシン等を用いることができる。またマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム(Pd)等を含む金属含有ポルフィリンを用いることができる。該金属含有ポルフィリンとしては、例えば、以下の構造式に示されるプロトポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF
2(Proto IX))、メソポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF
2(Meso IX))、ヘマトポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF
2(Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチルエステル−フッ化スズ錯体(SnF
2(Copro III−4Me))、オクタエチルポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF
2(OEP))、エチオポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF
2(Etio I))、オクタエチルポルフィリン−塩化白金錯体(PtCl
2OEP)等も挙げられる。
【0088】
また、以下の構造式に示される2−(ビフェニル−4−イル)−4,6−ビス(12−フェニルインドロ[2,3−a]カルバゾール−11−イル)−1,3,5−トリアジン(略称:PIC−TRZ)や、9−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−9’−フェニル−9H,9’H−3,3’−ビカルバゾール(略称:PCCzTzn)、2−{4−[3−(N−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−9H−カルバゾール−9−イル]フェニル}−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン(略称:PCCzPTzn)、2−[4−(10H−フェノキサジン−10−イル)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン(略称:PXZ−TRZ)、3−[4−(5−フェニル−5,10−ジヒドロフェナジン−10−イル)フェニル]−4,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾール(略称:PPZ−3TPT)、3−(9,9−ジメチル−9H−アクリジン−10−イル)−9H−キサンテン−9−オン(略称:ACRXTN)、ビス[4−(9,9−ジメチル−9,10−ジヒドロアクリジン)フェニル]スルホン(略称:DMAC−DPS)、10−フェニル−10H,10’H−スピロ[アクリジン−9,9’−アントラセン]−10’−オン(略称:ACRSA)、等のπ電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環の両方を有する複素環化合物も用いることができる。該複素環化合物は、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有するため、電子輸送性及び正孔輸送性が共に高く、好ましい。なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環のドナー性とπ電子不足型複素芳香環のアクセプタ性が共に強くなり、S
1準位とT
1準位のエネルギー差が小さくなるため、熱活性化遅延蛍光を効率よく得られることから特に好ましい。なお、π電子不足型複素芳香環の代わりに、シアノ基のような電子吸引基が結合した芳香環を用いても良い。
【0090】
発光層のホスト材料としては、電子輸送性を有する材料や正孔輸送性を有する材料など様々なキャリア輸送材料を用いることができる。
【0091】
続いて、発光層のホスト材料としては様々なキャリア輸送材料を用いることができる。当該キャリア輸送材料としては、例えば以下に示すような正孔輸送性を有する物質や、電子輸送性を有する物質などを用いることができる。もちろん、以下に挙げる物質以外の正孔輸送性を有する材料や電子輸送性を有する材料、バイポーラ性を有する材料も用いることができる。
【0092】
正孔輸送性を有する材料としては、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4−フェニル−3’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’−ジフェニル−4’’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4−(1−ナフチル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4、4’−ジ(1−ナフチル)−4’’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、9,9−ジメチル−N−フェニル−N−[4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル]−フルオレン−2−アミン(略称:PCBAF)、N−フェニル−N−[4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル]スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−アミン(略称:PCBASF)などの芳香族アミン骨格を有する化合物や、1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)−9−フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、3,3’−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール)(略称:PCCP)などのカルバゾール骨格を有する化合物や、4,4’,4’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P−II)、2,8−ジフェニル−4−[4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP−III)、4−[4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル]−6−フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP−IV)などのチオフェン骨格を有する化合物や、4,4’,4’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P−II)、4−{3−[3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi−II)などのフラン骨格を有する化合物が挙げられる。上述した中でも、芳香族アミン骨格を有する化合物やカルバゾール骨格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与するため好ましい。
【0093】
電子輸送性を有する材料としては、例えば、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq
2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8−キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体や、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CO11)、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)などのポリアゾール骨格を有する複素環化合物や、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)、2−[3’−(ジベンゾチオフェン−4−イル)ビフェニル−3−イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq−II)、2−[3’−(9H−カルバゾール−9−イル)ビフェニル−3−イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、4,6−ビス[3−(フェナントレン−9−イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6−ビス[3−(4−ジベンゾチエニル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm−II)などのジアジン骨格を有する複素環化合物や、3,5−ビス[3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5−トリ[3−(3−ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)などのピリジン骨格を有する複素環化合物が挙げられる。上述した中でも、ジアジン骨格を有する複素環化合物やピリジン骨格を有する複素環化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジンやピラジン)骨格を有する複素環化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
【0094】
なお、ホスト材料は複数種の物質を混合した材料であっても良く、混合したホスト材料を用いる場合は、電子輸送性を有する材料と、正孔輸送性を有する材料とを混合することが好ましい。電子輸送性を有する材料と、正孔輸送性を有する材料を混合することによって、発光層113の輸送性を容易に調整することができ、再結合領域の制御も簡便に行うことができる。正孔輸送性を有する材料と電子輸送性を有する材料の含有量の比は、正孔輸送性を有する材料:電子輸送性を有する材料=1:9〜9:1とすればよい。
【0095】
また、これら混合された材料同士で励起錯体を形成しても良い。当該励起錯体は発光材料の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈する励起錯体を形成するような組み合わせを選択することで、エネルギー移動がスムーズとなり、効率よく発光が得られるため好ましい。また、駆動電圧も低下するため好ましい。
【0096】
本発明の一態様の発光素子ではホスト材料は、3環以上6環以下の縮合芳香環骨格を含む物質であることが好ましい。3環以上6環以下の縮合芳香環骨格を含む物質としては、例えば、CzPA、7−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−7H−ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:cgDBCzPA)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、4−[3−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]ジベンゾフラン(略称:2mDBFPPA−II)、t−BuDNA、9−(2−ナフチル)−10−[4−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:BH−1)のようなアントラセン骨格を有する物質や、5,12−ジフェニルテトラセン(略称:DPT)、ルブレン、2,8−ジ−tert−ブチル−5,11−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−6,12−ジフェニルテトラセン(略称:TBRb)のようなテトラセン骨格を有する物質や、1,3,5−トリ(1−ピレニル)ベンゼン(略称:TPB3)、9,9−ビス[4−(1−ピレニル)フェニル]−9H−フルオレン(略称:BPPF)、2,7−ビス(1−ピレニル)ースピロー9,9’―ビフルオレン(略称:Spyro−pye)のようなピレン骨格を有する物質や、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン(略称:TBP)のようなペリレン骨格を有する物質、フルオランテン骨格を有する物質、ジベンゾクリセン骨格を有する物質等が挙げられる。この中でも、上述した通り、アントラセン骨格を有する物質が特に好ましい。
【0097】
なお、第1の電子輸送材料及び第2の電子輸送材料は、6員環の含窒素複素芳香環骨格を有する物質であることが好ましい。6員環の含窒素複素芳香環骨格を有する物質は、5員環の含窒素複素環骨格(ピロール、インドール、カルバゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール等)を有する物質よりも電子受容体としての信頼性が高いため、信頼性の良好な発光素子を得ることができる。なお、6員環の含窒素複素芳香環骨格を有する物質は、5員環の含窒素複素環骨格を有する物質よりもLUMO準位が深くなる傾向があるため、第1の電子輸送材料として特に好適である。
【0098】
したがって、第1の電子輸送材料は、トリアジン骨格やジアジン骨格(特にピラジン骨格またはピリミジン骨格)を含むことが好ましく、その中でも縮合複素芳香環骨格を含む物質が好適である。ジアジン骨格を有する縮合複素芳香環骨格を含む物質の好ましい例としては、信頼性に優れたベンゾキナゾリン骨格やジベンゾキノキサリン骨格を含む物質が挙げられ、特にジベンゾキノキサリン骨格はLUMO準位が深くなりやすいため、好ましい。このような構成を有する本発明の一態様の発光素子では、駆動時間の蓄積に伴う輝度劣化が小さい、寿命の長い発光素子とすることができる。
【0099】
第2の電子輸送材料は、陰極と接する場合を考慮すると、ピリジン骨格やビピリジン骨格を有する物質が好適である。また、第1の電子輸送材料がトリアジン骨格やジアジン骨格(特にピラジン骨格またはピリミジン骨格)を含む場合、ピリジン骨格やビピリジン骨格は、それらトリアジン骨格やジアジン骨格よりもLUMO準位が高くなるため、この組み合わせが好ましい。ピリジン骨格やビピリジン骨格は、縮合環を形成していても良く、例えばフェナントロリン骨格を形成していても良い。
【0100】
第1の電子輸送材料及び第2の電子輸送材料としては、2mDBTPDBq−II、2mDBTBPDBq−II、2−{3−[3−(2,8−ジフェニルジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]フェニル}ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq−III)、2−{3−[3−(6−フェニルジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]フェニル}ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq−IV)、2−[4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:PCPDBq)、2−[3−(3,6−ジフェニル−9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzPDBq−III)、2−[3’−(9H−カルバゾール−9−イル)ビフェニル−3−イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、7−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq−II)、7−[3’−(ジベンゾチオフェン−4−イル)ビフェニル−3−イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:7mDBTBPDBq−II)のようなジベンゾキノキサリン骨格を有する物質、2,2’ー(ピリジン−2,6−ジイル)ビス(4−フェニルベンゾ[h]キナゾリン)(略称:2,6(P−Bqn)2Py)のようなベンゾキナゾリン骨格を有する物質、4,6mDBTP2Pm−II、4,6−ビス[3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mCzP2Pm)、4−[3’−(ジベンゾチオフェン−4−イル)ビフェニル−3−イル]ベンゾフロ[3,2−d]ピリミジン(略称:4mDBTBPBfpm−II)、4−{3−[3’−(9H−カルバゾール−9−イル)]ビフェニル−3−イル}ベンゾフロ[3,2−d]ピリミジン(略称:4mCzBPBfPm)、4,6−ビス(3,5−ジ(ピリジンー3−イル)フェニル)−2−メチルピリミジン(略称:B3PYMPM)、2,2’ー(ピリジン−2,6−ジイル)ビス(4,6−ジフェニルピリミジン)(略称:2,6(P2Pm)2Py)のようなピリミジン骨格を有する物質、ピラジノ[2,3−f][1,10]フェナントロリン−2,3−ジカルボニトリル(略称:PPDN)、2,3−ジフェニルピリド[2,3−b]ピラジン(略称:2PYPR)、2,3−ジフェニルピリド[3,4−b]ピラジン(略称:3PYPR)のようなピラジン骨格を有する物質、2,4,6−トリス(2−ピリジル)−1,3,5−トリアジン(略称:2Py3Tzn)、2,4,6−トリス(3’ー(ピリジン−3−イル)ビフェニルー3−イル)−1,3,5−トリアジン(略称:TmPPPyTz)、3−(4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル)ー9−(4,6−ジフェニルー1,3,5−トリアジン−2−イル)−9H−カルバゾール(略称:CPCBPTz)のようなトリアジン骨格を有する物質、バソキュプロイン(略称:BCP)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、2,9−ビス(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(略称:NBPhen)、4,4’ージ(1,10−フェナントロリンー2−イル)ビフェニル(略称:Phen2BP)のようなフェナントロリン骨格を有する物質、4,4’―ビス[3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−2,2’ービピリジン(略称:4,4’mCzP2BPy)、4,4’―ビス[3−(ジベンゾチオフェンー4−イル)フェニル]−2,2’ービピリジン(略称:4,4’mDBTP2BPy−II)、4,4’―ビス[3−(ジベンゾフランー4−イル)フェニル]−2,2’ービピリジン(略称:4,4’DBfP2BPy−II)のようなビピリジン骨格を有する物質、トリス[2,4,6−トリメチルー3−(3−ピリジル)フェニル]ボラン(略称:3TPYMB)、1,3,5−トリ[3−(3−ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)、3,3’,5,5’ーテトラ[(m−ピリジル)−フェン−3−イル]ビフェニル(略称:BP4mPy)、1,3−ビス[3,5−ジ(ピリジン−3−イル)フェニル]ベンゼン(略称:BmPyPhB)のようなピリジン骨格を有する物質などを挙げることができる。この中、及び上述のホスト材料として用いることができる3環以上6環以下の縮合芳香環骨格を含む物質として挙げた物質の中から、ホスト材料を構成する材料のLUMO準位及び第2の電子輸送材料のLUMO準位が第1の電子輸送材料のLUMO準位よりも高い(浅い)準位に位置するように材料を選択すればよい。
【0101】
また、さらに電荷発生層116を設けても良い(
図1(B))。電荷発生層116は、電位をかけることによって当該層の陰極側に接する層に正孔を、陽極側に接する層に電子を注入することができる層のことである。電荷発生層116には、少なくともP型層117が含まれる。P型層117は、上述の正孔注入層111を構成することができる材料として挙げた複合材料を用いて形成することが好ましい。またP型層117は、複合材料を構成する材料として上述したアクセプタ材料を含む膜と正孔輸送材料を含む膜とを積層して構成しても良い。P型層117に電位をかけることによって、第2の電子輸送層114−2に電子が、第2の電極102に正孔が注入され、発光素子が動作する。
【0102】
なお、電荷発生層116はP型層117の他に電子リレー層118及び電子注入バッファ層119のいずれか一又は両方がもうけられていることが好ましい。
【0103】
電子リレー層118は少なくとも電子輸送性を有する物質を含み、電子注入バッファ層119とP型層117との相互作用を防いで電子をスムーズに受け渡す機能を有する。電子リレー層118に含まれる電子輸送性を有する物質のLUMO準位は、P型層117におけるアクセプタ性物質のLUMO準位と、電子輸送層114における電荷発生層116に接する層に含まれる物質のLUMO準位との間であることが好ましい。電子リレー層118に用いられる電子輸送性を有する物質におけるLUMO準位の具体的なエネルギー準位は−5.0eV以上、好ましくは−5.0eV以上−3.0eV以下とするとよい。なお、電子リレー層118に用いられる電子輸送性を有する物質としてはフタロシアニン系の材料又は金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体を用いることが好ましい。
【0104】
電子注入バッファ層119には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。
【0105】
また、電子注入バッファ層119が、電子輸送性を有する物質とドナー性物質を含んで形成される場合には、ドナー性物質として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセン等の有機化合物を用いることもできる。なお、電子輸送性を有する物質としては、先に説明した電子輸送層114を構成する材料と同様の材料を用いて形成することができる。
【0106】
陰極を形成する物質としては、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料の具体例としては、リチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等の元素周期表の第1族または第2族に属する元素、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。しかしながら、陰極と電子輸送層との間に、電子注入層を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム−酸化スズ等様々な導電性材料を陰極として用いることができる。
これら導電性材料は、真空蒸着法やスパッタリング法などの乾式法、インクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することが可能である。また、ゾル−ゲル法を用いて湿式法で形成しても良いし、金属材料のペーストを用いて湿式法で形成してもよい。
【0107】
また、EL層103の形成方法としては、乾式法、湿式法を問わず、種々の方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法またはスピンコート法など用いても構わない。
【0108】
また上述した各電極または各層を異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
【0109】
ここで、液滴吐出法を用いてEL層786を形成する方法について、
図2を用いて説明する。
図2(A)乃至
図2(D)は、EL層786の作製方法を説明する断面図である。
【0110】
まず、平坦化絶縁膜770上に導電膜772が形成され、導電膜772の一部を覆うように絶縁膜730が形成される(
図2(A)参照)。
【0111】
次に、絶縁膜730の開口である導電膜772の露出部に、液滴吐出装置783より液滴784を吐出し、組成物を含む層785を形成する。液滴784は、溶媒を含む組成物であり、導電膜772上に付着する(
図2(B)参照)。
【0112】
なお、液滴784を吐出する工程を減圧下で行ってもよい。
【0113】
次に、組成物を含む層785より溶媒を除去し、固化することによってEL層786を形成する(
図2(C)参照)。
【0114】
なお、溶媒の除去方法としては、乾燥工程または加熱工程を行えばよい。
【0115】
次に、EL層786上に導電膜788を形成し、発光素子782を形成する(
図2(D)参照)。
【0116】
このようにEL層786を液滴吐出法で行うと、選択的に組成物を吐出することができるため、材料のロスを削減することができる。また、形状を加工するためのリソグラフィ工程なども必要ないために工程も簡略化することができ、低コスト化が達成できる。
【0117】
なお、上記説明した液滴吐出法とは、組成物の吐出口を有するノズル、あるいは1つ又は複数のノズルを有するヘッド等の液滴を吐出する手段を有するものの総称とする。
【0118】
次に、液滴吐出法に用いる液滴吐出装置について、
図3を用いて説明する。
図3は、液滴吐出装置1400を説明する概念図である。
【0119】
液滴吐出装置1400は、液滴吐出手段1403を有する。また、液滴吐出手段1403は、ヘッド1405と、ヘッド1412と、ヘッド1416とを有する。
【0120】
ヘッド1405、及びヘッド1412は制御手段1407に接続され、それがコンピュータ1410で制御することにより予めプログラミングされたパターンに描画することができる。
【0121】
また、描画するタイミングとしては、例えば、基板1402上に形成されたマーカー1411を基準に行えば良い。あるいは、基板1402の外縁を基準にして基準点を確定させても良い。ここでは、マーカー1411を撮像手段1404で検出し、画像処理手段1409にてデジタル信号に変換したものをコンピュータ1410で認識して制御信号を発生させて制御手段1407に送る。
【0122】
撮像手段1404としては、電荷結合素子(CCD)や相補型金属−酸化物−半導体(CMOS)を利用したイメージセンサなどを用いることができる。なお、基板1402上に形成されるべきパターンの情報は記憶媒体1408に格納されたものであり、この情報を基にして制御手段1407に制御信号を送り、液滴吐出手段1403の個々のヘッド1405、ヘッド1412、ヘッド1416を個別に制御することができる。吐出する材料は、材料供給源1413、材料供給源1414、材料供給源1415より配管を通してヘッド1405、ヘッド1412、ヘッド1416にそれぞれ供給される。
【0123】
ヘッド1405、ヘッド1412、ヘッド1416の内部は、点線1406が示すように液状の材料を充填する空間と、吐出口であるノズルを有する構造となっている。図示しないが、ヘッド1412もヘッド1405と同様な内部構造を有する。ヘッド1405とヘッド1412のノズルを異なるサイズで設けると、異なる材料を異なる幅で同時に描画することができる。一つのヘッドで、複数種の発光材料などをそれぞれ吐出し、描画することができ、広領域に描画する場合は、スループットを向上させるため複数のノズルより同材料を同時に吐出し、描画することができる。大型基板を用いる場合、ヘッド1405、ヘッド1412、ヘッド1416は基板上を、
図3中に示すX、Y、Zの矢印の方向に自在に走査し、描画する領域を自由に設定することができ、同じパターンを一枚の基板に複数描画することができる。
【0124】
また、組成物を吐出する工程は、減圧下で行ってもよい。吐出時に基板を加熱しておいてもよい。組成物を吐出後、乾燥と焼成の一方又は両方の工程を行う。乾燥と焼成の工程は、両工程とも加熱処理の工程であるが、その目的、温度と時間が異なるものである。乾燥の工程、焼成の工程は、常圧下又は減圧下で、レーザ光の照射や瞬間熱アニール、加熱炉などにより行う。なお、この加熱処理を行うタイミング、加熱処理の回数は特に限定されない。乾燥と焼成の工程を良好に行うためには、そのときの温度は、基板の材質及び組成物の性質に依存する。
【0125】
以上のように、液滴吐出装置を用いてEL層786を作製することができる。
【0126】
液滴吐出装置を用いてEL層786を作製する場合において、有機化合物を溶媒に溶かした組成物として湿式法により形成する場合、種々の有機溶剤を用いて塗布用組成物とすることが出来る。前記組成物に用いることが出来る有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エタノール、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、メチレンクロライド、四塩化炭素、酢酸エチル、ヘキサン、シクロヘキサン等種々の有機溶剤を用いることが出来る。特に、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の低極性なベンゼン誘導体を用いることで、好適な濃度の溶液を作ることが出来、また、インク中に含まれる有機化合物が酸化などにより劣化することを防止できるため好ましい。また、作製後の膜の均一性や膜厚の均一性などを考慮すると沸点が100℃以上であることが好ましく、トルエン、キシレン、メシチレンが更に好ましい。
【0127】
なお、上記構成は、本実施の形態中の他の構成と適宜組み合わせることが可能である。
【0128】
電極についても、ゾル−ゲル法を用いて湿式法で形成しても良いし、金属材料のペーストを用いて湿式法で形成してもよい。また、スパッタリング法や真空蒸着法などの乾式法を用いて形成しても良い。
【0129】
当該発光素子の発光は、第1の電極101または第2の電極102のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極101または第2の電極102のいずれか一方または両方を透光性を有する電極で形成する。
【0130】
また、発光層113に接する正孔輸送層や電子輸送層、特に発光層113における再結合領域に近いキャリア輸送層は、発光層で生成した励起子からのエネルギー移動を抑制するため、そのバンドギャップが発光層を構成する発光物質もしくは、発光層に含まれる発光中心物質が有するバンドギャップより大きいバンドギャップを有する物質で構成することが好ましい。
【0131】
続いて、複数の発光ユニットを積層した構成の発光素子(積層型素子、タンデム型素子ともいう)の態様について、
図1(C)を参照して説明する。この発光素子は、陽極と陰極との間に、複数の発光ユニットを有する発光素子である。一つの発光ユニットは、
図1(A)又は
図1(B)で示したEL層103とほぼ同様な構成を有する。つまり、
図1(C)で示す発光素子は複数の発光ユニットを有する発光素子であり、
図1(A)又は
図1(B)で示した発光素子は、1つの発光ユニットを有する発光素子であるということができる。
【0132】
図1(C)において、第1の電極501と第2の電極502との間には、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512が積層されており、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512との間には電荷発生層513が設けられている。第1の電極501と第2の電極502はそれぞれ
図1(A)における第1の電極101と第2の電極102に相当し、
図1(A)の説明で述べたものと同じものを適用することができる。また、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512は同じ構成であっても異なる構成であってもよい。
【0133】
電荷発生層513は、第1の電極501と第2の電極502に電圧を印加したときに、一方の発光ユニットに電子を注入し、他方の発光ユニットに正孔を注入する機能を有する。すなわち、
図1(C)において、第1の電極の電位の方が第2の電極の電位よりも高くなるように電圧を印加した場合、電荷発生層513は、第1の発光ユニット511に電子を注入し、第2の発光ユニット512に正孔を注入するものであればよい。
【0134】
電荷発生層513は、
図1(B)にて説明した電荷発生層116と同様の構成で形成することが好ましい。有機化合物と金属酸化物の複合材料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実現することができる。なお、発光ユニットの陽極側の面が電荷発生層513に接している場合は、電荷発生層513が発光ユニットの正孔注入層の役割も担うことができるため、発光ユニットは正孔注入層を設けなくとも良い。
【0135】
また、電子注入バッファ層119を設ける場合、当該電子注入バッファ層119が陽極側の発光ユニットにおける電子注入層の役割を担うため、陽極側の発光ユニットには必ずしも電子注入層を形成する必要はない。
【0136】
図1(C)では、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明したが、3つ以上の発光ユニットを積層した発光素子についても、同様に適用することが可能である。本実施の形態に係る発光素子のように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層513で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度発光を可能とし、さらに長寿命な素子を実現できる。また、低電圧駆動が可能で消費電力が低い発光装置を実現することができる。
【0137】
また、それぞれの発光ユニットの発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つの発光ユニットを有する発光素子において、第1の発光ユニットで赤と緑の発光色、第2の発光ユニットで青の発光色を得ることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。
【0138】
なお、上記構成は、本実施の形態中の他の構成と適宜組み合わせることが可能である。
【0139】
≪微小光共振器(マイクロキャビティ)構造≫
マイクロキャビティ構造を有する発光素子は、上記一対の電極を、反射電極と半透過・半反射電極とから構成することにより得られる。反射電極と半透過・半反射電極は上述の第1の電極と第2の電極に相当する。反射電極と半透過・半反射電極との間には少なくともEL層を有し、EL層は少なくとも発光領域となる発光層を有している。
【0140】
EL層に含まれる発光層から射出される発光は、反射電極と半透過・半反射電極とによって反射され、共振する。なお、反射電極は、可視光の反射率が40%乃至100%、好ましくは70%乃至100%であり、かつその抵抗率が1×10
−2Ωcm以下であるものとする。また、半透過・半反射電極は、可視光の反射率が20%乃至80%、好ましくは40%乃至70%であり、かつその抵抗率が1×10
−2Ωcm以下であるものとする。
【0141】
また、当該発光素子は、透明導電膜や上述の複合材料、キャリア輸送材料などの厚みを変えることで反射電極と半透過・半反射電極の間の光学的距離を変えることができる。これにより、反射電極と半透過・半反射電極との間において、共振する波長の光を強め、共振しない波長の光を減衰させることができる。
【0142】
なお、発光層から発する光のうち、反射電極によって反射されて戻ってきた光(第1の反射光)は、発光層から半透過・半反射電極に直接入射する光(第1の入射光)と大きな干渉を起こすため、反射電極と発光層の光学的距離を(2n−1)λ/4(ただし、nは1以上の自然数、λは増幅したい色の波長)に調節することが好ましい。これにより、第1の反射光と第1の入射光との位相を合わせ発光層からの発光をより増幅させることができる。
【0143】
なお、上記構成においては、EL層に複数の発光層を有する構造であっても、単一の発光層を有する構造であっても良く、例えば、上述のタンデム型発光素子の構成と組み合わせて、一つの発光素子に電荷発生層を挟んで複数のEL層を設け、それぞれのEL層に単数もしくは複数の発光層を形成する構成に適用してもよい。
【0144】
≪発光装置≫
本発明の一態様の発光装置について
図4を用いて説明する。なお、
図4(A)は、発光装置を示す上面図、
図4(B)は
図4(A)をA−BおよびC−Dで切断した断面図である。この発光装置は、発光素子の発光を制御するものとして、点線で示された駆動回路部(ソース線駆動回路)601、画素部602、駆動回路部(ゲート線駆動回路)603を含んでいる。また、604は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
【0145】
なお、引き回し配線608はソース線駆動回路601及びゲート線駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0146】
次に、断面構造について
図4(B)を用いて説明する。素子基板610上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース線駆動回路601と、画素部602中の一つの画素が示されている。
【0147】
なお、ソース線駆動回路601はnチャネル型FET623とpチャネル型FET624とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路は、種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0148】
また、画素部602はスイッチング用FET611と、電流制御用FET612とそのドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む複数の画素により形成されているが、これに限定されず、3つ以上のFETと、容量素子とを組み合わせた画素部としてもよい。
【0149】
FETに用いる半導体の種類及び結晶性については特に限定されず、非晶質半導体を用いてもよいし、結晶性半導体を用いてもよい。FETに用いる半導体の例としては、第13族半導体、第14族半導体、化合物半導体、酸化物半導体、有機半導体材料を用いることができるが、特に、酸化物半導体を用いると好ましい。該酸化物半導体としては、例えば、In−Ga酸化物、In−M−Zn酸化物(Mは、Al、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNd)等が挙げられる。なお、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、さらに好ましくは3eV以上の酸化物半導体材料を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができるため、好ましい構成である。
【0150】
なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成することができる。
【0151】
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲率半径(0.2μm乃至3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、ネガ型の感光性樹脂、或いはポジ型の感光性樹脂のいずれも使用することができる。
【0152】
第1の電極613上には、EL層616及び第2の電極617がそれぞれ形成されている。これらはそれぞれ
図1(A)又は
図1(B)で説明した第1の電極101、EL層103及び第2の電極102又は
図1(C)で説明した第1の電極501、EL層503及び第2の電極502に相当する。
【0153】
EL層616には有機金属錯体が含まれることが好ましい。当該有機金属錯体は、発光層における発光中心物質として用いられることが好ましい。
【0154】
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光素子618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605で充填される場合もある。封止基板604には凹部を形成し、そこに乾燥材を設けると水分の影響による劣化を抑制することができ、好ましい構成である。
【0155】
シール材605にはエポキシ系樹脂やガラスフリットを用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、素子基板610及び封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiber Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0156】
例えば、本明細書等において、様々な基板を用いて、トランジスタや発光素子を形成することが出来る。基板の種類は、特定のものに限定されることはない。その基板の一例としては、半導体基板(例えば単結晶基板又はシリコン基板)、SOI基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金属基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、又は基材フィルムなどがある。ガラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、又はソーダライムガラスなどがある。可撓性基板、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどの一例としては、以下のものがあげられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)に代表されるプラスチックがある。または、一例としては、アクリル等の合成樹脂などがある。または、一例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、又はポリ塩化ビニルなどがある。または、一例としては、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、エポキシ、無機蒸着フィルム、又は紙類などがある。特に、半導体基板、単結晶基板、又はSOI基板などを用いてトランジスタを製造することによって、特性、サイズ、又は形状などのばらつきが少なく、電流能力が高く、サイズの小さいトランジスタを製造することができる。このようなトランジスタによって回路を構成すると、回路の低消費電力化、又は回路の高集積化を図ることができる。
【0157】
また、基板として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタや発光素子を形成してもよい。または、基板とトランジスタの間や、基板と発光素子の間に剥離層を設けてもよい。剥離層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板より分離し、他の基板に転載するために用いることができる。その際、トランジスタは耐熱性の劣る基板や可撓性の基板にも転載できる。なお、上述の剥離層には、例えば、タングステン膜と酸化シリコン膜との無機膜の積層構造の構成や、基板上にポリイミド等の有機樹脂膜が形成された構成等を用いることができる。
【0158】
つまり、ある基板を用いてトランジスタや発光素子を形成し、その後、別の基板にトランジスタや発光素子を転置し、別の基板上にトランジスタや発光素子を配置してもよい。トランジスタや発光素子が転置される基板の一例としては、上述したトランジスタを形成することが可能な基板に加え、紙基板、セロファン基板、アラミドフィルム基板、ポリイミドフィルム基板、石材基板、木材基板、布基板(天然繊維(絹、綿、麻)、合成繊維(ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル)若しくは再生繊維(アセテート、キュプラ、レーヨン、再生ポリエステル)などを含む)、皮革基板、又はゴム基板などがある。これらの基板を用いることにより、特性のよいトランジスタの形成、消費電力の小さいトランジスタの形成、壊れにくい装置の製造、耐熱性の付与、軽量化、又は薄型化を図ることができる。
【0159】
図5には白色発光を呈する発光素子を形成し、着色層(カラーフィルタ)等を設けることによってフルカラー化した発光装置の例を示す。
図5(A)には基板1001、下地絶縁膜1002、ゲート絶縁膜1003、ゲート電極1006、1007、1008、第1の層間絶縁膜1020、第2の層間絶縁膜1021、周辺部1042、画素部1040、駆動回路部1041、発光素子の第1の電極1024W、1024R、1024G、1024B、隔壁1025、EL層1028、発光素子の第2の電極1029、封止基板1031、シール材1032などが図示されている。
【0160】
また、
図5(A)では着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)は透明な基材1033に設けている。また、黒色層(ブラックマトリックス)1035をさらに設けても良い。着色層及び黒色層が設けられた透明な基材1033は、位置合わせし、基板1001に固定する。なお、着色層、及び黒色層は、オーバーコート層で覆われている。また、
図5(A)においては、光が着色層を透過せずに外部へと出る発光層と、各色の着色層を透過して外部に光が出る発光層とがあり、着色層を透過しない光は白、着色層を透過する光は赤、青、緑となることから、4色の画素で映像を表現することができる。
【0161】
図5(B)では着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)をゲート絶縁膜1003と第1の層間絶縁膜1020との間に形成する例を示した。このように、着色層は基板1001と封止基板1031の間に設けられていても良い。
【0162】
また、以上に説明した発光装置では、FETが形成されている基板1001側に光を取り出す構造(ボトムエミッション型)の発光装置としたが、封止基板1031側に発光を取り出す構造(トップエミッション型)の発光装置としても良い。トップエミッション型の発光装置の断面図を
図6に示す。この場合、基板1001は光を通さない基板を用いることができる。FETと発光素子の陽極とを接続する接続電極を作製するまでは、ボトムエミッション型の発光装置と同様に形成する。その後、第3の層間絶縁膜1037を電極1022を覆って形成する。この絶縁膜は平坦化の役割を担っていても良い。第3の層間絶縁膜1037は第2の層間絶縁膜と同様の材料の他、他の様々な材料を用いて形成することができる。
【0163】
発光素子の第1の電極1024W、1024R、1024G、1024Bはここでは陽極とするが、陰極であっても構わない。また、
図6のようなトップエミッション型の発光装置である場合、第1の電極を反射電極とすることが好ましい。EL層1028の構成は、
図1(A)又は
図1(B)のEL層103または
図1(C)のEL層503として説明したような構成とし、且つ、白色の発光が得られるような素子構造とする。
【0164】
図6のようなトップエミッションの構造では着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)を設けた封止基板1031で封止を行うことができる。封止基板1031には画素と画素との間に位置するように黒色層(ブラックマトリックス)1035を設けても良い。着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)や黒色層はオーバーコート層によって覆われていても良い。なお封止基板1031は透光性を有する基板を用いることとする。
【0165】
また、ここでは赤、緑、青、白の4色でフルカラー表示を行う例を示したが特に限定されず、赤、緑、青の3色や赤、緑、青、黄の4色でフルカラー表示を行ってもよい。
【0166】
図7には本発明の一態様であるパッシブマトリクス型の発光装置を示す。なお、
図7(A)は、発光装置を示す斜視図、
図7(B)は
図7(A)をX−Yで切断した断面図である。
図7において、基板951上には、電極952と電極956との間にはEL層955が設けられている。電極952の端部は絶縁層953で覆われている。そして、絶縁層953上には隔壁層954が設けられている。隔壁層954の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、隔壁層954の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接する辺)の方が上辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層954を設けることで、静電気等に起因した発光素子の不良を防ぐことが出来る。
【0167】
以上、説明した発光装置は、マトリクス状に配置された多数の微小な発光素子を、画素部に形成されたFETでそれぞれ制御することが可能であるため、画像の表現を行う表示装置として好適に利用できる発光装置である。
【0168】
≪照明装置≫
本発明の一態様である照明装置を
図8を参照しながら説明する。
図8(B)は照明装置の上面図、
図8(A)は
図8(B)におけるe−f断面図である。
【0169】
当該照明装置は、支持体である透光性を有する基板400上に、第1の電極401が形成されている。第1の電極401は
図1(A)、(B)の第1の電極101に相当する。第1の電極401側から発光を取り出す場合、第1の電極401は透光性を有する材料により形成する。
【0170】
第2の電極404に電圧を供給するためのパッド412が基板400上に形成される。
【0171】
第1の電極401上にはEL層403が形成されている。EL層403は
図1(A)、(B)のEL層103などに相当する。なお、これらの構成については当該記載を参照されたい。
【0172】
EL層403を覆って第2の電極404を形成する。第2の電極404は
図1(A)、(B)の第2の電極102に相当する。発光を第1の電極401側から取り出す場合、第2の電極404は反射率の高い材料を含んで形成される。第2の電極404はパッド412と接続することによって、電圧が供給される。
【0173】
第1の電極401、EL層403及び第2の電極404によって発光素子が形成される。当該発光素子を、シール材405、406を用いて封止基板407を固着し、封止することによって照明装置が完成する。シール材405、406はどちらか一方でもかまわない。また、内側のシール材406(
図8(B)では図示せず)には乾燥剤を混ぜることもでき、これにより、水分を吸着することができ、信頼性の向上につながる。
【0174】
また、パッド412と第1の電極401の一部をシール材405、406の外に伸張して設けることによって、外部入力端子とすることができる。また、その上にコンバータなどを搭載したICチップ420などを設けても良い。
【0175】
≪表示装置≫
ここでは、本発明の一態様の半導体装置を用いた表示装置の表示部等に用いることのできる表示パネルの一例について、
図16及び
図17を用いて説明する。以下で例示する表示パネルは、反射型の液晶素子と、発光素子との双方を有し、透過モードと反射モードの両方の表示を行うことのできる、表示パネルである。
【0176】
<6−1.表示パネルの構成例>
図16は、本発明の一態様の表示パネル688の斜視概略図である。表示パネル688は、基板651と基板661とが貼り合わされた構成を有する。
図16では、基板661を破線で明示している。
【0177】
表示パネル688は、表示部662、回路659、配線666等を有する。基板651には、例えば回路659、配線666、及び画素電極として機能する導電膜663等が設けられる。また
図16では基板651上にIC673とFPC672が実装されている例を示している。そのため、
図16に示す構成は、表示パネル688とFPC672及びIC673を有する表示モジュールと言うこともできる。
【0178】
回路659は、例えば走査線駆動回路として機能する回路を用いることができる。
【0179】
配線666は、表示部662や回路659に信号や電力を供給する機能を有する。当該信号や電力は、FPC672を介して外部、またはIC673から配線666に入力される。
【0180】
また、
図16では、COG(Chip On Glass)方式等により、基板651にIC673が設けられている例を示している。IC673は、例えば走査線駆動回路、または信号線駆動回路などとしての機能を有するICを適用できる。なお表示パネル688が走査線駆動回路及び信号線駆動回路として機能する回路を備える場合や、走査線駆動回路や信号線駆動回路として機能する回路を外部に設け、FPC672を介して表示パネル688を駆動するための信号を入力する場合などでは、IC673を設けない構成としてもよい。また、IC673を、COF(Chip On Film)方式等により、FPC672に実装してもよい。
【0181】
図16には、表示部662の一部の拡大図を示している。表示部662には、複数の表示素子が有する導電膜663がマトリクス状に配置されている。導電膜663は、可視光を反射する機能を有し、後述する液晶素子640の反射電極として機能する。
【0182】
また、
図16に示すように、導電膜663は開口を有する。さらに導電膜663よりも基板651側に、発光素子660を有する。発光素子660からの光は、導電膜663の開口を介して基板661側に射出される。発光素子660として、本発明の一態様の発光素子を用いることで、寿命の良好な表示パネルを提供することができる。または、発光効率の良好な発光素子を有する表示パネルを提供することができる。また、発光素子660として、本発明の一態様の発光素子を用いることで、発光効率の良好な青色の発光素子を有する表示パネルを提供することができる。
【0183】
<6−2.断面構成例>
図17に、
図16で例示した表示パネルの、FPC672を含む領域の一部、回路659を含む領域の一部、及び表示部662を含む領域の一部をそれぞれ切断したときの断面の一例を示す。
【0184】
表示パネルは、基板651と基板661の間に、絶縁膜697を有する。また基板651と絶縁膜697の間に、発光素子660、トランジスタ689、トランジスタ691、トランジスタ692、着色層634等を有する。また絶縁膜697と基板661の間に、液晶素子640、着色層631等を有する。また基板661と絶縁膜697は接着層641を介して接着され、基板651と絶縁膜697は接着層642を介して接着されている。
【0185】
トランジスタ692は、液晶素子640と電気的に接続し、トランジスタ691は、発光素子660と電気的に接続する。トランジスタ691とトランジスタ692は、いずれも絶縁膜697の基板651側の面上に形成されているため、これらを同一の工程を用いて作製することができる。
【0186】
基板661には、着色層631、遮光膜632、絶縁膜698、及び液晶素子640の共通電極として機能する導電膜695、配向膜633b、絶縁膜696等が設けられている。絶縁膜696は、液晶素子640のセルギャップを保持するためのスペーサとして機能する。
【0187】
絶縁膜697の基板651側には、絶縁膜681、絶縁膜682、絶縁膜683、絶縁膜684、絶縁膜685等の絶縁層が設けられている。絶縁膜681は、その一部が各トランジスタのゲート絶縁層として機能する。絶縁膜682、絶縁膜683、及び絶縁膜684は、各トランジスタを覆って設けられている。また絶縁膜684を覆って絶縁膜685が設けられている。絶縁膜684及び絶縁膜685は、平坦化層としての機能を有する。なお、ここではトランジスタ等を覆う絶縁層として、絶縁膜682、絶縁膜683、絶縁膜684の3層を有する場合について示しているが、これに限られず4層以上であってもよいし、単層、または2層であってもよい。また平坦化層として機能する絶縁膜684は、不要であれば設けなくてもよい。
【0188】
また、トランジスタ689、トランジスタ691、及びトランジスタ692は、一部がゲートとして機能する導電膜654、一部がソース又はドレインとして機能する導電膜652、半導体膜653を有する。ここでは、同一の導電膜を加工して得られる複数の層に、同じハッチングパターンを付している。
【0189】
液晶素子640は反射型の液晶素子である。液晶素子640は、導電膜635、液晶層694、導電膜695が積層された積層構造を有する。また導電膜635の基板651側に接して、可視光を反射する導電膜663が設けられている。導電膜663は開口655を有する。また導電膜635及び導電膜695は可視光を透過する材料を含む。また液晶層694と導電膜635の間に配向膜633aが設けられ、液晶層694と導電膜695の間に配向膜633bが設けられている。また、基板661の外側の面には、偏光板656を有する。
【0190】
液晶素子640において、導電膜663は可視光を反射する機能を有し、導電膜695は可視光を透過する機能を有する。基板661側から入射した光は、偏光板656により偏光され、導電膜695、液晶層694を透過し、導電膜663で反射する。そして液晶層694及び導電膜695を再度透過して、偏光板656に達する。このとき、導電膜663と導電膜695の間に与える電圧によって液晶の配向を制御し、光の光学変調を制御することができる。すなわち、偏光板656を介して射出される光の強度を制御することができる。また光は着色層631によって特定の波長領域以外の光が吸収されることにより、取り出される光は、例えば赤色を呈する光となる。
【0191】
発光素子660は、ボトムエミッション型の発光素子である。発光素子660は、絶縁膜697側から導電膜643、EL層644、及び導電膜645bの順に積層された積層構造を有する。また導電膜645bを覆って導電膜645aが設けられている。導電膜645bは可視光を反射する材料を含み、導電膜643及び導電膜645aは可視光を透過する材料を含む。発光素子660が発する光は、着色層634、絶縁膜697、開口655、導電膜695等を介して、基板661側に射出される。
【0192】
ここで、
図17に示すように、開口655には可視光を透過する導電膜635が設けられていることが好ましい。これにより、開口655と重なる領域においてもそれ以外の領域と同様に液晶層694が配向するため、これらの領域の境界部で液晶の配向不良が生じ、意図しない光が漏れてしまうことを抑制できる。
【0193】
ここで、基板661の外側の面に配置する偏光板656として直線偏光板を用いてもよいが、円偏光板を用いることもできる。円偏光板としては、例えば直線偏光板と1/4波長位相差板を積層したものを用いることができる。これにより、外光反射を抑制することができる。また、偏光板の種類に応じて、液晶素子640に用いる液晶素子のセルギャップ、配向、駆動電圧等を調整することで、所望のコントラストが実現されるようにすればよい。
【0194】
また導電膜643の端部を覆う絶縁膜646上には、絶縁膜647が設けられている。絶縁膜647は、絶縁膜697と基板651が必要以上に接近することを抑制するスペーサとしての機能を有する。またEL層644や導電膜645aを遮蔽マスク(メタルマスク)を用いて形成する場合には、当該遮蔽マスクが被形成面に接触することを抑制するための機能を有していてもよい。なお、絶縁膜647は不要であれば設けなくてもよい。
【0195】
トランジスタ691のソース又はドレインの一方は、導電膜648を介して発光素子660の導電膜643と電気的に接続されている。
【0196】
トランジスタ692のソース又はドレインの一方は、接続部693を介して導電膜663と電気的に接続されている。導電膜663と導電膜635は接して設けられ、これらは電気的に接続されている。ここで、接続部693は、絶縁膜697に設けられた開口を介して、絶縁膜697の両面に設けられる導電層同士を接続する部分である。
【0197】
基板651と基板661が重ならない領域には、接続部690が設けられている。接続部690は、接続層649を介してFPC672と電気的に接続されている。接続部690は接続部693と同様の構成を有している。接続部690の上面は、導電膜635と同一の導電膜を加工して得られた導電層が露出している。これにより、接続部690とFPC672とを接続層649を介して電気的に接続することができる。
【0198】
接着層641が設けられる一部の領域には、接続部687が設けられている。接続部687において、導電膜635と同一の導電膜を加工して得られた導電層と、導電膜695の一部が、接続体686により電気的に接続されている。したがって、基板661側に形成された導電膜695に、基板651側に接続されたFPC672から入力される信号または電位を、接続部687を介して供給することができる。
【0199】
接続体686としては、例えば導電性の粒子を用いることができる。導電性の粒子としては、有機樹脂またはシリカなどの粒子の表面を金属材料で被覆したものを用いることができる。金属材料としてニッケルや金を用いると接触抵抗を低減できるため好ましい。またニッケルをさらに金で被覆するなど、2種類以上の金属材料を層状に被覆させた粒子を用いることが好ましい。また接続体686として、弾性変形、または塑性変形する材料を用いることが好ましい。このとき導電性の粒子である接続体686は、
図17に示すように上下方向に潰れた形状となる場合がある。こうすることで、接続体686と、これと電気的に接続する導電層との接触面積が増大し、接触抵抗を低減できるほか、接続不良などの不具合の発生を抑制することができる。
【0200】
接続体686は、接着層641に覆われるように配置することが好ましい。例えば硬化前の接着層641に、接続体686を分散させておけばよい。
【0201】
図17では、回路659の例としてトランジスタ689が設けられている例を示している。
【0202】
図17では、トランジスタ689及びトランジスタ691の例として、チャネルが形成される半導体膜653を2つのゲートで挟持する構成が適用されている。一方のゲートは導電膜654により、他方のゲートは絶縁膜682を介して半導体膜653と重なる導電膜699により構成されている。このような構成とすることで、トランジスタのしきい値電圧を制御することができる。このとき、2つのゲートを接続し、これらに同一の信号を供給することによりトランジスタを駆動してもよい。このようなトランジスタは他のトランジスタと比較して電界効果移動度を高めることが可能であり、オン電流を増大させることができる。その結果、高速駆動が可能な回路を作製することができる。さらには、回路部の占有面積を縮小することが可能となる。オン電流の大きなトランジスタを適用することで、表示パネルを大型化、または高精細化したときに配線数が増大したとしても、各配線における信号遅延を低減することが可能であり、表示ムラを抑制することができる。
【0203】
なお、回路659が有するトランジスタと、表示部662が有するトランジスタは、同じ構造であってもよい。また回路659が有する複数のトランジスタは、全て同じ構造であってもよいし、異なる構造のトランジスタを組み合わせて用いてもよい。また、表示部662が有する複数のトランジスタは、全て同じ構造であってもよいし、異なる構造のトランジスタを組み合わせて用いてもよい。
【0204】
各トランジスタを覆う絶縁膜682、絶縁膜683のうち少なくとも一方は、水や水素などの不純物が拡散しにくい材料を用いることが好ましい。すなわち、絶縁膜682または絶縁膜683はバリア膜として機能させることができる。このような構成とすることで、トランジスタに対して外部から不純物が拡散することを効果的に抑制することが可能となり、信頼性の高い表示パネルを実現できる。
【0205】
基板661側において、着色層631、遮光膜632を覆って絶縁膜698が設けられている。絶縁膜698は、平坦化層としての機能を有していていてもよい。絶縁膜698により、導電膜695の表面を概略平坦にできるため、液晶層694の配向状態を均一にできる。
【0206】
表示パネル688を作製する方法の一例について説明する。例えば剥離層を有する支持基板上に、導電膜635、導電膜663、絶縁膜697を順に形成し、その後、トランジスタ691、トランジスタ692、発光素子660等を形成した後、接着層642を用いて基板651と支持基板を貼り合せる。その後、剥離層と絶縁膜697、及び剥離層と導電膜635のそれぞれの界面で剥離することにより、支持基板及び剥離層を除去する。またこれとは別に、着色層631、遮光膜632、導電膜695等をあらかじめ形成した基板661を準備する。そして基板651または基板661に液晶を滴下し、接着層641により基板651と基板661を貼り合せることで、表示パネル688を作製することができる。
【0207】
剥離層としては、絶縁膜697及び導電膜635との界面で剥離が生じる材料を適宜選択することができる。特に、剥離層としてタングステンなどの高融点金属材料を含む層と当該金属材料の酸化物を含む層を積層して用い、剥離層上の絶縁膜697として、窒化シリコンや酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン等を複数積層した層を用いることが好ましい。剥離層に高融点金属材料を用いると、これよりも後に形成する層の形成温度を高めることが可能で、不純物の濃度が低減され、信頼性の高い表示パネルを実現できる。
【0208】
導電膜635としては、金属酸化物、金属窒化物、または低抵抗化された酸化物半導体等の酸化物または窒化物を用いることが好ましい。酸化物半導体を用いる場合には、水素、ボロン、リン、窒素、及びその他の不純物の濃度、並びに酸素欠損量の少なくとも一が、トランジスタに用いる半導体層に比べて高められた材料を、導電膜635に用いればよい。
【0209】
<6−3.各構成要素について>
以下では、上記に示す各構成要素について説明する。なお、先に示す機能と同様の機能を有する構成についての説明は省略する。
【0210】
〔接着層〕
接着層としては、紫外線硬化型等の光硬化型接着剤、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、嫌気型接着剤などの各種硬化型接着剤を用いることができる。これら接着剤としてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、イミド樹脂、PVC(ポリビニルクロライド)樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)樹脂、EVA(エチレンビニルアセテート)樹脂等が挙げられる。特に、エポキシ樹脂等の透湿性が低い材料が好ましい。また、二液混合型の樹脂を用いてもよい。また、接着シート等を用いてもよい。
【0211】
また、上記樹脂に乾燥剤を含んでいてもよい。例えば、アルカリ土類金属の酸化物(酸化カルシウムや酸化バリウム等)のように、化学吸着によって水分を吸着する物質を用いることができる。または、ゼオライトやシリカゲル等のように、物理吸着によって水分を吸着する物質を用いてもよい。乾燥剤が含まれていると、水分などの不純物が素子に侵入することを抑制でき、表示パネルの信頼性が向上するため好ましい。
【0212】
また、上記樹脂に屈折率の高いフィラーや光散乱部材を混合することにより、光取り出し効率を向上させることができる。例えば、酸化チタン、酸化バリウム、ゼオライト、ジルコニウム等を用いることができる。
【0213】
〔接続層〕
接続層としては、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)や、異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)などを用いることができる。
【0214】
〔着色層〕
着色層に用いることのできる材料としては、金属材料、樹脂材料、顔料または染料が含まれた樹脂材料などが挙げられる。
【0215】
〔遮光層〕
遮光層として用いることのできる材料としては、カーボンブラック、チタンブラック、金属、金属酸化物、複数の金属酸化物の固溶体を含む複合酸化物等が挙げられる。遮光層は、樹脂材料を含む膜であってもよいし、金属などの無機材料の薄膜であってもよい。また、遮光層に、着色層の材料を含む膜の積層膜を用いることもできる。例えば、ある色の光を透過する着色層に用いる材料を含む膜と、他の色の光を透過する着色層に用いる材料を含む膜との積層構造を用いることができる。着色層と遮光層の材料を共通化することで、装置を共通化できるほか工程を簡略化できるため好ましい。
【0216】
以上が各構成要素についての説明である。
【0217】
<6−4.作製方法例>
ここでは、可撓性を有する基板を用いた表示パネルの作製方法の例について説明する。
【0218】
ここでは、表示素子、回路、配線、電極、着色層や遮光層などの光学部材、及び絶縁層等が含まれる層をまとめて素子層と呼ぶこととする。例えば、素子層は表示素子を含み、表示素子の他に表示素子と電気的に接続する配線、画素や回路に用いるトランジスタなどの素子を備えていてもよい。
【0219】
また、ここでは、表示素子が完成した(作製工程が終了した)段階において、素子層を支持し、可撓性を有する部材のことを、基板と呼ぶこととする。例えば、基板には、厚さが10nm以上300μm以下の、極めて薄いフィルム等も含まれる。
【0220】
可撓性を有し、絶縁表面を備える基板上に素子層を形成する方法としては、代表的には以下に挙げる2つの方法がある。一つは、基板上に直接、素子層を形成する方法である。もう一つは、基板とは異なる支持基板上に素子層を形成した後、素子層と支持基板を剥離し、素子層を基板に転置する方法である。なお、ここでは詳細に説明しないが、上記2つの方法に加え、可撓性を有さない基板上に素子層を形成し、当該基板を研磨等により薄くすることで可撓性を持たせる方法もある。
【0221】
基板を構成する材料が、素子層の形成工程にかかる熱に対して耐熱性を有する場合には、基板上に直接、素子層を形成すると、工程が簡略化されるため好ましい。このとき、基板を支持基板に固定した状態で素子層を形成すると、装置内、及び装置間における搬送が容易になるため好ましい。
【0222】
また、素子層を支持基板上に形成した後に、基板に転置する方法を用いる場合、まず支持基板上に剥離層と絶縁層を積層し、当該絶縁層上に素子層を形成する。続いて、支持基板と素子層の間で剥離し、素子層を基板に転置する。このとき、支持基板と剥離層の界面、剥離層と絶縁層の界面、または剥離層中で剥離が生じるような材料を選択すればよい。この方法では、支持基板や剥離層に耐熱性の高い材料を用いることで、素子層を形成する際にかかる温度の上限を高めることができ、より信頼性の高い素子を有する素子層を形成できるため、好ましい。
【0223】
例えば剥離層として、タングステンなどの高融点金属材料を含む層と、当該金属材料の酸化物を含む層を積層して用い、剥離層上の絶縁層として、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコンなどを複数積層した層を用いることが好ましい。
【0224】
素子層と支持基板とを剥離する方法としては、機械的な力を加えることや、剥離層をエッチングすること、または剥離界面に液体を浸透させることなどが、一例として挙げられる。または、剥離界面を形成する2層の熱膨張係数の違いを利用し、加熱または冷却することにより剥離を行ってもよい。
【0225】
また、支持基板と絶縁層の界面で剥離が可能な場合には、剥離層を設けなくてもよい。
【0226】
例えば、支持基板としてガラスを用い、絶縁層としてポリイミドなどの有機樹脂を用いることができる。このとき、レーザ光等を用いて有機樹脂の一部を局所的に加熱する、または鋭利な部材により物理的に有機樹脂の一部を切断、または貫通すること等により剥離の起点を形成し、ガラスと有機樹脂の界面で剥離を行ってもよい。また、上記の有機樹脂としては、感光性の材料を用いると、開口部などの形状を容易に作製しやすいため好適である。また、上記のレーザ光としては、例えば、可視光線から紫外線の波長領域の光であることが好ましい。例えば波長が200nm以上400nm以下の光、好ましくは波長が250nm以上350nm以下の光を用いることができる。特に、波長308nmのエキシマレーザを用いると、生産性に優れるため好ましい。また、Nd:YAGレーザの第三高調波である波長355nmのUVレーザなどの固体UVレーザ(半導体UVレーザともいう)を用いてもよい。
【0227】
または、支持基板と有機樹脂からなる絶縁層の間に発熱層を設け、当該発熱層を加熱することにより、当該発熱層と絶縁層の界面で剥離を行ってもよい。発熱層としては、電流を流すことにより発熱する材料、光を吸収することにより発熱する材料、磁場を印加することにより発熱する材料など、様々な材料を用いることができる。例えば発熱層としては、半導体、金属、絶縁体から選択して用いることができる。
【0228】
なお、上述した方法において、有機樹脂からなる絶縁層は、剥離後に基板として用いることができる。
【0229】
以上が可撓性を有する表示パネルを作製する方法についての説明である。
【0230】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の構成と適宜組み合わせて実施することができる。
【0231】
≪電子機器≫
本発明の一態様である電子機器の例について説明する。電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を以下に示す。
【0232】
図9(A)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置は、筐体7101に表示部7103が組み込まれている。また、ここでは、スタンド7105により筐体7101を支持した構成を示している。表示部7103により、映像を表示することが可能であり、表示部7103は、発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。
【0233】
テレビジョン装置の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機7110により行うことができる。リモコン操作機7110が備える操作キー7109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部7103に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機7110に、当該リモコン操作機7110から出力する情報を表示する表示部7107を設ける構成としてもよい。
【0234】
なお、テレビジョン装置は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0235】
図9(B1)はコンピュータであり、本体7201、筐体7202、表示部7203、キーボード7204、外部接続ポート7205、ポインティングデバイス7206等を含む。なお、このコンピュータは、発光素子をマトリクス状に配列して表示部7203に用いることにより作製される。
図9(B1)のコンピュータは、
図9(B2)のような形態であっても良い。
図9(B2)のコンピュータは、キーボード7204、ポインティングデバイス7206の代わりに第2の表示部7210が設けられている。第2の表示部7210はタッチパネル式となっており、第2の表示部7210に表示された入力用の表示を指や専用のペンで操作することによって入力を行うことができる。また、第2の表示部7210は入力用表示だけでなく、その他の画像を表示することも可能である。また表示部7203もタッチパネルであっても良い。二つの画面がヒンジで接続されていることによって、収納や運搬をする際に画面を傷つける、破損するなどのトラブルの発生も防止することができる。
【0236】
図9(C)(D)は、携帯情報端末の一例を示している。携帯情報端末は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯情報端末は、発光素子をマトリクス状に配列して作製された表示部7402を有している。
【0237】
図9(C)及び(D)に示す携帯情報端末は、表示部7402を指などで触れることで、情報を入力することができる構成とすることもできる。この場合、電話を掛ける、或いはメールを作成するなどの操作は、表示部7402を指などで触れることにより行うことができる。
【0238】
表示部7402の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0239】
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部7402を文字の入力を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部7402の画面のほとんどにキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好ましい。
【0240】
また、携帯情報端末内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、携帯情報端末の向き(縦か横か)を判断して、表示部7402の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0241】
また、画面モードの切り替えは、表示部7402を触れること、又は筐体7401の操作ボタン7403の操作により行われる。また、表示部7402に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0242】
また、入力モードにおいて、表示部7402の光センサで検出される信号を検知し、表示部7402のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0243】
表示部7402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部7402に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0244】
なお、上記電子機器は、本明細書中に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。
【0245】
また、表示部に本発明の一態様の発光素子を用いることが好ましい。当該発光素子は発光効率が良好な発光素子とすることが可能である。また、駆動電圧の小さい発光素子とすることが可能である。このため、本発明の一態様の発光素子を含む電子機器は消費電力の小さい電子機器とすることができる。
【0246】
図10は、発光素子をバックライトに適用した液晶表示装置の一例である。
図10に示した液晶表示装置は、筐体901、液晶層902、バックライトユニット903、筐体904を有し、液晶層902は、ドライバIC905と接続されている。バックライトユニット903には、発光素子が用いられおり、端子906により、電流が供給されている。
【0247】
発光素子には本発明の一態様の発光素子を用いることが好ましく、当該発光素子を液晶表示装置のバックライトに適用することにより、消費電力の低減されたバックライトが得られる。
【0248】
図11は、本発明の一態様である電気スタンドの例である。
図11に示す電気スタンドは、筐体2001と、光源2002を有し、光源2002として発光素子を用いた照明装置が用いられている。
【0249】
図12は、室内の照明装置3001の例である。当該照明装置3001には本発明の一態様の発光素子を用いることが好ましい。
【0250】
本発明の一態様である自動車を
図13に示す。当該自動車はフロントガラスやダッシュボードに発光素子が搭載されている。表示領域5000乃至表示領域5005は発光素子を用いて設けられた表示領域である。本発明の一態様の発光素子を用いることが好ましく、これにより表示領域5000乃至表示領域5005は消費電力を抑えられるため、車載に好適である。
【0251】
表示領域5000と表示領域5001は、自動車のフロントガラスに設けられた、発光素子を用いる表示装置である。この発光素子を、第1の電極と第2の電極を透光性を有する電極で作製することによって、反対側が透けて見える、いわゆるシースルー状態の表示装置とすることができる。シースルー状態の表示であれば、自動車のフロントガラスに設置したとしても、視界の妨げになることなく設置することができる。なお、駆動のためのトランジスタなどを設ける場合には、有機半導体材料による有機トランジスタや、酸化物半導体を用いたトランジスタなど、透光性を有するトランジスタを用いると良い。
【0252】
表示領域5002はピラー部分に設けられた発光素子を用いる表示装置である。表示領域5002には、車体に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、ピラーで遮られた視界を補完することができる。また、同様に、ダッシュボード部分に設けられた表示領域5003は車体によって遮られた視界を、自動車の外側に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、死角を補い、安全性を高めることができる。見えない部分を補完するように映像を映すことによって、より自然に違和感なく安全確認を行うことができる。
【0253】
表示領域5004や表示領域5005はナビゲーション情報、速度計や回転数、走行距離、給油量、ギア状態、空調の設定など、その他様々な情報を提供することができる。表示は使用者の好みに合わせて適宜その表示項目やレイアウトを変更することができる。なお、これら情報は表示領域5000乃至表示領域5003にも設けることができる。また、表示領域5000乃至表示領域5005は照明装置として用いることも可能である。
【0254】
図14(A)及び
図14(B)は2つ折り可能なタブレット型端末の一例である。
図14(A)は、開いた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、表示部9631a、表示部9631b、表示モード切り替えスイッチ9034、電源スイッチ9035、省電力モード切り替えスイッチ9036、留め具9033、操作スイッチ9038、を有する。なお、当該タブレット端末は、本発明の一態様の発光素子を備えた発光装置を表示部9631a、表示部9631bの一方又は両方に用いることにより作製される。
【0255】
表示部9631aは、一部をタッチパネル領域9632aとすることができ、表示された操作キー9637にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部9631aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部9631aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部9631aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示画面として用いることができる。
【0256】
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一部をタッチパネル領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで表示部9631bにキーボードボタンを表示することができる。
【0257】
また、タッチパネル領域9632aとタッチパネル領域9632bに対して同時にタッチ入力することもできる。
【0258】
また、表示モード切り替えスイッチ9034は、縦表示または横表示などの表示の向きを切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えスイッチ9036は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内蔵させてもよい。
【0259】
また、
図14(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示しているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルとしてもよい。
【0260】
図14(B)は、閉じた状態であり、本実施の形態におけるタブレット型端末では、筐体9630、太陽電池9633、充放電制御回路9634、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636を備える例を示す。なお、
図14(B)では充放電制御回路9634の一例としてバッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する構成について示している。
【0261】
なお、タブレット型端末は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630を閉じた状態にすることができる。従って、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、耐久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
【0262】
また、この他にも
図14(A)及び
図14(B)に示したタブレット型端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。
【0263】
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、表示部、または映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐体9630の一面または二面に設けられていると効率的なバッテリー9635の充電を行う構成とすることができるため好適である。
【0264】
また、
図14(B)に示す充放電制御回路9634の構成、及び動作について
図14(C)にブロック図を示し説明する。
図14(C)には、太陽電池9633、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9638、スイッチSW1乃至SW3、表示部9631について示しており、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9638、スイッチSW1乃至SW3が、
図14(B)に示す充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
【0265】
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための電圧となるようDCDCコンバータ9636で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633で充電された電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9638で表示部9631に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにしてバッテリー9635の充電を行う構成とすればよい。
【0266】
なお、太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、発電手段は特に限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段によってバッテリー9635の充電を行う構成であってもよい。無線(非接触)で電力を送受信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよく、発電手段を有さなくとも良い。
【0267】
また、上記表示部9631を具備していれば、
図14に示した形状のタブレット型端末に限定されない。
【0268】
また、
図15(A)〜(C)に、折りたたみ可能な携帯情報端末9310を示す。
図15(A)に展開した状態の携帯情報端末9310を示す。
図15(B)に展開した状態又は折りたたんだ状態の一方から他方に変化する途中の状態の携帯情報端末9310を示す。
図15(C)に折りたたんだ状態の携帯情報端末9310を示す。携帯情報端末9310は、折りたたんだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。
【0269】
表示パネル9311はヒンジ9313によって連結された3つの筐体9315に支持されている。なお、表示パネル9311は、タッチセンサ(入力装置)を搭載したタッチパネル(入出力装置)であってもよい。また、表示パネル9311は、ヒンジ9313を介して2つの筐体9315間を屈曲させることにより、携帯情報端末9310を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させることができる。本発明の一態様の発光装置を表示パネル9311に用いることができる。表示パネル9311における表示領域9312は折りたたんだ状態の携帯情報端末9310の側面に位置する表示領域である。表示領域9312には、情報アイコンや使用頻度の高いアプリやプログラムのショートカットなどを表示させることができ、情報の確認やアプリなどの起動をスムーズに行うことができる。
【実施例1】
【0270】
本実施例では、実施の形態で説明した本発明の一態様の発光素子1、発光素子2及び発光素子3について説明する。発光素子1から発光素子3で用いた有機化合物の構造式を以下に示す。
【0271】
【化3】
【0272】
(発光素子1の作製方法)
まず、ガラス基板上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極101を形成した。なお、その膜厚は70nmとし、電極面積は4mm
2(2mm×2mm)とした。
【0273】
次に、基板上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0274】
その後、10
−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を30分程度放冷した。
【0275】
次に、第1の電極101が形成された面が下方となるように、第1の電極101が形成された基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、第1の電極101上に、抵抗加熱を用いた蒸着法により上記構造式(i)で表される2,3,6,7,10,11−ヘキサシアノ−1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT−CN)を5nm蒸着して正孔注入層111を形成した。
【0276】
次に、正孔注入層111上に、上記構造式(ii)で表される4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)を10nmの膜厚となるように蒸着して第1の正孔輸送層112−1を形成し、第1の正孔輸送層112−1上に上記構造式(iii)で表される4−(2−ナフチル)−4’,4”−ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNB)を膜厚10nmとなるように蒸着して第2の正孔輸送層112−2を形成し、第2の正孔輸送層112−2上に上記構造式(iv)で表される3,6−ビス[4−(2−ナフチル)フェニル]−9−フェニル−9H−カルバゾール(略称:βNP2PC)を膜厚10nmとなるように蒸着して第3の正孔輸送層112−3を形成した。
【0277】
続いて、上記構造式(v)で表される7−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−7H−ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:cgDBCzPA)と上記構造式(vi)で表されるN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス〔3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)とを、重量比1:0.03(=cgDBCzPA:1,6mMemFLPAPrn)となるように25nm共蒸着して発光層113を形成した。
【0278】
その後、発光層113上に、上記構造式(vii)で表される2−[3’−(ジベンゾチオフェン−4−イル)ビフェニル−3−イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq−II)を膜厚10nmとなるように蒸着した後、上記構造式(viii)で表される2,9−ビス(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(略称:NBPhen)を膜厚15nmとなるように蒸着し、電子輸送層114を形成した。
【0279】
電子輸送層114を形成した後、フッ化リチウム(LiF)を膜厚1nmとなるように蒸着して電子注入層115を形成し、続いてアルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで第2の電極102を形成して本実施例の発光素子1を作製した。
【0280】
(発光素子2の作製方法)
発光素子2は、発光素子1における第2の正孔輸送層112−2の材料として、BBAβNBの代わりに上記構造式(ix)で表される4−(1−ナフチル)−4’,4”−ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAαNB)を用いた他は、発光素子1と同様に作製した。
【0281】
(発光素子3の作製方法)
発光素子3は、発光素子1における第2の正孔輸送層112−2の材料として、BBAβNBの代わりに上記構造式(x)で表される4−[4−(2−ナフチル)フェニル]−4’,4”−ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNBi)を用いた他は、発光素子1と同様に作製した。
【0282】
発光素子1乃至発光素子3の素子構造を以下の表にまとめる。
【0283】
【表1】
【0284】
発光素子1乃至発光素子3を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(シール材を素子の周囲に塗布し、封止時にUV処理、80℃にて1時間熱処理)を行った後、これら発光素子の初期特性及び信頼性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0285】
発光素子1乃至発光素子3の輝度−電流密度特性を
図18に、電流効率−輝度特性を
図19に、輝度−電圧特性を
図20に、電流−電圧特性を
図21に、外部量子効率−輝度特性を
図22に、発光スペクトルを
図23に示す。また、各発光素子の1000cd/m
2付近における主要な特性を表2に示す。
【0286】
【表2】
【0287】
図18乃至
図23及び表2より、発光素子1乃至発光素子3は良好な特性の青色発光素子であることがわかった。
【0288】
また、電流値を2mAとし、電流密度一定の条件における駆動時間に対する輝度の変化を表すグラフを
図24に示す。
図24で示すように、本発明の一態様の発光素子である発光素子1乃至発光素子3は駆動時間の蓄積に伴う輝度低下が小さく、寿命の良好な発光素子であることがわかった。
【0289】
また、これらの発光素子は高輝度領域における輝度低下が小さいこともわかった。すなわち、本実施例の発光素子は、高輝度側の効率のロールオフを低減することができ、高い輝度で発光させた場合にも高い効率を保つことができる構成であるということができる。
【0290】
本実施例の発光素子において、第1の正孔輸送材料乃至第3の正孔輸送材料、ホスト材料及び発光材料のHOMO準位は各々以下の表に示した通りである。なお、HOMO準位およびLUMO準位は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定を元に算出した。算出方法を以下に示す。
【0291】
測定装置としては電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600Aまたは600C)を用いた。CV測定における溶液は、溶媒として脱水ジメチルホルムアミド(DMF)((株)アルドリッチ製、99.8%、カタログ番号;22705−6)を用い、支持電解質である過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−Bu
4NClO
4)((株)東京化成製、カタログ番号;T0836)を100mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象を2mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した。また、作用電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、VC−3用Ptカウンター電極(5cm))を、参照電極としてはAg/Ag
+電極(ビー・エー・エス(株)製、RE7非水溶媒系参照電極)をそれぞれ用いた。なお、測定は室温(20〜25℃)で行った。また、CV測定時のスキャン速度は、0.1V/secに統一し、参照電極に対する酸化電位Ea[V]および還元電位Ec[V]を測定した。Eaは酸化−還元波の中間電位とし、Ecは還元−酸化波の中間電位とした。ここで、本実施例で用いる参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーは、−4.94[eV]であることが分かっているため、HOMO準位[eV]=−4.94−Ea、LUMO準位[eV]=−4.94−Ecという式から、HOMO準位およびLUMO準位をそれぞれ求めることができる。
【0292】
【表3】
【0293】
【表4】
【0294】
【表5】
【0295】
表の通り、発光素子1乃至発光素子3に用いられた材料において、第2の正孔輸送材料のHOMO準位は第1の正孔輸送材料のHOMO準位よりも深く、ホスト材料のHOMO準位は第2の正孔輸送材料のHOMO準位よりも深く、第3の正孔輸送材料のHOMO準位はホスト材料のHOMO準位よりも深い。また、発光材料のHOMO準位はホスト材料のHOMO準位よりも浅い。
【0296】
第1の正孔輸送材料のNPBのHOMO準位は−5.38eVと浅く、HAT−CNのLUMO準位−4.41eVと相互作用して電荷分離を容易に起こすことができる。
【0297】
ここで、ホスト材料であるcgDBCzPAのHOMO準位は−5.69eVであり、NPBのHOMO準位とは0.31eVの差がある。一方で、発光材料である1,6mMemFLPAPrnのHOMO準位が−5.40eVであるため、その差は0.02eVである。発光材料と第1の正孔輸送材料とのHOMO準位の差が小さいことから、第1の正孔輸送層112−1と発光層113が接して形成されたような構造を有する発光素子を想定した場合、発光材料への正孔注入が起こりやすいと考えられる。しかし、直接発光材料へ正孔が注入されると正孔が発光材料によって第1の正孔輸送層112−1と発光層の界面でトラップされ、発光領域が集中して劣化が促進される恐れがある。また、第1の正孔輸送層112−1の正孔輸送材料から発光層のホスト材料に正孔が入りにくいことから、該正孔輸送材料には正孔が、ホスト材料には電子がそれぞれ蓄積する。すると、該正孔輸送材料とホスト材料との間で発光材料よりもエネルギーの低いエキサイプレックスを形成する恐れがあり、発光効率が低下するといった不都合が起こりやすい。
【0298】
発光素子1乃至発光素子3では第2の正孔輸送層112−2を、ホスト材料よりはHOMO準位が浅いが第1の正孔輸送材料よりはHOMO準位が深い第2の正孔輸送材料を用いて形成することによって、まず、第1の正孔輸送層112−1から第2の正孔輸送層112−2へ正孔を注入する。第2の正孔輸送材料であるBBAβNB(発光素子1)、BBAαNB(発光素子2)、BBAβNBi(発光素子3)のHOMO準位は各々−5.47eV、−5.49eV、−5.47eVであり、第1の正孔輸送材料であるNPBとの差はそれぞれ0.09eV、0.11eV、0.09eVと小さい。そのため、第1の正孔輸送層112−1から第2の正孔輸送層112−2へはスムーズに正孔が注入される。
【0299】
ここで、第2の正孔輸送層112−2から発光層113へ正孔が注入される場合を考えると、第2の正孔輸送材料とホスト材料との間にはそれぞれ0.22eV、0.20eV、0.22eV程度の障壁が存在する。通常であれば問題なく正孔が注入される差であるが、発光層113に含まれる発光材料のHOMO準位は−5.40eVであり、第2の正孔輸送材料から発光材料へ正孔を注入するための障壁が存在しない。その為、正孔は結局、ホスト材料よりも発光材料へ優先的に注入されてしまう。直接発光材料へ正孔が注入されると、上述の通り、劣化が促進される、発光効率が低下するといった不都合が起こりやすい。
【0300】
そこで本発明の一態様の発光素子である発光素子1乃至発光素子3では、第2の正孔輸送層112−2と発光層113との間に、さらに第3の正孔輸送層112−3を設けた。第3の正孔輸送層112−3に含まれる第3の正孔輸送材料であるβNP2PCのHOMO準位は−5.79eVとホスト材料よりも深い位置にある。そのため、第2の正孔輸送材料から、第3の正孔輸送材料へ問題なく正孔が注入され、且つホスト材料への正孔注入に障壁が無く、ホスト材料と発光材料の混合比からもホスト材料への正孔の注入が優先される。また、第2の正孔輸送材料とのHOMO準位の差は0.30eVから0.32eV(有効数字1桁で0.3eV以下)であり、第2の正孔輸送材料から第3の正孔輸送材料へは問題なく正孔が注入される。
【0301】
ホスト材料へ注入された正孔は一部発光材料へトラップされるが、適度な正孔トラップを受けながら第2の電極方向へ移動することができる上に、ホスト材料が電子輸送性も有するアントラセン化合物であるため、駆動電圧が上昇してしまうことが無い。また、発光領域が一部に集中してしまうことなく、発光層113に広がるため、劣化が促進されない。
【0302】
さらに、本実施例の発光素子はホスト材料であるcgDBCzPA、第1の電子輸送材料である2mDBTBPDBq−II、および第2の電子輸送材料であるNBPhenのLUMO準位は、それぞれ−2.74eV、−2.94eV、−2.83eVと見積もられている。この構成を有することにより、電子過多のデバイスになりにくく、寿命や外部量子効率の更に良好な発光素子とすることができた。
【0303】
以上のことより、本実施例の発光素子1乃至発光素子3は寿命や発光効率が良好で、高輝度側の効率低下の少ない非常に良好な特性を有する発光素子となった。
【実施例2】
【0304】
本実施例では、実施の形態で説明した本発明の一態様の発光素子4について説明する。発光素子4で用いた有機化合物の構造式を以下に示す。
【化4】
【0305】
(発光素子4の作製方法)
まず、ガラス基板上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極101を形成した。なお、その膜厚は70nmとし、電極面積は4mm
2(2mm×2mm)とした。
【0306】
次に、基板上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0307】
その後、10
−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を30分程度放冷した。
【0308】
次に、第1の電極101が形成された面が下方となるように、第1の電極101が形成された基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、第1の電極101上に、抵抗加熱を用いた蒸着法により上記構造式(i)で表される2,3,6,7,10,11−ヘキサシアノ−1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT−CN)を5nm蒸着して正孔注入層111を形成した。
【0309】
次に、正孔注入層111上に、上記構造式(ii)で表される4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)を10nmの膜厚となるように蒸着して第1の正孔輸送層112−1を形成し、第1の正孔輸送層112−1上に上記構造式(iii)で表される4−(2−ナフチル)−4’,4”−ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNB)を膜厚10nmとなるように蒸着して第2の正孔輸送層112−2を形成し、第2の正孔輸送層112−2上に上記構造式(xi)で表される3−[4−(2−ナフチル)フェニル]−9−(2−ナフチル)−9H−カルバゾール(略称:βNPβNC)を膜厚10nmとなるように蒸着して第3の正孔輸送層112−3を形成した。
【0310】
続いて、上記構造式(v)で表される7−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−7H−ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:cgDBCzPA)と上記構造式(vi)で表されるN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス〔3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)とを、重量比1:0.03(=cgDBCzPA:1,6mMemFLPAPrn)となるように25nm共蒸着して発光層113を形成した。
【0311】
その後、発光層113上に、上記構造式(vii)で表される2−[3’−(ジベンゾチオフェン−4−イル)ビフェニル−3−イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq−II)を膜厚10nmとなるように蒸着した後、上記構造式(viii)で表される2,9−ビス(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(略称:NBPhen)を膜厚15nmとなるように蒸着し、電子輸送層114を形成した。
【0312】
電子輸送層114を形成した後、フッ化リチウム(LiF)を膜厚1nmとなるように蒸着して電子注入層115を形成し、続いてアルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで第2の電極102を形成して本実施例の発光素子4を作製した。
【0313】
発光素子4の素子構造を以下の表にまとめる。
【0314】
【表6】
【0315】
発光素子4を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(シール材を素子の周囲に塗布し、封止時にUV処理、80℃にて1時間熱処理)を行った後、これら発光素子の初期特性及び信頼性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0316】
発光素子4の輝度−電流密度特性を
図25に、電流効率−輝度特性を
図26に、輝度−電圧特性を
図27に、電流−電圧特性を
図28に、外部量子効率−輝度特性を
図29に、発光スペクトルを
図30に示す。また、発光素子4の1000cd/m
2付近における主要な特性を表7に示す。
【0317】
【表7】
【0318】
図25乃至
図30及び表7より、発光素子4は良好な特性の青色発光素子であることがわかった。
【0319】
また、電流値を2mAとし、電流密度一定の条件における駆動時間に対する輝度の変化を表すグラフを
図31に示す。
図31で示すように、本発明の一態様の発光素子である発光素子4は駆動時間の蓄積に伴う輝度低下が小さく、寿命の良好な発光素子であることがわかった。
【0320】
また、この発光素子は高輝度領域における輝度低下が小さいこともわかった。すなわち、本実施例の発光素子は、高輝度側の効率のロールオフを低減することができ、高い輝度で発光させた場合にも高い効率を保つことができる構成であるということができる。
【0321】
本実施例の発光素子4における、第1の正孔輸送材料乃至第3の正孔輸送材料、ホスト材料及び発光材料のHOMO準位は表8に示した通りである。なお、HOMO準位およびLUMO準位は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定を元に算出した。算出方法は実施例1と同様である。
【0322】
【表8】
【0323】
表の通り、発光素子4に用いられた材料において、第2の正孔輸送材料のHOMO準位は第1の正孔輸送材料のHOMO準位よりも深く、ホスト材料のHOMO準位は第2の正孔輸送材料のHOMO準位よりも深く、第3の正孔輸送材料のHOMO準位はホスト材料のHOMO準位よりも深い。また、発光材料のHOMO準位はホスト材料のHOMO準位よりも浅い。
【0324】
第1の正孔輸送材料のNPBのHOMO準位は−5.38eVと浅く、HAT−CNのLUMO準位−4.41eVと相互作用して電荷分離を容易に起こすことができる。
【0325】
ここで、ホスト材料であるcgDBCzPAのHOMO準位は−5.69eVであり、NPBのHOMO準位とは0.31eVの差がある。一方で、発光材料である1,6mMemFLPAPrnのHOMO準位が−5.40eVであるため、その差は0.02eVである。発光材料と第1の正孔輸送材料とのHOMO準位の差が小さいことから、第1の正孔輸送層112−1と発光層113が接して形成されたような構造を有する発光素子を想定した場合、発光材料への正孔注入が起こりやすいと考えられる。しかし、直接発光材料へ正孔が注入されると正孔が発光材料によって第1の正孔輸送層112−1と発光層の界面でトラップされ、発光領域が集中して劣化が促進される恐れがある。また、第1の正孔輸送層112−1の正孔輸送材料から発光層のホスト材料に正孔が入りにくいことから、該正孔輸送材料には正孔が、ホスト材料には電子がそれぞれ蓄積する。すると、該正孔輸送材料とホスト材料との間で発光材料よりもエネルギーの低いエキサイプレックスを形成する恐れがあり、発光効率が低下するといった不都合が起こりやすい。
【0326】
発光素子4では第2の正孔輸送層112−2を、ホスト材料よりはHOMO準位が浅いが第1の正孔輸送材料よりはHOMO準位が深い第2の正孔輸送材料を用いて形成することによって、まず、第1の正孔輸送層112−1から第2の正孔輸送層112−2へ正孔を注入する。第2の正孔輸送材料であるBBAβNBのHOMO準位は−5.47eVであり、第1の正孔輸送材料であるNPBとの差は0.09eVと小さい。そのため、第1の正孔輸送層112−1から第2の正孔輸送層112−2へはスムーズに正孔が注入される。
【0327】
ここで、第2の正孔輸送層112−2と発光層113が接した構造を有する発光素子を想定し、第2の正孔輸送層112−2から発光層113へ正孔が注入される場合を考えると、第2の正孔輸送材料とホスト材料との間にはそれぞれ0.22eV程度の障壁が存在する。通常であれば問題なく正孔が注入される差であるが、発光層113に含まれる発光材料のHOMO準位は−5.40eVであり、第2の正孔輸送材料から発光材料へ正孔を注入するための障壁が存在しない。その為、正孔は結局、ホスト材料よりも発光材料へ優先的に注入されてしまう。直接発光材料へ正孔が注入されると、上述の通り、劣化が促進される、発光効率が低下するといった不都合が起こりやすい。
【0328】
そこで本発明の一態様の発光素子である発光素子4では、第2の正孔輸送層112−2と発光層113との間に、さらに第3の正孔輸送層112−3を設けた。第3の正孔輸送層112−3に含まれる第3の正孔輸送材料であるβNPβNCのHOMO準位は−5.77eVとホスト材料よりも深い位置にある。そのため、第2の正孔輸送材料から、第3の正孔輸送材料へ問題なく正孔が注入される。また、第3の正孔輸送材料からホスト材料への正孔注入には障壁が無いため、ホスト材料と発光材料の混合比からもホスト材料への正孔の注入が優先されることから、発光材料へ直接正孔が注入されることも少ない。なお、第2の正孔輸送材料と、第3の正孔輸送材料とのHOMO準位の差は0.30eV(有効数字1桁で0.3eV以下)であり、第2の正孔輸送材料から第3の正孔輸送材料へは問題なく正孔が注入される。
【0329】
ホスト材料へ注入された正孔は一部発光材料へトラップされるが、適度な正孔トラップを受けながら第2の電極方向へ移動することができる上に、ホスト材料が電子輸送性も有するアントラセン化合物であるため、駆動電圧が上昇してしまうことが無い。また、発光領域が一部に集中してしまうことなく、発光層113に広がるため、劣化が促進されない。
【0330】
さらに、本実施例の発光素子はホスト材料であるcgDBCzPA、第1の電子輸送材料である2mDBTBPDBq−II、および第2の電子輸送材料であるNBPhenのLUMO準位は、それぞれ−2.74eV、−2.94eV、−2.83eVと見積もられている。この構成を有することにより、電子過多のデバイスになりにくく、寿命や外部量子効率の更に良好な発光素子とすることができた。
【0331】
以上のことより、本実施例の発光素子4は寿命や発光効率が良好で、高輝度側の効率低下の少ない非常に良好な特性を有する発光素子となった。
【実施例3】
【0332】
本実施例では、実施の形態で説明した本発明の一態様の発光素子5について説明する。発光素子5で用いた有機化合物の構造式を以下に示す。
【化5】
【0333】
(発光素子5の作製方法)
まず、ガラス基板上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極101を形成した。なお、その膜厚は70nmとし、電極面積は4mm
2(2mm×2mm)とした。
【0334】
次に、基板上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0335】
その後、10
−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を30分程度放冷した。
【0336】
次に、第1の電極101が形成された面が下方となるように、第1の電極101が形成された基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、第1の電極101上に、抵抗加熱を用いた蒸着法により上記構造式(i)で表される2,3,6,7,10,11−ヘキサシアノ−1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT−CN)を5nm蒸着して正孔注入層111を形成した。
【0337】
次に、正孔注入層111上に、上記構造式(ii)で表される4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)を10nmの膜厚となるように蒸着して第1の正孔輸送層112−1を形成し、第1の正孔輸送層112−1上に上記構造式(iii)で表される4−(2−ナフチル)−4’,4”−ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNB)を膜厚10nmとなるように蒸着して第2の正孔輸送層112−2を形成し、第2の正孔輸送層112−2上に上記構造式(xii)で表される3,3’−(ナフタレンー1,4−ジイル)ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール)(略称:PCzN2)を膜厚10nmとなるように蒸着して第3の正孔輸送層112−3を形成した。
【0338】
続いて、上記構造式(v)で表される7−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−7H−ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:cgDBCzPA)と上記構造式(vi)で表されるN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス〔3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)とを、重量比1:0.03(=cgDBCzPA:1,6mMemFLPAPrn)となるように25nm共蒸着して発光層113を形成した。
【0339】
その後、発光層113上に、上記構造式(vii)で表される2−[3’−(ジベンゾチオフェン−4−イル)ビフェニル−3−イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq−II)を膜厚15nmとなるように蒸着した後、上記構造式(viii)で表される2,9−ビス(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(略称:NBPhen)を膜厚10nmとなるように蒸着し、電子輸送層114を形成した。
【0340】
電子輸送層114を形成した後、フッ化リチウム(LiF)を膜厚1nmとなるように蒸着して電子注入層115を形成し、続いてアルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで第2の電極102を形成して本実施例の発光素子5を作製した。
【0341】
発光素子5の素子構造を以下の表にまとめる。
【0342】
【表9】
【0343】
発光素子5を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(シール材を素子の周囲に塗布し、封止時にUV処理、80℃にて1時間熱処理)を行った後、これら発光素子の初期特性及び信頼性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0344】
発光素子5の輝度−電流密度特性を
図37に、電流効率−輝度特性を
図38に、輝度−電圧特性を
図39に、電流−電圧特性を
図40に、外部量子効率−輝度特性を
図41に、発光スペクトルを
図42に示す。また、発光素子5の1000cd/m
2付近における主要な特性を表10に示す。
【0345】
【表10】
【0346】
図37乃至
図42及び表10より、発光素子5は良好な特性の青色発光素子であることがわかった。
【0347】
また、電流値を2mAとし、電流密度一定の条件における駆動時間に対する輝度の変化を表すグラフを
図43に示す。
図43で示すように、本発明の一態様の発光素子である発光素子5は駆動時間の蓄積に伴う輝度低下が小さく、寿命の良好な発光素子であることがわかった。
【0348】
また、この発光素子は高輝度領域における輝度低下が小さいこともわかった。すなわち、本実施例の発光素子は、高輝度側の効率のロールオフを低減することができ、高い輝度で発光させた場合にも高い効率を保つことができる構成であるということができる。
【0349】
本実施例の発光素子5における、第1の正孔輸送材料乃至第3の正孔輸送材料、ホスト材料及び発光材料のHOMO準位は表11に示した通りである。なお、HOMO準位およびLUMO準位は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定を元に算出した。算出方法は実施例1と同様である。
【0350】
【表11】
【0351】
表の通り、発光素子5に用いられた材料において、第2の正孔輸送材料のHOMO準位は第1の正孔輸送材料のHOMO準位よりも深く、ホスト材料のHOMO準位は第2の正孔輸送材料のHOMO準位よりも深く、第3の正孔輸送材料のHOMO準位はホスト材料のHOMO準位よりも深い。また、発光材料のHOMO準位はホスト材料のHOMO準位よりも浅い。
【0352】
第1の正孔輸送材料のNPBのHOMO準位は−5.38eVと浅く、HAT−CNのLUMO準位−4.41eVと相互作用して電荷分離を容易に起こすことができる。
【0353】
ここで、ホスト材料であるcgDBCzPAのHOMO準位は−5.69eVであり、NPBのHOMO準位とは0.31eVの差がある。一方で、発光材料である1,6mMemFLPAPrnのHOMO準位が−5.40eVであるため、その差は0.02eVである。発光材料と第1の正孔輸送材料とのHOMO準位の差が小さいことから、第1の正孔輸送層112−1と発光層113が接して形成されたような構造を有する発光素子を想定した場合、発光材料への正孔注入が起こりやすいと考えられる。しかし、直接発光材料へ正孔が注入されると正孔が発光材料によって第1の正孔輸送層112−1と発光層の界面でトラップされ、発光領域が集中して劣化が促進される恐れがある。また、第1の正孔輸送層112−1の正孔輸送材料から発光層のホスト材料に正孔が入りにくいことから、該正孔輸送材料には正孔が、ホスト材料には電子がそれぞれ蓄積する。すると、該正孔輸送材料とホスト材料との間で発光材料よりもエネルギーの低いエキサイプレックスを形成する恐れがあり、発光効率が低下するといった不都合が起こりやすい。
【0354】
発光素子5では第2の正孔輸送層112−2を、ホスト材料よりはHOMO準位が浅いが第1の正孔輸送材料よりはHOMO準位が深い第2の正孔輸送材料を用いて形成することによって、まず、第1の正孔輸送層112−1から第2の正孔輸送層112−2へ正孔を注入する。第2の正孔輸送材料であるBBAβNBのHOMO準位は−5.47eVであり、第1の正孔輸送材料であるNPBとの差は0.09eVと小さい。そのため、第1の正孔輸送層112−1から第2の正孔輸送層112−2へはスムーズに正孔が注入される。
【0355】
ここで、第2の正孔輸送層112−2と発光層113が接した構造を有する発光素子を想定し、第2の正孔輸送層112−2から発光層113へ正孔が注入される場合を考えると、第2の正孔輸送材料とホスト材料との間にはそれぞれ0.22eV程度の障壁が存在する。通常であれば問題なく正孔が注入される差であるが、発光層113に含まれる発光材料のHOMO準位は−5.40eVであり、第2の正孔輸送材料から発光材料へ正孔を注入するための障壁が存在しない。その為、正孔は結局、ホスト材料よりも発光材料へ優先的に注入されてしまう。直接発光材料へ正孔が注入されると、上述の通り、劣化が促進される、発光効率が低下するといった不都合が起こりやすい。
【0356】
そこで本発明の一態様の発光素子である発光素子5では、第2の正孔輸送層112−2と発光層113との間に、さらに第3の正孔輸送層112−3を設けた。第3の正孔輸送層112−3に含まれる第3の正孔輸送材料であるPCzN2のHOMO準位は−5.71eVとホスト材料と同様であり若干深い位置にある。そのため、第2の正孔輸送材料から、第3の正孔輸送材料へ問題なく正孔が注入される。また、第3の正孔輸送材料からホスト材料への正孔注入には障壁が無く且つ、ホスト材料と発光材料の混合比からもホスト材料へ正孔が注入される確率が高いことから、発光材料へ直接正孔が注入されることも少ない。なお、第2の正孔輸送材料と、第3の正孔輸送材料とのHOMO準位の差は0.24eV(有効数字1桁で0.3eV以下)であり、第2の正孔輸送材料から第3の正孔輸送材料へは問題なく正孔が注入される。
【0357】
ホスト材料へ注入された正孔は一部発光材料へトラップされるが、適度な正孔トラップを受けながら第2の電極方向へ移動することができる上に、ホスト材料が電子輸送性も有するアントラセン化合物であるため、駆動電圧が上昇してしまうことが無い。また、発光領域が一部に集中してしまうことなく、発光層113に広がるため、劣化が促進されない。
【0358】
さらに、本実施例の発光素子はホスト材料であるcgDBCzPA、第1の電子輸送材料である2mDBTBPDBq−II、および第2の電子輸送材料であるNBPhenのLUMO準位は、それぞれ−2.74eV、−2.94eV、−2.83eVと見積もられている。この構成を有することにより、電子過多のデバイスになりにくく、寿命や外部量子効率の更に良好な発光素子とすることができた。
【0359】
以上のことより、本実施例の発光素子5は寿命や発光効率が良好で、高輝度側の効率低下の少ない非常に良好な特性を有する発光素子となった。
【0360】
(参考例1)
本参考例では、上記発光素子1及び発光素子4に用いた4−ナフチル−4’,4’’−ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNB)の合成方法について説明する。BBAβNBの構造式を以下に示す。
【0361】
【化6】
【0362】
200mL三口フラスコに、2.3g(7.1mmol)のビス(4−ビフェニリル)アミンと、2.0g(7.1mmol)の2−(4−ブロモフェニル)ナフタレンと、1.5g(15mmol)のナトリウム−tert−ブトキシド(略称:tert−BuONa)と、0.16g(0.40mmol)の2−ジシクロへキシルホスフィノ−2’−6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル(略称:Sphos)を加え、フラスコ内を窒素置換した後、35mLのキシレンを加えた。この混合物を減圧脱気した後、窒素気流下としてから60℃で撹拌し、0.12g(0.20mmol)のビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)を加えて、この混合物を120℃で7時間撹拌した。撹拌後、得られた混合物を水、飽和食塩水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで洗浄した。自然ろ過により硫酸マグネシウムを除去した後、得られたろ液を濃縮して得た、褐色固体を高速液体クロマトグラフィー(移動相クロロホルム)にて精製したところ、目的物の淡黄色固体を3.5g、収率93%で得た。本反応の合成スキームを以下に示す。
【0363】
【化7】
【0364】
得られた白色個体の
1H NMRを以下に示す。
1H NMR(ジクロロメタン−d2,500MHz):δ=7.24(d、J=9.0Hz、4H)、7.26(d、J=8.5Hz、2H)、7.31(d、J=7.5Hz、2H)、7.42(d、J=7.5Hz、4H)、7.45−7.50(m、2H)、7.55(d、J=8.5Hz、4H)、7.60(d、J=7.5Hz、4H)、7.68(d、J=8.5Hz、2H)、7.76(dd、J
1=2.0Hz、J
2=8.5Hz、1H)、7.85(d、J=8.0Hz、1H)、7.90(t、J=8.05Hz、2H)、8.05(s、1H)
【0365】
また、
1H−NMRチャートを
図32に示す。なお、
図32(B)は、
図32(A)における7.00ppm〜8.20ppmの範囲を拡大して表したチャートである。これより、本合成反応によってBBAβNBが得られたことがわかった。
【0366】
得られた3.5gの白色固体(BBAβNB)を、トレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力3.4Pa、アルゴン流速15mL/min、加熱265℃、16時間とした。昇華精製後、目的物の淡黄色ガラス状固体を2.8g、回収率81%で得た。
【0367】
BBAβNBのHOMO準位およびLUMO準位をサイクリックボルタンメトリ(CV)測定を元に算出した。算出方法を以下に示す。
【0368】
測定装置としては電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600Aまたは600C)を用いた。CV測定を行う溶液は、溶媒として脱水ジメチルホルムアミド(DMF)((株)アルドリッチ製、99.8%、カタログ番号;22705−6)を用い、支持電解質である過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−Bu
4NClO
4)((株)東京化成製、カタログ番号;T0836)を100mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象を2mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した。また、作用電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、VC−3用Ptカウンター電極(5cm))を、参照電極としてはAg/Ag
+電極(ビー・エー・エス(株)製、RE7非水溶媒系参照電極)をそれぞれ用いた。なお、測定は室温(20〜25℃)で行った。また、CV測定時のスキャン速度は、0.1V/secに統一し、参照電極に対する酸化電位Ea[V]および還元電位Ec[V]を測定した。Eaは酸化−還元波の中間電位とし、Ecは還元−酸化波の中間電位とした。ここで、本実施例で用いる参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーは、−4.94[eV]であることが分かっているため、HOMO準位[eV]=−4.94−Ea、LUMO準位[eV]=−4.94−Ecという式から、HOMO準位およびLUMO準位をそれぞれ求めることができる。また、測定を100回繰り返し行い、100サイクル目の測定での酸化−還元波と、1サイクル目の酸化−還元波を比較して、化合物の電気的安定性を調べた。
【0369】
この結果、BBAβNBのHOMO準位は−5.47eVであることがわかった。一方LUMO準位は−2.28eVであることがわかった。また、酸化−還元波の繰り返し測定において1サイクル目と100サイクル後の波形と比較したところ、Ea測定においては83%、Ec測定においては92%のピーク強度を保っていたことから、BBAβNBは酸化、及び還元に対する耐性が非常に良好であることが確認された。
【0370】
また、BBAβNBの示差走査熱量測定(DSC測定)を、パーキンエルマー社製、Pyris1DSCを用いて測定した。示差走査熱量測定は、昇温速度40℃/minにて、−10℃から300℃まで昇温した後、同温度で1分間保持してから降温速度40℃/minにて−10℃まで冷却する操作を2回連続で行った。2サイクル目のDSC測定結果から、BBAβNBのガラス転移点は81℃であることが明らかとなった。また、1サイクル目の結果から融点が241℃であることわかった。
【0371】
また、BBAβNBの熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)を行った。測定には高真空差動型示差熱天秤(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、TG−DTA2410SA)を用いた。測定は、大気圧において、昇温速度10℃/min、窒素気流下(流速200mL/min)の条件で行った。熱重量測定−示差熱分析において、熱重量測定から求めた重量が測定開始時の−5%となる温度(分解温度)は412℃であることがわかり、高い耐熱性を有する物質であることが示された。
【0372】
(参考例2)
本参考例では上記発光素子1乃至発光素子3に用いた3,6−ビス[4−(2−ナフチル)フェニル]−9−フェニル−9H−カルバゾール(略称:βNP2PC)の合成方法について説明する。βNP2PCの構造式を以下に示す。
【0373】
【化8】
【0374】
200mL三口フラスコに、1.9g(4.8mmol)の3,6−ジブロモ−9−フェニル−9H−カルバゾールと、2.4g(9.7mol)の4−(2−ナフチル)フェニルボロン酸と、0.12g(0.40mmol)のトリ(o−トリル)ホスフィンと、2.7g(19mmol)の炭酸カリウムを入れた。フラスコ内を窒素置換してから、この混合物へ40mLのトルエンと、10mLのエタノールと、10mLの水を加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気をした。脱気後、この混合物へ22mg(0.10mmol)の酢酸パラジウム(II)を加えた。この混合物を窒素気流下、80℃で4時間攪拌したところ、固体が析出した。析出した固体を吸引ろ過により回収した。回収した固体を約750mLの熱したトルエンに溶解し、この溶液をセライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:537−02305)、アルミナ、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:066−05265)を通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮して得た固体をトルエンで洗浄し、目的物の白色粉末を2.6g、収率99%で得た。本反応の合成スキームを以下に示す。
【0375】
【化9】
【0376】
得られた白色粉末2.6gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力3.0Pa、アルゴンガスを流量5.0mL/minで流しながら、350℃で白色粉末を加熱した。昇華精製後、白色固体を2.0g、回収率77%で得た。
【0377】
得られた物質の
1H NMRを測定した。以下に測定データを示す。
1H NMR(CDCl
3,300MHz):δ=7.47−7.55(m,7H),7.65(s,2H),7.67(d,J=2.4Hz,2H),7.76(dd,J
1=8.4Hz,J
2=1.8Hz,2H),7.75−7.97(m,16H),8.14(d,J=1.8Hz,2H),8.51(d,J=1.5Hz,2H)
【0378】
また、
1H−NMRチャートを
図33に示す。なお、
図33(B)は、
図33(A)における7.20ppm〜8.60ppmの範囲を拡大して表したチャートである。これより、本合成反応によってβNP2PCが得られたことがわかった。
【0379】
また、βNP2PCの熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)を行った。測定には高真空差動型示差熱天秤(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、TG−DTA2410SA)を用いた。常圧、昇温速度10℃/min、窒素気流下(流速:200mL/min)条件で測定したところ、重量と温度の関係(熱重量測定)から、βNP2PCの5%重量減少温度は500℃以上であった。このことから、βNP2PCの耐熱性が良好であることが示された。
【0380】
(参考例3)
本参考例では、発光素子2に用いた4−(1−ナフチル)−4’,4“−ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAαNB)の合成方法について説明する。BBAαNBの構造式を以下に示す。
【0381】
【化10】
【0382】
200mL三つ口フラスコに、4.8g(10mmol)の4−ブロモ−4’,4’’−ジフェニルトリフェニルアミンと、1.8g(10mmol)の2−ナフチルボロン酸と、0.31g(1.0mmol)のトリス(2−メチルフェニル)ホスフィンと、40mLのトルエンと、10mLのエタノールと、10mLの炭酸カリウム水溶液(2.0mol/L)を入れ、フラスコ内を減圧しながら攪拌し、この混合物を脱気した。脱気後、系内を窒素気流下としてから、混合物を60℃に加熱した。加熱後、0.12g(0.5mmol)の酢酸パラジウム(II)を加え、この混合物を80℃で1.5時間攪拌した。攪拌後、室温まで放冷した後、この混合物の有機層を水で洗浄し、得られた水層をトルエンで抽出し、抽出溶液と有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄してから硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。この混合物を自然濾過し得られたろ液を濃縮したところ目的物の褐色固体を得た。得られた固体をクロロホルムに溶かして、この溶液を高速液体クロマトグラフィー(日本分析工業製リサイクル分取HPLC LC−SakuraNEXT、移動相:クロロホルム)で精製したところ、目的物の白色固体を3.9g、収率75%で得た。当該反応の合成スキームを以下に示す。
【0383】
【化11】
【0384】
得られた淡黄色固体の
1H NMRを測定した。データを以下に示す。
1H NMR(ジクロロメタン−d
2、500MHz):δ=7.26−7.29(m、6H)、7.31(t、J=7.0Hz、2H)、7.41−7.54(m、10H)、7.56(d、J=8.5Hz、4H)、7.60(d、J=7.0Hz、4H)、7.84(d、J=8.0Hz、1H)、7.90(d、J=7.0Hz、1H)、8.03(d、J=9.0Hz、1H)
【0385】
また、
1H−NMRチャートを
図34に示す。なお、
図34(B)は、
図34(A)における7.0ppm〜8.5ppmの範囲を拡大して表したチャートである。これらより、本合成においてBBAαNBが得られたことがわかった。
【0386】
得られた3.9gの固体(BBAαNB)をトレインサブリメーション法により昇華精製を行った。昇華精製は、圧力3.4Pa、アルゴンを流速15mL/minで流しながら、固体を250℃で16時間加熱することにより行ったところ、目的物の固体を2.4g、回収率62%で得た。
【0387】
BBAαNBのHOMO準位およびLUMO準位をサイクリックボルタンメトリ(CV)測定を元に算出した。算出方法を以下に示す。
【0388】
測定装置としては電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600Aまたは600C)を用いた。CV測定における溶液は、溶媒として脱水ジメチルホルムアミド(DMF)((株)アルドリッチ製、99.8%、カタログ番号;22705−6)を用い、支持電解質である過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−Bu
4NClO
4)((株)東京化成製、カタログ番号;T0836)を100mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象を2mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した。また、作用電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、VC−3用Ptカウンター電極(5cm))を、参照電極としてはAg/Ag
+電極(ビー・エー・エス(株)製、RE7非水溶媒系参照電極)をそれぞれ用いた。なお、測定は室温(20〜25℃)で行った。また、CV測定時のスキャン速度は、0.1V/secに統一し、参照電極に対する酸化電位Ea[V]および還元電位Ec[V]を測定した。Eaは酸化−還元波の中間電位とし、Ecは還元−酸化波の中間電位とした。ここで、本実施例で用いる参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーは、−4.94[eV]であることが分かっているため、HOMO準位[eV]=−4.94−Ea、LUMO準位[eV]=−4.94−Ecという式から、HOMO準位およびLUMO準位をそれぞれ求めることができる。また、CV測定を100回繰り返し行い、100サイクル目の測定での酸化−還元波と、1サイクル目の酸化−還元波を比較して、化合物の電気的安定性を調べた。
【0389】
この結果、BBAαNBの酸化電位Ea[V]の測定において、HOMO準位は−5.49eVであることがわかった。一方LUMO準位は−2.24eVであることがわかった。また、酸化−還元波の繰り返し測定において1サイクル目と100サイクル後の波形と比較したところ、Ea測定においては93%、Ec測定においては92%のピーク強度を保っていたことから、BBAαNBは酸化、及び還元に対する耐性が非常に良好であることが確認された。
【0390】
また、BBAαNBの示差走査熱量測定(DSC測定)を、パーキンエルマー社製、Pyris1DSCを用いて測定した。示差走査熱量測定は、昇温速度40℃/minにて、−10℃から270℃まで昇温した後、同温度で1分間保持してから降温速度40℃/minにて−10℃まで冷却する操作を2回連続で行い2回目の測定結果を採用した。DSC測定から、BBAαNBのガラス転移点は84℃であることが明らかとなった。
【0391】
(参考例4)
本参考例では、発光素子3で用いた4−[4−(2−ナフチル)フェニル]−4’,4”−ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNBi)の合成方法について説明する。BBAβNBiの構造式を以下に示す。
【0392】
【化12】
【0393】
200mL三つ口フラスコに、4.8g(10mmol)の4−ブロモ−4’,4’’−ジフェニルトリフェニルアミンと、2.5g(10mmol)の4−(2−ナフチル)フェニルボロン酸と、0.31g(0.50mmol)のトリス(2−メチルフェニル)ホスフィンと、40mLのトルエンと、10mLのエタノールと、10mLの炭酸カリウム水溶液(2.0mol/L)を入れ、フラスコ内を減圧しながら攪拌し、この混合物を脱気した。脱気後、系内を窒素気流下としてから、混合物を60℃に加熱した。加熱後、0.11g(0.5mmol)の酢酸パラジウム(II)を加え、この混合物を80℃で1.5時間攪拌した。攪拌後、室温まで放冷した後、析出した固体を吸引ろ過により回収し、トルエン、エタノール、水を用いて洗浄した。得られた、固体をクロロホルムで洗浄し、吸引ろ過により回収したところ、目的物の褐色固体を2.9g、収率49%で得た。当該合成反応の反応スキームを以下に示す。
【0394】
【化13】
【0395】
得られた淡黄色固体の
1H NMRを測定する。データを以下に示す。
1H NMR(ジクロロメタン−d
2、500MHz、500MHz):δ=7.22−7.25(m、6H)、7.31(t、J=7.3Hz、2H)、7.42(t、J=7.8Hz,4H)、7.46−7.52(m、2H)、7.55(d、J=7.5Hz、4H)、7.59−7.63(m、6H)、7.74(d、J=8.0Hz、2H)、7.18−7.83(m、3H)、7.87(d、J=7.5Hz、1H)、7.93(t、J=8.7、2H)、8.11(s、1H)
【0396】
また、
1H−NMRチャートを
図35に示す。なお、
図35(B)は、
図35(A)における7.0ppm〜8.3ppmの範囲を拡大して表したチャートである。これにより、本合成反応によってBBAβNBiが得られたことがわかった。
【0397】
得られた2.9gの固体(BBAβNBi)をトレインサブリメーション法により昇華精製を行った。昇華精製は、圧力4.0Pa、アルゴンを流速15mL/minで流しながら、固体を300℃で16時間加熱することにより行ったところ、目的物の白色固体を1.9g、回収率65%で得た
【0398】
BBAβNBiのHOMO準位およびLUMO準位をサイクリックボルタンメトリ(CV)測定を元に算出した。算出方法は参考例3と同様である。
【0399】
この結果、BBAβNBiの酸化電位Ea[V]の測定において、HOMO準位は−5.47eVであることがわかった。一方LUMO準位は−2.38eVであることがわかった。また、酸化−還元波の繰り返し測定において1サイクル目と100サイクル後の波形と比較したところ、Ea測定においては82%、Ec測定においては67%のピーク強度を保っていたことから、BBAβNBiは酸化、及び還元に対する耐性が非常に良好であることが確認された。
【0400】
また、BBAβNBiの示差走査熱量測定(DSC測定)を、パーキンエルマー社製、Pyris1DSCを用いて測定した。示差走査熱量測定は、昇温速度40℃/minにて、−10℃から270℃まで昇温した後、同温度で1分間保持してから降温速度40℃/minにて−10℃まで冷却する操作を2回連続で行い2回目の測定結果を採用した。DSC測定から、BBAβNBiのガラス転移点は97℃であることがわかり、良好な耐熱性を有する化合物であることが明らかとなった。
【0401】
(参考例5)
本参考例では、発光素子4で用いた3−[4−(2−ナフチル)フェニル]−9−(2−ナフチル)−9H−カルバゾール(略称:βNPβNC)の合成方法について示す。βNPβNCの構造式を以下に示す。
【0402】
【化14】
【0403】
200mL三口フラスコに、2.3g(8.1mmol)の2−(4−ブロモフェニル)ナフタレンと、3.4g(8.1mmol)の4,4,5,5−テトラメチル−2−[9−(2−ナフチル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1,3,2−ジオキサボロランと、50mg(0.16mmol)のトリ(o−トリル)ホスフィンと、2.2g(16mmol)の炭酸カリウムを入れた。フラスコ内を窒素置換してから、この混合物へ30mLのトルエンと、10mLのエタノールと、8.0mLの水を加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気をした。脱気後、この混合物へ18mg(0.081mmol)の酢酸パラジウム(II)を加えた。この混合物を窒素気流下、80℃で4時間攪拌したところ、固体が析出した。析出した固体を吸引ろ過により回収した。ろ液の水層をトルエンで抽出し、抽出溶液と有機層を合わせて、飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥し、この混合物を自然ろ過した。得られたろ液を濃縮して得た固体と、回収した固体を約200mLの熱したトルエンに溶解し、この溶液をセライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:537−02305)、アルミナ、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:066−05265)を通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮して得た固体をトルエンで再結晶したところ、目的物の白色粉末を2.9g、収率72%で得た。当該合成反応の反応スキームを以下に示す。
【0404】
【化15】
【0405】
得られた白色粉末2.9gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力3.9Pa、アルゴンガスを流量5.0mL/minで流しながら、280℃で白色粉末を加熱した。昇華精製後、βNPβNCの白色固体を2.1g、回収率72%で得た。
【0406】
得られた物質の
1H NMRを測定した。以下に測定データを示す。
1H NMR(CDCl
3,300MHz):δ=7.35(ddd,J
1=6.6Hz,J
2=1.2Hz,1H),7.42−7.63(m,5H),7.60(dd,J
1=9.6Hz,J
2=6.3Hz,2H),7.69−7.76(m,2H),7.82−8.01(m,10H),8.08−8.13(m,3H),8.25(d,J=7.8Hz,1H),8.46(d,J=1.5Hz,1H)
【0407】
また、
1H−NMRチャートを
図36に示す。なお、
図36(B)は、
図36(A)における7.20ppm〜8.60ppmの範囲を拡大して表したチャートである。これにより、本合成反応によってβNPβNCが得られたことがわかった。
【0408】
また、βNPβNCの熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)を行った。測定には高真空差動型示差熱天秤(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、TG−DTA2410SA)を用いた。常圧、昇温速度10℃/min、窒素気流下(流速:200mL/min)条件で測定したところ、重量と温度の関係(熱重量測定)から、βNPβNCの5%重量減少温度は431℃であった。このことから、βNPβNCの耐熱性が良好であることが示された。