特許第6947576号(P6947576)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6947576
(24)【登録日】2021年9月21日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】螺旋流案内路を備える縦管
(51)【国際特許分類】
   E03F 3/04 20060101AFI20210930BHJP
   E03F 5/02 20060101ALI20210930BHJP
   E02D 29/12 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   E03F3/04 Z
   E03F5/02
   E02D29/12 Z
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-148651(P2017-148651)
(22)【出願日】2017年7月31日
(65)【公開番号】特開2019-27174(P2019-27174A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】592101149
【氏名又は名称】三山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100158665
【弁理士】
【氏名又は名称】奥井 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100206829
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 悟
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英三
(72)【発明者】
【氏名】竹野 義英
(72)【発明者】
【氏名】高橋 馨祐
【審査官】 富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−166521(JP,A)
【文献】 特開2017−078313(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3195936(JP,U)
【文献】 特開昭53−132130(JP,A)
【文献】 特開平10−073185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00−11/00
E02D 29/12
E04F 11/00−11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心柱挿入用孔が形成された螺旋流案内部材を、該心柱挿入用孔に中空の筒状体である心柱を挿入して、立設した該心柱を中心に螺旋状に配列してなる螺旋流案内路を備える縦管であって、
螺旋流案内部材の外側端部の段鼻部と段尻部とにボルト挿入用孔を形成し、
互いに隣接する螺旋流案内部材は、上側に位置する螺旋流案内部材の段鼻部と下側に位置する螺旋流案内部材の段尻部とを重なるように、かつ上側に位置する螺旋流案内部材の外側端部の段鼻部に形成されたボルト挿入用孔と下側に位置する螺旋流案内部材の外側端部の段尻部に形成されたボルト挿入用孔とを重なるように配置して、
該2つの重なるボルト挿入用孔に挿入したボルトとナットにより互いに隣接する2つの螺旋流案内部材を挟んで締め付けていることを特徴とする、螺旋流案内路を備える縦管。
【請求項2】
心柱挿入用孔が形成された螺旋流案内部材を、該心柱挿入用孔に中空の筒状体である心柱を挿入して、立設した該心柱を中心に螺旋状に配列してなる螺旋流案内路を備える縦管であって、
螺旋流案内部材の段尻部側の部位に段差部を形成し、該段差部の上面を心柱挿入用孔の周壁の上端面より高くするとともに、同部材の段鼻部側の部位は、該段差分の厚み分だけ薄く形成して、該段鼻部側の部位の下面を心柱挿入用孔の周壁の下端面より高くし、
互いに隣接する螺旋流案内部材は、上側に位置する螺旋流案内部材の段鼻部と下側に位置する螺旋流案内部材の段尻部とを重なるように、かつ上側に位置する螺旋流案内部材の段鼻部側の部位の下面に、下側に位置する螺旋流案内部材の段尻部側の部位に形成した段差部を収納したことを特徴とする、螺旋流案内路を備える縦管。
【請求項3】
前記螺旋流案内部材の段尻部側の部位に形成した段差部には溝を形成するとともに、前記螺旋流案内部材の段鼻部側の部位の下面には突部を形成し、前記互いに隣接する螺旋流案内部材は、下側に位置する螺旋流案内部材の段尻部側の部位の段差部の溝に上側に位置する螺旋流案内部材の段鼻部側の部位の下面の突部が嵌合していることを特徴とする、請求項2に記載の螺旋流案内路を備える縦管。
【請求項4】
前記螺旋流案内部材は、段鼻部側の部位の上面が段尻部から段鼻部に向かって下る方向に傾斜していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の螺旋流案内路を備える縦管。
【請求項5】
前記螺旋流案内部材は、外側端部に雨樋状部材を備え、該雨樋状部材は段尻部から段鼻部に向かって下る方向に傾斜していることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の螺旋流案内路を備える縦管。
【請求項6】
前記縦管がマンホールであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の螺旋流案内路が設置された縦管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールなどの縦管の上部から導入された流入水を螺旋状に流下させる螺旋流案内路を備える縦管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水や雨水等の流入水が流入するマンホールは、通常、流入水の流入口と流出口がマンホールの上部と下部に形成されている。
流入水の流入口と流出口の間には、通常、落差が形成されており、落下する流入水の水勢により、マンホールの壁面や底面が損傷されたり、落差が大きくなると地盤振動や大きな騒音が発生したりすることもある。このため、落下する流入水の水勢を低減する手段が設けられたマンホールが開発されている。
【0003】
他方、マンホール内は、マンホール壁の劣化を調査したり、配管系統の異常の有無を確認したりするために、作業員が定期的あるいは不定期的にマンホール内に立ち入り、保守点検作業等を行って、保守管理しなければならない。
【0004】
特許文献1には、中空縦桿の周囲に螺旋状に形成された下水案内路を収容した縦管をマンホール内に設置して、マンホール内に流入する下水を縦管内で螺旋状に屈曲して流下させて、縦管底部における下水の落下衝撃を弱めることにより、マンホールの底部の損傷を回避できる下水道用縦管の発明が記載されている。
【0005】
しかし、引用文献1に記載された発明の縦管は、螺旋状に形成される下水案内路が小孔を穿設した中空縦桿の周囲にスクリュウ状のフライトにより形成されるものであり、該小孔から縦桿内に空気を導入して下水が乱れることなく円滑に流下できるようにしなければならず、構造が複雑であり、また、マンホールのように大きな径を有する案内路を製造することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−41915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は従来技術が有する上記の問題点に鑑みてなされたものであり、雨水や下水などの流入水の水勢を軽減する螺旋流案内路を備える縦管であって、螺旋流案内路の構造が複雑なものではなく、容易に縦管内に設置することができ、また、螺旋流案内路の径の大きなものも容易に製造することができる、螺旋流案内路の備える縦管を提供することを第1の目的とする。さらには、螺旋流案内路が作業員等の歩行も可能とする構造を備える縦管を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
[1]心柱挿入用孔が形成された螺旋流案内部材を、該心柱挿入用孔に中空の筒状体である心柱を挿入して、立設した該心柱を中心に螺旋状に配列してなる螺旋流案内路を備える縦管であって、螺旋流案内部材の外側端部の段鼻部と段尻部とにボルト挿入用孔を形成し、互いに隣接する螺旋流案内部材は、上側に位置する螺旋流案内部材の段鼻部と下側に位置する螺旋流案内部材の段尻部とを重なるように、かつ上側に位置する螺旋流案内部材の外側端部の段鼻部に形成されたボルト挿入用孔と下側に位置する螺旋流案内部材の外側端部の段尻部に形成されたボルト挿入用孔とを重なるように配置して、該2つの重なるボルト挿入用孔に挿入したボルトとナットにより互いに隣接する2つの螺旋流案内部材を挟んで締め付けていることを特徴とする、螺旋流案内路を備える縦管。
[2]心柱挿入用孔が形成された螺旋流案内部材を、該心柱挿入用孔に中空の筒状体である心柱を挿入して、立設した該心柱を中心に螺旋状に配列してなる螺旋流案内路を備える縦管であって、螺旋流案内部材の段尻部側の部位に段差部を形成し、該段差部の上面を心柱挿入用孔の周壁の上端面より高くするとともに、同部材の段鼻部側の部位は、該段差分の厚み分だけ薄く形成して、該段鼻部側の部位の下面を心柱挿入用孔の周壁の下端面より高くし、互いに隣接する螺旋流案内部材は、上側に位置する螺旋流案内部材の段鼻部と下側に位置する螺旋流案内部材の段尻部とを重なるように、かつ上側に位置する螺旋流案内部材の段鼻部側の部位の下面に、下側に位置する螺旋流案内部材の段尻部側の部位に形成した段差部を収納したことを特徴とする、螺旋流案内路を備える縦管。
[3]前記螺旋流案内部材の段尻部側の部位に形成した段差部には溝を形成するとともに、前記螺旋流案内部材の段鼻部側の部位の下面には突部を形成し、前記互いに隣接する螺旋流案内部材は、下側に位置する螺旋流案内部材の段尻部側の部位の段差部の溝に上側に位置する螺旋流案内部材の段鼻部側の部位の下面の突部が嵌合していることを特徴とする、[2]に記載の螺旋流案内路を備える縦管。
[4]前記螺旋流案内部材は、段鼻部側の部位の上面が段尻部から段鼻部に向かって下る方向に傾斜していることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載の螺旋流案内路を備える縦管。
[5]前記螺旋流案内部材は、外側端部に雨樋状部材を備え、該雨樋状部材は段尻部から段鼻部に向かって下る方向に傾斜していることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかに記載の螺旋流案内路を備える縦管。
[6]前記縦管がマンホールであることを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかに記載の螺旋流案内路が設置された縦管。
【発明の効果】
【0009】
本発明の縦管に設置された螺旋流案内路は、螺旋流案内路を構成する螺旋流案内部材が心柱挿入孔を備え、該心柱挿入用孔に心柱を挿入して、立設した心柱を中心に、螺旋流案内部材を螺旋状に配列して、流入水を螺旋状に導くことにより水勢を軽減する案内路を構築するものであるから、螺旋流路案内路は、構造が複雑でなく、容易に縦管内に設置することができ、また、径の大きなものも容易に製造することができる。さらには、螺旋流案内路を作業員等が保守点検などの目的で縦管内を昇降するための階段として使用することが可能な構造を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】螺旋流案内路が設置されたマンホール(縦管)の全体構成の概略断面図である。
図2】螺旋流案内路の要部の外観斜視図である。
図3】螺旋流案内路の概略平面図である。
図4】螺旋流案内部材の平面図(a)と正面図(b)である。
図5】隣接する螺旋流案内部材の配置および心柱を立設する手段の斜視図である。
図6】ボルトとナットにより締め付けられた上下に隣接する2つの螺旋流案内部材を示す図である。
図7】外皮と発泡芯材が一体成形された発泡体の断面を示す模式図である。
図8】段鼻部側の部位の上面が傾斜した螺旋流案内部材の斜視図(a)およびこの螺旋流案内部材が上下に隣接した時の螺旋流案内部材の外側端部側から見た螺旋流案内部材上面での流入水の流れを模式的に示す図(b)である。
図9】段尻部側の部位に段差部が形成された螺旋流案内部材の斜視図である。
図10図9に示す段尻部側の部位に段差部が形成された螺旋流案内部材の平面図である。
図11】段尻部側の部位に段差部が形成された螺旋流案内部材により構築された螺旋流案内路の斜視図である。
図12】段尻部側の部位に段差部が形成された螺旋流案内部材の異なる実施形態の斜視図である。
図13図12に示す螺旋流路案内部材の下面(裏面)を示す斜視図である。
図14図12に示す螺旋流案内部材により構築された螺旋流案内路の斜視図である。
図15】段尻部側の部位に段差部が形成された螺旋流案内部材の異なる実施形態の斜視図である。
図16】外側端部に雨樋状部材を備える螺旋流案内部材の斜視図である。
図17】外側端部に雨樋状部材を備える螺旋流案内部材により形成された螺旋流案内路の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、縦管がマンホールである場合について、本発明の実施形態を説明する。
【0012】
雨水や下水などの流入水は、マンホールの上部に設けられた流入口の流入配管から流入し、マンホールの下部に設けられた流出口の流出配管から排出される。
図1は螺旋流案内路が設置されたマンホールの全体構成の概略断面図を示す。1は螺旋流案内路が設置されたマンホール、2はマンホール本体を形成するマンホール躯体であり、通常はコンクリート製である。3はマンホールの蓋版、4はマンホールの底版、5は流入水が流入する流入配管、6は流入水が流出する流出配管である。マンホールの底版4の上には、マンホール底部に流下した流入水の流出配管6への流れをよくするため、インバート7を形成することもある。8は昇降用のステップ、10は螺旋流案内路である。
螺旋流案内路10は流入配管5のレベル近くまで達する高さを有しており、流入配管5から流入する流入水は螺旋流案内路10を構成する後述の螺旋流案内部材の上面を流下し、流出配管6から排出される。
【0013】
図2に螺旋流案内路10の外観概略図を、図3にマンホール2内に設置された螺旋流案内路の概略平面図をそれぞれ示した。
ここで、11は中空の筒状体からなる心柱、12は螺旋流案内路10を構成する螺旋流案内部材である。124は、螺旋流案内部材12に形成されたボルト挿通用孔であり、この孔にボルトが挿入されて、後述するように、隣接する螺旋流案内部材同士がボルトとナットで締結される。なお、図1〜3ではボルトとナットは図示していない。
【0014】
図4(a)、(b)に螺旋流案内部材12の平面図と正面図を示した。
螺旋流案内部材12の内側端部121(螺旋流案内路の中心側の端部)には心柱挿入用孔(貫通孔)123が形成され、この心柱挿入用孔123に心柱11が挿通され、心柱11を中心として、複数の螺旋流案内部材12を心柱の周囲に展開させることにより螺旋流案内路10が構成される(図2図3参照)。
【0015】
螺旋流案内部材12は、図3図4から分かるように、螺旋流案内部材の心柱挿入用孔123に心柱11が挿入された状態で、その外側端部122の外周側部がマンホール躯体2の内壁に近接または接触する寸法を有している。
【0016】
図4に示す螺旋流案内部材12は、内側端部121近傍から外側端部122に向かって次第に幅広になる略扇形状であり、心柱挿入用孔123の周壁を含めて、厚みが一定である。この図に示すものでは内側端部を少し太くして心柱挿入用孔123を設けているが、図2に示される螺旋流案内部材のように、内側端部122に向かって、次第に幅狭にしてもよい。
【0017】
そして、螺旋流案内部材12の外側端部の段鼻部と段尻部の2個所には後述するボルト13が挿入されるボルト挿入用孔124、124が形成されている。ボルト挿入用孔124は螺旋流案内部材12を厚さ方向に貫通している。
ここで、段鼻部および段尻部とは、螺旋流案内路を下から上に上る場合に、螺旋流案内部材の手前側の部位、螺旋流案内部材の奥側の部位をそれぞれ指している。時計回りに上る螺旋流案内路の一部を示した図5に段鼻部125、段尻部126を示した。
【0018】
心柱11は、中空の筒状材であって、鋼材やアルミニウム合金材などを使用することもできるが、一層の軽量化を図るために、合成樹脂製のものを使用するのが望ましく、繊維強化プラスチック材(FRP)が強度的にも適している。合成樹脂製のものは錆などで腐食しないから、耐水性も備えている。
また、心柱11は、分割型とすることもできる。短い中空の円筒体を積み上げて、より高い筒状体にすることもできる。分割型の心柱を継ぎ足すには、それぞれの接続口に互いに嵌め合うねじ切り部を形成してネジ接合したり、それぞれの接続口に接続用の中空芯体を挿入して埋め込み型のピンを挿入することにより接続したりして、分割型の心柱を継ぎ足すことができる。
【0019】
螺旋流案内路10の組立手順の一例を以下に説明するとともに螺旋流案内路10の構造を示す。
最初にマンホール1内に心柱11を立設する。
心柱11を立設するには、組立当初では作業員が支持することにより行うこともできるが、例えば、図5に示すように、コンクリートを打設するなどして心柱11の内径と同じ外径を有する芯体15をマンホールのインバート7などに立設し、この芯体15に心柱11の下端部を被せることにより、心柱11を立設することもできる。
通常、インバート7は、中央部に凹部(溝部)を流出配管6の軸方向に形成して流入水が流出配管に流出しやすいようになっているが、心柱11を立設しやすいように、インバート7の上面は、凹部(溝部)を形成しないで平らにしてもよい。
インバート7がない場合は、底版4に芯体を立設することもできる。
【0020】
次に、螺旋流案内路10の1段目となる螺旋流案内部材12を、立設した心柱11の上端から螺旋流案内部材の心柱挿入用孔123に心柱11が挿入されるようにして、心柱11に取り付ける。続いて、2段目となる螺旋流案内部材12を同様にして心柱11に取り付け、1段目の螺旋流案内部材に積み上げる。
【0021】
そして、図5に示すように、1段目の螺旋流案内部材の外側端部の段尻部126に形成されたボルト挿入用孔124と2段目の螺旋流案内部材の外側端部の段鼻部125に形成されたボルト挿入用孔124とが重なるように、1段目の螺旋流案内部材の上に2段目の螺旋流案内部材を配置する。
したがって、このように配置が完了した後は、図2図5から分かるように、1段目の螺旋流案内部材12の段尻部の上面と2段目の段鼻部の下面とが接触して重なることになる。なお、図2でも、螺旋流案内路を上るときに、1段目の螺旋流案内部材12に対して、2段目の螺旋流案内部材12が心柱を中心にして時計針の動きと同方向に所定の角度だけ回転した状態で配置されている。
【0022】
そして、図5図6に示すように、重なった1段目の螺旋流案内部材と2段目の螺旋流案内部材のボルト挿入用孔124、124に、1段目の螺旋流案内部材の下面からボルト13を挿入して、ボルト13の軸部の上端が2段目の螺旋流案内部材の上面に突き出るようにする。なお、図5では、図解を容易にするため、1段目の螺旋流案内部材12と2段目の螺旋流案内部材12を離して、ボルト13の軸部を実際よりも長く描いている。
こうすることで、1段目の螺旋流案内部材と2段目の螺旋流案内部材とは、心柱を中心に所定の角度を形成して配置されることになる。
【0023】
そして、図6(a)に示すように、2段目の螺旋流案内部材の上面から突き出たボルト13のねじ部にナット14を螺合させて1段目の螺旋流案内部材と2段目の螺旋流案内部材を締め付けることができる。
1段目の螺旋流案内部材12の下面をインバート7あるいは底版4の上面と接触させるため、図6(a)に示すように、ボルト13の頭部は、螺旋流案内部材を安定して据え付けるために、1段目の螺旋流案内部材の下面から飛び出ないようにすることができる。
【0024】
ボルトとナットで締め付けることにより、2つの螺旋流案内部材12(すなわち1段目と2段目の螺旋流案内部材)同士が一体化して互いにずれないようにすることができる。そして、2つの螺旋流案内部材は、その心柱挿入用孔123に挿通された心柱11によっても支持されて、さらに螺旋流案内部材の外側端部122の外周側部がマンホール躯体2の内壁に近接または接触しているから、心柱を中心として堅固な状態でマンホール内に確実に螺旋状に配置され、心柱の周囲に螺旋流案内路の1段目と2段目が形成される。
このとき、1段目の螺旋流案内部材12の段鼻部側125の側部は、流出配管6の入り口におおむね対向するように配置することが望ましい。こうすることで、螺旋流案内路を流下する流入水が1段目の螺旋流案内部材12を流下した後に流出配管6に速やかに排出されることになる。
【0025】
同様にして、3段目の螺旋流案内部材12を、立設した心柱11の上端から螺旋流案内部材の心柱挿入用孔123に心柱11が挿入されるようにして心柱11に取り付け、2段目の螺旋流案内部材の上に積み上げる。そして、図2に示すように、2段目の螺旋流案内部材の外側端部の段尻部に形成されたボルト挿入用孔124と3段目の螺旋流案内部材の外側端部の段鼻部に形成されたボルト挿入用孔124とが重なるように、2段目の螺旋流案内部材の上に3段目の螺旋流案内部材を配置し、次いで、2段目の螺旋流案内部材の下面から、ボルト13を2段目の螺旋流案内部材のボルト挿入用孔124から差し込み、3段目の螺旋流案内部材のボルト挿入孔124にボルト13の軸部の上端が突き出るまで挿入する。そして、3段目の螺旋流案内部材の上面から突き出たボルト13のねじ部にナット14を螺合させて2段目の螺旋流案内部材と3段目の螺旋流案内部材を締め付けることができる。
【0026】
このようにして、2つの螺旋流案内部材(すなわち2段目と3段目の螺旋流案内部材)同士が一体化して互いにずれないようにすることができると共に、2つの螺旋流案内部材は、その心柱挿入用孔123に挿通された心柱11によっても支持され、さらに螺旋流案内部材の外側端部122の外周側部がマンホール躯体2の内壁に近接または接触しているから、1段目から3段目までの螺旋流案内部材は心柱を中心として確実に螺旋状に配置されることになる。
【0027】
同様にして、4段目以降から最上段までの螺旋流案内部材も同様の手順で、螺旋流案内部材12を、心柱11を中心として心柱11の周囲に螺旋状に組み立てることができる。
したがって、本発明の螺旋流案内路10では、互いに隣接する、下側に位置するn段目(nは整数)の螺旋流案内部材とその上側に位置する(n+1)段目の螺旋流案内部材は、上側に位置する(n+1)段目の螺旋流案内部材の外側端部の段鼻部に形成されたボルト挿入用孔124と下側に位置するn段目の螺旋流案内部材の外側端部の段尻部に形成されたボルト挿入用孔124とが重なるように配置され、該2つの重なるボルト挿入用孔に挿通したボルト13とこのボルトの軸部に螺号したナット14により前記互いに隣接するn段目と(n+1)段目の螺旋流案内部材を挟んで締め付けている。
【0028】
図2では、4段目の螺旋流案内部材までが螺旋状に配置されており、1段目から4段目までの螺旋流案内部材12が3本のボルト13(図示せず)を使って螺旋状に配置された螺旋流案内路が示されている。
【0029】
2段目から最上段の螺旋流案内部材の間において、隣接する2つの螺旋流案内部材をボルトとナットで締め付ける場合は図6(a)に示す形態でもよいが、図2から分かるように、2段目以降の螺旋流案内部材の段尻部側下面の下方には空間ができるから、下側のナットとボルト下端が螺旋流案内部材の下面から飛び出している図6(b)に示す形態でもよい。
また、2段目から最上段の螺旋流案内部材の間において、隣接する螺旋流案内部材のボルトとナットによる締め付けは、図6に示すように、ボルト13を下側に位置する螺旋流案内部材の下からボルト挿入用孔124に挿入したが、ボルトを上側に位置する螺旋流案内部材の上面からボルト挿入用孔124に挿入して、下側の螺旋流案内部材の下面に突き出たボルト13の軸部をナット14で締め付けて、上下に隣接する螺旋流案内部材同士を一体化してもよい。
【0030】
螺旋流案内部材12は、立設した心柱11の上端で、螺旋流案内部材の内側端部の心柱挿入用孔123に心柱11を挿入して取り付けることになるが、心柱11が高い場合、螺旋流案内部材の取り付け作業が困難になることが生じる。図2に示す4段の螺旋流案内部材の螺旋流案内路では心柱11の高さはさほどではないが、螺旋流案内部材12の段数が増えるにしたがって心柱11も高くなる。
このような場合には、心柱を一体ものではなく、前述したように、分割型のものにして対応することができる。
分割型にしておけば、所定数の螺旋流案内部材を心柱に取り付け、上述したごとく、所定数の螺旋流案内部材分の螺旋流案内路を構築し、次いで、この螺旋流案内路を上り、分割型の心柱を継ぎ足して、さらに所定数の螺旋流案内部材を取り付ければよい。
【0031】
心柱11は中空であるので、最上端から流入水が浸入しないように、心柱の最上端には心柱の内壁に螺合するなどして蓋体(図示せず)を取り付けて塞ぐ。蓋体にはフランジ部を形成して、最上段に配置される螺旋流案内部材の心柱挿入用孔123の周壁の上端面を覆うことが望ましい。
【0032】
螺旋流案内路をマンホール内に設置する組立手順は上述したものに限るものではない。例えば、地上で心柱に螺旋流案内部材を挿入して、ボルトとナットで隣接する螺旋流案内部材を締め付けて、螺旋流案内路を組み立てておき、この螺旋流案内路をマンホール内に降下させて設置することもできる。
【0033】
この実施形態の螺旋流案内路では、螺旋流案内部材12は心柱挿入用孔123に心柱11が挿入され、かつ隣接する上下の螺旋流案内部材12同士がボルト13とナット14の締結により一体化されているから、螺旋流案内路はマンホール内に堅固に安定した状態で設置することができる。
また、ボルト挿入用孔124の位置を螺旋流案内部材の外側端部122の外周に沿う方向において変えることにより、互いに隣接する上下の螺旋流案内部材同士の重なり幅を変えたりして、螺旋流案内路の旋回角度も容易に調整することができる。
【0034】
図4に示した螺旋流案内部材12は、厚みが一定であり中実であるが、心柱挿入用孔123の周壁を除く螺旋流案内部材本体の上面部を板状体とし、この板状体縁部の裏面にリブ材を板状体と一体的に設けて、板状部の厚さとリブ材の高さとで螺旋流案内部材としての高さを形成することもできる。さらに螺旋流案内部材12の強度を高めるために、リブ材を板状体の縁部の裏面のみならず、板状体の中央部の裏面にも設けてもよい。
また、螺旋流案内部材12は、螺旋流案内部材としての強度が十分であり、耐食性のある材料で製造することができる。例えば、アルミなどの金属製としてもよいが、軽量化するために、外皮と発泡芯材からなる発泡体から製造することが望ましい。この発泡体からなる螺旋流案内部材12の断面の模式図を図7に示した。
【0035】
発泡体16は、内部が発泡樹脂からなる発泡芯材161であり、外皮162が発泡芯材161を被覆しており、ブロー成型法や真空含浸工法などの方法により、外皮162と発泡芯材161を一体化して製造することができる。
発泡芯材161には発泡性ポリスチレン樹脂や植物由来のポリ乳酸系発泡性樹脂等が使用できる。また、外皮162にはポリエチレンやポリプロピレンなど合成樹脂を使用することができるが、強度の高い繊維強化プラスチック材料(FRP)が好ましい。
なお、板状体とこの板状部の裏面に一体的に設けたリブ材とから構成される、前述の螺旋流案内部材についても、発泡芯材161と外皮162からなる発泡体16から製造することができる。
【0036】
この発泡体16は、発泡芯材161のみでは低強度であるが、発泡芯材161が外皮162と一体化されることにより、強度が飛躍的に向上し、耐荷重性、耐久性、耐水性に優れている。また、ほとんどの体積を発泡芯材161が占めているので軽量である。したがって、大掛かりな重機を使用することなく、心柱11を中心にして螺旋流案内部材12を積み上げて螺旋流案内路を組み立てることができる。
【0037】
発泡体16からなる螺旋流案内部材12では、心柱挿入用孔123とボルト挿入用孔124の内周面にも外皮162を形成することもできるが、発泡芯材161と外皮162を一体化する工程において、長さが螺旋流案内部材12の厚さと同じであって、内径が心柱11やボルト13の軸部の外径と同じ寸法のスリーブを予めそれぞれ心柱挿入用孔123やボルト挿入用孔124の部位に配置して、スリーブとともに外皮と発泡芯材を一体化することもできる。こうすることで、心柱挿入用孔123とボルト挿入用孔124のそれぞれを心柱11とボルトの軸部の外径の寸法に精度よく発泡体に形成することができる。この場合、心柱挿入用孔123とボルト挿入用孔124の内周面にはスリーブが装着されているから、発泡芯材が露出することはない。
【0038】
ボルト13やナット14も、鋼材やアルミニウム合金材などを使用することもできるが、一層の軽量化を図るために、心柱11と同様に、合成樹脂製のものを使用することもできる。合成樹脂として繊維強化プラスチック材が強度的にも適している。合成樹脂製のものは錆などで腐食しないから、耐水性も備えている。
【0039】
マンホール躯体の上部の流入口(流入配管5)から流入する流入水は、螺旋流案内路10の螺旋流案内部材12に案内されて、螺旋状に流下するとともに、段差流れして水勢が減衰され、マンホール下部の流出口(流出配管6)から排出される。また、この螺旋流案内路は、作業員等の昇降用の階段として使用することができ、マンホール内の点検作業や保守管理作業などを容易に行うことができる。
【0040】
マンホール内に螺旋流案内路を組み立てる作業も、心柱11を中心にして螺旋流案内部材12を配置し、隣接する螺旋流案内部材12をボルトとナットで締結するだけであるから、螺旋流案内路の構造が複雑でなく、マンホール内において螺旋流案内路を構築することが容易に行え、また、大掛かりな重機を使用することなしに構築することができる。
【0041】
図2〜5では厚みが一定の螺旋流案内部材を示したが、図8(a)に示すように、段鼻部側の部位において、上面を段尻部側から段鼻部側に向かって下る方向に傾斜させた螺旋流案内部材12を使用することもできる。
図8(b)から分かるように、このような螺旋流案内部材を使用して螺旋流案内路を構成することにより、螺旋流案内部材12の上面に流入水が滞留しないで、螺旋流案内部材から流入水が流下しやすくなる。
なお、この図では、傾斜を強調するために傾斜角度を10°程度に大きく描いているが、1〜5°程度でも効果を発揮する。この程度であれば、作業員等の昇降にも支障はない。
図8に示すこの実施形態では、螺旋流案内部材の上面のみならず、段鼻部側の側面も垂直ではなく、該側面の下部が手前側に出張り傾斜している。こうすることで流入水の段差流れをより穏やかにできる。
螺旋流案内部材の段鼻部側の部位において、上面を段鼻部に向かって下る方向に傾斜させた螺旋流案内部材も、図7に示した発泡体16から製造できる。
【0042】
図2図5図8に示した螺旋流案内部材を使用する場合、ボルトナットで隣接する螺旋流案内部材を締め付けて螺旋流案内路を構築したが、これとは異なり、ボルトナットを使用しない実施形態の螺旋流案内路について、以下の図9〜11に基づいて説明する。
【0043】
この実施形態の螺旋流案内路に使用される螺旋流案内部材12も、図9及び図10に示すように、これまでの螺旋流案内部材と同様に、内側端部121には、心柱挿入用孔123が形成されており、この孔に心柱11を挿入して、心柱11を中心に螺旋状に配列して、螺旋流案内路10が構築される(図11参照)。
【0044】
図9から分かるように、螺旋流案内部材12の段尻部側の部位には段差部127が形成されており、段差部127の上面は、心柱挿入用孔123の周壁の上端面より高くなっている。
他方、螺旋流案内部材12の段鼻部側の部位の下面(裏面)は、段差部127の分だけ厚みが薄く形成された部位を有しており、その部位では、該段鼻部側の部位の下面が心柱挿入用孔123の周壁の下端面より高くなっており、螺旋流案内部材12の段鼻部側の部位の下に、段差部127と同じ立体形状の空間が形成されている(図10参照)。
また、螺旋流案内部材12の段鼻部側の部位の上面は、段尻部側の部位の段差部127より低い面を有しておればよく、図9では、心柱挿入用孔123の周壁の上端面と同じ高さになっている。
【0045】
図10から分かるように、この実施形態の螺旋流案内部材12も平面視が略扇形であり、段差部127は略矩形である。そして、螺旋流案内部材の心柱挿入用孔123に心柱11が挿入された状態で、その外側端部122の外周側部がマンホール躯体2の内壁に近接または接触する寸法を有している。
【0046】
したがって、2つの螺旋流案内部材12を、心柱挿入用孔123に心柱11を挿入して、立設した心柱11を中心にして積み、上側に位置する螺旋流案内部材の段鼻部側の部位の下面に、下側に位置する螺旋流案内部材の段尻部側の部位に形成した段差部を収納させた状態で、上側に位置する螺旋流案内部材の段鼻部と下側に位置する螺旋流案内部材の段尻部とを重ね合わせることができる。
同様にして、さらに螺旋流案内部材12を心柱11を中心にして積み重ねると、図11から分かるように、互いに隣接する上下の螺旋流案内部材において、下側に位置する螺旋流案内部材12の段尻部側の部位に形成された段差部127を上側に隣接する螺旋流案内部材12の段鼻部側の部位の下面の空間に収納することができ、心柱11を中心にして螺旋流案内部材を螺旋状に配列することができる。
また、段差部127の幅寸法や形状を変えることにより、互いに隣接する上下の螺旋流案内部材同士の重なり幅を変えたりして、螺旋流案内路の旋回角度も容易に調整することができる。
【0047】
マンホール1内に図9に示す螺旋流案内部材を使用して螺旋流案内路10を組み立てる手順の一例を以下に説明する。
最初にマンホール内に心柱11を立てる。
心柱11をマンホールのインバートや底版に立設する方法は、図2〜5に示した螺旋流案内部材を使用する螺旋流案内路の場合と同様である。
【0048】
次に、螺旋流案内路10の1段目となる螺旋流案内部材12を、立設した心柱11の上端から螺旋流案内部材の心柱挿入用孔123に心柱が挿入されるようにして、心柱11に取り付ける。続いて、2段目となる螺旋流案内部材12を同様にして心柱11に取り付ける。
【0049】
そして、1段目の螺旋流案内部材の段尻部側の部位に形成された段差部127を2段目の螺旋流案内部材の段鼻部側の部位の下面(裏面)に収納して、1段目の螺旋流案内部材の上に2段目の螺旋流案内部材を積み上げる。
なお、図11では、螺旋流案内路を上る場合に、1段目の螺旋流案内部材に対して、2段目の螺旋流案内部材が心柱を中心にして時計針の動きと反対方向に所定の角度だけ回転した状態で配置されている。
【0050】
こうすることで、1段目の螺旋流案内部材と2段目の螺旋流案内部材とは、心柱を中心に所定の角度を形成して、上側に位置する螺旋流案内部材の段鼻部と下側に位置する螺旋流案内部材の段尻部とを重なるように配置されることになる。
【0051】
同様にして、3段目以降から最上段までの螺旋流案内部材も同様の手順で、心柱11を中心として螺旋流案内部材12を心柱11の周囲に螺旋状に組み立てることができる。
したがって、互いに上下に隣接する螺旋流案内路の下側に位置するn段目(nは整数)の螺旋流案内部材とその上側に位置する(n+1)段目の螺旋流案内部材とは、下側に位置するn段目の螺旋流案内部材の段尻部側の部位に形成された段差部127が(n+1)段目の螺旋流案内部材の段鼻部側の部位の下面に収納され、n段目の螺旋流案内部材の該段差部127の上面と(n+1)段目の螺旋流案内部材の段鼻部側の部位の下面とが接触した状態で、n段目の螺旋流案内部材と(n+1)段目の螺旋流案内部材が心柱を中心として積み上げられることになる(図11参照)。
なお、最上段の螺旋流案内部材には、螺旋流案内部材の上面が段差部のない面一なものを使用することもできる。
【0052】
この段差部127を有する螺旋流案内部材12で構築される螺旋流案内路10では、互いに上下に隣接する螺旋流案内部材の下側に位置する螺旋流案内部材の段尻部側の部位に形成した段差部を上側に位置する螺旋流案内部材の段鼻部側の部位の下面に形成した空間に収納して、該段差部の上面および段尻部側の側面が上側に位置する螺旋流案内部材に支持される状態で、螺旋流案内部材が積み上げられ、そして、各螺旋流案内部材12は、心柱11によっても支持され、そして、外周部がマンホール1の内壁に近接または接触しているから、マンホール内に堅固に安定して立設することができる。
【0053】
この実施態様の螺旋流案内路が設置されたマンホールでは、上部から流入する流入水は、螺旋流案内路10の螺旋流案内部材12に案内されて、螺旋状に流下するとともに、段差流れして水勢が減衰され、マンホール下部の流出口(流出配管6)から排出される(図1参照)。また、この螺旋流案内路10は、作業員等の昇降用の階段として使用することができ、マンホール内の点検作業や保守管理作業などを容易に行うことができる。
【0054】
マンホール内に螺旋流案内路を組み立てる作業も、螺旋流案内部材の心柱挿入用孔123に心柱11を挿入して、心柱11を中心にして螺旋流案内部材12を配置し、隣接する螺旋流案内部材12を、下側に位置する螺旋流案内部材の段尻部側の部位に形成した段差部を上側に位置する螺旋流案内部材の段鼻部側の部位の下面に形成した空間に収納させて積み重ねるものであるから、螺旋流案内路の構造が複雑でなく、マンホール内に螺旋流案内路を構築することが容易に行え、また、大掛かりな重機を使用することなしに構築することができる。
【0055】
以上の図9〜11では、螺旋流案内部材の段尻部側の部位に段差部を形成し、螺旋流案内部材を積み重ねたときに、互いに隣接する2つの螺旋流案内部材において、下側に位置する螺旋流案内部材の段差部が上側に位置する螺旋流案内部材の段鼻部側の部位の下面に収納される螺旋流案内路について説明したが、さらに、螺旋流案内部材の段尻部側に形成した段差部に溝を、螺旋流案内部材の段鼻部側の部位の下面に突部をそれぞれ形成し、2つの螺旋流案内部材を積み重ねたときに、下側に位置する螺旋流案内部材の段尻部側の段差部の溝に、上側に位置する螺旋流案内部材の段鼻部側の部位の下面の突部が嵌合する螺旋流案内路の実施形態について、以下の図12〜15に基づいて説明する。
【0056】
この実施形態の螺旋流案内路に使用される螺旋流案内部材12も、図12及び図13に示すように、これまでの螺旋流案内部材と同様に、内側端部121には、心柱挿入用孔123が形成されており、この孔に心柱11を挿入して、心柱11を中心に螺旋状に配列して、螺旋流案内路10が構築される(図14参照)。
この実施形態の螺旋流案内部材12も平面視が略扇形である。そして、螺旋流案内部材の心柱挿入用孔123に心柱11が挿入された状態で、その外側端部122の外周側部がマンホール躯体2の内壁に近接または接触する寸法を有している。
【0057】
そして、図12に示すように、螺旋流案内部材12の段尻部側の部位には、図9に示すものと同様に、段差部127が形成されており、該段差部127の上面は、心柱挿入用孔123の周壁の上端面より高くなっている。この図に示される段差部は図9に示す段差部よりも厚みが小さいものである。
この実施形態の螺旋流案内部材の段鼻部側の部位128は、図9に示されるものと同様に、段差部127の高さより低い平面部を有するものでもよいが、図12では、段鼻部側に向かって心柱挿入用孔123の下端面の高さに向かって下に傾斜している。
段差部127の上面には少なくとも1つ以上の溝127´が形成される。溝127´はは段鼻部側寄りの位置に設けることが望ましい。図12では、2つの溝が段差部127の段鼻部側に縁部に形成されているが、この場合は、螺旋流案内部材12の段鼻部側の部位の段尻部側の縁128´が溝側面の一部を形成している。
【0058】
他方、図13から分かるように、螺旋流案内部材12の段鼻部側の部位の下面(裏面)は、段差部127の分だけ厚みが薄く形成された部位を有しており、その部位では、図9に示すものと同様に、該段鼻部側の部位の下面が心柱挿入用孔123の周壁の下端面より高くなっており(図13では低く描かれている)、螺旋流案内部材12の段鼻部側の部位の下に、段差部127と同じ(ただし溝部は除く)立体形状の空間が形成されて、螺旋流案内部材の段鼻部側の部位の下面には、段差部127を収納することができる凹部129が形成されている。
そして、凹部129には少なくとも1つ以上の突部129´が形成されている。図12では、凹部129の段鼻部側の縁に2つの突部129´が形成されている。
上述の突部129´は溝127´に嵌合する形状に形成されており、2つの螺旋流案内部材12を、上側に位置する螺旋流案内部材の段鼻部側の部位の下面の凹部129に、下側に位置する螺旋流案内部材の段尻部側の部位に形成した段差部127を収納して積み重ねた場合、上側に位置する螺旋流案内部材の段鼻部側の部位の下面(裏面)の凹部129に形成された突部129´はが下側に位置する螺旋流案内部材段尻部側の部位に形成された段差部の溝127´に嵌合すように配置されている。
【0059】
なお、図13に示された螺旋流案内部材12の段尻部側の部位の下面(裏面)では、一部の部位が壁面で囲まれて空洞になっているが、これは軽量化等のためであり、螺旋流案内部材12の段尻部側は空洞が設けられてもよいし、中実になっていてもよい。
【0060】
したがって、図14に示すように、2つの螺旋流案内部材12を、心柱挿入用孔123に心柱11を挿入して、立設した心柱11を中心にして積み、互いに隣接する上下の螺旋流案内部材は、上側に位置する螺旋流案内部材12の段鼻部側の部位の下面に形成された凹部129に、下側に位置する螺旋流案内部材12の段尻部側の部位に形成した段差部127を収納させるとともに、上側に位置する螺旋流案内部材の前記凹部129に形成された突部129´が下側に位置する螺旋流案内部材の段尻部側の部位の段差部127に形成された溝127´に嵌合した状態で重ね合わせることができる。
【0061】
なお、螺旋流案内部材の段鼻部側の部位の段尻部側の縁128´の高さは、段差部127の高さを超えなくともよいが、図12で示される縁128´はが段差部127の段鼻部側の縁よりも高くなっている。この場合、上下に隣接する螺旋流案内部材では、下側に位置する螺旋流案内部材12の段鼻側の部位の段尻部側の縁128´が上側に位置する螺旋流案内部材12の段鼻部側の部位の段鼻部側の縁に当接することになる。
【0062】
同様にして、さらに螺旋流案内部材12を心柱11を中心にして積み重ねると、図14から分かるように、互いに隣接する上下の螺旋流案内部材において、下側に位置する螺旋流案内部材12の段尻部側の部位に形成された段差部127を上側に隣接する螺旋流案内部材12の段鼻部側の部位の下面の凹部129に収納することができ、心柱11を中心にして螺旋流案内部材12を螺旋状に配列することができる。
図14に示すように、螺旋流案内部材の段鼻部側の部位の段尻部側の縁128´を螺旋流案内部材の段鼻部側の部位の段鼻部側の縁の厚さ分だけ段差部127の段鼻部側の縁の高さよりも高くすると、螺旋流案内路10を構築したときに、縁128´が突出しないようにすることができる。
【0063】
この実施形態の螺旋流案内路10では、互いに上下に隣接する螺旋流案内部材の下側に位置する螺旋流案内部材12の段尻部側の部位に形成した段差部127が上側に位置する螺旋流案内部材12の段鼻部の部位の下面(裏面)に形成した凹部129に収納されて、該段差部127の上面および段尻部側の側面が上側に位置する螺旋流案内部材に支持され、且つ該凹部の突部129´が該段差部の溝127´に嵌合した状態で、螺旋流案内部材が積み上げられ、また、各螺旋流案内部材12は、心柱11によっても支持され、そして、外周部がマンホール1の内壁に近接または接触しているから、マンホール内に堅固に安定して立設することができる。
このようにして螺旋流案内部材を積み上げて螺旋流案内路を形成するものであるから、この実施態様の螺旋流案内路は、構造が複雑でなく、マンホール内において螺旋流案内路を構築することが容易に行え、また、大掛かりな重機を使用することなしに構築することができる。
【0064】
この実施形態の螺旋流案内路が設置されたマンホール1でも、マンホール上部の流入口(流入配管5)から流入する流入水は、螺旋流案内路10の螺旋流案内部材12に案内されて、螺旋流案内部材の段鼻部側の部位128を螺旋状に流下して水勢が減衰され、マンホール下部の流出口(流出配管6)から排出される。また、螺旋流案内路10は、螺旋流案内部材の段鼻部側の傾斜部が連続した面を形成しているが、傾斜部の段鼻部側の傾きを緩やかにすると、作業員の昇降用として使用することができ、マンホール内の点検作業や保守管理作業を容易に行うことができる。
【0065】
この実施形態では、螺旋流案内部材12として、図12に示すように、段鼻部側の部位が下方向に傾斜しているものを使用したが、これに限らず、段差部127よりも低い平面部を有するものを使用することができる。例えば、図9に示すように、螺旋流案内部材の段鼻側の部位が段差部127よりも低い平面状の上面を有するものでもよい。また、図15に示すような、螺旋流案内部材の段鼻部側の部位128が外側端部寄りの部位で傾斜面を有しているが、それ以外の部位では段差部127よりも低い平面部を有するものでもよい。このような螺旋流案内部材から構築される螺旋流案内路10(不図示)では、階段状に連なった部位では、流入水は段差流れして、勢いを減衰させながら下方向に流れることになる。
【0066】
図12図15に示す螺旋流案内部材を使用して螺旋流案内路10を組み立てる手順は、図9に示した螺旋流案内路の場合とおおむね同様である。
【0067】
図16には、段差部127を有する螺旋流案内部材12について、異なる実施形態のものを示した。
この螺旋流案内部材12では、外側端部に断面が半円状の雨樋状部材17が設けられており、段尻部から段鼻部に向かうにしたがって下向きに傾斜している。
雨樋状部材17の段尻部側の端面は、上側に隣接する螺旋流案内部材12の段鼻部側の雨樋状部材17の端面と密接し、また雨樋状部材17の段鼻部側の端面は下側に隣接する螺旋流案内部材の段尻部側の雨樋状部材17の端面に密接して流入水が漏れないように、それぞれ形成されている。そして、この螺旋流案内部材12は、心柱11に心柱挿入用孔123を介して配置された時、雨樋状部材17の外周がマンホールの内壁と近接または接触する寸法になっている。
【0068】
したがって、螺旋流案内部材12、12・・・が螺旋状に積み上げられた後には、図17に示すように、螺旋流案内路10の外周部には螺旋状に連続する傾斜路が形成される。
マンホール1の上部から流入した流入水は、螺旋流案内路10および雨樋状部材17で形成される傾斜路に沿って螺旋状に流れることになる。
1段目の螺旋流案内部材の雨樋状部材17の下端部を流出配管6に向けておけばよい。傾斜路を流下する流入水は傾斜した方向に流れ、流出配管6に至るから、マンホール壁やマンホールの底部に与える衝撃を小さくすることができる。
雨樋状部材17は、本明細書で示した他の螺旋流案内部材にも設けることが可能である。
【0069】
段差部127を有する螺旋流案内部材やさらには雨樋状部材17を有する螺旋流案内部材12は、強度が十分であり、耐食性のある材料、例えば、アルミなどの金属で製造することができるが、発泡体16で製造することができる(図7参照)。また、心柱挿入用孔123の周壁を除く螺旋流案内部材本体の上面部を板状体とし、この板状体縁部の裏面にリブ材を板状体と一体的に設けて、板状部の厚さとリブ材の高さとで螺旋流案内部材としての高さを形成することもできる。
【0070】
また、図8に示した螺旋流案内部材と同様に、図9図16に示される段差部127を有する螺旋流案内部材12も、段鼻部側の部位において、上面を1〜5°程度傾斜させて段尻部側から段鼻部側に向かって厚みを徐々に薄くする螺旋流案内部材12を使用することもできる。この程度であれば、作業員等の昇降にも支障はない。
【0071】
以上の段差部127を有する螺旋流案内部材で構築される螺旋流案内路においても、心柱11は中空であるので、最上端から流入水が浸入しないように、心柱の最上端には心柱の内壁に螺合するなどして蓋体(図示せず)を取り付けて塞ぐことができる。また、蓋体にはフランジ部を形成して、最上段に配置される螺旋流案内部材の心柱挿入用孔123の周壁の上端面を覆うことにより、螺旋流案内部材12が心柱11から離脱することを防ぐことができる。
【0072】
螺旋流案内部材12の段数が増えるにしたがって、心柱11も高くなるが、図2〜5に示した螺旋流案内部材から構成される螺旋流案内路の場合と同様に、前述したように、心柱を一体ものではなく、分割型のものにして対応することができる。
【0073】
心柱11は、図2〜5に示した螺旋流案内部材から構成される螺旋流案内路の場合と同様に、鋼材やアルミニウム合金材などを使用することもできるが、一層の軽量化を図るために、合成樹脂製のものを使用するのが望ましく、繊維強化プラスチック材(FRP)が強度的にも適している。
また、心柱11は、図2〜5に示した螺旋流案内部材から構成される螺旋流案内路の場合と同様に、ここでも分割型とすることもできる。
【0074】
本発明では、螺旋流案内部材をその外側端部122の外周側部がマンホールの内壁に近接または接触する寸法を有するように製造して、螺旋流案内路を構築することができるから、径の大きな螺旋流案内路を容易に製造することができる。
【0075】
以上の本発明の実施形態を、縦管がマンホールである場合について説明したが、縦管がマンホールではなく、例えば合成樹脂製の縦管や鋼鉄製の縦管に螺旋流案内路を構築して、落下する流入水の水勢を低減する縦管とする場合にも本発明を適用することができる。特許文献1に記載された発明と同様に、螺旋流案内路を構築した合成樹脂製の縦管をマンホール内に設置して、マンホールの上部からの流入水の水勢を低減することも可能である。
【0076】
本発明における螺旋流案内路は縦管としてのマンホールの中で作業することにより設置することが可能であり、既設のマンホールにも流入水の案内流路を容易に設置できるものである。したがって、この場合は、マンホールを新設しないで、既存のマンホールに螺旋流案内路を設置できるから、螺旋流案内路を備えたマンホールを低コストで製造することができる。
【符号の説明】
【0077】
1:マンホール
2:マンホール躯体
3:マンホール蓋
4:マンホールの底版
5:流入配管
6:流出配管
7:インバート
8:ステップ
10:螺旋流案内路
11:心柱
12:螺旋流案内部材
121:(螺旋流案内部材の)内側端部
122:(螺旋流案内部材の)外側端部
123:心柱挿入用孔
124:ボルト挿入用孔
125:(螺旋流案内部材の)段鼻部
126:(螺旋流案内部材の)段尻部
127:螺旋流案内部材の段尻部側の部位に形成された段差部
127´:段差部127に形成された溝
128:螺旋流案内部材の段鼻部側の部位
128´:部位128の段尻部側の縁
129:螺旋流案内部材の段鼻部側部位の下面(裏面)に形成された凹部
129´:凹部129に形成された突部
13:ボルト
14:ナット
15:心柱立設用芯体
16:発泡体
161:発泡芯材
162:外皮
17:雨樋状部材
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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図17