(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書に添付した図面は、いずれも模式図であり、理解しやすさ等を考慮して、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更又は誇張している。また、図面においては、部材の断面を示すハッチングを適宜に省略する。
本明細書等において、形状、幾何学的条件、これらの程度を特定する用語、例えば「平行」、「方向」等の用語については、その用語の厳密な意味に加えて、ほぼ平行とみなせる程度の範囲、概ねその方向とみなせる範囲を含む。
【0015】
本明細書等においては、後述する回転軸35の回転中心となる線を「回転軸線S」と呼称し、この回転軸線Sに沿う方向を「回転軸方向」ともいう。なお、「回転軸線S」、「回転軸方向」は、回転子を構成する各部、例えば、後述するスリーブ、永久磁石、被覆筒等にも適用される。本明細書等においては、上述した回転軸線Sと平行な方向をX方向とし、回転軸方向を適宜に「回転軸方向X」ともいう。
【0016】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態の回転子30を備えた、回転電機としての電動機1について説明する。本実施形態で説明する電動機1の構成は、後述する他の実施形態に共通する。
図1は、第1本実施形態における電動機1の構成を示す断面図である。なお、
図1に示す電動機1の構成は一例であり、第1実施形態の回転子30を適用可能であれば、どのような構成であってもよい。
【0017】
図1に示すように、電動機1は、主な構成要件として、フレーム10と、固定子20と、回転子30と、回転軸35と、を備える。
フレーム10は、電動機1の外装部材であり、フレーム本体11と、軸穴12と、を備える。
【0018】
フレーム本体11は、固定子20を包囲すると共に保持する筐体である。フレーム本体11は、軸受13を介して回転子30を保持する。フレーム本体11は、供給口14、排出口15及び孔部16を備える。供給口14は、固定子枠22の流路23に冷媒を供給するための開口であり、冷媒の供給配管(不図示)に接続されている。排出口15は、流路23を流通した冷媒を排出させるための開口であり、冷媒の排出配管(不図示)に接続されている。孔部16は、固定子20から引き出された動力線27(後述)を貫通させるための開口である。
軸穴12は、回転軸35(後述)が貫通する穴である。
【0019】
固定子20は、回転子30を回転させるための回転磁界を形成する複合部材である。固定子20は、全体として円筒形に形成され、フレーム10の内部に固定されている。固定子20は、鉄心21と、固定子枠22と、を備える。
【0020】
鉄心21は、内側に巻線26を配置可能な部材である。鉄心21は、円筒形に形成され、固定子枠22の内側に配置されている。鉄心21は、内側面に複数の溝(不図示)が形成され、この溝に巻線26が配置される。なお、巻線26の一部は、鉄心21の軸方向において、鉄心21の両端部から突出している。鉄心21は、例えば、電磁鋼板等の薄板を複数枚重ねて積層体とし、この積層体を接着、かしめ等で一体化することにより作製される。
【0021】
固定子枠22は、その内側に、鉄心21を保持する部材である。固定子枠22は、円筒形に形成され、固定子20の外側に配置されている。鉄心21は、回転子30のトルクにより生じる反力を受け止めるために、固定子枠22と強固に接合されている。
図1に示すように、本実施形態の固定子枠22は、外側面に、鉄心21から伝わる熱を冷却するための流路23を備える。流路23は、固定子枠22の外側面に形成された一条又は多条の螺旋溝である。フレーム本体11(フレーム10)の供給口14から供給された冷媒(不図示)は、固定子枠22の外側面を螺旋状に沿うように流路23内を流通した後、フレーム本体11の排出口15から外部に排出される。
【0022】
固定子20の鉄心21からは、巻線26と電気的に接続された動力線27が引き出されている。この動力線27は、電動機1の外部に設置された電源装置に接続される(不図示)。電動機1の動作時に、例えば、鉄心21に三相交流電流が供給されることにより、回転子30を回転させるための回転磁界が形成される。
【0023】
回転子30は、固定子20により形成される回転磁界との磁気的な相互作用により回転する部品である。回転子30は、固定子20の内周側に設けられる。回転子30の構成については、後述する。
【0024】
回転軸35は、回転子30を支持する部材である。回転軸35は、回転子30の軸中心を貫通するように挿入され、回転子30に固定される。回転軸35には、一対の軸受13が取り付けられている。軸受13は、回転軸35を回転自在に支持する部材であり、フレーム10に設けられる。回転軸35は、フレーム11及び軸受13により、回転軸線Sを中心として回転自在に支持されている。回転軸35は、軸穴12を貫通し、例えば、切削工具、外部に設置された動力伝達機構、減速機構等(いずれも不図示)に接続される。
【0025】
図1に示す電動機1において、固定子20(鉄心21)に三相交流電流を供給すると、回転磁界が形成された固定子20と回転子30との間の磁気的な相互作用により回転子30に回転力が発生し、その回転力が回転軸35を介して外部に出力される。
【0026】
次に、回転子30の構成について説明する。
図2は、回転子30の分解斜視図である。
図3は、永久磁石32が配置された回転子30を示す側面図である。
図4は、被覆筒33が装着された回転子30を示す側面図である。
図3及び
図4は、いずれも回転子30が回転軸35(
図1参照)に嵌合される前の状態を示している。
【0027】
図2に示すように、回転子30は、スリーブ(回転部材)31と、永久磁石32と、被覆筒33と、を備える。
スリーブ31は、複数の永久磁石32が取り付けられる略円筒形状の部材であり、回転軸35の外周側に設けられている。スリーブ31は、例えば、炭素鋼等の磁性材料により形成される。内周側にスリーブ31を有する回転子30は、回転軸35の外周に、締まり嵌めにより嵌合される。
【0028】
永久磁石32は、磁界を発生する部材であり、
図2に示すように、スリーブ31の外周側において、周方向に沿って6列設けられている(
図2では、手前側の4列を図示)。回転子30は、スリーブ31の周方向において、N極用の永久磁石32からなる列とS極用の永久磁石32からなる列とが交互に配置されている。永久磁石32は、スリーブ31の外周面に、接着層(不図示)を介して貼り付けられている。
【0029】
各列の永久磁石32は、
図3に示すように、スリーブ31の回転軸方向Xに沿って3分割されている。3割された永久磁石32の回転軸方向Xの長さLM1,LM2,LM3は、それぞれ均等(LM1=LM2=LM3)であるが、それぞれ異なっていてもよい。以下の説明において、1つの永久磁石32の回転軸方向Xの長さを「LM」ともいう。
【0030】
また、各列の永久磁石32は、スリーブ31の回転軸方向Xに対して斜め方向(以下、「配列方向S1」ともいう)に配列されている。各列において、配列方向S1に隣接する永久磁石32は、周方向にずれて配置されている。すなわち、各永久磁石32は、スリーブ31の回転軸方向Xに対しては配列方向S1に沿って配列され、周方向においては、回転軸方向Xと直交する方向に沿って平行にずれて配置されている。このように、永久磁石32をスキュー配置した場合、各列には、
図3に示すように、配列方向S1に沿って角部321が階段状に突出する。
【0031】
被覆筒33は、複数の永久磁石32を被覆するための円筒形状の部材である。被覆筒33は、
図4に示すように、スリーブ31に配置された永久磁石32の外周面に装着される。本実施形態の被覆筒33は、回転子30の回転軸方向Xに沿って3分割されている。永久磁石32の外周面に被覆筒33を装着すると、回転子30の回転によって生じる遠心力により、永久磁石32が回転子30から脱落することを抑制できる。本実施形態では、永久磁石32の外周面に直接、被覆筒33を装着しているが、被覆筒33は、永久磁石32の外周面に、例えば、接着層等を介して装着してもよい。
【0032】
被覆筒33は、例えば、CFRP用の繊維シートを、樹脂と共に筒状の治具(不図示)に巻き付けることにより成形することができる。なお、被覆筒33を形成する素材としては、CFRPのほかに、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、チタン合金繊維等の比強度の高い材料を含む繊維強化プラスチックを用いることができる。上述のように成形された被覆筒33を、回転軸方向Xにおいて所定の長さで切断することにより、後述する複数の被覆筒部を得ることができる。
【0033】
被覆筒33は、専用の治具(不図示)により圧力をかけた状態で回転子30に挿入され、締め代に応じた収縮力により回転子30に装着される。それにより、被覆筒33には、回転子30が回転する際に生じる遠心力に抗して、永久磁石32を保持するのに十分な反力(以下、「収縮力」ともいう)が半径方向の内側に向かって作用する。このように、被覆筒33において、半径方向の内側に向かって収縮力が作用することにより、遠心力により永久磁石32が回転子30から脱落することが抑制される。半径方向の内側とは、回転子30の外側から回転軸線Sに接近する方向である。
【0034】
なお、締め代とは、
図2に示すように、装着される前の被覆筒33の内径D1に対して、スリーブ31に配置された永久磁石32の外径D2がオーバーする分(D2−D1)の寸法である。この締め代が大きいほど、被覆筒33を永久磁石32の外周面に装着することが難しくなる一方、装着した被覆筒33から、より大きな収縮力を半径方向の内側に向かって作用させることができる。
【0035】
第1実施形態の被覆筒33は、
図4に示すように、回転子30の回転軸方向Xに沿って3分割されている。ここでは、3分割された被覆筒33の各々を、被覆筒部33a,33b,33cとして説明する。また、以下の説明においては、被覆筒部33a〜33cの符号を省略して、単に「被覆筒部」ともいう。
【0036】
図4に示すように、本実施形態において、各被覆筒部の回転軸方向Xの長さL1、L2、L3は、それぞれ均等(L1=L2=L3)に形成されている。また、各被覆筒部の長さL1〜L3は、分割された永久磁石32の回転軸方向Xの長さLM1,LM2,LM3(
図3参照)と同じ長さに設定されている。そのため、本実施形態において、1つの被覆筒部は、回転軸方向Xにおいて同じ位置にあり、且つ、周方向に沿って配置された複数の永久磁石32を被覆する。
【0037】
各被覆筒部を、例えば、被覆筒部33b,33a,33cの順に回転子30に装着することにより、被覆筒部が永久磁石32の外周面上を移動する距離を、被覆筒33全体として短くできる。例えば、被覆筒部33bを回転軸方向Xの右側から挿入した場合、被覆筒部33bの内周面は、回転子30の中央の位置に達するまでの間、2つの永久磁石32の角部321により長さLM×2の分だけ削られる。また、被覆筒部33aを回転軸方向Xの左側から挿入した場合、被覆筒部33aの内周面は、回転子30の左端の位置に達するまでの間、1つ永久磁石32の角部321により長さLMの分だけ削られる。更に、被覆筒部33
cを回転軸方向Xの右側から挿入した場合、被覆筒部33
cの内周面は、回転子30の右端の位置に達するまでの間、1つ永久磁石32の角部321により長さLMの分だけ削られる。そのため、被覆筒33の内周面において、永久磁石32の角部321により削られる長さは、合計でLM×4となる。
【0038】
一方、LM1+LM2+LM3の長さを有する長寸の被覆筒を、回転軸方向Xの右側から挿入した場合、被覆筒の被覆筒部33aに相当する範囲の内周面は、回転子30の左端の位置に達するまでの間、3つの永久磁石32の角部321により長さLM×3の分だけ削られる。また、被覆筒の被覆筒部33bに相当する範囲の内周面は、回転子30の中央の位置に達するまでの間、2つの永久磁石32の角部321により長さLM×2の分だけ削られる。更に、被覆筒の被覆筒部33
cに相当する範囲の内周面は、回転子30の右端の位置に達するまでの間、1つの永久磁石32の角部321により長さLMの分だけ削られる。そのため、長寸の被覆筒の内周面において、永久磁石32の角部321により削られる長さは、合計でLM×6となる。
【0039】
したがって、本実施形態の分割された被覆筒33(被覆筒部33a,33b,33c)においては、挿入時に永久磁石32の角部321により内周面が削られる長さを、LM1+LM2+LM3の長さを有する長寸の被覆筒に比べて2/3に低減できる。
【0040】
以上説明したように、第1実施形態の回転子30によれば、被覆筒33が複数の被覆筒部に分割されているため、スキュー配置された複数の永久磁石32の外周面に被覆筒部を装着した際に、被覆筒33全体として、永久磁石32の角部321により被覆筒部の内周面が削られる長さを低減できる。そのため、第1実施形態の回転子30においては、被覆筒33の強度が低下することを抑制できる。また、分割された被覆筒部において、回転子30の外周面と内周面との間に生じる摩擦力は、長寸の被覆筒を回転子30に挿入する場合に比べて小さくなるため、被覆筒部をより少ない力で回転子30に挿入できる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態における被覆筒33の構成について説明する。
図5Aは、第2実施形態における被覆筒部33aの第1の構成を示す断面図である。
図5A及び後述する
図5B、
図5Cは、被覆筒部33aの回転軸線Sに沿った断面を示している。なお、第2実施形態では、被覆筒部の構成として、被覆筒部33aを例として説明するが、本実施形態の構成は、被覆筒部33b,33cにも適用できる。
【0042】
図5Aに示すように、第1の構成の被覆筒部33aは、X方向の一方の側における内周面の端部にテーパー部T1を有する。テーパー部T1は、X方向の一方の側における内周面の端部において、被覆筒部33aの周方向に沿って設けられている。第1の構成の被覆筒部33aにおいて、テーパー部T1が設けられた側は、被覆筒部33aを回転子30(
図4参照)に装着する際の進行(挿入)方向となる。
【0043】
上述した第1の構成の被覆筒部33aによれば、被覆筒部33aを回転子30に挿入した際に、テーパー部T1が永久磁石32の角部321に対して斜めに接触するため、永久磁石32の角部321により被覆筒部33aの内周面が削られることを抑制できる。また、被覆筒部33aを回転子30に挿入した際に、被覆筒部33aのX
方向の一方の側の端部は、テーパー部T1により徐々に拡径されるため、被覆筒部33aを回転子30に挿入する際の抵抗を小さくできる。
【0044】
図5Bは、第2実施形態における被覆筒部33aの第2の構成を示す断面図である。
図5Bに示すように、第2の構成の被覆筒部33aは、X方向の一方の側における内周面の端部から、他方の側における内周面の端部までの間にテーパー部T2を有する。テーパー部T2は、X方向の一方の側における内周面の端部から、他方の側における内周面の端部までの間において、周方向に沿って設けられている。第2の構成の被覆筒部33aにおいて、テーパー部T2の内径が最大となる側は、被覆筒部33aを回転子30(
図4参照)に装着する際の進行(挿入)方向となる。
【0045】
上述した第2の構成の被覆筒部33aによれば、被覆筒部33aを回転子30に挿入した際に、テーパー部T2が永久磁石32の角部321に対して斜めに接触するため、永久磁石32の角部321により被覆筒部33aの内周面が削られることを抑制できる。また、第2の構成の被覆筒部33aにおいて、テーパー部T2の勾配比は、第1の構成のテーパー部T1よりも緩やかなため、被覆筒部33aを回転子30に挿入する際の抵抗をより小さくできる。
【0046】
図5Cは、第2実施形態における被覆筒部33aの第3の構成を示す断面図である。
図5Cに示すように、第3の構成の被覆筒部33aは、X方向の一方の端部から他方の端部に向けて徐々に内径が大きくなると共に外径も大きくなるように、構成されている。第3の構成の被覆筒部33aにおいて、X方向の一方の端部から他方の端部までの間には、テーパー部T3が形成されている。テーパー部T3は、X方向の一方の側における内周面の端部から、他方の側における内周面の端部までの間において、周方向に沿って設けられている。被覆筒部33aにおいて、テーパー部T3は、X方向の一方の端部から他方の端部にかけて厚さが均等となるように形成されている。なお、第3の構成の被覆筒部33aにおいて、テーパー部T3の内径が最大となる側は、被覆筒部33aを回転子30(
図2参照)に装着する際の進行(挿入)方向となる。
【0047】
上述した第3の構成の被覆筒部33aにおいても、第2の構成の被覆筒部33aと同じ効果が得られる。また、第3の構成の被覆筒部33aにおいては、テーパー部T3となる被覆筒部33aの厚さが、X方向の一方の端部から他方の端部まで同じであるため、回転子30の回転軸方向Xに沿って、永久磁石32をより均一な収縮力で保持させることができる。
【0048】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の回転子30Aの構成について説明する。
図6は、第3実施形態の永久磁石32が配置された回転子30Aを示す側面図である。
図7は、被覆筒33が装着された回転子30Aを示す側面図である。
図6及び
図7は、いずれも回転子30Aが回転軸35(
図1参照)に嵌合される前の状態を示している。なお、以下の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜に省略する。
【0049】
第3実施形態の回転子30Aにおいて、各列の永久磁石32は、
図6に示すように、スリーブ31の回転軸方向Xに沿って3分割されている。また、各列の永久磁石32は、スリーブ31の回転軸方向Xに対して配列方向S1に沿って配列されている。各列において、配列方向S1に隣接する永久磁石32は、回転軸方向Xと略直交する方向S2に沿って平行にずれて配置されている。すなわち、各永久磁石32は、スリーブ31の回転軸方向Xに対しては配列方向S1に沿って配列され、周方向においては、回転軸方向Xと略直交する方向S2に沿って平行にずれて配置されている。このように、本実施形態の構成においても、スキュー配置された各列の永久磁石32には、
図6に示すように、配列方向S1に沿って角部321が階段状に突出する。
【0050】
第3実施形態の回転子30Aにおいて、被覆筒33は、
図7に示すように、第1実施形態と同じく回転軸方向Xに沿って3分割されている。被覆筒33となる被覆筒部33a〜33cの構成は、第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0051】
第3実施形態の回転子30Aにおいて、スキュー配置された各列の永久磁石32には、配列方向S1に沿って角部321が階段状に突出している。しかし、本実施形態においても、被覆筒33は、複数に分割されているので、永久磁石32の角部321により被覆筒部の内周面が削られる長さを低減できる。そのため、第3実施形態の回転子30Aにおいては、永久磁石32の角部321により被覆筒33の強度が低下することを抑制できる。また、分割された被覆筒部において、回転子30Aの外周面と内周面との間に生じる摩擦力は、長寸の被覆筒を回転子30Aに挿入する場合に比べて小さくなるため、被覆筒部をより少ない力で挿入できる。
【0052】
なお、第3実施形態の回転子30Aには、被覆筒部33a〜33cの構成として、第2実施形態の構成(
図5A、
図5B、
図5C参照)を適用できる。また、第3実施形態の回転子30Aにおいて、配列方向S1に隣接する永久磁石32の短辺は、回転軸方向Xと略直交する方向と平行となるように構成されているが、これに制限されない。配列方向S1に隣接する永久磁石32の短辺を、配列方向S1と略直交する方向と平行となるように構成してもよい。
【0053】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態の回転子
30Bの構成について説明する。
図8は、第4実施形態の永久磁石32が配置された回転子30Bを示す側面図である。
図9は、被覆筒33が装着された回転子30Bを示す側面図である。
図8及び
図9は、いずれも回転子30
Bが回転軸35(
図1参照)に嵌合される前の状態を示している。なお、以下の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜に省略する。
【0054】
第4実施形態の回転子30Bにおいて、各列の永久磁石32は、
図8に示すように、スリーブ31の回転軸方向Xに沿って3分割されている。また、各列の永久磁石32は、スリーブ31の回転軸方向Xに対して配列方向S1に沿って配列されている。各列において、配列方向S1に隣接する永久磁石32は、回転軸方向Xと略直交する方向S2に沿って平行にずれて配置されている。本実施形態において、配列方向S1に隣接する永久磁石32は、長辺同士が連続するように配置されている。
すなわち、各永久磁石32は、スリーブ31の回転軸方向Xに対しては配列方向S1に沿って配列され、周方向においては、回転軸方向Xと略直交する方向S2に沿って平行に且つ長辺同士が連続するように配置されている。
【0055】
第4実施形態の回転子30Bにおいて、被覆筒33は、
図9に示すように、第1実施形態と同じく回転軸方向Xに沿って3分割されている。被覆筒33となる被覆筒部33a〜33cの構成は、第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0056】
第4実施形態の回転子30Bにおいて、各列の永久磁石32を
図8に示すようにスキュー配置した際に、1又は複数の永久磁石32の位置が周方向にずれてしまう場合がある。その場合、回転子30Bには、配列方向S1に沿って角部321(
図6参照)が1つ又は複数突出するため、被覆筒部を挿入すると、被覆筒部の内周面は、突出した角部321により削られることになる。しかし、
図9に示すように、被覆筒33を3分割することにより、永久磁石32に生じた角部321により被覆筒部の内周面が削られる長さを低減できるため、被覆筒33の強度が低下することを抑制できる。
【0057】
(第5実施形態)
図10は、第5実施形態における被覆筒33Cの構成を示す断面図である。
図10は、回転子30Cの回転軸線Sに沿った断面を示している。
第5実施形態の説明及び図面において、第1実施形態と同等の部材等には、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を適宜に省略する。
【0058】
図10に示すように、第5実施形態の回転子30Cにおいて、永久磁石32は、回転軸方向Xに沿って3分割されている。また、被覆筒33Cは、回転子30の回転軸方向Xに沿って3分割されている。第5実施形態の回転子30Cにおいて、永久磁石32と被覆筒33の分割数は、第1実施形態と同じである。
【0059】
第5実施形態の回転子30Cにおいて、回転軸方向Xの両端に配置された被覆筒部33a,33cの端部は、永久磁石32よりも外側に突出している。回転軸方向Xにおいて、被覆筒部33a,33cの端部が永久磁石32よりも外側に突出する長さL10は、回転子30Cの大きさにもよるが、例えば、1〜10mm程度とすることが好ましい。ちなみに、長さL10を大きくし過ぎると、風圧により被覆筒部33a,33cの端部がバタつきやすくなるため、被覆筒部を構成するCFRPの剥離が進行する場合がある。
【0060】
第5実施形態の回転子30Cによれば、被覆筒部33a,33cの端部が永久磁石32よりも外側に突出しているため、回転軸方向Xの両端に配置された永久磁石32の外側の端部に反りが生じていても、永久磁石32をより確実にスリーブ31に密着させることができる。これによれば、永久磁石32とスリーブ31との接触面積を確保できるので、両者間の摩擦力を増やすことができる。したがって、第5実施形態の構成によれば、回転子30Cの回転中において、慣性力により永久磁石32が周方向にずれることをより効果的に抑制できる。
また、第5実施形態の構成によれば、永久磁石32が回転子30Cの外側に露出しないため、回転子30Cの回転により生じる遠心力により、永久磁石312が半径方向の外側へ脱落することを抑制できる。
【0061】
なお、第5実施形態の回転子30Cには、被覆筒部33a〜33cの構成として、第2実施形態の構成(
図5A、
図5B、
図5C参照)を適用できる。また、第5実施形態の回転子30Cには、永久磁石32の構成として、例えば、第3実施形態の構成(
図6参照)を適用できる。
【0062】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態における被覆筒33の構成について説明する。
図11Aは、第6実施形態の永久磁石32が配置された回転子30Dの第1の構成を示す側面図である。
図11Bは、第6実施形態の永久磁石32が配置された回転子30Dの第2の構成を示す側面図である。
図11A及び
図11Bは、いずれも回転子30Dが回転軸35(
図1参照)に嵌合される前の状態を示している。以下の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜に省略する。また、
図11A及び
図11Bでは、本実施形態の説明に不要な回転軸線S、配列方向S1等の図示を省略する。
第6実施形態では、永久磁石32の配置として、第1実施形態(
図3参照)を例として説明するが、永久磁石32の配置は、例えば、第3実施形態(
図6参照)と同じであってもよい。
【0063】
図11Aに示すように、第6実施形態の第1の構成の回転子30Dにおいて、永久磁石32は、被覆筒部(例えば、
図1に示す被覆筒部33a〜33c)を永久磁石32の外周側に装着する際に進行方向となる側の一つの角に、テーパー部T4を備えている。
図11Aでは、回転子30Dにおいて、回転軸方向Xの左側から右側へ向かう方向が被覆筒部の進行方向となる例を示している。テーパー部T4は、その部分に設けられた角部321が直線的に面取された形状を有する。なお、回転子30Dにおいて、回転軸方向Xの右側から左側へ向かう方向が被覆筒部の進行方向となる場合、各永久磁石32において、
図11Aに示す位置とは反対側(対角線上の反対側)の角にテーパー部T4が設けられる。
【0064】
第6実施形態の第1の構成によれば、被覆筒部(被覆筒33)を回転子30Dに挿入した際、永久磁石32のテーパー部T4が被覆筒部の内周面に対して斜めに接触するため、永久磁石32の角部321により被覆筒部の内周面が削られることを抑制できる。なお、
図11Aに示す回転子30Dにおいて、各永久磁石32の4隅にテーパー部T4を備えた構成としてもよい。
【0065】
図11Bに示すように、第6実施形態の第2の構成の回転子30Dにおいて、永久磁石32は、被覆筒部(例えば、
図1に示す被覆筒部33a〜33c)を永久磁石32の外周側に装着する際に進行方向となる側の辺及びこれと反対側の辺に、それぞれテーパー部T5を備えている。
【0066】
第6実施形態の第2の構成によれば、被覆筒部(被覆筒33)を回転子30Dに挿入した際、永久磁石32のテーパー部T5が被覆筒部の内周面に対して斜めに接触するため、永久磁石32の角部321により被覆筒部の内周面が削られることを抑制できる。
【0067】
また、第6実施形態の第2の構成によれば、回転子30Dに対して、被覆筒部を回転軸方向Xのどちらの方向からも挿入することができるため、スリーブ31に対して永久磁石32を配置する方向を考慮する必要がない。したがって、第6実施形態の第2の構成によれば、回転子30Dの生産性を向上させることができる。なお、
図11Bに示す回転子30Dにおいて、永久磁石32の四辺にテーパー部T5を備えた構成としてもよい。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、後述する変形形態のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内に含まれる。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、実施形態に記載したものに限定されない。なお、上述の実施形態及び後述する変形形態は、適宜に組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0069】
(変形形態)
図12は、変形形態の永久磁石32が配置された回転子30Eの構成を示す側面図である。
図12は、回転子30Eが回転軸35(
図1参照)に嵌合される前の状態を示している。以下の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜に省略する。
【0070】
本変形形態の回転子30Eにおいて、各列の永久磁石32は、
図12に示すように、スリーブ31の回転軸方向Xに沿って3分割されている。また、各列の永久磁石32は、スリーブ31の回転軸方向Xに対して配列方向S1に沿って配列されている。各列において、配列方向S1に隣接する永久磁石32は、回転軸方向Xと略直交する方向S2に沿って交互に平行にずれて配置されている。このように、本変形形態において、各永久磁石32は、スリーブ31の回転軸方向Xに対しては配列方向S1に沿って配列され、周方向においては、
回転軸方向Xと略直交する方向S2に沿って交互に平行にずれて配置されている。そのため、本変形形態において、各永久磁石32は、部分的にスキュー配置された構成となる。したがって、各列の永久磁石32には、
図12に示すように、配列方向S1に沿って角部321が階段状に突出する。
【0071】
本変形形態においても、部分的にスキュー配置された各列の永久磁石32には、配列方向S1に沿って角部321が階段状に突出する。しかし、被覆筒33は、例えば、
図4等に示すように、複数に分割されているので、永久磁石32の角部321により被覆筒部の内周面が削られる長さを低減できる。そのため、本変形形態の回転子30Eにおいても、永久磁石32の角部321により被覆筒33の強度が低下することを抑制できる。また、分割された被覆筒部において、回転子30Eの外周面と内周面との間に生じる摩擦力は、長寸の被覆筒を回転子30Eに挿入する場合に比べて小さくなるため、被覆筒部をより少ない力で挿入できる。
なお、本変形形態の回転子30Eには、被覆筒部33a〜33cの構成として、第2実施形態の構成(
図5A、
図5B、
図5C参照)を適用できる。
【0072】
実施形態では、回転軸方向Xにおいて同じ位置にあり、且つ、周方向に沿って配置された複数の永久磁石32を、1つの被覆筒部で被覆する例について示したが、これに限定されない。回転軸方向Xにおいて同じ位置にあり、且つ、周方向に沿って配置された複数の永久磁石32を、2つ又は3つ以上の被覆筒部で被覆する構成としてもよい。
実施形態では、各列の永久磁石32を、回転軸方向Xに沿って3分割する例を示したが、これに限定されない。永久磁石32は、回転子30の回転軸方向Xに沿って2分割されていてもよいし、4分割又は5分割以上の分割数で分割されていてもよい。
【0073】
実施形態では、回転子30を構成する回転部材として、スリーブ31を例として説明したが、これに限定されない。回転軸35の外周側にスリーブ31を介さずに永久磁石32を配置する構成において、回転部材は、回転軸35であってもよい。
実施形態では、被覆筒33を炭素繊維強化プラスチック(CFRP)により形成した例について説明したが、これに限定されない。被覆筒33は、先に例示した繊維強化プラスチック(FRP)により形成してもよいし、繊維強化プラスチックを主材とする複合部材により形成してもよい。