(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記模様体設置工程では、樹脂材からなるバネ材である樹脂バネを設置するとともに、前記基体樹脂注入工程では、当該樹脂バネの反発力で前記模様体ピースを前記一対の型のいずれかに押圧しつつ前記基体樹脂を注入すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の板状樹脂成形体の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、キッチンや家具等の天板として、俗に人工大理石と呼ばれる板状樹脂成形体が用いられている。このような板状樹脂成形体は、一般的には、水酸化アルミニウム等の無機充填剤を配合した液状のアクリル系樹脂、又はポリエステル系樹脂やエポキシ樹脂等を型内に注入し、押圧熱硬化させることで製造している。
【0003】
このような板状樹脂成形体に模様を付ける技術として、本願出願人が出願した特許文献1には、複数のインサート体11を下型体の上面に配置するとともにそのインサート体11上に押さえ部材14を配置し、下型体32に対向する上型体を互いに近接させることにより押さえ部材14を介してインサート体11を押圧しつつ、熱硬化性樹脂からなる基材12を下型体と上型体の間隙へ注入し、その後押さえ部材14が弾性変形するまで下型体及び/又は上型体により押圧する樹脂成形品の製造方法が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0038]〜[0050]、図面の
図5等参照)。
【0004】
また、特許文献2には、部分模様を形成する複数の模様体92を表出させるインサート体11を下型体52上に載置するとともに、インサート体11が下型体52上で動くことを防止するとともに内部へ通じる空隙が予め形成された押さえ部材14を当該インサート体11に当接させ、型体51、52を互いに近接させることによりインサート体11に当接させた押さえ部材14を押圧し、押圧した押さえ部材14の空隙を通じて内部へ樹脂を浸入させ、その後当該樹脂を硬化させる樹脂成形体の製造方法が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0047]〜[0061]、図面の
図5等参照)。
【0005】
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載の樹脂成形体の製造方法は、樹脂成形体に独立した部分模様を付けるための製造方法であり、同種の模様が近接して繰り返す模様や、横方向に長い一続きの模様のような1つの模様体ピースだけでは表現できない広範囲の連続模様を樹脂成形体に表出する場合には以下の問題があった。即ち、独立した部分模様の場合は、板状の樹脂成形体に基体樹脂を注入する際に多少回転や移動があった場合でも目立たないが、連続模様の場合、比較する模様が近接していたり、連続していたりするため、ミリ単位の少しのズレや回転でも目立ってしまうという問題があった。
【0006】
このような問題を解決する方法としては、基体樹脂の注入圧力を下げてゆっくり時間を掛けて注入充填すれば、模様体ピース同士のズレや回転を抑制することができる。しかし、そうすることで、樹脂成形品の製造時間が増大し、ひいては樹脂成形品の製造コストが嵩んでしまうという問題があった。
【0007】
前述の問題の他の解決方法について、
図12、
図13に示すように、連続模様として麻の葉の連続模様1を例示して説明する。例えば、連続模様を有する板状樹脂成形体の製造方法としては、例示する麻の葉の連続模様1を形成する菱形(平行四辺形)状の模様体ピース10,10’を板状樹脂成形体の樹脂型内に並設した上、押さえ部材で押圧して連続模様を形成することが考えられる。
【0008】
しかし、菱形(平行四辺形)状の模様体ピース10,10’同士が接する辺を直線状とした場合、樹脂成形体の基体樹脂を注入する際に、押さえ部材で押圧してもミリ単位のズレや数度単位の回転が生じるのを防ぐことができず、樹脂成形体に連続模様を表出する場合は、独立した部分模様を表出する場合と比べて歩留まりが悪化するという問題があった。
【0009】
また、菱形状の模様体ピース10とした場合には、横幅が長くなるため(
図3も参照:模様体ピース10の横幅W3>一般ピース2の横幅W1)、保管スペースが嵩んでしまうという問題があった。さらに、菱形状の模様体ピース10,10’には、鋭角で細長い部分が存在するために、模様体ピース10,10’を運搬する際に折ったり欠けたりさせるなど損傷させるおそれが高いという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、板状樹脂成形体に表出する模様が連続模様であっても模様にズレが生じないとともに、模様体ピースの保管が容易で運搬時に損傷するおそれの少ない板状樹脂成形体の製造方法及び板状樹脂成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の板状樹脂成形体の製造方法は、上下一対の型内に基体樹脂を注入して硬化させて板状の樹脂成形体を製造する板状樹脂成形体の製造方法であって、前記基体樹脂を注入する前に、前記板状樹脂成形体の表面に表出させる連続模様を形成する複数の矩形状の模様体ピースを前記型内に設置する模様体設置工程と、前記上下一対の型内に前記基体樹脂を充填する基体樹脂充填工程を有し、前記矩形状の模様体ピースの四辺の内の少なくとも一辺を、隣接する前記模様体ピース同士が互いにずれないように拘束する凹凸を有する係合辺とするととともに、前記模様体設置工程では、これらの係合辺同士を係合させた状態で並設して設置することを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の板状樹脂成形体の製造方法は、請求項1に記載の板状樹脂成形体の製造方法において、前記係合辺の凹凸は、
平面視において、鈍角
で交差するジグザグな直線状の凹凸又は曲線
状の凹凸であることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の板状樹脂成形体の製造方法は、請求項1又は2に記載の板状樹脂成形体の製造方法において、前記模様体設置工程では、樹脂材からなるバネ材である樹脂バネを設置するとともに、前記基体樹脂注入工程では、当該樹脂バネの反発力で前記模様体ピースを前記一対の型のいずれかに押圧しつつ前記基体樹脂を注入することを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の板状樹脂成形体は、基体樹脂を基体とする板状の板状樹脂成形体であって、前記板状樹脂成形体の表面に表出させる模様を形成する複数の矩形状の模様体ピースが前記基体樹脂内に埋設されており、前記矩形状の模様体ピースの四辺の内の少なくとも一辺は、隣接する前記模様体ピース同士が互いにずれないように拘束する凹凸を有する係合辺となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1〜3のいずれかに記載の板状樹脂成形体の製造方法によれば、隣接する模様体ピース同士が互いにずれないように拘束する凹凸を有する係合辺同士を係合させた状態で複数の模様体ピースを並設して設置するので、板状樹脂成形体に表出する模様が連続模様であっても模様にズレが生じない。それに加え、基体樹脂の注入速度を速めても模様にズレが生じないため、板状樹脂成形体を短時間で製造することができ、製造コストを低減することができる。その上、模様体ピースが矩形状となっているので、模様体ピースの保管が容易で運搬時に損傷するおそれが少なくなる。
【0017】
特に、請求項2に記載の板状樹脂成形体の製造方法によれば、係合辺の凹凸が
平面視において、鈍角で交差するジグザグな直線状の凹凸又は曲線状の凹凸であるので、模様体ピースの運搬時に係合辺の凹凸部分が損傷するおそれが少なくなる。
【0018】
特に、請求項3に記載の板状樹脂成形体の製造方法によれば、樹脂バネの反発力で模様体ピースを一対の型のいずれかに押圧しつつ基体樹脂を注入するので、基体樹脂を注入する際に、さらに連続模様にズレが生じるおそれが少なくなる。そのため、さらに基体樹脂の注入速度を速めることが可能となり、板状樹脂成形体を短時間で製造することができ、製造コストを低減することができる。
【0019】
請求項4に記載の板状樹脂成形体によれば、矩形状の模様体ピースの四辺の内の少なくとも一辺が、隣接する模様体ピース同士が互いにずれないように拘束する凹凸を有する係合辺となっているので、表出する模様が連続模様であっても模様にズレが生じない。また、基体樹脂の注入速度を速めても模様にズレが生じないため、板状樹脂成形体を短時間で製造することができ、製造コストを低減することができる。その上、模様体ピースが矩形状となっているので、模様体ピースを保管するのも容易で、模様体ピースを運搬する際にも損傷するおそれが少ない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を適用した板状樹脂成形体の製造方法及び板状樹脂成形体を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
[第1実施形態]
先ず、
図1〜
図8を用いて、本発明の第1実施形態に係る板状樹脂成形体について説明する。第1実施形態に係る板状樹脂成形体としてI型キッチンのワークトップWTを例示し、連続模様として麻の葉の連続模様1をワークトップWTの表面に表出する場合を例示して説明する。
【0023】
図1は、本発明の第1実施形態に係る板状樹脂成形体であるキッチンのワークトップWTを示す平面図であり、
図2は、そのワークトップWTの連続模様1を示す部分拡大図である。
図1に示すように、キッチンのワークトップWTは、キッチンの天板を構成する一般に人工大理石と呼ばれる樹脂製の作業板であり、キッチンキャビネットに載置・固定されて使用される。
【0024】
このワークトップWTは、幅2650mm×奥行980mm程度の長方形状の板状体であり、
図1に示すように、キッチンのワークトップとしての機能を果たすため、シンクSとガスコンロCを設置するための2つの開口が形成されている。勿論、ワークトップWTの寸法等は、キッチンの大きさに応じて適宜設定されるものであり、特に、幅などは製品ごとに異なるものである。
【0025】
そして、このワークトップWTには、
図1に示すように、天面となる表面部分の装飾として麻の葉の連続模様1が形成されている。この連続模様1は、後で詳述するが、
図2に示すように、ワークトップWTの基体樹脂FP(ベース樹脂:
図6も参照)とは別に予め成形された樹脂製の複数の模様体ピース(一般ピース2,エンドピース2’)を、上下一対の型(プレス装置50)内に並設して、そこに基体樹脂を流し込んで固めて一体化して形成されるものである。
【0026】
本実施形態に係るワークトップWTは、基体樹脂FP(ベース樹脂)としてアクリル樹脂に水酸化アルミニウムや二酸化ケイ素などの無機充填剤が配合されたものが採用されている。勿論、本発明に係る基体樹脂は、アクリル樹脂に限られず、ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂など他の樹脂であっても構わないし、無機充填剤が配合されていなかったり、他の充填剤や強化繊維が配合されていたりしてもよいことは云うまでもない。要するに、本発明に係る基体樹脂は、充填時に流動化した状態で、後で硬化して模様体ピース(一般ピース2,エンドピース2’)を一体化することができるとともに、硬化後にワークトップとして機能するための一定の表面硬度を有する熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂であればよい。
【0027】
連続模様1は、6枚葉の麻の葉をモチーフとした同形の模様が繰り返し連続して表れる幾何学的な連続模様であり(
図4も参照)、
図2に示すように、複数の模様体ピース(一般ピース2,エンドピース2’)で構成されている。背景技術で述べたように独立した部分模様は存在するものの、従来樹脂製のワークトップの装飾模様は、ベージュ、白、黒、ピンクといった単色、あるいは単色の中にマーブル調の流れ模様や砂模様が大多数を占め、このような連続模様の装飾は施すことは困難であり実現されていなかった。このような連続模様をズレることなくきれいに板状樹脂成形体に表出させることが本発明の目的である。
【0028】
図2に示すように、この連続模様1を構成する模様体ピースのうち、両側に他の模様体ピースが配列されている模様体ピースが一般ピース2であり、右端に位置する端部の模様体ピースがエンドピース2’である。連続模様1の左端のグラデーション部分は、他の模様体ピースが隣接しない独立した模様体ピースか、又は不定形の模様体ピースから構成されている。
【0029】
図3は、模様体ピースの形状を比較した図であり、(a)が菱形状の模様体ピース10を示し、(b)が本発明の実施形態に係る模様体ピースの一般ピース2を示している。背景技術で述べたように、連続模様1を構成する模様体ピースを
図3(a)に示す菱形(平行四辺形)状の模様体ピース10とすることも考えられる。
【0030】
しかし、
図3(a)に示すように、菱形(平行四辺形)状の模様体ピース10同士が接する辺を直線状とした場合(
図9、
図10も参照)、基体樹脂を注入する際に、後述の押え部材(樹脂バネ3)で押圧してもミリ単位のズレや数度単位の回転が生じるのを防ぐことができないという問題があった。このため、樹脂成形体であるワークトップWTに連続模様1を表出する場合は、独立した部分模様を表出する場合と比べて歩留まりが悪化するという問題があった。
【0031】
そこで、本実施形態に係るワークトップWTでは、
図3(b)に示すように、連続模様1を構成する模様体ピースの概略形状を矩形状とし、その四辺の左右の側辺を、ジグザグな直線状の凹凸を有する係合辺とした。
【0032】
図4は、前述の一般ピース2を麻の葉と係合辺の形状が分かる程度に拡大した拡大平面図である。
図4に示すように、一般ピース2は、太線で示すように、上辺20,下辺21,左辺22,右辺23とからなる概略が矩形状となった模様体ピースである。勿論、矩形状とは、
図4の太線で示すように、模様体ピースの大まかな形が、図に示す菱形状の模様体ピースと比べて、細長く突出した部分を有しないことを指し、4隅が直角の矩形のピースのみを指すものではない。
【0033】
図4に示すように、上辺20と下辺21が、直線状の辺となっており、左辺22と右辺23が、麻の葉の輪郭形状に応じたジグザグな直線状の凹凸を有する係合辺となっている。左辺22と右辺23を、凹凸を有する係合辺とすることにより、型内に基体樹脂を流し込んで硬化させる際に左右に隣接する一般ピース2(模様体ピース)同士が互いにずれないように拘束することができる。
【0034】
また、このジグザグな直線状の凹凸は、全て鈍角から構成されており、模様体ピースの運搬時に係合辺の凹凸部分が損傷するおそれが少なくなっている。勿論、この係合辺の凹凸は、連続模様に応じて緩やかな曲線状としても構わない。鈍角からなるジグザグな直線状や緩やかな曲線状の凹凸とすることで、細長く突出した部分がなくなり、折れたり欠けたりするおそれを低減することができる。
【0035】
図5は、前述のエンドピース2’を麻の葉と係合辺の形状が分かる程度に拡大した拡大平面図である。
図5に示すように、エンドピース2’は、太線で示すように、上辺20’,下辺21’,左辺22’,右辺23’とからなる概略が矩形状となった模様体ピースである。この上辺20’、下辺21’、及び右辺23’が、直線状の辺となっており、左辺22’が、隣接する一般ピース2の右辺23と係合するジグザグな直線状の凹凸を有する係合辺となっている。
【0036】
また、これらの模様体ピースである一般ピース2及びエンドピース2’は、
図4、
図5に示すように、いずれも樹脂製の1枚の板から削り出して基板部P1と模様部P2を形成した樹脂ピースであり、基体樹脂が入り込んで一体化するための貫通孔h1が多数穿設されている。
【0037】
なお、一般ピース2の幅W1及びエンドピース2’の幅W2(模様体ピースの幅)は、保管や一人の人員が両手で運搬することを考慮すると、300mm〜330mm以下が好ましい。模様体ピースの幅が大きすぎると運搬が一人で持ち運ぶのが困難となり、破損するおそれが高まるからである。
【0038】
(押え部材)
次に、
図6〜
図8を用いて、これらの模様体ピースを押圧して固定し、型内で模様体ピースがズレることを防止する押え部材及びその使用方法について説明する。
図6は、ワークトップWTの模様体ピース部分を示す部分拡大断面図であり、
図7は、前述の模様体ピースを押圧する押え部材を示す図であり、(a)が平面図、(b)が側面図である。また、
図8は、押え部材の設置個所を示す平面図である。
【0039】
図6に示すように、ワークトップWTには、基体樹脂FPを注入充填する際に模様体ピースがズレることを防止する押え部材が埋設されている。本実施形態に係る押え部材は、一体成形されたポリカーボネイトなどの合成樹脂製の樹脂バネ3となっている。勿論、本発明に係る押え部材は、樹脂製に限られず、一般的な鋼製のコイルバネや板バネなど弾性材からなり圧縮されて設置され、弾性材の元に戻ろうとする反発力で模様体ピースを押圧可能な部材であれば、素材に関係なく適用できることは云うまでもない。
【0040】
なお、
図6の下方がワークトップWTの表面(天面)となる部分であり、図示しない下方の枠に一般ピース2(模様体ピース)が樹脂バネ3(押え部材)で押圧されることで、ワークトップWTの表面に連続模様1が表出するものである。
【0041】
図7(a)に示すように、この樹脂バネ3は、樹脂材を貫通する渦巻き状の欠込み30が形成され、
図7(b)に示すように、残りの部分が底面部31がプレート部32から下方に突出し、下方へ行くに従って縮径するテーパーの付いた螺旋状のテーパーバネとなっている。
【0042】
また、
図7(a)に示すように、中央に貫通孔33が穿設され、この貫通孔33や欠込み30に基体樹脂FPが入り込むことで、ワークトップWTとして一体化するものである。このため、プレート部32がワークトップWTの裏面にそのまま露出することもあり(
図6参照)、本実施形態に係る押え部材である樹脂バネ3のように、合成樹脂製である方が、防錆や一体化の観点で好ましいと云える。
【0043】
図8に示すように、樹脂バネ3の設置個所は、一般ピース2(模様体ピース)の裏面(内部側となる面)の4隅付近に設置することが好ましい。勿論、樹脂バネ3の設置個所は、一般ピース2同士を跨ぐように両者近接部分に設置したり、大きな押え部材を1つだけ中央に設置したりするなど、模様体ピースをバランス良く押圧できる箇所を適宜選択すればよい。
【0044】
<本発明の実施形態に係る板状樹脂成形体の製造方法>
次に、
図9を用いて、本発明の実施形態に係る板状樹脂成形体の製造方法について説明する。前述のワークトップWTに連続模様1を表出する場合を例示して説明する。
図9は、ワークトップWTの製造方法の各工程を示す工程説明図である。
【0045】
(1)模様体設置工程
先ず、
図9のステップS1に示すように、本実施形態に係る板状樹脂成形体の製造方法では、複数の模様体ピースを型内に設置する模様体設置工程を行う。
【0046】
具体的には、プレス装置50の上下一対の樹脂型(下枠51,上枠52)を開放した状態、即ち、上枠52を上方に移動させた状態において、下枠51上に模様体ピースである前述の一般ピース2及びエンドピース2’を並設して行く。
【0047】
このとき、模様体ピースの係合辺同士の凹凸が噛み合うように並設して行く。また、前述のように、一般ピース2やエンドピース2’などの各ピースの4隅付近に押え部材である樹脂バネ3を載置する。
【0048】
(2)型締め工程
次に、
図9のステップS2に示すように、本実施形態に係る板状樹脂成形体の製造方法では、プレス装置50の上枠52を下降させて上下一対の樹脂型を閉塞する型締め工程を行う。上枠52の下降は、下枠51と上枠52との間隔が、ワークトップWTの厚み程度となるまで行う。勿論、下枠51を上昇させてもよいし、上枠52を下降させ、且つ下枠51を上昇させてもよい。要するに、プレス装置50を閉じることができればよい。
【0049】
本工程により、前工程で模様体ピース上に載置した樹脂バネ3が圧縮されて、その反発力で一般ピース2やエンドピース2’などの各ピースが、下枠51に押圧されることとなる。このため、後工程で基体樹脂FPを注入充填する際に、模様体ピース同士がズレたり、回転したりするおそれが低減される。
【0050】
(3)基体樹脂充填工程
次に、
図9のテップS3に示すように、本実施形態に係る板状樹脂成形体の製造方法では、前工程で型締めを行ったプレス装置50の下枠51と上枠52との間の空間に前述の基体樹脂FPを充填する基体樹脂充填工程を行う。
【0051】
具体的には、チューブ等を通じて流動化状態の基体樹脂FPを0.2MPa程度の圧力で下枠51と上枠52との間の空間に流し込んで注入・充填する。このとき、樹脂バネ3で各模様体ピースが下枠51に押圧されているとともに、模様体ピース同士が、係合辺の凹凸で噛み合っているため、基体樹脂FPの流れに模様体ピースに力が掛かっても、模様体ピース同士が互いにズレたり、回転したりすることがない。このため、一般ピース2やエンドピース2’で構成される前述の連続模様1にズレが生じることがない。
【0052】
また、模様体ピース同士を係合辺で係合させることで、0.06MPa程度で注入していた基体樹脂FPの注入圧力を0.2MPa程度まで上げて注入しても模様体ピース同士が互いにズレたり、回転したりすることがなくなった。このため、基体樹脂FPの注入時間が大幅に短縮することができ、短時間で本工程を終了することが可能となった。
【0053】
なお、下枠51と上枠52の周囲には、基体樹脂FPが漏れ出さないようにガスケットなどのシール材(図示せず)で封止することが好ましい。また、基体樹脂FPを充填する方法も、チューブ等から注入する場合に限られず、バルクやシート状の樹脂をチャージしてもよく、樹脂の充填の方法が限定されるものではない。
【0054】
そして、基体樹脂FPの充填に先立って、又は同時に、下枠51及び上枠52に配線されている電熱線HLで予備的に加熱する予熱工程も行う。このときの加熱温度は、基体樹脂FPが冷却固化しない温度とし、かかる温度を保持する。模様体ピースや樹脂バネ3と基体樹脂FPとの温度差を無くして、間隙の発生などを防止し、確実な成形を行うためである。勿論、この予熱工程は、必要に応じて省略してもよく、模様体ピース設置工程から加熱を開始させてもよい。また、電熱線HLに限られず、どのような加熱手段で加熱しても構わない。
【0055】
(4)加熱加圧工程
次に、
図9のステップS4に示すように、本実施形態に係る板状樹脂成形体の製造方法では、電熱線HLで加熱して基体樹脂FPを硬化させるとともに、プレス装置50を締めて加圧する加熱加圧工程を行う。
【0056】
具体的には、熱硬化樹脂である基体樹脂FPを硬化させるのに適した温度まで電熱線HLで加熱するとともに、プレス装置50の上枠52を下降又は下枠51を上昇させて下枠51と上枠52との間隔を前工程より1mm程度の微量縮めて加圧する。本工程により、基体樹脂FPと模様体ピースや樹脂バネ3とを一体化することができる。
【0057】
(5)冷却脱型工程
次に、
図9(d)に示すように、本実施形態に係る板状樹脂成形体の製造方法では、ステップS4として、前工程で加熱した基体樹脂FPを冷却させた後、プレス装置50を開放してワークトップWTを脱型する冷却脱型工程を行う。
【0058】
具体的には、電熱線HLでの下枠51及び上枠52の加熱を停止し、自然冷却により前工程で加熱した基体樹脂FP及びワークトップWTが室温程度になるまで放置して冷却する。そして、ワークトップWTの温度が室温程度まで下がったのを確認した後、プレス装置50の上枠52を上昇又は下枠51を下降させて型を開いて基体樹脂FPが硬化して一体化したワークトップWTを脱型する。
【0059】
本工程の完了により、板状樹脂成形体であるワークトップWTの製造方法の作業が完了し、埋設した一般ピース2等の模様体ピースでワークトップWTの表面に前述の連続模様1が表出することになる。
【0060】
以上説明した本発明の実施形態に係る板状樹脂成形体及び本発明の実施形態に係る板状樹脂成形体の製造方法によれば、隣接する模様体ピース(一般ピース2及びエンドピース2’)同士が互いにずれないように拘束する凹凸を有する係合辺(左辺22,右辺23,左辺22’)同士を係合させた状態で複数の模様体ピースを並設して設置する。このため、板状樹脂成形体であるワークトップWTに表出する連続模様1にズレが生じない。それに加え、基体樹脂の注入速度を速めても模様にズレが生じないため、ワークトップWTを短時間で製造することができ、製造コストを低減することができる。
【0061】
その上、模様体ピースが一人で持てる幅330mm以下の矩形状となっているので、模様体ピースの保管が容易で運搬時に損傷するおそれが少なくなる。また、係合辺(左辺22,右辺23,左辺22’)の凹凸が鈍角で構成されているので、模様体ピースの運搬時に係合辺の凹凸部分が損傷するおそれが少なくなる。
【0062】
[第2実施形態]
次に、
図10、
図11を用いて、本発明の第2実施形態に係る板状樹脂成形体について簡単に説明する。第2実施形態に係る板状樹脂成形体であるワークトップWT’が、前述の第1実施形態に係る板状樹脂成形体であるワークトップWTと相違する点は、I型キッチンのワークトップではなくL型キッチンのワークトップである点である。それに加え、ワークトップWT’の表面に表出する連続模様1’が、前述の連続模様1と左右が反転した連続模様となっている点である。よって、その点についてのみ説明し、他の説明は省略する。
【0063】
図10は、ワークトップWT’を示す平面図である。
図10に示すように、この連続模様1’を構成する模様体ピースのうち、両側に他の模様体ピースが配列されている模様体ピースが前述の一般ピース2であり、左端に位置する端部の模様体ピースがエンドピース2”である。連続模様1’の右端のグラデーション部分は、他の模様体ピースが隣接しない独立した模様体ピースか、又は不定形の模様体ピースから構成されている。
【0064】
図11は、エンドピース2”を麻の葉と係合辺の形状が分かる程度に拡大した拡大平面図である。
図11に示すように、エンドピース2”は、上辺20”,下辺21”,左辺22”,右辺23”とからなる概略が矩形状となった模様体ピースである。この上辺20”,下辺21”,及び左辺22”が、直線状の辺となっており、右辺23”が、隣接する一般ピース2の左辺22と係合するジグザグな直線状の凹凸を有する係合辺となっている。
【0065】
以上述べたように、連続模様を構成する模様体ピースの形状は、連続模様に合せて、適宜、変更可能である。但し、模様体ピースの概略形状は、細長く突出した部位が無いように、矩形状とする必要があり、矩形状の模様体ピースの四辺の内の少なくとも一辺を、隣接する模様体ピース同士が互いにずれないように拘束する係合辺とする必要がある。
【0066】
なお、本発明に係る矩形状の模様体ピースと不定形の模様体ピースを組み合わせて係合辺で係合させることや、特許文献1、2に開示されている独立した部分模様の模様体ピースと組み合わせることも当然可能である。
【0067】
以上、本発明の実施の形態に係る板状樹脂成形体及び本発明の実施形態に係る板状樹脂成形体の製造方法について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたって具体化した一実施の形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。