(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
二酸化炭素をエタノールに転化する方法であって、前記方法は、電気触媒を重炭酸塩の水溶液と接触させ、一方で前記水溶液を二酸化炭素源と接触させるステップであって、前記二酸化炭素源は、前記重炭酸塩が前記電気触媒の表面で二酸化炭素及び水酸化物塩に分解するにつれて前記重炭酸塩を補充し、前記電気触媒はカソードとして電気的に駆動され、アノードとして電気的に駆動される対電極と電気的に連通しており、前記カソード及び前記アノードの両端の電圧は2〜4ボルトの範囲内であり、前記二酸化炭素をエタノールに転化する、ステップを含み、前記電気触媒は、(i)ナノ構造炭素膜の表面から外側に突出したカーボンナノ突出部と、(ii)前記カーボンナノ突出部上にある及び/又は前記カーボンナノ突出部間に埋め込まれた銅含有ナノ粒子とを含み、前記カーボンナノ突出部は、窒素ドーパントでドープされる、方法。
前記電気触媒は電気化学セルの第1区画内に収容され、前記第1区画は前記電気触媒と接触している前記水溶液を含み、前記対電極は前記電気化学セルの第2区画内に収容され、前記第2区画もまた前記水溶液を含み、前記第1区画と前記第2区画とは固体電解膜によって分離されている、請求項17に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一態様では、本発明は、効率的かつ選択的に二酸化炭素をエタノールに転化する電気触媒に関する。電気触媒は、カーボンナノスパイクと、カーボンナノスパイク上にある及び/又はカーボンナノスパイク間に埋め込まれた銅含有ナノ粒子とを含む。銅含有ナノ粒子は、カーボンナノスパイク中に良好に分散されている。本明細書で使用される用語「ナノスパイク」は、炭素膜の表面上に存在する先細りのスパイク状の外観として定義される。
【0012】
電気触媒中のカーボンナノスパイクは、任意の長さを有することができる。一般に、ナノスパイクの長さは、正確に又はおよそ、例えば30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、又は90nm、又はこれらの値の任意の2つによって規定される範囲内であってもよい。特定の実施形態では、カーボンナノスパイクは約50〜80nmの長さを有する。
【0013】
電気触媒中のカーボンナノスパイクの少なくとも一部(例えば、少なくとも30、40、50、60、70、80、又は90%)は、真っ直ぐな又はカールした先端で終わるひだ状の(puckered)炭素の層からなる。真っ直ぐな又はカールした先端の幅は、正確に又はおよそ、例えば0.5、0.6、0.7、0.8、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、又は2.5nm、又はこれらの値の任意の2つによって規定される範囲内であってもよい。特定の実施形態では、真っ直ぐな又はカールした先端は、約1.8〜2.2nmの幅を有する。
【0014】
カーボンナノスパイクは、窒素、ホウ素、又はリンから選択されるドーパントでドープされる。ドーパントは、規則正しい炭素の積み重ねを防止し、故に無秩序なナノスパイク構造の形成を促進すると考えられている。一実施形態では、カーボンナノスパイクは窒素(N)でドープされる。カーボンナノスパイク中のドーパントの量は、正確に又はおよそ、例えば3、4、5、6、7、8、又は9原子%、又はこれらの値の任意の2つによって規定される範囲内であってもよい。特定の実施形態では、ドーパント濃度は約4〜6原子%である。
【0015】
カーボンナノスパイクは、当業者に公知の任意の方法によって調製することができる。一実施形態では、カーボンナノスパイクは、任意の適切な炭素源及びドーパント源を用いてプラズマ強化化学蒸着(PECVD)によって基板上に形成することができる。第1の実施形態では、基板は半導体基板である。半導体基板の幾つかの例には、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、シリコンカーバイド、及びシリコンゲルマニウムカーバイドが含まれる。第2の実施形態では、基板は金属基板である。金属基板の幾つかの例には、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、パラジウム、白金、金、ルテニウム、モリブデン、タンタル、ロジウム、ステンレス鋼、及びそれらの合金が含まれる。特定の実施形態では、ヒ素ドープ(Asドープ)されたシリコン基板が使用され、炭素源としてアセチレン及びドーパント源としてアンモニアを使用して、Asドープされたシリコン基板上に窒素ドープされたカーボンナノスパイクを成長させる。本発明のカーボンナノスパイクの形成に関するさらなる詳細については、Sheridanら,J.of Electrochem.Society,2014,161(9):H558−H563が参照され、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0016】
銅含有ナノ粒子は、カーボンナノスパイク上に担持され、かつ/又はカーボンナノスパイクに埋め込まれる。従って、銅含有ナノ粒子及びカーボンナノスパイクは、近接しており、銅表面と炭素反応部位との間の密接な接触を可能にする。
【0017】
一実施形態では、銅含有ナノ粒子は元素銅のみからなる。別の実施形態では、銅含有ナノ粒子は銅合金からなる。銅合金は、元素銅と合金化する1つ、2つ、又はそれ以上の元素を含むことができる。1つ以上の合金化元素は、銅との安定な合金を形成する元素の何れかであり得る。特定の実施形態では、1つ以上の合金化元素は遷移金属から選択され、より具体的には、第1、第2又は第3列遷移金属から選択することができる。遷移金属は、元素の周期表の第3〜12族の金属のいずれかを指す。幾つかの実施形態において、合金化遷移金属は、より具体的には、例えばコバルト、ニッケル、亜鉛、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、イリジウム、白金、及び金など、周期表の第9〜12族から選択することができる。他の実施形態では、1つ以上の合金化金属は、例えばアルミニウム、ガリウム、インジウム、シリコン、ゲルマニウム、スズ、ヒ素、及びアンチモンなど、周期表の第13〜15族、又は第13及び14族の主族元素から選択される。より具体的な実施形態では、1つ以上の合金化元素は、ニッケル、コバルト、亜鉛、インジウム、銀、及びスズから選択される。1つ以上の合金化元素は、銅含有ナノ粒子中に触媒活性を保持する任意の適切な濃度で存在することができる。一般に、銅は、少なくとも40、50、60、70、80、90、95、97、98、又は99重量%の量で存在し、残りは1つ以上の合金化元素に帰属し、例えば、1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、又は60重量%が1つ以上の合金化元素に帰属する(又は前述の値の任意の2つによって規定される範囲内の量である)。幾つかの実施形態では、1つ以上の合金化元素は、約0.01〜10重量%の範囲内、又は約0.5〜2重量%の範囲内の濃度で存在する。
【0018】
本明細書で使用される用語「ナノ粒子」は、一般に、ナノ粒子の少なくとも1つの寸法において、少なくとも1、2、3、5、又は10nm及び100、200、300、400、又は500nmまでのサイズを有する粒子を指す。異なる実施形態では、銅含有ナノ粒子は、正確に又はおよそ、例えば1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、400、450、又は500nmのサイズ、又はこれらの値の任意の2つによって規定される範囲内のサイズを有することができる。特定の実施形態において、銅含有ナノ粒子は、約30〜100nmのサイズを有する。
【0019】
銅含有ナノ粒子は、様々な形状の何れかを有することができる。第1の実施形態では、銅含有ナノ粒子は、実質的に球形又は卵形である。第2の実施形態では、銅含有ナノ粒子は実質的に細長く、棒状、管状、或いは繊維状であってもよい。第3の実施形態では、銅含有ナノ粒子は板状であり、1つの寸法は他の2つの寸法よりも著しく小さい。第4の実施形態では、銅含有ナノ粒子は、ピラミッド状、立方状、矩形状、又はプリズム状など、実質的に多面体の形状を有する。
【0020】
銅含有ナノ粒子は、任意の適切な密度でカーボンナノスパイク上に存在することができる。適切な密度は、電気触媒活性を保持する密度である。カーボンナノスパイク上の銅含有ナノ粒子の密度は、正確に又はおよそ、例えば0.1x10
10、0.3x10
10、0.5x10
10、0.8x10
10、0.9x10
10、1.0x10
10、1.2x10
10、1.3x10
10、1.4x10
10、1.5x10
10、1.8x10
10、2.0×10
10、2.5×10
10、3.0×10
10、3.5×10
10、4.0×10
10、4.5×10
10、又は5.0×10
10粒子/cm
2、又はこれらの値の任意の2つによって規定される範囲内であってもよい。特定の実施形態では、銅含有ナノ粒子は、約0.2×10
10〜1.2×10
10粒子/cm
2の密度でカーボンナノスパイク上に存在する。
【0021】
カーボンナノスパイク上の銅含有ナノ粒子の被覆率は、任意の適切な量であり得る。カーボンナノスパイク上の銅含有ナノ粒子の被覆率は、正確に又はおよそ、例えば5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、又は75%、又はこれらの値の任意の2つによって規定される範囲内の被覆率であることができる。特定の実施形態では、カーボンナノスパイク上の銅含有ナノ粒子の被覆率は、約10〜20%、又はより具体的には、12、13、14、15、又は16%である。
【0022】
別の態様では、本発明は、上記の電気触媒の製造方法に関する。一般に、本方法は、カーボンナノスパイクからなる基板(すなわち、CNS基板)上に銅含有ナノ粒子を堆積させるステップを含む。銅含有ナノ粒子は、堆積後にCNS基板の表面上に存在しかつそれに固定された状態のまま残る銅含有ナノ粒子をもたらす任意の方法を用いて、CNS基板上に堆積させることができる。より具体的には、本プロセスにより、カーボンナノスパイク上にある及び/又はカーボンナノスパイク間に埋め込まれた銅含有ナノ粒子がもたらされる。幾つかの実施形態では、銅含有ナノ粒子の少なくとも一部(例えば、少なくとも30、40、50、60、70、80、又は90%)がカーボンナノスパイクの先端に存在する。幾つかの実施形態では、銅含有ナノ粒子の少なくとも一部(例えば、少なくとも30、40、50、60、70、80、又は90%)がカーボンナノスパイクの間に埋め込まれる。
【0023】
一実施形態では、カーボンナノスパイク上に銅含有ナノ粒子を堆積させる方法は、電気核生成(electronucleation)により、例えば、CNS基板を1つ以上の銅塩を含む水溶液又は非水溶液に浸漬させるステップと、CNS基板上に電圧を印加して銅塩中の銅イオンを元素銅に還元することで、カーボンナノスパイク上に銅含有ナノ粒子を形成するステップとによる。使用され得る銅塩の幾つかの例には、硫酸銅(CuSO
4)、塩化銅(CuCl
2)、硝酸銅(Cu(NO
3)
2)、酢酸銅(Cu(CH
3COO)
2)、銅アセチルアセトネート(Cu(C
5H
7O
2)
2)、炭酸銅(CuCO
3)、ステアリン酸銅、エチレンジアミン銅、フッ化銅(CuF
2)、銅−配位子錯体、及びそれらの水和物が含まれる。幾つかの実施形態では、溶液はまた、銅合金ナノ粒子を形成するために、適切な量で追加の金属塩を含むこともできる。
【0024】
温度、電圧パルスの長さ、銅塩濃度、及びpHなどの電気核生成条件は、特定のサイズ又は形態のナノ粒子を選択するように適切に調整することができる。特に、電圧パルスは、より長いパルスが一般により大きなナノ粒子を生成しながら、特定の粒子サイズを選択するように調整することができる。典型的な実施形態では、電圧パルスは10又は5秒以下、又はより具体的には1秒以下、又は最大500、100、又は50マイクロ秒又はそれら未満、又は最大1マイクロ秒又はそれ未満である。
【0025】
水溶液中の銅塩の濃度は、電気化学的プロセスがナノ粒子を生成するように機能することができる任意の適切な濃度であり得る。異なる実施形態において、銅塩の濃度は、正確に又はおよそ、例えば10nM、50nM、100nM、500nM、1μM、10μM、100μM、500μM、1mM、5mM、10mM、50mM、100mM、500mM、0.1M、0.5M、又は1M、又は銅塩の飽和濃度までの濃度であるか、又は濃度は上記の例示的な値の任意の2つによって規定される範囲内である。特定の実施形態では、銅塩の濃度は、約1mM〜0.1Mである。
【0026】
銅含有ナノ粒子を生成するための本明細書に記載の方法は、銅塩溶液をCNS基板と接触させるステップと、銅イオンを元素銅に還元する適切な電位に銅塩溶液を付すステップとによって実施される。印加される電位は、十分に陰性(cathodic)(すなわち、負)でなければならず、正確に又はおよそ、例えば−0.05V、−0.1V、−0.2V、−0.3V、−0.4V、−0.45V、−0.5V、−0.6V、−0.7V、−0.8V、−0.9V、−1V、−1.1V、又は−1.2V対可逆水素電極(RHE)であり得る。特定の実施形態では、印加される電位は約0.5〜1.0Vである。
【0027】
反応の(すなわち、電気核生成プロセス中の水溶液の)温度は、正確に又はおよそ、例えば−10℃、−5℃、0℃、15℃、20℃、25℃、30℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、又は100℃、又は上記の例示的な温度の任意の2つによって規定される範囲内の温度であることができる。特定の実施形態では、本プロセスは、室温又は周囲温度で行われ、典型的には約18〜30℃、より典型的には約20〜25℃、又は約22℃の温度である。
【0028】
水溶液のpHはまた、ナノ粒子の形成を促進する手助けをするように選択することができる。水溶液のpHは、典型的には1.5〜6の範囲である。特定の実施形態では、水溶液のpHは約4〜6である。水溶液のpHは、pH調整剤(例えば、硫酸(H
2SO
4)などの強酸又は水酸化ナトリウム(NaOH)などの強塩基)を添加することによって調整することができる。
【0029】
副反応を最小限に抑えるために、銅含有ナノ粒子を生成する電気核生成プロセスは、典型的には不活性雰囲気下で行われる。不活性雰囲気は、例えば、窒素、ヘリウム、又はアルゴンガスからなり得る。一般に、水溶液は、電気核生成プロセスの前及び/又はその間に、不活性ガスでパージされる。
【0030】
一般に、電気核生成プロセスは、ナノ粒子のサイズ及び/又は形状を制御するために当技術分野で一般的に使用されるような界面活性剤を必要としない。界面活性剤が存在しないことは、得られる銅含有ナノ粒子が電気触媒能力を妨害し得る界面活性剤を含まないため、有利であり得る。界面活性剤の代わりに、本発明は、銅ナノ粒子を成長させるための核生成点としてのカーボンナノスパイクに依拠し、これを電圧パルス時間と結び付けてナノ粒子のサイズを調整する。
【0031】
別の実施形態では、カーボンナノスパイク上に銅含有ナノ粒子を堆積させる方法は、蒸着法による。蒸着法は、例えば、物理蒸着(PVD)又は化学蒸着(CVD)であることができる。
【0032】
別の実施形態では、カーボンナノスパイク上に銅含有ナノ粒子を堆積させる方法は、銅含有錯体のCNS基板上への吸着と、それに続く銅含有錯体の分解とによる。本方法は、銅含有錯体を含む溶液中にCNS基板を浸漬させ、それにより銅含有錯体をCNS基板の表面上に吸着させるステップを含む。銅含有錯体の分解により、カーボンナノスパイク上に別個の銅含有ナノ粒子が生成される。この溶液は、典型的には、キレート剤(錯体中の金属に対して2つ以上の配位結合を形成する多座配位子)を含む銅含有錯体を含む。本発明において有用な幾つかの銅含有錯体は、酒石酸銅又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)銅を含む。銅錯体は、溶液に添加する前に形成することができ、又は例えば銅塩及びキレート剤を混合することによって溶液中に形成することができる。銅塩は、硫酸銅、酢酸銅又は硝酸銅を含むことができる。幾つかの実施形態では、溶液は、水溶液、典型的にはpHが10〜13の塩基性溶液である。他の実施形態では、溶液は、例えばヘキサンなどの有機溶媒を含む。この溶液は、場合により、吸着を増加させるために、銅錯体中の配位子が安定である温度、例えば60〜70℃に加熱される。ナノ粒子の形成及び溶液からのCNS基板の除去の後、CNS基板をさらに加熱して、例えば水素ガスを含む還元性雰囲気中で銅含有錯体を分解し、元素銅又は銅合金ナノ粒子を得ることができる。
【0033】
別の実施形態では、カーボンナノスパイク上に銅含有ナノ粒子を堆積させる方法は、無電解めっき(electroless deposition)によって行われる。本方法は、1つ以上の銅源、キレート剤、及び還元剤を含む無電解めっき溶液中にCNS基板を浸漬させるステップを含む。無電解銅めっきの分野でよく知られているように、めっき溶液からの銅イオンは、溶液中の基板の表面で選択的に還元される。今この場での目的のために、カーボンナノスパイクのマット上に適用すると、無電解溶液は、元素銅ナノ粒子をカーボンナノスパイク上に堆積させる。よく知られているように、化学的還元反応は外部電力を使用せずに起こる。銅合金ナノ粒子が所望される場合、無電解めっき溶液は、このような他の合金種を含むことができる。銅源は、無電解プロセスで有用な既知の銅源、例えば硫酸銅、硝酸銅、塩化銅、又は酢酸銅などの何れかであってもよい。キレート剤の幾つかの例には、ロッシェル塩、EDTA、及びポリオール(例えば、Quadrol(登録商標)(N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレン−ジアミン))が含まれる。還元剤の幾つかの例には、次亜リン酸塩、ジメチルアミノボラン(DMAB)、ホルムアルデヒド、ヒドラジン、及び水素化ホウ素が含まれる。さらに、めっき溶液は、pHを制御するための緩衝剤(例えば、ホウ酸又はアミン)と、例えば浴安定剤(例えば、ピリジン、チオ尿素、又はモリブデン酸塩)、界面活性剤(例えば、グリコール)、及び湿潤剤などの様々な任意の添加剤とを含んでもよい。幾つかの実施形態では、ナノ粒子が銅合金からなる場合、めっき溶液はまた、合金化金属の塩などの1つ以上の合金化金属源も含む。めっき溶液は、典型的には塩基性である。めっき溶液のpHは、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)の添加によって、pH10〜13に調整することができる。めっき溶液は、場合により、例えば60〜80℃の温度に加熱することができる。
【0034】
さらに別の実施形態では、カーボンナノスパイク上に銅含有ナノ粒子を堆積させる方法は、当技術分野で既知のナノ粒子製造方法の何れかによって、最初に銅ナノ粒子を現場外で(すなわち、ナノスパイクと接触していないときに)生成することによって達成され、得られたナノ粒子が、カーボンナノスパイク上に堆積される。銅ナノ粒子は、典型的には溶液中で生成され、その後、銅ナノ粒子の溶液はカーボンナノスパイクと接触する。銅ナノ粒子は吸着、すなわち物理吸着によって、カーボンナノスパイクに付着するだろう。
【0035】
別の態様では、本発明は、本発明の電気触媒を用いてCO
2をエタノールに転化する方法に関する。本方法は、上記の電気触媒を水溶液中でCO
2と、(例えば、二酸化炭素と金属水酸化物との反応による)重炭酸塩の形態のCO
2と接触させ、一方でその電気触媒をカソードとして電気的に構成するステップを含む。より具体的には、本方法は、上記の電気触媒を重炭酸塩の水溶液と接触させ、一方でその水溶液を二酸化炭素源と接触させるステップであって、二酸化炭素源は、重炭酸塩がCO
2及び水酸化物塩に分解するにつれて重炭酸塩を補充し、電気触媒はカソードとして電気的に駆動され、アノードとして電気的に駆動される対電極と電気的に連通している、ステップを含む。次いで、電気触媒カソードが二酸化炭素をエタノールに電気化学的に転化するように、アノードと電気触媒カソードとの間に電圧が印加される。
【0036】
CO
2の電気化学的還元は、
図1に示すように、電気化学セル10内で行うことができる。電気化学セル10は、本発明の電気触媒を含む作用電極(カソード)12と、対電極(アノード)14と、容器16とを含む。対電極14は、例えば白金又はニッケルなどの金属を含むことができる。容器16は、電解液としての重炭酸塩の水溶液18及びCO
2源を含む。作用電極12及び対電極14は、電気的に互いに接続されており、水溶液18と接触している。
図1に示すように、作用電極12及び対電極14は、水溶液18中に完全に浸漬させることができるが、完全な浸漬は必要ではない。作用電極12及び対電極14は、水溶液18と接触して配置されていればよい。容器16は、作用電極12と対電極14との間に配置された固体又はゲル電解膜(例えば、アニオン交換膜)20を含む。固体電解膜20は、容器16を、作用電極12を収容する作用電極区画と対電極14を収容する対電極区画とに分割する。
【0037】
電気化学セル10は、二酸化炭素ガスが水溶液18に流入する入口22をさらに含む。二酸化炭素ガスは、作用電極12の表面への十分なCO
2輸送を可能にしながら電極表面にぶつかる気泡による干渉を防止する速度で、水溶液18に流入するようにされる。CO
2ガスの流量は、一般に、作用電極のサイズによって決まる。幾つかの実施形態では、流量は、約、少なくとも、又は最大、例えば3、10、30、50、70、90、100、120、140、160、180、又は200mL/分、又はこれらの値の任意の2つによって規定される範囲内であってもよい。しかしながら、より大きな電極を使用するより大規模な操作の場合、流量ははるかに高くなり得る。幾つかの実施形態では、CO
2ガスを容器16内に導入する前に、ガスをバブラーに通過させることでCO
2ガスを水で加湿して、電解液の蒸発を最小限に抑えることができる。転化されるべき二酸化炭素は、任意の既知の二酸化炭素源によって生成され得る。二酸化炭素源は、例えば、燃焼源(例えば、エンジン又は発電機における化石燃料の燃焼から)、市販のバイオマス発酵槽、又はガス井用の商業的な二酸化炭素−メタン分離プロセスであってもよい。
【0038】
幾つかの実施形態では、
図1に示す電気化学セルは、電圧の測定用の基準電極24をさらに含む3電極セルである。幾つかの実施形態では、基準電極は含まれていない。特定の実施形態では、銀/塩化銀(Ag/AgCl)又は可逆水素電極(RHE)が基準電極24として使用される。
【0039】
水溶液18は、重炭酸塩を水に溶解することによって形成される。重炭酸塩は、典型的には、重炭酸カリウム又は重炭酸ナトリウムなどの重炭酸アルカリである。重炭酸塩濃度は、正確に又はおよそ、例えば0.05、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、又は0.6M、又はこれらの値の任意の2つによって規定される範囲内であってもよい。特定の実施形態では、重炭酸塩濃度は0.1〜0.5Mである。幾つかの実施形態では、重炭酸塩は最初に水溶液18中に存在しないが、溶液中の二酸化炭素と反応する水酸化物化合物から開始して重炭酸塩を形成する、例えば(水溶液中の)KOHをCO
2と反応させてKHCO
3を形成することによって、その場で形成される。幾つかの実施形態では、水溶液18は、金属水酸化物と金属重炭酸塩との混合物を含む。特に、少なくとも二酸化炭素との反応の間、溶液18は、金属重炭酸塩の分解の結果として、任意の所定の瞬間に特定のレベルの金属水酸化物を含むべきであるが、金属水酸化物は入ってくる二酸化炭素と速やかに反応して金属重炭酸塩を再形成すべきである。
【0040】
作用電極12及び対電極14にそれぞれ負の電圧及び正の電圧を印加して、CO
2をエタノールに転化する。一般的に、作用電極12に印加される負の電圧は、正確に又はおよそ、例えば−0.5、−0.7、−0.9、−1.0、−1.2、−1.4、−1.5、−1.7、−2.0、−2.1、−2.5、−2.7、又は−3.0V対可逆水素電極(RHE)、又はこれらの値の任意の2つによって規定される範囲内であってもよい。一般に、作用電極12(すなわちカソード)及び対電極14(すなわちアノード)の両端の電圧は、CO
2をエタノールに転化するために、少なくとも2V、又は2〜4V以内、又は2〜3.5V以内、又は2〜3V以内である。電圧は、当業者に既知の任意の方法によって印加することができる。例えば、ポテンショスタット26を用いて電圧を印加することができる。
【0041】
幾つかの実施形態では、CO
2は、重水素化された形態のエタノールに転化される。重水素化された形態のエタノールは、重水素原子で置換されたその水素原子の一部又は全部を含んでもよい。部分的に重水素化された形態のエタノールの幾つかの例には、CH
3CH
2OD、C
2H
4DOH、及びC
2H
3D
2OHが含まれ、Dは重水素を表す。完全に重水素化された形態のエタノールは、式CD
3CD
2ODに対応する。重水素化されたエタノールは、例えば、二酸化炭素を水(H
2O)の代わりに重水(酸化重水素、好ましくは少なくとも又はおよそ95、96、97、98、99、99.5、99.8、又は99.9原子%のDのD
2OであるD
2O)に溶解させること、及び/又はKHCO
3の代わりにKDCO
3などの重水素化された重炭酸塩を必要に応じて水溶液18中で使用することによって形成することができる。
【0042】
本発明の電気触媒は、一般に、H
2発生よりも高いCO
2電気還元に対する選択性を示し、次いでエタノール生成において高いファラデー効率を示す。本願では、CO
2は、初期に豊富にエタノールを生成するように還元される。水素、メタン、及び一酸化炭素などの他の種は、はるかに少ない量で生成されることがある。一般に、本発明による電気触媒プロセスは、有利には、エタン又はエチレンを生成せずにエタノールを生成する。エタノールは、一般に、電子流(electron current)によって測定して、生成された全生成物に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、又は80%の収率で生成される。従って、水素、メタン、及び一酸化炭素などの他の種は、個々が、又は総量が40%、35%、30%、25%、又は20%を超えないように生成され得る。
【0043】
理論に縛られることなく、エタノール生成における高い効率は、銅の固有のCO
2還元活性の増加と、銅含有ナノ粒子と隣接するカーボンナノスパイクとの間の相乗的相互作用との両方に起因する可能性がある。主要なCO
2還元生成物はエタノールであり、これはH
+源としてのH
2Oとの12e
−還元に相当し、ここでEは平衡電位である。全反応は以下の通りである:
2CO
2+9H
2O+12e
−→C
2H
5OH+12OH
− E
0=0.084V対SHE
【0044】
本発明の電気触媒は、有利には、室温及び水中で作動することができ、容易にオン/オフすることができる。本発明の電気触媒によって可能とされる電解合成は、風力や太陽光などの可変の再生可能エネルギー源によって駆動される分散液体燃料製造へのより直接的で迅速に切り替え可能で容易に実施される経路を提供することができる。
【0045】
以下の実施例は、本発明を説明する目的であり、本発明のある特定の実施形態を記載するものである。しかしながら、本発明の範囲は、本明細書に記載の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
[実施例1]
カーボンナノスパイクの調製
カーボンナノスパイクを、アセチレン(C
2H
2)及びアンモニア(NH
3)の存在下、650℃で30分間、PECVDによりAsドーピングを伴うn型4インチSiウェハ<100>(<0.005Ω)上で成長させた。80sccm及び100sccmでそれぞれ流れるC
2H
2及びNH
3ガスの連続流中で、ウェハ(カソード)とシャワーヘッド(アノード)との間にDCプラズマを発生させた。全圧を、プラズマパワー240Wで6Torrに維持した。
【0047】
カーボンナノスパイクを、約50〜80nmの長さでランダムに配向されたナノスパイクによって終結された緻密なナノ構造炭素膜として特徴付けし、ここで各ナノスパイクは約2nm幅のカールした先端で終わるひだ状の炭素の層からなる。ラマンスペクトルは、カーボンナノスパイクが無秩序な多層グラフェンと類似の構造を有することを示した。XPSは、窒素ドーピング密度が5.1±0.2原子%であり、ピリジン型、ピロール型(又はピペリジン型)及びグラファイト型窒素の割合がそれぞれ26、25及び37%であり、残りが酸化窒素であることを示した。
【0048】
[実施例2]
Cu/CNS電気触媒の調製
Cuナノ粒子を、CuSO
4から直接カーボンナノスパイク上に電気核生成し、SEMによって画像化した。これらの良好に分散されたCuナノ粒子は、約30nm〜100nmの範囲のサイズを有し、39nmの平均サイズを有し、約1.2×10
10粒子/cm
2の密度を有する。平均粒子サイズによると、カーボンナノスパイク上のCuの被覆率は約14.2%である。
図2に提供された、切り抜かれた試料上の高分解能TEM(HR−TEM)は、Cuナノ粒子及びカーボンナノスパイク界面を示し、これはCuナノ粒子とカーボンナノスパイクとの間の近接性を示す。より低い倍率のTEM画像(
図2、挿入図)は、SEMによって観察された粒子サイズを確認する。この代表的な銅ナノ粒子の格子間隔は、銅と一致する0.204nmと測定された。約0.235nmの格子間隔を有するCu
2O組成物が、おそらく試料調製及び測定間の輸送の間の空気への暴露に起因して、銅ナノ粒子の表面上に存在した。電子エネルギー損失分光法(EELS)測定は、グラファイト炭素を示し、
図2に示すように、Cuナノ粒子の周りに巻かれたCNSを確認する。
【0049】
[実施例3]
Cu/CNS電気触媒の安定性
Cu/CNS電気触媒の短期安定性を調べるために、6時間のCO
2還元反応の後に追加のHR−TEM画像及びEELSスペクトルを採取したが、明らかな変化は観察されなかった。同様に、Cu 2p
3/2のX線光電子分光法(XPS)測定は、932eVで同様の非対称ピークを示し、これは、6時間の反応後にCuナノ粒子が安定であり、主にCu
0からなることを示している。しかしながら、6時間の電気還元後、グラファイト型Nの割合は有意に減少した(38.9から10.7%)が、一方で、ピリジン型N及びピロール/アミン型Nは増加した(それぞれ14.2から24.7%、39.6から54.2%)。XPSはピロールとアミンとを区別することができないが、ピリジン型Nからピロール型Nへの電気還元はC原子の除去を必要とするであろう;従って、ピロール/アミン型Nの増加はピペリジンの可能性が高く、ピロール割合の増加は伴わない。電気化学的活性の変化は、この長期にわたる電気還元中に観察されなかった。
【0050】
[実施例4]
二酸化炭素還元
CO
2電気分解実験のために、ポリカーボネートから作られたカスタム化された電気化学セルを使用した。均一な電圧を達成するために、セルにおいて対電極と平行に作用電極を維持した。作用電極区画と対電極区画とを分離するためにアニオン交換膜を使用し、還元されたCO
2生成物の酸化を防止した。セルを、2つの区画のそれぞれにおいて、膜の各側において電解液上の約2mLのガスヘッドスペースと共に小さな電解液容積(8mL)を有するように設計した。質量流量コントローラによって3mL/分に調整されたCO
2を、電気分解中にセルに流した。セルを通るCO
2流をCO
2還元生成物の大電流効率を観測するために使用したが、これはおそらく、静止したセルでの質量輸送の制限に起因する。3mL/分の流量は、表面への十分なCO
2輸送を保証し、一方で表面にぶつかる気泡による干渉を防止するように選択した。電解液の蒸発を最小限に抑えるために、電気分解セルに入る前にバブラーを通過させることによって、CO
2を水で加湿した。各電気分解実験のために、セルを、作用電極としてのCu/CNS電気触媒(すなわち、Cu/CNS電極)と対電極としての白金とを用いて組み立てた。基準としてAg/AgCl電極を使用した。作用電極と基準電極との間の距離は、溶液抵抗を低減するために約0.5cmに維持した。KHCO
3の0.1M溶液をミリポア(Millipore)(商標)システムからの18.2MΩ−cmの脱イオン水と共に調製し、電解液として使用した。CO
2でパージした電解液のpHは6.8であった。クロノアンペロメトリー(CA)法を用いて、Biologic VSPポテンショスタット(VMP3)と共に電気分解を行った。全ての電気化学データをAg/AgCl基準に対して収集し、V
対RHE=V
測定対Ag/AgCl+0.222+0.059×pH
電解液によって可逆水素電極(RHE)スケールに変換した。電気分解実験毎に開回路に戻ることなく異なる技術を連結するために、EC−Lab(商標)ソフトウェアを使用した。検出可能な量の生成物を発生させるために、クロノアンペロメトリープロトコールを用いた電解電位を、典型的な実験では1時間、安定性試験では6時間印加した。
【0051】
[実施例5]
Cu/CNS電気触媒の電気還元活性
まず、CO
2電気還元活性を、
図3に示すように、CO
2飽和電解液の存在下で−0.00〜−1.30V対RHEの電位範囲で、リニアスイープボルタンメトリー(LSV)により測定した。Cu/CNS電極において、Cu/C−膜又は裸のCNS電極の何れかよりも大きな電流密度が得られ、Cu/CNS電極に対するCO
2還元の開始電位は、Cu粒子を含まないCNSよりも約0.3V正であった。
図3に示すように、Cu/CNSのLSV曲線では、−0.9V及び−1.20V対RHEで2つの明確な減少波が現れた。
【0052】
電気化学反応の機構を調べるために、これら2つの減少波を含む−0.7〜−1.3Vの電位範囲にわたって60分間のクロノアンペロメトリー(CA)測定を行った。各データポイントに対して新しい電極を作製した。(それぞれヘッドスペース及び電解液の)ガスクロマトグラフィー(GC)及びNMRにより、各CAランのガス及び液体生成物を分析し、CO
2還元及び各生成物についての全体電流密度及びファラデー効率を計算した。CO
2還元についての全体的な持続電流密度、J
CO2rednは、LSV曲線に示されたものと一致する3つの電極全てにおいて、負の電位が大きくなると共に増加した。Cu/CNS電極は、Cu/C−膜及び裸のCNS電極の何れかよりもCO
2還元傾向が高く、例えば、Cu/CNS電極からのJ
CO2rednは、−1.2Vにおいて、裸のCNSよりも5倍高く、Cu/C−膜よりも3倍高かった。
【0053】
部分ファラデー効率を、アンペロメトリー実験中に通過した全電子によって全電子を(化学分析により独立に決定される)各生成物に分割することによって計算した。アノードとカソードとの間の実験的な損失のために、合計の割合は100%未満である。部分ファラデー効率を
図4に示す。
【0054】
−0.9V対RHE及びより正の電位では、気相生成物H
2、CO及びCH
4のみが3つの電極全てから得られた。−1.0V対RHE及びより負の電位では、水性電解液に可溶な液体としてエタノールが生成された。場合によっては、微量のギ酸がNMRによって検出された。注目すべきことに、エタノールは唯一のCu/CNS由来の液相生成物であり、Cu/C−膜及び裸のCNS対照電極からは検出されない。C2生成物としてのエタノールは、還元反応中のある時点で炭素−炭素結合を必要とする。対照的に、対照電極はともにC2生成物を生成せず、C1生成物CO及びCH
4のみを生成した。メタノール、エタン又はエチレンなどの銅の電気還元によってより一般的に生成される他の生成物を観察する努力がなされたが、GC又はNMRの何れによっても検出されなかった。
【0055】
Cu/CNS電極上での様々な反応に対するファラデー効率の内訳を調べると、−1.2Vではエタノール転化率が63%で最高効率を示す(すなわち、電極を通過する電子の63%がエタノールとして貯蔵される)ことが判明した。また−1.2V対RHEでは、気相生成物であるメタン及びCOのファラデー効率は、それぞれ6.8%及び5.2%に低下した。(水還元との競合する)CO
2還元のファラデー効率は75%である。これは、最良の条件下で、CO
2をエタノールに転化する還元機構の全体的な選択性が84%であることを意味する。
【0056】
図5のプロットに示すように、各生成物の部分電流密度は、Cu/CNS電極に印加された電位に対して火山形状依存性を示した。メタンの最大電流密度は−1.0V対RHEで観測され、エタノール生成が開始されると減少した。次に、Cu/CNS電極が最高の全体的なCO
2還元効率を達成した−1.2V対RHEの頂点に達するまで、より大きな負の電位でエタノール生成の電流が増加した。より負の電位では、CO
2還元からのエタノール及び他の生成物の電流密度は同等のままであった;しかしながら、CO
2からエタノールへの転化のファラデー効率値は低下したが、H
2発生値は顕著に増加した。ファラデー効率の低下は、触媒がCO
2還元のための質量輸送に制限された電流密度に達し、従って空の活性部位でのH
2O還元による水素発生に達した結果であった。
【0057】
銅上でのCO
2電気還元の以前の報告では、CO、CH
4、CH
2O
2、エタン、エチレン、エタノールを含む様々なC1及びC2生成物が明示されている。より重い炭化水素は報告されていない。C2生成物は、銅の表面上でのCOラジカルのカップリングによって形成されると仮定され、C2生成物の高い百分率の結果は、Cu結合C1中間体の迅速なカップリング、又はおそらくは表面結合C1中間種と溶液中の近くのCOとの間のC−C結合形成に結び付けられた電子移動プロセスを示すだろう。通常、バルク銅では、生成物が銅電極と接触している限り、結合されたC2はエタン又はエチレンに還元され続けるだろう。対照的に、この実験では、エタノールが唯一のC2生成物として観察されており、それはエタンへのさらなる還元を妨げる反応機構の存在を示す。
【0058】
仮説は、Cu/CNS電気触媒において3つの電気化学的活性種:(i)Cuナノ粒子、(ii)カーボンナノスパイク中に存在する種々の窒素ドーパント、及び(iii)カーボンナノスパイク中で(α−Cと呼ばれる)窒素ドーパントに直接隣接した部分的に正電荷を有する炭素原子、が存在するというものである。Cuナノ粒子と炭素との間には強い相互作用が存在すると予測されており、カーボンナノスパイクにも拡張することが予期される。強い相互作用は、Cu表面上及びNドープされたカーボンナノスパイク上の反応部位と関連する反応機構が支配的となり得る環境を提供する。この環境では、近接した強い相互作用が、Cu表面からNドープされたカーボンナノスパイクへの中間C2種の移動を促進する。Cuナノ粒子とカーボンナノスパイクとの間の正確な距離を測定することは不可能であったが、HR−TEM画像によれば、接触は直接的で密接であるように見える。
【0059】
この移動は重要であるが、なぜなら、グラフェンのフェルミ準位に近い電子構造はNドープされたカーボンナノスパイクで改質され、ここで局在化されたπ電子状態が隣接する炭素原子で形成され、π共役系の摂動により欠陥まわりで非等方的に伝播すると報告されているからである。グラフェンπ共役系における電子吸引効果により、窒素に隣接するα−C原子は正に極性化される。この分極は、C2中間体を吸着する活性部位を提供する。
【0060】
Cuに吸着されたCO
2に電子が移動してCO
2・−adsを形成することに続く反応機構に関して、このアニオン性ラジカルは、Cu表面上でCO
ads又は他のC1中間体(CHO
ads又はCH
2O
ads)に還元される(化1参照)。CO及びメタンは、これらの表面種へのさらなる電子移動から生じるが、C−Cカップリングは、2つの表面吸着中間体の間、又は表面種と溶液からのCOとの間で生じ得る。−1.2V対RHEでは、主生成物はC2であり、COラジカルの生成速度が十分に高い場合、C2カップリングが主要な結果であることを示す(化2参照)。結合されたC2生成物が形成されると、それらはエタノールのみに還元される。エタノールが唯一のC2生成物であるためには、エタンの形成を防止するために電気還元を制限する機構が利用可能でなければならない。
【0061】
【化1】
【0062】
【化2】
【0063】
カーボンナノスパイク中の窒素ドーパント及び隣接するα−C原子がC2中間体を効果的に吸着できるかどうかを確認するために、第一原理密度汎関数理論(DFT)計算を行った。カーボンナノスパイクは多層グラフェンと同様の構造を有するため、グラフェンシートを採用して、カーボンナノスパイクとC2中間体(OCCOなど)との相互作用を物理学の本質を損なうことなく簡単にモデル化した。元のグラフェンシートでは、OCCOとグラフェンとの間の結合エネルギーは0.19eVであり、分離距離は約2.95Åであることが、計算により示唆されている。興味深いことに、Nドープされたグラフェンの場合、Nドーパント及び隣接するα−C原子が実際により活性になり、従って、OCCOとの結合エネルギーは0.64eVに増加し、分離距離は約2.70Åに短縮される。結合エネルギーが0.64eVへと3倍になったことは、C2中間体がNドープされたカーボンナノスパイクによってかなり強く吸着され得、室温で容易に脱着することができない可能性があることを明らかに示す。さらに、カーボンナノスパイクはひだ状でカールしており、表面上に局所的な波形を示すことは重要である。局所的な変形又は座屈がカーボンナノチューブ及びグラフェンの分子吸着を高めることが示されている。OCCO吸着における局所的な曲率効果を調べる際に、元の及びNドープされたグラフェンの座屈を考慮した。座屈時に、OCCOと元のグラフェンの凹面との間の結合エネルギーは0.34eVに増加し、一方で、OCCOとNドープされたグラフェンの凹面との間の結合エネルギーは0.74eVに向上した。従って、カーボンナノスパイク内に自然に埋め込まれた波形及び曲率は、カーボンナノスパイクとC2中間体との間の結合を強化するように見える。
【0064】
結果として、Cu表面に密接に接触しているカーボンナノスパイクの近くのNドーパント及びα−CはC2カルボニルの1つを吸着することが予想される。次いで、さらなる電気還元は、Cu表面の他のC2カルボニル上で優先的に起こる:
CNS・・・OCCO+5e
−+5H
+→CNS・・・OCH
2CH
3
【0065】
この段階で、中間種OCH
2CH
3中の2つの炭素原子は飽和し、一方で、酸素原子は不飽和になる。その結果、CNS−酸素結合がかなり強力な物理吸着からより強力な化学吸着に変化し、分離距離が1.48Åに減少することが、計算により示される。XPSは、長期にわたる電気還元実験中にグラファイト型Nの一部がピペリジン型Nに電気化学的に還元されることを示している。計算によれば、OCCOとピペリジン型Nでドープされたグラフェンとの間の結合エネルギーは約0.62eVであり、OCCOとグラファイト型Nでドープされたグラフェンとの間の結合エネルギー(約0.64eV)と同様である。従って、反応機構は両部位の間で同様に起こるべきである。ここで、さらなる還元のためには2つの経路がある:エタノールを生成するためのCNS−酸素結合の開裂;又はエタンを形成するためのOCH
2CH
3中のC−O結合の開裂。前者の還元経路は、はるかにエネルギー的に有利であり(1.59eVでより安定している)、エタノールが唯一のC2生成物であるという実験観察と一致する。従って、さらなる還元では、第1カルボニル上のCNS−酸素結合を開裂し、エタノールを生成する。
【0066】
図6は、電気触媒上にエトキシド(中間種)を吸着させた後の可能な反応経路を示す。中間種OCH
2CH
3(a)は、NドープされたCNS上に化学的に吸着される。さらなる電気還元のための2つの経路が示されている:エタノール(b)を生成するためのCNS−酸素結合の開裂、又はエタン(c)を形成するためのOCH
2CH
3中のC−O結合の開裂。
【0067】
全体的な還元機構を
図7に示す。この機構において、新規な官能性は、主として、複数の反応部位の近接性によるものであり、次に、電気触媒のナノ構造形態に起因するものである。これは、反応の選択性が形態学及び反応部位間の距離にのみ基づいて調整され得ることを実証する。異なる電位での生成物の結果の変化はまた、その機構について幾つかの洞察をもたらす。低電位では、アルコールは生成されず、C2生成物もない。これは、律速段階がCu表面上でのCO
2の最初の還元であることによる可能性がある。より高い過電圧では、Cu表面上において還元されたCO種の濃度が増加し、C2カップリング及び後続のエタノール生成の可能性がより高くなる。より低いCO種の濃度では、カップリングは起こらず、生成物は部分的にCOに還元されるか、又は完全にメタンに還元される。この反応機構は、その場での電気化学的ラマン測定によって支持される。印加電位がないと、(CNS基板の多層グラフェンからの1610cm
−1の広域Gバンド及び1370cm
−1のDバンドに加えて)1020cm
−1のCO
32−伸縮バンドのみがCu/CNS電極上で観察された。この観察は、CNS上に吸着されたCO
32−又はバルク電解液中の重炭酸塩に対応し得る。負の電位を印加すると、1460及び1520cm
−1のピークが直ちに生じ、これは表面中間体が生成されていることを示す。これらのピークは、電気化学的実験と一致して、C−H伸縮及びCH
3変形にそれぞれ帰属され得る。−1.2V及びより負の電位では、1070cm
−1に新しいピークが生じ、これはアルコキシル又はアルコールに帰属する。このピークは電位が印加されると直ちに現れ、電位が除去されると消失した。従って、上記の観察は、電解液中に拡散した生成物ではなく、表面に吸着された種の結果である可能性がある。エタノールが溶液中で唯一検出可能な生成物であることを考慮すると、1070cm
−1のピークは、エタノール又はその中間前駆体中のエトキシルC−O伸縮に帰属され得る。
【0068】
本発明の好ましい態様と現在考えられているものを示し、記載してきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内にある様々な変更及び改変を行うことができる。