特許第6947762号(P6947762)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6947762盲人および視覚遮断下環境での装置使用者への人接近報知情報化装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6947762
(24)【登録日】2021年9月21日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】盲人および視覚遮断下環境での装置使用者への人接近報知情報化装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/08 20060101AFI20210930BHJP
   A61H 3/06 20060101ALI20210930BHJP
   G08G 1/005 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   A61F9/08
   A61H3/06 Z
   G08G1/005
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-7405(P2019-7405)
(22)【出願日】2019年1月20日
(65)【公開番号】特開2020-115947(P2020-115947A)
(43)【公開日】2020年8月6日
【審査請求日】2020年5月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】719000292
【氏名又は名称】木村 朗
(72)【発明者】
【氏名】木村 朗
【審査官】 寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 Akira Kimura,Effect of Electric-Stimulation Alert Device for Object Collision Avoidance during Walking of People with Blindness,日本公衆衛生理学療法雑誌(JJPHPT),日本,日本公衆衛生理学療法研究会,2018年,Vol. 6 No. 2,pp. 7-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/08
A61H 3/06
G08G 1/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
盲人もしくは視覚情報が利用できない状況における健常者である装置使用者に他者が接近する警告情報を所定の時間以内に通知する装置であって、他者の接近にかかる警告情報を得る情報検知手段と、前記情報検知手段からの検知信号を受けて装置使用者の皮膚へ所定の周波数からなる規則的な通電をすることによる電気刺激を休止する通電手段を有する人接近報知情報化装置において、前記通電手段は電流強度を前記装置使用者の心波形のRR波間隔の高周波成分と低周波成分の比に基づき前記使用者の心拍数の急増を生じさせない電流強度とすることを特徴とする人接近報知情報化装置。
【請求項2】
前記通電手段において、前記規則的な通電は、波形が3から30Hzの矩形状、もしくは半円状、あるいはその組み合わせによるものであり、前記電流強度は前記規則的な通電の最大値が、装置使用者の心電図の測定による心波形のRR波間隔の高周波成分0.9Hz以上の成分と、低周波成分0.3Hzから0.9Hz未満の成分との比が1.5以下になるような値とすることを特徴とする請求項1に記載の人接近報知情報化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人が接近していることを盲人や暗闇など視覚遮断下環境で、皮膚への通電形態によって知らせる情報技術に関する。
【背景技術】
【0002】
人が接近していることを、盲人や暗闇で知らせる赤外線センサーで検知し、その接近の程度の閾値を超えた場合に音や振動で知らせる方法が考えられるが、雑音下や振動装置以上の身体への振動が生じる環境では警告信号を伝えることはできない。また、一度センサーが働くと、次の動作を行う際に容易にリセットできず、歩行時に歩行を中断させずに連続して働く小型かつ身体に装着可能な身体への通電を情報源として用いる装置は存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
従来、盲人等の身体障害者、又は、高齢者等の歩行者に突然異常が生じた場合に、その 周囲の他の人に手助けを求めるのに有効な安全杖が提案されている。より具体的には、夜間の通行中に、自動車等に歩行者の存在を明らかにするため、照明灯付きの杖が提案されている。また、夜間及び昼間を問わず、歩行者の所在位置を自動車運転者等に知らしめる、あるいは何らかの意志を自動車等に伝達するため、ブザー付きの杖も提案されている。又はそれに類似する技術としては、例えば下記の文献に示される技術がある
【0004】
しかし、これら従来の杖にあっては、杖の使用者に異常が生じた際にそれを周囲に音声をもって知らせて助けを求めることができない欠点があった。
【0005】
この改善策として、杖の使用者のスイッチ操作に応じて、音声を出力したり、表示器を点灯させたりして、歩行者の周囲にいる人に手助けを求めることのできる安全杖が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1に開示された安全杖は、杖の使用者たる歩行者の感覚を頼りにしたスイッチ操作をきっかけとして、音声を出力したり、表示器を点灯させたりするものである。それ故、近年の、盲人に衝突するスマートフォンなどをみながら歩行する他人の接近を検知することが出来ず、歩行者の聴覚が働き難い社会にあっては、歩行者のスイッチ操作も儘ならず、歩行者の周囲2mから減速せずに接近する人が、盲人や暗闇での歩行者との衝突が起こり得る危険性が増大するという問題が生じる。
また、歩行者の死角となる後方から接近する人などを盲人や暗闇での歩行者が確認することができる装置であって、歩行者の高い安全性を確保することができる接近報知装置として、歩行者の後方から接近する走行車両などの物又は人の接近状況を、歩行者の視覚、聴覚、及び、触角の少なくとも一つに訴えて歩行者へ報知可能な接近状況報知部を備え、後方から接近する走行車両の接近状況を、歩行者にリアルタイムで知らせることで、歩行者は、自らの死角(後部の不安視覚)から接近する人と衝突する危険性があっても、このような危険性を確認し、事前に回避することができる。また、その他の危険性を事前に察知し、その結果、歩行者の高い安全性を確保する装置が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】実用新案登録第3021826号公報
【特許文献2】特許出願公開番号 特開2015−118667
【発明の概要】
【0006】
盲人や暗闇において歩行する健常者において、人が接近してくる状況の報知を行う出力において音響や振動出力の代わりに低周波通電を圧着した電極を用いて生体の皮膚に行い、人間の神経伝達反応速度の限界付近において、利用可能な通電間隔のON、OFFを合図に用いて、音や振動によらず、人の接近状況を知らせる方法を、通電刺激方法および通電電流の強度において心電図の情報を用いながら調節する方式を含む心拍数人接近報知情報化装置の発明をした。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された安全杖は、杖の使用者たる歩行者の感覚を頼りにしたスイッチ操作をきっかけとして、音声を出力したり、表示器を点灯させたりするものである。それ故、近年のHV又はEV等の静音性能の向上に伴い、歩行者の聴覚が働き難い社会にあっては、歩行者のスイッチ操作も儘ならず、歩行者の死角となる後方180度から接近する車両などと、歩行者との衝突が起こり得る危険性が増大するという問題が生じる。また、特許文献2に開示された方法では、盲人や、暗闇で雑音が多い環境や、聴覚能力が低下した人では、警告信号装置から出力された音響が聞き取れず、察知することができず、振動刺激装置による警告では、歩行時に生じる床からの反力によって振動装置の装着部位が移動するため、身体の定位置で信号を得ることが不可能である。また接近状況の通知を状況の発生によって開始される報知は、盲人において異常な緊張を強いるため、通知がもたらすストレスによる緊張状況が発生する問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明は、盲人や暗闇において歩行する健常者において、接近状況の報知を行う出力において音響や振動出力の代わりに低周波通電を圧着した電極を用いて生体の皮膚に行い、人間の神経伝達反応速度の限界付近において、利用可能な通電間隔のON、OFFを合図に用いて、音や振動によらず、人の接近状況を知らせる方法を提供すること、その際に生理的要因として、自律神経機能の亢進が少ない、心波形のRR波間隔の高周波成分0.9Hz以上の成分と、低周波成分0.3Hzから0.9Hz未満の比が1.5以下になる電流強度を用いることで、通電を警告情報として用いる際に、通電刺激による心拍数の急増化を防ぎ、盲人や暗闇での歩行者の高い安全性を確保することができる人接近報知情報化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、盲人もしくは視覚情報が利用できない状況における健常者である装置使用者に他者が接近する警告情報を所定の時間以内に通知する装置であって、他者の接近にかかる警告情報を得る情報検知手段と、前記情報検知手段からの検知信号を受けて装置使用者の皮膚へ所定の周波数からなる規則的な通電をすることによる電気刺激を休止する通電手段を有する人接近報知情報化装置において、前記通電手段は電流強度を前記装置使用者の心波形のRR波間隔の高周波成分と低周波成分の比に基づき前記使用者の心拍数の急増を生じさせない電流強度とすることを特徴とする。
本発明の他の発明は、前記通電手段において、前記規則的な通電は、波形が3から30Hzの矩形状、もしくは半円状、あるいはその組み合わせによるものであり、前記電流強度は前記規則的な通電の最大値が、装置使用者の心電図の測定による心波形のRR波間隔の高周波成分0.9Hz以上の成分と、低周波成分0.3Hzから0.9Hz未満の成分との比が1.5以下になるような値とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、規則的な通電刺激を人の接近による警戒を知らせる手段を低周波通電によって知らせることで、雑音の多い環境であっても、盲人は警告情報を認識できる。更に、警告信号の形態および強度を人間の生体機能の測定結果に基づき決定することから、ストレスを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の一実施形態を示す斜視図である。図1において、1 接近する人 2 装置利用者 3 無線通信式赤外線センサー 4 ウェアラブルPCまたはスマートフォン 5 無線通信式信号処理リレー回路 6 通電用周波数発生装置 7 生体貼付用電極 8 無線通信式回路ONOFFスィッチ 9 心電図測定装置
図2】装置を示す斜視図である。図2において、1 無線通信式赤外線センサー 2 ウェアラブルPCまたはスマートフォン 3 無線通信式信号処理リレー回路 4 通電用周波数発生装置 5 生体貼付用電極 6 無線通信式スイッチ 7 リレー低周波通電装置連結ケーブル 8 低周波通電装置電極連結ケーブル 9 無線通信の模式(点線は電波によって連結していることを示す) 細字は図の装置の実機の長さ(mm)を示す。 10 心電図測定装置
図3】警告信号を可視化した図である。図3において 1 センサーが人を感知した場合に通電信号を休止する場合の波形(例として生体通電時の低周波3Hz)の波形 2 0.33秒に一度最大ピークの電流が流れる様子 3 赤外線センサーに2m以遠から、2m以内に人が接近することを感知した場合に出力が中止される様子 4 センサーが人を感知した場合に通電信号を与える場合の波形
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の一実施形態を、図1に示す。
人接近通電警告情報化装置は、警告情報を生体への通電による信号として、1に示す人体の接近を2m地点で検出し、2に示した装置の使用者が3に示した赤外線センサーから入力された人の接近事象を無線通信で連結し、4に示す携帯型コンピュータ上のソフトウェアにおいてデジタル信号をアナログ信号に変換した後、5に示すリレー回路を無線通信により働かせ、6に示す生体に通電を行う回路から出力された低周波電流として、7に示す電極によってオシロスコープによって可視化可能な3Hzの周波数で規則的に通電する青信号と、接近を知らせ、警告するためにこの規則的な通電の切断を行うものである。6に示す装置は無線通信によって、この警告を8に示す無線通信によって6と連結するスイッチでリセットすることで、再び、人の接近の有無を検知し、警告装置を継続して働かせるスイッチにより、静止状態のみならず、本装置を移動しながら使用することが可能となる。9に示す小型心電図測定装置により、心拍を測定し、自律神経機能の変化を検知することにより、4に示すセンサーからの入力信号に対するリレー回路の開閉の順番を自律神経機能の変化が少ない方に設定する。
「実施形態の効果」
【0013】
この実施形態によれば、規則的な通電刺激を人の接近による警戒を、安全な状況を、人間の刺激反射反応時間の上限閾値である0.2秒以内に知覚させる間欠的誘電信号で知らせることから、心理生理学的ストレスとして神経機能における交感神経の過度な亢進を伴わない警告になり、低周波通電の切断を信号に用いることで、装置を使用して歩行した場合、視覚的に確認できない範囲から人が接近してきて衝突が生じた場合でも、事前に身構えることができるため、衝突事故による転倒の危険が減少し、駅のホーム端から衝突によって線路に転落する危険を軽減することが期待できる。また、複数の人の接近事象が連続的に生じる場合、1事象が生じた後に、装置の解除と再始動を速やかに行う必要があるが、ウェアラブルPCまたはスマートフォンにおけるソフトウェアアプリケーションを利用することで、煩雑なスイッチの操作を行わずに、無線式回路のONOFFスイッチと連動させることによって、速やかな装置の連続使用が可能となり、生活上も求められる盲人の歩行移動中の行動を妨げず、円滑な移動が可能になることが期待される。
「他の実施形態」
【0014】
図1の実施形態では、出力は低周波信号、図3の通りであったが、他の実施形態では、低周波波形は3から30Hzの矩形状、もしくは半円状など、信号として強弱および通電間隔が不規則、あるいはその組み合わせで直接通電する形態のほか、電磁界を利用して生体に非接触で信号与えても良い。また無線通信を有線に置換し、一つの筐体においても良い。
【産業上の利用可能性】
【0015】
この装置は、既存の市販品を組みあわせることや、装置を一つの筐体におさめた製品によって盲人にとって他人が衝突する可能性の環境における歩行中の不測の転倒を防ぐ装置として、使用可能であり、盲人が公共交通機関を利用して、仕事の現場に移動することができないために就業できないケースなど、身体障害者の雇用を拡大させる必要のある3次産業や4次産業において、障害のある従業員の通勤における行動支援を促し、障害者雇用促進効果が見込まれる。また、暗闇で作業を行わざるえない夜間作業を遂行する場合、装置の使用によって他人の接近を視覚に依存せず発見できるため、衝突回避を促し、監視者の常時監視の軽減などによる警備に関わるサービス産業等において活用が期待される。
【新規性喪失の例外】
【0016】
本装置について、平成30年9月22日、国際複合環境要因学会、群馬パ―ス大学(群馬県高崎市)にて、装置を含めた研究発表を行っている。










図1
図2
図3