(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6947797
(24)【登録日】2021年9月21日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 23/02 20060101AFI20210930BHJP
C04B 20/00 20060101ALI20210930BHJP
C04B 14/06 20060101ALI20210930BHJP
C04B 14/22 20060101ALI20210930BHJP
C04B 16/06 20060101ALI20210930BHJP
C04B 14/42 20060101ALI20210930BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20210930BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20210930BHJP
C04B 16/08 20060101ALI20210930BHJP
C04B 14/28 20060101ALI20210930BHJP
C04B 14/38 20060101ALI20210930BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
B28B23/02 Z
C04B20/00 A
C04B14/06 Z
C04B14/22
C04B16/06 B
C04B16/06 A
C04B14/42 Z
C04B18/08 Z
C04B18/14 Z
C04B16/08
C04B14/28
C04B14/38 A
C04B28/02
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-218697(P2019-218697)
(22)【出願日】2019年12月3日
(65)【公開番号】特開2021-41688(P2021-41688A)
(43)【公開日】2021年3月18日
【審査請求日】2019年12月3日
(31)【優先権主張番号】10-2019-0111410
(32)【優先日】2019年9月9日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518033439
【氏名又は名称】コリア インスティテュート オブ シビル エンジニアリング アンド ビルディング テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】KOREA INSTITUTE OF CIVIL ENGINEERING AND BUILDING TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】リュ、 ガン ソン
(72)【発明者】
【氏名】コー、キョン テイク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョン ヨル
(72)【発明者】
【氏名】アン、ギ ホン
(72)【発明者】
【氏名】セオ、ドン ウ
(72)【発明者】
【氏名】ジン、スン ソプ
【審査官】
神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−006983(JP,A)
【文献】
特表2009−532317(JP,A)
【文献】
特表2016−529200(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02842923(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 23/02
C04B 20/00
C04B 14/06
C04B 14/22
C04B 16/06
C04B 14/42
C04B 18/08
C04B 18/14
C04B 16/08
C04B 14/28
C04B 14/38
C04B 28/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントを、微細粉末バインダー、角ばった充填材料、及び有機繊維と混合することによって形成され、それにより、テキスタイルグリッド強化体との境界面での滑り、及び亀裂の発生を抑えるセメント複合体と、
セメント複合体の中に埋め込まれて配置され、前記セメント複合体を強化する前記テキスタイルグリッド強化体と、
を備えるテキスタイル強化セメント複合体あって、
前記セメント複合体は、100重量部の前記セメント、40〜60重量部の球状バインダー、10〜30重量部の前記微細粉末バインダー、180〜225重量部の一般砂、75〜120重量部の前記角ばった充填材料、55〜75重量部の配合水、0.5〜2.5重量部の前記有機繊維、及び0.1〜0.3重量部の混和剤を混合することによって形成され、
前記角ばった充填材料は、前記テキスタイルグリッド強化体及び前記セメント複合体の間の滑り、並びに前記セメント複合体の亀裂の発生を抑え、
前記微細粉末バインダーは、所定の粒径を有し、前記テキスタイルグリッド強化体及び前記セメント複合体の間の滑りを抑え、
前記有機繊維は、繊維架橋反応によって前記セメント複合体の亀裂の発生を抑え、微細な亀裂の分布を誘発する、
滑り及び亀裂の発生を抑えるテキスタイル強化セメント複合体。
【請求項2】
前記充填材料の全体は、25〜45%の前記角ばった充填材料及び60〜75%の前記一般砂を含み、
前記角ばった充填材料は、部分的に前記一般砂に置換される、
請求項1のテキスタイル強化セメント複合体。
【請求項3】
前記角ばった充填材料は、45〜52%の粒形分布を有する角ばった砂又はガラス粉末である、請求項2のテキスタイル強化セメント複合体。
【請求項4】
前記一般砂は、1〜5mmの粒径を有する、請求項2のテキスタイル強化セメント複合体。
【請求項5】
ポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリプロピレン(PP)繊維、ポリエチレン(PE)繊維、ガラス繊維、又はナイロン繊維から選択されるステープルファイバーである前記有機繊維は、前記繊維架橋反応によって前記セメント複合体の亀裂の発生を抑え、微細な亀裂の分布を誘発する、請求項1のテキスタイル強化セメント複合体。
【請求項6】
前記角ばった充填材料の使用により起こる前記セメント複合体の流動性の劣化を抑えるバインダーである前記球状バインダーは、フライアッシュ、シリカヒューム、及び軽量ビーズから選択される少なくとも1つを含む、請求項1のテキスタイル強化セメント複合体。
【請求項7】
前記混和剤は、前記角ばった充填材料の使用により起こる前記セメント複合体の流動性の劣化を抑え、高流動化剤、減水剤、及び広範囲減水剤から選択される少なくとも1つを含む、請求項1のテキスタイル強化セメント複合体。
【請求項8】
前記微細粉末バインダーは、2〜10μmの平均粒径を有するバインダーであり、前記テキスタイルグリッド強化体及び前記セメント複合体の間の滑りを抑える、請求項1のテキスタイル強化セメント複合体。
【請求項9】
前記微細粉末バインダーは、微細ガラス粉末、微細シリカ粉末、及び微細石灰粉末から選択される少なくとも1つを含む、請求項8のテキスタイル強化セメント複合体。
【請求項10】
前記テキスタイルグリッド強化体は、前記セメント複合体の中に埋め込まれ、ガラス繊維、炭素繊維、又はアラミド繊維を織ることによって形成される、請求項1のテキスタイル強化セメント複合体。
【請求項11】
a)所定の形状を有する型にテキスタイルグリッド強化体を配置し、
b)セメント、球状バインダー、及び微細粉末バインダーを含むバインダーを形成し、
c)一般砂及び角ばった充填材料を含む充填材料を形成し、
d)前記バインダー、前記充填材料、配合水、及び混和剤を混合することにより、セメント複合体のためのセメントペーストを形成し、
e)有機繊維及び前記セメントペーストを混合し、
f)前記有機繊維と混合された前記セメントペーストを、前記型内の前記テキスタイルグリッド強化体の上に注ぎ、
g)前記セメントペーストを硬化及び乾燥させて、前記セメント複合体の中に埋め込まれた前記テキスタイルグリッド強化体を有するテキスタイル強化セメント複合体を完成させる、
方法であって、
前記角ばった充填材料は、前記テキスタイルグリッド強化体及び前記セメント複合体の間の滑り、並びに前記セメント複合体の亀裂の発生を抑え、
前記微細粉末バインダーは、所定の粒径を有し、前記テキスタイルグリッド強化体及び前記セメント複合体の間の滑りを抑え、
前記有機繊維は、繊維架橋反応によってセメント複合体の亀裂の発生を抑え、微細な亀裂の分布を誘発する、
滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体の製造方法。
【請求項12】
前記セメント複合体は、100重量部の前記セメント、40〜60重量部の前記球状バインダー、10〜30重量部の前記微細粉末バインダー、180〜225重量部の前記一般砂、75〜120重量部の前記角ばった充填材料、55〜75重量部の前記配合水、0.5〜2.5重量部の前記有機繊維、及び0.1〜0.3重量部の前記混和剤を混合することによって形成される、請求項11の方法。
【請求項13】
前記充填材料の全体は、25〜45%の前記角ばった充填材料及び60〜75%の前記一般砂を含み、
前記角ばった充填材料は、部分的に前記一般砂に置換される、
請求項12の方法。
【請求項14】
前記角ばった充填材料は、45〜52%の粒形分布を有する角ばった砂又はガラス粉末であり、
前記一般砂は、1〜5mmの粒径を有する、
請求項12の方法。
【請求項15】
ポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリプロピレン(PP)繊維、ポリエチレン(PE)繊維、ガラス繊維、又はナイロン繊維から選択されるステープルファイバーである前記有機繊維は、前記繊維架橋反応によって前記セメント複合体の亀裂の発生を抑え、微細な亀裂の分布を誘発する、請求項12の方法。
【請求項16】
前記角ばった充填材料の使用により起こる前記セメント複合体の流動性の劣化を抑えるバインダーである前記球状バインダーは、フライアッシュ、シリカヒューム、及び軽量ビーズから選択される少なくとも1つを含む、請求項12の方法。
【請求項17】
前記混和剤は、前記角ばった充填材料の使用により起こる前記セメント複合体の流動性の劣化を抑え、高流動化剤、減水剤、及び広範囲減水剤から選択される少なくとも1つを含む、請求項12の方法。
【請求項18】
前記微細粉末バインダーは、2〜10μmの平均粒径を有するバインダーであり、前記テキスタイルグリッド強化体及び前記セメント複合体の間の滑りを抑える、請求項12の方法。
【請求項19】
前記微細粉末バインダーは、微細ガラス粉末、微細シリカ粉末、及び微細石灰粉末から選択される少なくとも1つを含む、請求項18の方法。
【請求項20】
前記テキスタイルグリッド強化体は、前記セメント複合体の中に埋め込まれ、ガラス繊維、炭素繊維、又はアラミド繊維を織ることによって形成される、請求項11の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.関連する出願の参照
本出願は、2019年9月9日に出願された韓国特許出願第10−2019−0111410号による優先権及び利益を請求するものであり、その開示は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、テキスタイル強化セメント複合体に関し、具体的には、セメント複合体の中にテキスタイルグリッド強化体を埋め込んでテキスタイル強化セメント複合体を形成する際のテキスタイルグリッド強化体及びセメント複合体の間の滑り並びにセメント複合体の亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の検討
図1は、強化棒強化コンクリート、繊維強化コンクリート、及びテキスタイル強化コンクリートを示す概要図を示す。
【0004】
図1Aに示されるように、強化棒強化コンクリート10は、セメント複合体であるモルタル/コンクリート11の中に、縦方向及び横方向に強化棒を埋め込むことにより形成される。
【0005】
また、
図1Bに示されるように、繊維強化コンクリート20は、セメント複合体であるモルタル/コンクリート21と、ガラス短繊維22等の繊維とを混合することにより形成される。
【0006】
さらに、
図1Cに示されるように、テキスタイル強化コンクリート30は、セメント複合体であるモルタル/コンクリート31の中に、格子形状のテキスタイルグリッド強化体32を埋め込むことにより形成される。
【0007】
典型的には、格子形状のグリッドは、土木建築において、擁壁強化、斜面強化、地面強化、及びその他に使用される強化材料である。グリッドは、その使用目的のために、構築可能性及び摩擦特性等の特性に加えて、高い引っ張り強度及び低い引っ張りひずみ(低い延性)を必要とする。
【0008】
このようなグリッドの製造方法は、一般的に、プラスチック材料を射出成形又は押出成形し、射出成形又は押出成形されたプラスチック材料を一定間隔で打ち出し、プラスチック材料を1軸又は2軸で延伸させることを含む。しかしながら、射出成形プラスチックを使用する格子形状のグリッドは、引っ張り強度が低く、一連の工程で製造することが難しく、サイズ及び形状に制限がある。
【0009】
近年、高強度の繊維を格子形状のテキスタイルに織編することでテキスタイルグリッド生地が提供され、テキスタイルグリッド生地の表面には、塩化ポリビニル、ビチューメン、アクリル、ラテックス、ゴム系樹脂、その他等の樹脂コーティング溶液が塗布され、高温熱処理によって製造されるテキスタイルグリッド強化体は、コンクリート構造を新しく建築又は強化することに効果的に使用される。
【0010】
さらに、テキスタイルグリッド強化体は、従来のプラスチックグリッドよりも高い強度を有する繊維を使用するため、高い引っ張り強度及び低い引っ張りひずみを有し、それにより、構造を建築及び強化するための優れた構造的な材料特性を有する。
【0011】
図2は、
図1に示されるテキスタイル強化コンクリートの構造を示す詳細図であり、
図3は、関連技術によるテキスタイル強化コンクリートの間の滑り及び亀裂の発生を説明する詳細図である。
【0012】
図2に示されるように、平面グリッドは、土木建築の分野において、特に軽量、薄層構造の強化材料として、広く使用されており、ガラス繊維、炭素繊維、バサルト繊維等の高強度繊維を高強度繊維に織ることによって製造されるテキスタイルグリッド32として形成される。
【0013】
テキスタイルグリッド32を使用して製造されるテキスタイル強化コンクリートは、軽量特性によって、建築部材及び薄い土木建築構造に使用されるが、テキスタイル強化コンクリート構造は、曲がる際には交互に緊張及び圧縮されるため、テキスタイルグリッド強化体は、2層で配置されてよい。
【0014】
典型的には、テキスタイル強化セメント複合体30は、テキスタイル強化体によって、屈曲性能及び引張性能を確保することによる構造の荷重抵抗性能及び耐震性能を有することが期待されるが、関連技術のテキスタイル強化セメント複合体30では、従来の強化棒強化コンクリート10として使用されるに十分な屈曲性能及び引張性能を確保することが難しい。
【0015】
図3に示されるように、荷重が加わった際、テキスタイルグリッド強化体32とセメント複合体31との間の境界面の弱い接着性能によってテキスタイルグリッド強化体32が滑り、縦方向及び横方向にセメント複合体31の亀裂が起こり、従って、テキスタイル強化セメント複合体30は壊れ得る。
【0016】
一方、
図4は、テキスタイル強化セメント複合体の荷重/屈曲と亀裂との相関を示す図であり、
図5は、テキスタイル強化セメント複合体の張力と亀裂との相関を示す図である。
【0017】
図4及び5に示されるように、テキスタイルグリッド強化体32及びセメントバインダーのみを使用してコンクリートを製造した場合、強度は、曲げ張力が加わり最初の亀裂が起こった後に著しく低下し、複数の亀裂が起こり、亀裂は拡がり、それにより、セメント複合体は壊れ得る。
【0018】
具体的には、テキスタイルグリッド強化体の表面のコーティングによって境界面での滑りが発生する可能性があり、コーティング材料によってエポキシ又は粗表面を有する材料等のテキスタイルグリッド強化体をコーティングする方法が、テキスタイルグリッド強化体とセメント複合体との間の滑りを防止するために使用されてよいが、これは、コーティング材料をコーティングする追加の工程が必要であり、従って、追加の時間及びコストが必要であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】韓国特許番号10−1772625(2017年8月23日登録)、発明の名称「コンクリート構造強化のための無機複合体及びそれを使用するコンクリート構造の強化方法」
【0020】
【特許文献2】韓国特許番号10−1207038(2012年11月26日登録)、発明の名称「ファインガラス繊維を備える超高性能繊維強化セメント複合体及びその製造方法」
【0021】
【特許文献3】韓国特許番号10−1958243(2019年5月8日登録)、発明の名称「三次元テキスタイルグリッド強化体の製造方法及びそれを使用するテキスタイル強化コンクリート構造の構築方法」
【0022】
【特許文献4】韓国特許番号10−2003670(2019年7月19日登録)、発明の名称「テキスタイルグリッド固定装置を使用するテキスタイル強化コンクリート構造」
【0023】
【特許文献5】韓国公開番号2005−18744(2005年2月28日公開)、発明の名称「ミクロ及びマイクロ繊維に強化されたハイプリッド型の高靭性セメント複合体の製造方法」
【0024】
【特許文献6】韓国公開番号2004−79629(2004年9月16日公開)、発明の名称「ステープルファイバー強化高靭性セメント複合材料の製造方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、セメント複合体の中にテキスタイルグリッド強化体を埋め込むことによって形成されるテキスタイル強化セメント複合体を製造する際に、そこに混合される角ばった充填材料を使用してテキスタイルグリッド強化体及びセメント複合体の間の滑り並びにセメント複合体の亀裂を抑える、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体を提供することを対象とする。
【0026】
本発明は、また、セメント複合体の中にテキスタイルグリッド強化体を埋め込むことによって形成されるテキスタイル強化セメント複合体を製造する際に、そこに混合される有機繊維を使用する繊維架橋反応によってセメント複合体の亀裂の発生を抑え、微細な亀裂の分布を誘発する、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体を提供することを対象とする。
【0027】
本発明は、また、セメント複合体の中にテキスタイルグリッド強化体を埋め込むことによって形成されるテキスタイル強化セメント複合体を製造する際の、そこに加えられる球状バインダー及び混和剤を使用する角ばった充填材料の混合によって起こる、セメント複合体の流動性の劣化を抑える、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体を提供することを対象とする。
【0028】
本発明の様態によれば、微細粉末、角ばった充填材料、及び有機繊維を混合することにって形成され、それにより、テキスタイルグリッド強化体との境界面で発生する滑り、及び亀裂を抑えるセメント複合体と、セメント複合体に埋め込まれて配置され、セメント複合体を強化するテキスタイルグリッド強化体と、を備えるテキスタイル強化セメント複合体と、が提供され、セメント複合体は、100重量部のセメント、40〜60重量部の球状バインダー、10〜30重量部の微細粉末バインダー、180〜
225重量部の一般砂、75〜120重量部の角ばった充填材料、55〜75重量部の配合水、0.5〜2.5重量部の有機繊維、及び0.1〜0.3重量部の混和剤を混合することによって形成され、角ばった充填材料は、テキスタイルグリッド強化体及びセメント複合体の間の滑り並びにセメント複合体の亀裂の発生を抑え、微細粉末バインダーは、所定の粒径を有し、テキスタイルグリッド強化体及びセメント複合体の間の滑りを抑え、有機繊維は、繊維架橋反応によってセメント複合体の亀裂の発生を抑え、微細な亀裂の分布を誘発する。
【0029】
充填材料の全体は、25〜45%の角ばった充填材料及び60〜75%の一般砂を含んでよく、角ばった充填材料は、部分的に一般砂に置換される。
【0030】
角ばった充填材料は、45〜52%の粒形分布を有する角ばった砂又はガラス粉末であってよく、一般砂は、1〜5mmの粒径を有する。
【0031】
ポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリプロピレン(PP)繊維、ポリエチレン(PE)繊維、ガラス繊維、又はナイロン繊維から選択されるステープルファイバーである有機繊維は、繊維架橋反応によってセメント複合体(110)の亀裂の発生を抑えてよく、微細な亀裂の分布を誘発してよい。
【0032】
角ばった充填材料の使用により起こるセメント複合体の流動性の劣化を抑えるバインダーである球状バインダーは、フライアッシュ、シリカヒューム、及び軽量ビーズから選択される少なくとも1つを含んでよい。
【0033】
混和剤は、角ばった充填材料の使用により起こるセメント複合体の流動性の劣化を抑えてよく、高流動化剤、減水剤、及び広範囲減水剤から選択される少なくとも1つを含んでよい。
【0034】
微細粉末バインダーは、2〜10μmの平均粒径を有するバインダーであってよく、テキスタイルグリッド強化体及びセメント複合体の間の滑りを抑える。
【0035】
微細粉末バインダーは、微細ガラス粉末、微細シリカ粉末、及び微細石灰粉末から選択される少なくとも1つを含んでよい。
【0036】
テキスタイルグリッド強化体は、セメント複合体の中に埋め込まれてよく、ガラス繊維、炭素繊維、又はアラミド繊維を織ることによって形成されてよい。
【0037】
本発明の様態によれば、a)所定の形状を有する型にテキスタイルグリッド強化体を配置し、b)セメント、球状バインダー、及び微細粉末バインダーを含むバインダーを形成し、c)一般砂及び角ばった充填材料を含む充填材料を形成し、d)バインダー、充填材料、配合水、及び混和剤を混合することにより、セメント複合体のためのセメントペーストを形成し、e)有機繊維及びセメントペーストを混合し、f)有機繊維と混合されたセメントペーストを、型内のテキスタイルグリッド強化体の上に注ぎ、g)セメントペーストを硬化及び乾燥させて、セメント複合体の中に埋め込まれたテキスタイルグリッド強化体を有するテキスタイル強化セメント複合体を完成させることを含む、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体の製造方法が提供され、角ばった充填材料は、テキスタイルグリッド強化体及びセメント複合体の間の滑りを抑え、微細粉末バインダーは、所定の粒径を有し、テキスタイルグリッド強化体及びセメント複合体の間の滑りを抑え、有機繊維は、繊維架橋反応によってセメント複合体の亀裂の発生を抑え、微細な亀裂の分布を誘発する。
【0038】
本発明の上記及び別の目標、特徴、及び利点は、付される図面を参照して、その例示的な実施の形態を具体的に説明することにより、当業者にとってより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、強化棒強化コンクリート、繊維強化コンクリート、及びテキスタイル強化コンクリートを示す概要図を示す。
【
図2】
図2は、
図1に示されるテキスタイル強化コンクリートの構造を示す詳細図である。
【
図3】
図3は、関連技術に係る、テキスタイル強化コンクリートの滑り及び亀裂の発生を説明するための詳細図である。
【
図4】
図4は、テキスタイル強化セメント複合体の荷重/屈曲と亀裂との相関を示す図である。
【
図5】
図5は、テキスタイル強化セメント複合体の張力と亀裂との相関を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態に係る、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体を示す概略構成図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態に係る、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体におけるセメント複合体の混合比の例を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態に係る、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体を示す断面図を示す。
【
図9】
図9は、本発明の実施の形態に係る、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体の引張及び応力の間の相関を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施の形態に係る、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体の製造方法を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、本発明の実施の形態に係る、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体のテキスタイルグリッド強化材料の例を示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施の形態に係る、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体のための試験装置を示す図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施の形態に係る、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体の曲げ張力を示す図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施の形態に係る、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体の曲げ張力挙動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、当業者が容易に実行できる実施の形態が、付される図面を参照して詳細に説明される。しかしながら、本発明の実施の形態は、複数の異なる形態で実装可能であり、本明細書に説明される実施の形態に限定されない。また、説明とは無関係な部分は、本発明の実施の形態を明確に説明するために、図からは省略される。本明細書を通して、同様の部分は、同様の参照番号がふられる。
【0041】
本明細書を通して、部分が要素を「含む」場合、その部分は、その要素を含んでいてよく、別の要素が、説明されない限り、さらに含まれていてもよい。
【0042】
[滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体100]
図6は、本発明の実施の形態に係る、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体を示す概略構成図であり、
図7は、本発明の実施の形態に係る、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体におけるセメント複合体の混合比の例を示す図である。
【0043】
図6及び7に示されるように、本発明の実施の形態に係る、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体100は、セメント複合体110と、テキスタイルグリッド強化体120と、を含み、セメント複合体110は、100重量部のセメント111、40〜60重量部の球状バインダー112、10〜30重量部の微細粉末バインダー113、180〜
225重量部の一般砂114、75〜120の角ばった充填材料115、55〜75重量部の配合水116、0.5〜2.5重量部の有機繊維117、及び0.1〜0.3重量部の混和剤118を混合することによって形成される。
【0044】
滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体のセメント複合体110は、セメントを、微細粉末バインダー113、角ばった充填材料115、有機繊維117、及びその他と混合することによって形成され、それにより、テキスタイルグリッド強化体120との境界面での滑り、及び亀裂が抑えられる。
【0045】
テキスタイルグリッド強化体120は、セメント複合体110の中に埋め込まれるように配置され、セメント複合体110を強化する。例えば、テキスタイルグリッド強化体120は、セメント複合体110の中に埋め込まれ、ガラス繊維、炭素繊維、又はアラミド繊維を織ることによって形成されてよい。
【0046】
具体的には、セメント複合体110の角ばった充填材料115は、テキスタイルグリッド強化体120及びセメント複合体110の間の滑り、及びセメント複合体110の亀裂を抑える。本ケースでは、充填材料の全体は、25〜45%の角ばった充填材料115及び60〜75%の一般砂114によって形成され、角ばった充填材料115は、部分的に一般砂114に置換される。さらに、角ばった充填材料115は、45〜52%の粒形分布を有する角ばった砂又はガラス粉末であってよく、一般砂114は、1〜5mmの粒径を有する。
【0047】
さらに、有機繊維117は、繊維架橋反応によってセメント複合体の亀裂の発生を抑え、微細な亀裂の分布を誘発する。例えば、ポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリプロピレン(PP)繊維、ポリエチレン(PE)繊維、ガラス繊維、又はナイロン繊維から選択されるステープルファイバーである有機繊維117は、繊維架橋反応によって亀裂の発生を抑えてよく、微細な亀裂の分布を誘発してよい。すなわち、テキスタイルグリッド強化体120が従来の強化コンクリートの代替として適用される場合、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、又はその他等の有機繊維117がセメント複合体110に適用され、それにより、繊維架橋反応によってセメント複合体110の亀裂が拡がることが防止できる。
【0048】
さらに、セメント複合体110の流動性の劣化を抑えるバインダーである球状バインダー112は、フライアッシュ、シリカヒューム、及び軽量ビーズから選択される少なくとも1つを含んでよい。さらに、混和剤118は、セメント複合体110の流動性の劣化を抑え、高流動化剤、減水剤、及び広範囲減水剤から選択される少なくとも1つを含んでよい。
【0049】
さらに、セメント複合体110の微細粉末バインダー113は、所定の粒径を有し、テキスタイルグリッド強化体120及びセメント複合体110の間の滑りの発生を抑え、微細粉末バインダー113は、2〜10μmの平均粒径を有するバインダーであってよく、テキスタイルグリッド強化体及びセメント複合体の間の滑りを抑え、例えば、微細粉末バインダー113は、微細ガラス粉末、微細シリカ粉末、及び微細石灰粉末から選択される少なくとも1つを含んでよい。
【0050】
従って、本発明の実施の形態に係るテキスタイル強化セメント複合体100において、セメント複合体110は、角ばった砂若しくはガラス粉末等の角ばった充填材料115、微細シリカ粉末若しくは微細石灰粉末等の微細粉末バインダー113、又はPVA若しくはPP等の有機繊維117と混合され、テキスタイルグリッド強化体120及びセメント複合体110の間の滑り、及びセメント複合体110の亀裂を抑え、それにより、セメント複合体110の靭性が保証される。さらに、フライアッシュ又はシリカヒューム等の球状バインダー112は、さらに、高流動化剤又は減水剤等の混和剤118と混合され、角ばった充填材料115の使用によるセメント複合体110の
流動性の劣化を補償する。
【0051】
一方、
図8は、本発明の実施の形態に係る、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体を示す断面図を示し、
図8Aは、角ばった充填材料を使用する第1のテキスタイルグリッド強化セメント(TRC)100aを示し、
図8Bは、さらに球状バインダー及び混和剤を使用する第2のTRC100bを示し、
図8Cは、さらに有機繊維を使用する第2のTRC100cを示す。
【0053】
最初に、本発明の実施の形態に係るテキスタイル強化セメント複合体100は、テキスタイルグリッド強化体120が適用される非腐食性セメント複合体であり、テキスタイルグリッド強化体は、ガラス繊維、炭素繊維、又はアラミド繊維等の複合材料により織られて形成される織物であり、従来の強化棒又は強化メッシュの代替として適用可能である。テキスタイル強化セメント複合体100を形成するセメント複合体110は、セメントと、混和材と、砂と、混和剤と、いくつかの場合において、さらに、粗骨材と、を一般的に含む、従来のセメントモルタル又はセメントコンクリートに似ている。
【0054】
具体的には、
図8A及び表1に示されるように、本発明の実施の形態に係る、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体は、所定の粒径を有する角ばった砂及びシリカ粉末等の角ばった充填材料と混合され、それにより、テキスタイルグリッド強化体120及びセメント複合体110の間の滑り、及び滑りによるセメント複合体110の亀裂を抑える。
【0055】
換言すれば、本発明の実施の形態に係るテキスタイル強化セメント複合体100の場合、セメント複合体110が混合された時、角ばった砂又はガラス粉末等の角ばった充填材料115は、一般砂114の代替として部分的に使用され、微細粉末バインダー113を使用して、テキスタイルグリッド強化体120及びセメント複合体110の間の滑りを抑える。
【0056】
例えば、充填材料の全体の25〜40%である角ばった充填材料115の場合、45〜52%の粒形分布を有する角ばった砂又はガラス粉末は、一般砂と混合される。すなわち、充填材料の全体は、60〜75%の一般砂114及び25〜40%の角ばった充填材料115を含み、それにより、角ばった充填材料115は、部分的に一般砂114に置換されてよい。すなわち、本発明の実施の形態に係るテキスタイル強化セメント複合体の滑り及び亀裂が拡がることを抑えるために、セメント複合体は、所定の粒径を有する角ばった充填材料115と混合され、本ケースでは、45〜52%の粒形分布を有する角ばった砂又はガラス粉末が角ばった充填材料115として使用されてよい。
【0057】
さらに、微細ガラス粉末、微細シリカ粉末、又は微細石灰粉末等の2〜10μmの平均粒径を有する微細粉末バインダー113は、角ばった充填材料を使用する滑り防止効果をさらに向上させるために使用されてよく、本ケースでは、100重量部のセメント111に対して10〜30重量部の微細粉末バインダーが使用されてよい。本ケースでは、微細粉末バインダー113は、微細ガラス粉末、微細シリカ粉末、微細石灰粉末、又はその他であってよい。
【0058】
図8B及び表1に示されるように、本発明の実施の形態に係るテキスタイル強化セメント複合体100の場合、角ばった充填材料115は、セメント複合体110の流動性の劣化という問題を引き起こし、従って、この問題を解決するために、球状バインダー112及び混和剤118が使用されてよい。本ケースでは、フライアッシュ、シリカヒューム、軽量ビーズ、又はその他が球状バインダー112として使用されてよく、高流動化剤、減水剤、広範囲減水剤、又はその他が混和剤118として使用されてよい。
【0059】
図8C及び表1に示されるように、PVA繊維、PP繊維、PE繊維、ガラス繊維、ナイロン繊維、又はその他等の有機繊維117が、セメント複合体110を形成するために使用されてよく、それにより、繊維架橋反応によってセメント複合体の亀裂の発生が抑えられ、微細な亀裂の分布が誘発されてよい。例えば、2〜10μmの平均粒径を有する有機繊維が使用された場合、有機繊維の繊維架橋反応によってセメント複合体の亀裂の発生が抑えることができる。
【0060】
換言すれば、本発明の実施の形態に係るテキスタイル強化セメント複合体100において、
図5に示されるように、張力が引っ張り強度を上回る場合、亀裂が発生し、それにより、テキスタイルグリッド強化体120及びセメント複合体110の間の滑りがさらに拡がる。セメント複合体110の亀裂が拡がると、セメント複合体110として形成された構造は衰える。本ケースでは、セメント複合体110が形成される際に、PVA、PP、PE、ガラス、又はナイロン繊維等の0.5〜2.5%の有機繊維117が、セメント複合体110と混合され、繊維架橋反応によって亀裂の拡がりを防ぎ、それにより、本発明の実施の形態に係るテキスタイル強化セメント複合体100の延性が向上される。本ケースでは、有機繊維は、短いステープルファイバーであってよい。
【0061】
一方、
図9は、本発明の実施の形態に係る、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体の引張及び応力の間の相関を示す図である。
【0062】
図9に示されるように、第1のTRC、第2のTRC、及び第3のTRCは、記載された順番でより強く、従来のTRCよりも滑り及び亀裂を抑えてよい。
【0063】
最後に、本発明の実施の形態に係るテキスタイル強化セメント複合体100において、角ばった充填材料は、セメント複合体の中に埋め込まれたテキスタイルグリッド強化体を有するテキスタイル強化セメント複合体を製造する際に、混合され、それにより、テキスタイルグリッド強化体120及びセメント複合体110の間の滑り、及びセメント複合体の亀裂の発生を抑えることができる。
【0064】
さらに、本発明の実施の形態に係るテキスタイル強化セメント複合体100において、有機繊維が混合され、繊維架橋反応によってセメント複合体の亀裂の発生が抑えられ、微細な亀裂の分布が誘発される。
【0065】
さらに、本発明の実施の形態に係るテキスタイル強化セメント複合体100において、球状バインダー及び混和剤が加えられ、角ばった充填材料を混合することによるセメント複合体の流動性の劣化が抑えられ、所定の粒径を有する微細粉末バインダーが混合され、テキスタイルグリッド強化体120及びセメント複合体110の間の滑りが抑えられる。
【0066】
[滑り及び亀裂を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体100の製造方法]
図10は、本発明の実施の形態に係る、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体の製造方法を示すフローチャートである。
【0067】
図10を参照すると、本発明の実施の形態に係る、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体の製造方法において、最初に、テキスタイルグリッド強化体120が、所定の形状を有する型に配置される(S110)。例えば、テキスタイルグリッド強化体120は、セメント複合体110の中に埋め込まれ、ガラス繊維、炭素繊維、又はアラミド繊維を織ることによって形成されてよい。
【0068】
次に、バインダーが、セメント、球状バインダー、及び微細粉末バインダーを含んで形成される(S120)。本ケースでは、微細粉末バインダー113は、所定の粒径を有し、テキスタイルグリッド強化体120及びセメント複合体110の間の滑りを抑える。本ケースでは、微細粉末バインダー113は、平均粒径2〜10μmを有するバインダーであってよく、テキスタイルグリッド強化体120及びセメント複合体110の間の滑りを抑え、例えば、微細粉末バインダー113は、微細ガラス粉末、微細シリカ粉末、及び微細石灰粉末から選択される少なくとも1つを含んでよいが、本発明はこれに限定されない。
【0069】
さらに、セメント複合体110の流動性の劣化を抑えるバインダーである球状バインダーは、フライアッシュ、シリカヒューム、及び軽量ビーズから選択される少なくとも1つを含んでよいが、本発明はこれに限定されない。
【0070】
次に、充填材料が、一般砂114及び角ばった充填材料115を含んで形成される(S130)。本ケースでは、角ばった充填材料115は、テキスタイルグリッド強化体120及びセメント複合体110の間の滑り、及びセメント複合体110の亀裂を抑えるように働く。さらに、充填材料の全体は、25〜45%の角ばった充填材料115及び60〜75%の一般砂114を含んでよく、角ばった充填材料115は、部分的に一般砂114に置換される。本ケースでは、角ばった充填材料115は、45〜52%の粒形分布を有する角ばった砂又はガラス粉末であってよく、一般砂114は、1〜5mmの粒径を有してよい。
【0071】
次に、セメント複合体110のためのセメントペーストが、バインダー、充填材料、配合水116、及び混和剤118を混合することによって形成される(S140)。本ケースでは、混和剤118は、セメント複合体110の流動性の劣化を抑え、高流動化剤、減水剤、及び広範囲減水剤から選択される少なくとも1つを含んでよいが、本発明はこれに限定されない。
【0072】
次に、セメントペーストは、有機繊維117と混合される(S150)。本ケースでは、有機繊維117は、繊維架橋反応によってセメント複合体110の亀裂の発生を抑え、微細な亀裂の分布を誘発する。例えば、PVA繊維、PP繊維、PE繊維、ガラス繊維、又はナイロン繊維から選択されるステープルファイバーである有機繊維117は、繊維架橋反応によってセメント複合体110の亀裂の発生を抑えてよく、繊維亀裂の分布を誘発してよい。
【0073】
次に、有機繊維117と混合されたセメントペーストは、型内のテキスタイルグリッド強化体の上に注がれる(S160)。それにより、セメント複合体110が、100重量部のセメント111、40〜60重量部の球状バインダー112、10〜30重量部の微細粉末バインダー113、180〜
225重量部の一般砂114、75〜120の角ばった充填材料115、55〜75重量部の配合水116、0.5〜2.5重量部の有機繊維117、及び0.1〜0.3重量部の混和剤118を混合することによって形成される。
【0074】
次に、注がれたセメント複合体110は、乾燥及び硬化され、セメント複合体110の中に埋め込まれたテキスタイルグリッド強化体120を有するテキスタイル強化セメント複合体100が完成される(S170)。
【0075】
一方、
図11は、本発明の実施の形態に係る、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体のテキスタイルグリッド強化材料の例を示す図であり、
図12は、本発明の実施の形態に係る、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体のための試験装置を示す図である。
【0076】
図11に示されるように、本発明の実施の形態に係る、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体において、テキスタイルグリッド強化体120は、ガラス繊維、炭素繊維、バサルト繊維等の高強度繊維を、格子形状に織ることによって製造される。
【0077】
本発明の実施の形態に係る、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体100は、第3のTRC100cとして製造され、その曲げ張力は、
図12に示される試験装置によって評価することができる。
【0078】
一方、
図13は、本発明の実施の形態に係る、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体の曲げ張力を示す図であり、
図14は、本発明の実施の形態に係る、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体の曲げ張力挙動を示す図である。
【0079】
本発明の実施の形態に係る、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体100の曲げ張力は、
図13に示される通りであり、さらに、その曲げ張力挙動は、
図14に示される通りであり、従って、テキスタイル強化セメント複合体100の滑り及び亀裂が抑えられたことが確認できる。
【0080】
一方、本発明の実施の形態に係るテキスタイル強化セメント複合体100は、上記の混合比を有するように説明されたが、混合比及びその他は、セメント複合体の使用、例えば、高性能コンクリート又は超高性能コンクリートを形成する場合、によって、変更されてもよいこと当業者にとって明らかである。
【0081】
さらに、本発明の実施の形態に係る、滑り及び亀裂の発生を抑えるためのテキスタイル強化セメント複合体100は、建物外側材料、排水渠、地下構造、コンクリート舗装、下水処理施設、沖合の橋、トンネルライニング、港構造、コンクリートケーソン基礎、下水管のカバー、並びに耐薬品性の向上及び修復に適用されてよい。
【0082】
本発明によれば、セメント複合体の中に埋め込まれたテキスタイルグリッド強化体を有するテキスタイル強化セメント複合体を製造する際、角ばった充填材料がテキスタイル強化セメント複合体と混合され、それにより、テキスタイルグリッド強化体及びセメント複合体の間の滑りを抑えることができ、セメント複合体の亀裂の発生を抑えることができる。
【0083】
本発明によれば、有機繊維が、テキスタイル強化セメント複合体と混合され、それにより、繊維架橋反応によってセメント複合体の亀裂の発生を抑えることができ、微細な亀裂の分布を誘発することができる。
【0084】
本発明によれば、球状バインダー及び混和剤がテキスタイル強化セメント複合体に加えられ、それにより、角ばった充填材料の混合によるセメント複合体の流動性の劣化を抑えることができる。
【0085】
本発明によれば、所定の粒径を有する微細粉末バインダーが、テキスタイル強化セメント複合体と混合され、それにより、テキスタイルグリッド強化体及びセメント複合体の間の滑りを抑えることができる。
【0086】
本発明の上記の説明は、単に例示的であり、発明は技術的範囲及び必須の特徴を変更せずに別の具体的な形態で実施可能な点が、当業者にとって理解される。従って、上記の実施の形態は、全ての様態における例としてのみ考慮されるべきであり、限定を意図していない。例えば、単一の形式で説明される各要素は、分布した形で実現されてよく、同様に、分布しているとして説明された要素は、結合した形で実現されてよい。
【0087】
本発明の範囲は、詳細な説明ではなく、付される請求の範囲によって画定され、付される請求の範囲の意味、範囲、及び同等のものに由来する全ての変形及び変更を含む。