(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを含有する多元共重合体であって、主鎖が非環状構造のみからなり、且つ、前記共役ジエン単位全体におけるシス−1,4結合含量が50%以上であり、
前記非共役オレフィン単位が、非環状の非共役オレフィン単位であり、
前記共役ジエン単位の含有量が1〜99mol%であり、前記非共役オレフィン単位と前記芳香族ビニル単位との総含有量が1〜99mol%であり、
前記非共役オレフィン単位及び前記芳香族ビニル単位全体における、一方の単位の割合が1〜99mol%であり、
ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が100,000〜9,000,000である、多元共重合体。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明をその実施形態に基づき詳細に例示説明する。
【0013】
(多元共重合体)
本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを含有する多元共重合体であって、主鎖が非環状構造のみからなることを大きな特徴の一つとする。本発明者らは、共役ジエン化合物と、非共役オレフィン化合物と、芳香族ビニル化合物とを重合してなる上記の多元共重合体と、共役ジエン化合物及び非共役オレフィン化合物を重合してなる二元共重合体との比較を行ったところ、共役ジエン化合物に由来する単位で構成される部分の鎖長は、両者に大きな差異が見られない一方で、非共役オレフィン化合物に由来する単位で構成される部分の鎖長は、上述した二元共重合体よりも多元共重合体の方が短くなることを見出した。同様に、上記の多元共重合体と、共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物を重合してなる多元共重合体との比較を行ったところ、共役ジエン化合物に由来する単位で構成される部分の鎖長は、両者に大きな差異が見られない一方で、芳香族ビニル化合物に由来する単位で構成される部分の鎖長は、上述した二元共重合体よりも多元共重合体の方が短くなることを見出した。そして、本発明者らは、これらの事実に基づき、該多元共重合体の結晶性が、上述した二元共重合体と比して有意に低くなり得ることを見出し、本発明に至った。このように、本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位及び芳香族ビニル単位とを含有するため高い耐久性及び耐候性が両立し、また、非共役オレフィン単位及び芳香族ビニル単位を含有するため、結晶性が低い。そのため、本発明の多元共重合体は、ゴム組成物やゴム製品等の製造に好適に用いることができ、ゴム組成物やゴム製品等を製造する際の作業性を良好にすることができる。
また、本発明の多元共重合体は、単量体として、共役ジエン化合物と非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物とを用いて製造され得るものであるため、共役ジエン化合物由来の高い耐久性と、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物が介在して二重結合の割合が低減することによる高い耐候性とを有することができる。
更に、本発明の多元共重合体は、以下にその製造方法を記述する通り、一の反応容器で行う合成、即ちワンポット合成が可能であり、簡略化されたプロセスによる製造が可能である。
【0014】
また更に、本発明の多元共重合体は、単量体として共役ジエン化合物を用いて重合され得るものであるため、例えば公知であるエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体(EPDM)のような非共役ジエン化合物を用いて重合してなる共重合体に比べ、架橋特性に優れる。従って、本発明の多元共重合体は、これを用いて製造されるゴム組成物やゴム製品の機械特性をより向上させることができるという利点も有する。
そして、本発明の多元共重合体は、主鎖が非環状構造のみからなり、ブタジエン由来の1,4−結合が高シス構造を有することから、耐亀裂性が向上するという利点を有する。なお、共重合体の主鎖が環状構造を有するか否かの確認には、NMRが主要な測定手段として用いられる。具体的には、主鎖に存在する環状構造に由来するピーク(例えば、三員環〜五員環については、10〜24ppmに現れるピーク)が観測されない場合、その共重合体の主鎖は、非環状構造のみからなることを示す。
【0015】
本発明の多元共重合体における共役ジエン単位は、通常、単量体としての共役ジエン化合物に由来する単位であり、また、この共役ジエン化合物は、炭素数が4〜8であることが好ましい。かかる共役ジエン化合物として、具体的には、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。前記共役ジエン化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。そして、本発明の多元共重合体の単量体としての共役ジエン化合物は、得られる多元共重合体を用いたゴム組成物やタイヤ等の耐久性を効果的に向上させる観点から、1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンを含むことが好ましく、1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンのみからなることがより好ましく、1,3−ブタジエンのみからなることが更に好ましい。別の言い方をすると、本発明の多元共重合体における共役ジエン単位は、1,3−ブタジエン単位及び/又はイソプレン単位を含むことが好ましく、1,3−ブタジエン単位及び/又はイソプレン単位のみからなることがより好ましく、1,3−ブタジエン単位のみからなることが更に好ましい。
【0016】
また、本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位全体におけるシス−1,4結合含量が50%以上であることを大きな特徴の一つとする。共役ジエン単位全体におけるシス−1,4結合含量が50%以上であれば、ガラス転移温度が低くなるため、得られる多元共重合体を用いたゴム組成物やタイヤ等の耐亀裂成長性や耐摩耗性等を含む耐久性を効果的に向上させることができる。同様の観点から、本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位全体におけるシス−1,4結合含量が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。なお、このような共役ジエン単位全体におけるシス−1,4結合含量が高い多元共重合体は、共役ジエン化合物と、非共役オレフィン化合物と、芳香族ビニル化合物とを単量体として用いることで、得ることができる。
一方、前記共役ジエン単位全体におけるビニル結合(1,2ビニル結合、3,4ビニル結合など)含量は、30%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、6%以下であることが特に好ましい。また、前記共役ジエン単位全体におけるトランス−1,4結合含量は、30%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましい。
【0017】
また、本発明の多元共重合体における非共役オレフィン単位は、通常、単量体としての非共役オレフィン化合物に由来する単位であり、また、この非共役オレフィン化合物は、炭素数が2〜10であることが好ましい。かかる非共役オレフィン化合物として、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、若しくは1−オクテン等のα−オレフィン、ピバリン酸ビニル、1−フェニルチオエテン、若しくはN−ビニルピロリドン等のヘテロ原子置換アルケン化合物等が挙げられる。前記非共役オレフィン化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。そして、本発明の多元共重合体の単量体としての非共役オレフィン化合物は、得られる多元共重合体の結晶性をより低減し、かかる多元共重合体を用いたゴム組成物及びタイヤ等の耐候性をより向上させる観点から、非環状の非共役オレフィン化合物であることが好ましく、また、当該非環状の非共役オレフィン化合物は、α−オレフィンであることがより好ましく、エチレンを含むα−オレフィンであることが更に好ましく、エチレンのみからなることが特に好ましい。別の言い方をすると、本発明の多元共重合体における非共役オレフィン単位は、非環状の非共役オレフィン単位であることが好ましく、また、当該非環状の非共役オレフィン単位は、α−オレフィン単位であることがより好ましく、エチレン単位を含むα−オレフィン単位であることが更に好ましく、エチレン単位のみからなることが更に好ましい。
【0018】
更に、本発明の多元共重合体における芳香族ビニル単位は、通常、単量体としての芳香族ビニル化合物に由来する単位であり、また、この芳香族ビニル化合物は、炭素数が8〜10であることが好ましい。かかる芳香族ビニル化合物としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン等が挙げられる。前記芳香族ビニル化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。そして、本発明の多元共重合体の単量体としての芳香族ビニル化合物は、得られる多元共重合体の結晶性をより低減し、かかる多元共重合体を用いたゴム組成物及びタイヤ等の耐候性をより向上させる観点から、スチレンを含むことが好ましく、スチレンのみからなることがより好ましい。別の言い方をすると、本発明の多元共重合体における芳香族ビニル単位は、スチレン単位を含むことが好ましく、スチレン単位のみからなることがより好ましい。
なお、芳香族ビニル単位における芳香族環は、隣接する単位と結合しない限り、共重合体の主鎖には含まれない。
【0019】
そして、本発明の多元共重合体の単量体の種類の数としては、多元共重合体が共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを含有する限り、特に制限はない。ただし、耐久性、耐候性及び結晶性を好ましいものとする観点から、本発明の多元共重合体は、単量体として、一種の共役ジエン化合物、一種の非共役オレフィン化合物、及び一種の芳香族ビニル化合物を少なくとも用いて重合してなる重合体であることが好ましい。別の言い方をすると、本発明の多元共重合体は、一種の共役ジエン単位、一種の非共役オレフィン単位、及び一種の芳香族ビニル単位を含有する多元共重合体であることが好ましい。そして、本発明の多元共重合体は、一種の共役ジエン単位、一種の非共役オレフィン単位、及び一種の芳香族ビニル単位のみからなる三元共重合体であることがより好ましく、1,3−ブタジエン単位、エチレン単位、及びスチレン単位のみからなる三元共重合体であることが更に好ましい。ここで、「一種の共役ジエン単位」には、異なる結合様式の共役ジエン単位が包括されていることとする。
【0020】
本発明の多元共重合体は、その融点(T
m)が、該多元共重合体に用いた共役ジエン化合物と、該多元共重合体に用いた非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物のうちの任意の1種とを重合してなる二元共重合体の融点(T
m)と比較して低下していることが好ましい。より具体的には、本発明の多元共重合体は、その融点(T
m)が、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましく、50℃以下であることが特に好ましい。また、本発明の多元共重合体は、その融点(T
m)が消失していることも好ましい。このような場合には、従来の二元共重合体と比較して、単量体として新たに非共役オレフィン化合物又は芳香族ビニル化合物を追加したことのみによって結晶性が低減されたといえ、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物を用いて重合することを特徴とする本発明の利点を、より享受することができる。すなわち、このような場合には、かかる多元共重合体を用いてなるゴム組成物やタイヤ等を高い作業性をもって製造することができる上、当該ゴム組成物やタイヤ等の耐久性及び耐候性を高いものとすることができる。
なお、上述した共重合体が複数の融点を有する場合においては、それらのうち最も高い融点を用いて上記の対比を行うものとする。
【0021】
本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位の含有量が1〜99mol%であるのが好ましく、5〜95mol%であるのがより好ましく、10〜90mol%であるのが特に好ましい。共役ジエン単位の含有量が1mol%以上であれば、多元共重合体がエラストマーとして均一にふるまうことが可能となり、より高い耐久性をもたらすことができ、一方、99mol%以下であれば、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物を用いたことの効果を十分に得ることができる。
また、本発明の多元共重合体は、非共役オレフィン単位と芳香族ビニル単位との総含有量が1〜99mol%であるのが好ましく、5〜95mol%であるのがより好ましく、10〜90mol%であるのが特に好ましい。非共役オレフィン単位と芳香族ビニル単位との総含有量が1mol%以上であれば、多元共重合体の耐候性が十分に高くなり、一方、99mol%以下であれば、共役ジエン化合物を用いたことの効果を十分に得ることができる。また、従来の二元共重合体(共役ジエン化合物と非共役オレフィン化合物との重合体、及び共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との重合体)においては、一般に非共役オレフィン化合物由来の単位又は芳香族ビニル化合物由来の単位の含有量が50mol%以上、即ち、共役ジエン化合物由来の単位の含有量が50mol%以下であると、エラストマーとしての十分な物性が失われるところ、本発明においては、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物を用いることで結晶性を低く抑えられるため、非共役オレフィン単位と芳香族ビニル単位との総含有量が例えば90mol%であっても、エラストマー物性を確保することができる。
更に、本発明の多元共重合体においては、非共役オレフィン単位及び芳香族ビニル単位全体における、一方の単位の割合が1〜99mol%であるのが好ましく、3〜97mol%であるのがより好ましく、10〜90mol%であるのが特に好ましい。このように、上述した2種類の単位がそれぞれ少なくとも1mol%含有されていることにより、効果的に結晶性を低減することができる。
【0022】
なお、本発明の多元共重合体は、上述した共役ジエン単位、非共役オレフィン単位及び芳香族ビニル単位以外の、任意の単位を含有していてもよい。但し、本発明の所望の効果を得る観点から、本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位及び芳香族ビニル単位以外の任意の単位の含有量が、0mol%であることがより好ましい。
【0023】
本発明の多元共重合体は、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が10,000〜10,000,000であることが好ましく、100,000〜9,000,000であることがより好ましく、150,000〜8,000,000であることが特に好ましい。前記多元共重合体のMwが10,000以上であることにより、ゴム製品材料としての機械的強度を十分に確保することができ、また、Mwが10,000,000以下であることにより、高い作業性を保持することができる。
更に、本発明の多元共重合体は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)が、10.0以下であることが好ましく、9.0以下であることがより好ましく、8.0以下であることが特に好ましい。前記多元共重合体の分子量分布が10.0以下であることにより、前記多元共重合体の物性に十分な均質性をもたらすことができる。
なお、上述した重量平均分子量及び分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準物質として求める。
【0024】
本発明の多元共重合体の連鎖構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、共役ジエン単位をA、非共役オレフィン単位をB、芳香族ビニル単位をCとした場合において、A
x−B
y−C
z(x、y、zは1以上の整数である)等の構成をとるブロック共重合体、A、B、Cがランダムに配列する構成をとるランダム共重合体、前記ランダム共重合体とブロック共重合体とが混在してなるテーパー共重合体、(A−B−C)
w(wは1以上の整数である)等の構成をとる交互共重合体とすることができる。
また、本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、及び芳香族ビニル単位が直線的に連鎖した構造(直線構造)であってもよいし、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、及び芳香族ビニル単位の少なくともいずれかが分岐鎖を形成して連鎖した構造(分岐構造)であってもよい。なお、本発明の多元共重合体が分岐構造である場合には、分岐鎖も二元又は多元とすることができる(即ち、分岐鎖が、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、及び芳香族ビニル単位のうちの少なくとも2つを含むことができる)。よって、本発明の多元共重合体の中でも、二元又は多元の分岐鎖を有する分岐構造である多元共重合体は、幹となる鎖と側鎖とが異なる1種類の単位で形成される従来型のグラフト共重合体と明確に区別することができる。
【0025】
(多元共重合体の製造方法)
次に、本発明の多元共重合体の製造方法の例を詳細に説明する。本発明の多元共重合体の製造方法の一例は、共役ジエン化合物と、非共役オレフィン化合物と、芳香族ビニル化合物とを単量体として用いることを前提とするものであり、少なくとも重合工程を含み、更に、必要に応じ、カップリング工程、洗浄工程、その他の工程を適宜含むことができる。ここで、本発明の多元共重合体の製造においては、触媒存在下で、共役ジエン化合物を添加せずに非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物のみを添加し、これらを重合させることが好ましい。特に後述の重合触媒組成物を使用する場合には、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物より共役ジエン化合物の方が反応性が高いことから、共役ジエン化合物の存在下で非共役オレフィン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物を重合させることが困難となりやすい。また、先に共役ジエン化合物を重合させ、後に非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物を付加的に重合させることも、触媒の特性上困難となりやすい。
【0026】
重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、かかる溶媒としては、重合反応において不活性なものであればよく、例えば、トルエン、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン等が挙げられる。
【0027】
重合工程において、重合反応は、不活性ガス、好ましくは窒素ガスやアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。上記重合反応の重合温度は、特に制限されないが、例えば、−100℃〜200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。なお、重合温度を上げると、重合反応のシス−1,4選択性が低下することがある。また、上記重合反応の圧力は、共役ジエン化合物を十分に重合反応系中に取り込むため、0.1〜10.0MPaの範囲が好ましい。また、上記重合反応の反応時間も特に制限がなく、例えば、1秒〜10日の範囲が好ましいが、触媒の種類、重合温度等の条件によって適宜選択することができる。
【0028】
また、前記共役ジエン化合物の重合工程においては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を用いて、重合を停止させてもよい。
【0029】
ここで、上記の非共役オレフィン化合物、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物の重合工程は、下記に示す第一の重合触媒組成物、第二の重合触媒組成物又は第三の重合触媒組成物の存在下で各種モノマーを重合させる工程を含むことが好ましい。
【0030】
−第一の重合触媒組成物−
第一の重合触媒組成物(以下、「第一重合触媒組成物」ともいう)について説明する。
第一重合触媒組成物としては、
(A)成分:希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物であって、希土類元素と炭素との結合を有さない、該希土類元素化合物又は反応物と、
(B)成分:非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物(B−1)、アルミノキサン(B−2)、並びに、ルイス酸、金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物及び活性ハロゲンを含む有機化合物のうち少なくとも一種のハロゲン化合物(B−3)よりなる群から選択される少なくとも一種と、を含む重合触媒組成物が挙げられる。
第一重合触媒組成物が、イオン性化合物(B−1)及びハロゲン化合物(B−3)の少なくとも一種を含む場合、該重合触媒組成物は、更に、
(C)成分:下記一般式(I):
YR
1aR
2bR
3c ・・・ (I)
(式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R
1及びR
2は炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子であり、R
3は炭素数1〜10の炭化水素基であり、R
1、R
2、R
3はそれぞれ互いに同一又は異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a,b及びcは1である)で表される有機金属化合物を含む。
【0031】
上記イオン性化合物(B−1)及び上記ハロゲン化合物(B−3)は、(A)成分へ供給するための炭素原子が存在しないため、該(A)成分への炭素供給源として、上記(C)成分が必要となる。なお、上記重合触媒組成物が上記アルミノキサン(B−2)を含む場合であっても、該重合触媒組成物は、上記(C)成分を含むことができる。また、上記第一重合触媒組成物は、通常の希土類元素化合物系の重合触媒組成物に含有される他の成分、例えば助触媒等を含んでいてもよい。
なお、重合反応系において、第一重合触媒組成物に含まれる(A)成分の濃度は0.1〜0.0001mol/lの範囲であることが好ましい。
更に、該重合触媒組成物は、アニオン性配位子となり得る添加剤Dを含有することが好ましい。
【0032】
上記第一重合触媒組成物に用いる(A)成分は、希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物であり、ここで、希土類元素化合物及び該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物は、希土類元素と炭素との結合を有さない。該希土類元素化合物及び反応物が希土類元素−炭素結合を有さない場合、化合物が安定であり、取り扱いやすい。ここで、希土類元素化合物とは、希土類元素(M)、即ち、周期律表中の原子番号57〜71の元素から構成されるランタノイド元素又はスカンジウムもしくはイットリウムを含有する化合物である。
なお、ランタノイド元素の具体例としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムを挙げることができる。なお、上記(A)成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
また、上記希土類元素化合物は、希土類金属が2価もしくは3価の塩又は錯体化合物であることが好ましく、水素原子、ハロゲン原子及び有機化合物残基から選択される1種又は2種以上の配位子を含有する希土類元素化合物であることが更に好ましい。更に、上記希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物は、下記一般式(II)又は(III):
M
11X
112・L
11w ・・・ (II)
M
11X
113・L
11w ・・・ (III)
(それぞれの式中、M
11は、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、X
11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基、アルデヒド残基、ケトン残基、カルボン酸残基、チオカルボン酸残基又はリン化合物残基を示し、L
11は、ルイス塩基を示し、wは、0〜3を示す)で表されることができる。
【0034】
上記希土類元素化合物の希土類元素に結合する基(配位子)として、具体的には、水素原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の脂肪族アルコキシ基;フェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ基、2,6−ジイソプロピルフェノキシ基、2,6−ジネオペンチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−ネオペンチルフェノキシ基、2−イソプロピル−6−ネオペンチルフェノキシ基;チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオプロポキシ基、チオn−ブトキシ基、チオイソブトキシ基、チオsec−ブトキシ基、チオtert−ブトキシ基等の脂肪族チオラート基;チオフェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルチオフェノキシ基、2,6−ジイソプロピルチオフェノキシ基、2,6−ジネオペンチルチオフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルチオフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−チオネオペンチルフェノキシ基、2−イソプロピル−6−チオネオペンチルフェノキシ基、2,4,6−トリイソプロピルチオフェノキシ基等のアリールチオラート基;ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基等の脂肪族アミド基;フェニルアミド基、2,6−ジ−tert−ブチルフェニルアミド基、2,6−ジイソプロピルフェニルアミド基、2,6−ジネオペンチルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−ネオペンチルフェニルアミド基、2−イソプロピル−6−ネオペンチルフェニルアミド基、2,4,6−tert−ブチルフェニルアミド基等のアリールアミド基;ビストリメチルシリルアミド基等のビストリアルキルシリルアミド基;トリメチルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、ビス(トリメチルシリル)メチルシリル基、トリメチルシリル(ジメチル)シリル基、トリイソプロピルシリル(ビストリメチルシリル)シリル基等のシリル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。更には、サリチルアルデヒド、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−3−ナフトアルデヒド等のアルデヒドの残基;2'−ヒドロキシアセトフェノン、2'−ヒドロキシブチロフェノン、2'−ヒドロキシプロピオフェノン等のヒドロキシフェノンの残基;アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、プロピオニルアセトン、イソブチルアセトン、バレリルアセトン、エチルアセチルアセトン等のジケトンの残基;イソ吉草酸、カプリル酸、オクタン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、シクロペンタンカルボン酸、ナフテン酸、エチルヘキサン酸、ビバール酸、バーサチック酸[シェル化学(株)製の商品名、C10モノカルボン酸の異性体の混合物から構成される合成酸]、フェニル酢酸、安息香酸、2−ナフトエ酸、マレイン酸、コハク酸等のカルボン酸の残基;ヘキサンチオ酸、2,2−ジメチルブタンチオ酸、デカンチオ酸、チオ安息香酸等のチオカルボン酸の残基;リン酸ジブチル、リン酸ジペンチル、リン酸ジヘキシル、リン酸ジヘプチル、リン酸ジオクチル、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)、リン酸ビス(1−メチルヘプチル)、リン酸ジラウリル、リン酸ジオレイル、リン酸ジフェニル、リン酸ビス(p−ノニルフェニル)、リン酸ビス(ポリエチレングリコール−p−ノニルフェニル)、リン酸(ブチル)(2−エチルヘキシル)、リン酸(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)、リン酸(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)等のリン酸エステルの残基;2−エチルヘキシルホスホン酸モノブチル、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、フェニルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−p−ノニルフェニル、ホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、ホスホン酸モノ−1−メチルヘプチル、ホスホン酸モノ−p−ノニルフェニル等のホスホン酸エステルの残基;ジブチルホスフィン酸、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸、ビス(1−メチルヘプチル)ホスフィン酸、ジラウリルホスフィン酸、ジオレイルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸、ブチル(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸、(2−エチルヘキシル)(1−メチルヘプチル)ホスフィン酸、(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸、ブチルホスフィン酸、2−エチルヘキシルホスフィン酸、1−メチルヘプチルホスフィン酸、オレイルホスフィン酸、ラウリルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、p−ノニルフェニルホスフィン酸等のホスフィン酸の残基を挙げることもできる。なお、これらの配位子は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
上記第一重合触媒組成物に用いる(A)成分において、上記希土類元素化合物と反応するルイス塩基としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム、中性のオレフィン類、中性のジオレフィン類等が挙げられる。ここで、上記希土類元素化合物が複数のルイス塩基と反応する場合(式(II)及び(III)においては、wが2又は3である場合)、ルイス塩基L
11は、同一であっても異なっていてもよい。
【0036】
好適には、上記希土類元素化合物は、下記一般式で表される化合物を含有することが好ましい。
M−(NQ
1)(NQ
2)(NQ
3) ・・・(IV)
(式中、Mはランタノイド元素、スカンジウム、イットリウムから選択される少なくとも一種であり、NQ
1、NQ
2及びNQ
3はアミド基であり、同一であっても異なっていてもよく、ただし、M−N結合を有する)
即ち、上記式(IV)で表される化合物は、M−N結合を3つ有することを特徴とする。M−N結合を3つ有することにより、各結合が化学的に等価となるため構造が安定的であり、それゆえに取り扱いが容易である、という利点を有する。
【0037】
上記式(IV)において、NQ(NQ
1、NQ
2、及びNQ
3)が表すアミド基としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基などの脂肪族アミド基;フェニルアミド基、2,6−ジ−tert−ブチルフェニルアミド基、2,6−ジイソプロピルフェニルアミド基、2,6−ジネオベンチルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−ネオベンチルフェニルアミド基、2−イソプロピル−6−ネオベンチルフェニルアミド基、2,4,6−tert−ブチルフェニルアミド基などのアリールアミド基;ビストリメチルシリルアミド基などのビストリアルキルシリルアミド基のいずれでもよいが、ビストリメチルシリルアミド基が好ましい。
【0038】
上記第一重合触媒組成物に用いる(B)成分は、イオン性化合物(B−1)、アルミノキサン(B−2)及びハロゲン化合物(B−3)よりなる群から選択される少なくとも一種である。なお、上記第一重合触媒組成物における(B)成分の合計の含有量は、(A)成分に対して0.1〜50倍molであることが好ましい。
【0039】
上記(B−1)で表されるイオン性化合物は、非配位性アニオンとカチオンとからなり、上記(A)成分である希土類元素化合物又はそのルイス塩基との反応物と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物等を挙げることができる。ここで、非配位性アニオンとしては、例えば、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル、ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル)、フェニル]ボレート、トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート等が挙げられる。一方、カチオンとしては、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等を挙げることができる。カルボニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオン等の三置換カルボニウムカチオン等が挙げられ、トリ(置換フェニル)カルボニルカチオンとして、より具体的には、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオン等が挙げられる。アンモニウムカチオンの具体例としては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン(例えば、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオン)等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。ホスホニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオン等が挙げられる。従って、イオン性化合物としては、上述の非配位性アニオン及びカチオンからそれぞれ選択し組み合わせた化合物が好ましく、具体的には、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が好ましい。また、これらのイオン性化合物は、1種単独で使用することも、2種以上を混合して用いることもできる。なお、上記第一重合触媒組成物におけるイオン性化合物(B−1)の含有量は、(A)成分に対して0.1〜10倍molであることが好ましく、約1倍molであることが更に好ましい。
【0040】
上記(B−2)で表されるアルミノキサンは、有機アルミニウム化合物と縮合剤とを接触させることによって得られる化合物であり、例えば、一般式:(−Al(R’)O−)で示される繰り返し単位を有する鎖状アルミノキサン又は環状アルミノキサン(式中、R’は炭素数1〜10の炭化水素基であり、一部の炭化水素基はハロゲン原子及び/又はアルコキシ基で置換されてもよく、繰り返し単位の重合度は、5以上が好ましく、10以上が更に好ましい)を挙げることができる。ここで、R’として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基が好ましい。また、アルミノキサンの原料として用いられる有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム及びその混合物等が挙げられ、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。例えば、トリメチルアルミニウムとトリブチルアルミニウムとの混合物を原料として用いたアルミノキサンを好適に用いることができる。なお、上記第一重合触媒組成物におけるアルミノキサン(B−2)の含有量は、(A)成分を構成する希土類元素Mに対する、アルミノキサンのアルミニウム元素Alの元素比率Al/Mが、10〜1000程度となるようにすることが好ましい。
【0041】
上記(B−3)で表されるハロゲン化合物は、ルイス酸、金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物及び活性ハロゲンを含む有機化合物のうち少なくとも一種からなり、例えば、上記(A)成分である希土類元素化合物又はそのルイス塩基との反応物と反応して、カチオン性遷移金属化合物やハロゲン化遷移金属化合物や遷移金属中心が電荷不足の化合物を生成することができる。なお、上記第一重合触媒組成物におけるハロゲン化合物(B−3)の合計の含有量は、(A)成分に対して1〜5倍molであることが好ましい。
【0042】
上記ルイス酸としては、B(C
6F
5)
3等のホウ素含有ハロゲン化合物、Al(C
6F
5)
3等のアルミニウム含有ハロゲン化合物を使用できる他、周期律表中の第3族、第4族、第5族、第6族又は第8族に属する元素を含有するハロゲン化合物を用いることもできる。好ましくは、アルミニウムハロゲン化物又は有機金属ハロゲン化物が挙げられる。また、ハロゲン元素としては、塩素又は臭素が好ましい。上記ルイス酸として、具体的には、メチルアルミニウムジブロマイド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジブロマイド、エチルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジブロマイド、ブチルアルミニウムジクロライド、ジメチルアルミニウムブロマイド、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジブチルアルミニウムブロマイド、ジブチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムセスキブロマイド、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジブチル錫ジクロライド、アルミニウムトリブロマイド、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三塩化リン、五塩化リン、四塩化錫、四塩化チタン、六塩化タングステン等が挙げられ、これらの中でも、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムジブロマイドが特に好ましい。
【0043】
上記金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物を構成する金属ハロゲン化物としては、塩化ベリリウム、臭化ベリリウム、ヨウ化ベリリウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化カドミウム、臭化カドミウム、ヨウ化カドミウム、塩化水銀、臭化水銀、ヨウ化水銀、塩化マンガン、臭化マンガン、ヨウ化マンガン、塩化レニウム、臭化レニウム、ヨウ化レニウム、塩化銅、ヨウ化銅、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、塩化金、ヨウ化金、臭化金等が挙げられ、これらの中でも、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化マンガン、塩化亜鉛、塩化銅が好ましく、塩化マグネシウム、塩化マンガン、塩化亜鉛、塩化銅が特に好ましい。
【0044】
また、上記金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物を構成するルイス塩基としては、リン化合物、カルボニル化合物、窒素化合物、エーテル化合物、アルコール等が好ましい。具体的には、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジエチルホスフィノエタン、ジフェニルホスフィノエタン、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、プロピオニトリルアセトン、バレリルアセトン、エチルアセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸フェニル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジフェニル、酢酸、オクタン酸、2−エチル−ヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、安息香酸、ナフテン酸、バーサチック酸、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、2−エチル−ヘキシルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、1−デカノール、ラウリルアルコール等が挙げられ、これらの中でも、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、アセチルアセトン、2−エチルヘキサン酸、バーサチック酸、2−エチルヘキシルアルコール、1−デカノール、ラウリルアルコールが好ましい。
【0045】
上記ルイス塩基は、上記金属ハロゲン化物1mol当り、0.01〜30mol、好ましくは0.5〜10molの割合で反応させる。このルイス塩基との反応物を使用すると、ポリマー中に残存する金属を低減することができる。
【0046】
上記活性ハロゲンを含む有機化合物としては、ベンジルクロライド等が挙げられる。
【0047】
上記第一重合触媒組成物に用いる(C)成分は、前記一般式(I):
YR
1aR
2bR
3c ・・・ (I)
(式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R
1及びR
2は炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子であり、R
3は炭素数1〜10の炭化水素基であり、R
1、R
2、R
3はそれぞれ互いに同一又は異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a,b及びcは1である)で表される有機金属化合物であり、下記一般式(V):
AlR
1R
2R
3 ・・・ (V)
(式中、R
1及びR
2は炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子であり、R
3は炭素数1〜10の炭化水素基であり、R
1、R
2、R
3はそれぞれ互いに同一又は異なっていてもよい)で表される有機アルミニウム化合物であることが好ましい。一般式(V)の有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム;水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ−n−プロピルアルミニウム、水素化ジ−n−ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウム、水素化ジイソヘキシルアルミニウム、水素化ジオクチルアルミニウム、水素化ジイソオクチルアルミニウム;エチルアルミニウムジハイドライド、n−プロピルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウムが好ましい。以上に述べた(C)成分としての有機アルミニウム化合物は、1種単独で使用することも、2種以上を混合して用いることもできる。なお、上記第一重合触媒組成物における有機アルミニウム化合物の含有量は、(A)成分に対して1〜50倍molであることが好ましく、約10倍molであることが更に好ましい。
【0048】
アニオン性配位子となり得る添加剤Dの添加は、より高いシス−1,4結合含量の共重合体を高収率で合成することが可能となる、という効果を奏するため好ましい。
上記添加剤Dとしては、(A)成分のアミド基と交換可能なものであれば特に限定されないが、OH基、NH基、SH基のいずれかを有することが好ましい。
【0049】
具体的な化合物として、OH基を有するものとしては、脂肪族アルコール、芳香族アルコール等が挙げられる。具体的には2−エチル−1−ヘキサノール、ジブチルヒドロキシトルエン、アルキル化フェノール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−4−エチルフェノール、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチリルチオプロピオネート等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。例えばヒンダードフェノール系のものとして、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォソフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、オクチル化ジフェニルアミン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール等を挙げることができる。また、ヒドラジン系として、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジンを挙げることができる。
【0050】
NH基を有するものとしては、アルキルアミン、アリールアミン等の第1級アミンあるいは第2級アミンを挙げることができる。具体的には、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピロール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ビス(2−ジフェニルフォスフィノフェニル)アミン等が挙げられる。
【0051】
SH基を有するものとしては、脂肪族チオール、芳香族チオール等のほか、下記一般式(VI)、(VII)で示される化合物が挙げられる。
【化1】
(式中、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立して−O−C
jH
2j+1、−(O−C
kH
2k−)
a −O−C
mH
2m+1又は−C
nH
2n+1 で表され、R
1、R
2及びR
3の少なくとも1つが−(O−C
kH
2k−)
a−O−C
mH
2m+1であり、j、m及びnはそれぞれ独立して0〜12であり、k及びaはそれぞれ独立して1〜12であり、R
4は炭素数1〜12であって、直鎖、分岐、もしくは環状の、飽和もしくは不飽和の、アルキレン基、シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、シクロアルケニルアルキレン基、アルケニレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキルアルケニレン基、シクロアルケニルアルケニレン基、アリーレン基又はアラルキレン基である。)
一般式(VI)で示されるものの具体例として、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、(メルカプトメチル)ジメチルエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【化2】
(式中、Wは−NR
8−、−O−又は−CR
9R
10−(ここで、R
8及びR
9は−C
pH
2p+1であり、R
10は−C
qH
2q+1であり、p及びqはそれぞれ独立して0〜20である。)で表され、R
5及びR
6はそれぞれ独立して−M−C
rH
2r−(ここで、Mは−O−又は−CH
2−であり、rは1〜20である。)で表され、R
7は−O−C
jH
2j+1、−(O−C
kH
2k−)
a−O−C
mH
2m+1又は−C
nH
2n+1 で表され、j、m及びnはそれぞれ独立して0〜12であり、k及びaはそれぞれ独立して1〜12であり、R
4は炭素数1〜12であって、直鎖、分岐、もしくは環状の、飽和もしくは不飽和の、アルキレン基、シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、シクロアルケニルアルキレン基、アルケニレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキルアルケニレン基、シクロアルケニルアルケニレン基、アリーレン基又はアラルキレン基である。)
一般式(VII)で示されるものの具体例として、3−メルカプトプロピル(エトキシ)−1,3−ジオキサ−6−メチルアザ−2−シラシクロオクタン、3−メルカプトプロピル(エトキシ)−1,3−ジオキサ−6−ブチルアザ−2−シラシクロオクタン、3−メルカプトプロピル(エトキシ)−1,3−ジオキサ−6−ドデシルアザ−2−シラシクロオクタンなどが挙げられる。
【0052】
また、添加剤Dとしては、好適には下記一般式(VIII)で表されるアニオン性三座配位子前駆体を使用できる。
E
1−T
1−X−T
2−E
2 ・・・(VIII)
(Xは、周期律表第15族原子から選択される配位原子を含むアニオン性電子供与基を示し、E
1及びE
2はそれぞれ独立して、周期律表第15族及び16族原子から選択される配位原子を含む中性電子供与基を示し、T
1及びT
2はそれぞれ、XとE
1及びE
2を架橋する架橋基を示す)
【0053】
添加剤Dは、前記希土類元素化合物1molに対して、0.01〜10mol、特に0.1〜1.2mol添加するのが好ましい。添加量が0.1mol未満の場合、モノマーの重合が十分に進まず、本発明の目的を達成することが困難となる。添加量を希土類元素化合物と等量(1.0mol)とすることが好ましいが、過剰量添加されていてもよい。しかし、また、添加量を1.2mol超とすると、試薬のロスが大きいため、好ましくない。
【0054】
上記一般式(VIII)中、中性の電子供与基E
1及びE
2は、周期律表第15族及び第16族から選択される配位原子を含む基である。また、E
1及びE
2は同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。該配位原子としては、窒素N、リンP、酸素O、硫黄Sなどが例示されるが、好ましくはPである。
【0055】
前記E
1及びE
2に含まれる配位原子がPである場合には、中性の電子供与基E
1又はE
2としては、ジフェニルホスフィノ基やジトリルホスフィノ基などのジアリールホスフィノ基;ジメチルホスフィノ基やジエチルホスフィノ基などのジアルキルホスフィノ基;メチルフェニルホスフィノ基などのアルキルアリールホスフィノ基が例示され、好ましくはジアリールホスフィノ基が例示される。
【0056】
前記E
1及びE
2に含まれる配位原子がNである場合には、中性の電子供与基E
1又はE
2としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基やビス(トリメチルシリル)アミノ基などのジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基などのジアリールアミノ基;メチルフェニル基などのアルキルアリールアミノ基などが例示される。
【0057】
前記E
1及びE
2に含まれる配位原子がOである場合には、中性の電子供与基E
1又はE
2としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;フェノキシ基、2,6− ジメチルフェノキシ基などのアリールオキシ基などが例示される。
【0058】
前記E
1及びE
2に含まれる配位原子がSである場合には、中性の電子供与基E
1又はE
2としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基などのアルキルチオ基;フェニルチオ基、トリルチオ基などのアリールチオ基などが例示される。
【0059】
アニオン性の電子供与基Xは、周期律表第15族から選択される配位原子を含む基である。該配位原子として好ましくはリンP又は窒素Nが挙げられ、より好ましくはNが挙げられる。
【0060】
架橋基T
1及びT
2は、XとE
1及びE
2を架橋することができる基であればよく、アリール環上に置換基を有していてもよいアリーレン基が例示される。また、T
1及びT
2は同一の基でも異なる基であってもよい。
前記アリーレン基は、フェニレン基、ナフチレン基、ピリジレン基、チエニレン基(好ましくはフェニレン基、ナフチレン基)などであり得る。また、前記アリーレン基のアリール環上には任意の基が置換されていてもよい。該置換基としてはメチル基、エチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;フルオロ、クロロ、ブロモなどのハロゲン基;トリメチルシリル基などのシリル基などが例示される。
前記アリーレン基として、更に好ましくは1,2−フェニレン基が例示される。
【0061】
−第二の重合触媒組成物−
次に、第二の重合触媒組成物(以下、「第二重合触媒組成物」ともいう)について説明する。第二重合触媒組成物としては、下記一般式(IX):
【化3】
(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Cp
Rは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、R
a〜R
fは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体、及び下記一般式(X):
【化4】
(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Cp
Rは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、X’は、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体、並びに下記一般式(XI):
【化5】
(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Cp
R’は、無置換もしくは置換シクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示し、[B]
−は、非配位性アニオンを示す)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体からなる群より選択される少なくとも1種類の錯体を含む重合触媒組成物が挙げられる。
【0062】
第二重合触媒組成物は、更に、通常のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物に含有される他の成分、例えば助触媒等を含んでいてもよい。ここで、メタロセン錯体は、一つ又は二つ以上のシクロペンタジエニル又はその誘導体が中心金属に結合した錯体化合物であり、特に、中心金属に結合したシクロペンタジエニル又はその誘導体が一つであるメタロセン錯体を、ハーフメタロセン錯体と称することがある。
なお、重合反応系において、第二重合触媒組成物に含まれる錯体の濃度は0.1〜0.0001mol/Lの範囲であることが好ましい。
【0063】
上記一般式(IX)及び(X)で表されるメタロセン錯体において、式中のCp
Rは、無置換インデニル又は置換インデニルである。インデニル環を基本骨格とするCp
Rは、C
9H
7−xR
x又はC
9H
11−xR
xで示され得る。ここで、Xは0〜7又は0〜11の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。置換インデニルとして、具体的には、2−フェニルインデニル、2−メチルインデニル等が挙げられる。なお、一般式(IX)及び(X)における二つのCp
Rは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
【0064】
上記一般式(XI)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体において、式中のCp
R’は、無置換もしくは置換のシクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルであり、これらの中でも、無置換もしくは置換のインデニルであることが好ましい。シクロペンタジエニル環を基本骨格とするCp
R’は、C
5H
5−xR
xで示される。ここで、Xは0〜5の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。シクロペンタジエニル環を基本骨格とするCp
R’として、具体的には、以下のものが例示される。
【化6】
(式中、Rは水素原子、メチル基又はエチル基を示す。)
一般式(XI)において、上記インデニル環を基本骨格とするCp
R’は、一般式(IX)のCp
Rと同様に定義され、好ましい例も同様である。
【0065】
一般式(XI)において、上記フルオレニル環を基本骨格とするCp
R’は、C
13H
9−xR
x又はC
13H
17−xR
xで示され得る。ここで、Xは0〜9又は0〜17の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。
【0066】
一般式(IX)、(X)及び(XI)における中心金属Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムである。ランタノイド元素には、原子番号57〜71の15元素が含まれ、これらのいずれでもよい。中心金属Mとしては、サマリウムSm、ネオジムNd、プラセオジムPr、ガドリニウムGd、セリウムCe、ホルミウムHo、スカンジウムSc及びイットリウムYが好適に挙げられる。
【0067】
一般式(IX)で表されるメタロセン錯体は、シリルアミド配位子[−N(SiR
3)
2]を含む。シリルアミド配位子に含まれるR基(一般式(IX)におけるR
a〜R
f)は、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子である。また、R
a〜R
fのうち少なくとも一つが水素原子であることが好ましい。R
a〜R
fのうち少なくとも一つを水素原子にすることで、触媒の合成が容易になり、また、ケイ素まわりのかさ高さが低くなるため、非共役オレフィン化合物や芳香族ビニル化合物が導入され易くなる。同様の観点から、R
a〜R
cのうち少なくとも一つが水素原子であり、R
d〜R
fのうち少なくとも一つが水素原子であることが更に好ましい。更に、アルキル基としては、メチル基が好ましい。
【0068】
一般式(X)で表されるメタロセン錯体は、シリル配位子[−SiX’
3]を含む。シリル配位子[−SiX’
3]に含まれるX'は、下記で説明される一般式(XI)のXと同様に定義される基であり、好ましい基も同様である。
【0069】
一般式(XI)において、Xは水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基及び炭素数1〜20の炭化水素基からなる群より選択される基である。ここで、上記アルコキシド基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の脂肪族アルコキシ基;フェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ基、2,6−ジイソプロピルフェノキシ基、2,6−ジネオペンチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−ネオペンチルフェノキシ基、2−イソプロピル−6−ネオペンチルフェノキシ基等のアリールオキシド基が挙げられ、これらの中でも、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ基が好ましい。
【0070】
一般式(XI)において、Xが表すチオラート基としては、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオプロポキシ基、チオn−ブトキシ基、チオイソブトキシ基、チオsec−ブトキシ基、チオtert−ブトキシ基等の脂肪族チオラート基;チオフェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルチオフェノキシ基、2,6−ジイソプロピルチオフェノキシ基、2,6−ジネオペンチルチオフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルチオフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−チオネオペンチルフェノキシ基、2−イソプロピル−6−チオネオペンチルフェノキシ基、2,4,6−トリイソプロピルチオフェノキシ基等のアリールチオラート基が挙げられ、これらの中でも、2,4,6−トリイソプロピルチオフェノキシ基が好ましい。
【0071】
一般式(XI)において、Xが表すアミド基としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基等の脂肪族アミド基;フェニルアミド基、2,6−ジ−tert−ブチルフェニルアミド基、2,6−ジイソプロピルフェニルアミド基、2,6−ジネオペンチルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−ネオペンチルフェニルアミド基、2−イソプロピル−6−ネオペンチルフェニルアミド基、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニルアミド基等のアリールアミド基;ビストリメチルシリルアミド基等のビストリアルキルシリルアミド基が挙げられ、これらの中でも、ビストリメチルシリルアミド基が好ましい。
【0072】
一般式(XI)において、Xが表すシリル基としては、トリメチルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、ビス(トリメチルシリル)メチルシリル基、トリメチルシリル(ジメチル)シリル基、トリイソプロピルシリル(ビストリメチルシリル)シリル基等が挙げられ、これらの中でも、トリス(トリメチルシリル)シリル基が好ましい。
【0073】
一般式(XI)において、Xが表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子のいずれでもよいが、塩素原子又は臭素原子が好ましい。また、Xが表す炭素数1〜20の炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等の直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;ベンジル基等のアラルキル基等の他;トリメチルシリルメチル基、ビストリメチルシリルメチル基等のケイ素原子を含有する炭化水素基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基、イソブチル基、トリメチルシリルメチル基等が好ましい。
【0074】
一般式(XI)において、Xとしては、ビストリメチルシリルアミド基又は炭素数1〜20の炭化水素基が好ましい。
【0075】
一般式(XI)において、[B]
−で示される非配位性アニオンとしては、例えば、4価のホウ素アニオンが挙げられる。該4価のホウ素アニオンとして、具体的には、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル、ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル)、フェニル]ボレート、トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート等が挙げられ、これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
【0076】
上記一般式(IX)及び(X)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(XI)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、更に0〜3個、好ましくは0〜1個の中性ルイス塩基Lを含む。ここで、中性ルイス塩基Lとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム、中性のオレフィン類、中性のジオレフィン類等が挙げられる。ここで、上記錯体が複数の中性ルイス塩基Lを含む場合、中性ルイス塩基Lは、同一であっても異なっていてもよい。
【0077】
また、上記一般式(IX)及び(X)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(XI)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、単量体として存在していてもよく、二量体又はそれ以上の多量体として存在していてもよい。
【0078】
上記一般式(IX)で表されるメタロセン錯体は、例えば、溶媒中でランタノイドトリスハライド、スカンジウムトリスハライド又はイットリウムトリスハライドを、インデニルの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)及びビス(トリアルキルシリル)アミドの塩(例えば、カリウム塩やリチウム塩)と反応させることで得ることができる。なお、反応温度は室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また、反応時間は任意であるが、数時間〜数十時間程度である。反応溶媒は特に限定されないが、原料及び生成物を溶解する溶媒であることが好ましく、例えばトルエンを用いればよい。以下に、一般式(IX)で表されるメタロセン錯体を得るための反応例を示す。
【化7】
(式中、X’’はハライドを示す。)
上記一般式(X)で表されるメタロセン錯体は、例えば、溶媒中でランタノイドトリスハライド、スカンジウムトリスハライド又はイットリウムトリスハライドを、インデニルの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)及びシリルの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)と反応させることで得ることができる。なお、反応温度は室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また、反応時間は任意であるが、数時間〜数十時間程度である。反応溶媒は特に限定されないが、原料及び生成物を溶解する溶媒であることが好ましく、例えばトルエンを用いればよい。以下に、一般式(X)で表されるメタロセン錯体を得るための反応例を示す。
【化8】
(式中、X’’はハライドを示す。)
【0079】
上記一般式(XI)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、例えば、次の反応により得ることができる。
【化9】
【0080】
ここで、一般式(XII)で表される化合物において、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Cp
R’は、それぞれ独立して無置換もしくは置換シクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す。また、一般式[A]
+[B]
−で表されるイオン性化合物において、[A]
+は、カチオンを示し、[B]
−は、非配位性アニオンを示す。
【0081】
[A]
+で表されるカチオンとしては、例えば、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アミンカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等が挙げられる。カルボニウムカチオンとしては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオン等の三置換カルボニウムカチオン等が挙げられ、トリ(置換フェニル)カルボニルカチオンとして、具体的には、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン等が挙げられる。アミンカチオンとしては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。ホスホニウムカチオンとしては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオン等が挙げられる。これらカチオンの中でも、N,N−ジアルキルアニリニウムカチオン又はカルボニウムカチオンが好ましく、N,N−ジアルキルアニリニウムカチオンが特に好ましい。
【0082】
上記反応に用いる一般式[A]
+[B]
−で表されるイオン性化合物としては、上記の非配位性アニオン及びカチオンからそれぞれ選択し組み合わせた化合物であって、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が好ましい。また、一般式[A]
+[B]
−で表されるイオン性化合物は、メタロセン錯体に対して0.1〜10倍mol加えることが好ましく、約1倍mol加えることが更に好ましい。なお、一般式(XI)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を重合反応に用いる場合、一般式(XI)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体をそのまま重合反応系中に提供してもよいし、上記反応に用いる一般式(XII)で表される化合物と一般式[A]
+[B]
−で表されるイオン性化合物を別個に重合反応系中に提供し、反応系中で一般式(XI)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を形成させてもよい。また、一般式(IX)又は(X)で表されるメタロセン錯体と一般式[A]
+[B]
−で表されるイオン性化合物とを組み合わせて使用することにより、反応系中で一般式(XI)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を形成させることもできる。
【0083】
上記一般式(IX)及び(X)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(XI)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体の構造は、X線構造解析により決定することが好ましい。
【0084】
上記第二重合触媒組成物に用いることができる助触媒は、通常のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物の助触媒として用いられる成分から任意に選択され得る。該助触媒としては、例えば、アルミノキサン、有機アルミニウム化合物、上記のイオン性化合物等が好適に挙げられる。これら助触媒は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
上記アルミノキサンとしては、アルキルアミノキサンが好ましく、例えば、メチルアルミノキサン(MAO)、修飾メチルアルミノキサン等が挙げられる。また、修飾メチルアルミノキサンとしては、MMAO−3A(東ソーファインケム社製)等が好ましい。なお、上記第二重合触媒組成物におけるアルミノキサンの含有量は、メタロセン錯体の中心金属Mに対する、アルミノキサンのアルミニウム元素Alの元素比率Al/Mが、10〜1000程度、好ましくは100程度となるようにすることが好ましい。
【0086】
一方、上記有機アルミニウム化合物としては、一般式AlRR’R’’(式中、R及びR'はそれぞれ独立して炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子であり、R’’は炭素数1〜10の炭化水素基である)で表される有機アルミニウム化合物が好ましい。上記有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムクロライド、アルキルアルミニウムジクロライド、ジアルキルアルミニウムハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリアルキルアルミニウムが好ましい。また、トリアルキルアルミニウムとしては、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等が挙げられる。なお、上記重合触媒組成物における有機アルミニウム化合物の含有量は、メタロセン錯体に対して1〜50倍molであることが好ましく、約10倍molであることが更に好ましい。
【0087】
更に、上記重合触媒組成物においては、上記一般式(IX)及び(X)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(XI)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体をそれぞれ、適切な助触媒と組み合わせることで、シス−1,4結合含量や得られる重合体の分子量を増大できる。
【0088】
−第三の重合触媒組成物−
次に、第三の重合触媒組成物(以下、「第三重合触媒組成物」ともいう)について説明する。
第三の重合触媒組成物としては、希土類元素含有化合物として、下記一般式(XIII):
R
aMX
bQY
b・・・(XIII)
(式中、Rはそれぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、該RはMに配位しており、Mはランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Xはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を示し、該XはM及びQにμ配位しており、Qは周期律表第13族元素を示し、Yはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子を示し、該YはQに配位しており、a及びbは2である)で表されるメタロセン系複合触媒を含む重合触媒組成物が挙げられる。
【0089】
上記メタロセン系複合触媒の好適例においては、下記一般式(XIV):
【化10】
(式中、M
1は、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Cp
Rは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、R
A及びR
Bは、それぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を示し、該R
A及びR
Bは、M
1及びAlにμ配位しており、R
C及びR
Dは、それぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子を示す)で表されるメタロセン系複合触媒が挙げられる。
上記メタロセン系重合触媒を用いることで、重合体を製造することができる。また、上記メタロセン系複合触媒、例えば予めアルミニウム触媒と複合させてなる触媒を用いることで、重合体合成時に使用されるアルキルアルミニウムの量を低減したり、無くしたりすることが可能となる。なお、従来の触媒系を用いると、重合体合成時に大量のアルキルアルミニウムを用いる必要がある。例えば、従来の触媒系では、金属触媒に対して10当量以上のアルキルアルミニウムを用いる必要があるところ、上記メタロセン系複合触媒であれば、5当量程度のアルキルアルミニウムを加えることで、優れた触媒作用が発揮される。
【0090】
上記メタロセン系複合触媒において、上記一般式(XIII)中の金属Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムである。ランタノイド元素には、原子番号57〜71の15元素が含まれ、これらのいずれでもよい。金属Mとしては、サマリウムSm、ネオジムNd、プラセオジムPr、ガドリニウムGd、セリウムCe、ホルミウムHo、スカンジウムSc及びイットリウムYが好適に挙げられる。
【0091】
上記一般式(XIII)において、Rは、それぞれ独立して無置換インデニル又は置換インデニルであり、該Rは上記金属Mに配位している。なお、置換インデニルの具体例としては、例えば、1,2,3−トリメチルインデニル基、ヘプタメチルインデニル基、1,2,4,5,6,7−ヘキサメチルインデニル基等が挙げられる。
【0092】
上記一般式(XIII)において、Qは、周期律表第13族元素を示し、具体的には、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等が挙げられる。
【0093】
上記一般式(XIII)において、Xはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を示し、該XはM及びQにμ配位している。ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。なお、μ配位とは、架橋構造をとる配位様式のことである。
【0094】
上記一般式(XIII)において、Yはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子を示し、該YはQに配位している。ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。
【0095】
上記一般式(XIV)において、金属M
1は、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムである。ランタノイド元素には、原子番号57〜71の15元素が含まれ、これらのいずれでもよい。金属M
1としては、サマリウムSm、ネオジムNd、プラセオジムPr、ガドリニウムGd、セリウムCe、ホルミウムHo、スカンジウムSc及びイットリウムYが好適に挙げられる。
【0096】
上記一般式(XIV)において、Cp
Rは、無置換インデニル又は置換インデニルである。インデニル環を基本骨格とするCp
Rは、C
9H
7XR
X又はC
9H
11XR
Xで示され得る。ここで、Xは0〜7又は0〜11の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。
置換インデニルとして、具体的には、2−フェニルインデニル、2−メチルインデニル等が挙げられる。なお、式(XIV)における二つのCp
Rは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
【0097】
上記一般式(XIV)において、R
A及びR
Bは、それぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を示し、該R
A及びR
Bは、M
1及びAlにμ配位している。ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。なお、μ配位とは、架橋構造をとる配位様式のことである。
【0098】
上記一般式(XIV)において、R
C及びR
Dは、それぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子である。ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。
【0099】
なお、上記メタロセン系複合触媒は、例えば、溶媒中で、下記一般式(XV):
【化11】
(式中、M
2は、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Cp
Rは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、R
E〜R
Jは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体を、AlR
KR
LR
Mで表される有機アルミニウム化合物と反応させることで得られる。なお、反応温度は室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また、反応時間は任意であるが、数時間〜数十時間程度である。反応溶媒は特に限定されないが、原料及び生成物を溶解する溶媒であることが好ましく、例えばトルエンやヘキサンを用いればよい。なお、上記メタロセン系複合触媒の構造は、
1H−NMRやX線構造解析により決定することが好ましい。
【0100】
上記一般式(XV)で表されるメタロセン錯体において、Cp
Rは、無置換インデニル又は置換インデニルであり、上記一般式(XIV)中のCp
Rと同義である。また、上記式(XV)において、金属M
2は、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムであり、上記式(XIV)中の金属M
1と同義である。
【0101】
上記一般式(XV)で表されるメタロセン錯体は、シリルアミド配位子[−N(SiR
3)
2]を含む。シリルアミド配位子に含まれるR基(R
E〜R
J基)は、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子である。また、R
E〜R
Jのうち少なくとも一つが水素原子であることが好ましい。R
E〜R
Jのうち少なくとも一つを水素原子にすることで、触媒の合成が容易になる。更に、アルキル基としては、メチル基が好ましい。
【0102】
上記一般式(XV)で表されるメタロセン錯体は、更に0〜3個、好ましくは0〜1個の中性ルイス塩基Lを含む。ここで、中性ルイス塩基Lとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム、中性のオレフィン類、中性のジオレフィン類等が挙げられる。ここで、上記錯体が複数の中性ルイス塩基Lを含む場合、中性ルイス塩基Lは、同一であっても異なっていてもよい。
【0103】
また、上記一般式(XV)で表されるメタロセン錯体は、単量体として存在していてもよく、二量体又はそれ以上の多量体として存在していてもよい。
【0104】
一方、上記メタロセン系複合触媒の生成に用いる有機アルミニウム化合物は、AlR
KR
LR
Mで表され、ここで、R
K及びR
Lは、それぞれ独立して炭素数1〜20の1価の炭化水素基又は水素原子で、R
Mは炭素数1〜20の1価の炭化水素基であり、但し、R
Mは上記R
K又はR
Lと同一でも異なっていてもよい。炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。
【0105】
上記有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム;水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ−n−プロピルアルミニウム、水素化ジ−n−ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウム、水素化ジイソヘキシルアルミニウム、水素化ジオクチルアルミニウム、水素化ジイソオクチルアルミニウム;エチルアルミニウムジハイドライド、n−プロピルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウムが好ましい。また、これら有機アルミニウム化合物は、1種単独で使用することも、2種以上を混合して用いることもできる。なお、上記メタロセン系複合触媒の生成に用いる有機アルミニウム化合物の量は、メタロセン錯体に対して1〜50倍molであることが好ましく、約10倍molであることが更に好ましい。
【0106】
前記第三重合触媒組成物は、上記メタロセン系複合触媒と、ホウ素アニオンとを含んでもよく、更に、通常のメタロセン系触媒を含む重合触媒組成物に含有される他の成分、例えば助触媒等を含むことが好ましい。なお、上記メタロセン系複合触媒とホウ素アニオンとを合わせて2成分触媒ともいう。前記第三重合触媒組成物によれば、上記メタロセン系複合触媒と同様に、更にホウ素アニオンを含有するため、各単量体成分の重合体中での含有量を任意に制御することが可能となる。
【0107】
上記第三重合触媒組成物において、2成分触媒を構成するホウ素アニオンとして、具体的には、4価のホウ素アニオンが挙げられる。例えば、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル、ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル)、フェニル]ボレート、トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート等が挙げられ、これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
【0108】
なお、上記ホウ素アニオンは、カチオンと組み合わされたイオン性化合物として使用することができる。上記カチオンとしては、例えば、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アミンカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等が挙げられる。カルボニウムカチオンとしては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオン等の三置換カルボニウムカチオン等が挙げられ、トリ(置換フェニル)カルボニルカチオンとして、具体的には、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン等が挙げられる。アミンカチオンとしては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。ホスホニウムカチオンとしては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオン等が挙げられる。これらカチオンの中でも、N,N−ジアルキルアニリニウムカチオン又はカルボニウムカチオンが好ましく、N,N−ジアルキルアニリニウムカチオンが特に好ましい。従って、上記イオン性化合物としては、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が好ましい。なお、ホウ素アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物は、上記メタロセン系複合触媒に対して0.1〜10倍mol加えることが好ましく、約1倍mol加えることが更に好ましい。
【0109】
なお、上記一般式(XV)で表されるメタロセン錯体と有機アルミニウム化合物を反応させる反応系に、ホウ素アニオンが存在していると、上記一般式(XIV)のメタロセン系複合触媒を合成することができない。従って、上記第三重合触媒組成物の調製には、該メタロセン系複合触媒を予め合成し、該メタロセン系複合触媒を単離精製してからホウ素アニオンと組み合わせる必要がある。
【0110】
上記第三重合触媒組成物に用いることができる助触媒としては、例えば、上述のAlR
KR
LR
Mで表される有機アルミニウム化合物の他、アルミノキサン等が好適に挙げられる。上記アルミノキサンとしては、アルキルアミノキサンが好ましく、例えば、メチルアルミノキサン(MAO)、修飾メチルアルミノキサン等が挙げられる。また、修飾メチルアルミノキサンとしては、MMAO−3A(東ソーファインケム社製)等が好ましい。なお、これらアルミノキサンは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0111】
<カップリング工程>
カップリング工程は、前記重合工程において得られた多元共重合体の高分子鎖の少なくとも一部(例えば、末端)を変性する反応(カップリング反応)を行う工程である。
前記カップリング工程において、重合反応が100%に達した際にカップリング反応を行うことが好ましい。
前記カップリング反応に用いるカップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビス(マレイン酸−1−オクタデシル)ジオクチルスズ(IV)等のスズ含有化合物;4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;グリシジルプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ビス(マレイン酸−1−オクタデシル)ジオクチルスズ(IV)が、反応効率と低ゲル生成の点で、好ましい。
なお、カップリング反応を行うことにより、数平均分子量(Mn)の増加を行うことができる。
【0112】
<洗浄工程>
洗浄工程は、前記重合工程において得られた多元共重合体を洗浄する工程である。なお、洗浄に用いる媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられるが、重合触媒としてルイス酸由来の触媒を使用する際は、特にこれらの溶媒に対して酸(たとえば塩酸、硫酸、硝酸)を加えて使用することができる。添加する酸の量は溶媒に対して15mol%以下が好ましい。これ以上では酸が共重合体中に残存してしまうことで混練及び加硫時の反応に悪影響を及ぼす可能性がある。
この洗浄工程により、共重合体中の触媒残渣量を好適に低下させることができる。
【0113】
(ゴム組成物)
本発明のゴム組成物は、少なくとも本発明の多元共重合体を含み、更に必要に応じて、充填剤、架橋剤、その他の成分を含むことができる。
【0114】
なお、その他のゴム成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリイソプレン、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム(EPDM)、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0115】
また、前記ゴム組成物には、その補強性を向上させること等を目的として、必要に応じて、充填剤を用いることができる。前記充填剤の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、10〜100質量部が好ましく、20〜80質量部がより好ましく、30〜60質量部が特に好ましい。前記充填剤の配合量が10質量部以上であることにより、充填剤を配合したことによる補強性向上の効果が得られ、また、100質量以下であることにより、低ロス性の大幅な低下を回避しつつ、良好な作業性を保持することができる。
【0116】
なお、前記充填剤としては、特に制限はなく、カーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウム、クレー、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム等が挙げられるが、これらの中でも、カーボンブラックを用いることが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0117】
また、前記カーボンブラックとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、FEF、GPF、SRF、HAF、N339、IISAF、ISAF、SAF、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N
2SA、JIS K 6217−2:2001に準拠して測定する)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20〜100m
2/gが好ましく、35〜80m
2/gがより好ましい。前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N
2SA)が20m
2/g以上であることにより、得られるゴム組成物の耐久性が向上し、十分な耐亀裂成長性が得られ、また、100m
2/g以下であることにより、低ロス性の大幅な低下を回避しつつ、良好な作業性を保持することができる。
【0118】
前記ゴム組成物には、必要に応じて、架橋剤を用いることができる。前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫黄系架橋剤、有機過酸化物系架橋剤、無機架橋剤、ポリアミン架橋剤、樹脂架橋剤、硫黄化合物系架橋剤、オキシム−ニトロソアミン系架橋剤等が挙げられる。なお、タイヤ用ゴム組成物としては、これらの中でも硫黄系架橋剤(加硫剤)がより好ましい。
【0119】
前記架橋剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、0.1〜20質量部が好ましい。前記架橋剤の含有量が0.1質量部未満であると、架橋がほとんど進行しないおそれがあり、一方、20質量部を超えると、一部の架橋剤により混練り中に架橋が進んでしまう傾向があり、また、加硫物の物性が損なわれるおそれがある。
【0120】
前記加硫剤を用いる場合には、更に加硫促進剤を併用することもできる。前記加硫促進剤としては、グアジニン系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、チウラム系、ジチオカルバメート系、ザンテート系等の化合物が挙げられる。また、本発明のゴム組成物には、必要に応じて、軟化剤、加硫助剤、着色剤、難燃剤、滑剤、発泡剤、可塑剤、加工助剤、酸化防止剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、着色防止剤、その他の配合剤など公知のものをその使用目的に応じて使用することができる。
【0121】
(架橋ゴム組成物)
また、本発明のゴム組成物を架橋することにより、架橋ゴム組成物を得ることができる。前記架橋の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、温度120〜200℃、加温時間1分間〜900分間とすることが好ましい。かかる架橋ゴム組成物は、ゴム成分の単量体の一つとして共役ジエン化合物を用いているため、EPDMのような非共役ジエン化合物を単量体の一つとする重合体を用いた場合に比べ、架橋特性が良好であり、従って機械特性がより高い。
【0122】
(タイヤ)
本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物を用いたものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。かかるタイヤは、本発明の多元共重合体を含むゴム組成物を用いているため、高い作業性をもって製造することができる上、耐久性及び耐候性が高い。タイヤにおける本発明のゴム組成物の適用部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トレッド、ベーストレッド、サイドウォール、サイド補強ゴム及びビードフィラーなどが挙げられる。これらの中でも、本発明のゴム組成物をトレッドに用いることが、耐久性の観点で有利である。
前記タイヤを製造する方法としては、慣用の方法を用いることができる。例えば、タイヤ成形用ドラム上に未加硫ゴム組成物及び/又はコードからなるカーカス層、ベルト層、トレッド層等の通常タイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、ドラムを抜き去ってグリーンタイヤとする。次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより、所望のタイヤ(例えば、空気入りタイヤ)を製造することができる。
【0123】
(タイヤ以外の用途)
本発明のゴム組成物は、タイヤ用途以外にも、防振ゴム、免震ゴム、コンベアベルト等のベルト、ゴムクローラ、各種ホースなどに用いることができる。
【実施例】
【0124】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0125】
(共重合体A)
十分に乾燥した2Lステンレス反応器に、芳香族ビニル化合物としてのスチレン50g(0.48mol)を含むトルエン溶液(モノマー溶液)200gを添加した。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にビス(2−フェニル−3−メチルインデニル)ガドリニウムビス(ジメチルシリル)アミド[(2−Ph−3−MeC
9H
5)
2GdN(SiHMe
2)
2]38.5μmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me
2NHPhB(C
6F
5)
4]42.3μmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド2.31mmolを仕込み、トルエン10mlに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、ガドリニウム換算で35μmolとなる量の触媒溶液を、モノマー溶液を含む2Lステンレス反応器へ添加後、共役ジエン化合物としての1,3−ブタジエン150g(2.78mol)を含むモノマー溶液600gを導入し、非共役オレフィン化合物としてのエチレンの加圧導入下(1.5MPa)で、80℃で240分間、重合を行った。重合後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液1mlを加えて反応を停止させ、更に大量の2−プロパノールで共重合体を分離し、70℃で真空乾燥し、多元共重合体Aを得た。得られた共重合体Aの収量は201gであった。
【0126】
(共重合体B)
ビス(2−フェニル−3−メチルインデニル)ガドリニウムビス(ジメチルシリル)アミド[(2−Ph−3−MeC
9H
5)
2GdN(SiHMe
2)
2]、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me
2NHPhB(C
6F
5)
4]及びジイソブチルアルミニウムハイドライドの仕込み量をそれぞれ115.5μmol、127.1μmol、0.92mmolに変更した以外は、上記共重合体Aの製造手順と同様にして、多元共重合体Bを得た。得られた共重合体Bの収量は189gであった。
【0127】
(共重合体C)
共役ジエン化合物としての1,3−ブタジエンの仕込み量を50g(0.93mol)に、ジイソブチルアルミニウムハイドライドの仕込み量を3.00mmolに変更した以外は、上記共重合体Bの製造手順と同様にして、多元共重合体Cを得た。得られた共重合体Cの収量は146gであった。
【0128】
(共重合体D)
十分に乾燥した2Lステンレス反応器に、芳香族ビニル化合物としてのスチレン100g(0.48mol)を含むトルエン溶液(モノマー溶液)200g及び共役ジエン化合物としての1,3−ブタジエン150g(2.78mol)を含むモノマー溶液600gを添加した。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にビス(1−メチル−2−フェニルインデニル)ガドリニウムビス(ジメチルシリル)アミド[(1−Me−2−PhC
9H
5)
2GdN(SiHMe
2)
2]38.5μmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me
2NHPhB(C
6F
5)
4]42.3μmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド2.31mmolを仕込み、トルエン10mlに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、ガドリニウム換算で35μmolとなる量の触媒溶液をモノマー溶液へ添加後、非共役オレフィン化合物としてのエチレンの加圧導入下(0.2MPa)で、80℃で240分間、重合を行った。重合後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液1mlを加えて反応を停止させ、更に大量の2−プロパノールで共重合体を分離し、60℃で真空乾燥し、多元共重合体Dを得た。得られた共重合体Dの収量は158gであった。
【0129】
(共重合体E)
十分に乾燥した2Lステンレス反応器に、芳香族ビニル化合物としてのスチレン50g(0.48mol)を含むトルエン溶液200g、共役ジエン化合物としての1,3−ブタジエン150g(2.78mol)を含むモノマー溶液600gを添加した。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にビス(2−フェニル−3−メチルインデニル)ガドリニウムビス(ジメチルシリル)アミド[(2−Ph−3−MeC
9H
5)
2GdN(SiHMe
2)
2]38.5μmol、ジイソブチルアルミニウムハイドライド2.31mmolを仕込み、トルエン40mLに溶解させた後、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me
2NHPhB(C
6F
5)
4]42.3mmolを添加した。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、ガドリニウム換算で 35μmolとなる量をステンレス反応器に添加し、非共役オレフィン化合物としてのエチレンの加圧導入下(1.5MPa)で、80℃で120分間、重合を行った。重合後、2,2'−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液5mlを加えて反応を停止させ、更に大量のメタノールで共重合体を分離し、60℃で真空乾燥し、多元共重合体Eを得た。得られた共重合体Eの収量は176gであった。
【0130】
(共重合体F)
スチレンを含むトルエン溶液を2Lステンレス反応器に添加しなかったこと以外は、上記共重合体Aの製造手順と同様にして、二元共重合体Fを得た。得られた共重合体Fの収量は164gであった。
【0131】
(共重合体G)
スチレンを含むトルエン溶液を2Lステンレス反応器に添加しなかったこと以外は上記共重合体Bの重合方法と同様にして重合し、二元共重合体Gを得た。得られた共重合体Gの収量は155gであった。
【0132】
(共重合体H)
十分に乾燥した2Lステンレス反応器に、芳香族ビニル化合物としてのスチレン15g(0.14mol)を含むシクロヘキサン溶液(モノマー溶液)300gを添加した。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に1,3−ビス(t−ブチルジメチルシリル)インデニルガドリニウムビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)[{(t−Bu)Me
2Si}
2C
9H
5Gd(N(SiHMe
2)
2)
2]32μmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me
2NHPhB(C
6F
5)
4]35μmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド3.15mmolを仕込み、シクロヘキサン20mlに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、全量を、モノマー溶液を含む2Lステンレス反応器へ添加後、共役ジエン化合物としての1,3−ブタジエン150g(2.78mol)を含むモノマー溶液640gを導入し、非共役オレフィン化合物としてのエチレンの加圧導入下(1.5MPa)で、80℃で300分間、重合を行った。重合後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液1mlを加えて反応を停止させ、更に大量の2−プロパノールで共重合体を分離し、60℃で真空乾燥し、多元共重合体Hを得た。得られた共重合体Hの収量は167gであった。
【0133】
(共重合体I)
十分に乾燥した2Lステンレス反応器に、芳香族ビニル化合物としてのスチレン80g(0.76mol)を含むシクロヘキサン溶液(モノマー溶液)280gを添加した。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に1,3−ビス(t−ブチルジメチルシリル)インデニルガドリニウムビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)[{(t−Bu)Me
2Si}
2C
9H
5Gd(N(SiHMe
2)
2)
2]190μmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me
2NHPhB(C
6F
5)
4]209μmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド3.24mmolを仕込み、シクロヘキサン70mlに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、全量を、モノマー溶液を含む2Lステンレス反応器へ添加後、共役ジエン化合物としての1,3−ブタジエン150g(2.78mol)を含むモノマー溶液640gを導入し、非共役オレフィン化合物としてのエチレンの加圧導入下(1.5MPa)で、80℃で300分間、重合を行った。重合後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液1mlを加えて反応を停止させ、更に大量の2−プロパノールで共重合体を分離し、60℃で真空乾燥し、多元共重合体Iを得た。得られた共重合体Iの収量は240gであった。
【0134】
(共重合体J)
十分に乾燥した2Lステンレス反応器に、芳香族ビニル化合物としてのスチレン5g(0.05mol)を含むシクロヘキサン溶液(モノマー溶液)200gを添加した。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に1,3−ビス(t−ブチルジメチルシリル)インデニルガドリニウムビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)[{(t−Bu)Me
2Si}
2C
9H
5Gd(N(SiHMe
2)
2)
2]64μmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me
2NHPhB(C
6F
5)
4]70μmol、ジイソブチルアルミニウムハイドライド2.45mmol、及びジイソブチルアルミニウムクロリド64μmolを仕込み、シクロヘキサン20mlに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、全量を、モノマー溶液を含む2Lステンレス反応器へ添加後、共役ジエン化合物としての1,3−ブタジエン100g(1.85mol)を含むモノマー溶液400gを導入し、非共役オレフィン化合物としてのエチレンの加圧導入下(1.5MPa)で、80℃で300分間、重合を行った。重合後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液1mlを加えて反応を停止させ、更に大量の2−プロパノールで共重合体を分離し、60℃で真空乾燥し、多元共重合体Jを得た。得られた共重合体Jの収量は89gであった。
【0135】
(共重合体K)
十分に乾燥した2Lステンレス反応器に、芳香族ビニル化合物としてのスチレン5g(0.05mol)を含むシクロヘキサン溶液(モノマー溶液)200gを添加した。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)スカンジウムビス(ジメチルシリル)アミド[(Me
5C
5)
2ScN(SiHMe
2)
2]260μmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me
2NHPhB(C
6F
5)
4]270μmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド2.45mmolを仕込み、シクロヘキサン20mlに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、全量を、モノマー溶液を含む2Lステンレス反応器へ添加後、共役ジエン化合物としての1,3−ブタジエン100g(1.85mol)を含むモノマー溶液300gを導入し、非共役オレフィン化合物としてのエチレンの加圧導入下(1.5MPa)で、80℃で300分間、重合を行った。重合後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液1mlを加えて反応を停止させ、更に大量の2−プロパノールで共重合体を分離し、60℃で真空乾燥し、多元共重合体Kを得た。得られた共重合体Kの収量は39gであった。
【0136】
(共重合体L)
十分に乾燥した2Lステンレス反応器に、芳香族ビニル化合物としてのスチレン2g(0.02mol)を含むシクロヘキサン溶液(モノマー溶液)300gを添加した。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に1,3−ビス(t−ブチルジメチルシリル)インデニルガドリニウムビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)[{(t−Bu)Me
2Si}
2C
9H
5Gd(N(SiHMe
2)
2)
2]32μmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me
2NHPhB(C
6F
5)
4]35μmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド3.15mmolを仕込み、シクロヘキサン20mlに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、全量を、モノマー溶液を含む2Lステンレス反応器へ添加後、共役ジエン化合物としての1,3−ブタジエン150g(2.78mol)を含むモノマー溶液640gを導入し、非共役オレフィン化合物としてのエチレンの加圧導入下(0.5MPa)で、80℃で300分間、重合を行った。重合後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液1mlを加えて反応を停止させ、更に大量の2−プロパノールで共重合体を分離し、60℃で真空乾燥し、多元共重合体Lを得た。得られた共重合体Lの収量は146gであった。
【0137】
(共重合体M)
十分に乾燥した2Lステンレス反応器に、芳香族ビニル化合物としてのスチレン80g(0.77mol)を含むシクロヘキサン溶液(モノマー溶液)400gを添加した。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に1,3−ビス(t−ブチルジメチルシリル)インデニルガドリニウムビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)[{(t−Bu)Me
2Si}
2C
9H
5Gd(N(SiHMe
2)
2)
2]105μmol、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph
3CB(C
6F
5)
4]116μmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド5.16mmolを仕込み、シクロヘキサン50mlに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、全量を、モノマー溶液を含む2Lステンレス反応器へ添加後、共役ジエン化合物としての1,3−ブタジエン10g(0.19mol)を含むモノマー溶液50gを導入し、非共役オレフィン化合物としてのエチレンの加圧導入下(1.5MPa)で、70℃で300分間、重合を行った。重合後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液1mlを加えて反応を停止させ、更に大量の2−プロパノールで共重合体を分離し、60℃で真空乾燥し、多元共重合体Mを得た。得られた共重合体Mの収量は130gであった。
【0138】
(共重合体N)
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、十分に乾燥した1L耐圧ガラス製容器に、芳香族ビニル化合物としてのスチレン104g(1mol)及びトルエン50gを添加し、容器を打栓した。その後、グローブボックスから容器を取り出し、共役ジエン化合物としての1,3−ブタジエン54g(1mol)を仕込み、モノマー溶液とした。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に、ビス(2−フェニル−3−メチルインデニル)ガドリニウムビス(ジメチルシリル)アミド[(2−Ph−3−MeC
9H
5)
2GdN(SiHMe
2)
2]60μmol、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph
3CB(C
6F
5)
4]60μmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド700μmolを仕込み、トルエン10mlに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、モノマー溶液を添加し、70℃で30分間重合を行った。重合後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液5mlを加えて反応を停止させ、更に大量のメタノール/塩酸混合溶媒で共重合体を分離し、60℃で真空乾燥し、高シス含有率のスチレン−ブタジエン共重合体を得た。得られた共重合体の収量は29.6gであった。
次いで、予め別容器で調製したナフテン酸ニッケル:トリエチルアルミニウム:ブタジエン=1:3:3(モル比)の触媒液を、得られた共重合体中の1,3−ブタジエン単位1000molに対しニッケル1molとなるよう仕込んだ。その後、反応系内に水素を圧力30atmで導入し、80℃で反応させ、共重合体Nを得た。得られた共重合体Nの収量は21.3gであった。
【0139】
以上のようにして得られた共重合体A〜Nについて、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、ミクロ構造、融点(T
m)を、下記の方法で測定・評価した。その結果を表1,2に示す。
【0140】
(1)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー製HLC−8121GPC/HT、カラム:東ソー製GMH
HR−H(S)HT×2本、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンを基準として、共重合体A〜Nのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。なお、測定温度は40℃である。
【0141】
(2)ミクロ構造
共重合体A〜Nのミクロ構造を、
1H−NMRスペクトル(1,2ビニル結合の結合含量)及び
13C−NMRスペクトル(シス−1,4結合とトランス−1,4結合の含量比)の積分比等により求めた。表1,2には、共役ジエン単位全体におけるシス−1,4結合含量(%)、トランス−1,4結合含量(%)、及び1,2ビニル結合含量(%)、共役ジエン単位の含有量(mol%)、非共役オレフィン単位の含有量(mol%)、及び芳香族ビニル単位の含有量(mol%)、並びにエチレン単位とスチレン単位との比率を示す。
【0142】
(3)融点(T
m)
示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)を用い、JIS K 7121−1987に準拠して、共重合体A〜Nの融点を測定した。かかる温度が低いほど、結晶性が低いことを示し、また、融点が検出されない場合には、非晶性であることを示す。なお、融点が検出されない場合は、表1,2において「なし」と記載した。また、複数の融点を有する場合においては、それらのうち最も高い融点を評価対象とし、その値を表1,2に記載した。
【0143】
【表1】
【表2】
【0144】
また、
図1及び2に、共重合体Aの
13C−NMRスペクトルチャート(0〜150ppmの範囲及び10〜50ppmの範囲)を示す。なお、
13C−NMRでは、テトラクロロエタンを溶媒とし、測定温度を100℃とした。この
13C−NMRスペクトルチャートでは、10〜24ppmにピークが観測されないことから、共重合体Aは、主鎖が非環状構造のみからなることが分かる。同様に、共重合体B〜Nについても、10〜24ppmにピークが観測されなかった。
【0145】
表1,2より、実施例1〜11の共重合体は、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを含有し、且つ、共役ジエン単位全体におけるシス−1,4結合含量が50%以上であることが分かり、これらの単位に起因して、高い耐久性及び耐候性が両立しているといえる。
また、実施例1〜11の共重合体は、比較例1,2の二元共重合体に比べ、融点が低く、或いは融点が消失しているため、結晶性が低いことが分かり、ゴム組成物やタイヤ等の製造時における作業性を高めることができる。
なお、2種類の単量体を用いて製造した比較例3の共重合体は、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを含有するものの、シス−1,4結合含量が50%未満であることが分かり、ゴム組成物やタイヤ等の耐久性を十分に向上させることができない。