特許第6947818号(P6947818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6947818
(24)【登録日】2021年9月21日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】構造の部品を補強すること
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/20 20060101AFI20210930BHJP
   B21D 47/00 20060101ALI20210930BHJP
   B21D 49/00 20060101ALI20210930BHJP
   B23K 26/342 20140101ALI20210930BHJP
【FI】
   B21D22/20 E
   B21D47/00 Z
   B21D49/00
   B23K26/342
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-515397(P2019-515397)
(86)(22)【出願日】2017年9月19日
(65)【公表番号】特表2019-531897(P2019-531897A)
(43)【公表日】2019年11月7日
(86)【国際出願番号】EP2017073634
(87)【国際公開番号】WO2018054902
(87)【国際公開日】20180329
【審査請求日】2020年9月18日
(31)【優先権主張番号】16382438.6
(32)【優先日】2016年9月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517098527
【氏名又は名称】オートテック・エンジニアリング・ソシエダッド・リミターダ
【氏名又は名称原語表記】Autotech Engineering, S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】リカルド・モリナ・メサ
(72)【発明者】
【氏名】オスカル・ベルトリン・プラダス
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2017−519641(JP,A)
【文献】 特開2016−078205(JP,A)
【文献】 特開2006−043772(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2511037(EP,A1)
【文献】 米国特許第05245155(US,A)
【文献】 特開2012−086692(JP,A)
【文献】 特開昭62−024868(JP,A)
【文献】 特表2014−512963(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102015102908(DE,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102014101907(DE,A1)
【文献】 国際公開第2017/103127(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第2907603(EP,A2)
【文献】 中国特許出願公開第101792906(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/20
B21D 47/00
B21D 49/00
B23K 26/342
B21D 35/00
B21D 53/88
B23K 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所的な補強材を備える構造のスチール部品を製造する方法であって、
方法は、
補強される前記部品の少なくとも領域を選択するステップと、
スチールブランクを提供するステップと、
プレス工具で前記ブランクを変形して生産物を形成するステップと、を備え、
前記ブランク及び/または前記生産物は、補強される前記領域に溝を備え、
前記溝は、内側表面と外側表面を備え、
前記方法は、さらに、
前記溝の前記内側表面に補強材の材料を堆積するステップと、
前記補強材の材料と前記スチールブランクまたは生産物の前記溝を局所的に加熱し、溶融した前記補強材の材料を前記スチールブランクまたは生産物の溶融した部分と混合するステップと、を備える方法。
【請求項2】
前記ブランクを変形するステップは、前記ブランクを熱間変形及び冷却して前記生産物を形成するステップを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ブランクに前記溝を作るステップを備える請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記溝は、第一の冷間変形プロセスで前記ブランクに作られる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
さらにスチールコイルから前記ブランクを切り出すまたは切り出している間に前記溝を作るステップを備える請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
さらに前記生産物に前記溝を作るステップを備える請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記熱間変形するステップは、前記溝を作るステップを備える請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記補強材の材料は、前記ブランクの前記溝に堆積される請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記補強材の材料は、前記生産物の前記溝に堆積される請求項6または7に記載の方法。
【請求項10】
さらに前記補強材の材料が堆積されているとき、前記溝の前記外側表面を局所的に冷却するステップを備える請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記溝を局所的に加熱するステップは、前記補強材の材料の前記加熱によって間接的になされる請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記溝を局所的に加熱するステップは、レーザビームによって直接的になされる請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記補強材の材料は、粉末である請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記補強材の材料は、フィラワイヤである請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記補強材の材料は、ステンレススチールである請求項1乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、補強した構造の部品を製造する方法と、それによって得られた構造の部品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車工業における重量を減らす要求は、軽量な材料、製造するプロセス及び工具の開発と実施を引き起こした。さらに、占有者の安全に関する懸念の高まりは、またエネルギ吸収を改善しつつ、衝突の間の自動車の完全性を改善する、材料の選択につながった。その意味で、高強度(High Strength)及び超高強度スチール(Ultra High Strength Steel(UHSS))で作られた自動車の部分は、しばしば軽量構造のための基準を満たすために用いられる。
【0003】
重量のゴールに合い、要求を満たす必要がある典型的な自動車の部品は、例えば、ドアビーム、バンパビーム、クロス/サイド部材、A/Bピラー補強材、及びウエストレール補強材などの構造の及び/または安全の要素を含む。
【0004】
例えば、熱間成形金型焼き入れ(Hot Forming Die Quenching(HFDQ))として知られるプロセスは、UHSS特性、少なくとも1000MPa、好ましくは約1500MPaまたは2000MPaまでまたはさらに上の引張強度を備えるスタンプされた部品を作り出すためにボロンスチールシートを使う。強度の増加は、薄いゲージ材料が使われることを許容し、従来の冷間スタンプ軟鋼部品を超える重量の節約をもたらす。
【0005】
典型的な自動車部品の設計フェーズの間実行されるシミュレーションは、強度及び/または剛性を増加するために補強材を必要とする(なぜならば、軽くて薄い材料シート及びブランクが使われる)成型部品の点または領域を識別できる。代わりに再設計は、変形指示するためになされるかもしれない。
【0006】
その意味において、部品のいくつかの領域は、ストレスを再配分するために補強され、または軟化され、部品の厚さを減らすことによって重量を節約することができるいくつかの手順がある。部品を補強するためのこれら知られた手順は、例えば、すべての変形プロセスの前に溶接された補強材を加える手順である。そのような補強材は、いくつかのブランクの部分的なまたは完全な重なりが使われる「パッチワーク」(patchworks)、または「端部から端部へ」(edge to edge)溶接される、異なる厚さのブランクまたはプレート、すなわち「仕立てられた溶接ブランク」(Tailor Welded Blanks(TWB))または「仕立てられたロールブランク」(Tailor Rolled Blanks(TRB))である。構造の機械的な要求は、それゆえ、最小の材料と厚さ(重さ)で理論的に達成される。
【0007】
しかしながら、これらの方法のいくつかにおいて、さらなる製造プロセスが含まれる。例えば、超高強度スチール(例えばUsibor 1500P)が熱間成形されるとき、いくつかの溶接可能性の問題が、通常腐食と酸化ダメージから保護するために用いられるアルミニウム−シリコン(AlSi)コーティングによって起きる。これらの問題を克服するために、レーザアブレーションによって溶接間隙に近い領域のコーティングの一部を取り除くことが知られている。しかしながら、これは、自動車部品の製造プロセスにおいて追加のステップに相当する。
【0008】
さらに、溶融した補強材(パッチワーク)は、ブランクに加えられたとき、ブランクの部分的なまたは完全な重なりを起こす。
【0009】
成型された部品によると、例えば、角または高さが変わる領域など溶接した補強材を使えない、または少なくとも使いにくい領域があるかもしれない。パッチワークは、通常スポットを分配するための最小スペースを必要とするスポット溶接を用いて溶接される。さらに、パッチワークは、容易に溶接されるために最小の大きさを必要とする。これは、補強材が、要求された領域を補強するために必要とされる適切な(最小の)大きさを有するよりむしろ、溶接されるための最小の大きさを必要とするので、余分な重さを含む。
【0010】
前述の問題及び/また課題は、自動車工業またはその工業に用いられる材料とプロセスに特有ではない。代わりにこれらの課題は、重量を減らすことが目的であるあらゆる工業で遭遇することができる。重量を減らすことが目的であるとき、部品は、さらに薄くなり、それゆえ補強材の増加した要求につながる。
【0011】
補強した構造の部品を製造する改善された方法を提供することが本開示の目的である。
【発明の概要】
【0012】
局所的な補強材を備える構造のスチール部品を製造する方法が提供される。この方法は、補強される部品の少なくとも領域を選択するステップと、スチールブランクを提供するステップと、プレス工具でブランクを変形して生産物を形成するステップと、を備え、ブランク及び/または生産物は、補強される領域に溝を備え、溝は、内側表面と外側表面を備える。この方法は、さらに、溝の内側表面に補強材の材料を堆積するステップと、補強材の材料とスチールブランクまたは生産物の溝を局所的に加熱し、溶融した補強材の材料をスチールブランクまたは生産物の溶融した部分と混合するステップと、を備える。
【0013】
本明細書で使われるように「生産物」は、中間生産物(準完成部品)または最終生産物(完成部品)をいうことができる。
【0014】
いくつかの実施例において、溝の補強材の材料の堆積と補強材の材料を局所的に加熱するステップは、熱間成形及び焼き入れ前のブランクで実行されることができる。他の実施例において、溝での補強材の材料の堆積及び補強材の材料を局所的に加熱するステップは、熱間成形及び焼き入れ後の成形された部品、すなわち生産物で実行されることができる。
【0015】
溝を作るステップは、補強される領域が既に予め画定されるので、正確な材料堆積プロセスを可能とする。溝の形成は、例えば、粉末、ペーストまたはフィラワイヤなどの異なるタイプの堆積される材料を許容する。溝の使用は、2つの異なる補強材タイプの組み合わせを可能とする。一方では、ブランクに切れ目を作り出す、すなわち溝を作ることによって得られる完全な幾何形状の補強材が、バックリング力への抵抗を改善する。そして他方では、補強材の材料の使用は、補強材の性質を改善する。
【0016】
溝は、補強材の材料の余剰を取り除くことができる。補強材の材料を局所的に堆積するステップは、例えばパッチワークブランクまたは仕立てられた溶接ブランクの必要を減らし、正確にそれらが必要とされる補強材を提供することができる。溝を用いる別の態様は、ハイブリッド溶接技術(レーザ溶接とアーク溶接トーチの組み合わせ)が、さらに急速に補強材の材料を堆積する方法として用いられることである。溶接及びレーザ加熱に関する1つの効果は、通常比較的大きな熱影響部(HAZ)があることである。もし熱間成形(及び冷却または焼き入れ)が溶接の後に実行されるならば、HAZに関する負の効果は大きくまたは完全に消失する。
【0017】
補強材の材料は、その形態とは無関係に、Hoganas(登録商標)から市販されている、ステンレススチールAISI 316Lである。粉末は、重量%で次の組成を有し、炭素0−0.03%、モリブデン2.0−3.0%、ニッケル10−14%、マンガン1.0−2.0%、クロム16−18%、シリコン0.0−1.0%及び残りの鉄と不純物である。代わりにHoganas(登録商標)から市販されている431L HCが使われる。この粉末は、重量%で次の組成を有し、鉄70−80、クロム10−20%、ニッケル1.0−9.99%、シリコン1−10%、マンガン1−10%及び残りの不純物である。これらの補強材の材料を組み合わせることもできる。例えば、重量で35%のAISI 316Lと重量で65%の431L HCを含む補強材の材料がよい延性と強度を示す。
【0018】
さらなる実施例は、例えばHoganas(登録商標)からさらに市販されている3533−10を用いることができる。粉末は、重量%で次の組成を有し、炭素2.1%、シリコン1.2%、クロム28%、ニッケル11.5%、モリブデン5.5%、マンガン1%、及び残りの鉄と不純物である。
【0019】
これらの組成物でニッケルの存在は、良好な耐食性につながり、オーステナイト形態を促進することが見つけられた。クロムとシリコンの追加は、耐食性を助け、モリブデンは、硬度を強化することを助ける。代わりの実施例において、他のスチールは、例えば22MnB5など、UHSSでも用いられることもできる。補強材が粉末であるいくつかの実施例において、粉末は、状況に応じて異なる(例えば高い)機械特性を提供するあらゆる部品を組み込むことができる。上述の補強材の材料は、レーザビームによってスチール基板の一部と溶融し、薄め、混合することが容易である。
【0020】
実施例によると、方法はさらに溝を直接的または間接的に加熱するステップを備える。溝を加熱するステップにより、補強材の材料はブランクの中に染み込むことができる。それゆえ、補強材の材料は、次のすべてのプロセスの前にブランクの一部である。
【0021】
実施例によると、提供されるブランクは、自動車工業で使われるボロンスチールの実施例である22MnB5で作られる。22MnB5の組成は、重量%で以下にまとめられる(残りは鉄(Fe)及び不純物)。
【0022】
【表1】
【0023】
いくつかの22MnB5スチールは、同様の化学組成を有して市販されている。しかしながら、22MnB5スチールの成分のそれぞれの正確な量は、ある製造者から別の製造者へわずかに変わってもよい。Usibor 1500PはArcelorによって製造された市販された22MnB5スチールの1つの実施例である。Usiborの組成は、重量%で以下にまとめられる(残りは鉄(Fe)及び不純物)
【0024】
【表2】
【0025】
他の実施例において、22MnB5は、おおよそC 0.23%、Si 0.22%、Cr 0.16%を含むことができる。材料は、さらに異なる割合でMn、Al、Ti、B、N、Niを含むことができる。
【0026】
様々な他のUHSSのスチール組成は、また自動車工業で用いられる。特に、EP 2 735 620 A1に記載されたスチール組成は、適切に検討される。EP 2 735 620の表1と段落0016−0021と段落0067−0079の検討を具体的に参照する。いくつかの実施例において、UHSSは、おおよそC 0.22%、Si 1.2%、Mn 2.2%を含む。これらのスチールは、空気硬化され、すなわちそれらは、マルテンサイト微細構造を得るために、例えばプレス工具で焼き入れを必要としない。
【0027】
これらの組成のいずれかのスチール(例えばUsiborなどの22MnB5スチール及び前に言及され、参照された他の組成の両方)は、腐食及び酸化ダメージを防ぐためにコーティングとともに供給される。このコーティングは、例えばアルミニウム−シリコン(AlSi)コーティングまたは主に亜鉛または亜鉛合金を含むコーティングである。
【0028】
さらなる態様において、本明細書で記載された方法のいずれかによって得られたまたは得られる部品が提供される。
【0029】
本開示の限定されない実施例は、添付した図面を参照して次に記載されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】概略的に補強材の材料で満たされた溝を備えるブランクの実施例を描く。
図2】概略的にブランクまたは部品の溝に補強材の材料を塗布する別の実施例を描く。
図3a】概略的にプレス工具の実施例と局所的な補強材を備える構造の部品を製造する実施例を描く。
図3b】概略的にプレス工具の実施例と局所的な補強材を備える構造の部品を製造する実施例を描く。
図3c】概略的にプレス工具の実施例と局所的な補強材を備える構造の部品を製造する実施例を描く。
図3d】概略的にプレス工具の実施例と局所的な補強材を備える構造の部品を製造する実施例を描く。
図4】概略的に複数の溝を備えるブランクの実施例を描く。
図5】概略的に2つの隣接する溝を備えるブランクの実施例を描く。
図6】補強された構造の部品を製造する方法の実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、ブランク1の領域を描き、溝110は、例えばスチールコイルからブランクを切り出す前、同時またはそれに続く冷間変形プロセスによって作り出される。溝110は、補強材を必要とする構造の部品の領域に対応する、ブランクの領域に提供される。
【0032】
粉末またはガスフロー122は、あらかじめ決められた割合においてノズル121を出る。補強材の材料140は、図1の実施例の金属粉末であり、それゆえ、溝110に堆積される。
【0033】
ノズル121は、溝に沿って、すなわち図1のxy平面に垂直な方向に、少なくとも動くことができる。実施例によると、例えば金属粉末など、補強材の材料は、溝110が完全に満たされるまで、溝に沿っていくつかのパスで、すなわち補強材の材料140の連続層を塗布することによって、堆積される。補強材の材料は、任意の代替の適切な方法を使って、堆積できる。
【0034】
溝110は、溝の深さ及び幅を固定する2つの側壁及び底部壁を備えるU字状断面を有する。溝110の大きさは、例えば、堆積された補強材の材料140の量を制御する及び/または作り出される補強材の大きさを制御するために設計される。溝110が形成されるので、粉末の余剰が堆積されるならば、余剰は、容易に例えばスキミングシートを使って表面を平らにすることによって及び堆積された補強材を押しつける及び詰め込むことによって取り除かれる。溝110は、いくつかの実施例において、約8mmの幅と約1.5−2mmの深さを有する。
【0035】
レーザ加熱システム130は、次のプロセスの前に、例えば、金属粉末など、堆積された補強材の材料140を溶融するために使われる。レーザ加熱システム130は、レーザビーム131が出る、レーザヘッド132を備える。いくつかの実施例において、レーザビームのスポットは、補強材の材料及び溝の内側表面を加熱し、溶融し、それゆえ溝の内側表面の溶融した層と溶融した補強材の材料を混合する。他の実施例において、第1のレーザビームが補強材の材料を溶融し、第2のレーザビームが少なくとも溝の内側表面の層を溶融し、それゆえ、溶融した補強材の材料がブランクに染み込むように、第2のレーザビームはまた、用いられる。補強材の材料140とベース材料1、すなわちブランクは、それゆえ完全に補強材が形成された全領域にわたって、完全に接合される。溶融された補強材の材料は、次のすべてのプロセスの前に十分に凝固する。
【0036】
いくつかの実施例において、レーザビームは、溝の内側表面のいかなる層を直接的に加熱することなく、補強材の材料を溶融した。いくつかの実施例において、溝の内側表面を、補強材の材料の加熱によって溶融することができる。
【0037】
いくつかの実施例において、レーザ加熱するステップを、粉末が堆積されると同時に適用することができる。他の実施例において、レーザ加熱するステップを、粉末が堆積された後に適用することができる。
【0038】
いくつかの実施例において、レーザビーム131は、2kWから16kW、選択的に2kWから10kWのパワーを有する。レーザビーム131のパワーを増加することによって、プロセスの全体の速度は、増した。
【0039】
実施例によると(図4参照)、レーザ加熱システム130及び材料堆積機120は、ブランク及び/または溝110に沿って一緒に動かされ、同時に、例えば金属粉末またはフィラワイヤなどの補強材の材料を溶融し、堆積する。別の実施例において(図示せず)、レーザ加熱及びアーク溶接トーチを組み合わせるハイブリッド溶接技術が使われる。アーク溶接トーチは、溶融しそれによって溝に堆積するフィラワイヤ電極を備える。
【0040】
レーザ加熱システム130は、さらに補強材が形成される領域、すなわち溝に、シールドガスフローを供給するためにレーザヘッド132に対して同軸に設けられる、シールドガスチャネル(図示せず)を備える。
【0041】
いくつかの実施例において、ヘリウムまたはヘリウムベースのガスがシールドガスとして用いられる。代わりにアルゴンベースのガスが用いられる。シールドガスの流量は、例えば1L/minから15L/minで変えられる。さらなる実施例において、シールドガスは必要とされない。
【0042】
図2は、代わりの実施例を示し、フィラワイヤ240は補強材の材料として用いられる。示された実施例によると、フィラワイヤ240は、同時に溶融され、溝210に堆積される。溶融したフィラワイヤ240の滴241は、溝210に堆積される。レーザビームは、溝表面の一部を実質的に加熱(及び溶融)するために十分なパワーを有する。それゆえ、溶融した材料、すなわち溶融したフィラワイヤは、ベース材料を接合するのに十分なだけでなく、例えば、引張強度などのその本質的な特性を変えるのに十分であるようにブランク1に染み込む。溶融した補強材の材料244は、それゆえブランク1の一部である。
【0043】
図2の実施例によると、フィラワイヤ240は、実質的に溝210より上に設置されたレーザ加熱システム130によって溶融される。
【0044】
代わりの実施例において、フィラワイヤ240は、第一に溝210に堆積され、次にレーザ加熱システム130によって溶融される。
【0045】
図3a及び3bは、例えば熱間または冷間変形プロセスによって、ブランク1から補強された構造の部品を形成するように構成されたプレス工具を示す。図3aは、変形プロセスの前のブランク1を示す一方で、図3bが既に変形されたブランク1’を示す。
【0046】
図3aで示されたブランク1は、例えば加熱炉に入る前にレーザ加熱システムによって溶融された補強材の材料340で満たされた溝310を備える。代わりの実施例において、補強材の材料は、加熱炉システムでブランク1の堆積に続いて加熱プロセスの間溶融される。その結果、補強材の材料と少なくとも溝の内側表面の層は混合される。
【0047】
プレス工具は、下側金型330に対して上側金型320が上に及び下に押圧の進行(矢印参照)を提供するように構成された上側320及び下側330のかみ合う金型及び機構(図示せず)を備える。押圧の進行機構は、機械的に、油圧で、またはサーボ機械的に駆動される。上側金型320と下側金型330は、それぞれ使用時に冷間または熱間変形される補強されたブランク1に面する上側作業面321と下側作業面331を備える。
【0048】
下側作業面331は、補強されるブランクの領域の逆幾何形状を画定する凹部332を備え、すなわち溝310が作られる。そのような凹部332は、さらに凹部332に溝310を設置することによって正しくブランク1をプレス工具の中心にするために用いられる。
【0049】
図3bは、上側320及び下側金型330によって押圧された後、成型されたブランク1’、すなわち生産物の実施例を示す。実施例の成型されたブランク1’は、プレス工具で焼き入れされ、それゆえ、補強材の材料で満たされた溝は、補強材350に変換される。
【0050】
図3cは、実施例を示し、溶融した堆積した補強材の材料370は、すでにブランク1の一部であり、結果として、ブランク1は、プレス工具の下の面に設置される。図3cの実施例において、この実施例において、図3a及び3bの下側330及び上側320のかみ合う金型に対応する、上側380及び下側390のかみ合う金型は、凹部の正しい位置に対応するように構成される。図3cで示されるように、上側作業面381は、凹部382(または複数の凹部)が設けられ、ブランク1の溝332(または複数の溝)は、位置づけられ、すなわち、ブランクが図3a−3dに示されるようにプレス工具に(フェースアップまたはダウンで)目立たないように設置される。
【0051】
図3dは、プレス工具の中で押圧され、焼き入れされた後の、成型されたブランク1’の別の実施例を示す。結果として、図3cの補強材の材料で満たされた溝は、補強材375に変換される。
【0052】
図3a−3dの他の実施例において、上側321、381及び下側作業面331、391の両方は、凹部または複数の凹部が設けられる。
【0053】
図3a−3dのさらなる実施例において、上側320、380及び下側330、390のかみ合う金型は、金型内焼き入れができる、例えば冷却流体を備えるチャネルなど冷却システムを備える。チャネルに流れる冷却流体は例えば水及び/または冷たい空気である。水のチャネルにおいて、チャネルで水の循環する速度は、速く、それゆえ水の蒸発は避けられる。冷却流体を備えるチャネルは、最終補強材がマルテンサイト微細構造をもたらすような割合で、補強されたブランクになるブランクの領域の冷却を可能にする。
【0054】
制御システムは、さらに提供され、それゆえ金型の温度は、制御される。さらなる実施例において、低温または高温における動作のための金型を適用する他の方法は、前に見られるように、例えば加熱システムが冷却率を制御するため及び/またはフェライト−パーライト微細構造を有する領域、すなわち部品の他の部分と比較して機械的強度が減らされた部品の領域である軟らかい領域を作り出すために提供される。温度センサ及び制御システムは、また金型の温度を制御するために提供される。
【0055】
いくつかの実施例において、溝は、ブランクに形成される。その後、補強材の材料は、溝に堆積され、例えばレーザなど、局所的に加熱を与えることによってブランクに接合される。その後、ブランクは、冷間成形される。冷間成形後、ブランクは、加熱炉でオーステナイト化温度より高く加熱され、その後ブランクは、冷却され、任意にプレス工具で(熱間)変形される。適切な冷却または焼き入れによって(スチールの組成による)、マルテンサイト微細構造は、ブランクの全体またはブランクの特定の領域で得られる。
【0056】
代わりに、溝及びブランクに接合された補強材の材料を備えるブランクは、加熱炉で加熱処理を受け、その後ブランクは、(熱間)変形及び冷却される。再びマルテンサイト微細構造は、ブランクの全体でまたはブランクの特定の領域で得られる。
【0057】
また、さらなる代わりのプロセスにおいて、ブランク(溝なし)は、熱間変形及び冷却/焼き入れされる。熱間変形するステップは、溝の形成を含む。溝の形成の後、補強材の材料は、溝に堆積され及び局所的に加熱される。補強材の材料が加熱されるとき、溝は、また例えば、溝表面に直接加熱源を適用することによって、直接的に加熱され、または例えば溝に堆積され、加熱された補強材の材料の加熱によって間接的に加熱される。それゆえ、HAZは、溝に作り出される。用いられる温度、加熱方法及び/または時間によって、HAZを制限するために、(加熱される側面の反対の位置において)溝に局所的に冷却を提供する利点がある。
【0058】
またさらなる代わりのプロセスにおいて、ブランク(いかなる溝がない)は、冷間変形され、この変形プロセスにおいて、溝が形成される。その後、補強材の材料は堆積され、局所的に加熱される。この後、ブランクは、加熱炉でオーステナイト化温度より高く加熱され、その後ブランクがさらなる(熱間)変形プロセスが起こる、さらなるプレス工具において冷却される。適切な冷却または焼き入れによって(スチールの組成による)、マルテンサイト微細構造は、ブランクの全体またはブランクの特定の領域で得られる。
【0059】
さらなる代わりのプロセスにおいて、溝を備えるブランクは、熱間変形され、冷却/焼き入れされる。生産物の形成後、補強材の材料は、溝に堆積され、局所的に加熱される。補強材の材料が加熱されるとき、溝は、また例えば、溝表面に直接加熱源を適用することによって、直接的に加熱され、または例えば溝に堆積され、加熱された補強材の材料の加熱によって間接的に加熱される。前述のように、HAZは作り出され、しかしながら、溝を冷却するステップは、HAZを制限する。
【0060】
他の実施例において、ブランクは、例えば切り出し工具によってスチールコイルから切り出され、溝は、ブランク形成と同時に、すなわち、ブランクが例えば切り出し工具に連結された例えばプレス工具によって、スチールコイルから切り出されるときに形成される。さらなる実施例において、溝は、ブランクが切り出される前、すなわちブランクになる部分が伸ばされる時に、例えばプレス工具によって作り出される。
【0061】
さらなる実施例において、ブランク1は、局所的なまたは複数の局所的な補強材を得るように、あらかじめ決められた長さで局所的または複数の局所的な溝が設けられる(図4参照)。その結果として、複数のかみ合う凹部は、溝に合うように少なくともプレス工具の作業面に沿って提供される。
【0062】
図4は、ブランク1の上面図を示し、複数の溝401が作り出されている。図4は、また材料堆積機421とレーザ加熱システム422を備える移動可能なシステム420を示す。移動可能なシステム420は、溝401のそれぞれに沿って補強材の材料を堆積し、溶融するようにxz平面を動くことができる。
【0063】
図5は、ブランク1の別の実施例を描き、2つの隣接する溝501は、(能動的な)冷却が溝の底部側面に与えられているとき、溝の領域の冷却率を増加するように作られる。冷却率が増加することにより、HAZの範囲は減る。溝501は、同時に、例えば冷間または熱間変形によってプレス工具で形成される。両方の溝501の間において、中間領域502は、作り出される溝から分化して設けられる。
【0064】
図6において、補強された部品を製造する方法の実施例が示される。第1に、変形されていないブランクは、設けられ、少なくとも補強される領域が選択される(610)。その後、U字形状断面溝は、例えば、ブランクの全体の長さの中央部分に沿って、補強される選択される領域に作り出される(620)。そのような溝は、例えばコールドスタンプによって作り出される。代わりの実施例において、複数の溝が作り出される。
【0065】
次に、例えば、粉末またはフィラワイヤなど、補強材の材料は、材料堆積機によって溝に堆積される(630)。任意に、次のすべてのプロセスの前に、ブランクの表面は、平らにされ、すなわち、あらゆる補強材の材料の突出は、例えばブランク上をスキミングシートが滑ることによって、取り除かれる。
【0066】
ブランクは、その後、例えばオーステナイト化温度で例えば加熱炉で加熱される(640)。次に、加熱されたブランクは、実質的に最終生産物の形状を得るために、プレス工具で熱間変形される(650)。変形されたブランクは、最終的に焼き入れされる(660)。実施例において、プレス工具は、同時にブランクを変形及び焼き入れするために、例えば冷却水サプライヤなど、冷却要素を備える。プレスからの追加の焼き入れステップもまた実行される。実施例において、堆積された補強材の材料は、堆積の後または堆積中に、局所的に加熱される。
【0067】
多くの実施例が本明細書で開示されるのみであるが、それらの他の変形、改良、使用及びまたは均等物は可能である。さらに、実施例に記載されたすべての可能な組み合わせもまた対象である。それゆえ、本開示の範囲は、特定の実施例に限定されるべきでなく、続く請求項の公平な読み方によってのみ決定されるべきである。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4
図5
図6