特許第6947822号(P6947822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6947822
(24)【登録日】2021年9月21日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】混練装置
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/28 20060101AFI20210930BHJP
   B01F 7/08 20060101ALI20210930BHJP
   B01F 15/00 20060101ALI20210930BHJP
   B29B 7/20 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   B29B7/28
   B01F7/08 D
   B01F15/00 Z
   B29B7/20
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-523363(P2019-523363)
(86)(22)【出願日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】JP2018013322
(87)【国際公開番号】WO2018225353
(87)【国際公開日】20181213
【審査請求日】2020年7月15日
(31)【優先権主張番号】特願2017-111682(P2017-111682)
(32)【優先日】2017年6月6日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-111683(P2017-111683)
(32)【優先日】2017年6月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229047
【氏名又は名称】日本スピンドル製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 久司
(72)【発明者】
【氏名】永田 佳彦
(72)【発明者】
【氏名】木嶋 敬昌
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−8543(JP,A)
【文献】 特開平7−214538(JP,A)
【文献】 特開2000−167372(JP,A)
【文献】 特開2016−78454(JP,A)
【文献】 特開2016−179643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 7/00−7/32
B01F 15/00
B29B 7/00−7/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散媒に分散質を分散させる混練装置であって、
前記分散媒と前記分散質とを含む混練材料を内部に収容するケーシングと、
前記ケーシングの内部に配置され、回転軸を中心として回転して前記分散媒に前記分散質を分散させながら前記混練材料の混練を行うロータと、
前記ケーシングの内部の前記混練材料の状態の観測によって、前記分散媒への前記分散質の分散度を検出する検出部と、を備え
前記検出部は、前記混練材料からの電磁波を観測して前記混練材料の表面の凸部を観測して前記分散度を検出する混練装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記混練材料を撮影して分散度を検出する、請求項1に記載の混練装置。
【請求項3】
前記ケーシングを外部から内部に貫通する貫通孔に設けられた窓を更に備え、
前記検出部は、
前記窓を介して、前記混練材料の状態を撮影する撮影部と、
前記撮影部を制御する撮影制御部と、を有し、
前記撮影制御部は、前記撮影部が撮影した撮影画像に応じて前記分散度を検出する、請求項2に記載の混練装置。
【請求項4】
前記ロータは、軸部と、前記軸部に配置された羽根部とを有し、
前記検出部は、前記羽根部が前記ケーシングの内表面に近接し、前記混練材料が前記羽根部と前記ケーシングの内表面との間で押圧された近接押圧状態となっていない状態で、前記混練材料の分散度を検出する、請求項に記載の混練装置。
【請求項5】
前記ロータは、軸部と、前記軸部に配置された羽根部とを有し、
当該羽根部が前記窓を通過する所定のタイミングにおいて、前記撮影部は撮影を行わない、請求項3または4に記載の混練装置。
【請求項6】
前記羽根部は、
前記ロータの第1端部を始端として、第2端部までの一部において終端を有するように延びる第1羽根部と、
前記ロータの前記第2端部を始端として、前記第1端部までの一部において終端を有するように延びる第2羽根部と、を有し、
前記第1羽根部及び前記第2羽根部の少なくとも一部が前記ロータの回転方向において重畳しており、前記窓は、当該重畳する位置に対応して前記ロータの回転軸方向において設けられている、請求項4または5に記載の混練装置。
【請求項7】
前記ケーシングの前記貫通孔と前記窓の外縁との間であって、前記ケーシングの内部に面する前記窓の外縁の少なくとも一部に、衝撃を低減する保護部材が設けられている、請求項から6のいずれか1項に記載の混練装置。
【請求項8】
前記検出部が検出した分散度に基づいて前記ロータの回転数、前記分散媒への加圧力、及び前記分散媒の温度のうちの少なくとも1つを制御する制御部と、を備える、請求項から7のいずれか1項に記載の混練装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散媒に分散質を分散させる混練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック、ゴム等の粘稠な材料を混練する装置として密閉式混練機が知られている。例えば特許文献1には、混練材料を収納するケーシングと、該ケーシングの上部を閉鎖する加圧蓋と、ケーシング内に取付けられた一対のロータとを備えた密閉式混練機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3574618号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
密閉式混練機での混練においては、練りの再現性を確保するために、混練時間、混練材料の温度、積算電力およびそれらを組み合わせて、所定の値への到達を混練の終了条件としている場合が多い。しかし混練時間、混練材料の温度、積算電力は、材料の状態を直接表すデータではなく、間接的なデータである。例えば、ケーシング内の材料の位置はロータにかかる負荷を変動させる。その結果、ロータ駆動の積算電力と、実際の材料の状態とが相関しない場合が発生する。すなわち、積算電力のような間接的なデータに基づく制御では、混練の品質を安定化することは難しい。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、混練される材料の分散度を検出し、もって混練の品質を安定化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る混練装置の特徴構成は、
分散媒に分散質を分散させる混練装置であって、
前記分散媒と前記分散質とを含む混練材料を内部に収容するケーシングと、
前記ケーシングの内部に配置され、回転軸を中心として回転して前記分散媒に前記分散質を分散させながら前記混練材料の混練を行うロータと、
前記ケーシングの内部の前記混練材料の状態の観測によって、前記分散媒への前記分散質の分散度を検出する検出部と、を備え
前記検出部は、前記混練材料からの電磁波を観測して前記混練材料の表面の凸部を観測して前記分散度を検出する点にある。
【0007】
上記の特徴構成によれば、分散度を検出し、もって混練の品質を安定化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】混練装置の概略構成を示す上面図である。
図2】混練装置の概略構成を示す断面図である。
図3】混練装置の概略構成を示すブロック図である。
図4図1のIV−IV矢視図である。
図5図1のV−V矢視図である。
図6】羽根部の長さが同程度の場合に、分散度の検出を説明するための軸部の展開模式図である。
図7】混練材料の状態を説明する模式図である。
図8】羽根部の長さが異なる場合に、分散度の検出を説明するための軸部の展開模式図である。
図9】ケーシングと透過窓との間に設けられた保護部材を示す断面図である。
図10】透過窓及び保護部材の斜視図である。
図11】ケーシングと透過窓との間に設けられた保護部材を示す断面図である。
図12】面取りされた透過窓の斜視図である。
図13】混練装置の概略構成を示す上面図である。
図14】混練装置の概略構成を示す断面図である。
図15】混練装置の概略構成を示すブロック図である。
図16】電極部の構造を示す図である。
図17】電極部の構造を示す図である。
図18】電極部の構造を示す図である。
図19】電極部の構造を示す図である。
図20】電極部の構造を示す図である。
図21】電極部の構造を示す図である。
図22】電極部の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔本実施形態の概要〕
以下に説明する第1及び第2実施形態に係る混練装置は、ケーシング内部に投入された分散媒と分散質とを含む混練材料を混練する。そして、混練装置は、ケーシング内部の混練材料に電磁的方法を適用し、混練材料の状態を観測する。ここで、混練材料の状態とは、混練材料の表面状態及び混練材料の内部状態等が挙げられる。このように、混練材料の状態を直接的に観測して分散度を検出することで、混練の品質の安定化に活用できる。
【0010】
例えば、混練材料からの電磁波を検出し、混練材料の表面状態及び混練材料の内部状態等を観測することで分散度を検出できる。このとき、観測される電磁波としては、混練材料の表面に照射され、混練材料の表面から反射された電磁波、及び混練材料の表面及び内部から放射される混練材料自体からの電磁波等が挙げられる。以下の第1実施形態では、このような分散度の検出方法について説明する。
【0011】
また、例えば、分散媒への分散質の分散度に応じて混練材料の表面及び内部の少なくともいずれかにおける電流の流れ易さ(電気抵抗)が異なる。以下の第2実施形態では、このような分散度の検出方法について説明する。
【0012】
〔第1実施形態〕
以下、第1実施形態に係る混練装置1について図1図3に基づいて説明する。図1および図2に示すように、混練装置1は、高分子材料(分散媒)と分散質とを内部に収容するケーシング2と、ケーシング2の内部に配置された一対のロータ3と、電磁波照射部(照射部)P(ライト6)と、分散度検出部(検出部)Qとを備えている。そして図3に示すように、混練装置1は、制御装置10、ロータ駆動機構20、蓋部移動機構30および温度調節機構40を備えている。分散度検出部Qは、カメラ(撮影部)7および撮影制御部10dにより構成される。なお以下、ケーシング2の内部の高分子材料と分散質とを総称して「混練材料」あるいは「材料」と記す場合がある。
【0013】
ケーシング2は、内部に高分子材料と分散質とを収容して混練する槽状の部材である。ケーシング2の内部は、中心軸(回転軸R)が平行な一対の円柱を、その側面が一部重なり合う状態で配置した形状をしている。そして一対のロータ3が、その回転軸Rを円柱の中心軸と一致した状態で、ケーシング2の内部に回転可能に配置される。
【0014】
ケーシング2は、底部2a、円筒状部2b、側壁部2c、および蓋部2dを有して構成される。底部2aは、ケーシング2の底の部位である。円筒状部2bは、ケーシング2において一対のロータ3の周囲を覆う部位である。側壁部2cは、ロータ3の回転軸に直交して配置される、ケーシング2の側壁である。蓋部2dは、ケーシング2の蓋の部位である。
【0015】
蓋部2dは、蓋部移動機構30(図示省略)によって上下に移動可能な状態で、ケーシング2に対して配置される。蓋部2dを上方に移動してケーシング2の上部を開放した状態にて、混練材料(高分子材料と分散質)がケーシング2に投入される。その後、蓋部2dを下方に移動させ、投入された混練材料を上方から加圧しながら、ロータ3が回転して混練材料の混練が行われる。蓋部移動機構30は具体的には、電動モータやエアシリンダ等のアクチュエータを有して構成される。
【0016】
ロータ3は、ロータ3を側壁部2cの貫通孔に回転可能に支持する支持部31と、支持部31より大径の軸部33と、軸部33の表面に螺旋状に形成された羽根部35a、35bとを有している。羽根部35a、35bは、軸部33の両側の端部から他端側に向け、軸部33の略中央までの間に渡って形成されている。そして羽根部35a、35bは、対向する一対のロータ3の間で相互に重なることがない接線方式とされている。ロータ3は、ロータ駆動機構20(図示省略)により、回転軸Rの回りに所定の回転方向Dに回転駆動される。ロータ駆動機構20は具体的には、電動モータを有して構成される。ケーシング2内には、1対のロータ3が配置されているが、各ロータ3は互いに反対方向に回転する。
【0017】
ロータ3はその内部に、温調流路37を有する。温調流路37は、内部を冷却水が通流する流路であって、ロータ3の軸部33および羽根部35a、35bの内部に形成されている。温調流路37は、温度調節機構40(図示省略)に接続されており、温度調節機構40から温調流路37へ冷却水が供給される。混練装置1にて混練材料を混練する際、混練材料がせん断や変形等の作用を受け発熱するが、上述した温調流路37を通流する冷却水によりロータ3が冷却され、ロータ3に接触した混練材料が冷却される。すなわち、温度調節機構40によりロータ3の温度および混練材料の温度が制御される。温度調節機構40は具体的には、冷却水を温調流路37へ送出する電動ポンプを有して構成される。
【0018】
図2に示すように、ケーシング2の外側にライト6およびカメラ7が配置され、ケーシング2の円筒状部2bに透過窓8が配置される。具体的には、円筒状部2bには、円筒状部2bの外部から内部に貫通する貫通孔9が形成されている。この貫通孔9に透過窓8が嵌め込まれている。この透過窓8からライト6からの電磁波が混練材料に照射される。
【0019】
透過窓8は、電磁波を透過する材質で形成されている。例えば透過窓8は、ガラス製の部材である。透過窓8のロータ3側の表面は、ケーシング2の円筒状部2bの内面形状に沿った曲面となっている。透過窓8の内側(混練材料が位置する側)に、摩耗・傷防止のコーティングを施してもよい。
【0020】
また、透過窓8のロータ3側の表面(ケーシング2の内部と面する領域)において、混練材料の付着を阻止する加工(コーティング)が為されていてもよい。これにより、透過窓8のロータ3側の表面に、混練材料が付着するのを阻止できる。よって、混練材料に遮られることなく、後述のカメラ7が透過窓8を介してケーシング2内部の混練材料を撮影できる。
【0021】
なお、後述の図9に示すように、ケーシング2の内表面25の外縁と、ケーシング2の内部に面する透過窓8の外縁との形状が円弧状で一致している。よって、透過窓8の内面がケーシング2の内表面25に沿うように構成できる。この場合、ケーシング2の内表面25とケーシング2の内部に面する透過窓8の面とが概ね面一であると、混練材料の混練に影響を与えず、また、混練材料から圧力を受けることにより透過窓8が欠損することを抑制でき好ましい。
【0022】
カメラ7(分散度検出部Qの一部)は、ライト6から照射され、ケーシング2の内部の混練材料から反射された電磁波を観測する。詳しくはカメラ7は、ケーシング2の内部の混練材料を撮影して撮影画像を取得する。カメラ7は、制御装置10によってその動作が制御される。撮影画像は、制御装置10へ送信される。なおカメラ7が取得する撮影画像は、静止画でもよいし、動画でもよい。カメラ7には、拡大レンズ7aが設けられており、混練材料を拡大して分散状態を明確にして撮影することができる。
【0023】
上記の通り、透過窓8を介してライト6から電磁波が照射されるとともに、透過窓8を介して混練材料から反射された電磁波をカメラ7が撮影する。よって、ケーシング2内を密閉した状態で、カメラ7により混練材料からの電磁波を撮影できる。そのため、ケーシング2内で混練材料を混練しつつ、混練を中断することなく分散度を検出できる。
【0024】
なお、第1実施形態では、図2に示すように、カメラ7は透過窓8の外側に配置されている。カメラ7は、ロータ3の直径方向であって、混練材料の表面と直交する方向に向けられている。つまりカメラ7の電磁波の観測方向7bは、ロータ3の直径方向であって、混練材料の表面と直交する方向に向けられている。
【0025】
ライト6(電磁波照射部P)は、ケーシング2の内部の混練材料に電磁波を照射する。ライト6は例えば、白色LED光源である。ライト6は、制御装置10によってその動作が制御される。第1実施形態では、図2に示すように、ライト6は透過窓8の側面に配置されている。ライト6は、混練材料の表面に対して斜めの方向に向けられている。つまりライト6の電磁波の照射方向6aは、混練材料の表面に対して斜めの方向に向けられている。したがって第1実施形態では、ライト6(電磁波照射部P)の電磁波の照射方向6aと、カメラ7(分散度検出部Q)の電磁波の観測方向7bとが平行でない。つまり、電磁波の照射方向が電磁波の観測方向と交差している。
【0026】
例えば、混練材料の混練状態が途中の状態であり、高分子材料への分散質の分散度が小さい場合には、混練材料の表面に照射された電磁波は、分散質の凸部によって散乱等される程度が大きい。このような場合であっても、電磁波の観測方向が電磁波の照射方向と異なるため、混練材料の表面で反射された電磁波を効率よく観測できる。
【0027】
ライト6の照射方向6aと混練材料の表面とのなす角は、20°以上が好ましく、40°以下が好ましく、約30°が更に好ましい。第1実施形態では、ライト6が、ロータ3の回転方向Dに関して透過窓(窓)8の上流側と下流側とに1つずつ配置されている。
【0028】
なお、ライト6が混練材料に照射する電磁波、および分散度検出部Q(カメラ7)が観測する混練材料からの電磁波は、分散度検出部Qによる分散度の検出が可能であれば、強度や波長は問わない。電磁波は例えば、可視光、遠赤外線、近赤外線、紫外線、マイクロ波や短波・長波等の電波、X線でもよい。ライト6が照射し分散度検出部Qが検出する電磁波(あるいは光)は、単一波長でもよい。
【0029】
制御装置10は、混練装置1の全体の動作を制御する装置である。第1実施形態では制御装置10は、運転制御部(制御部)10a、および撮影制御部10d(分散度検出部Q)を有して構成される。具体的には制御装置10は、HDD(Hard Disk Drive)や不揮発性RAM(Random Access Memory)といった記憶デバイス、CPU(Central Processing Unit)等を有して構成される。そして制御装置10は、ライト6、カメラ7、ロータ駆動機構20、蓋部移動機構30、および温度調節機構40と接続され、各機構の制御を行う。
【0030】
運転制御部10aは、後述する撮影制御部10d(分散度検出部Q)が検出した分散度に基づいて、混練装置1の動作を制御する。具体的には運転制御部10aは、ロータ駆動機構20を制御して、ロータ3の回転数を制御する。また運転制御部10aは、蓋部移動機構30を制御して、蓋部2dがケーシング2の内部の混練材料を押圧する加圧力を制御する。また運転制御部10aは、温度調節機構40を制御して、ケーシング2の内部の混練材料の温度を制御する。これにより、混練材料を直接的に観測した結果に基づいて、混練の品質を安定化することができる。
【0031】
詳しくは運転制御部10aは、撮影制御部10d(分散度検出部Q)が検出した分散度と、分散度の目標値との差に基づいて、混練装置1の動作を制御する。分散度の目標値とは例えば、混練中の各時刻での分散度の目標値である。例えば、ある時刻tにおいて検出された分散度が、その時刻tでの分散度の目標値を下回っている場合には、分散度をより大きく増加させるべく、例えばロータ回転数を増加させる。例えば、ある時刻tにおいて検出された分散度が、その時刻tでの分散度の目標値を上回っている場合には、分散度の増加を抑制すべく、例えばロータ回転数を減少させる。すなわち運転制御部10aは、検出された分散度と、分散度の目標値との差に基づいて、混練装置1の動作をフィードバック制御する。
【0032】
また運転制御部10aは、撮影制御部10d(分散度検出部Q)が検出した分散度が所定の閾値に達した後に、ロータ駆動機構20を制御してロータ3を停止させ、混練動作を終了する。混練動作の終了については、次の様な態様も可能である。運転制御部10aは、分散度検出部Qが検出した分散度の時間変化率が所定の閾値に達した後に、ロータ駆動機構20を制御してロータ3を停止させ、混練動作を終了する。
【0033】
また運転制御部10aは、分散度検出部Qのカメラ7が混練材料を撮影する際に、ロータ3の回転数を減少させる。具体的には、撮影制御部10dが運転制御部10aに対して混練材料の撮影を行う旨を通知すると、運転制御部10aは、ロータ駆動機構20を制御して、ロータ3の回転数を減少させる。ロータ3の回転数の減少は例えば、30%減少でもよいし、50%減少でもよいし、100%減少すなわちロータ3の停止でもよい。これにより、鮮明な撮影画像を取得することができ、分散度の検出を確実に行うことができる。
【0034】
撮影制御部10d(分散度検出部Q)は、ケーシング2の内部の混練材料からの電磁波を観測して高分子材料への分散質の分散度を検出する。詳しくは撮影制御部10dは、カメラ7がケーシング2の内部の混練材料を撮影して取得した撮影画像から、混練材料の表面の凸部を観測し、分散度を検出する。以下、撮影制御部10dの動作について詳しく説明する。
【0035】
撮影制御部10dは、カメラ7を制御して、ケーシング2の内部の混練材料を撮影させ、撮影画像を取得する。撮影は、混練材料が透過窓8の前に位置する際に行うのが好ましく、特に羽根部35a、35bが通過した後に行うのが好ましい。具体的には撮影制御部10dは、運転制御部10aを通じてロータ3の回転を監視し、羽根部35a、35bがカメラ7の前(すなわち透過窓8の前)を通過した直後に、カメラ7に撮影を行わせ、撮影画像を取得する。
【0036】
ケーシング2の内部の混練材料の表面には、分散質が露出し凸部として現れる。カメラ7が取得した混練材料の撮影画像には、表面に露出した分散質は、輝度の高い領域、すなわち白い領域として現れる。撮影制御部10dは、得られた画像に対して二値化等の種々の画像処理を行い、分散質の大きさや数等を算定する。そして撮影画像から得られた分散質の大きさ・数等に基づいて、分散度を検出する。
【0037】
例えば、一例であるが、混練材料の混練がある程度進むと、高分子材料への分散質の分散が進み、混練材料の表面が滑らかになる。この場合、混練材料の表面の凹凸が少ないため、混練材料から反射された電磁波の撮影画像から、輝度の高い領域が少ないことが検出される。この場合、分散度が大きいことを検出できる。
逆に、例えば、混練材料の表面において、分散質が露出した凸部が多く生じている場合には、混練材料の表面が粗く、混練材料の混練が進んでいないことが分かる。この場合、混練材料の表面の凹凸が多いため、混練材料から反射された電磁波の撮影画像から、輝度の高い領域が多いことが検出される。この場合、分散度が小さいことを検出できる。なお、輝度が高くなるのは、例えば、混練材料に照射された電磁波が、分散質の凸部によって散乱、屈折、反射、回折及び干渉等することによるものと考えられる。
【0038】
なお、分散度とは、高分子材料への分散質の分散の度合いであり、例えば数値でもよいし、パーセンテージでもよいし、段階的な指標(例えば、分散度低、分散度中、分散度高)でもよい。例えば、ある大きさの分散質の塊(集合体)の数・有無や、存在する分散質の塊の大きさの最大値でもよい。
【0039】
<変形例>
なお、上述の第1実施形態(変形例を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、変形例で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【0040】
<1>
上述の第1実施形態では、混練材料から反射された電磁波に基づいて分断度を検出しているが、分散度の検出方法についてさらに以下に検討する。分散度を検出するにあたって、混練材料の状態が羽根部35による混練によって影響を受けるため、まずは羽根部35の構成について以下に説明する。
【0041】
(1)羽根部の構成
羽根部35の構成の一例について図1図4図5等を用いて説明する。
図1図4図5等に示すように、軸部33の外周面(表面)33aには、捩じれ方向が異なる2つの羽根部35a、35bが設けられている。図4及び図5図1のIV−IVVI及びV−V矢視図であり、軸部33が回転方向Dに沿って回転すると、羽根部35aが見えている図4から羽根部35bが見えている図5の状態となる。
【0042】
図4に示すように、羽根部35aは、外周端部(第1端部)111αの始端35aFから、外周端部(第2端部)111βに向かって軸部33の中央部よりも長く延びている。羽根部35aは、軸部33の外周面33aから最も突出した頂面35a1と、頂面35a1から外周面33aに向かう両側の傾斜面35a2とを有している。羽根部35aは、回転軸Rに対して角度θaをなす斜め方向に延びている。
【0043】
一方、図5に示すように、羽根部35bは、頂面35b1と、頂面35b1の両側の傾斜面35b2とを有している。羽根部35bは、回転軸Rに対して角度θbをなす斜め方向に延びている。例えば、角度θbは、θb≒−θaの関係にある。
【0044】
このように、羽根部35aと羽根部35bとは、回転軸Rに対して捩じれ方向が異なるため、羽根部35a、35bの両方で様々な方向から混練材料を混練することで効率よく混練できる。
また、以上のような羽根部35a、35bの構成により、混練材料は、回転軸Rの方向において、羽根部35aの端部と羽根部35bの端部とが近接するロータ3の中央部に集まるように混練される。
【0045】
(2)分散度の検出
次に、混練材料の分散度の検出について、図6図8を用いて説明する。
【0046】
(2−1)カメラの配置位置
まずは、カメラ(撮影部)7のケーシング2に対する配置位置について説明する。
図6等は軸部33の展開模式図であるが、軸部33は、回転軸Rの方向において、位置P3、位置P4及び位置P5の領域に分けることができる。位置P3は羽根部35a側に位置しており、位置P3では羽根部35aのみが対応している。位置P5は羽根部35b側に位置しており、位置P5では羽根部35bのみが対応している。位置P4では、羽根部35aと羽根部35bとが回転方向Dにおいて重畳している。
そして、位置P3と位置P4との境界が位置P1であり、位置P4と位置P5との境界が位置P2である。
【0047】
カメラ7は、位置P1〜位置P5の少なくともいずれかに対応して、ケーシング2に配置される。ここで、カメラ7が位置P3に対応して配置された場合には、カメラ7は羽根部35aにおける混練材料からの電磁波を撮影できる。カメラ7が位置P1、位置P2及び位置P4に対応して配置された場合には、カメラ7は羽根部35a及び羽根部35bの両方における混練材料からの電磁波を撮影できる。カメラ7が位置P5に対応して配置された場合には、カメラ7は羽根部35bにおける混練材料からの電磁波を撮影できる。したがって、カメラの配置位置としては、位置P1、P2、P4が好ましい。
【0048】
(2−2)分散度の検出タイミング
次に、分散度検出部Q(カメラ7及び撮影制御部10dを含む)による分散度の検出タイミングについて説明する。
ここで、同じ長さの羽根部35a、35bが、図1図4図5等に示すように軸部33に設けられている。そして、図6及び図7の(i)の軸部33の展開図に示すように、羽根部35aは、終端35aEから始端35aFに向かって上方に向かう。同様に、羽根部35bは、終端35bEから始端35bFに向かって上方に向かう。なお、図6及び図7の(i)等の展開図において、軸部33の所定の回転方向Dは下方から上方に向かう。
【0049】
ケーシング2に高分子材料及び分散質が投入され、ロータ3が回転方向Dに回転すると、羽根部35a側の混練材料は終端35aEに向かい、羽根部35b側の混練材料は終端35bEに向かう。さらに、ロータ3が回転することにより、混練材料は、羽根部35a及び羽根部35b間を移動し、また、隣接するロータ3へ移動等することにより混練される。
【0050】
ここで、図7の(i)に示すように、混練材料が、羽根部35aの始端35aFと終端35aEとの間の中間部35aM(羽根部35aのうち始端35aFと終端35aEを除く位置)に位置している場合、混練材料は図7(ii)に示す状態となる。つまり、羽根部35aの頂面35a1とケーシング2の内表面25(あるいは、透過窓8の内表面)とが近接している箇所においては、混練材料は、高い圧力により、その表面が押圧されて混練材料の表面の凹凸がつぶれている(以下では、近接押圧状態(図7の(ii)のタイミングX)という)。よって、混練材料の表面状態を撮影しても、混練材料の混練状態を正確に把握することができない。
【0051】
そこで、分散度検出部Qは、近接押圧状態であるタイミングXではなく、混練材料の押圧の程度が比較的に小さく、分散質が混練材料の表面に現れやすい状態において、混練材料の分散度の検出を行う。
具体的には、図7の(i)に示すように混練材料が、中間部35aMに位置している場合には、分散度検出部Qは、図7の(ii)に示すように羽根部35aの頂面35a1が透過窓8を通過する前のタイミングA、及び羽根部35aが透過窓8を通過した後のタイミングBの少なくともいずれかに基づいて、混練材料の分散度を検出する。
なお、羽根部35aが透過窓8を通過する前のタイミングAでは、混練材料は、ケーシング2の内表面25から離れて羽根部35aに付着しており、近接押圧状態よりも小さい押圧力を受けている。タイミングBの混練材料についても同様である。
【0052】
一方、図7の(i)に示すように混練材料が羽根部35aの終端35aEに位置している場合、図7の(iii)に示すように、混練材料は、終端35aEから離れ、羽根部35aが無い側に移動する。このとき、混練材料は、近接押圧状態から外れ、軸部33の外周面33aとケーシング2の内表面25との間の比較的に押圧が小さい状態にある。よって、分散度検出部Qは、羽根部35aの終端35aEが透過窓8を通過するタイミングCに基づいて、混練材料の分散度を検出しても良い。また、分散度検出部Qは、羽根部35aの終端35aEについては、タイミングA、Bで混練材料の分散度を検出することができる。つまり、羽根部35aの終端35aEについては、タイミングA、B、Cのいずれのタイミングで分散度を検出しても良い。
以上により、混練材料の表面状態を直接的に観測して分散度を的確に検出することができる。
【0053】
ここで、例えば、カメラ7による混練材料の撮影タイミングを上記の所定のタイミングA〜Cとし、このタイミングA〜Cで撮影された撮影画像に基づいて撮影制御部10dが分散度を検出してもよい。あるいは、例えば、カメラ7が混練材料を常時撮影しており、撮影制御部10dが上記の所定のタイミングA〜Cの撮影画像を抽出して分散度を検出してもよい。
上記では、羽根部35aによる分散度の検出タイミングについて説明したが、羽根部35bについても同様である。
【0054】
位置P1〜位置P5のいずれかにカメラ7を配置した場合に、どのように混練材料の状態が撮影できるかについてさらに説明を加える。
位置P1では、図6及び図7に示すように、ロータ3の回転方向Dにおいて、羽根部35aの中間部35aMの一部及び羽根部35bの終端35bEが位置している。この位置P1に対応してカメラ7が配置されるとする。この場合、分散度検出部Q(カメラ7及び撮影制御部10dを含む)は、中間部35aMの混練材料の分散度については上記のタイミングA,Bで検出する。また、分散度検出部Qは、終端35bEの混練材料の分散度についてはタイミングA、B、Cのいずれかで分散度を検出する。なお、分散度検出部Qは、タイミングA〜Cの少なくともいずれかのタイミングで混練材料の分散度を検出すればよい。
【0055】
位置P2では、ロータ3の回転方向Dにおいて、羽根部35bの中間部35bMの一部及び羽根部35aの終端35aEが位置している。この位置P2に対応してカメラ7が配置された場合、分散度検出部Qは、終端35aEはタイミングA、B、Cのいずれかで、中間部35bMはタイミングA、Bのいずれかで混練材料の分散度を検出する。
【0056】
位置P4では、ロータ3の回転方向Dにおいて、羽根部35aの中間部35aMの一部及び羽根部35bの中間部35bMの一部が位置している。この位置P4に対応してカメラ7が配置されるとする。この場合、分散度検出部Qは、中間部35aM及び中間部35bMについて、タイミングA及びBの少なくともいずれかで検出する。
【0057】
ロータ3の回転方向Dにおいて、位置P3では羽根部35aの中間部35aMの一部のみが位置しており、位置P5では羽根部35bの中間部35bMの一部のみが位置している。この位置P3又はP5に対応してカメラ7が配置されたとする。この場合、分散度検出部Qは、中間部35aM又は中間部35bMの混練材料の分散度について、タイミングA及びBの少なくともいずれかで検出する。
【0058】
よって、位置P1、P2、P4では、羽根部35a、35b側の両方に存在する混練材料について混練状態が検出できる。よって、分散度検出部Qは、多くの混練状態に基づいて正確な分散度を検出できる。
【0059】
上記では、羽根部35a、35bは同じ長さであるが、分散度検出部Qは、図8に示すように異なる長さの羽根部35a、35bについても同様に分散度を検出できる。図8では、羽根部35aの長さは、羽根部35bの長さよりも長い。羽根部35a、35bの長さが異なることで、混練材料の混練位置の変化が多様となり、混練が効率的に行われ易く好ましい。位置P1〜P5での分散度の検出方法は上記と同様であるので説明を省略する。
【0060】
なお、位置P1〜P5のいずれの位置においてもカメラ7により混練材料を撮影可能なように、例えば、ケーシング2に回転軸Rに沿った貫通孔9が長く形成されており、この貫通孔9に透過窓8が嵌め込まれていてもよい。そして、回転軸Rの方向に長い透過窓8の任意の位置にカメラ7を移動させて装着可能に構成されている。
【0061】
<2>上述の第1実施形態では、ケーシング2の円筒状部2bに設けられた貫通孔9に、透過窓8が直接に嵌め込まれている。しかし、図9図10に示すように、ケーシング2の貫通孔9と、透過窓8の外縁との間に第1保護部材50が設けられていてもよい。
【0062】
ロータ3が回転して混練材料の混練等によりケーシング2が振動するが、第1保護部材50により透過窓8への衝撃が低減される。これにより、透過窓8の欠損等を抑制できる。また、透過窓8をケーシング2の貫通孔9に位置合わせする際に、透過窓8の外縁とケーシング2の貫通孔9とが接触して透過窓8が欠損する可能性があるが、第1保護部材50によって透過窓8の欠損も抑制できる。
【0063】
また、ケーシング2の内表面25の外縁と、ケーシング2の内部に面する透過窓8の外縁との形状が円弧状で一致している。このように透過窓8の内面がケーシング2の内表面25に沿うように構成できることによっても、混練材料から圧力を受けることにより透過窓8が欠損することを抑制でき好ましい。
【0064】
なお、図9図10に示すように、透過窓8は、ケーシング2の内表面25に面する側が小径の小径部8aと、小径部8aの外方の大径部8bとを有する。これに沿って、第1保護部材50は、小径の第1小径保護部材50aと第1大径保護部材50bとを有する。また、ケーシング2の貫通孔9もまた、透過窓8及び第1保護部材50に対応して、ケーシング2の内表面25に面する側が小径であり、外方側が大径に形成されている。このような構成により、透過窓8及び第1保護部材50がケーシング2内に向かって外れるのを阻止できる。
【0065】
また、図9に示すように、透過窓8を貫通孔9内に保持するための抑え板53と、ケーシング2との間にも、ケーシング2から透過窓8に伝わる振動を低減する第2保護部材51が設けられていてもよい。
上記の第1及び第2保護部材50、51には、例えばパッキン等の弾性部材が用いられることが好ましい。
【0066】
また、図11に示すように、第1保護部材50は、ケーシング2の内部に面する透過窓8の外縁の少なくとも一部に設けられていればよい。ケーシング2の振動を受けて欠損しやすい部位としては、ケーシング2の内部に面する透過窓8の外縁部分である。ケーシング2の内部に面する透過窓8の外縁の少なくとも一部に第1保護部材50が設けられているため、透過窓8の外縁部分の欠損を抑制できる。例えば、ロータ3の回転方向Dに沿った上端及び下端に第1保護部材50が設けられていてもよい。
【0067】
また、図12に示すように、ケーシング2の内部に面する透過窓8の外縁の少なくとも一部が面取りされていてもよい。ケーシング2の内部に面する透過窓8の外縁は、ケーシング2の内部の混練材料からの圧力及びケーシング2の振動を受けやすく、欠損しやすい。この透過窓8の外縁の少なくとも一部が面取りされているため、透過窓8の外縁において鋭利な領域を減らし、振動による欠損を減らすことができる。
【0068】
特に、透過窓8の外縁のうち、回転軸Rを中心とするロータ3の回転方向Dに沿う両端部が面取りされて、図12に示すように面取り部8c1、8c2が形成されていると好ましい。ここで、透過窓8の外縁のうちロータ3の回転方向Dの両端部が、ケーシング2の内部の混練材料からの圧力及びケーシング2の振動等を受けやすい。そこで、透過窓8の外縁のうち、ロータ3の回転方向Dの両端部に面取り部8c1、8c2が形成されていると好ましい。さらに、混練材料は、ロータ3の回転方向Dに沿って透過窓8を上流側から下流側に向かって押すため、透過窓8の下流側がケーシング2の内部の混練材料の力を最も受けやすい。よって、透過窓8の外縁のうち、少なくともロータの回転方向Dの下流側に面取り部8c1が形成されていると好ましい。
透過窓8の外縁の少なくとも一部が面取りされている場合、透過窓8の面取りされている部分と、ケーシング2との間には第1保護部材50が嵌め込まれていてもよい。あるいは、ケーシング2が透過窓8の面取りの形状に対応して構成されており、面取り部分とケーシング2との間に隙間が生じないように構成されていてもよい。
【0069】
<3>上述の第1実施形態では、分散度検出部Qが、混練材料の表面に照射され、混練材料の表面から反射された電磁波に基づいて、混練材料の混練状態(分散度)を検出する。しかし、分散度検出部Qが混練材料から検出する電磁波としてはこれに限定されない。例えば、分散度検出部Qは、混練材料の表面及び内部から放射される混練材料自体からの電磁波に基づいて、混練材料の混練状態(分散度)を検出してもよい。
【0070】
<4>上述の第1実施形態では、羽根部35a、35bは2本であったが、1本でもよいし、3本以上であってもよい。
【0071】
<5>上述の第1実施形態では、ライト6およびカメラ7が透過窓8の近傍に配置された。詳しくは、ライト6、透過窓8およびロータ3は、一つの直線上に並ぶ位置関係とされた。またライト6、透過窓8およびロータ3も、一つの直線上に並ぶ位置関係とされた。ライト6からの電磁波(光)は透過窓8を透過して混練材料に照射された。混練材料からの電磁波(光)は、透過窓8を通過してカメラ7に到達した。ライト6と透過窓8の間や、カメラ7と透過窓8との間にミラーを配置してもよい。つまり、ライト6からの電磁波(光)がミラーで反射されて透過窓8に入射するよう構成してもよい。混練材料からの電磁波(光)がミラーで反射されてカメラ7に到達するよう構成してもよい。
【0072】
<6>上述の第1実施形態では、運転制御部10aは、分散度検出部10cが検出した分散度が所定の閾値に達した後に、または分散度検出部10cが検出した分散度の時間変化率が所定の閾値以下となった後に、ロータ駆動機構20を制御してロータ3を停止させ、混練動作を終了するよう構成された。これを改変し、混練動作を終了せず、次の混練工程を開始するよう、運転制御部10aを構成してもよい。次の混練工程とは、それまでに行った混練とは異なる工程の混練であって、例えば条件(温度、速度など)の異なる混練工程や、材料を追加して行う混練工程などである。
【0073】
<7>上述の第1実施形態では、カメラ7(分散度検出部Qの一部)は、ケーシング2の内部の混練材料からの電磁波を観測し、測定結果に基づいて高分子材料への分散質の分散度を検出した。電流値から「分散度」への換算を省略し、測定結果に基づいて制御装置10が混練装置1の動作を制御する態様も可能である。
【0074】
<8>上述の第1実施形態において、カメラ7及びライト6は、透過窓8を介して混練材料に電磁波を照射し、混練材料の状態を撮影できればよく、その設置位置はケーシング2に限定されない。例えば、カメラ7及びライト6は、ケーシング2とは別途の支持部材に支持されていてもよい。
【0075】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る混練装置1について説明する。なお、上述した第1実施形態と同様の部分については説明を省略する。
図13および図14に示すように、本実施形態に係る混練装置1は、第1実施形態に係る混練装置に対して、ライト6、カメラ7、透過窓8が設けられていない点で相違している。また、本実施形態に係る混練装置1では第1実施形態に係る混練装置とは異なる位置に貫通孔9が形成されている。一方、本実施形態に係る混練装置1では、第1実施形態に係る混練装置1では設けられていなかった電極部4が貫通孔9に配置されている。
【0076】
電極部4は、ケーシング2に配置され、ケーシング2の内部の混練材料と接触する。電極部4は詳しくは、図16図19に示すように、一対の電極(第1電極4aおよび第2電極4b)を有して構成されている。電極部4は、制御装置10に接続されており、制御装置10の電圧印加部10bから所定の測定用電圧が印加される。そして制御装置10の分散度検出部(検出部)10cが、第1電極4aと第2電極4bとの間に流れる電流を測定し、高分子材料への分散質の分散度(以下単に「分散度」と記す場合がある。)を検出する。ここで、検出される電流は、混練材料の表面及び内部の少なくともいずれかにおける電流である。
【0077】
電極部4は、ケーシング2の底部2a、円筒状部2b、側壁部2c、および蓋部2dのうち少なくとも1つに配置される。例えば図13および図14に示すように、電極部4は、ケーシング2の底部2a、円筒状部2b、側壁部2c、および蓋部2dに配置されてもよいし、これらの箇所のうち1箇所に配置されてもよい。
【0078】
制御装置10は、混練装置1の全体の動作を制御する装置である。第2実施形態における制御装置10は、第1実施形態における制御装置10にも設けられていた運転制御部10aに加え、電圧印加部10bを有して構成される。具体的には制御装置10は、HDDや不揮発性RAM、CPUに加え、電極部4に電圧を印加するための電源装置、電極部4の一対の電極の間に流れる電流を測定するための測定装置等を有して構成される。そして制御装置10は、電極部4、ロータ駆動機構20、蓋部移動機構30、および温度調節機構40と接続され、電流測定や各機構の制御を行う。なお、本実施形態では、第1実施形態における撮影制御部10dの代わりに、分散度検出部10cが設けられているが、分散度を検出する点では同様の機能を有する。
【0079】
運転制御部10aは、後述する分散度検出部10cが検出した分散度に基づいて、混練装置1の動作を制御する。この分散度に基づく混練装置1の動作は、第1実施形態と同様である。
【0080】
電圧印加部10bは、電極部4が有する一対の電極(第1電極4aおよび第2電極4b)の間に所定の測定用電圧を印加する。所定の測定用電圧は例えば、予め定めた一定の電圧(例えば3V、8Vまたは25V)である。
【0081】
所定の測定用電圧は例えば、電圧印加部10bが、分散度検出部10cが測定する電極部4の電流の大きさに応じて変化させてもよい。例えば、電極部4を流れる電流が測定に適した大きさとなるよう、分散度検出部10cが測定用電圧を変化させてもよい。
【0082】
高分子材料(例えば、アクリルゴム)に、導電性を有する分散質(例えば、カーボン)を分散させる場合、混練材料の抵抗値は50GΩ程度に大きくなる。したがって、測定用電圧は3V以上とするのが好ましく、8V以上であるとより好ましく、25V以上であると更に好ましい。また測定用電圧は1000V以下であると好ましい。
【0083】
分散度検出部10cが検出した分散度に応じて測定用電圧を変更するよう、電圧印加部10bを構成してもよい。高分子材料(例えば、アクリルゴム)に、導電性を有する分散質(例えば、カーボン)を分散させる場合、混練が進行して分散度が上昇するにつれて、混練材料の電気抵抗も増加する。例えば、分散度が上昇するにつれて混練材料の抵抗が増加するため、測定用電圧を増加させないと混練材料の電流の測定が困難となる場合がある。したがって例えば、分散度が増加すると測定用電圧を増加するよう、電圧印加部10bを構成すると好適である。
【0084】
電圧印加部10bは、蓋部2dが所定の位置に配置されていない際には、電極部4に測定用電圧を印加しないよう構成される。所定の位置とは例えば、蓋部2dが下降してケーシング2が閉じられる位置である。具体的には電圧印加部10bは、蓋部移動機構30を用いて蓋部2dの位置を検出し、蓋部2dが所定の高さ(ケーシング2が閉じられる高さ)よりも上に位置する場合、電極部4に測定用電圧を印加しない。混練装置1の操作者が電極部4に触れて感電する事態を抑制でき好適である。
【0085】
電圧印加部10bは、ロータ3が回転していない際には、電極部4に測定用電圧を印加しないよう構成される。具体的には電圧印加部10bは、運転制御部10aまたはロータ駆動機構20を監視してロータ3が回転しているか否かを検知し、ロータ3が回転していない際には、電極部4に測定用電圧を印加しない。混練装置1の操作者が電極部4に触れて感電する事態を抑制でき好適である。
【0086】
分散度検出部10cは、電極部4の一対の電極(第1電極4aおよび第2電極4b)の間に流れる電流を測定し、測定された電流に基づいて高分子材料への分散質の分散度を検出する。高分子材料(例えば、アクリルゴム)に、導電性を有する分散質(例えば、カーボン)を分散させる場合、混練が進行して分散度が上昇するにつれて、混練材料の電気抵抗も増加する。したがって、電極部4に流れる電流を測定することで、分散度を検出することが可能である。
【0087】
このとき、例えば、測定された電流値をそのまま分散度としてもよい。電圧印加部10bが電極部4に印加する測定用電圧を混練中に一定にすれば、測定された電流値を分散度(を示す指標)とすることも可能である。
【0088】
例えば、測定された電流値にて、その際の測定用電圧を除して抵抗値を算出して、その抵抗値を分散度としてもよい。
【0089】
電極部4で測定される電流と分散度との関係に基づいて、ケーシング2の内部の高分子材料への分散質の分散度を算出するよう、分散度検出部10cを構成してもよい。電流と分散度との関係は、例えば数式で表されていてもよいし、対応する数値を記したテーブルの形式で表されていてもよい。関係は例えば、様々な分散度の材料を用意して電流を測定し、電流と分散度との関係を調べて決定してもよい。例えば、混練開始時の電流値(または抵抗値)をゼロとし、混練終了と判断する電流値(または抵抗値)を100として、測定された電流値(または抵抗値)に対応する分散度を比例計算により算出してもよい。
【0090】
測定された電流の値のうち、所定範囲から外れた値を除外して分散度を検出するよう分散度検出部10cを構成してもよい。例えば、電極部4の一対の電極の両方に混練材料が接触している際の電流値に対して、所定範囲を±30%以内とし、この所定範囲から外れた値(電流値)を除外して分散度を検出するよう、分散度検出部10cを構成してもよい。
【0091】
混練される分散媒は、ロータ3と共にケーシング2の内部を回転しながら移動し、混練される。したがって、分散媒と電極部4との接触状態は刻々と変化する。一対の電極の一方または両方が分散媒と離間する場合も発生するが、その場合には測定される電流値は大きく変化し、分散媒の状態を反映したものではなくなる。測定された電流の値のうち、所定範囲から外れた値を除外して分散度を検出するから、分散度が材料の状態を適切に表したものとなり好適である。
【0092】
また、測定された電流の値のうち、所定範囲内の値に対して平均化処理を行い、分散度を検出するよう構成してもよい。例えば、電極部4の一対の電極の両方に混練材料が接触している際の電流値に対して、所定範囲を±20%以内とし、この所定範囲内の値に対して平均化処理(例えば10点移動平均)を行い、分散度を検出するよう、分散度検出部10cを構成してもよい。これにより、分散度の変動が抑制され好適である。
【0093】
図16〜19を参照して、電極部4の形態について詳しく説明する。電極部4は上述の通り、一対の電極として第1電極4aおよび第2電極4bを有して構成される。第1電極4aおよび第2電極4bは、金属製の丸棒である。
【0094】
図16図17および図18に示す形態では、第1電極4aおよび第2電極4bが互いに平行な姿勢で、かつケーシング2の壁面に対して垂直な姿勢で配置されている。第1電極4a、第2電極4b、およびケーシング2の間には、絶縁部材5が配置されている。絶縁部材5は、電気抵抗の大きな部材であって、例えば樹脂製の部材である。すなわち第1電極4a、第2電極4b、およびケーシング2は、絶縁部材5によって互いに電気的に絶縁されており、第1及び第2電極4a、4bとケーシング2との間の放電が抑制され好ましい。図16図18の形態では、第1電極4aと第2電極4bとの間の距離は、第1電極4aとケーシング2との間の距離よりも小さく、第2電極4bとケーシング2との間の距離よりも小さい。よって、第1及び第2電極4a、4bとケーシング2との間の放電が抑制され好ましい。
【0095】
図18の形態では、第1電極4aおよび第2電極4bの先端は、ケーシング2の内側へ突出した状態となっている。図17の形態では、第1電極4aおよび第2電極4bの先端は、ケーシング2の内壁面と同じ高さになるよう、すなわちケーシング2の内壁面と面一になるよう、配置されている。図18の形態では、第1電極4aおよび第2電極4bの先端aが、ケーシング2の内壁面よりも後退した位置に配置されている。
【0096】
図16図18の何れの形態であっても、電極部4に測定用電圧が印加された状態で、ロータ3によって電極部4に混練材料が押し付けられると、第1電極4aおよび第2電極4bの先端と混練材料とが接触して、一方の電極から混練材料を通って他方の電極へ電流が流れる。この電流を分散度検出部10cが測定して、混練材料の分散度が検出される。
【0097】
図16図18の形態において、電極部4の一対の電極は、ロータ3の回転軸Rに沿って並んで配置されると好適である。すなわち、第1電極4aの先端と第2電極4bの先端とを結ぶ直線が、ロータ3の回転軸Rと平行となるよう、第1電極4aおよび第2電極4bが配置されると好適である。混練される分散媒は、ロータ3と共にケーシング2の内部を回転しながら移動するため、回転軸Rに沿って並んで配置される一対の電極に材料が同時に長時間接触する可能性が高くなり、電流の測定を確実に行うことができる。
【0098】
図19の形態では、第1電極4aがケーシング2の側壁部2cに、第1電極4aの先端が側壁部2cの内面と面一になるよう配置される。そして第2電極4bがケーシング2の円筒状部2bに、第2電極4bの先端が円筒状部2bの内面と面一になるよう配置される。すなわち図19の形態では、電極部4が、ケーシング2における円筒状部2bと側壁部2cとの接続部に配置される。
【0099】
<変形例>
なお、上述の第2実施形態(変形例を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、変形例で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【0100】
<1>上述の第2実施形態では、分散度検出部10cが、電極部4の一対の電極(第1電極4aおよび第2電極4b)の間に流れる電流を測定し、測定された電流に基づいて高分子材料への分散質の分散度を検出した。電流値から「分散度」への換算を省略し、測定された電流に基づいて制御装置10が混練装置1の動作を制御する態様も可能である。
【0101】
<2>上述の第2実施形態では、運転制御部10aは、分散度検出部10cが検出した分散度が所定の閾値に達した後に、または分散度検出部10cが検出した分散度の時間変化率が所定の閾値以下となった後に、ロータ駆動機構20を制御してロータ3を停止させ、混練動作を終了するよう構成された。これを改変し、混練動作を終了せず、次の混練工程を開始するよう、運転制御部10aを構成してもよい。次の混練工程とは、それまでに行った混練とは異なる工程の混練であって、例えば条件(温度、速度など)の異なる混練工程や、材料を追加して行う混練工程などである。
【0102】
<3>上述の第2実施形態では、電極部4の一対の第1及び第2電極4a、4bは、ロータ3の回転軸Rに沿って並んで配置され、一対の第1及び第2電極4a、4b間に所定の測定用電圧が印加される。しかし、電極部4の構成はこれに限定されにない。
【0103】
電極部4は、図20図21に示すようにリング型の電極45であってもよい。リング型の電極45は、ケーシング2の外部から内表面25に至るように、円筒状部2bに取り付けられている。電極45は、内軸電極45aを中心として、電極間絶縁部45b、外輪電極45c及び漏電防止用絶縁部45dの順に外方に向かって環状に形成されている。内軸電極45aと外輪電極45cとの間に測定用電圧が印加される。このように内軸電極45aと外輪電極45cとを円環状に重畳させることで、混練材料の電流の測定位置を概ね同位置にでき、より正確な分散度を測定できる。
【0104】
また、電極部4は、図22に示すように、ケーシング2の内表面25に露出した形状がプレート状の電極47であってもよい。直方体状の電極47が、ケーシング2の外部から内表面25に至るように、円筒状部2bに取り付けられている。電極47は、電極間絶縁部47bを挟んで両側に第1電極47a及び第2電極47cが配置されて一体化されたものを漏電防止用絶縁部47dが取り囲むことで形成されている。
ロータ3は、所定の回転方向Dに回転駆動されており、混練材料もまた所定の回転方向Dに向かって混練される。そして、電極間絶縁部47b、第1電極47a及び第2電極47cの長手方向は、混練材料の回転方向Dに沿う方向に沿っている。よって、混練材料の流れに沿って電極47を構成することで、電極47に加わる抵抗力を減らし、電極47間の隙間及び電極47とケーシング2との隙間の発生を防止して放電を抑制できる。
【符号の説明】
【0105】
1 :混練装置
2 :ケーシング
3 :ロータ
4 :電極部
4a :第1電極
4b :第2電極
5 :絶縁部材
6 :ライト
7 :カメラ
8 :透過窓
9 :貫通孔
10 :制御装置
10a :運転制御部
10b :電圧印加部
10c :分散度検出部
10d :撮影制御部
20 :ロータ駆動機構
30 :蓋部移動機構
33 :軸部
35 :羽根部
37 :温調流路
40 :温度調節機構
45 :電極
47 :電極
50 :第1保護部材
51 :第2保護部材
53 :板
111α :外周端部
111β :外周端部
D :回転方向
P :電磁波照射部
Q :分散度検出部
R :回転軸
図1
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図22