(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電力変換装置を例示するブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の電力変換装置10は、電力変換器20と、制御装置50と、を備える。電力変換装置10は、交流端子21a〜21cを介して、交流回路1に接続され得る。たとえば、交流回路1は、三相または単相の50Hz若しくは60Hzの交流電源、交流負荷および交流の送電線を備える電力系統とすることができる。電力変換装置10は、直流端子21d,21eを介して、直流回路(図示せず)に接続され得る。直流回路は、たとえば直流送電線等を含む直流の電力系統である。
【0013】
電力変換装置10は、交流回路1と直流回路との間に接続されて、交流電圧を直流電圧に変換する。また、電力変換装置10は、直流電圧を交流電圧に変換する。電力変換装置10は、一方向の電力変換に限らず、双方向の電力変換を行うことができる。
【0014】
電力変換器20は、交流の各相に対応したアーム22を含む。この例のように、交流回路1が三相交流の場合には、電力変換器20は、6つのアーム22を含む。相ごとに設けられた2つのアーム22は、直流端子21d,21e間で直列に接続されている。
【0015】
直流端子21d,21e間で直列に接続されるアーム22には、バッファリアクトル24がそれぞれ直列に接続されている。
【0016】
各相に対応した高電位側および低電位側のアーム22に接続されたバッファリアクトル24の接続ノードは、交流端子21a〜21cに接続されている。
【0017】
アーム22は、カスケード接続された単位変換器30を含む。単位変換器30は、アーム22当たりn台直列接続されているものとする(nは2以上の整数)。
【0018】
この例では、U相の高電位側のアーム22には、高電位側から低電位側に向かって、UP1,UP2,UP3,…,UPnのように、n台の単位変換器30がカスケード接続されている。U相の低電位側のアーム22にも高電位側から低電位側に向かって、UN1,UN2,UN3,…,UNnのように、n台の単位変換器30がカスケード接続されている。V相およびW相についても同様に、それぞれの高電位側のアームおよび低電位側のアームには、n台の単位変換器30がカスケード接続されている。
【0019】
後に詳述するように、制御装置50およびカスケードに接続された単位変換器30は、伝送部52,32を含み、伝送部52,32および光ファイバケーブルによる通信路によって、ループ状にデイジーチェーン接続されている。
【0020】
この例では、U相〜W相の相ごとに光ファイバケーブル60u〜60wが設けられている。たとえば、U相では、光ファイバケーブル60uは、制御装置50、単位変換器UP1,UP2,UP3,…,UPn、UN1,UN2,UN3,…,UNn、制御装置50の順にデイジーチェーン接続のループを形成し、この順でデータを伝送する。V相およびW相についても同様に、光ファイバケーブル60v,60wによって、制御装置50と各単位変換器30とがデイジーチェーン接続されている。
【0021】
デイジーチェーンのループは、上述に限らず、すべての相を1つのデイジーチェーンのループで接続してもよいし、アーム22ごとにデイジーチェーンのループを形成するようにしてもよい。デイジーチェーンの構成は、アーム22内の単位変換器30の台数等に応じて、適切かつ任意に設定することができる。
【0022】
図2は、電力変換装置の一部を例示するブロック図である。
図2に示すように、単位変換器30は、端子31a,31bを含む。単位変換器30は、端子31a,31bによって、他の単位変換器30等と電気的に接続されている。
【0023】
単位変換器30は、端子31c,31dをさらに含む。端子31c,31dは、光ファイバケーブルを接続するための端子である。単位変換器30は、端子31c,31dによって接続された光ファイバケーブルを介して、制御装置50または他の単位変換器30との間でデータを送信し、受信する。
【0024】
単位変換器30は、伝送部32と、制御部33と、主回路34と、を含む。制御部33は、伝送部32と主回路34との間に設けられている。
【0025】
伝送部32は、端子31c,31dによって光ファイバケーブルに接続されている。伝送部32は、光電変換機能を有する。伝送部32は、光ファイバケーブルを介して、制御装置50、あるいは他の単位変換器30の伝送部32から伝送された光信号のデータを受信して電気信号に変換する。伝送部32は、伝送部32や他の部分で生成した電気信号のデータを光信号のデータに変換し、光ファイバケーブルを介して、制御装置50あるいは他の単位変換器30に伝送する。
【0026】
伝送部32は、電気信号に変換されたデータを解釈し、解釈されたデータにしたがって処理を実行する。伝送部32は、伝送部32や他の部分で生成されたデータの処理を決定し、処理を実行する。
【0027】
より具体的には後に詳述するが、伝送部32は、単位変換器の台数の計数データ(以下、カウントともいう。)を読み込んで、所定の処理を実行する。伝送部32は、処理を施したカウントのデータを自己の単位変換器30のステーション番号として設定し記憶する。所定の処理は、たとえば、読み込んだカウントのデータに固定値を加算することである。固定値は、たとえば1である。
【0028】
伝送部32が解釈するデータは、シリアルデータに含まれている。このシリアルデータは、CRC等のエラーチェックやエラー訂正機構を含む。伝送部32は、エラーチェックを実行した結果、エラーがない場合には、次の処理を実行し、エラーが発生した場合には、処理を停止する。
【0029】
伝送部32は、設定したステーション番号に対応するデータを読み込んで、所定の処理を実行する。所定の処理は、たとえば、制御部33が主回路34を制御するためのゲート信号を復元して、制御部33に供給すること等である。
【0030】
伝送部32は、制御部33から供給されるデータを取得して、所定の処理を実行する。所定の処理は、たとえば、取得したデータで、シリアルデータのうち自己のステーション番号に対応する位置のデータを更新することである。制御部33から供給されるデータは、たとえば、主回路34のコンデンサ電圧の計測データ等である。
【0031】
伝送部32は、データを更新したシリアルデータを次の単位変換器に伝送する。
【0032】
制御部33は、伝送部32から取得したデータを、主回路34に供給するための信号に変換する。主回路34に供給するための信号は、たとえばゲート駆動信号である。制御部33は、伝送部32によって復元されたゲート信号を取得し、レベル変換等してゲート駆動信号を生成する。制御部33は、主回路34から取得したコンデンサ電圧のデータ等を所定の形式に変換して伝送部32に供給する。
【0033】
主回路34は、スイッチング素子34aと、ダイオード34bと、コンデンサ34cと、を含む。スイッチング素子34aは、自己消弧型の半導体素子である。自己消弧型の半導体素子は、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等である。スイッチング素子34aは、直列に2個接続されている。
【0034】
ダイオード34bは、還流ダイオードである。2個のダイオード34bは、直列に接続されているスイッチング素子34aにそれぞれ逆並列に接続されている。
【0035】
コンデンサ34cは、直列に接続されたスイッチング素子34aに並列に接続される。
【0036】
主回路34は、上述したように、制御部33から供給されるゲート駆動信号によって、スイッチング素子34aが駆動される。2つのスイッチング素子34aが適切に駆動されることによってコンデンサ34cを充放電する。
【0037】
主回路の構成は、上述したようなハーフブリッジ構成に限らず、フルブリッジ構成としてももちろんよい。
【0038】
制御装置50は、伝送部52を含む(
図1)。伝送部52は、光電変換機能を含む。伝送部52は、伝送部52または制御装置50の他の部分で生成された電気信号のデータを光信号に変換して、単位変換器30に送信する。伝送部52は、単位変換器30から送信された光信号のデータを受信して、電気信号に変換し、変換されたデータにしたがって処理を実行する。
【0039】
制御装置50の伝送部52と単位変換器30の伝送部32との間は、光ファイバケーブル60u〜60wによって接続されている。光ファイバケーブル60u〜60wは、制御装置50の伝送部52と単位変換器30の伝送部32との間をループ状にデイジーチェーン接続する。
【0040】
本実施形態の電力変換装置10の動作について説明する。
図3は、制御装置と電力変換器との間で相互に伝送されるシリアルデータを例示する模式図である。
図3に示すように、U相の単位変換器30のためのシリアルデータDSuは、制御装置50で生成される。制御装置50は、V相およびW相のためのシリアルデータDSv,DSwも生成する。データの構造は、いずれのシリアルデータにおいても同様であり、以下では、シリアルデータDSuについて説明する。なお、シリアルデータの構造は、デイジーチェーン接続される単位変換器30の構成に応じて設定され、上述に限るものではない。
【0041】
電力変換装置10で取り扱われるシリアルデータDSuは、電気信号により形成されている。上述したように、電気信号のシリアルデータDSuは、制御装置50の伝送部52、あるいは、単位変換器30の伝送部32において光信号のシリアルデータDSu*に変換されて、光ファイバケーブル60u〜60wを伝送される。
【0042】
シリアルデータDSuは、ステーション番号kおよび制御装置50から電力変換器20に送信する制御データDTukの組みを含み、これらがシリアルに結合されているデータである。ステーション番号kは、単位変換器30を特定するための番号である。この例では、ステーション番号kは、各相のアームの高電位の単位変換器30から低電位の単位変換器30に向かって昇順に順次設定される。
【0043】
この例では、最高電位の単位変換器UP1にステーション番号1が設定され、単位変換器UP2にカスケード接続されている単位変換器UP2にステーション番号2が設定され、このアームの最低電位の単位変換器UPnにステーション番号nが設定される。同様に低電位側のアームの単位変換器UN1にステーション番号n+1が設定され、単位変換器UN2,UN3,…,UNnには、ステーション番号n+2,n+3,…,n+nがそれぞれ設定される。
【0044】
ステーション番号kに対応する制御データDTukには、たとえば、高電位側からk番目の単位変換器30のスイッチング素子34aを駆動するためのゲート信号の位相情報のデータが含まれる。
【0045】
シリアルデータDSuは、単位変換器30のカウントiのデータを含む。カウントiは、単位変換器30の台数の計数データであり、シリアルデータDSuが制御装置50および単位変換器30間を伝送された回数を表す。
【0046】
たとえば、制御装置50は、カウントiの初期値を0に設定する。制御装置50から最初にシリアルデータDSuが伝送される単位変換器UP1は、伝送部32によって、カウントiに1を加算する。したがって、カウントiは1に設定される。次にシリアルデータDSuが伝送される単位変換器UP2は、カウントiに1を加算する。したがって、カウントiは2に設定される。
【0047】
このように、単位変換器30では、シリアルデータDSuが伝送されるたびに、伝送部32がカウントiに1を加算して、シリアルデータDSuのカウントiを更新する。更新されたカウントiは、その単位変換器30のステーション番号に設定される。単位変換器30は、伝送部32によって、設定されたステーション番号k(=i)を記憶する。
【0048】
シリアルデータDSuは、変換器データDCukを含む。変換器データDCukは、ステーション番号kに対応付けられている。変換器データDCukは、シリアルデータDSuが伝送された単位変換器30に関するデータである。たとえば、変換器データDCukは、単位変換器30のコンデンサ電圧のデータを含む。変換器データDCukは、単位変換器30の異常の有無に関するフラグを含んでもよい。このフラグは、たとえば、単位変換器30が過電圧等によって動作停止し、バイパス状態となっている場合等に立つものとされる。シリアルデータDSuを受信した単位変換器30では、自己の変換器データDCukを、シリアルデータDSuの所定の場所に書き込む。所定の場所は、あらかじめ設定されており、自己のステーション番号kに対応するように設定されている。
【0049】
シリアルデータDSuは、エラー訂正のためのデータを含む。エラー訂正のためにシリアルデータは、たとえばCRC符号化され、CRCデータが付加される。シリアルデータDSuに含まれるCRCデータは、伝送されたデータに伝送に伴う異常が生じていないか否かを示す。後述するように、たとえば、シリアルデータDSuを受信した単位変換器30や制御装置50では、CRCデータをチェックして、異常がない場合には、次の単位変換器等にデータを伝送し、異常がある場合には、データの伝送およびすべての処理を終了して、制御装置50が次のシリアルデータを生成して、伝送するのを待機する。
【0050】
図4は、本実施形態の電力変換装置の動作を説明するためのフローチャートの例である。
図4のフローチャートには、一例として、そのフローやステップを実行する装置あるいはブロックが合わせて示されている。
図4に示すように、ステップSC1〜SC7は、制御装置50の伝送部52において実行される。ステップSU1〜SU10は、各単位変換器30の伝送部32において実行される。
【0051】
ステップSC1において、伝送部52は、各単位変換器30のための制御データDTukをシリアルデータDSuに設定(セット)する。
【0052】
ステップSC2において、伝送部52は、単位変換器30の台数のカウントiを初期値にセットする。カウントiの初期値は0である。
【0053】
ステップSC3において、伝送部52は、構成されたシリアルデータDSuにCRC演算を実行し、シリアルデータDSuにCRCデータをセットする。
【0054】
ステップSC4において、伝送部52は、シリアルデータDSuを光信号のシリアルデータDSu*に変換して、単位変換器UP1にシリアルデータDSu*を送信する。
【0055】
ステップSU1において、単位変換器UP1の伝送部32は、シリアルデータDSu*を受信して、電気信号のシリアルデータDSuに変換する。
【0056】
ステップSU2において、伝送部32は、シリアルデータDSuのCRCデータをチェックする。CRCデータが正常である場合には、伝送部32は、次のステップSU3に処理を遷移させる。CRCデータが異常である場合には、伝送部32は、ステップSU10を実行する。
【0057】
ステップSU3において、伝送部32は、シリアルデータDSuのカウントiに1を加算して、加算されたデータでカウントiを更新する。
【0058】
ステップSU4において、伝送部32は、更新されたカウントi(この場合、i=1)を自己のステーション番号に設定し、記憶する。
【0059】
ステップSU5において、伝送部32は、設定された自己のステーション番号に対応付けられている制御データDTuk(この場合、制御データDTu1)を取り出して、制御部33に供給する。
【0060】
ステップSU6において、伝送部32は、制御部33から変換器データDCuk(この場合、DCu1)を取得する。
【0061】
ステップSU7において、伝送部32は、取得した変換器データDCukを、シリアルデータDSuの対応する箇所に書き込んで、シリアルデータDSuを更新する。
【0062】
ステップSU8において、伝送部32は、更新されたシリアルデータDSuにCRC演算を実行し、シリアルデータDSuのCRCデータを更新する。
【0063】
ステップSU2で、CRCチェックの結果、CRCエラーが検出された場合には、ステップSU10において、単位変換器30の伝送部32は、そのエラーコードでシリアルデータDSuのCRCデータを更新する。
【0064】
ステップSU9において、伝送部32は、シリアルデータDSuを光信号のシリアルデータDSu*に変換して、次の単位変換器UP2へシリアルデータDSuを送信する。
【0065】
以降、すべての単位変換器において、上述と同様の処理を行い、すべての変換器データDCukが更新されたシリアルデータDSuは、制御装置50の伝送部52に送信される。
【0066】
ステップSC5において、制御装置50の伝送部52は、電力変換器20側で変換器データDCukが更新された、光信号のシリアルデータDSu*を受信し、電気信号のシリアルデータDSuに変換する。
【0067】
CRCデータがエラーコードで更新されているシリアルデータDSuを受信した他の単位変換器では、伝送部32がCRCデータがエラーコードであることを認識するので、ステップSU3〜SU8を実行することなく、順次の単位変換器にシリアルデータを転送する。
【0068】
ステップSC6において、伝送部52は、CRCデータをチェックする。伝送部52は、CRCデータが正常である場合には、シリアルデータDSuから変換器データDCukを読み出して、必要な処理を実行する。
【0069】
ステップSC7において、伝送部52は、シリアルデータDSuから変換器データDCukを読み出して、必要な処理を実行する。
【0070】
ステップSU2で、CRCチェックの結果、CRCエラーが検出された場合には、そのエラーコードでシリアルデータDSuのCRCデータが更新されている。制御装置50の伝送部52では、エラーコードで更新されたCRCデータを含むシリアルデータDSuが伝送されてくるので、これを受信した単位変換器では、変換器データを取り出すことなく、次のシリアルデータDSuを生成する。
【0071】
V相およびW相においても同様の処理を行う。
【0072】
上述した伝送部や制御部の構成は、たとえばCPU(Central Processing Unit)等のプログラムをロードして、プログラムの各ステップにしたがって処理を実行する半導体装置等を含んでもよい。この場合には、上述のフローチャートの各ステップの一部または全部は、CPUが実行するプログラムに含まれる。プログラムは、図示しない記憶部や記憶装置に格納される。
【0073】
本実施形態の電力変換装置10の効果について、比較例の電力変換装置と比較しつつ説明する。
図5は、比較例の電力変換装置の動作を説明するためのフローチャートの例である。
図5に示すように、比較例の電力変換装置は、制御装置150と、カスケード接続された単位変換器130を含む電力変換器と、を備えている。制御装置150は、伝送部152を含み、伝送部152は、上述の実施形態の場合とは異なるフローチャートを実行する。単位変換器130は、伝送部132を含み、伝送部132は、上述の実施形態の場合とは異なるフローチャートを実行する。また、単位変換器130に設けられた記憶部132aにステーション番号が記憶されている。記憶部132aには、たとえばトグルスイッチ等によって、あらかじめステーション番号が設定され、記憶されている。
【0074】
図示しないが、制御装置150および単位変換器130の間を伝送されるシリアルデータは、上述の実施形態の場合と異なり、単位変換器の台数のカウントiのデータを含んでいない。
【0075】
ステップSC101において、制御装置150の伝送部152は、各単位変換器130のための制御データをシリアルデータにセットする。
【0076】
ステップSC102において、伝送部152は、構成されたシリアルデータにCRC演算を実行し、シリアルデータにCRCデータをセットする。
【0077】
ステップSC103において、伝送部152は、シリアルデータを光信号のシリアルデータに変換して、単位変換器UP1に送信する。
【0078】
ステップSU101において、単位変換器UP1の伝送部132は、光信号のシリアルデータを受信して、電気信号のシリアルデータに変換する。
【0079】
ステップSU102において、伝送部132は、シリアルデータDSuのCRCデータをチェックする。CRCデータが正常である場合には、伝送部132は、次のステップSU103に処理を遷移させる。CRC符号データが異常である場合には、伝送部132は、処理をステップSU108に遷移させる。
【0080】
ステップSU103において、伝送部132は、あらかじめ設定されている自己のステーション番号を読み込む。
【0081】
ステップSU104において、伝送部132は、受信したシリアルデータから自己のステーション番号に対応する制御データを取り出し、取り出した制御データを制御部33に供給する。
【0082】
ステップSU105において、伝送部132は、制御部33から変換器データを取得する。
【0083】
ステップSU106において、伝送部132は、取得した変換器データを、シリアルデータの対応する箇所に書き込んで、シリアルデータを更新する。
【0084】
ステップSU107において、伝送部132は、更新されたシリアルデータにCRC演算を実行し、シリアルデータのCRCデータを更新する。
【0085】
ステップSU108において、伝送部132は、シリアルデータを光信号のシリアルデータに変換して、次の単位変換器UP2へシリアルデータを送信する。
【0086】
以降、すべての単位変換器において、上述と同様の処理を行い、すべての変換器データが更新されたシリアルデータは、制御装置150の伝送部152に送信される。
【0087】
ステップSC104において、伝送部152は、電力変換器側で変換器データが更新された、光信号のシリアルデータを受信し、電気信号のシリアルデータに変換する。
【0088】
ステップSC105において、伝送部152は、CRCデータをチェックする。伝送部152は、CRCデータが正常である場合には、シリアルデータから変換器データを読み出して、必要な処理を実行する。
【0089】
ステップSC106において、伝送部152は、シリアルデータから変換器データを読み出して、必要な処理を実行する。
【0090】
このように、比較例の電力変換装置では、シリアルデータを伝送するたびに加算されるカウントiを含まないシリアルデータを用いるので、単位変換器130ごとに記憶部132aにステーション番号を設定する必要がある。記憶部132aにステーション番号を設定し記憶するために、オペレータ等が、マニュアルやソフトウェア等を用いて、単位変換器ごと割り振られているステーション番号を設定する作業を行う。このように、オペレータの手作業でステーション番号の設定を行うので、作業が煩雑となり、誤設定を生じる恐れがある。そして、誤設定を生じた場合でも、誤設定なのか、接続間違いなのか等の原因判断が困難になることもある。
【0091】
本実施形態の電力変換装置10では、カウントiを含むシリアルデータを受信する。単位変換器30の伝送部32は、そのカウントiに所定の処理を施すことによって、単位変換器30が自己のステーション番号を設定することができる。
【0092】
シリアルデータは、デイジーチェーン接続された単位変換器30を転送される。カウントiに1を加算して、加算されたカウントiをステーション番号xに設定し、シリアルデータの転送順に単位変換器30のステーション番号を割り振ることによって、加算されたカウントiを自己のステーション番号とすることができる。したがって、本実施形態の電力変換装置10では、初期設定や点検時等の設定時等に単位変換器ごとにステーション番号をそれぞれ設定することなく、自動的に単位変換器のステーション番号を設定することができる。
【0093】
本実施形態の電力変換装置10では、シリアルデータにCRC演算処理を行ってCRCデータを付加し、デイジーチェーン接続された制御装置および単位変換器でそれぞれCRCチェックを行う。CRCチェックによって、エラーが検出された場合には、検出されたエラーコードでCRCデータを更新するので、その後のチェック工程を短期間に完了することができる。そのため、各伝送部におけるシリアルデータの処理時間の短縮をはかることができる。
【0094】
(第2の実施形態)
本実施形態では、シリアルデータを転送する単位変換器が、他の単位変換器の変換器データを取得し、自己および他の変換器データにもとづいて、保護協調動作を行う。
【0095】
図6および
図7は、本実施形態の電力変換装置の動作を説明するためのフローチャートの例である。
図6には、フローチャートのフローやステップを実行する装置あるいはブロックが合わせて示されている。
図6に示すように、本実施形態では、電力変換装置は、上述の他の実施形態の場合と異なる単位変換器230を含む電力変換器を備える。その他の構成要素は、上述の他の実施形態の場合と同一であり、同一の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0096】
本実施形態では、制御装置50は、上述の他の実施形態の場合と同じであり、伝送部52は、同じフローチャート(ステップSC1〜SC7)を実行する。単位変換器230は、伝送部232と、制御部233と、保護協調部235と、を含む。伝送部232は、上述の実施形態の場合と一部が異なるフローチャートを実行する。制御部233は、伝送部232とのデータの送受信のほか、新たに設けられた保護協調部235からの指令を受け取る。
【0097】
ステップSU1〜SU5およびステップSU6〜SU10については、上述の他の実施形態の場合と同じなので、ステップSU201について説明する。
【0098】
ステップSU201は、この例では、ステップSU5の後に実行されるが、任意の順序で実行されてもかまわない。ステップSU5では、伝送部232が、ステーション番号kに対応する制御データDTukを取り出している。ステップSU201において、伝送部232は、他の単位変換器に対応する変換器データDCuk’(k’≠k)をすべて取り出す。伝送部232は、取り出した他の単位変換器の変換器データDCuk’を保護協調部235に供給する。なお、すべての変換器データDCuk,DCuk’には、上述したように、自己が故障状態(バイパス状態)にあるか否かを表すフラグが含まれている。
【0099】
図7には、保護協調部235の動作のフローチャートの例が示されている。
図7に示すように、ステップSB201において、保護協調部235は、変換器データからバイパス状態を表すフラグが立っているものを抽出し、バイパス数を取得する。
【0100】
ステップSB202において、保護協調部235は、取得したバイパス数と、あらかじめ設定された判定値である冗長設定の台数とを比較する。バイパス数が冗長設定の台数よりも大きい場合には、処理を次のステップSB203に遷移させる。バイパス数が冗長設定以下の場合には、ステップSB201に戻って待機する。
【0101】
ステップSB203において、保護協調部235は、ゲートオフ指令を生成し、ゲートブロック信号を出力する。保護協調部235は、ゲートオフ指令を出力し、ゲートオフ指令を受信した、単位変換器30の他の部分でゲートブロック信号を生成して出力してもよい。ゲートブロック信号は、他のすべての単位変換器230に供給され、電力変換器は停止する。
【0102】
ステップSU201の後、伝送部232は、処理を次のステップSU6に遷移させる。以降、上述の他の実施形態の場合と同様に動作する。
【0103】
本実施形態の電力変換装置の効果について説明する。シリアルデータには、すべての単位変換器の変換器データが書き込まれている。本実施形態では、単位変換器230が保護協調部235を含んでおり、単位変換器230が他の単位変換器230の変換器データを読み込んで、バイパス状態の単位変換器の台数をカウントすることができる。
【0104】
一般には、単位変換器のバイパス台数による保護協調動作は、制御装置側で判定して、ゲートブロック信号を生成する。そのため、制御装置がシリアルデータを電力変換器に伝送し、デイジーチェーンの終端の単位変換器から伝送されてくるシリアルデータを受信するまで、単位変換器の故障台数による保護協調動作をすることができない。
【0105】
本実施形態によれば、上述のとおり、単位変換器の故障台数が所定数に達した時点で電力変換器をゲートブロックにより停止させることができる。したがって、より安全かつ買う実に電力変換装置の保護を行うことができる。
【0106】
(第3の実施形態)
本実施形態では、シリアルデータに単位変換器の設置数があらかじめ設定されている。本実施形態の電力変換装置は、シリアルデータに設定された設置数により、データの異常有無をチェックする。
【0107】
図8は、本実施形態において、制御装置と電力変換器との間で相互に伝送されるシリアルデータを例示する模式図である。
図9は、本実施形態の電力変換装置の動作を説明するためのフローチャートの例である。
図8に示すように、本実施形態では、シリアルデータは、単位変換器30の設置数Nを含む点で、上述の他の実施形態の場合と相違する。
図9に示すように、本実施形態の電力変換装置は制御装置350を備える。電力変換器側の構成は、第1の実施形態の場合と同様である。電力変換器側の構成は、第2の実施形態の場合の構成と同一となるようにしてもよい。
【0108】
制御装置350は、伝送部352を含む。伝送部352は、上述の他の実施形態の場合とは異なるフローチャートを実行する。伝送部352が実行するフローチャートは、他の実施形態の場合のフローチャートと、ステップSC1〜ステップSC7については同一であり、ステップSC301,SC302が追加された点で相違する。
【0109】
この例では、ステップSC1の後にステップSC301が実行される。ステップSC301において、伝送部352は、シリアルデータDSuの該当する位置に単位変換器の設置数Nをセットする。変換器の設置数Nは、制御装置350にデイジーチェーン接続された単位変換器の台数である。この例では、N=2×n(=n+n)である。
【0110】
ステップSC7の後にステップSC302が実行される。ステップSC302において、伝送部352は、シリアルデータDSuの変換器の設置数Nとカウントiとを比較する。
【0111】
この場合においては、カウントiは、電力変換器側で、シリアルデータがすべての単位変換器を転送され、単位変換器ごとにカウントiに1が加算されて更新されている。したがって、電力変換器側が正常な構成であれば、N=iとなる。N≠iの場合には、電力変換器側の構成に異常があるものと考えられる。
【0112】
ステップSC302で、N=iと判定された場合には、伝送部352は、次の処理に遷移させる。ステップSC302で、N≠iと判定された場合には、単位変換器の構成に異常があるものとして処理を中止する。
【0113】
単位変換器の構成異常とは、たとえば、初期設定において、単位変換器に光ファイバケーブルを誤接続した場合等である。光ファイバケーブルの誤接続によって、本来の単位変換器の台数が計数されず、N≠iとなり得る。
【0114】
本実施形態では、シリアルデータを伝送して、最終の単位変換器から転送されたシリアルデータをチェックすることによって、単位変換器の誤接続等の不具合を検出することができる。
【0115】
(第4の実施形態)
シリアルデータをデイジーチェーン接続された単位変換器に転送して、制御データを設定する場合には、それぞれの単位変換器において、転送に要する時間の遅れが存在する。そのため、対象の単位変換器についてゲート駆動信号の動作タイミング等を合わせる必要がある。
図10は、本実施形態の電力変換装置の動作を説明するためのフローチャートの例である。
図11は、本実施形態の一部を例示するブロック図である。
図10に示すように、本実施形態の電力変換装置は、制御装置350と、カスケード接続された単位変換器430を含む電力変換器と、を備える。制御装置350は、上述の第3の実施形態の場合の制御装置と同じであるが、他の実施形態の場合の制御装置50であってもよい。なお、伝送し、転送するシリアルデータは、単位変換器の設置数Nのデータを含んでいる必要がある。
【0116】
単位変換器430は、伝送部432と、制御部433と、遅延時間設定部436と、を含む。伝送部432は、上述の他の実施形態の場合の伝送部とは異なるフローチャートを実行する。遅延時間設定部436は、シリアルデータから取り出した制御データDTukおよびその単位変換器で設定すべき遅延時間補正値を入力して、遅延時間補正値に応じたタイミングで制御データDTukを制御部433に供給する。
【0117】
伝送部432が実行するフローチャートは、ステップSU1〜SU4およびステップSU6〜SU10については、上述の他の実施形態の場合と同じであり、ステップSU401〜SU403が追加された点で相違する。
【0118】
この例では、ステップSU4の後にステップSU401〜SU403が追加されている。ステップSU4では、更新されたカウントiは、自己のステーション番号にセットされている。ステップSU401において、伝送部432は、自己のステーション番号に対応する制御データDTukを取り出して、取り出した制御データDTukを遅延時間設定部436に供給する。
【0119】
ステップSU402において、伝送部432は、設置数Nから自己のステーション番号iを減算する。減算された値は、自己から最終端の単位変換器までの台数を表している。
【0120】
ステップU403において、伝送部432は、単位変換器1台当たりにシリアルデータの転送に要する遅延時間およびステップSU402で計算された台数に応じた補正値(N−i)を乗算して、結果を遅延時間設定部436に供給する。
【0121】
図11に示すように、遅延時間設定部436は、複数のフリップフロップ436aと、選択スイッチ436bと、を含む。フリップフロップ436aは、縦続接続されている。つまり、1段目のフリップフロップ436aの出力に2段目のフリップフロップ436aの入力Sが接続され、フリップフロップ436aの出力Qは、次段のフリップフロップ436aの入力Sに接続されている。フリップフロップ436aは、デイジーチェーン接続されている単位変換器の設置台数分、すなわちN段接続されている。
【0122】
選択スイッチ436bには、N個のフリップフロップ436aの出力が接続されている。選択スイッチ436bには、自己から最終端の単位変換器までの台数に応じた補正値(N−i)が入力される。選択スイッチ436bは、補正値(N−i)が入力された場合には、(N−i)段目のフリップフロップ436aの出力を選択する。
【0123】
本実施形態の電力変換装置の効果について説明する。
本実施形態では、遅延時間設定部436によって、デイジーチェーン接続された順に補正すべき遅延時間を各変換器データの実行時間を補正することができる。遅延時間設定部436や、対応するプログラムのステップを、上述した他の実施形態の場合のプログラム等に容易に追加することによって、容易に実現することができる。
【0124】
以上説明した実施形態によれば、設定時に自動的にステーション番号を設定する電力変換装置電力変換装置を実現することができる。
【0125】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。