(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のヒートポンプ式の車両用空調システムでは、デフロストの際、エンジンを稼働してエンジン冷却水を循環することで室内ユニット内に熱を供給し、室外熱交換器に循環する冷媒を加熱していた。そのためデフロスト開始時に暖房が利用できなかった。
即ち、デフロストの際にエンジンを起動すると、エンジン冷却水の温度が当初は低く、昇温されるまでに時間を要していた。そのためデフロスト開始時にエンジン冷却水が昇温するまでの間、車室内の温風を生成するための室内ユニットでは、エンジンからの十分な熱量は供給されない状態で、着霜した室外熱交換器からの冷媒が循環され、温風を生成することができなかった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、デフロスト開始直後にも室内ユニットで温風を生成できるヒートポンプ式の車両用空調システム、車両用空調システムのデフロスト処理方法、車両用空調システムの制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様の車両用空調システムによれば、室外熱交換器及び水/冷媒熱交換器を有して冷媒を循環させる冷媒系統と、前記水/冷媒熱交換器及び室内ユニット内のヒータを有して温水を循環させる温水系統と、前記冷媒系統に冷媒用開閉部を設けて連結され、前記室内ユニット内のエバポレータに前記冷媒を循環可能な冷媒室内系統と、前記温水系統に温水用開閉部を設けて連結されたエンジン冷却水系統と、を備え、前記冷媒用開閉部が閉状態で、前記室外熱交換器で吸熱されて前記水/冷媒熱交換器で熱交換された熱を前記ヒータで放熱する通常運転モードと、前記冷媒用開閉部及び前記温水用開閉部が開状態で、前記エバポレータで吸熱された熱を前記室外熱交換器で放熱するデフロスト運転モードと、を択一的に切替えるモード切替部と、を備えた車両用空調システムにおいて、前記モード切替部は、前記エンジン冷却水の温度に基づいて前記温水用開閉部を開く温水流路切替部と、前記温水用開閉部の作動以後に前記冷媒用開閉部を開く冷媒流路切替部と、を有している。
【0009】
本発明の車両用空調システムによれば、エンジン冷却水の温度に基づいて温水用開閉部を開く温水流路切替部を有している。そのためエンジン冷却水温が上昇してから温水用開閉部を開くことができ、昇温状態のエンジン冷却水を温水系統に循環させて室内ユニットのヒータに熱を供給できる。
そして温水用開閉部の作動以後に冷媒用開閉部を開く冷媒流路切替部を有しているので、デフロスト開始直後に冷媒用開閉弁を開いても、室内ユニットには既にエンジン冷却水からの熱が供給されており、温風を生成することができる。着霜した室外熱交換器から室内ユニット内のエバポレータに低温の冷媒が供給されていても、室内ユニットから車室内に吐出される空気が過剰に低温なることを確実に防止できる。
しかも室内ユニット内のエンジン冷却水からの熱により、冷媒室内系統の冷媒を加熱して室外熱交換器に供給できるので、デフロスト開始直後であっても、効率よくデフロストを実施できる。
従ってデフロスト開始直後にも室内ユニットで温風を生成できるヒートポンプ式の車両用空調システムを提供することができる。
【0010】
本発明の第2の態様の車両用空調システムによれば、上記第1の態様において、前記温水流路切替部は、エンジン冷却水の温度が所定値以上のとき、前記温水用開閉部を開くように構成するのがよい。
このような構成によれば、エンジン冷却水の温度により容易に温水用開閉部を開くことができ、車両用空調システムの構成を簡素化できる。
【0011】
本発明の第3の態様の車両用空調システムによれば、上記第2の態様において、前記温水用開閉部がサーモバルブであってもよい。
このような構成によれば、温水用開閉部が制御なしで、自動で開閉することができ、車両用空調システムの構成をより簡素化できる。
【0012】
本発明の第4の態様の車両用空調システムによれば、上記第2の態様において、前記温水用開閉部が電動バルブであり、前記温水流路切替部が前記エンジン冷却水の温度を含む予め設定された流路切替条件を満たしたときに前記電動バルブを開くようにしてもよい。
【0013】
このような構成によれば、予め設定された流路切替条件に従って温水用開閉部を開くことができるので、より適切に温水用開閉部を作動させることができる。
【0014】
本発明の第5の態様の車両用空調システムによれば、上記第1から第4の態様において、前記室内ユニットの温度が所定値以上のとき、前記冷媒用開閉部を開くようにしてもよい。
【0015】
このような構成によれば、デフロスト処理を開始したときに、より確実に室内ユニットで温風を生成できる。
【0016】
本発明の第6の態様によれば、デフロスト処理方法は、室外熱交換器及び水/冷媒熱交換器を有して冷媒を循環させる冷媒系統と、前記水/冷媒熱交換器及び室内ユニット内のヒータを有して温水を循環させる温水系統と、前記冷媒系統に冷媒用開閉部を設けて連結され、前記室内ユニット内のエバポレータに前記冷媒を循環可能な冷媒室内系統と、前記温水系統に温水用開閉部を設けて連結されたエンジン冷却水系統と、を備えた車両用空調システムのデフロスト処理方法であって、前記冷媒用開閉部が閉状態で、前記室外熱交換器で吸熱されて前記水/冷媒熱交換器で熱交換された熱を前記ヒータで放熱する通常運転モードと、前記冷媒用開閉部及び前記温水用開閉部が開状態で、前記エバポレータで吸熱された熱を前記室外熱交換器で放熱するデフロスト運転モードと、を切替えるモード切替ステップを有する。前記モード切替ステップは、更に、予め設定されたデフロスト入条件の判定を行うステップと、前記デフロスト入条件を満たすとき、前記エンジン冷却水を昇温するステップと、前記エンジン冷却水が所定温度以上に達した後、前記エンジン冷却水系統を前記温水系統と接続するステップと、を含む。
【0017】
このような構成によれば、デフロスト入条件の判定を行う工程と、デフロスト入条件を満たす場合に、エンジンをONにしてエンジン冷却水を昇温する工程と、エンジン冷却水が所定温度以上に達した後、エンジン冷却水系統を温水系統と接続する。
そのためエンジン冷却水系統を温水系統と接続するときにエンジン冷却水系統の冷却水が確実に昇温されており、接続により温水系統の温度が低下することを防止できる。
従って、デフロスト開始直後にも室内ユニットで温風を生成できるデフロスト処理方法を提供することができる。
【0018】
本発明の第7の態様のデフロスト処理方法によれば、上記第6の態様において、前記室内ユニットの温度を検知し、該温度が所定温度以上に達した後、デフロスト処理を開始するのがよい。
このような構成によれば、デフロスト処理を開始したときに、より確実に室内ユニットで温風を生成できる。
【0019】
本発明の第8の態様によれば、プログラムは、室外熱交換器及び水/冷媒熱交換器を有して冷媒を循環させる冷媒系統と、前記水/冷媒熱交換器及び室内ユニット内のヒータを有して温水を循環させる温水系統と、前記冷媒系統に冷媒用開閉部を設けて連結され、前記室内ユニット内のエバポレータに前記冷媒を循環可能な冷媒室内系統と、前記温水系統に温水用開閉部を設けて連結されたエンジン冷却水系統と、を備えた車両用空調システムのコンピュータを、前記冷媒用開閉部が閉状態で、前記室外熱交換器で吸熱されて前記水/冷媒熱交換器で熱交換された熱を前記ヒータで放熱する通常運転モードと、前記冷媒用開閉部及び前記温水用開閉部が開状態で、前記エバポレータで吸熱された熱を前記室外熱交換器で放熱するデフロスト運転モードと、を切替えるモード切替部として機能させる。前記モード切替部は、更に、予め設定されたデフロスト入条件の判定を行うステップと、前記デフロスト入条件を満たすとき、前記エンジン冷却水を昇温するステップと、前記エンジン冷却水が所定温度以上に達した後、前記エンジン冷却水系統を前記温水系統と接続するステップと、を実行する。
【0020】
このような構成によれば、デフロスト入条件の判定を行うステップと、デフロスト入条件を満たす場合に、エンジンをONにしてエンジン冷却水を昇温するステップと、エンジン冷却水が所定温度以上に達した後、エンジン冷却水系統を温水系統と接続するステップとを有している。
そのためエンジン冷却水系統を温水系統と接続するときにエンジン冷却水系統の冷却水が確実に昇温されており、接続により温水系統の温度が低下することを防止できる。
従って、デフロスト開始直後にも室内ユニットで温風を生成できる車両用空調システムの制御プログラムを提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
上述の発明によれば、デフロスト開始直後にも室内ユニットで温風を生成できるヒートポンプ式の車両用空調システム、デフロスト処理方法、車両用空調システムの制御プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1の実施形態>
以下では、第1の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
本実施形態の車両用空調システム1は、PHEV車等のハイブリッド車に装着されて暖房運転可能なシステムである。
【0024】
(全体構造)
この車両用空調システム1は、
図1及び
図2に示すように、冷媒系統P1と、温水系統P2と、エンジン冷却水系統P3と、冷媒室内系統P4と、これらを通常運転モードとデフロスト運転モードとに切替可能なモード切替部2aと、を備えている。
通常運転モードとは、ヒートポンプ方式で暖房運転が可能なモードであり、デフロスト運転モードは室外熱交換器13の着霜を除去するための運転が可能なモードである。
【0025】
(冷媒系統)
冷媒系統P1は、圧縮機10と、水/冷媒熱交換器11と、三方電磁弁V3と、レシーバ12と、膨張弁E1と、逆止弁V5と、室外熱交換器13と、二方電磁弁V1と、これらを接続する冷媒配管と、を有し、冷媒が循環する冷媒流路21が構成されている。
圧縮機10と水/冷媒熱交換器11との間には冷媒温度を検知する温度センサT1が設けられている。
【0026】
水/冷媒熱交換器11は、冷媒流路21と温水系統P2の温水流路22との間に熱交換可能に設けられている。
三方電磁弁V3は、水/冷媒熱交換器11とレシーバ12と室外熱交換器13との間に接続されている。三方電磁弁V3は、通常運転モードでは、水/冷媒熱交換器11とレシーバ12との間が連通して室外熱交換器13側が閉塞する。デフロスト運転モードでは、水/冷媒熱交換器11と室外熱交換器13との間が連通してレシーバ12側が閉塞する。
【0027】
レシーバ12は、三方電磁弁V3からの冷媒配管21aと室外熱交換器13からの冷媒配管21bとが逆止弁付の入口に接続されている。出口には分岐部21d側の冷媒配管21cが接続されている。
分岐部21dの一方側には膨張弁E1及び逆止弁V5が設けられ、分岐部21eを経由して室外熱交換器13が接続されている。
【0028】
室外熱交換器13は、外気が透過して内部を流動する冷媒と熱交換可能に構成されている。本実施形態では、通常運転モードでは室外熱交換器13が蒸発器として機能し、デフロスト運転モードでは通常運転モードと逆方向に流動して凝縮器として機能する。
また、室外熱交換器13の排出路は、通常運転モードでは二方電磁弁V1が設けられた冷媒配管21iであり、デフロスト運転モードではレシーバ12と連通する冷媒配管21fである。
【0029】
二方電磁弁V1は、冷媒配管21gにより分岐部21hを経由して圧縮機10と接続されている。
室外熱交換器13の下流となる二方電磁弁V1と分岐部21hとの間の冷媒配管21gには冷媒温度を検知する温度センサT2が設けられている。
【0030】
(温水系統)
温水系統P2は、冷媒系統P1の冷媒と熱交換するための上述のような水/冷媒熱交換器11と、室内ユニットU内のヒータ15と、ウォータポンプ17と、四方弁V4(温水用開閉部)と、が温水配管により接続されて、温水が循環する温水流路22が構成されている。
温水は、必ずしも水である必要はなく、本システムにおいて熱媒体として使用可能な液体であればよい。例えばクーラント等のエンジン冷却水などでもよい。
【0031】
室内ユニットU内のヒータ15は、車室内に導入される温風を生成するために室内ユニットU内に設けられ、内部を流動する気体と熱交換可能に配置されている。
ウォータポンプ17は、温水を温水系統P2内を循環させるように圧送できればよい。
四方弁V4は、エンジン冷却水系統P3との間に介在され、2本の連通流路を有している。四方弁は電動バルブからなり、図示しない駆動部により回動駆動可能に構成されている。この四方弁V4は制御部2の温水流路切替部2dにより回動することで2本の連通流路により連通される温水流路22の形態を切り替えることができる。
【0032】
具体的には、一方の連通流路がウォータポンプ17側の温水配管22aと水/冷媒熱交換器11側の温水配管22bとを連通し、他方の連通配管がエンジン冷却水系統P3の冷却水配管同士を連通する。また、四方弁V4が回動することで、一方の連通流路がウォータポンプ17側の温水配管22aとエンジン冷却水系統P3の冷却水配管23aの一端とを連通し、他方の連通流路が水/冷媒熱交換器11側の温水配管22bとエンジン冷却水系統P3の冷却水配管23bの他端とを連通する。
【0033】
(冷媒室内系統)
冷媒室内系統P4は、冷媒配管の分岐部21dと分岐部21hとの間に設けられており、冷媒用開閉部を設けて冷媒系統P1に連結されている。
本実施形態の冷媒系統P1と冷媒室内系統P4とに設けられた冷媒用開閉部は、膨張弁E1及び二方電磁弁V2からなる。この冷媒用開閉部は通常運転モードでは、膨張弁E1を開にするとともに二方電磁弁V2を閉にした状態とする。この状態では冷媒室内系統P4に冷媒が導入されない。
一方、デフロスト運転モードでは、膨張弁E1を閉にするとともに二方電磁弁V2を開にする。この状態では、分岐部21dと分岐部21eとの間等には冷媒が導入されず、冷媒室内系統P4に冷媒が導入されて流動する。
【0034】
この冷媒室内系統P4は、二方電磁弁V2と、膨張弁E2と、エバポレータ14と、を有して、分岐部21dから分岐部21hまでの冷媒配管により、冷媒流路21から連続した流路として設けられている。
エバポレータ14は、室内ユニットU内に設けられており、冷媒が蒸発して室内ユニットU内の熱を吸収することができる。
【0035】
(エンジン冷却水系統)
エンジン冷却水系統P3は、エンジン18及びラジエータ19に冷却水を循環するための流路であり、エンジン稼働時には常時冷却水が流動する構造となっている。
エンジン冷却水系統P3は、上述のように、四方弁V4を設けて温水系統P2と開閉可能に連結している。
【0036】
(モード切替部)
本実施形態のモード切替部2aは、冷媒系統P1と温水系統P2とエンジン冷却水系統P3と冷媒室内系統P4とを、通常運転モードとデフロスト運転モードとに択一的に切替可能に構成されている。
【0037】
モード切替部2aには、通常運転モードからデフロスト運転モードへ切り替える要否を判定するデフロスト入条件判定部2bと、通常運転モードから冷媒流路21及び温水流路22等の流路に切り替えるタイミングを判定する流路切替条件判定部2cと、が予め設定されている。
また、モード切替部2aは、エンジン冷却水の温度に基づいて温水用開閉部の四方弁V4を開く温水流路切替部2dと、四方弁V4の作動以後に冷媒用開閉部を構成する膨張弁E1及び二方電磁弁V2を動作させて開閉する冷媒流路切替部2eと、を有している。
【0038】
このモード切替部2aでは、冷媒用開閉部が閉状態、即ち、膨張弁E1を開にするとともに二方電磁弁V2を閉にし、さらに二方電磁弁V1を開にし、三方電磁弁V3を水/冷媒熱交換器11とレシーバ12との間を連通して室外熱交換器13側を閉にすることで、室外熱交換器13で吸熱されて水/冷媒熱交換器11で熱交換された熱をヒータ15で放熱する通常運転モードを構成できる。
一方、冷媒用開閉部が開状態、即ち、膨張弁E1を閉にするとともに二方電磁弁V2を開にした状態にし、さらに二方電磁弁V1を閉にし、三方電磁弁V3を水/冷媒熱交換器11と室外熱交換器13との間を連通してレシーバ12側を閉にすることで、エバポレータ14で吸熱された熱を室外熱交換器13で放熱するデフロスト運転モードを構成できる。
【0039】
次に、このような車両用空調システム1において、通常運転モードからデフロスト運転モードに切り替えて、デフロスト処理を行う方法について説明する。このデフロスト処理、本実施形態の車両用空調システムの制御プログラムを用いて行うことができる。
デフロスト処理方法では、
図3に示すように、ステップS1として、
図4に示すように、車両用空調システム1が通常運転モードで運転されている。
【0040】
通常運転モードでは、モード切替部2aの温水流路切替部2dにより、四方弁V4がエンジン冷却水系統P3と温水系統P2との間が連通することなく切断されている。
冷媒流路切替部2eでは、三方電磁弁V3は水/冷媒熱交換器11とレシーバ12との間が連通して室外熱交換器13側が閉塞し、膨張弁E1が開で、二方電磁弁V1が開の状態で、二方電磁弁V2が閉の状態となっている。
この通常運転モードでは、室外熱交換器13で吸熱されて水/冷媒熱交換器11で熱交換された熱を、ヒータ15で放熱することで、室内ユニットで温風を生成して車室内に導入している。
【0041】
外気温が低い状態で、通常運転モードで暖房を継続すると、吸熱と相俟って室外熱交換器13の表面の温度が過剰に低下する場合がある。
温度センサT2,T3等により室外熱交換器13において熱交換後の冷媒の温度と外気温度とが検出され、デフロスト入条件判定部2bに伝達される。デフロスト入条件判定部2bには、予めデフロスト処理の要否を判断する基準が記憶されており、ステップS2で温度センサT2,T3から伝達された各温度をその基準に基づいて判定する。
デフロスト処理要と判定された場合、ステップS3でエンジン18のスイッチをONにし、エンジン18及びラジエータ19のエンジン冷却水を循環させて昇温する。
【0042】
ステップS4では、温度センサT4によりエンジン冷却水の温度が継続して検知され、 モード切替部2aの流路切替条件判定部2cに伝達される。流路切替条件判定部2cには、予め温水流路切替部2dにより温水系統P2にエンジン冷却水系統P3を連通させる条件が設定されるとともに、冷媒流路切替部2eにより冷媒系統P1にエンジン冷却水系統P3を連通させる条件が設定されている。
流路切替条件判定部2cにおいて、エンジン冷却水の温度が温度センサT1により検出される温度より高く、ここでは温度センサT4により検出されるエンジン冷却水の温度が予め設定された温度の閾値T40以上に到達したことが判定された時点で、ステップS5に進む。
この冷却水の温度の閾値T40は、温水として水/冷媒熱交換器11で冷媒系統P1を流動する冷媒と熱交換したとき、冷媒の温度を低下させない温度であり、室内ユニットU内を昇温できる温度として設定されている。
【0043】
ステップS5では、温水流路切替部2dにより四方弁V4を回動駆動させ、四方弁V4からなる温水開閉部を開にする。これにより
図5に示すように、流路が切り替えられて温水系統P2にエンジン冷却水系統P3が連通し、昇温されたエンジン冷却水が温水系統P2及びエンジン冷却水系統P3を循環する。そのため室内ユニットU内がヒータ15により加熱される。
ステップS6では、温度センサT5により、室内ユニットU内の温度が継続して検知され、モード切替部2aの流路切替条件判定部2cに伝達される。流路切替条件判定部2cでは、室内ユニットU内が予め設定された温度の閾値T50以上に到達したらステップS7に進む。
この閾値T50は、冷媒室内系統P4により冷媒を室内ユニットU内のエバポレータ14に循環させたとき、室内ユニットUで生成される温風の温度を過剰に低下させない温度として設定されている。
【0044】
ステップS7では、冷媒流路切替部2eにより二方電磁弁V1を閉じ、二方電磁弁V2を開き、三方電磁弁V3をデフロスト側に連通させ、膨張弁E1を閉じることで、流路が切り替えられる。
これにより
図5に示すように、デフロスト運転モードに切替えられ、冷媒系統P1から冷媒室内系統P4に流動させてデフロスト処理が開始される。
【0045】
このように冷媒用開閉部の膨張弁E1、二方電磁弁V1、V2、三方電磁弁V3及び温水用開閉部の四方弁V4を切替えてデフロスト運転モードに切替えると、冷媒が室内ユニットUのエバポレータ14で吸熱し、この熱を室外熱交換器13において放熱することで、室外熱交換器13のデフロスト処理を行うことができる。
その後、着霜が除去された段階で、デフロスト運転モードから再び通常運転モードに切り替えて、暖房運転を継続して行うことができる。
【0046】
(作用、効果)
以上のような本実施形態の車両用空調システム1によれば、エンジン冷却水の温度に基づいて四方弁V4を開く温水流路切替部2dが設けられている。そのためエンジン冷却水温が上昇してから四方弁V4を開くことができ、昇温されたエンジン冷却水を温水系統P2に循環させて室内ユニットUのヒータ15に熱を供給できる。
【0047】
そして、四方弁V4の作動と同時又はそれ以後において、冷媒流路切替部2eにより冷媒系統P1の膨張弁E1、二方電磁弁V1,V2,三方電磁弁V3を動作させるので、動作時には室内ユニットUに既にエンジン冷却水からの熱が供給されている。そのため着霜した室外熱交換器13から室内ユニットU内のエバポレータ14に低温の冷媒が供給されても、室内ユニットUから車室内に吐出される温風の温度が過剰に低温することを確実に防止できる。
【0048】
しかも、室内ユニットU内のエンジン冷却水からの熱により、冷媒室内系統P4の冷媒に十分な熱量を供給して室外熱交換器13に供給できるので、デフロスト開始直後であっても、効率よくデフロストを実施できる。
従ってデフロスト開始直後にも室内ユニットUで温風を生成できるヒートポンプ式の車両用空調システム1を提供することができる。
【0049】
本実施形態の車両用空調システム1では、エンジン冷却水の温度が所定値以上のときに温水流路切替部2dが温水用開閉部の四方弁V4を開くように構成されている。そのためエンジン冷却水の温度に応じて四方弁V4を簡素な構成で容易に開閉することができる。
また、四方弁V4が電動バルブであり、流路切替条件判定部2cにエンジン冷却水の温度を含む予め適宜設定された流路切替条件を満たしたときに、温水流路切替部2dにより四方弁V4を開くようにしている。そのため流路切替条件を適切に調整することで、より適切に四方弁V4を作動させることができる。
また、室内ユニットUの温度が所定値以上のとき、冷媒流路切替部2eにより冷媒用開閉部の膨張弁E1や二方電磁弁V2等を開くようにしているので、デフロスト処理を開始したときに、室内ユニットUで過剰に低温の温風が生成されることを防止できる。
【0050】
<変形例>
以上、第1の実施形態について詳細に説明したが、具体的な態様は、上述のものに限定されることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を加えることは可能である。
例えば上記実施形態では、温水用開閉部の四方弁V4が温水流路切替部2dに制御されて駆動することで温水流路22を切り替えたが、温水用開閉部として温度に応じて連通位置及び閉塞位置を切り替えることが可能なサーモバルブを用いることも可能である。
【0051】
温水用開閉部としてサーモバルブを用いて
図1〜
図4に示す車両用空調システム1を構築しても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができ、例えばデフロスト開始直後にも室内ユニットUで温風を生成することが可能である。
特に、温水用開閉部を制御なしで、自動で開閉できるため、車両用空調システム1の構成を簡素化できる。
【0052】
また、上記実施形態と同様に、サーモバルブを制御部2と組み合わせることで、設定された基準に従い冷媒用開閉部の膨張弁E1及び二方電磁弁V2等を作動させることができる。これにより制御部2にてエンジン冷却水の温度に応じた適切な冷媒用開閉部の膨張弁E1及び二方電磁弁V2の作動が得られる。
【0053】
また、上述の各実施形態においては、上述した各種処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって上記各種処理が行われる。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0054】
上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。更に、車両用空調システム1は、1台のコンピュータで構成されていても良いし、通信可能に接続された複数のコンピュータで構成されていてもよい。
【0055】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。