【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高配向(002)窒化アルミニウム粒子は、多くのMEMSデバイスの適切な機能にとって重要である。良好な粒子組織を達成するためには、高真空堆積環境および高いウェハ温度を使用することが重要である。高いターゲットパワー(200mmウェハの場合5kWを超える)は、窒化アルミニウムの縮合の発熱エンタルピーに起因して高温をもたらす。理想的には、堆積された膜の応力状態は、ゼロに近い値でウェハ全体にわたって完全に均一である。これは、高歩留まりデバイス製造に適した均一なデバイス特性をもたらすであろう。しかし、この理想的な状態は、膜厚、イオン衝撃及び温度などの因子の変化のために、達成されない。一般的に、良好な組織を有する窒化アルミニウム結晶を形成するためには、400℃以上の比較的高いウェハ温度が必要であるが、これらの高温は、膜を引張り状態で形成させる。本質的に純粋な熱的である窒化アルミニウムの堆積は、堆積された膜の全体にわたって比較的均一な応力分布を有する。しかし、膜は、高引張応力状態で堆積される。この均一性は、堆積中のウェハ表面への穏やかで均一なプラズマ種の凝縮のために達成される、堆積中の非常に均一なウェハ温度による。しかし、ウェハが冷めて緩和するにつれて収縮により生じる膜のクラッキングは重大な問題である。膜のクラッキングのためにウェハの中央部で応力が低下する。
図1は、ウェハ全体にわたる半径方向位置の関数としての熱堆積された窒化アルミニウム膜の応力値を示す。膜の全体的な応力状態は非常に引っ張り性であることが分かる。また、膜全体にわたって、応力値には約100MPaの変動があることが分かる。
【0004】
直流(DC)バイアスを誘発させるために高周波(RF)電力をウェハに印加してDCマグネトロンスパッタリングによって窒化アルミニウム膜を堆積させた場合には、堆積された膜で異なる応力特性が観測される。
図2は、直流バイアスを誘発させるために印加されたRF電力を用いてDCマグネトロンスパッタリングを用いて堆積された窒化アルミニウム膜の半径方向位置の関数としての応力を示す。平均応力値は、
図1と比較して実質的に減少していることが分かる。
図2に示す応力プロファイルでは、平均応力は約50MPaであり、最大応力値は約250MPaである。
図2における応力プロファイルは、
図1における応力プロファイルよりも均一性がかなり低く、
図2ではほぼ500MPaの変動が観察される。したがって、ウェハ全体にわたる応力の変動は、膜の平均応力のほぼ10倍です。これらの結果は容易に説明できる。印加されたRF電力は、DCバイアスおよび関連する電場をウェハ表面に誘導する。これはプラズマからウェハ表面へのイオン衝撃を増加させる。イオン衝撃は、堆積膜を圧縮して、より高い圧縮応力の状態を生じる。低い引張応力を有する窒化アルミニウム膜は、多くのMEMデバイスでの使用に望ましいことがある。多くの用途では、−50〜+50MPaの範囲の応力値が望ましいが、膜全体にわたる高度の応力不均一性は望ましくない。応力の不均一性は、ウェハ上に均一な堆積厚さを達成するように構成されたスパッタリングシステムにおけるマグネトロンの典型的な設計に起因する。これにより、ターゲットの中央部よりもターゲット端部のターゲットがより多く侵食される。これにより、ターゲットの中央部に関連する「マイナー(minor)」なエロージョンゾーンと、ターゲットの端部に関連する「主(major)」エロージョンゾーンがもたらされる。この構成は均一な膜厚を保つのに理想的であるが、本願発明者らは、これは平均応力を制御するために印加されたRF電力を用いる場合に問題があることを見出した。ターゲットの端部における主要なエロージョンゾーンの位置は、中央部と比較してターゲットの縁部ではるかに高いイオン化度をもたらす。ウェハ表面における電場は、中央部と比較して縁部ではるかに多い量のイオン衝撃を発生し、これにより、より高引っ張り性の中央部とより高圧縮性の縁部が膜に生じる。所定の目標サイズに対して、ウェハサイズが大きいほど、主要なエロージョンゾーンの影響が大きいために、ウェハの中央部と縁部における応力の差がより大きくなる。
【0005】
本質的には強引張り性でないが、DCバイアスでマグネトロンスパッタリングを使用する従来技術の方法と比較して、
図2に示した結果を生じさせるために使用される方法のような、ウェハ全体にわたる応力の変動が低減された窒化アルミニウム膜を堆積させる方法を提供することが非常に望ましい。
【0006】
本発明は、その実施形態の少なくともいくつかにおいて、これらの問題および必要性に対処する。本発明は窒化アルミニウム膜の堆積に特に適用可能であるが、他の材料の堆積にも適用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、基板上に膜を堆積させるためのDCマグネトロンスパッタリング装置であって、
チャンバ;
チャンバ内に配置された基板支持体;
DCマグネトロン;及び
使用時に、基板支持体上に配置された基板にイオンを衝突させる電気バイアス信号を供給するための電気信号供給装置;
を備え、
基板支持体は、縁領域によって囲まれた中央領域を含み、中央領域は縁領域に対して隆起している、DCマグネトロンスパッタリング装置が提供される。
【0008】
使用時には、基板の一部が縁領域を覆うように平坦な基板を基板支持体の中央領域上に配置してもよい。縁領域の上に重なる基板の部分は、縁領域から離間される。驚くべきことに、この配置は、堆積膜にわたる応力均一性の実質的な改善をもたらすことができることが見出された。さらなる利点は、堆積膜の平均応力を比較的低くできることである。これは、堆積膜を、例えばMEMなどの多くの有用な用途に適したものにする。
【0009】
基板支持体は、縁領域から中央領域に至る段差を含むことができる。段差は、0.1〜1.0mmの範囲内の高さを有することができる。好ましくは、段差は0.2〜0.5mmの範囲内の高さを有する。
【0010】
中央領域は、実質的に平坦なプラトー領域を画定することができる。
電気信号供給装置は、RFバイアス信号を供給することができる。
電気バイアス信号は、イオンを基板に衝突させるDCバイアスを誘発させることができる。
典型的には、電気バイアス信号が基板支持体に供給される。
【0011】
DCマグネトロンは、パルスDCマグネトロンであることができる。あるいは、DCマグネトロンは、非パルスDCマグネトロンであることができる。
一般的に、DCマグネトロンはターゲットを含む。ターゲットは、膜形成プロセスの一部としてターゲットからスパッタされ得る適切な材料から作られる。
【0012】
DCマグネトロンは、平衡型マグネトロンまたは非平衡型マグネトロンであってもよい。
この装置は、成膜中に基板を回転させるための回転装置を備えていてもよい。回転装置は、基板支持体の一部を成すことができる。回転装置は、基板支持体内に配置されたパックであることができる。
基板支持体はプラテンであることができる。
【0013】
中央領域および縁領域を含む本発明の基板支持体は、様々な方法で都合よく製造することができる。基板支持体を製造するためにミリングプロセスを使用することができる。これは、基板支持体が縁領域と中央領域との間に段差を含む場合に特に便利である。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、基板上に膜を堆積させる方法であって、
チャンバ内の基板支持体上に基板を配置する工程;及び
電気バイアス信号によってイオンを基板に衝突させるDCマグネトロンスパッタリングプロセスを使用して基板上に膜を堆積させる工程、
を含み、
基板支持体は、縁領域によって囲まれた中央領域を含み、中央領域は縁領域に対して隆起しており、基板の一部が縁領域を覆い、かつ、縁領域から離間するように基板は中央領域上に配置される、基板上に膜を堆積させる方法が提供される。
【0015】
膜は、金属窒化物膜であることができる。膜は窒化アルミニウム膜であることができる。膜は、[002]配向窒化アルミニウム膜であることができる。
膜は、例えばAlScN膜などのバイメタル窒化物膜であることができる。
【0016】
しかし、原理的には、膜は、DCマグネトロンスパッタリングによって堆積され得る任意の膜であり得る。本発明は、許容差が厳しく、応力均一性に対する厳しい制御が要求される膜の堆積に特に適する。膜は、反応性スパッタリングによって堆積させることができる。
電気バイアス信号は、DCバイアスを生成することができる。
電気バイアス信号は、RFバイアス信号であることができる。
【0017】
典型的には、基板は縁領域を越えて延在する。一般的に、基板支持体は関連する直径を有し、基板は関連する直径を有する。これらの実施形態では、基板の直径は、典型的には基板支持体の直径より大きい。
【0018】
基板は、膜の堆積中に回転させることができる。これにより、膜全体にわたる膜応力の均一性をさらに改善できることが分かった。
【0019】
膜は薄膜であってもよい。堆積が完了した後、膜は100ミクロン以下の厚さを有することができる。しかしながら、本発明は、任意の所望の厚さの膜を堆積させるために使用することができる。
【0020】
DCマグネトロンスパッタリングプロセスは、1〜20ミリトル(mTorr)の範囲内のチャンバ圧力で実施することができる。
【0021】
DCマグネトロンスパッタリングプロセスの間、基板支持体は100〜400℃の範囲内の温度であり得る。
電気バイアス信号は、−20〜50Vの範囲内の電圧を有することができる。
典型的には、基板は、例えばウェハなどの平坦な基板である。
基板は、例えば半導体ウェハなどの半導体基板であることができる。基板はシリコン基板であることができる。
【0022】
本発明は上で説明したが、本発明は、上に示した特徴または以下の説明、図面又は特許請求の範囲に記載の特徴の任意の本発明の組み合わせに及ぶ。例えば、本発明の第1の態様に関連して説明した任意の特徴は、本発明の第2の態様と組み合わせて開示され、また、その逆も開示される。
【0023】
本発明による装置および方法の実施形態を添付の図面を参照して説明する。