特許第6948140号(P6948140)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスピーティーエス テクノロジーズ リミティドの特許一覧

<>
  • 特許6948140-DCマグネトロンスパッタリング 図000004
  • 特許6948140-DCマグネトロンスパッタリング 図000005
  • 特許6948140-DCマグネトロンスパッタリング 図000006
  • 特許6948140-DCマグネトロンスパッタリング 図000007
  • 特許6948140-DCマグネトロンスパッタリング 図000008
  • 特許6948140-DCマグネトロンスパッタリング 図000009
  • 特許6948140-DCマグネトロンスパッタリング 図000010
  • 特許6948140-DCマグネトロンスパッタリング 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948140
(24)【登録日】2021年9月22日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】DCマグネトロンスパッタリング
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/50 20060101AFI20210930BHJP
   C23C 14/35 20060101ALI20210930BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   C23C14/50 Z
   C23C14/35 B
   C23C14/06 A
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-76123(P2017-76123)
(22)【出願日】2017年4月6日
(65)【公開番号】特開2017-190526(P2017-190526A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2020年4月1日
(31)【優先権主張番号】1606115.2
(32)【優先日】2016年4月11日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512221197
【氏名又は名称】エスピーティーエス テクノロジーズ リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スコット ヘイモア
(72)【発明者】
【氏名】アミット ラストーギー
(72)【発明者】
【氏名】ロンダ ハインドマン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブ バージェス
(72)【発明者】
【氏名】イアン モンクリーフ
(72)【発明者】
【氏名】クリス ケンダル
【審査官】 山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0268479(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0211757(US,A1)
【文献】 特開昭61−009571(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0311046(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/50
C23C 14/35
C23C 14/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆積プロセスにより基板に膜を形成するDCマグネトロンスパッタリング装置であって、
その中にプロセス空間を定義するチャンバ;
前記チャンバ内に配置された基板支持体であり、100℃から400℃までの温度範囲内にある基板支持体
前記プロセス空間に露出するように前記基板支持体の最上面に配置され、その上に前記膜が堆積される基板
前記基板の上のチャンバ内に配置されたカソード、前記カソードに接続されたDC電源、前記カソードに隣接する磁石を備えるDCマグネトロンであり、前記カソードはバッキングプレートとターゲットを備え、前記ターゲットはチャンバのプロセス空間の中で前記バッキングプレートの第1の側面上に配置され、前記磁石は前記チャンバ外の前記バッキングプレートの前記ターゲットと反対側の第2の側面上に配置されたDCマグネトロン;及び
使用時に、前記基板支持体上に配置された前記基板にイオンを衝突させる電気バイアス信号を供給するための電気信号供給装置であり、前記基板支持体に動作可能に接続され、電気バイアス信号としてのRF電力を供給するRF電力源
を備え、
前記基板支持体は、縁領域によって囲まれた中央領域を含み、前記中央領域はプラトーを有し、前記縁領域は上向きの対向面を有し、前記中央領域の前記プラトーは前記縁領域の前記上向きの対向面に対して隆起し、前記基板支持体は、前記縁領域から前記中央領域までの0.1mmから1.0mmまでの範囲内の高さを有する段差を備え、前記プラトーの直径は60mmから114mmまでであり、前記中央領域の前記プラトーの直径と前記縁領域の直径の比は60/194から114/194までであり、
前記基板支持体上に配置された前記基板は、(a)前記基板支持体の前記中央領域の前記プラトーに接して配置された中央部分と、(b)前記基板支持体の前記縁領域の上向きの対向面の上に張り出す最外周縁部分を有し、前記基板の前記最外周縁部分と前記基板支持体の前記縁領域の上向きの対向面との間に直接接触はなく前記基板の前記最外周縁部分は前記基板支持体から完全に離間し、中央領域に近接した上向きの対向面の上で上向きの対向面と前記基板の最外周縁部分との間にダークスペースが形成される、DCマグネトロンスパッタリング装置。
【請求項2】
前記中央領域の前記プラトーが、前記基板が配置される前記基板支持体の実質的に平坦な最外面を規定する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記DCマグネトロンがパルスDCマグネトロンである、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
膜堆積中に前記基板を回転させるための回転装置を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記段差の高さは、0.2mmから0.5mmの範囲内である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
堆積プロセスにより膜を形成するパルスDCマグネトロンスパッタリング装置であって、
その中にプロセス空間を定義するチャンバ;
前記チャンバ内に配置された基板支持体であり、100℃から400℃までの温度範囲内にある基板支持体;
前記プロセス空間に露出するように前記基板支持体の最外面に配置され、その上に膜が堆積される基板;
基板の上の前記チャンバ内に配置されたカソードと、前記カソードに接続され前記カソードにパルスDC電力を供給するDC電源と、前記カソードに隣接する磁石を備えたパルスDCマグネトロンであり、前記カソードはバッキングプレートとターゲットを備え、前記ターゲットはチャンバのプロセス空間の中で前記バッキングプレートの第1の側面上に配置され、前記磁石は前記チャンバ外の前記バッキングプレートの前記ターゲットと反対側の第2の側面上に配置されたDCマグネトロン;及び
使用時に、前記基板支持体上に配置された前記基板にイオンを衝突させる電気バイアス信号を供給するための電気信号供給装置であり、前記基板支持体に動作可能に接続され、電気バイアス信号としてのRF電力を供給するRF電力源;
を備え、
前記基板支持体は、縁領域によって囲まれた中央領域を含み、前記中央領域はプラトーを有し、前記縁領域は上向きの対向面を有し、前記中央領域の前記プラトーは前記縁領域の前記上向きの対向面に対して隆起し、前記基板支持体は、前記縁領域から前記中央領域までの0.1mmから1.0mmまでの範囲内の高さを有する段差を備え、前記プラトーの直径は60mmから114mmまでであり、前記中央領域の前記プラトーの直径と前記縁領域の直径の比は60/194から114/194までであり、
前記基板支持体上に配置された前記基板は、(a)前記基板支持体の前記中央領域の前記プラトーに接して配置された中央部分と、(b)前記基板支持体の前記縁領域の上向きの対向面の上に張り出す最外周縁部分を有し、前記基板の前記最外周縁部分と前記基板支持体の前記縁領域の上向きの対向面との間に直接接触はなく前記基板の前記最外周縁部分は前記基板支持体から完全に離間し、中央領域に近接した上向きの対向面の上で上向きの対向面と前記基板の最外周縁部分との間にダークスペースが形成される、パルスDCマグネトロンスパッタリング装置。
【請求項7】
前記段差の高さは、0.2mmから0.5mmの範囲内である、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記基板は平坦な基板であり、前記プラトーの全幅にわたって前記基板支持体に接する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記基板は平坦な基板であり、前記プラトーの全幅にわたって前記基板支持体に接する、請求項6に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に膜を堆積させるためのDCマグネトロンスパッタリング装置に関する。本発明は、基板上に膜を堆積させる関連する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多くのMEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システムズ)デバイスは、デバイス制御のコンポーネントとして、圧電材料、例えば、窒化アルミニウム(AlN)や、バイメタル窒化物、例えば窒化アルミニウムスカンジウム(AlScN)などを利用している。多くのデバイスにおいて、堆積された圧電薄膜の応力状態は、デバイスの特性および有用性に対して直接的な影響を及ぼす。例えば膜およびカンチレバーなどのデバイスは、堆積された圧電薄膜の応力状態が非常に重要なデバイスの例である。中程度の圧縮応力を有する膜に適するデバイスがある一方で、中程度の引張応力を有する膜に適するデバイスがある。多くのデバイスは、応力が圧縮性であろうと引張り性であろうと、応力にわずかな変動しかないことを要求している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高配向(002)窒化アルミニウム粒子は、多くのMEMSデバイスの適切な機能にとって重要である。良好な粒子組織を達成するためには、高真空堆積環境および高いウェハ温度を使用することが重要である。高いターゲットパワー(200mmウェハの場合5kWを超える)は、窒化アルミニウムの縮合の発熱エンタルピーに起因して高温をもたらす。理想的には、堆積された膜の応力状態は、ゼロに近い値でウェハ全体にわたって完全に均一である。これは、高歩留まりデバイス製造に適した均一なデバイス特性をもたらすであろう。しかし、この理想的な状態は、膜厚、イオン衝撃及び温度などの因子の変化のために、達成されない。一般的に、良好な組織を有する窒化アルミニウム結晶を形成するためには、400℃以上の比較的高いウェハ温度が必要であるが、これらの高温は、膜を引張り状態で形成させる。本質的に純粋な熱的である窒化アルミニウムの堆積は、堆積された膜の全体にわたって比較的均一な応力分布を有する。しかし、膜は、高引張応力状態で堆積される。この均一性は、堆積中のウェハ表面への穏やかで均一なプラズマ種の凝縮のために達成される、堆積中の非常に均一なウェハ温度による。しかし、ウェハが冷めて緩和するにつれて収縮により生じる膜のクラッキングは重大な問題である。膜のクラッキングのためにウェハの中央部で応力が低下する。図1は、ウェハ全体にわたる半径方向位置の関数としての熱堆積された窒化アルミニウム膜の応力値を示す。膜の全体的な応力状態は非常に引っ張り性であることが分かる。また、膜全体にわたって、応力値には約100MPaの変動があることが分かる。
【0004】
直流(DC)バイアスを誘発させるために高周波(RF)電力をウェハに印加してDCマグネトロンスパッタリングによって窒化アルミニウム膜を堆積させた場合には、堆積された膜で異なる応力特性が観測される。図2は、直流バイアスを誘発させるために印加されたRF電力を用いてDCマグネトロンスパッタリングを用いて堆積された窒化アルミニウム膜の半径方向位置の関数としての応力を示す。平均応力値は、図1と比較して実質的に減少していることが分かる。図2に示す応力プロファイルでは、平均応力は約50MPaであり、最大応力値は約250MPaである。図2における応力プロファイルは、図1における応力プロファイルよりも均一性がかなり低く、図2ではほぼ500MPaの変動が観察される。したがって、ウェハ全体にわたる応力の変動は、膜の平均応力のほぼ10倍です。これらの結果は容易に説明できる。印加されたRF電力は、DCバイアスおよび関連する電場をウェハ表面に誘導する。これはプラズマからウェハ表面へのイオン衝撃を増加させる。イオン衝撃は、堆積膜を圧縮して、より高い圧縮応力の状態を生じる。低い引張応力を有する窒化アルミニウム膜は、多くのMEMデバイスでの使用に望ましいことがある。多くの用途では、−50〜+50MPaの範囲の応力値が望ましいが、膜全体にわたる高度の応力不均一性は望ましくない。応力の不均一性は、ウェハ上に均一な堆積厚さを達成するように構成されたスパッタリングシステムにおけるマグネトロンの典型的な設計に起因する。これにより、ターゲットの中央部よりもターゲット端部のターゲットがより多く侵食される。これにより、ターゲットの中央部に関連する「マイナー(minor)」なエロージョンゾーンと、ターゲットの端部に関連する「主(major)」エロージョンゾーンがもたらされる。この構成は均一な膜厚を保つのに理想的であるが、本願発明者らは、これは平均応力を制御するために印加されたRF電力を用いる場合に問題があることを見出した。ターゲットの端部における主要なエロージョンゾーンの位置は、中央部と比較してターゲットの縁部ではるかに高いイオン化度をもたらす。ウェハ表面における電場は、中央部と比較して縁部ではるかに多い量のイオン衝撃を発生し、これにより、より高引っ張り性の中央部とより高圧縮性の縁部が膜に生じる。所定の目標サイズに対して、ウェハサイズが大きいほど、主要なエロージョンゾーンの影響が大きいために、ウェハの中央部と縁部における応力の差がより大きくなる。
【0005】
本質的には強引張り性でないが、DCバイアスでマグネトロンスパッタリングを使用する従来技術の方法と比較して、図2に示した結果を生じさせるために使用される方法のような、ウェハ全体にわたる応力の変動が低減された窒化アルミニウム膜を堆積させる方法を提供することが非常に望ましい。
【0006】
本発明は、その実施形態の少なくともいくつかにおいて、これらの問題および必要性に対処する。本発明は窒化アルミニウム膜の堆積に特に適用可能であるが、他の材料の堆積にも適用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、基板上に膜を堆積させるためのDCマグネトロンスパッタリング装置であって、
チャンバ;
チャンバ内に配置された基板支持体;
DCマグネトロン;及び
使用時に、基板支持体上に配置された基板にイオンを衝突させる電気バイアス信号を供給するための電気信号供給装置;
を備え、
基板支持体は、縁領域によって囲まれた中央領域を含み、中央領域は縁領域に対して隆起している、DCマグネトロンスパッタリング装置が提供される。
【0008】
使用時には、基板の一部が縁領域を覆うように平坦な基板を基板支持体の中央領域上に配置してもよい。縁領域の上に重なる基板の部分は、縁領域から離間される。驚くべきことに、この配置は、堆積膜にわたる応力均一性の実質的な改善をもたらすことができることが見出された。さらなる利点は、堆積膜の平均応力を比較的低くできることである。これは、堆積膜を、例えばMEMなどの多くの有用な用途に適したものにする。
【0009】
基板支持体は、縁領域から中央領域に至る段差を含むことができる。段差は、0.1〜1.0mmの範囲内の高さを有することができる。好ましくは、段差は0.2〜0.5mmの範囲内の高さを有する。
【0010】
中央領域は、実質的に平坦なプラトー領域を画定することができる。
電気信号供給装置は、RFバイアス信号を供給することができる。
電気バイアス信号は、イオンを基板に衝突させるDCバイアスを誘発させることができる。
典型的には、電気バイアス信号が基板支持体に供給される。
【0011】
DCマグネトロンは、パルスDCマグネトロンであることができる。あるいは、DCマグネトロンは、非パルスDCマグネトロンであることができる。
一般的に、DCマグネトロンはターゲットを含む。ターゲットは、膜形成プロセスの一部としてターゲットからスパッタされ得る適切な材料から作られる。
【0012】
DCマグネトロンは、平衡型マグネトロンまたは非平衡型マグネトロンであってもよい。
この装置は、成膜中に基板を回転させるための回転装置を備えていてもよい。回転装置は、基板支持体の一部を成すことができる。回転装置は、基板支持体内に配置されたパックであることができる。
基板支持体はプラテンであることができる。
【0013】
中央領域および縁領域を含む本発明の基板支持体は、様々な方法で都合よく製造することができる。基板支持体を製造するためにミリングプロセスを使用することができる。これは、基板支持体が縁領域と中央領域との間に段差を含む場合に特に便利である。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、基板上に膜を堆積させる方法であって、
チャンバ内の基板支持体上に基板を配置する工程;及び
電気バイアス信号によってイオンを基板に衝突させるDCマグネトロンスパッタリングプロセスを使用して基板上に膜を堆積させる工程、
を含み、
基板支持体は、縁領域によって囲まれた中央領域を含み、中央領域は縁領域に対して隆起しており、基板の一部が縁領域を覆い、かつ、縁領域から離間するように基板は中央領域上に配置される、基板上に膜を堆積させる方法が提供される。
【0015】
膜は、金属窒化物膜であることができる。膜は窒化アルミニウム膜であることができる。膜は、[002]配向窒化アルミニウム膜であることができる。
膜は、例えばAlScN膜などのバイメタル窒化物膜であることができる。
【0016】
しかし、原理的には、膜は、DCマグネトロンスパッタリングによって堆積され得る任意の膜であり得る。本発明は、許容差が厳しく、応力均一性に対する厳しい制御が要求される膜の堆積に特に適する。膜は、反応性スパッタリングによって堆積させることができる。
電気バイアス信号は、DCバイアスを生成することができる。
電気バイアス信号は、RFバイアス信号であることができる。
【0017】
典型的には、基板は縁領域を越えて延在する。一般的に、基板支持体は関連する直径を有し、基板は関連する直径を有する。これらの実施形態では、基板の直径は、典型的には基板支持体の直径より大きい。
【0018】
基板は、膜の堆積中に回転させることができる。これにより、膜全体にわたる膜応力の均一性をさらに改善できることが分かった。
【0019】
膜は薄膜であってもよい。堆積が完了した後、膜は100ミクロン以下の厚さを有することができる。しかしながら、本発明は、任意の所望の厚さの膜を堆積させるために使用することができる。
【0020】
DCマグネトロンスパッタリングプロセスは、1〜20ミリトル(mTorr)の範囲内のチャンバ圧力で実施することができる。
【0021】
DCマグネトロンスパッタリングプロセスの間、基板支持体は100〜400℃の範囲内の温度であり得る。
電気バイアス信号は、−20〜50Vの範囲内の電圧を有することができる。
典型的には、基板は、例えばウェハなどの平坦な基板である。
基板は、例えば半導体ウェハなどの半導体基板であることができる。基板はシリコン基板であることができる。
【0022】
本発明は上で説明したが、本発明は、上に示した特徴または以下の説明、図面又は特許請求の範囲に記載の特徴の任意の本発明の組み合わせに及ぶ。例えば、本発明の第1の態様に関連して説明した任意の特徴は、本発明の第2の態様と組み合わせて開示され、また、その逆も開示される。
【0023】
本発明による装置および方法の実施形態を添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、熱マグネトロン堆積プロセスの場合のウェハの半径方向位置の関数としてのAlN膜の応力を示す。
図2図2は、RF電力がウェハに印加されるマグネトロン堆積プロセスの場合のウェハの半径方向位置の関数としてのAlN膜の応力を示す。
図3図3は、本発明の装置を示す。
図4図4は、本発明の基板支持体の側面図である。
図5図5は、2つの段差付き基板支持体を使用して得られたウェハの半径方向位置の関数としてのAlN膜の応力を示す。
図6図6は、ウェハの半径方向位置の関数としての非対称AlN膜の応力プロファイルを示す図である。
図7図7は、基板回転機構を有する段差付き基板支持体の切欠き斜視図である。
図8図8は、堆積中に回転されたウェハについてのウェハ位置の関数としてのAlN膜の応力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図3は、概して30で示す本発明の装置を示す。装置30は、チャンバ32を備え、チャンバ32は、DCマグネトロン装置34と、マグネトロン装置34によって材料がスパッタリングされるターゲット36と、所望の材料が上に堆積される基板(図示せず)を支持する基板支持体38とを含むチャンバ32を含む。図3に示した実施形態では、チャンバは円筒形であるが、原理的には他のチャンバ形状を用いてもよい。説明を簡単にするために、例えばガスの入口および出口などのマグネトロンスパッタリング装置の他の一般的な特徴は、図3に示されていない。
【0026】
DCマグネトロン装置34は、チャンバ32の蓋として機能するターゲットバッキングプレート34aを備える。ターゲット36は、ターゲットバッキングプレート34aに接合されている。回転可能な磁石34bは、ターゲットバッキングプレート34aの面およびターゲット36に近接して対向して配置される。パルスDC電力は、DC電源40からターゲット36に供給される。DC電源バイアスを基板支持体に供給するために、RF電源42から基板支持体38にRF電力が供給される。典型的には、基板支持体38は、通例の13.56MHzで駆動されるが、本発明はこれに限定されない。電源40,42の動作は、コントローラ44によって制御される。コントローラ44は、適切なグラフィカルユーザインタフェースを有するコンピュータであることができる。
【0027】
使用時には、負のDCバイアスを生成するように駆動される基板支持体38上にウェハが配置される。適切な混合ガスがチャンバ内に導入され、負の高いパルス直流電圧がターゲットバッキングプレート34a/ターゲット36に印加され、これによりターゲットバッキングプレート34a/ターゲット36はカソードとして機能する。これによって、高密度プラズマが生成する。ウェハは、磁石34bの回転経路により決まるカソードの主エロージョントラックの内側に位置する。いかなる特定の理論または推測によって限定されることも望まないが、典型的には、ターゲットの中央部に比べて縁部ではるかに高い程度のイオン化があり、ウェハにおけるDCバイアスは、ウェハの中央部と比べて縁部でより多くのイオン衝撃を発生させると考えられる。これは、ウェハ全体にわたり一般的に高度の応力不均一性を生じると考えられる。
【0028】
図4は、基板支持体38をより詳細に示す。基板支持体は、段差38cを介して隆起した中央領域38bと連通する縁領域38aを有する段差付きプラテンの形態にあることが分かる。縁領域38aおよび中央領域38bは、支持構造体38d上に支持されている。支持構造体38dは、当該技術分野でよく知られているように、プラテンを昇降させることができる。図4は、基板支持体38上に配置された基板ウェハ46も示す。平坦な基板ウェハ46は、中央領域38bと同一平面上にあり、そのため、図4に示すように縁部38aに対して高い位置にある。基板ウェハ46は、縁領域38aの上に張り出し、縁領域から離間している。いかなる特定の理論または推測によって限定されることも望まないが、基板支持体38の階段状プロファイルは2つの効果を有すると考えられる。第1に、RFカップリングはウェハ基板の縁部で減少し、ウェハの中央部に対するイオン衝撃を低減する。これは、堆積膜の縁部プロファイルをより引っ張り性にする。ウェハの中央部も引っ張り性であるので、ウェハ全体にわたる応力の変動は低減される。第2に、ウェハ基板の縁部において基板支持体とウェハ支持体との間に直接の接触はないため、基板支持体によるウェハの接触冷却を減少させると考えられる。ウェハ基板は、イオン衝撃によって、堆積中に加熱される。ウェハの中央部が基板支持体の中央領域38bと熱的に接触しているので、ウェハの中央領域は基板支持体によって冷却される。ウェハ基板の縁部は直接接触冷却を受けず、そのため、より高い温度を経験する。これによって、基板の縁部をより引っ張り、ウェハ全体にわたる応力の全体的な変動を低減するように作用する。
【0029】
従来の先行技術の基板支持体は平坦であり、ウェハは基板支持体の全領域にわたって接触していることが理解されよう。表1に、従来の平坦な先行技術のプラテンの寸法と、マーク1およびマーク2として示される本発明のプラテンの2つの実施形態の寸法を示す。表1において、Xは段の高さに対応し、Yは中央領域の直径に対応し、Zは縁領域の直径に対応する。これらの寸法は、直径200mmのウェハを支持するのに適する。典型的には、段の高さは1.0mm未満であるが、所望の基板サイズに応じ、しかも、ウェハの下の「ダークスペース」、すなわちプラズマがない状態を維持しながら堆積膜の所望の平均応力特性をもたらす、加熱及びRF条件の最適な組み合わせを生じさせるために、基板支持体の段の高さおよび他の寸法を適宜変更できることが理解されよう。実験は、マーク1およびマーク2の基板支持体を使用してウェハ上にAlN膜を堆積させることによって実施した。関連するプロセス条件を以下の表2に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
図5は、本発明のマーク1およびマーク2プラテンを用いて得られたウェハの半径方向位置の関数としての応力プロファイルを示す。曲線50はマーク1のプラテンを用いて得られた応力プロファイルを示し、曲線52はマーク2のプラテンを用いて得られた応力プロファイルを示す。両方の場合の平均応力は適度に引っ張り性であり、マーク2のプラテンは堆積されたAlN膜にわずかにより高い引張平均応力を生じさせることが分かる。膜の全体にわたる応力の変動は、マーク1のプラテンの場合は約140MPaであり、マーク2のプラテンの場合は約100MPaである。これと比較して、従来の平坦なプラテンを用いて堆積されたAlN膜は、約250MPaの膜の全体にわたる応力の変動を示した。
【0033】
堆積膜における応力の不均一性に影響を及ぼす別の因子は、ウェハの全体にわたる非半径方向成分の存在であることが観測された。場合によっては、ウェハ基板の一方の半分から他方の半分までに応力に大きな変動があることが分かった。図6は、ウェハの一方の半分から他方の半分まで非対称のプロファイルを示す応力プロファイル60を示す。特定の理論または推測によって制限されることも望まないが、非対称性は、チャンバ中のプラズマ電位の小さな変動に起因する可能性が高いと考えられる。ウェハ表面における電位の1〜2Vの変化は、100MPa程度の応力差につながる可能性がある。実際には、ハードウェアの小さな非対称性のためにこのオーダの電圧変動を避けることは困難である。この問題は、本発明の基板支持体を使用し、堆積プロセス中にウェハを回転させることによって克服することができる。回転は様々な方法で行うことができるが、プロセス中にウェハが360度回転することが好ましい。原理的には、堆積中にウェハを連続的に回転させることが可能であるが、1つの実際的解決策は、複数の工程で膜を堆積させ、堆積工程の間にウェハを回転させることである。これにより、ウェハ全体にわたって平均化効果が得られるが、厚さの均一性および応力の均一性が改善される。図7は、堆積ステップの間にウェハを持ち上げて回転させるプラテンの中央にパック72を有する段差付きプラテン70を示す。これは、堆積プロセスを通してウェハを回転させることができる便利な方法である。図8は、図7に示した基板支持体を使用して得られたウェハの半径方向位置の関数としての応力プロファイル80を示す。ウェハの全体にわたって比較的小さな応力の変動(約90MPa)で優れた、ほぼ完全に対称なプロファイルが達成されたことが分かる。
【0034】
本発明は、他の金属窒化物を含むある範囲の膜に適用することができる。本発明は、特に、許容差が厳しい堆積プロセス、特に、堆積膜の応力が非常に均一であることが要求される堆積プロセスに適用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8