(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。以下の実施形態は、細胞の核内に存在する標的部位(標的配列)と、前記標的配列と相補的な配列を有する核酸配列を含み蛍光色素により標識された核酸プローブ(以下、単にプローブという)とをハイブリダイズさせる前処理が施された試料を測定し、試料中の複数の細胞について細胞ごとに取得された蛍光画像の分析を行う装置に、本発明を適用したものである。
【0014】
本実施態様の一例は、Fluorescence In Situ Hybridization (FISH)法による染色体異常の分析を、例えばフローサイトメータ(例えば、イメージングフローサイトメータ)、蛍光顕微鏡等において行う。以下の実施形態では、一例として、核酸中の標的部位を22番染色体にあるBCR遺伝子および9番染色体にあるABL遺伝子とし、フローサイトメータを使用して、FISH法によって、慢性骨髄性白血病に見られる9番染色体と22番染色体との間における転座(BCR/ABL融合遺伝子、フィラデルフィア染色体とも呼ばれる:t(9;22)(q34.12;q11.23))を有する細胞を測定及び分析する態様を示す。蛍光画像分析装置において検出される染色体異常は、(FISH)法によって検出できる限り制限されない。染色体異常としては、転座、欠失、逆位、重複等を挙げることができる。具体的には、例えば、BCR/ABL融合遺伝子、ALK遺伝子等の遺伝子座に関連する染色体異常を挙げることができる。
【0015】
また、以下の実施形態では、測定対象となる細胞は、有核細胞である限り制限されない。例えば被験者から採取された検体中の有核細胞を挙げることができ、好ましくは血液検体中の有核細胞である。本明細書等において試料は、プローブとハイブリダイズした標的部位を含む検体由来の細胞を含む、測定に供される細胞浮遊液である。試料には複数の細胞が含まれる。複数の細胞とは、少なくとも10
2個以上、好ましくは10
3個以上、より好ましくは10
4個以上、さらに好ましくは10
5個以上、さらにより好ましくは10
6個以上である。
【0016】
本態様において、異常細胞とは染色体異常を有する細胞を意味する。異常細胞の例としては、がん細胞等の腫瘍細胞を挙げることができる。好ましくは、白血病等の造血器腫瘍細胞、肺癌等のがん細胞である。
【0017】
図1は、本実施形態の蛍光画像分析装置1の概略構成を示す。
図1に示す蛍光画像分析装置1は、測定装置100と、蛍光画像を画像処理するための画像処理装置200とを備えており、前処理装置300による前処理により調製された試料10を測定し、分析を行う。
【0018】
オペレータは、被検者から採取した血液検体に対してフィコール等の細胞分離用媒体を用いて遠心分離等を行って、測定対象細胞である有核細胞を回収する。有核細胞の回収にあたっては、遠心分離による有核細胞の回収に代えて溶血剤を用いて赤血球等を溶血させることにより有核細胞を残してもよい。前処理装置300は、遠心分離等により得られた有核細胞浮遊液と試薬とを混合させるための混合容器、有核細胞浮遊液と試薬を混合容器に分注するための分注ユニット、混合容器を加温するための加温部等を含む。前処理装置300は、被検者から採取した細胞内の標的部位を蛍光色素により標識する工程と、細胞の核を核染色用色素により染色する工程と、を含む前処理を行って試料10を調製する。具体的には、標的部位を蛍光色素により標識する工程では、前記標的配列と、前記標的配列と相補的な配列を有する核酸配列を含み蛍光色素により標識されたプローブとをハイブリダイズされる。
【0019】
FISH法は、1以上の蛍光色素を使用して染色体上の標的部位を検出する。好ましくはFISH法は、2以上の蛍光色素を使用して第1の染色体上の標的部位と第2の染色体上の標的部位を検出する(「染色体」を修飾する「第1」及び「第2」は染色体番号を意味しない、包括的な数の概念である)。例えば、BCR遺伝子座とハイブリダイズするプローブは、BCR遺伝子座の塩基配列に相補的な配列を有する核酸が、波長λ11の光が照射されることにより波長λ21の第1蛍光を生じる第1蛍光色素によって標識されたものである。このプローブを使うことで、BCR遺伝子座が、第1蛍光色素によって標識される。ABL遺伝子座とハイブリダイズするプローブは、ABL遺伝子座の塩基配列に相補的な配列を有する核酸が、波長λ12の光が照射されることにより波長λ22の第2蛍光を生じる第2蛍光色素によって標識されたものである。このプローブを使うことで、ABL遺伝子座が、第2蛍光色素によって標識される。核は、波長λ13の光が照射されることにより波長λ23の第3蛍光を生じる核染色用色素によって染色される。波長λ11、波長λ12及び波長λ13はいわゆる励起光である。
【0020】
より具体的には、前処理装置300は、脱水により細胞が収縮しないよう細胞を固定する処理、プローブを細胞内に導入できる大きさの穴を細胞に開ける膜透過処理、細胞に熱を加える熱変性処理、標的部位とプローブとをハイブリダイゼーションさせる処理、細胞から不要なプローブを除去する洗浄処理、および、核を染色する処理を含んでいる。
【0021】
測定装置100は、フローセル110と、光源120〜123と、集光レンズ130〜133と、ダイクロイックミラー140〜141と、集光レンズ150と、光学ユニット151と、集光レンズ152と、撮像部160と、を備えている。フローセル110の流路111には、試料10が流される。
【0022】
光源120〜123は、フローセル110を流れる試料10に光を照射する。光源120〜123は、例えば半導体レーザー光源により構成される。光源120〜123からは、それぞれ波長λ11〜λ14の光が出射される。
【0023】
集光レンズ130〜133は、光源120〜123から出射された波長λ11〜λ14の光をそれぞれ集光する。ダイクロイックミラー140は、波長λ11の光を透過させ、波長λ12の光を屈折させる。ダイクロイックミラー141は、波長λ11及びλ12の光を透過させ、波長λ13の光を屈折させる。こうして、波長λ11〜λ14の光が、フローセル110の流路111を流れる試料10に照射される。なお、測定装置100が備える半導体レーザー光源の数は1以上であれば制限されない。半導体レーザー光源の数は、例えば、1、2、3、4、5又は6の中から選択することができる。
【0024】
フローセル110を流れる試料10に波長λ11〜λ13の光が照射されると、細胞を染色している蛍光色素から蛍光が生じる。具体的には、波長λ11の光がBCR遺伝子座を標識する第1蛍光色素に照射されると、第1蛍光色素から波長λ21の第1蛍光が生じる。波長λ12の光がABL遺伝子座を標識する第2蛍光色素に照射されると、第2蛍光色素から波長λ22の第2蛍光が生じる。波長λ13の光が核を染色する核染色用色素に照射されると、核染色用色素から波長λ23の第3蛍光が生じる。フローセル110を流れる試料10に波長λ14の光が照射されると、この光は細胞を透過する。細胞を透過した波長λ14の透過光は、明視野画像の生成に用いられる。例えば、実施形態では、第1蛍光は緑色の光の波長帯域であり、第2蛍光は赤色の光の波長帯域であり、第3蛍光は青色の光の波長帯域である。
【0025】
集光レンズ150は、フローセル110の流路111を流れる試料10から生じた第1蛍光〜第3蛍光と、フローセル110の流路111を流れる試料10を透過した透過光とを集光する。光学ユニット151は、4枚のダイクロイックミラーが組み合わせられた構成を有する。光学ユニット151の4枚のダイクロイックミラーは、第1蛍光〜第3蛍光と透過光とを、互いに僅かに異なる角度で反射し、撮像部160の受光面上において分離させる。集光レンズ152は、第1蛍光〜第3蛍光と透過光とを集光する。
【0026】
撮像部160は、TDI(Time Delay Integration)カメラにより構成される。撮像部160は、第1蛍光〜第3蛍光と透過光とを撮像して第1蛍光〜第3蛍光にそれぞれ対応した蛍光画像と、透過光に対応した明視野画像とを、撮像信号として画像処理装置200に出力する。第1蛍光〜第3蛍光に対応する蛍光画像を、以下、それぞれ「第1画像」、「第2画像」、「第3画像」と称する。「第1画像」、「第2画像」及び「第3画像」は、輝点の重なりを分析するため同じ大きさであることが好ましい。「第1画像」、「第2画像」及び「第3画像」は、カラー画像であってもよいし、グレースケール画像であってもよい。
【0027】
図2(a)は、蛍光画像の例である。
図2(a)の第1画像において黒く点状に見える部分は、第1蛍光の輝点、すなわち第1蛍光色素で標識された標的部位を示す。第2画像において第1画像ほどではないが核を示す淡い灰色の中に濃い灰色の点が認められる。これは、第2蛍光の輝点、すなわち第2蛍光色素で標識された標的部位を示す。第3画像では、略円形の核の領域が黒く表されている。明視野画像では、実際の細胞の状態を観察できる。なお、
図2(a)の各画像は、前処理後の白血球をスライドガラス上に配置して顕微鏡で観察したものを例として示す画像であり、蛍光画像は生データ(ローデータ)では、蛍光強度が高いほど白く、蛍光強度が低いほど黒く撮像される。
図2(a)の第1〜第3画像は、撮像された生データの階調を反転させグレースケールで表したものである。上記のようにフローセル110を流れる試料10を撮像部160により撮像した場合は、細胞が互いに分離した状態で流路111を流れるため、蛍光画像および明視野画像は、細胞ごとに取得されることになる。
【0028】
図1に戻って、画像処理装置200は、ハードウェア構成として、処理部11と、記憶部12と、表示部13と、入力部14と、を備える。処理部11は、プロセッサ(CPU)により構成される。記憶部12は、処理部11の各種処理の作業領域に使用する読み出し及び書き込み可能メモリ(RAM)、コンピュータプログラム及びデータを記憶する読み出し専用メモリ(ROM)及びハードディスク等により構成される。処理部11及び記憶部12は、汎用コンピュータで構成することができる。ハードディスクは、コンピュータ内に含まれていてもよいし、コンピュータの外部装置として置かれてもよい。表示部13は、ディスプレイにより構成される。入力部14は、マウス、キーボード、タッチパネル装置等により構成される。処理部11は、バス15を介して記憶部12との間でデータを伝送し、インターフェース16を介して表示部13、入力部14、測定装置100との間でデータの入出力を行う。
【0029】
処理部11は、ROMやハードディスクに記憶されている各種コンピュータプログラムをRAMに読み出して実行することにより、測定装置100による試料10の測定により取得された細胞の蛍光画像の処理を行い、表示部13、入力部14などの動作を制御する。具体的に、処理部11は、標的部位を含む蛍光画像における複数の輝点を細胞ごとに抽出し、抽出した複数の輝点について、各輝点の画素値に応じてそれぞれの輝点の画素値を変更する。
【0030】
なお、本明細書における「画素値」とは、画像の各画素に割り当てられたディジタル値を指し、特に、カメラからの出力画像(いわゆる生画像)においては、撮像対象物体の輝度がディジタル信号に変換された値を指す。
【0031】
以下、試料10の撮像により取得された細胞の蛍光画像を画像処理するための処理手順を規定したコンピュータプログラムに基づき、処理部11により実行される蛍光画像の画像処理方法の一例について、
図3を参照して説明する。なお、当該コンピュータプログラムは、予め記憶部12に格納されているが、例えばCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体(図示せず)からインストールしてもよいし、例えば外部のサーバ(図示せず)からネットワーク(図示せず)を介してダウンロードしてインストールしてもよい。
【0032】
図3に示すように、処理部11は、画像取得ステップS1、輝点及び核領域の抽出ステップS2、輝点の強調ステップS3、画素値の調整ステップS4、画素値の変更ステップS5、画像合成ステップS6、画像表示ステップS7で各処理を行う。
【0033】
まず、処理部11はS1において、撮像部160により撮像された生データを階調反転、グレースケール表示された第1〜第3画像を取得する。処理部11は、取得した第1〜第3画像を記憶部12に記憶させる。
【0034】
次に、処理部11はS2において、第1画像における第1蛍光の輝点(第1輝点)、第2画像における第2蛍光の輝点(第2輝点)、及び、第3画像における核領域を抽出する。
【0035】
具体的に、
図2(b)〜(d)を用いて説明すると、
図2(b)の左端に示す第3画像、
図2(c)の左端に示す第1画像、及び、
図2(d)の左端に示す第2画像は、フローセル110を流れる1つの細胞から取得されたものである。
【0036】
図2(b)の左端に示すような第3画像が取得された場合、処理部11は、はじめに第3画像を構成する横(x方向)m個×縦(y方向)n個の各画素における画素値に基づいて、
図2(b)の中央に示すように画素値及び画素数のグラフを作成する。縦軸の画素数は、画素の個数を示している。なお、画像の画素数は、特に限定されるものではないが、例えば横51個×縦51個である。また、1画素あたりの空間分解能も特に限定されるものではない。そして、処理部11は、
図2(b)のグラフにおいて画素値の閾値を設定し、閾値よりも大きい画素値を有する画素が分布する範囲を、
図2(b)の右端において破線で示すように、核領域として抽出する。
【0037】
次に、
図2(c)の左端に示すような第1画像が取得された場合、処理部11は、第1画像を構成する横(x方向)m個×縦(y方向)n個の各画素における画素値に基づいて、
図2(c)の中央に示すように画素値及び画素数のグラフを作成する。そして、処理部11は、
図2(c)のグラフにおいて、例えば大津法に基づいて輝点とバックグランドとの境界として画素値の閾値を設定し、閾値よりも大きい画素値を有する画素が分布する範囲を、
図2(c)の右端において破線で示すように、第1輝点として抽出する。なお、第1画像から第1輝点を抽出する場合に、極端に小さい輝点、極端に大きい輝点を除外する。輝点の大きさは、第1画像における輝点の面積(輝点に含まれる画素の数)で表すことができる。また、核領域の位置と、第1画像から抽出した輝点の位置とを比較し、核領域に含まれない輝点を除外する。これにより、第1画像から第1輝点が抽出され、第1輝点の数、位置が導出される。
【0038】
次に、
図2(d)の左端に示すような第2画像が取得された場合、第1画像の場合と同様、処理部11は、第2画像を構成する横(x方向)m個×縦(y方向)n個の各画素における画素値に基づいて、
図2(d)の中央に示すように画素値及び画素数のグラフを作成する。そして、処理部11は、
図2(c)のグラフにおいて、画素値の閾値を設定し、閾値よりも大きい画素値を有する画素が分布する範囲を、
図2(d)の右端において破線で示すように、第2輝点として抽出する。なお、第2画像から第2輝点を抽出する場合に、極端に小さい輝点、極端に大きい輝点を除外する。輝点の大きさは、第2画像における輝点の面積(輝点に含まれる画素の数)で表すことができる。また、核領域の位置と、第2画像から抽出した輝点の位置とを比較し、核領域に含まれない輝点を除外する。これにより、第2画像から第2輝点が抽出され、第2輝点の数、位置が導出される。
【0039】
各画像における核領域及び各輝点の位置は、例えば各画像を構成する横(x方向)m個×縦(y方向)n個の画素について座標情報(x,y)を予め定め、核領域及び各輝点に含まれる複数の画素の座標情報に基づき計測できる。
【0040】
なお、処理部11は、
図2(b)〜(d)の中央に示すようなグラフを作成することなく、上記のような手順に沿って、演算により、第1画像、第2画像及び第3画像から、それぞれ第1輝点、第2輝点及び核領域を抽出してもよい。また、輝点の抽出は、正常とされる輝点の分布波形と判定対象の領域との整合の度合いを判定し、整合の度合いが高い場合に、判定対象の領域を輝点として抽出してもよい。処理部11は、第3画像から核領域を抽出することにより細胞を検出したが、明視野画像に基づいて細胞を検出してもよい。明視野画像に基づいて細胞が検出される場合、第3画像の取得を省略することもできる。本実施形態における輝点とは、蛍光画像に生じる小さな蛍光の点を意味している。より具体的には、輝点とは、輝点の中心点(最も画素値(蛍光強度)が高い画素の位置)を意味している。なお、輝点の抽出は、例えば輝点として指定された画素以外の画素の色階調をバックグラウンドと同じレベルに変換する等して行うことができる。
【0041】
図3に戻って、次に処理部11は、S3において、第1画像及び第2画像のそれぞれについて、抽出した複数の第1輝点及び第2輝点の画素値を、当該輝点以外の領域(バックグランド)よりも相対的に増加させることで、輝点の強調を行う。
【0042】
ここで、まず、細胞が異常細胞であるか否かの判定方法について説明する。
【0043】
図4(a)は、染色体異常を有していない正常細胞の輝点の配置例(陰性パターン)を例示し、
図4(b)〜(d)は異常細胞の輝点の配置例(陽性パターン)を例示している。なお、
図4(a)〜(d)のいずれにおいても、各画像には第3画像を重ね合わせた状態で表示している。
【0044】
図4(a)に示すように、BCR遺伝子座とABL遺伝子座の転座等の染色体に異常が生じていない場合、それぞれの遺伝子は1つの核内に1対ずつ、各対立遺伝子が独立して存在する。したがって、第1画像において、第1輝点は1つの核領域内に2つ存在する。また、第2画像において、第2輝点は1つの核領域内に2つ存在する。この場合、同じ大きさで撮像された第1画像と第2画像とを重ね合わせて合成すると、合成画像においては、2つの第1輝点と2つの第2輝点とが、1つの核領域内に重ならずに存在することになる。そのため、
図4(a)に示すように核領域内に第1輝点及び第2輝点が2つずつ存在する細胞は、染色体異常が認められない、すなわち染色体異常が陰性の正常細胞であると判定する。
【0045】
一方で、
図4(b)に示すように、転座によりABL遺伝子座の一部が9番染色体に移動している場合、第1画像において、第1輝点は核内に2点存在し、第2画像において、第2輝点は核内に3点存在する。この場合に、第1画像と第2画像とを合成すると、合成画像においては、1つの第1輝点と、2つの第2輝点と、第1輝点及び第2輝点が互いに重なった1つの第4蛍光(本実施形態では黄色)の輝点(融合輝点)とが、1つの核内に存在することになる。そのため、
図4(b)に示すように各輝点が存在する細胞は、BCR遺伝子とABL遺伝子について転座が生じている、すなわち染色体異常が陽性の異常細胞であると判定する。
【0046】
また、
図4(c)に示すように、転座によりBCR遺伝子座の一部が22番染色体に移動し、ABL遺伝子の一部が9番染色体に移動している場合、第1画像において、第1輝点は核内に3点存在し、第2画像において、第2輝点は核内に3点存在する。この場合に、第1画像と第2画像とを合成すると、合成画像においては、1つの第1輝点と、1つの第2輝点と、第1輝点及び第2輝点が互いに重なった2つの融合輝点とが、1つの核内に存在することになる。そのため、
図4(c)に示すように各輝点が存在する細胞は、BCR遺伝子座とABL遺伝子座について転座が生じている、すなわち染色体異常が陽性の異常細胞であると判定する。
【0047】
また、
図4(d)に示すように、転座によりABL遺伝子が座9番染色体に移動している場合、第1画像において、第1輝点は核内に2点存在し、第2画像において、第2輝点は核内に2点存在する。この場合に、第1画像と第2画像を合成すると、合成画像において、1つの第1輝点と、1つの第2輝点と、第1輝点及び第2輝点が互いに重なった1つの融合輝点とが、1つの核内に存在することになる。そのため、
図4(d)に示すように各輝点が存在する細胞は、BCR遺伝子座とABL遺伝子座について転座が生じている、すなわち染色体異常が陽性の異常細胞であると判定する。
【0048】
このように、第1画像及び第2画像を合成した合成画像における各輝点の位置、数に基づき、細胞ごとに染色体異常を有する異常細胞であるかどうかを判定することができる。なお、第1輝点、第2輝点及び融合輝点は、各画像やその合成画像において、色の情報で示すことで、オペレータ等が表示部13を視認して第1輝点、第2輝点及び融合輝点を認識しやすくすることができる。つまり、各画像をグレースケールで表示することに代えて、第1画像では各画素の色をその画素値に基づき第1蛍光の緑色の色階調(RGB値)で表示することで、緑色(第1蛍光)で光る領域を第1輝点と認識できる。また、第2画像では各画素の色をその画素値に基づき第2蛍光の赤色の色階調(RGB値)で表示することで、赤色(第2蛍光)で光る領域を第2輝点と認識できる。さらに、第1画像及び第2画像を重ねた合成画像では、緑色(第1蛍光)の第1輝点と赤色(第2蛍光)の第2輝点とが重なる融合輝点が存在すると、融合輝点の各画素のRGB値の組み合わせに基づき、黄色(第4蛍光)で光る領域を融合輝点と認識できる。よって、細胞が異常細胞であると、核領域に、緑色(第1蛍光)の第1輝点と、赤色(第2蛍光)の第2輝点と、黄色(第4蛍光)の融合輝点とが存在する。
【0049】
ここで、第1画像及び第2画像から抽出される各輝点は、
図5(a)及び
図6(a)に示すように、明るい輝点、暗い輝点が含まれる。例えば、
図5(a)では、第1画像に3つの第1輝点2A〜2Cが存在しているが、2つの第1輝点2A,2Bは明るく表示されている一方、1つの第1輝点2Cは暗く表示されている。一方、
図6(a)では、第2画像に3つの第2輝点3A〜3Cが存在しているが、1つの第2輝点3Aは明るく表示されている一方、2つの第2輝点3B,3Cは暗く表示されている。なお、輝点の明暗は、ここでは輝点の大きさ(面積)で表している。
図5(a)及び
図6(a)に示すように、暗い輝点2B〜2C,3Cは、各画像においてバックグランド2D,3Dとの明暗の差が小さいため、オペレータ等が視認し難く、暗い輝点2B〜2C,3Cを認識できずに見落としやすい。そのため、処理部11は、輝点の強調処理により、第1画像及び第2画像における微弱な蛍光の暗い輝点2B〜2C,3Cを明瞭にし、各画像において暗い輝点を認識しやすくしている。
【0050】
輝点の強調処理では、例えば、
図5(b)及び
図6(b)に示すように、第1画像及び第2画像のバックグランド2D,3Dに位置する各画素の画素値を所定の画素値に減少させることで、第1輝点2A〜2C及び第2輝点3A〜3Cの画素値をバックグランド2D,3Dの画素値よりも相対的に増加させることができる。また、第1画像及び第2画像の第1輝点2A〜2C及び第2輝点3A〜3Cに位置する各画素の画素値を所定の係数で乗算等して増加させることで、第1輝点2A〜2C及び第2輝点3A〜3Cの画素値をバックグランド2D,3Dの画素値よりも相対的に増加させることができる。さらには、第1画像及び第2画像の各画素の画素値を、第1画像及び第2画像の第1輝点2A〜2C及び第2輝点3A〜3Cに位置する各画素ほど大きな係数で乗算等して増加させる、あるいは、バックグランド2D,3Dに位置する各画素ほど小さな係数で乗算等して減少させることで、第1輝点2A〜2C及び第2輝点3A〜3Cの画素値をバックグランド2D,3Dの画素値よりも相対的に増加させることができる。
【0051】
処理部11は、輝点の強調処理後の第1輝点及び第2輝点が強調された第1画像及び第2画像を記憶部12に記憶させる。
【0052】
図3に戻って、次に処理部11は、S4において、第1画像及び第2画像の一方の蛍光画像から抽出した輝点の画素値に基づいて、他方の蛍光画像から抽出した輝点の画素値を調整する。具体的には、第1画像の第1輝点の画素値と、第2画像の第2輝点の画素値とに差がある場合に、両輝点の画素値の最高値を一致させる。例えば、画素値の最高値が低い一方の画像の輝点に位置する各画素の画素値を所定の係数で乗算等して増加させることで、両輝点の画素値の最高値を一致させることができる。また、画素値の最高値が低い画像の輝点に位置する各画素の画素値を所定の第1係数で乗算等して増加させるとともに、画素値の最高値が高い画像の輝点に位置する各画素の画素値を第1係数より小さい所定の第2係数で乗算等して増加させることで、両輝点の画素値の最高値を一致させることができる。
【0053】
第1画像及び第2画像を合成したときに、緑色(第1蛍光)の第1輝点と赤色(第2蛍光)の第2輝点とが重合する融合輝点において、一方の輝点の画素値と他方の輝点の画素値とに大きな差があると、融合輝点が黄色(第4蛍光)で表示されないおそれがある。例えば、緑色(第1蛍光)の第1輝点の画素値が赤色(第2蛍光)の第2輝点の画素値よりも大幅に大きいと、融合輝点が緑色(第1蛍光)に近い色となって黄色(第4蛍光)には見え難くなる。これでは、オペレータ等が融合輝点を視認しても、融合輝点として認識せずに第1輝点と誤認してしまう。そのため、処理部11は、画素値の調整処理により、第1画像の第1輝点の画素値及び第2画像の第2輝点の画素値を同レベルに補正し、緑色(第1蛍光)の第1輝点と赤色(第2蛍光)の第2輝点とが重合した融合輝点が黄色(第4蛍光)で表示されるようにして、融合輝点を認識しやすくしている。
【0054】
処理部11は、画素値の調整処理後の第1輝点及び第2輝点の画素値が調整された第1画像及び第2画像を記憶部12に記憶させる。
【0055】
図3に戻って、次に処理部11は、S5において、第1画像及び第2画像のそれぞれについて、抽出した複数の第1輝点及び第2輝点の画素値を、各輝点の画素値に応じて変更する。
【0056】
図5(a)及び
図6(a)に示すように、第1画像及び第2画像から抽出される各輝点2A〜2C,3A〜3Cのうち、暗い輝点2B〜2C,3Cは、各画像において観察者が視認し難く、見落としやすい。例え輝点の強調処理後の各画像においても、
図5(b)及び
図6(b)に示すように、暗い輝点2B〜2C,3Cは明るい輝点2A〜2B,3A〜3Bよりも観察者が視認し難い。そのうえ、暗い輝点2B〜2C,3Cと明るい輝点2A,3A〜3Bとの間で画素値の差が大きいと、第1画像及び第2画像を合成したときに、例えば第2画像の暗い赤色(第2蛍光)の輝点3Bが第1画像の明るい緑色(第1蛍光)の輝点2Bと重なり合って融合輝点となる場合に、
図7(a)に示すように、融合輝点4Bが明るい第1輝点の緑色(第1蛍光)に近い色となって黄色には見え難くなる。そのため、オペレータ等が融合輝点として認識せずに、他の輝点と誤認しやすい。
【0057】
よって、処理部11は、画素値の変更処理により、第1画像及び第2画像のそれぞれについて、画素値が異なる複数の輝点を、それぞれ異なる変更率で輝点の画素値を変更する。変更率は、増加率及び減少率を含む。例えば、
図5(c)及び
図6(c)に示すように、画素値の小さい画素ほど増加率を大きくして画素値を増加させる。これにより、画素値の小さい暗い輝点2C,3B〜3Cについて、画素値の大きい明るい輝点2A〜2B,3A〜3Bよりも、その画素値を増加させて明るくして、暗い輝点2C,3B〜3Cを認識しやすくしている。また、
図8は、第1画像、第2画像及び第3画像を合成した合成画像であるが、第1画像及び第2画像の輝点2A〜2C,3A〜3Cを第3画像の核領域5に重ねた場合にも、
図8(a)及び
図8(b)の比較から分かるように、画素値の小さい暗い輝点2C,3B〜3Cを背景の核領域5に紛れることなく認識しやすくしている。そのうえ、処理部11は、画素値の大きい明るい輝点2A〜2B,3Aとの画素値の差を小さくして、第1画像及び第2画像を合成したときに、
図7(b)及び
図8(b)と
図7(a)及び
図8(a)との比較から分かるように、緑色(第1蛍光)の第1輝点2Bと赤色(第2蛍光)の第2輝点3Bとが重合した融合輝点4Bがより黄色(第4蛍光)に近い色で表示されるようにして、融合輝点4Bを認識しやすくしている。
【0058】
画素値の変更処理は、所定の規則、つまりは、各画像における各輝点に含まれた画素の画素値を、画素値の小さい画素ほど増加率を大きくして増加させるとの規則に従っていれば、いかなる方法で画素値を変更してもよく、画素値の変更方法は特に限定されない。なお、画素値の変更処理においては、各輝点に含まれた画素ごとの画素値の大小関係を維持したままで、画素値の小さい画素ほど増加率を大きくして画素値を増加させることが好ましい。また、各輝点に含まれた画素値の変更対象の画素の中で、最高画素値を有する画素については、画素値を増加させずに維持することが好ましい。これにより、変更処理の後の各画像においても、元々の輝点間での明るさの強弱を再現できる。
【0059】
画素値の変更処理としては、例えば
図9(a)に示すように、変更対象の画像に含まれる各画素について、変更前画素値xを、以下の数式1により、変更後画素値yに変更することができる。なお、以下の数式1及び
図9(a)では、変更前画素値x及び変更後画素値yともに、その最高画素値は変更前の画素の最高画素値Mであり、この最高画素値Mで画素値の範囲0〜Mを0〜1に規格化して表している。数式1及び
図9(a)によると、変更前画素値xが閾値Thよりも小さい画素については、変更後画素値yが変更前画素値xと同じになり、画素値が変更されずに維持される。一方で、変更前画素値xが閾値Thよりも大きい画素については、所定の関数式により、画素値の大小関係が維持されたままで、画素値の小さい画素ほど大きい増加率で画素値が増加される。閾値Thを各輝点に含まれる画素の画素値の最低画素値に設定することで、各輝点の画素値だけを、その画素値に応じて変更することができる。
【0060】
[数1]
y=x
γ 但しx≧Th,γ<1
y=x 但しx<Th
【0061】
また、画素値の変更処理としては、その他に、
図9(b)に示すように、変更対象の画像に含まれる各画素について、変更前画素値xを、以下の数式2により、変更後画素値yに変更することができる。なお、以下の数式2及び
図9(b)においても、変更前画素値x及び変更後画素値yともに、その最高画素値は変更前の画素の最高画素値Mであり、この最高画素値Mで画素値の範囲0〜Mを0〜1に規格化して表している。数式2及び
図9(b)によっても、変更前画素値xが閾値Thよりも小さい画素については、変更後画素値yが変更前画素値xと同じになり、画素値が変更されずに維持される。一方で、変更前画素値xが閾値Thよりも大きい画素については、所定の関数式により、画素値の大小関係が維持されたままで、画素値の小さい画素ほど大きい増加率で画素値が増加される。閾値Thを各輝点に含まれる画素の画素値の最低画素値に設定することで、各輝点の画素値だけを、その画素値に応じて変更することができる。
【0062】
[数2]
y=(1−b)x+b 但しx≧Th
y=x 但しx<Th
【0063】
なお、画素値の変更処理は、関数式による計算処理に置き換えて、上述した規則に従った所定のルックアップテーブルを用いた参照処理により、画素値を変更することもできる。
【0064】
処理部11は、画素値の変更処理後の第1輝点及び第2輝点の画素値が変更された第1画像及び第2画像を記憶部12に記憶させる。
【0065】
図3に戻って、次に処理部11は、S6において、上述した輝点を抽出しかつ画像処理を行った第1画像及び第2画像、さらに、核領域を抽出した第3画像を合成する。処理部11は、画像合成により、第1画像及び第3画像の合成画像、第2画像及び第3画像の合成画像、第1画像及び第2画像の合成画像、第1画像、第2画像及び第3画像の合成画像など、複数種の合成画像を作成することができる。なお、上述した複数種の合成画像の全てを必ずしも作成する必要はない。処理部11は、作成した各合成画像を記憶部12に記憶させる。
【0066】
最後に処理部11は、S7において、上述した輝点を抽出しかつ画像処理を行った第1画像及び第2画像、核領域を抽出した第3画像、さらには、画像合成した各合成画像を表示部13に表示させる。なお、処理部11は、上述した画像の全てを必ずしも表示部13に表示する必要はなく、オペレータ等に選択された必要な画像だけを表示部13に表示させることができる。
【0067】
オペレータ等は、表示部13に表示された各画像を観察し、各画像における輝点の色、数に基づいて、細胞ごとに異常細胞であるか否かを確認する。
【0068】
本発明によれば、オペレータ等が表示部13に表示された細胞の蛍光画像を観察する際に、まず、輝点を抽出した第1画像及び第2画像において、輝点の強調処理により、各輝点内の各画素の画素値が輝点外のバックグランド内の各画素の画素値よりも相対的に増強されている。よって、各画像から低画素値の暗い輝点が抽出されたとしても、この暗い輝点をオペレータ等が目視で認識しやすくなる。また、第1画像及び第2画像において、画素値の変更処理により、低画素値の暗い輝点が、高画素値の明るい輝点との画素値の差が小さくなるよう増強されるので、暗い輝点をオペレータ等が目視でさらに認識しやすくなる。加えて、第1画像及び第2画像において、画素値の変更処理により、暗い輝点が明るい輝点との画素値の差が小さくなるよう増強されるので、第1画像及び第2画像の合成画像では、融合輝点が、第1輝点と第2輝点とがそれぞれ画素値の差が小さくなった状態で重ね合わされる。よって、融合輝点が第4蛍光の黄色あるいは黄色に近い色で表示されるので、オペレータ等が目視で融合輝点を検出しやすくなる。なお、第1画像の第1輝点と第2画像の第2輝点との間の画素値の調整処理により、第1画像及び第2画像の合成画像で融合輝点をより第4蛍光の黄色で表示することができるので、オペレータ等が目視で融合輝点をさらに検出しやすくなる。
【0069】
このように、本発明によれば、1枚の蛍光画像に、高画素値の明るい輝点、低画素値の暗い輝点が混在していても、画像観察における輝点の確認や、2枚の蛍光画像の合成画像の解析における融合輝点の検出を容易に行うことができる。よって、細胞ごとに正常細胞であるか異常細胞であるかの判定を容易にかつ高精度に行うことができる。
【0070】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である
【0071】
例えば、上述した本実施形態では、処理部11は、
図3のS5の画素値の変更処理において、各蛍光画像(第1画像及び第2画像)における各輝点の画素値を、画素値の小さい画素ほど増加率を大きくして画素値を増加させている。これにより、各蛍光画像における暗い輝点と明るい輝点との画素値の差を小さくしている。しかし、画素値の変更処理の方法はこれに限られるものではなく、例えば、各蛍光画像における各輝点の画素値を、画素値の大きい画素ほど減少率を大きくして画素値を減少させることで、各蛍光画像における暗い輝点と明るい輝点との画素値の差を小さくしてもよい。
【0072】
また、上述した本実施形態では、処理部11は、撮像部160により撮像された各蛍光画像(第1画像及び第2画像)について、画像処理後の蛍光画像を表示部13に表示している。しかし、画像処理後の蛍光画像及び画像処理前の蛍光画像のうち、入力部14により選択されたいずれかの蛍光画像を表示部13に表示してもよい。つまり、処理部11による画像処理前の第1画像、第2画像、第3画像、及び、これらのうちの少なくとも2つを組み合わせた合成画像を表示部13に表示してもよい。
【0073】
また、上述した本実施形態では、処理部11は、
図3の蛍光画像を画像処理するための処理手順において、S4で複数の蛍光画像の間で輝点の画素値の調整処理を行った後、S5で各蛍光画像の複数の輝点の画素値の変更処理を行っているが、このS4の画素値の調整処理を、S5の画素値の変更処理の後に行ってもよい。また、処理部11は、S4の画素値の調整処理を必ずしも行う必要はなく、省略してもよい。
【0074】
また、処理部11は、
図3の蛍光画像を画像処理するための処理手順において、S2で蛍光画像から輝点の抽出処理を行った後、S3で蛍光画像における輝点の強調処理を行っているが、このS3の輝点の強調処理を、S4の画素値の調整処理の後、もしくは、S5の画素値の変更処理の後に行ってもよい。また、処理部11は、S3の輝点の強調処理を必ずしも行う必要はなく、省略してもよい。
【0075】
また、上述した本実施形態の蛍光画像分析装置1において、
図1に示す測定装置100を、
図10に示す蛍光顕微鏡を含む測定装置400に代えてもよい。
【0076】
図10に示す測定装置400は、光源410〜412と、ミラー420と、ダイクロイックミラー421〜422と、シャッター430と、1/4波長板431と、ビームエキスパンダ432と、集光レンズ433と、ダイクロイックミラー434と、対物レンズ435と、ステージ440と、集光レンズ450と、撮像部451と、コントローラ460〜461と、を備えている。ステージ440には、スライドガラス441が設置される。スライドガラス441には、前処理装置300で前処理により調製された試料10(
図1に示す)が載せられる。
【0077】
光源410〜412は、それぞれ、
図1に示す光源120〜122と同様である。ミラー420は、光源410からの光を反射する。ダイクロイックミラー421は、光源410からの光を透過し、光源411からの光を反射する。ダイクロイックミラー422は、光源410〜411からの光を透過し、光源412からの光を反射する。光源410〜412からの光の光軸は、ミラー420とダイクロイックミラー421〜422により、互いに一致させられる。
【0078】
シャッター430は、コントローラ460により駆動され、光源410〜412から出射された光を通過させる状態と、光源410〜412から出射された光を遮断する状態とに切り替える。これにより、試料10に対する光の照射時間が調整される。1/4波長板431は、光源410〜412から出射された直線偏光の光を円偏光に変換する。プローブに結合している蛍光色素は、所定の偏光方向の光に反応する。よって、光源410〜412から出射された励起用の光を円偏光に変換することにより、励起用の光の偏光方向が、蛍光色素が反応する偏光方向に一致し易くなる。これにより、蛍光色素に効率良く蛍光を励起させることができる。ビームエキスパンダ432は、スライドガラス441上における光の照射領域を広げる。集光レンズ433は、対物レンズ435からスライドガラス441に平行光が照射されるよう光を集光する。
【0079】
ダイクロイックミラー434は、光源410〜412から出射された光を反射し、試料10から生じた蛍光を透過する。対物レンズ435は、ダイクロイックミラー434で反射された光を、スライドガラス441に導く。ステージ440は、コントローラ461により駆動される。試料10から生じた蛍光は、対物レンズ435を通り、ダイクロイックミラー434を透過する。集光レンズ450は、ダイクロイックミラー434を透過した蛍光を集光して、撮像部451の撮像面452に導く。撮像部451は、撮像面452に照射された蛍光の像を撮像し、蛍光画像を生成する。撮像部451は、たとえばCCD等により構成される。
【0080】
コントローラ460〜461と撮像部451とは、
図1に示す処理部11と接続されており、処理部11は、コントローラ460〜461と撮像部451とを制御し、撮像部451により撮像された蛍光画像を受信する。なお、撮像部451により撮像される蛍光画像は、
図1に示すようにフローセル110が用いられる場合とは異なり、
図2(a)に示すように細胞が密接した状態となっている場合がある。このため、処理部11は、取得した蛍光画像を、細胞の核ごとに分割する処理、又は、蛍光画像において1つの細胞の核に対応する領域を設定する処理等を行う。
【0081】
この
図10に示す測定装置400においても、本実施形態と同様、3つの蛍光画像(第1画像〜第3画像)を取得できるため、各蛍光画像を画像処理して合成画像を生成することで、オペレータ等が細胞ごとに正常細胞であるか異常細胞であるかの判定を容易にかつ高精度に行うことができる。
【0082】
また、上述した本実施形態の蛍光画像分析装置1において、処理部11をインターフェース16を介して前処理装置300との間でデータの入出力可能に接続してもよい。
【0083】
また、上述した画像処理装置200の処理部11による蛍光画像を画像処理するための処理手順を規定したコンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供することができる。
【0084】
また、上述した本実施形態の蛍光画像分析装置1においては、BCR/ABL融合遺伝子を分析しているが、BCR/ABL融合遺伝子の他、FISH法によって融合輝点を検出できる染色体転座としては、AML1/ETO(MTG8)融合遺伝子(t(8;21))、PML/RARα融合遺伝子(t(15;17))、AML1(21q22)転座、MLL(11q23)転座、TEL(12p13)転座、TEL/AML1融合遺伝子(t(12;21))、IgH(14q32)転座、CCND1(BCL1)/IgH融合遺伝子(t(11;14))、BCL2(18q21)転座、IgH/MAF融合遺伝子(t(14;16))、IgH/BCL2融合遺伝子(t(14;18))、c−myc/IgH融合遺伝子(t(8;14))、FGFR3/IgH融合遺伝子(t(4;14))、BCL6(3q27)転座、c−myc(8q24)転座、MALT1(18q21)転座、API2/MALT1融合遺伝子(t(11;18)転座)、TCF3/PBX1融合遺伝子(t(1;19)転座)、EWSR1(22q12)転座、PDGFRβ(5q32)転座等を挙げることができる。
【0085】
また、他の実施形態の例として、ALK遺伝子座の染色体異常を挙げることができる。陽性パターンでは、ALK遺伝子が切断されているため、融合輝点が1個のみとなる(対立遺伝子の一方のみが切断された場合)か、融合輝点が認められなくなる(対立遺伝子の両方が切断された場合)。この陰性パターンと陽性パターンは、ALK遺伝子の他、ROS1遺伝子、RET遺伝子でも同じである。
【0086】
さらに、他の実施形態の例として、第5番染色体長腕(5q)が欠失する染色体異常を挙げることができる。例えば、第1蛍光標識プローブは第5番染色体長腕に結合し、第2蛍光標識プローブは第5番染色体のセントロメアと結合するように設計する。陰性パターンでは、第5番染色体のセントロメアの数と第5番染色体長腕の数は同じであるため、第1蛍光標識プローブの輝点(第1輝点)と第2蛍光標識プローブの輝点(第2輝点)は、相同染色体の数を反映し2個ずつ存在する。陽性パターンでは、第5番染色体の一方又は両方に長腕の欠失が起り、第1輝点の数が1個のみ又は0個となる。この陰性パターンと陽性パターンは、他の染色体の短腕又は長腕の欠失でも同じである。他の染色体の長腕欠失の例として、第7番染色体、及び第20番染色体の長腕欠失を挙げることができる。また、この他、同様の陽性パターン及び陰性パターンを示す例として、7q31(欠失)、p16 (9p21欠失解析)、IRF−1(5q31)欠失、D20S108(20q12)欠失、D13S319(13q14)欠失、4q12欠失、ATM(11q22.3)欠失、p53(17p13.1)欠失等を挙げることができる。
【0087】
さらにまた、他の実施形態の例として、第8番染色体トリソミーを挙げることができる。第1蛍光標識プローブは例えば第8番染色体のセントロメアと結合する。陽性パターンは第1輝点が3個となる。陰性パターンは、第1輝点が2個となる。このような輝点パターンは第12番染色体トリソミーでも同様である。さらに、第7番染色体モノソミーでは、例えば第7番染色体のセントロメアと結合する第1蛍光標識プローブを用いた場合、陽性パターンは第1輝点が1個となる。陰性パターンは、第1輝点が2個となる。