特許第6948186号(P6948186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6948186機器管理装置、機器管理システム、および機器管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948186
(24)【登録日】2021年9月22日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】機器管理装置、機器管理システム、および機器管理方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20210930BHJP
【FI】
   G05B23/02 T
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-160024(P2017-160024)
(22)【出願日】2017年8月23日
(65)【公開番号】特開2019-40283(P2019-40283A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】古澤 直樹
【審査官】 藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−185084(JP,A)
【文献】 特開2014−042137(JP,A)
【文献】 特開2007−327655(JP,A)
【文献】 特開2003−186529(JP,A)
【文献】 特開2016−042386(JP,A)
【文献】 特開2014−137794(JP,A)
【文献】 特開2014−238634(JP,A)
【文献】 特開2012−208694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィールド機器が接続されているモジュールの接続端子での所定の通信方式を用いた通信の可否を示す通信制限情報を記憶する記憶部と、
前記接続端子を介して前記フィールド機器と前記所定の通信方式を用いた通信を行う通信処理部と、
前記通信制限情報に基づいて、前記接続端子での前記所定の通信方式を用いた通信の可否に関する指示を前記通信処理部に対して行う通信指示部と、
を備え、
前記通信処理部は、前記通信指示部からの指示に基づいて、前記所定の通信方式を用いた通信が許可される許可接続端子に接続されたフィールド機器とは、前記所定の通信方式を用いた通信を行い、前記所定の通信方式を用いた通信が制限される制限接続端子に接続されたフィールド機器とは、前記所定の通信方式を用いた通信を制限することを特徴とする機器管理装置。
【請求項2】
前記通信制限情報を受け付けて前記記憶部に記憶する受け付け部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の機器管理装置。
【請求項3】
前記モジュールの各接続端子に割り当てられている接続点に関する情報を取得する接続点情報取得部と、
前記接続点に関する情報と前記記憶部に記憶された通信制限情報とに基づいて、前記モジュールの接続端子のうち、前記通信制限情報によって前記所定の通信方式を用いた通信の可否が示されていない他の接続端子での前記所定の通信方式を用いた通信の可否を示す新たな通信制限情報を前記記憶部に追加する、通信制限情報追加部をさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の機器管理装置。
【請求項4】
前記通信制限情報を提示する通信制限情報提示部をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の機器管理装置。
【請求項5】
前記通信処理部は、前記制限接続端子を指定した前記所定の通信方式による通信要求に対しては、前記所定の通信方式を用いた通信が制限されていることを示すエラー情報を提示することを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の機器管理装置。
【請求項6】
前記モジュールの前記接続端子に接続された前記フィールド機器から所定の情報を読み込み、前記フィールド機器の設定を行うプラグアンドプレイを実行するプラグアンドプレイ実行部をさらに備え、
前記通信指示部は、前記プラグアンドプレイが実行されている間、前記制限接続端子の通信制限を解除することを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の機器管理装置。
【請求項7】
前記プラグアンドプレイ実行部による前記プラグアンドプレイの結果に基づいて、前記記憶部に記憶されている前記通信制限情報を更新する通信制限情報更新部をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の機器管理装置。
【請求項8】
前記制限接続端子が、前記プラグアンドプレイ実行部によって、前記プラグアンドプレイの実行対象として指定されていることを示す確認情報を提示する確認情報提示部と、
前記確認情報提示部によって提示された前記確認情報に基づいて、前記制限接続端子に対する前記プラグアンドプレイの実行の可否についての選択を受け付けるプラグアンドプレイ実行可否受け付け部と、
をさらに備え、
前記プラグアンドプレイ実行部は、前記プラグアンドプレイ実行可否受け付け部によって前記制限接続端子に対する前記プラグアンドプレイの実行を許可する選択が受け付けられた場合に、前記プラグアンドプレイを実行することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の機器管理装置。
【請求項9】
前記通信制限情報は、前記フィールド機器を制御するコントローラの識別情報と、前記コントローラに接続されている前記モジュールの識別情報と、前記モジュールの前記接続端子の識別情報と、前記接続端子での前記所定の通信方式を用いた通信の可否とが関連付けられた情報であることを特徴とする請求項1から8のうちのいずれか1項に記載の機器管理装置。
【請求項10】
前記所定の通信方式を用いた通信はHART通信であることを特徴とする請求項1から9のうちのいずれか1項に記載の機器管理装置。
【請求項11】
記憶部に記憶された、フィールド機器が接続されているモジュールの接続端子での所定の通信方式を用いた通信の可否を示す通信制限情報に基づいて、前記接続端子での前記所定の通信方式を用いた通信の可否に関する指示を行う通信指示ステップと、
前記通信指示ステップで与えられた前記指示に基づいて、前記接続端子を介して前記フィールド機器と前記所定の通信方式を用いた通信を行う通信処理ステップと、
を備え、
前記通信処理ステップは、前記通信指示ステップで与えられた前記指示に基づいて、前記所定の通信方式を用いた通信を許可する指示があった許可接続端子では、前記所定の通信方式を用いた通信を行い、前記通信指示ステップで、前記所定の通信方式を用いた通信を制限する指示があった制限接続端子では、前記所定の通信方式を用いた通信を制限する
ことを特徴とする機器管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器管理装置、機器管理システム、および機器管理方法に関し、特にフィールド機器を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プロセスオートメーションの分野において、圧力、流量などを検出するセンサや、バルブの開度を制御するポジショナなどのフィールド機器のデジタル化が進んでいる。これまでDC4−20mAの電流値を用いて制御システムとの間でプロセス値をやり取りしていたアナログ通信方式のフィールド機器をデジタル化することで、フィールド機器からより多くの情報を得ることが可能となっている。それらの情報は、フィールド機器のメンテナンスや制御に活用されている。
【0003】
HART(Highway Addressable Remote Transducer)通信は、デジタル通信機能を有するフィールド機器において広く利用されている通信プロトコルである。HART通信の利点としては、フィールド機器のデジタル化において、既存のアナログ通信方式のフィールド機器と制御システムとの間における、アナログ通信の制御ソフトウェアや配線をそのまま利用することができる点が挙げられる。
【0004】
例えば、フィールド機器を制御するコントローラに接続されているHART通信非対応の入出力(I/O)モジュールを、HART通信対応のI/Oモジュールに交換することで、既存のプラントにHART通信を導入することができる。HART通信対応のフィールド機器は、HART通信対応のI/OモジュールまたはHART通信用のモジュールに接続される。
【0005】
このように、既存のプラントにHART通信を導入する場合には、ソフトウェアの改造が不要であり、最小限のモジュールや機器の交換により比較的容易にプラントのデジタル化が実現可能であることから、近年、多くの既存のプラントで、HART通信の普及が進んでいる。
【0006】
HART通信対応のI/Oモジュールは、アナログ通信方式と同じDC4−20mAの電流値を用いてフィールド機器とプロセス値をやり取りしながら、その電流値に交流デジタル信号であるHART信号を重畳してHART通信を行う。そのため、HART通信対応のI/Oモジュールは、アナログ方式のフィールド機器とHART通信対応のフィールド機器のどちらも接続可能である。
【0007】
アナログ通信方式の既存プラントのデジタル化は、プラント全体を一気にデジタル化するのではなく、予算に応じて必要な箇所から少しずつ進められることがある。また、フィールド機器の寿命は比較的長いため、古いアナログ通信方式のフィールド機器とHART通信に対応するフィールド機器が共に用いられることがある。そのような場合に、予算やキャビネットスペースの関係から、一つのHART通信対応のI/Oモジュールにアナログ通信方式にのみ対応するフィールド機器とHART通信対応のフィールド機器とが混在して接続される状況が生じ得る。
【0008】
HART通信は、アナログ通信方式にのみ対応するフィールド機器への影響が少ないよう設計されているが、既存のアナログ通信方式のフィールド機器の中には、HART通信の信号がノイズとなり、DC4−20mAの電流値で表現される圧力値やバルブの開度などのプロセス値の変動が大きくなってしまうものも存在する。
【0009】
このようなアナログ通信方式のフィールド機器をHART通信対応のI/Oモジュールに接続すると、例えば、HART通信対応のI/Oモジュールが定周期で行うフィールド機器の存在確認時などのHART通信中に、フィールド機器が測定しているプロセス値が変動してしまい、正しい計測ができなくなってしまう場合がある。
【0010】
この問題は、アナログ通信方式のフィールド機器に対するHART通信の停止設定を行うことや、既存のアナログ通信方式のフィールド機器をHART通信対応のフィールド機器に置き換えることによって解決することができる。
【0011】
しかし、従来におけるフィールド機器の管理技術では、HART通信などのデジタル通信が可能なフィールド機器を管理することに重点が置かれており、フィールド機器の管理システム中で参照できないアナログ通信方式のフィールド機器は管理の対象外であった(例えば、特許文献1参照)。
【0012】
そのため、従来の技術では、例えば、ディップスイッチなどのハードウェアを用いてHART通信の停止や開始の設定を行わなければならなかった。しかし、ハードウェアによるHART通信の設定切り替えは、キャビネットやI/Oモジュールのケースを開ける作業を伴うため、プラントの一部の制御を止めなければならなかったり、監視中のデータを一時的に見ることができなかったりした。その上、ディップスイッチが分かりにくい場合には、切り替えミスが生ずる恐れがあった。
【0013】
したがって、従来の技術では、フィールド機器に対するHART通信の停止や開始の設定を容易かつ確実に行うことが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2015−185083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、フィールド機器における所定の通信方式を用いた通信の停止や開始をより容易かつ確実に行うことができる機器管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決するために、本発明に係る機器管理装置は、フィールド機器が接続されているモジュールの接続端子での所定の通信方式を用いた通信の可否を示す通信制限情報を記憶する記憶部と、前記接続端子を介して前記フィールド機器と前記所定の通信方式を用いた通信を行う通信処理部と、前記通信制限情報に基づいて、前記接続端子での前記所定の通信方式を用いた通信の可否に関する指示を前記通信処理部に対して行う通信指示部と、を備え、前記通信処理部は、前記通信指示部からの指示に基づいて、前記所定の通信方式を用いた通信が許可される許可接続端子に接続されたフィールド機器とは、前記所定の通信方式を用いた通信を行い、前記所定の通信方式を用いた通信が制限される制限接続端子に接続されたフィールド機器とは、前記所定の通信方式を用いた通信を制限することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る機器管理装置において、前記通信制限情報を受け付けて前記記憶部に記憶する受け付け部をさらに備えていてもよい。
【0018】
また、本発明に係る機器管理装置において、前記モジュールの各接続端子に割り当てられている接続点に関する情報を取得する接続点情報取得部と、前記接続点に関する情報と前記記憶部に記憶された通信制限情報とに基づいて、前記モジュールの接続端子のうち、前記通信制限情報によって前記所定の通信方式を用いた通信の可否が示されていない他の接続端子での前記所定の通信方式を用いた通信の可否を示す新たな通信制限情報を前記記憶部に追加する、通信制限情報追加部をさらに備えていてもよい。
【0019】
また、本発明に係る機器管理装置において、前記通信制限情報を提示する通信制限情報提示部をさらに備えていてもよい。
【0020】
また、本発明に係る機器管理装置において、前記通信処理部は、前記制限接続端子を指定した前記所定の通信方式による通信要求に対しては、前記所定の通信方式を用いた通信が制限されていることを示すエラー情報を提示してもよい。
【0021】
また、本発明に係る機器管理装置において、前記モジュールの前記接続端子に接続された前記フィールド機器から所定の情報を読み込み、前記フィールド機器の設定を行うプラグアンドプレイを実行するプラグアンドプレイ実行部をさらに備え、前記通信指示部は、前記プラグアンドプレイが実行されている間、前記制限接続端子の通信制限を解除してもよい。
【0022】
また、本発明に係る機器管理装置において、前記プラグアンドプレイ実行部による前記プラグアンドプレイの結果に基づいて、前記記憶部に記憶されている前記通信制限情報を更新する通信制限情報更新部をさらに備えていてもよい。
【0023】
また、本発明に係る機器管理装置において、前記制限接続端子が、前記プラグアンドプレイ実行部によって、前記プラグアンドプレイの実行対象として指定されていることを示す確認情報を提示する確認情報提示部と、前記確認情報提示部によって提示された前記確認情報に基づいて、前記制限接続端子に対する前記プラグアンドプレイの実行の可否についての選択を受け付けるプラグアンドプレイ実行可否受け付け部と、をさらに備え、前記プラグアンドプレイ実行部は、前記プラグアンドプレイ実行可否受け付け部によって前記制限接続端子に対する前記プラグアンドプレイの実行を許可する選択が受け付けられた場合に、前記プラグアンドプレイを実行してもよい。
【0024】
また、本発明に係る機器管理装置において、前記通信制限情報は、前記フィールド機器を制御するコントローラの識別情報と、前記コントローラに接続されている前記モジュールの識別情報と、前記モジュールの前記接続端子の識別情報と、前記接続端子での前記所定の通信方式を用いた通信の可否とが関連付けられた情報であってもよい。
【0025】
また、本発明に係る機器管理装置において、前記所定の通信方式を用いた通信はHART通信であってもよい。
【0026】
また、本発明に係る機器管理方法は、記憶部に記憶された、フィールド機器が接続されているモジュールの接続端子での所定の通信方式を用いた通信の可否を示す通信制限情報に基づいて、前記接続端子での前記所定の通信方式を用いた通信の可否に関する指示を行う通信指示ステップと、前記通信指示ステップで与えられた前記指示に基づいて、前記接続端子を介して前記フィールド機器と前記所定の通信方式を用いた通信を行う通信処理ステップと、を備え、前記通信処理ステップは、前記通信指示ステップで与えられた前記指示に基づいて、前記所定の通信方式を用いた通信を許可する指示があった許可接続端子では、前記所定の通信方式を用いた通信を行い、前記通信指示ステップで、前記所定の通信方式を用いた通信を制限する指示があった制限接続端子では、前記所定の通信方式を用いた通信を制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、フィールド機器が接続されている接続端子での所定の通信方式を用いた通信の可否を示す通信制限情報に基づいて、通信指示部は、通信要求のあった接続端子での所定の通信方式を用いた通信の可否に関する指示を通信処理部に対して行う。したがって、その所定の通信方式を用いた通信が可能なフィールド機器とアナログ通信方式にのみ対応するフィールド機器とが混在して接続されている場合に、その所定の通信方式を用いた通信の停止や開始をより容易かつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態に係る機器管理付制御システムの概略を示す図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態に係る機器管理装置を実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の第1の実施の形態に係る通信制限情報DBの一例を示す図である。
図4図4は、本発明の第1の実施の形態に係る機器管理装置の機能を示す機能ブロック図である。
図5図5は、本発明の第1の実施の形態に係る機器管理装置における動作を説明するフローチャートである。
図6図6は、本発明の第1の実施の形態に係る表示部における通信制限情報の表示例を示す図である。
図7図7は、本発明の第2の実施の形態に係る機器管理装置の機能を示す機能ブロック図である。
図8図8は、本発明の第2の実施の形態に係るコンフィギュレーションデータの一例を示す図である。
図9図9は、本発明の第2の実施の形態に係る機器管理装置における動作を説明するフローチャートである。
図10図10は、本発明の第2の実施の形態に係る追加通信制限情報を含む通信制限情報DBの一例を示す図である。
図11図11は、本発明の第3の実施の形態に係る機器管理装置の機能を示す機能ブロック図である。
図12図12は、本発明の第3の実施の形態に係る表示部における表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図1から図12を参照して詳細に説明する。各図について共通する構成要素には、同一の符号が付されている。以下の説明では、「所定の通信方式」が「HART通信」である場合について説明する。また、以下において、HART通信対応フィールド機器3aとアナログ通信方式にのみ対応するHART通信非対応フィールド機器3bを総称してフィールド機器3a、3bまたはフィールド機器3ということがある。
【0030】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る機器管理付制御システム1の概略を示す図である。本発明の第1の実施の形態に係る機器管理付制御システム1は、HART通信対応の制御システムにあたる、オペレータステーション6、コントローラ5、HART通信対応I/Oモジュール4に加え、HART通信対応フィールド機器3aと、HART通信非対応フィールド機器3bと、フィールド機器を監視・管理する機器管理装置2とを備える。
【0031】
制御システムは、石油化学プラント、製薬工場などのプラントにおける製造プロセスを制御する。制御システムを構成するオペレータステーション6は、伝送線路を介してコントローラ5に接続され、コントローラ5はHART通信対応I/Oモジュール4を介して、プラント内に設置されている圧力センサやバルブポジショナなどのフィールド機器3a、3bに接続されている。機器管理装置2は制御システムの全部または一部の伝送経路を介して、最終的にフィールド機器3a、3bに接続されている。
【0032】
本実施の形態では、説明の容易のため、一つのコントローラ5に一つのHART通信対応I/Oモジュール4が接続されている場合について説明する。しかし、オペレータステーション6は、分散配置された複数のコントローラと接続され、それぞれのコントローラ5には複数のHART通信対応I/Oモジュールが接続されていてもよい。
【0033】
この場合、オペレータステーション6は、分散配置された複数のコントローラ5を統合化して、プラント全体の制御を実現する分散制御システム(DCS:Distributed Control System)のオペレータコンソールとして機能する。オペレータステーション6は、主にプラントを制御するユーザにより使用される。
【0034】
コントローラ5は、フィールド機器3におけるプロセス値などの情報を取り込んで、プラントの制御を実行する。
【0035】
機器管理装置2は、伝送線路を介してHART通信対応I/Oモジュール4に接続されている。機器管理装置2は、HART通信対応I/Oモジュール4の各スロット41a、41bを介して、HART通信対応フィールド機器3aおよびHART通信非対応フィールド機器3bと接続している。機器管理装置2は、機器のメンテナンスなどを担当する機器管理者によって使用され、フィールド機器3a、3bの状態の確認や、稼働状況の監視などを行い、プラントの計装保全を実行する。
【0036】
本実施の形態では、オペレータステーション6と機器管理装置2とは、それぞれ異なるネットワーク上に存在するものとして説明するが、フィールド機器3a、3bを含むプラント制御側のオペレータステーション6と管理側の機器管理装置2とが同一ネットワーク上に設置されていてもよい。
【0037】
フィールド機器3a、3bは、圧力センサ、流量計、バルブポジショナなどプラントで計測制御に用いられる機器である。本実施の形態では、HART通信対応フィールド機器3aと、HART通信非対応フィールド機器3bとが混在して、同一のHART通信対応I/Oモジュール4に接続されている。フィールド機器3a、3bはそれぞれが計測した圧力値や、バルブの開度など情報をDC4−20mAのアナログ信号に変換し、HART通信対応I/Oモジュール4を介してコントローラ5に送信する。
【0038】
HART通信対応フィールド機器3aは、HART通信機能を備えており、アナログ信号に重畳されたデジタル信号による各種パラメータの設定情報を機器管理装置2から受信したり、フィールド機器3aの診断に関する情報を機器管理装置2に送信することができる。一方、HART通信非対応フィールド機器3bは、このようなHART通信には対応していないため、アナログ通信による情報の送受信のみを行う。
【0039】
HART通信対応I/Oモジュール4は、複数の接続端子であるスロット41を有する。HART通信対応I/Oモジュール4は、DC4−20mAのアナログ入出力機能と、HART通信を用いたデジタル通信が可能な、HART通信対応フィールド機器3aとの通信インターフェース機能とを備えている。
【0040】
[機器管理装置の構成]
図2は、本実施の形態に係る機器管理装置2を実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。機器管理装置2(200)は、バス201を介して接続される制御部202、記憶装置205、通信制御装置208、I/F209、入力装置210、および表示装置211を備えるコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。
【0041】
制御部202は、CPU203と主記憶部204とを備えている。主記憶部204には、CPU203が各種制御や演算を行うためのプログラムが予め格納されている。主記憶部204には、CPU203にワーキングメモリとして使用され、本実施の形態による機器管理に必要な処理や、通信制御の各処理を行うためのエリアが確保可能になっている。
【0042】
記憶装置205は、読み書き可能な記憶媒体と、その記憶媒体に対してプログラムやデータなどの各種情報を読み書きするための駆動装置として構成されている。記憶装置205には、記憶媒体としてハードディスクが使用される。記憶装置205は、通信制限情報DB206、機器情報DB207、図示しないその他の格納装置で、例えばこの記憶装置205内に格納されているプログラムやデータなどをバックアップするための格納装置などを有している。
【0043】
通信制限情報DB206には、入力装置210を介して取得された、各スロット41でのHART通信の可否を示す通信制限情報が、HART通信対応I/Oモジュール4の識別情報であるモジュールIDと、各スロットの識別情報であるスロットIDに関連付けて記憶されている。通信制限情報DB206における各構成データについての詳細は後述する。
【0044】
機器情報DB207には、機器管理装置2(200)がフィールド機器3を管理するために必要な情報、例えば、各フィールド機器3のモデル名や識別情報、パラメータ設定に関する情報などが記憶されている。
【0045】
通信制御装置208は、機器管理装置2(200)とHART通信対応I/Oモジュール4やフィールド機器3とを接続するための制御装置である。
【0046】
I/F209は、各種機器を接続するための入出力インターフェースである。
入力装置210は、機器管理者によって用いられる、キーボードやタッチパネルなどによって構成される。
【0047】
表示装置211は、液晶ディスプレイ、有機ELなどのディスプレイであり、通信制限情報DB206に記憶されている通信制限情報が出力される。表示装置211には、その他にも、フィールド機器3の設定状況や、接続状態などの機器の管理に関する情報が表示される。
【0048】
本実施の形態における機器管理装置2では、制御部202のCPU203が、記憶装置205に予め格納されているプログラムを主記憶部204に読み込み、各スロット41でのHART通信の停止や開始を指示する処理を実行する。なお、記憶装置205からではく、外部の記憶媒体から直接主記憶部204にプログラムを読み込んで処理を実行することも可能である。
【0049】
[通信制限情報]
次に、記憶装置205の通信制限情報DB206に記憶されている通信制限情報について図3を参照して説明する。図3は、通信制限情報DB206の一例を示す図である。通信制限情報DB206には、HART通信対応I/Oモジュール4に設けられているフィールド機器3の接続先スロット41ごとに、HART通信の可否を示す通信制限情報が登録されている。
【0050】
図3に示すように、「Module ID」は、HART通信対応I/Oモジュール4に割り当てられている識別情報である。「Slot ID」は、HART通信対応I/Oモジュール4内の各スロット41a、41bに割り当てられている識別情報である。また、各「Module ID」の「Slot ID」ごとに「HART通信」の可否(「あり」または「禁止」)を示す情報が登録されている。
【0051】
より具体的には、スロットID:2に対応するスロット41bには、HART通信非対応フィールド機器3bが接続されているため、スロットID:2についてはHART通信を「禁止」する設定、即ち、HART通信禁止フラグが“1”に設定されている。
【0052】
HART通信対応フィールド機器3aが接続されているスロット41aに対応するモジュールID:1のスロットID:1については、HART通信が「あり」の設定、即ち、HART通信禁止フラグが“0”に設定されている。
【0053】
本実施の形態では、前述したように、便宜上、機器管理付制御システム1において、一つのコントローラ5に一つのHART通信対応I/Oモジュール4が接続されている場合について説明するが、コントローラ5が複数設置されている場合には、コントローラ5のノード番号などの識別情報と、モジュールIDと、スロットIDとでフィールド機器3のハードウェアアドレスが一意に決まることになる。そのため、コントローラ5が複数設置されている場合には、通信制限情報DB206には、コントローラ5の識別情報を示す情報が追加される。
【0054】
[機器管理装置の機能]
次に、本実施の形態に係る機器管理装置2の機能について説明する。図4に示すように、機器管理装置2は、HART通信制限情報受け付け部21と、表示部22と、機器管理部23と、通信制限情報DB206とを備える。
【0055】
HART通信制限情報受け付け部21は、機器管理者による通信制限情報の入力を受け付ける。この通信制限情報は機器管理者によって、入力装置210を介して入力される。表示部22は、通信制限情報DB206に記憶されている通信制限情報や、通信状況などを画面に表示する。
【0056】
機器管理部23は、機器管理装置2とフィールド機器3間のすべてのHART通信による通信要求を処理する。機器管理部23は、通信処理部231と、HART通信指示部232とを備える。
【0057】
通信処理部231は、機器管理装置2とフィールド機器3間におけるコマンドリクエスト処理や、フィールド機器3a、3bのデバイスデータの定周期収集や、デバイス接続状態の定周期チェックなどの処理を行う。
【0058】
HART通信指示部232は、所定のスロット41へのHART通信要求に対して、HART通信の可否に関する指示を行う。
【0059】
[機器管理装置の動作]
次に、機器管理装置2の動作について説明する。機器管理装置2は、通信制限情報の記憶と表示を行う。図5に示すように、まず、HART通信制限情報受け付け部21は、各スロット41でのHART通信の可否を示す通信制限情報を受け付ける(ステップS11)。受け付けられた通信制限情報は、通信制限情報DB206に記憶される(ステップS12)。例えば、機器管理者によって選択された所定のスロット41の通信制限情報が、入力装置210を介して入力されて、HART通信制限情報受け付け部21に受け付けられる。
【0060】
より詳細には、HART通信制限情報受け付け部21が、機器情報DB207に予め格納されているHART通信対応I/Oモジュール4およびスロット41に対応するモジュールIDとスロットIDを読み出す。そして、HART通信制限情報受け付け部21は、読み出したスロットIDに対してHART通信禁止フラグを設定する。HART通信禁止フラグの設定は、通信制限情報として通信制限情報DB206に記憶される。このように、通信制限情報DB206に記憶される通信制限情報は、モジュールIDと、スロットIDと、HART通信禁止フラグとが関連付けられた情報である。
【0061】
次に、表示部22は、通信制限情報DB206に記憶された通信制限情報を表示する(ステップS13)。図6は、表示部22における通信制限情報の表示例を示す図である。図6に示すように、表示部22には、ステップS11で受け付けられた、HART通信対応I/Oモジュール4の各スロット41でのHART通信の可否を示す通信制限情報が表示されている。通信制限情報が表示部22に表示されることで、機器管理者は、各フィールド機器3のHART通信の対応状況を容易に把握することができる。
【0062】
[通信制限情報に基づく通信制御]
通信処理部231は、HART通信要求を受信する(ステップS14)。具体的には、通信処理部231は、例えば、記憶装置205に格納されている上位アプリケーションから所定のスロット41に対するコマンドの送受信要求を受信する。HART通信指示部232は、通信制限情報DB206を参照する。そして、通信制限情報DB206においてHART通信の「禁止」の設定がされているスロット41bに対するHART通信要求があった場合には(ステップS15:YES)、HART通信指示部232は、通信処理部231に対して、スロット41bでのHART通信を制限する旨の指示を行い、通信処理部231は、コマンドの出力などは行わずに、HART通信要求元にエラーステータスを通知する(ステップS16)。
【0063】
また、通信制限情報DB206において、HART通信「あり」と設定されているスロット41aに対してHART通信要求があった場合には(ステップS15:NO)、HART通信指示部232は、通信処理部231に対してスロット41aでのHART通信を許可する指示を行い、通信処理部231は、スロット41aでのHART通信を行って、要求されたデータの送受信を行う(ステップS17)。
【0064】
例えば、表示部22に表示されるスロット41の通信管理画面において、各スロット41が選択されると、そのスロット41でのHART通信によるトレンドデータを表示する構成を採用している場合について説明する。
【0065】
HART通信指示部232は、ステップS12において記憶された通信制限情報DB206を参照する。通信制限情報DB206には、図3で説明したように、HART通信非対応フィールド機器3bが接続されているスロット41bに対応するモジュールID:1のスロットID:2に、HART通信禁止フラグ“1”が設定されている。この場合に、通信管理画面においてスロット41bに対応するモジュールID:1のスロットID:2が選択されると、スロット41bのHART通信によるトレンドデータは表示されず、代わりにエラーステータスが表示される。
【0066】
[第1の実施の形態の効果]
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、フィールド機器3が接続されているHART通信対応I/Oモジュール4のスロット41ごとにHART通信の通信制限情報を設定して、通信制限情報DB206に記憶する。そして、通信指示部232は、通信制限情報DB206においてHART通信を許可する設定のあるスロット41aに対してのみ、HART通信を行うよう、通信処理部231に対して指示をする。したがって、フィールド機器3の接続先であるHART通信対応I/Oモジュールの各スロット41でのHART通信の停止および開始を、より容易かつ確実に実行することができる。
【0067】
また、HART通信対応フィールド機器3aとHART通信非対応フィールド機器3bが、一つのHART対応I/Oモジュールに混在して接続されている場合であっても、HART通信非対応フィールド機器3bの接続先スロット41bのHART通信を制限することができる。したがって、HART通信非対応フィールド機器3bにHART通信の信号が送信されることによって、アナログ信号のプロセス値が変動し、HART通信非対応フィールド機器3bで正しい計測ができなくなることを防止できる。
【0068】
上述した第1の実施の形態では、通信制限情報DB206に記憶されている通信制限情報が表示部22に表示される場合について説明したが、表示部22に表示された通信制限情報の修正をさらに受け付ける構成を採用してもよい。このような構成を採用することで、HART通信非対応フィールド機器3bにHART通信による信号が送信されることをより確実に防止できる。
【0069】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図7は、第2の実施の形態に係る機器管理装置2aの機能を示す機能ブロック図である。図8は、第2の実施の形態に係るコンフィギュレーションデータの一例を示す図である。また、図9は、機器管理装置2aにおける動作を説明するフローチャートである。なお、以下の説明では、上述した第1の実施の形態と同じ構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0070】
第1の実施の形態では、HART通信制限情報受け付け部21によって受け付けられた一部のスロット41の通信制限情報が、通信制限情報DB206に記憶される場合について説明した。これに対し、第2の実施の形態では、機器管理装置2aは、コンフィギュレーションデータ取得部24と、通信制限情報追加部25とをさらに備える。そして、機器管理装置2aは、通信制限情報DB206において通信制限情報が設定されていないスロット41の通信制限情報をさらに設定し、通信制限情報DB206に追加登録する。
【0071】
図7に示すように、コンフィギュレーションデータ取得部24は、コンフィギュレーションデータを取得する。コンフィギュレーションデータは、図1で説明した機器管理付制御システム1の制御システムのオペレータステーション6などにおいて、制御システム構築のために作成されるデータである。
【0072】
コンフィギュレーションデータ取得部24は、オペレータステーション6などが持つコンフィギュレーションデータを取得することができる。また、コンフィギュレーションデータ取得部24は、コンフィギュレーションデータが保存されたUSBメモリなどの記憶媒体からコンフィギュレーションデータを取得してもよい。
【0073】
ここで、コンフィギュレーションデータについて説明する。図8に示すように、コンフィギュレーションデータには、コントローラ5に接続されているHART通信対応I/Oモジュール4ごとの、すべてのスロット41のタグ(接続点)に関する情報が登録されている。ところが、図3で説明したように、HART通信制限情報受け付け部21から受け付けられた通信制限情報を記憶する通信制限情報DB206には、機器管理者によって選択および入力された一部のスロット41の通信制限情報のみが含まれている。
【0074】
通信制限情報追加部25は、HART通信制限情報受け付け部21によって受け付けられた通信制限情報が記憶されている通信制限情報DB206において、通信制限情報の設定がないスロット41の通信制限情報を、通信制限情報DB206に追加する。以下において、通信制限情報追加部25によって追加された通信制限情報を含むデータベースを通信制限情報DB206aという。
【0075】
次に、機器管理装置2aの動作を、図9のフローチャートを参照して説明する。まず、HART通信制限情報受け付け部21は、第1の実施の形態と同様に、機器管理者の選択によって入力された、スロット41のHART通信可否に関する通信制限情報を受け付ける(ステップS21)。そして、受け付けられた通信制限情報は、通信制限情報DB206に記憶される(ステップS22)。
【0076】
次に、コンフィギュレーションデータ取得部24は、制御側のオペレータステーション6で作成されたコンフィギュレーションデータを取得する(ステップS23)。続いて、通信制限情報追加部25は、コンフィギュレーションデータと通信制限情報DB206とを突き合わせる(ステップS24)。
【0077】
より詳細には、通信制限情報追加部25は、図3に示す通信制限情報DB206と、図8に示すコンフィギュレーションデータを突き合わせる。そして、スロット41にアサインされた接続点があり、かつ、通信制限情報DB206においてHART通信「あり」の設定がないスロット41のHART通信禁止フラグを“1”に設定する。
【0078】
図3に示す通信制限情報DB206では、スロットID:1、スロットID:2、およびスロットID:3に対応する各スロット41にのみHART通信禁止フラグが設定されている。一方、図8に示すコンフィギュレーションデータにおいては、スロットID:4、スロットID:5、およびスロットID:6など、スロットID:1〜3以外のスロット41での接続点の情報が含まれている。
【0079】
通信制限情報DB206において、通信制限情報が設定されておらず、かつ、コンフィギュレーションデータに接続点があるスロット41に対応するスロットIDは、スロットID:4およびスロットID:6などである。よって、通信制限情報追加部25は、スロットID:4および6などに対応する各スロット41では、HART通信を制限することを示す通信制限情報を、通信制限情報DB206に追加する(ステップS25)。
【0080】
図10は、追加通信制限情報を含む通信制限情報DB206aの一例を示す。図10に示すように、モジュールID:1のスロットID:4およびスロットID:6についてはHART通信「禁止」の設定がされている。このように、通信制限情報受け付け部21で通信制限情報が受け付けられているスロット41(スロットID:1、スロットID:2、スロットID:3)以外のスロット41(スロットID:4、スロットID:6、・・・)については、既定の通信制限情報の設定として、HART通信を制限する設定が行われる。
【0081】
図9に戻り、通信処理部231は、HART通信要求を受信する(ステップS26)。続いて、通信制限情報DB206aに、指定スロット41でのHART通信を制限する設定がされている場合には(ステップS27:YES)、HART通信指示部232は通信処理部231に指定スロット41でのHART通信を制限する指示を行い、通信処理部231はエラーステータスをHART通信要求元に返す(ステップS28)。
【0082】
通信制限情報DB206aにおいて、指定スロット41でのHART通信を許可する設定がある場合には(ステップS27:NO)、HART通信指示部232は通信処理部231に指定スロット41でのHART通信を許可する指示を行い、通信処理部231は指定スロット41において、HART通信要求に応じたHART通信を行う(ステップS29)。
【0083】
以上説明したように、第2の実施の形態によれば、通信制限情報DB206において通信制限情報が設定されていないスロット41であり、かつ、コンフィギュレーションデータに接続点があるものについては、HART通信を制限する設定が既定の設定として行われ、その設定が通信制限情報DB206に追加される。
【0084】
したがって、例えば、機器管理者によって通信制限情報が入力されていないスロット41については、HART通信非対応フィールド機器3bが接続されているとの仮定の下、HART通信を制限する設定がされる。そのため、機器管理者によるスロット41の通信制限情報の設定入力漏れなどによって、HART通信非対応フィールド機器3bにHART通信の信号が送信されて、プロセス値が変動してしまうことをより確実に防止することができる。
【0085】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図11は、第3の実施の形態に係る機器管理装置2bの機能を示す機能ブロック図である。また、図12は、第3の実施の形態に係る表示部22における表示例を示す図である。なお、以下の説明では、上述した第1および第2の実施の形態と同じ構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0086】
第3の実施の形態では、機器管理装置2bは、プラグアンドプレイ実行部26と、プラグアンドプレイ実行可否受け付け部27と、通信制限情報更新部28とをさらに備える。プラグアンドプレイ実行部26は、配線接続されているフィールド機器3からフィールド機器3に関する情報を読み込んで、それらの情報を機器情報DB207に登録し、フィールド機器3を認識して設定を行うプラグアンドプレイを実行する。
【0087】
より詳細には、プラグアンドプレイ実行部26がプラグアンドプレイを実行する場合において、HART通信が制限されているスロット41bが、プラグアンドプレイ実行部26によってプラグアンドプレイの実行対象として指定された場合、表示部22には、HART通信が制限されているスロット41bに対するプラグアンドプレイ実行の可否を確認する情報が表示される。機器管理者は、表示部22に表示された確認情報に基づいて、スロット41bに対するプラグアンドプレイ実行の可否の選択を行うことができる。
【0088】
例えば、機器管理者によってHART通信が制限されているスロット41bに対するプラグアンドプレイの実行を許可する入力が、入力装置210を介してなされた場合、プラグアンドプレイ実行可否受け付け部27は、その入力を受け付ける。そして、プラグアンドプレイ実行部26は、プラグアンドプレイ実行可否受け付け部27において受け付けられたスロット41bに対するプラグアンドプレイの実行を許可する旨の選択に基づいて、HART通信が制限されているスロット41bの指定を含めたプラグアンドプレイを実行する。
【0089】
一方、プラグアンドプレイ実行可否受け付け部27によって、HART通信が制限されているスロット41bに対するプラグアンドプレイの実行を許可しない旨の選択が受け付けられた場合には、プラグアンドプレイ実行部26は、HART通信が制限されているスロット41bをプラグアンドプレイの実行対象から除く。
【0090】
機器管理装置2の表示部22には、図12に示すように、各スロット41におけるHART通信の可否を示す通信制限情報に加えて、プラグアンドプレイの検索対象設定画面が表示される。プラグアンドプレイの検索対象設定画面において、例えば、HART通信が制限されているスロット41bに対応するスロットID:2に「検索禁止」と表示される。
【0091】
プラグアンドプレイ実行部26がプラグアンドプレイを実行している期間中は、HART通信指示部232は、HART通信が制限(HART通信禁止フラグが“1”に設定)されているスロット41bのHART通信の禁止状態を一時的に解除する。そして、プラグアンドプレイの結果、HART通信の制限が解除されていたスロット41bに接続されているフィールド機器3がHART通信対応フィールド機器3aであることが判明した場合には、通信制限情報更新部28は、通信制限情報DB206のHART通信禁止フラグを“0”に更新する。
【0092】
一方、スロット41bに接続されているフィールド機器3が、HART通信非対応フィールド機器3bであることが判明した場合には、通信制限情報更新部28は、通信制限情報DB206のHART通信禁止フラグの設定を“1”のまま保持する。よって、そのスロット41bでのHART通信は引き続き制限されることになる。
【0093】
プラグアンドプレイ実行部26によるプラグアンドプレイ機能が用いられる場合としては、例えば、HART通信対応I/Oモジュール4に含まれる空きスロット41に、新規にフィールド機器3を接続する場合や、既存のフィールド機器3を新たなフィールド機器3に置き換える場合がある。既存のフィールド機器3を新たなフィールド機器3に置き換える場合としては、古いHART通信非対応フィールド機器3bをHART通信対応フィールド機器3aに交換する場合や、既存のHART通信対応フィールド機器3aを別のHART通信対応フィールド機器3aに交換する場合などがある。
【0094】
以上説明したように、第4の実施の形態によれば、プラグアンドプレイ実行部26によって、プラグアンドプレイが実行されている期間中は、HART通信指示部232が、HART通信が制限されているスロット41の禁止状態を一時的に解除する。そして、プラグアンドプレイの結果に応じて、通信制限情報更新部28が、スロット41におけるHART通信の可否を示す通信制限情報を更新する。
【0095】
このような構成により、プラグアンドプレイ機能を利用した新規フィールド機器3の設定において、そのフィールド機器3がHART通信に対応する機器であるか否かについての情報が、スロット41ごとの通信制限情報として通信制限情報DB206に反映される。したがって、フィールド機器3の接続先であるHART通信対応I/Oモジュール4のスロット41に対するHART通信の開始をより容易かつ確実に実行することができる。
【0096】
また、HART通信が制限されているスロット41bがプラグアンドプレイの実行対象として指定された場合に、HART通信が制限されているスロット41bに対する通信制限が解除されることについて、プラグアンドプレイが実行される前に表示部22に確認情報を表示し、プラグアンドプレイの実行を許可する選択が受け付けられた場合のみ、プラグアンドプレイを実行する。このような構成を採用することにより、HART通信非対応フィールド機器3bにHART通信による信号が送信されることをより確実に防止できる。
【0097】
以上、本発明の機器管理装置、機器管理システム、および機器管理方法における実施の形態について説明したが、本発明は説明した実施の形態に限定されるものではなく、請求項に記載した発明の範囲において当業者が想定し得る各種の変形を行うことが可能である。
【0098】
例えば、説明した実施の形態では、HART通信対応フィールド機器3aとHART通信非対応フィールド機器3bとが混在して同一のHART通信対応I/Oモジュール4に接続される場合について説明した。しかし、DC4−20mAのアナログ通信方式と共存可能な通信プロトコルであれば、その停止や開始が設定される通信プロトコルは、HART通信に限られない。
【0099】
また、説明した実施の形態では、通信制限情報DB206において、HART通信対応I/Oモジュール4のモジュールIDと、スロット41のスロットIDと、HART通信の可否を示す通信制限情報とが関連付けられて記憶されている場合について説明した。しかし、通信制限情報DB206に記憶される情報はこれらに限られず、例えば、HART通信非対応フィールド機器3bのタグ名などのメモ情報を付加してもよい。これにより、HART通信による情報通信ができないアナログ通信方式のみに対応するHART通信非対応フィールド機器3bの管理に有用な情報を予めデータベースに登録しておくことが可能となる。
【符号の説明】
【0100】
1…機器管理付制御システム、2、2a、2b、200…機器管理装置、3…フィールド機器、3a…HART通信対応フィールド機器、3b…HART通信非対応フィールド機器、4…HART通信対応I/Oモジュール、41、41a、41b…スロット、5…コントローラ、6…オペレータステーション、21…HART通信制限情報受け付け部、22…表示部、23…機器管理部、231…通信処理部、232…HART通信指示部、24…コンフィギュレーションデータ取得部、25…通信制限情報追加部、26…プラグアンドプレイ実行部、27…プラグアンドプレイ実行可否受け付け部、28…通信制限情報更新部、201…バス、202…制御部、203…CPU、204…主記憶部、205…記憶装置、206…通信制限情報DB、207…機器情報DB、208…通信制御装置、209…I/F、210…入力装置、211…表示装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12