(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の内視鏡手術トレーニングモデルはポリビニルアルコールが主な原料であり一定量の水分を含んでいるため、水分量の管理や防腐措置のための手段(密閉容器を用いた冷蔵庫保管)が必要であり、そのような措置をとっても長期の保管が困難であった。また、従来の炭化水素系樹脂は、電気メスでの医療措置には対応しておらず、保存性、臓器類似の風合い及び電気メス対応の樹脂材料が望まれている。電気メスには2種類の切開・凝固方法がある。1つ目は高周波電流により人体を抵抗体として発生するジュール熱によって切開・凝固する方法である。2つ目は、超音波による摩擦熱によって切開・凝固する方法である。ESDにおいては内視鏡先端部の鉗子出口から電気メスを出して施術を行うが、その際に用いられる電気メスは、主にジュール熱で切開・凝固する方式のものである。
【0006】
そこで、本発明の主な目的は、EMRやESD等の内視鏡手術、あるいは腹腔鏡手術にて、使用する電気メスを用いた手技の練習を可能にする親油性樹脂及びオイルを含有する炭化水素系樹脂材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決する手段は以下の通りである。
〔1〕成分(A)としてMFR(温度230℃、荷重2.16kgで測定)1g/10min.以下の水添ブロック共重合体100質量部、成分(B)として、成分(A)100質量部に対してオイルを100質量部以上、1000質量部以下、並びに、成分(C)として、導電性セラミックフィラー(C1)、帯電防止剤(C2)、カーボンブラック(C3)から選ばれる1種類以上である導電性付与剤からなる、導電性樹脂組成物。
〔2〕成分(C)の導電性付与剤の添加量が以下である、〔1〕に記載の導電性樹脂組成物。
・(C1)導電性セラミックフィラーを、成分(A)100質量部に対して10質量部以上、1000質量部以下。
・(C2)帯電防止剤を、成分(A)100質量部に対して10質量部以上、240質量部以下。
・(C3)カーボンブラックを、成分(A)100質量部に対して10質量部以上、500質量部以下。
〔3〕E硬度が3〜70である、〔1〕または〔2〕に記載の導電性樹脂組成物。
〔4〕体積抵抗率が1×10
2〜1×10
11Ω・cmである、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物。
〔5〕〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物を用いた内視鏡手術または腹腔鏡手術用の手技練習用モデル。
〔6〕〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物を用いた内視鏡的剥離術(ESD)の手技練習用モデル。
〔7〕〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物を用いた臓器モデル。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、例えば、より生体の臓器に近い軟質性と感触を有し、生体と同程度の体積抵抗率を有し、電気メスが使用可能で、耐久性に優れ、取り扱いが容易な炭化水素系樹脂組成物、及びそれを用いた手技練習用モデルを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<成分(A)水添ブロック共重合体>
本発明で用いられる水添ブロック共重合体は、芳香族ビニルから導かれるブロック重合単位(X)と共役ジエンから導かれるブロック重合単位(Y)とからなる芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体の水添物であることが好ましい。
【0010】
このような構成の芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体の形態は、たとえばX(YX)
n又は(XY)
n〔nは1以上の整数〕で示される。これらの中では、X(YX)
nの形態のもの、特にX−Y−Xの形態のものが好ましい。X−Y−Xの形態のものとしては、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン−ポリイソプレン・ブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体からなる群から選択される1種以上の共重合体が好ましい。
【0011】
このような芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体では、ハードセグメントである芳香族ビニルブロック単位(X)が、共役ジエンゴムブロック単位(Y)の橋かけ点として存在して擬似架橋(ドメイン)を形成している。この芳香族ビニルブロック単位(X)間に存在する共役ジエンゴムブロック単位(Y)は、ソフトセグメントであってゴム弾性を有している。
【0012】
ブロック重合単位(X)を形成する芳香族ビニルとしては、スチレン、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、p−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−ドデシルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン等が挙げられる。これらの中では、スチレンが好ましい。
【0013】
ブロック重合単位(Y)を形成する共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン及びこれらの組合せ等が挙げられる。これらの中では、ブタジエン、イソプレン、ブタジエンとイソプレンとの組み合わせ(ブタジエン・イソプレンの共重合)からなる群から選択される1種以上の共役ジエンが好ましい。これらのうち1種以上の共役ジエンを組み合わせて用いることもできる。ブタジエン・イソプレン共重合単位からなる共役ジエンブロック重合単位(Y)は、ブタジエンとイソプレンとのランダム共重合単位、ブロック共重合単位、テーパード共重合単位の何れであってもよい。
【0014】
上記のような芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体では、芳香族ビニルブロック重合単位(X)の含有量が5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、20質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。この芳香族ビニル単位の含有量は赤外線分光、NMR分光法等の常法によって測定することができる。
【0015】
成分(A)のメルトフローレート(MFR)(温度230℃、荷重2.16kg)は、1g/10分以下であり、好ましくは0.1g/10分以下である。MFR(温度230℃、荷重2.16kg)とは、JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件下で測定するMFRをいう。MFRが本値より高いと、オイルを添加した際にブリードアウトし易くなったり、力学的強度が低下したりしてしまう。
【0016】
上記のような芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体は、種々の方法により製造することができる。製造方法としては、(1)n−ブチルリチウム等のアルキルリチウム化合物を開始剤として、芳香族ビニル、次いで共役ジエンを逐次重合させる方法、(2)芳香族ビニル、次いで共役ジエンを重合させ、これをカップリング剤によりカップリングさせる方法、(3)リチウム化合物を開始剤として、共役ジエン、次いで芳香族ビニルを逐次重合させる方法等を挙げることができる。
【0017】
本発明で用いられる水添ブロック共重合体は、上記のような芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体を公知の方法により水添した物であることが好ましく、水添率は90モル%以上である。この水添率は、共役ジエンブロック重合単位(Y)中の炭素−炭素二重結合の全体量を100モル%としたときの値である。このような水添ブロック共重合体(A)としては、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック(SEP)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン(SEPS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン(SEBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン(SEEPS)等が挙げられる。より具体的には、SEPTON(クラレ(株)社製)、クレイトン(Kraton;シェル化学(株)社製)、クレイトンG(シェル化学(株)社製)、タフテック(旭化成(株)社製)(以上商品名)等が挙げられる。
【0018】
水添率は、核磁気共鳴スペクトル解析(NMR)等の公知の方法により測定する。
【0019】
本発明では、水添ブロック共重合体(A)として、SEEPSが好ましい。水添ブロック共重合体(A)の形状は、混練前のオイル吸収作業の観点から、粉末又は無定形(クラム)状が好ましい。
【0020】
<成分(B)オイル>
成分(B)オイルとしては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルや流動パラフィン等の鉱物油系オイル、シリコンオイル、ヒマシ油、アマニ油、オレフィン系ワックス、鉱物系ワックス等が挙げられる。これらの中では、パラフィン系及び/又はナフテン系のプロセスオイルが好ましい。プロセスオイルとしては、ダイアナプロセスオイルシリーズ(出光興産社製)、JOMOプロセスP(ジャパンエナジー社製)等が挙げられる。
成分(B)オイルは、例えば、樹脂組成物を軟質化し、臓器モデルの弾性率や硬度を調整するために用いる。上記のうち1種以上のオイルを組み合わせて用いることもできる。
成分(B)オイルは、事前に成分(A)に吸収させておくのが作業性の点で好ましい。
【0021】
成分(B)であるオイルの使用量は、成分(A)100質量部に対して、100質量部以上が好ましい。成分(B)オイルの使用量は、成分(A)100質量部に対して1000質量部以下であり、700質量部以下が好ましく、600質量部以下がより好ましく、500質量部以下が最も好ましい。オイルの使用量は上記の範囲内で、実際にモデルとなる臓器の部位、病変により調製される。成分(B)オイルの使用量が、成分(A)100質量部に対して100質量部未満だと軟質性が不足する場合があり、1000質量部を超えるとオイルを吸蔵できないためコンパウンドができない。オイルが500質量部を超えるとオイルが染み出す(ブリードアウト)場合がある。
【0022】
<成分(C)導電性付与材>
成分(C)導電性付与材としては(C1)導電性セラミックフィラー、(C2)帯電防止剤、(C3)カーボンブラックから選ばれる1種類以上を用いることができる。(C1)導電性セラミックフィラーは、樹脂組成物に導電性を付与する目的のために使用することができる。(C1)導電性セラミックフィラーとしては、AZO、ATO、及びATO被覆マイカ、ATO被覆酸化チタン、SnO
2被覆酸化チタン、SnO
2被覆チタン酸カリウム等が挙げられる。これらの中では、被覆マイカ、ATO被覆酸化チタン、SnO
2被覆酸化チタン、SnO
2被覆チタン酸カリウムからなる群から選択される1種以上が好ましく、SnO
2被覆酸化チタンがより好ましい。本(C1)導電性セラミックフィラーを配合する場合、成分(A)100質量部に対して10〜1000質量部の範囲が好ましい。1000質量部を超えると、オイルの配合組成によってはブリードアウトを促進してしまう場合がある。
【0023】
(C1)導電性セラミックフィラーとして、好ましくはSnO
2被覆酸化チタンが用いられる。SnO
2被覆酸化チタンの比表面積(BET法、JISZ 8830:2013)は、1m
2/g以上30m
2/gの範囲が、導電性の点から好ましい。本発明の樹脂組成物および通常の樹脂は一般に無機フィラーを充填すると硬度が上昇し、力学物性が低下するが、本発明の樹脂組成物にSnO
2被覆酸化チタンを配合しても硬度の上昇を抑制することが出来る。
【0024】
(C2)帯電防止剤は、成分(A)100質量部に対して、10質量部以上、240質量部以下含むことが好ましい。(C2)帯電防止剤は、好ましくはポリオレフィン/ポリエーテル共重合体もしくはポリアミド/ポリエーテル共重合体から選ばれる1種以上であり、好ましくはポリオレフィン/ポリエーテル共重合体である。
【0025】
(C2)帯電防止剤として、好ましくはポリオレフィン/ポリエーテル共重合体が用いられる。ポリオレフィン/ポリエーテル共重合体のメルトフローレート(MFR(温度190℃、荷重2.16kg))は、8g/10分以上であり、好ましくは15g/10分以上の範囲が、分散性の点から好ましい。
【0026】
(C3)カーボンブラックを成分(A)100質量部に対して10質量部以上、500質量部以下含むことが好ましい。(C3)カーボンブラックのBET法比表面積(BET一点法、JIS K6217−2)が30〜200m
2/gの範囲である。
【0027】
成分(A)水添ブロック共重合体、成分(B)オイル、成分(C)導電性付与材を配合した導電性樹脂組成物は、軟質エラストマーとして好適に、種々の用途に使用することが出来る。例えば、文具やスポーツ用品、工具、自動車内装のグリップ材、電線被覆材、パッキン類、制振材、雑貨類に好適に用いられる。また、ロボットの表皮材や、特に好ましくは医療用の臓器モデル、ESDの手技練習用モデルとしても好適に使用できる。
【0028】
本発明の上記導電性樹脂組成物には、必要に応じて上記、その他の樹脂、エラストマ−、ゴム、可塑剤、フィラ−や安定剤、老化防止剤、耐光性向上剤、紫外線吸収剤、軟化剤、滑剤、加工助剤、着色剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、結晶核剤、発泡剤等を配合し、用いることが出来る。本発明の導電性樹脂組成物を製造するには、公知の適当なブレンド法を用いることができる。例えば、単軸、二軸のスクリュー押出機、バンバリー型ミキサー、プラストミル、コニーダー、加熱ロールなどで溶融混合を行うことができる。溶融混合を行う前に、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサー、タンブラーなどで各原料を均一に混合しておくこともよい。溶融混合温度はとくに制限はないが、100〜300℃、好ましくは150〜250℃が一般的である。本発明の各種組成物の成型法としては、真空成形、射出成形、ブロー成形、押出し成形等公知の成型法を用いることができる。
【0029】
以下に、本発明の導電性樹脂組成物を用いた手技練習用モデルについて説明する。本発明の導電性樹脂組成物は、上記軟質性と体積抵抗率が生体臓器の物性に近いことが好ましい。本発明の樹脂組成物の内視鏡や腹腔鏡手術の手技練習用モデルでの利用に際し、目的を阻害しない範囲で、例えば、顔料、染料等の着色剤、香料、酸化防止剤、抗菌剤等の添加剤を使用しても良い。本発明の臓器モデルを生体の臓器に近似させるために、着色剤により生体の臓器に近似した色に着色することが好ましい。
【0030】
本発明の導電性樹脂組成物は、オイルや添加物のブリードアウト(染み出し)がなく、成形加工が容易で、かつ軟質で、生体の臓器に近い感触と実用的なE硬度、体積抵抗率を有するので、ESDの手技練習用モデルの熱可塑性樹脂組成物として好適である。
以上に示してきた本組成の熱可塑性樹脂組成物は、臓器に近い軟質性と力学物性を有するために例えば、以下のような軟質性と体積抵抗率を有することが好ましい。
【0031】
手技練習用モデルのE硬度は3〜70の範囲が好ましい。本樹脂組成物の体積抵抗率は、1×10
2〜1×10
11Ω・cmが好ましく、1×10
2〜1×10
8Ω・cm以下がより好ましい。体積抵抗率がこの範囲であることで、電気メスでの切開が可能となる。体積抵抗率が10
11Ω・cmより高いと電気メスの使用が困難となり、10
2Ω・cmより低いと実際の人体より容易に切開可能となり、練習に不向きとなる。
【0032】
以上、手技練習用モデルの好ましい条件をすべて満たす、本発明の配合組成としては成分(A)水添ブロック共重合体100質量部に対し、成分(B)オイルが100質量より多く500質量部以下、成分(C)導電性付与材1種類もしくは2種類以上が上記の配合量配合されたものである。
【0033】
さらに以下の条件を満たすことで、ESDの手技練習用モデルとして好ましい、軟質でありながら体積抵抗率が低いという特徴、具体的には体積抵抗率が1×10
8Ω・cm以下という条件を満たすことができる。
【0034】
以上、本発明の導電性樹脂組成物の手技練習用モデルの代表例として、内視鏡的剥離術(ESD)の手技練習用モデルについて説明したが、本発明の導電性樹脂組成物は、同様に上部消化器や下部消化器模型の対象部位に組み込み、あるいは貼り付けて、内視鏡下に止血操作を練習するための手技練習用潰瘍モデル、内視鏡的粘膜切除術(EMR)の手技練習用モデル、または腹腔鏡手術用の手技練習用モデルにも適用可能である。
本発明の導電性樹脂組成物は、前記内視鏡や腹腔鏡手術の手技練習用モデル以外にも、一般的な臓器モデル用いることができる。一般的な臓器モデルとしては、心臓、肝臓、膵臓が好ましい。心臓、肝臓、膵臓の臓器モデルは手術の訓練に使用される。心臓、肝臓、膵臓の臓器モデルは、模擬手術時の切開端や縫合状態の維持が難しいという課題がある。即ち、メスで切開した端部から使用中に機械的な応力によって更に引き裂かれる現象、縫合した糸の張力により引き裂かれてしまう現象が発生するという課題がある。従来の素材は、糸引裂き強度や伸びが十分ではないためこれらの現象が起こりやすい。本発明の樹脂組成物は、生体の臓器、特にヒトの臓器と同等レベルの十分な糸引裂き強度や伸びを示すため、心臓、肝臓、膵臓の臓器モデル用として好ましい。例えば臓器モデル用の臓器3Dデータは以下のサイトから購入、ダウンロードすることが可能である。
http://www.3dscanstore.com/
http://3dprint.nih.gov/
http://3-d-craft.com/press/2607
http://www.model-wave.com/
【0035】
本発明として、特に好ましくは、本発明の導電性樹脂組成物を用いたESDの手技練習用モデルである。具体的には上部消化器や下部消化器模型の対象部位に組み込み、あるいは貼り付けて、医師または医学生が、内視鏡的剥離術に関する手技を練習するにあたって用いる練習用モデルが挙げられる。具体的には上部消化器や下部消化器模型の対象部位に組み込み、あるいは貼り付けて、内視鏡下にがん等の病変粘膜や粘膜下層の剥離操作を、繰り返し練習するための手技練習用モデルである。
【0036】
本発明の導電性樹脂組成物は、公知の成型方法により、手技練習用モデルや臓器モデルに成形することができる。例えば押出し成形、注型成形、射出成形、真空成形、ブロー成形等、目的の臓器モデルに合わせ様々な成型方法を用いることができる。以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の理解のために実施例を示すが、本発明は本実施例に限定されるものではない。特記しない限り、23±1℃の環境下で実施した。
【0038】
(1)材料
<成分(A)特定の条件を満たす水添ブロック共重合体>
・SEEPS(SEPTON−J3341、クラレ社製)、MFR(温度230℃、荷重2.16kg)0.0g/10分(0.0g/10分とは流動しないことをいう)、スチレン含有量40質量%、水添率90モル%以上
<成分(B)オイル>
パラフィンオイル(出光興産社製PW−90)
<成分(C)導電性付与材>
(C1)SnO
2被覆酸化チタン(大塚化学社製、デントールWK−500、針状:径0.3mm、長さ15μm)、BET法比表面積15〜30(15〜25)m
2/g
(C2)帯電防止剤(ポリオレフィン/ポリエーテル共重合体、三洋化成工業社製、ペレクトロンPVL)、メルトフローレート(MFR(温度190℃、荷重2.16kg))は、8g/10分以上であり、好ましくは15g/10分以上の範囲のもの(15g/10分)。
(C3)アセチレンブラック(デンカ社製デンカブラック、FX−35)、BET法比表面積が133m
2/g。
【0039】
(2)混練方法
成分(A)水添ブロック共重合体(SEPTONJ−3341)は、無定形の粉末でメーカーより供給される。混練数日前に、水添ブロック共重合体に対し、所定量のオイルを滴下し十分に染みこませておいた。ブラベンダープラスチコーダー(ブラベンダー社製PL2000型)を使用し、すべての原料を投入した後、180℃、回転速度50回/分、6分間混練しサンプルを作製した。
【0040】
(3)試験片作成方法
サンプルシート作製は、以下に従った。
物性評価用の試料は加熱プレス法(180℃、時間5分、圧力50kg/cm
2)により成形した各種厚さ(1.0mm、5.0mm)のシートを用いた。
【0041】
(4)E硬度
5.0mm厚シートを重ね、JIS K7215プラスチックのデュロメーター硬さ試験法に準じ、23±1℃の条件にてタイプEのデュロメーター硬度を求めた。この硬度は瞬間値である。
【0042】
(5)体積抵抗率測定
JIS C2139に準拠し、1.0mm厚さシートを任意の形状(5.0cm×5.0cm×1.0mm)、株式会社三菱ケミカルアナリテック社製ハイレスタUXMCP-HT800を用い、23±1℃の条件にて測定した。
【0043】
実施例1〜4
成分(A)水添ブロック共重合体、(B)オイルおよび(C)導電性付与材を使用し、表1に示す組成で混練を行い、導電性樹脂組成物を得て各物性の評価を行った。物性測定結果を表1に示す。
【0044】
比較例
実施例1〜5と同じ条件で、ただし、成分(A)水添ブロック共重合体、(B)オイルのみを使用し、表1に示す組成で混練を行い、熱可塑性樹脂組成物を得て各物性の評価を行った。物性測定結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
表1の単位は質量部である。
実施例1〜5の結果より、成分(A)特定の水添ブロック共重合体、(B)オイル、(C)導電性付与材を含んでなる樹脂組成物は、所定の軟質性と体積抵抗率を示すことが判る。これに対し、本発明の範囲外の比較例で得られた樹脂組成物は、軟質性は示すが、体積抵抗率が目標の範囲外になっている。