特許第6948209号(P6948209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948209
(24)【登録日】2021年9月22日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】運転支援装置及び運転支援方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20210930BHJP
   B62D 1/04 20060101ALI20210930BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20210930BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20210930BHJP
   B60K 37/00 20060101ALI20210930BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20210930BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20210930BHJP
【FI】
   B62D6/00
   B62D1/04
   B60R11/02 C
   B60K35/00 A
   B60K35/00 Z
   B60K37/00 E
   B62D101:00
   B62D113:00
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-190857(P2017-190857)
(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公開番号】特開2019-64406(P2019-64406A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年8月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 武史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 能英瑠
【審査官】 鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2017/0274931(US,A1)
【文献】 特開2016−196248(JP,A)
【文献】 特開2003−285705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00− 1/11,
1/12− 1/14,
6/00− 6/10,
G08G 1/00− 9/02
B60R 11/00,11/02,
11/04,11/06
B60K 35/00−37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方に障害物が存在するか否かを判定する障害物判定部と、
ステアリングホイールの操作に応じて移動する表示物の表示を制御し、前記障害物が存在すると判定された場合に、前記ステアリングホイールの動きに対する前記表示物の動きを制御する表示制御部と、
を備え、
前記表示制御部は、前記障害物が存在すると判定された場合に、前記ステアリングホイールの動きに対して前記表示物の動きが速くなるように前記表示物の表示を制御することを特徴とする、運転支援装置。
【請求項2】
車両前方に障害物が存在するか否かを判定する障害物判定部と、
ステアリングホイールの操作に応じて移動する表示物の表示を制御し、前記障害物が存在すると判定された場合に、前記ステアリングホイールの動きに対する前記表示物の動きを制御する表示制御部と、
前記ステアリングホイールの操舵角速度を算出する操舵角速度算出部と、
を備え、
前記表示制御部は、前記障害物が存在すると判定された場合に、前記操舵角速度に対する前記表示物の角速度を制御することを特徴とする、運転支援装置。
【請求項3】
車両前方に障害物が存在するか否かを判定する障害物判定部と、
ステアリングホイールの操作に応じて移動する表示物の表示を制御し、前記障害物が存在すると判定された場合に、前記ステアリングホイールの動きに対する前記表示物の動きを制御する表示制御部と、
を備え、
前記表示制御部は、前記ステアリングホイールが操舵された方向に前記表示物が動くように前記ステアリングホイールの動きに対する前記表示物の動きを制御することを特徴とする、運転支援装置。
【請求項4】
前記障害物判定部は、前記障害物が車両前方の所定距離以内に接近している場合に、前記障害物が存在すると判定することを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記ステアリングホイールの操舵角が所定値以上の場合に前記表示物を表示し、前記ステアリングホイールの動きに対する前記表示物の動きを制御することを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項6】
衝突を回避できない距離まで前記障害物に接近した場合に、警告表示を行う、請求項1〜のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項7】
衝突を回避できない距離まで前記障害物に接近した場合に、警告音を発生させる、請求項1〜のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項8】
前記表示物は、前記ステアリングホイールに表示され、前記ステアリングホイールの円周に沿って移動することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項9】
前記表示物は、車両の運転者の前方のダッシュパネル又はフロントガラスに表示されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項10】
前記障害物判定部は、車両前方を撮像した画像情報から得られる環境情報に基づいて、
車両前方に障害物が存在するか否かを判定することを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項11】
車両前方に障害物が存在するか否かを判定する第1ステップと、
ステアリングホイールの操作に応じて移動する表示物の表示を制御し、前記障害物が存在すると判定された場合に、前記ステアリングホイールの動きに対する前記表示物の動きを制御する第2ステップと、
を備え
前記第2ステップにおいて、前記障害物が存在すると判定された場合に、前記ステアリングホイールの動きに対して前記表示物の動きが速くなるように前記表示物の表示を制御することを特徴とする、運転支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置及び運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1には、算出された必要操舵量と検出されたステアリングホイール1の現在の操舵量とに基づいて、ステアリングホイールの操作と独立して動く視覚パターンP2を、車両のステアリングホイールの操作に連動して動く視覚パターンP1に対して動かすことが記載されている。
【0003】
また、下記の特許文献2には、自車両が停止若しくは低速走行中にも、自車両が接近する接近物との衝突を信頼性高く判定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−298196号公報
【特許文献2】特開2014−149741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術は、走行車線の車線中央に対する現在の自車両の横変位量から、自車両が車線中央上を走行するのに要求される必要操舵量を算出し、必要操舵量から現在の操舵量を減算した値に基づいて視覚パターンを動かしている。しかし、このような手法では、障害物への衝突を回避するために、運転者に最適な操舵を行わせることは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、障害物への衝突を回避するために、運転者が最適な操舵を行うことが可能な、新規かつ改良された運転支援装置及び運転支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、車両前方に障害物が存在するか否かを判定する障害物判定部と、ステアリングホイールの操作に応じて移動する表示物の表示を制御し、前記障害物が存在すると判定された場合に、前記ステアリングホイールの動きに対する前記表示物の動きを制御する表示制御部と、を備え、前記表示制御部は、前記障害物が存在すると判定された場合に、前記ステアリングホイールの動きに対して前記表示物の動きが速くなるように前記表示物の表示を制御する、運転支援装置が提供される。また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、車両前方に障害物が存在するか否かを判定する障害物判定部と、ステアリングホイールの操作に応じて移動する表示物の表示を制御し、前記障害物が存在すると判定された場合に、前記ステアリングホイールの動きに対する前記表示物の動きを制御する表示制御部と、前記ステアリングホイールの操舵角速度を算出する操舵角速度算出部と、を備え、前記表示制御部は、前記障害物が存在すると判定された場合に、前記操舵角速度に対する前記表示物の角速度を制御する、運転支援装置が提供される。また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、車両前方に障害物が存在するか否かを判定する障害物判定部と、ステアリングホイールの操作に応じて移動する表示物の表示を制御し、前記障害物が存在すると判定された場合に、前記ステアリングホイールの動きに対する前記表示物の動きを制御する表示制御部と、を備え、前記表示制御部は、前記ステアリングホイールが操舵された方向に前記表示物が動くように前記ステアリングホイールの動きに対する前記表示物の動きを制御する、運転支援装置が提供される。
【0008】
前記表示物は、前記ステアリングホイールに表示され、前記ステアリングホイールの円周に沿って移動するものであっても良い。
【0011】
また、前記障害物判定部は、前記障害物が車両前方の所定距離以内に接近している場合に、前記障害物が存在すると判定するものであっても良い。
【0012】
また、前記表示制御部は、前記ステアリングホイールの操舵角が所定値以上の場合に前記表示物を表示し、前記ステアリングホイールの動きに対する前記表示物の動きを制御するものであっても良い。
【0014】
また、衝突を回避できない距離まで前記障害物に接近した場合に、警告表示を行うものであっても良い。
【0015】
また、衝突を回避できない距離まで前記障害物に接近した場合に、警告音を発生させるものであっても良い。
【0016】
また、前記表示物は、車両の運転者の前方のダッシュパネル又はフロントガラスに表示されるものであっても良い。
【0017】
また、前記障害物判定部は、車両前方を撮像した画像情報から得られる環境情報に基づいて、車両前方に障害物が存在するか否かを判定するものであっても良い。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、車両前方に障害物が存在するか否かを判定する第1ステップと、ステアリングホイールの操作に応じて移動する表示物の表示を制御し、前記障害物が存在すると判定された場合に、前記ステアリングホイールの動きに対する前記表示物の動きを制御する第2ステップと、を備え、前記第2ステップにおいて、前記障害物が存在すると判定された場合に、前記ステアリングホイールの動きに対して前記表示物の動きが速くなるように前記表示物の表示を制御する、運転支援方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、障害物への衝突を回避するために、運転者が最適な操舵を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る運転支援システムの構成を示す模式図である。
図2】表示装置によりステアリングホイール上に模様を表示した状態を示す模式図である。
図3】表示装置によりステアリングホイール上に模様を表示した状態を示す模式図である。
図4】表示装置をプロジェクターから構成した場合に、プロジェクターの配置位置を示す模式図である。
図5】表示装置がステアリングホイールに設けられた例を示す模式図である。
図6】ドライバによるステアリングホイールの実際の操作量に対して、ステアリングホイール上の模様の動き(反応量)を変化させた場合に、ドライバの操舵感が変化する様子を実験で求めた特性図である。
図7】本実施形態の運転支援システムで行われる処理を示すフローチャートである。
図8】HUD装置によりフロントガラス上に模様を表示した例を示す模式図である。
図9】HUD装置によりフロントガラス上に模様を表示した例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る運転支援システム1000の構成を示す模式図である。運転支援システム1000は、基本的には自動車などの車両に構成されるシステムである。図1に示すように、運転支援システム1000は、車外センサ100、操舵角センサ200、車両センサ300、制御装置400、表示装置500、HUD装置600、パワーステアリング装置700、スピーカ800を有して構成されている。
【0023】
車外センサ100は、ステレオカメラ、単眼カメラ、ミリ波レーダ、赤外線センサ等から構成され、自車両周辺の人や車両などの位置、速度を測定する。車外センサ100がステレオカメラから構成される場合、ステレオカメラは、CCDセンサ、CMOSセンサ等の撮像素子を有する左右1対のカメラを有して構成され、車両外の外部環境を撮像し、撮像した画像情報を制御装置400へ送る。一例として、ステレオカメラは、色情報を取得可能なカラーカメラから構成され、車両のフロントガラスの上部に設置される。
【0024】
操舵角センサ200は、ドライバによるステアリングホイールの操作量(操舵角)を検出する。制御装置400は、運転支援システム1000の全体を制御する構成要素であって、本実施形態に係る運転支援装置として機能する。
【0025】
車両センサ300は、車両の速度、車両の加速度、車軸(ドライブシャフトなど)の角速度などの車両情報を検出する各種センサを含む。なお、これらの車両情報は一般的に車両内のCAN(Controller Area Network)で通信されるため、車両センサ100は、CANからこれらの車両情報を取得するものであっても良い。
【0026】
表示装置500は、ステアリングホイール上に模様を映し出す装置である。一例として、表示装置500は、プロジェクターから構成され、ステアリングホイールに模様を投影する。また、表示装置500は、液晶表示装置(LCD)等から構成され、ステアリングホイールに装着されるものであっても良い。
【0027】
HUD(Head−up Display)装置600は、人間の視野に直接情報を映し出す表示装置であって、自動車のフロントガラスやリヤガラスなどのガラス上に実像を表示する。HUD装置600の代わりに、ドライバの前方のダッシュパネルに液晶表示装置(LCD)等から構成される表示装置を設けても良い。パワーステアリング装置700は、ドライバ(運転者)によるステアリングホイールの操舵に応じて操舵をアシストする駆動力(アシスト力)を発生し、車両の前輪を転舵する装置である。スピーカ800は、ドライバに対する警告音を発生させる装置である。
【0028】
図2及び図3は、表示装置500によりステアリングホイール10上に模様(表示物)12を表示した状態を示す模式図である。ここで、図2は、ステアリングホイール10の円周に沿って縞状(帯状)の模様12を表示した例を示している。また、図3は、ステアリングホイール10の円周に沿って矢印形状の模様12を表示した例を示している。一例として、図2及び図3では、黒色のステアリングホイール10に対し、白色の模様12を表示した状態を示している。白色のステアリングホイール10に対して黒色の模様12を表示するなど、ステアリングホイール10と模様12の色は任意に選択できる。
【0029】
図4は、表示装置500をプロジェクター502から構成した場合に、プロジェクター502の配置位置を示す模式図である。図4は、助手席側からドライバ20を見た状態を示している。図4に示すように、プロジェクター502は、例えば車両の天井に装着されており、ステアリングホイール10に向けて光を照射し、ステアリングホイール10に模様12を表示する。
【0030】
図5は、表示装置500がステアリングホイール10に設けられた例を示す模式図である。この場合、表示装置500は、ステアリングホイール10の形状に倣った曲面の表示面を有する液晶表示装置504から構成される。
【0031】
模様12は、ドライバ20によるステアリングホイール10の操作に対応して、操作と同じ方向に移動するように表示される。つまり、模様12は、ステアリングホイール10の円周方向に沿って、ステアリング操作と同じ方向に移動する。具体的に、本実施形態では、ドライバ20の操作によるステアリングホイール10の実際の操舵速度に対して、ステアリングホイール10上での模様12の動く速さを変更することで、ステアリングホイール10の操舵力感を変化させる。
【0032】
ステアリングホイール10の実際の操舵速度に対して、ステアリングホイール10上で模様12が動く速度の方が大きければ、ドライバ20によるステアリングホイール10の操舵力感は軽く感じられる。一方、ステアリングホイール10の実際の操舵速度に対して、ステアリングホイール10上で模様12が動く速度の方が小さければ、ドライバ20によるステアリングホイール10の操舵力感は重く感じられる。
【0033】
図6は、ドライバ20によるステアリングホイール10の実際の操作量に対して、ステアリングホイール10上の模様12の動き(反応量)を変化させた場合に、ドライバ20の操舵感が変化する様子を実験で求めた特性図である。図6では、ドライバ20によるステアリングホイール10の実際の操作量に対する、ステアリングホイール10上の模様の動き(反応量)の比を横軸とし、ドライバ20の操舵に関する評価によって得られた間隔尺度値を縦軸として示している。
【0034】
この実験では、模擬装置を用いて、ステアリングホイール10の操作量を反映して変化する映像を実験参加者の前方のスクリーン上に表示した。具体的には、ステアリングホイール10上に一定間隔の黒い縞状の模様12を表示し、ステアリングホイール10の操作量に応じて模様12が追従して動くように、模様12をステアリングホイール10上に表示した。模様12は、幅約0.3cmの黒色の線が約2.0cm間隔でステアリングホイール10に沿って円周上に配置されたものとした。
【0035】
図6の横軸において、ステアリングホイール10の実際の操作量に対する、ステアリングホイール10上の模様12の動き(反応量)の比が100%の場合は、ステアリングホイール10の実際の操作量と模様12の動きが一致している状態を示している。このように、操作量と反応量が一対一の関係にある場合は、ステアリングホイール10と模様12が全く同じ動きをしているように観察されることになる。図6の縦軸に示す感覚尺度は、実験参加者が、操作量と反応量が一対一の関係にある場合の操舵力感を0とし、それよりも操舵力感が重いと感じられる場合は重いほどプラス側の数値が大きくなるように数値を選択し、操舵力感が軽いと感じられる場合は軽いほどマイナス側の数値が大きくなるように数値を選択して得られた値である。
【0036】
実験条件として、この操作量と反応量の比に基づいて、100%を基準として、25%、50%、200%、400%の合計5つの水準を設定した。具体的には、操作量に対する反応量の比が25%、50%、200%、400%のそれぞれの場合について、ステアリングホイール10を90度回転させた際に、模様12がステアリングホイール10と同じ方向に22.5度、45度、180度、360度回転することになる。また、実験参加者の前方に左右に振幅運動する指標を提示するとともに、ステアリングホイール10の往復運動によって左右に動くカーソルを表示し、カーソルでその指標を追従させる課題を実験参加者へのタスクとして設定した。ステアリングホイール10の移動量は3種類設定し、ランダムに呈示した。なお、総移動量は統一した。指標の動きとして2つの条件を連続して提示し、15名の実験参加者によって一対比較法による反力の評価を行なった。
【0037】
その結果、図6に示すように、模様12の動きが増加してステアリングホイール10の実際の操作量に対する模様12の動き(反応量)の比が増加するに伴い、反力感が低下すること、つまり反応量の増加に伴い操舵が軽く感じられることが分かった。図6に示すように、模様の動き(反応量)が増加して、ステアリングホイール10の実際の操作量に対する反応量の比が大きくなるほど、操舵に関する感覚の尺度が低下していることが分かる。つまり、反応量の増加に伴い操舵力感が軽く感じられ、反応量の減少に伴い操舵力感が重く感じられることが分かる。
【0038】
従って、ドライバ20の操作によるステアリングホイール10の実際の操舵速度に対して、ステアリングホイール10上での模様12が動く速度を変更することで、ステアリングホイール10の操舵力感を変化させることが可能である。これにより、複雑な構造を必要とせずにステアリングホイール10の操舵力感を変化させることができるため、ドライバ20がステアリング操作を最適に行うことが可能となる。
【0039】
特に、本実施形態では、車外センサ100により車両前方の障害物を検知し、ドライバが車両前方の障害物を回避するために操舵を行った際に、操舵力感を軽くして操舵を促進するように模様12を動かす。このため、制御装置400は、環境情報取得部402、環境状態判定部404、操舵角速度算出部406、表示制御部408、を有して構成されている。なお、図1に示す制御装置400の各構成要素は回路(ハードウェア)、またはCPUなどの中央演算処理装置とこれを機能させるためのプログラム(ソフトウェア)から構成することができる。
【0040】
環境情報取得部402は、車外センサ100を構成するステレオカメラの左右1組のカメラによって撮像した左右1組のステレオ画像対に対し、対応する位置のずれ量から三角測量の原理によって対象物までの距離情報を生成して取得することができる。同時に、環境情報取得部402は、画像情報から被写体の位置情報を取得することができる。また、環境情報取得部402は、三角測量の原理によって生成した距離情報に対して、周知のグルーピング処理を行い、グルーピング処理した距離情報を予め設定しておいた三次元的な立体物データ等と比較することにより、立体物データや白線データ等を検出する。これにより、制御装置400は、人物、他車両、一時停止の標識、停止線、ETCゲートなどを認識することもできる。
【0041】
また、環境情報取得部402は、三角測量の原理によって生成した人物、他車両との距離情報を用いて、人物や他車両との距離の変化量、相対速度を算出することができる。距離の変化量は、単位時間ごとに検知されるフレーム画像間の距離を積算することにより求めることができる。また、相対速度は、単位時間ごとに検知される距離を当該単位時間で割ることにより求めることができる。
【0042】
このように、環境情報取得部402は、車外センサ100から得られる車両外の画像情報を取得して画像分析処理を行い、画像情報を分析して車両外の環境情報を取得する。
【0043】
環境状態判定部404は、環境情報取得部402が取得した環境情報に基づいて、車両外の環境情報を判定する。特に、環境状態判定部404は、車両周辺に人、車両、その他の物体などの障害物が存在するか否か、および、車両周辺に存在する人、車両、その他の物体などの障害物の位置や数を判定する。このため、環境状態判定部404は、障害物が存在するか否かを判定する障害物判定部として機能する。
【0044】
操舵角速度算出部406は、操舵角センサ200の検出値からドライバ20がステアリングホイール10を操作した際の操舵角速度を算出する。表示制御部408は、表示装置500による表示を制御する構成要素である。表示制御部408は、特に、車両前方に障害物が存在する場合に、ドライバに障害物を避ける操舵を促すようにステアリングホイール10上の模様12の動きを制御する。
【0045】
ドライバ20の操作によるステアリングホイール10の実際の操舵速度は、操舵角センサ200の検出値から求めることができる。操舵角速度算出部406は、操舵角センサ200による操舵角の検出値に基づいて、所定の周期毎にステアリングホイール10の操舵角速度を求める。例えば、所定の周期を500[ms]とした場合、500[ms]の間にθ[rad]だけ操舵角が変化した場合は、操舵角速度はθ/0.5=2θ[rad/s]となる。
【0046】
表示制御部408は、操舵角速度算出部406が算出した操舵角速度に対し、ステアリングホイール10上で模様12が動く速さを制御し、模様12をステアリングホイール10上に表示するように表示装置500を制御する。模様12が動く速さは、表示制御部408により、上述した所定の周期毎に制御される。ステアリングホイール10の実際の操舵速度に対して模様12の動きを速くする場合は、操舵角速度算出部406が算出した操舵角速度よりもステアリングホイール10上で動く模様12の角速度が速くなるように模様12の表示が制御される。また、ステアリングホイール10の実際の操舵速度に対して模様12の動きを遅くする場合は、操舵角速度算出部406が算出した操舵角速度よりもステアリングホイール10上で動く模様12の角速度が遅くなるように模様12の表示が制御される。これにより、実際のステアリングホイール10の操舵角速度に対して、模様12の動きを速くしたり遅くしたりすることが可能となる。
【0047】
また、制御装置400は、障害物を検知し、ドライバが車両前方の障害物を回避するために操舵を行った際に、パワーステアリング装置700による転舵のアシスト力を制御しても良い。この場合、制御部400は、障害物が検知された場合は、障害物が検知されない場合に比べてアシスト力が大きくなるように制御を行う。これにより、障害物が検知された場合にステアリングホイール10の操舵力が軽減され、障害物を素早く回避することが可能である。
【0048】
図7は、本実施形態の運転支援システム1000で行われる処理を示すフローチャートである。図7の処理は、主に制御装置400において所定の周期毎に行われる。先ず、ステップS10では、環境情報取得部402が、車両の運転中に車外センサ100から得られる情報から車両前方の環境情報を取得する。
【0049】
次のステップS12では、環境状態判定部404が、車両前方に障害物が存在するか否かを判定する。この際、環境状態判定部404は、車両から前方の所定距離Dの範囲内に障害物が存在する場合は障害物が存在すると判定し、所定距離Dよりも遠い位置に障害物が存在する場合は障害物が存在しないと判定しても良い。所定距離Dは車両速度Vに応じて変動しても良く、その場合、車両速度Vが大きいほど所定距離Dを大きくすることができる。
【0050】
上述したように、環境情報取得部402により、障害物までの距離と、自車両と障害物との相対速度を算出することができる。障害物が自車両の前方に位置しており、障害物までの距離と自車両と障害物との相対速度が判れば、障害物に衝突するまでの時間(衝突余裕時間)を求めることができる。
【0051】
ステップS12の判定の結果、車両前方に障害物が存在する場合は、ステップS14へ進む。ステップS14では、車両センサ300の検出値から車両速度Vを取得する。一方、ステップS12の判定の結果、車両前方に障害物が存在しない場合は、処理を終了する(END)。
【0052】
ステップS14の後はステップS16へ進み、ドライバ20がステアリングホイール10を操作した際の操舵角と、操舵の際の操舵角速度を取得する。操舵角は、操舵角センサ200から取得することができる。また、操舵角速度は、操舵角速度算出部406による操舵角速度の算出結果から取得される。次のステップS18では、ステップS16で取得した操舵角に基づいて、ドライバ20がステアリングホイール10を操舵したか否かを判定する。具体的に、ステップS18では、ステップS16で取得した操舵角と所定のしきい値θthとを比較し、ステップS16で取得した操舵角が所定のしきい値θthよりも大きい場合は、ドライバ20がステアリングホイール10を操舵したと判定する。
【0053】
ステップS18でドライバ20がステアリングホイール10を操舵したと判定した場合は、ステップS20へ進む。この場合、車両前方に障害物が存在する状況下でドライバ20がステアリングホイール10を操舵しているため、ドライバ20が障害物との衝突を回避するためにステアリングホイール10を操舵していると判断できる。このため、ステップS20では、ステップS16で取得した実際の操舵角速度よりも速い速度で模様12が動くように模様12の動きを制御する。模様12は、ステップS18でドライバ20がステアリングホイール10を操舵したと判定した際の操舵の方向に動くように制御される。一方、ステップS18でドライバ20がステアリングホイール10を操舵していないと判定した場合は、処理を終了する(END)。
【0054】
次のステップS22では、障害物との衝突が操舵により回避困難であるか否かを判定する。具体的に、ステップS22では、障害物との相対速度と、障害物までの距離に基づいて求まる衝突までの時間(衝突余裕時間)が所定のしきい値t1よりも小さいか否かを判定し、衝突余裕時間が所定のしきい値t1よりも小さい場合は、障害物との衝突が操舵により回避困難であると判定する。
【0055】
ステップS22で障害物との衝突が操舵により回避困難であると判定した場合は、ステップS24へ進む。ステップS24では、フロントガラスのHUD装置600やダッシュパネルに設けられた表示装置等への警告表示、スピーカ800による警告音の発生により、ドライバ20へ注意喚起を行う。一方、ステップS22で障害物との衝突が操舵により回避困難でないと判定した場合は、処理を終了する(END)。
【0056】
なお、ステップS12において、障害物が存在するか否かを判定する代わりに、障害物と衝突する可能性を判定しても良い。この場合、例えば前述した特許文献2に記載された方法で障害物と衝突する可能性を判定しても良い。
【0057】
以上のように、ドライバ20が車両前方の障害物を避けようとしてステアリングホイール10の操舵を行った場合、ステアリングホイール10の操舵感を軽くしてステアリングによる回避操作をし易くすることが望ましい。このため、ステップS18でドライバ20がステアリングホイール10を操舵したと判定した場合は、ステップS20へ進み、ステップS14で取得した実際の操舵角速度よりも速い速度で模様12が動くように模様12の動きを制御する。これにより、ドライバ20がステアリングホイール10を操作した際に、ドライバ20が体感する操舵感が軽くなり、障害物を回避する方向へのステアリング操作を促進することができる。
【0058】
なお、ステップS12で障害物が存在すると判定された場合に模様12を表示し、障害物が存在すると判定されなかった場合には模様12を表示しなくても良い。同様に、ステップS18でドライバ20がステアリングホイール10を操舵したと判定した場合に模様12を表示し、ドライバ20がステアリングホイール10を操舵したと判定しなかった場合には模様12を表示しなくても良い。
【0059】
以上説明したように本実施形態によれば、車両前方の障害物を検知した場合に、ステアリングホイール10の実際の操舵速度に対して、ステアリングホイール10上での模様12が動く速度を速くするようにした。これにより、ドライバ20にステアリングホイール10の操舵感を軽く感じさせることができ、ドライバ20による障害物を回避する方向への操舵を促進することが可能となる。
【0060】
なお、上述した各実施形態では、模様12をステアリングホイール10上に表示する例を示したが、模様12をステアリングホイール10以外の場所に表示しても良い。例えば、ダッシュパネルに設けられた表示装置や、フロントガラスに模様12を表示しても良い。図8は、HUD装置600によりフロントガラス602上に模様12を表示した例を示す模式図である。HUD装置600は、表示制御部408の制御により、ドライバ20の操作によるステアリングホイール10の実際の操舵速度に対して、フロントガラス602上での模様12の動く速さを変更することで、ステアリングホイール10の操舵力感を変化させる。
【0061】
具体的に、図8に示す模様12は、ステアリングホイール10と同心円上に配置されており、ステアリングホイール10の実際の操舵角速度に対してステアリングホイール10の回転中心軸を中心とする模様12の角速度が制御される。これにより、模様12をステアリングホイール10上に表示した場合と同様に、フロントガラス602上で模様12の動きを制御することで、ドライバ20の操舵力感を最適にすることが可能となる。
【0062】
また、図9に示すように、HUD装置600によりフロントガラス602上に水平方向に移動する模様12を表示しても良い。この場合、ステアリングホイール10の操舵角速度と対応する模様12の基準の速度を設定し、ドライバ20の操作によるステアリングホイール10の実際の操舵速度に対して、フロントガラス602上で模様12が動く速度を基準の速度に対して変更する。これにより、模様12を円周方向に移動させる場合と同様に、ドライバ20の操舵力感を調整することが可能である。
【0063】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0064】
10 ステアリングホイール
12 模様
400 制御装置
404 環境状態判定部
406 操舵角速度算出部
408 表示制御部
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
図9