(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る運転支援システム1000の構成を示す模式図である。運転支援システム1000は、基本的には自動車などの車両に構成されるシステムである。
図1に示すように、運転支援システム1000は、心拍センサ100、車両センサ150、操舵角センサ200、車外センサ300、ドライバセンサ350、制御装置400、表示装置500、HUD装置600、パワーステアリング装置700、通信装置800、ナビゲーション装置900を有して構成されている。
【0022】
心拍センサ100は、例えばドライバが操作するステアリングホイール、ドライバが着座するシート等に設けられ、ドライバの心拍を検出する。心拍センサ100が検出したドライバ20の心拍は、制御装置400に送られる。心拍センサ100は、時計型デバイスなどのウェアラブルデバイスであっても良い。この場合、心拍センサ100は、検出した心拍を制御装置400へ無線で送信する。
【0023】
車両センサ150は、車両の速度、車両の加速度、車軸(ドライブシャフトなど)の角速度などの車両情報を検出する各種センサを含む。なお、これらの車両情報は一般的に車両内のCAN(Controller Area Network)で通信されるため、車両センサ100は、CANからこれらの車両情報を取得するものであっても良い。操舵角センサ200は、ドライバ(運転者)によるステアリングホイールの操作を検出する。
【0024】
車外センサ300は、ステレオカメラ、単眼カメラ、ミリ波レーダ、赤外線センサ等から構成され、自車両周辺の人や車両などの位置、速度を測定する。車外センサ300がステレオカメラから構成される場合、ステレオカメラは、CCDセンサ、CMOSセンサ等の撮像素子を有する左右1対のカメラを有して構成され、車両外の外部環境を撮像し、撮像した画像情報を制御装置400へ送る。一例として、ステレオカメラは、色情報を取得可能なカラーカメラから構成され、車両のフロントガラスの上部に設置される。
【0025】
ドライバセンサ350は、カメラ、視線センサ、モーションセンサ等から構成され、ドライバ(運転者)の顔を検出する。また、ドライバセンサ350は、ドライバの頭や腕の動き、視線方向などを測定する。ドライバセンサ350がカメラから構成される場合、カメラが撮像した画像を画像処理することで、ドライバの顔、ドライバの頭や腕の動き、視線方向などが取得される。また、ドライバセンサ350が視線センサから構成される場合、角膜反射法などの方法により視線検出を行う。
【0026】
制御装置400は、運転支援システム1000の全体を制御する構成要素であって、本実施形態に係る運転支援装置として機能する。表示装置500は、ステアリングホイール上に模様を映し出す装置である。一例として、表示装置500は、プロジェクターから構成され、ステアリングホイールに模様を投影する。また、表示装置500は、液晶表示装置(LCD)等から構成され、ステアリングホイールに設けられるものであっても良い。
【0027】
HUD(Head−up Display)装置600は、人間の視野に直接情報を映し出す表示装置であって、自動車のフロントガラスやリヤガラスなどのガラス上に実像を表示する。パワーステアリング装置700は、ドライバ(運転者)によるステアリングホイールの操舵に応じて操舵をアシストする駆動力(アシスト力)を発生し、車両の前輪を転舵する装置である。
【0028】
通信装置800は、車両外部と通信を行い、渋滞情報、道路情報などの各種情報を受信する。ナビゲーション装置900は、地図情報に基づいて、現在地から目的地までの経路を検索する。このため、ナビゲーション装置900は、グローバル・ポジショニング・システム(GPS:Global Positioning System)等により車両の現在位置を取得することができる。また、ナビゲーション装置900は現在地まで車両が走行してきた経路を記憶している。
【0029】
図2及び
図3は、表示装置500によりステアリングホイール10上に模様(表示物)12を表示した状態を示す模式図である。ここで、
図2は、ステアリングホイール10の円周に沿って縞状(帯状)の模様12を表示した例を示している。また、
図3は、ステアリングホイール10の円周に沿って矢印形状の模様12を表示した例を示している。一例として、
図2及び
図3では、黒色のステアリングホイール10に対し、白色の模様12を表示した状態を示している。白色のステアリングホイール10に対して黒色の模様12を表示するなど、ステアリングホイール10と模様12の色は任意に選択できる。
【0030】
図4は、表示装置500をプロジェクター502から構成した場合に、プロジェクター502の配置位置を示す模式図である。
図4は、助手席側からドライバ20を見た状態を示している。
図4に示すように、プロジェクター502は、例えば車両の天井に装着されており、ステアリングホイール10に向けて光を照射し、ステアリングホイール10に模様12を表示する。
【0031】
図5は、表示装置500がステアリングホイール10に設けられた例を示す模式図である。この場合、表示装置500は、ステアリングホイール10の形状に倣った曲面の表示面を有する液晶表示装置504から構成される。
【0032】
模様12は、ドライバ20によるステアリングホイール10の操作に対応して、操作と同じ方向に移動するように表示される。つまり、模様12は、ステアリングホイール10の円周方向に沿って、ステアリング操作と同じ方向に移動する。具体的に、本実施形態では、ドライバ20の操作によるステアリングホイール10の実際の操舵速度に対して、ステアリングホイール10上での模様12の動く速さを変更することで、ステアリングホイール10の操舵力感を変化させる。
【0033】
ステアリングホイール10の実際の操舵速度に対して、ステアリングホイール10上で模様12が動く速度の方が大きければ、ドライバ20によるステアリングホイール10の操舵力感は軽く感じられる。一方、ステアリングホイール10の実際の操舵速度に対して、ステアリングホイール10上で模様12が動く速度の方が小さければ、ドライバ20によるステアリングホイール10の操舵力感は重く感じられる。
【0034】
図6は、ドライバ20によるステアリングホイール10の実際の操作量に対して、ステアリングホイール10上の模様12の動き(反応量)を変化させた場合に、ドライバ20の操舵感が変化する様子を実験で求めた特性図である。
図6では、ドライバ20によるステアリングホイール10の実際の操作量に対する、ステアリングホイール10上の模様の動き(反応量)の比を横軸とし、ドライバ20の操舵に関する評価によって得られた間隔尺度値を縦軸として示している。
【0035】
この実験では、模擬装置を用いて、ステアリングホイール10の操作量を反映して変化する映像を実験参加者の前方のスクリーン上に表示した。具体的には、ステアリングホイール10上に一定間隔の黒い縞状の模様12を表示し、ステアリングホイール10の操作量に応じて模様12が追従して動くように、模様12をステアリングホイール10上に表示した。模様12は、幅約0.3cmの黒色の線が約2.0cm間隔でステアリングホイール10に沿って円周上に配置されたものとした。
【0036】
図6の横軸において、ステアリングホイール10の実際の操作量に対する、ステアリングホイール10上の模様12の動き(反応量)の比が100%の場合は、ステアリングホイール10の実際の操作量と模様12の動きが一致している状態を示している。このように、操作量と反応量が一対一の関係にある場合は、ステアリングホイール10と模様12が全く同じ動きをしているように観察されることになる。
図6の縦軸に示す感覚尺度は、実験参加者が、操作量と反応量が一対一の関係にある場合の操舵力感を0とし、それよりも操舵力感が重いと感じられる場合は重いほどプラス側の数値が大きくなるように数値を選択し、操舵力感が軽いと感じられる場合は軽いほどマイナス側の数値が大きくなるように数値を選択して得られた値である。
【0037】
実験条件として、この操作量と反応量の比に基づいて、100%を基準として、25%、50%、200%、400%の合計5つの水準を設定した。具体的には、操作量に対する反応量の比が25%、50%、200%、400%のそれぞれの場合について、ステアリングホイール10を90度回転させた際に、模様12がステアリングホイール10と同じ方向に22.5度、45度、180度、360度回転することになる。また、実験参加者の前方に左右に振幅運動する指標を提示するとともに、ステアリングホイール10の往復運動によって左右に動くカーソルを表示し、カーソルでその指標を追従させる課題を実験参加者へのタスクとして設定した。ステアリングホイール10の移動量は3種類設定し、ランダムに呈示した。なお、総移動量は統一した。指標の動きとして2つの条件を連続して提示し、15名の実験参加者によって一対比較法による反力の評価を行なった。
【0038】
その結果、
図6に示すように、模様12の動きが増加してステアリングホイール10の実際の操作量に対する模様12の動き(反応量)の比が増加するに伴い、反力感が低下すること、つまり反応量の増加に伴い操舵が軽く感じられることが分かった。
図6に示すように、模様の動き(反応量)が増加して、ステアリングホイール10の実際の操作量に対する反応量の比が大きくなるほど、操舵に関する感覚の尺度が低下していることが分かる。つまり、反応量の増加に伴い操舵力感が軽く感じられ、反応量の減少に伴い操舵力感が重く感じられることが分かる。
【0039】
従って、ドライバ20の操作によるステアリングホイール10の実際の操舵速度に対して、ステアリングホイール10上での模様12が動く速度を変更することで、ステアリングホイール10の操舵力感を変化させることが可能である。これにより、複雑な構造を必要とせずにステアリングホイール10の操舵力感を変化させることができるため、ドライバ20がステアリング操作を最適に行うことが可能となる。
【0040】
特に、本実施形態では、ドライバ20の疲労度に応じて、ステアリングホイール10の実際の操舵速度に対する模様12の動く速度を変更する。このため、制御装置400は、環境情報取得部402、環境状態判定部404、ドライバの状態を判定するドライバ状態判定部405、ドライバ20の疲労度を推定する疲労度推定部406、操舵角センサ200の検出値からドライバ20がステアリングホイール10を操作した際の操舵角速度を算出する操舵角速度算出部408、ドライバ20の疲労度に基づいて模様12の動きを制御する表示制御部410、を有して構成されている。なお、
図1に示す制御装置400の各構成要素は回路(ハードウェア)、またはCPUなどの中央演算処理装置とこれを機能させるためのプログラム(ソフトウェア)から構成することができる。
【0041】
環境情報取得部402は、車外センサ300を構成するステレオカメラの左右1組のカメラによって撮像した左右1組のステレオ画像対に対し、対応する位置のずれ量から三角測量の原理によって対象物までの距離情報を生成して取得することができる。同時に、環境情報取得部402は、画像情報から被写体の位置情報を取得することができる。また、環境情報取得部402は、三角測量の原理によって生成した距離情報に対して、周知のグルーピング処理を行い、グルーピング処理した距離情報を予め設定しておいた三次元的な立体物データ等と比較することにより、立体物データや白線データ等を検出する。これにより、制御装置400は、人物、他車両、一時停止の標識、停止線、ETCゲートなどを認識することもできる。
【0042】
また、環境情報取得部402は、三角測量の原理によって生成した人物、他車両との距離情報を用いて、人物や他車両との距離の変化量、相対速度を算出することができる。距離の変化量は、単位時間ごとに検知されるフレーム画像間の距離を積算することにより求めることができる。また、相対速度は、単位時間ごとに検知される距離を当該単位時間で割ることにより求めることができる。
【0043】
このように、環境情報取得部402は、車外センサ300から得られる車両外の画像情報を取得して画像分析処理を行い、画像情報の分析結果から車両外の環境情報を取得する。
【0044】
環境状態判定部404は、環境情報取得部402が取得した環境情報に基づいて、車両外の環境情報を判定する。特に、環境状態判定部404は、車両周辺に人、車両、その他の物体などの障害物が存在するか否か、および、車両周辺に存在する人、車両、その他の物体などの障害物の数を判定する。
【0045】
疲労度推定部406は、心拍センサ100、車外センサ300、ドライバセンサ350が検知した情報に基づいてドライバ20の疲労度を推定する。また、疲労度推定部406は、通信装置800が外部から受信した情報に基づいて、ドライバ20の疲労度を推定する。以下では、疲労度推定部406がドライバ20の疲労度を推定する方法について説明する。
【0046】
心拍センサ100が検知した情報に基づいてドライバ20の疲労度を推定する場合、心拍変動の時系列データの高周波成分(LH)と低周波成分(LF)の割合(LF/LH)から疲労度を推定する。具体的に、交感神経と副交感神経の緊張状態のバランスによって、心拍変動への高周波成分(LH)の変動波と低周波成分(LF)の変動波の現れる大きさが変わってくることが知られている。従って、これを利用して心拍変動から自律神経のバランスを推定することができる。なお、高周波成分(LH)は交換神経系成分に対応し、低周波成分(LF)は副交感神経系成分に対応する。疲労度は、交感神経と副交感神経の緊張の程度、バランスから求めることができ、交感神経が緊張状態にあれば「ストレス状態」で疲労していると推定でき、反対に、副交感神経が緊張状態にあれば「リラックス状態」と推定することができる。つまり、高周波成分(LH)と低周波成分(LF)の割合(LF/LH)は、疲労度が増すほど低下する。
【0047】
従って、疲労度推定部402は、心拍変動の時系列データの高周波成分(LH)と低周波成分(LF)の割合(LH/FH)に基づいて、ドライバ20の疲労度を推定することができる。
【0048】
車外センサ300が検知した情報に基づいてドライバ20の疲労度を推定する場合、疲労度推定部406は、環境情報取得部402が取得した情報に基づいて環境状態判定部404が判定した車両周辺の人、車両、その他の物体などの障害物の数を取得する。車両周辺に存在する障害物の数が多いほど、ドライバ20は障害物に気を使いながら運転を行うことになる。従って、疲労度推定部406は、障害物の数が多いほど、ドライバ20の疲労度が高いものと推定する。
【0049】
図7は、ドライバセンサ350が検知した情報に基づいてドライバ20の疲労度を推定する場合であって、ドライバセンサ350がカメラから構成される場合に、ドライバセンサ350がドライバ20を撮影している状態を示す模式図である。
図7に示すように、ドライバセンサ350は、一例としてステアリングコラム352の上部に設置される。
【0050】
ドライバセンサ350がカメラから構成される場合、ドライバセンサ350によって撮影された画像は、制御装置400に入力される。疲労度推定部406は、入力画像から目、鼻、口など顔の各部位の特徴点の位置情報を検知し、位置情報に基づいて眠気、居眠りなど前方不注意の可能性などドライバの状態を判定する。
【0051】
図8は、ドライバの口が開いているか否かを判定する開口検知を示す模式図である。
図8に示すように、口の上下の特徴点間の距離D1から口の開閉状態を判定し、特徴点間の距離D1が所定値を超える場合(
図8に示す開口状態)では、ドライバの口が開いている可能性があり、あくびの可能性があると判定することができる。また、例えば開口状態のまま一定時間が経過する状況が複数回検知される場合は、居眠りの危険性が増大していると判断できる。
【0052】
図9は、ドライバ目が閉じているか否かを判定する様子を示す模式図である。
図9に示すように、目の上下の特徴点間の距離D2から目が閉じていることを検知し、特徴点間の距離D2が所定値以下の場合(
図9に示す目閉じ状態)では、居眠りの可能性があると判定することができる。居眠りをしているか否かの判定は、例えば基準時間に対して目が閉じている時間の比率(閉眼率)が所定のしきい値を超えたか否かによって判定することができる。また、目閉じ検知が複数回検知されると居眠りの危険性が増大していると判断できる。また、画像処理により瞬きを検出し、瞬きの回数に基づいて居眠りをしているか否かの判定を行っても良い。
図8、
図9に関連するこれらの判定は、ドライバ状態判定部405によって行われる。疲労度推定部406は、ドライバ状態判定部405による判定結果に基づいてドライバ20の疲労度を推定する。
【0053】
ドライバセンサ350が検知した情報に基づいてドライバ20の疲労度を推定する場合に、顔の表情に基づいて疲労度を判定することもできる。この場合、ドライバ状態判定部405によりドライバ20の顔の表情を判定する。予め疲労状態を定義した顔画像と、現状の顔画像とを比較し、比較の結果に応じて疲労度を推定する。主観評価によって数段階の疲労度を定義した人物の複数の顔画像を教師データとして学習させ、ドライバの現在の顔画像を入力して対比し、疲労度を判定する。
【0054】
図10は、予め疲労状態を定義した顔画像に基づいて疲労度推定部406が疲労度を推定する手法を示す模式図である。
図10に示すように、顔の表情の画像情報と、各画像情報に対応する疲労度(疲労度1〜4)とが対応付けられて制御装置400内のメモリ等に予め保持されている。ドライバ状態判定部405は、ドライバセンサ350から取得したドライバ20の顔の画像情報と、予め保持している
図10に示す画像情報とをブロックマッチング等の方法により対比し、
図10に示す画像情報の中からドライバ20の画像情報との類似度が高いものを抽出し、抽出した画像情報に対応する疲労度に基づいてドライバ20の疲労度を判定する。
【0055】
また、通信装置800が外部から受信した情報に基づいて、ドライバ20の疲労度を推定する場合、疲労度推定部406は、通信装置800が受信した車両周辺の交通量、渋滞情報に基づいてドライバの疲労度を推定する。例えば、車両周辺の交通量が多いほど、ドライバ20の疲労度が高いことが推定できる。また、車両周辺の道路に渋滞が発生している場合は、渋滞の度合いに応じてドライバ20の疲労度を推定することができる。この場合、渋滞している距離が長いほど、ドライバの疲労度が高いことが推定できる。
【0056】
また、疲労度推定部206は、通信装置800が受信した車両周辺の道路情報等に基づいてドライバの疲労度を推定する。例えば、車両周辺の道路情報に基づいて、道路が狭かったり、カーブが連続している場合は、ドライバ20の疲労度が高いことが推定できる。
【0057】
また、疲労度推定部206は、ナビゲーション装置900から得られる情報に基づいて、現在位置まで走行した経路の道路情報、または、これから目的地に向けて走行する経路の道路情報に基づいて、ドライバの疲労度を推定することもできる。例えば、現在位置まで走行した経路または目的地に向けて走行する経路において、所定区間内におけるカーブ区間の割合が高いほど、ドライバ20の疲労度が高いことが推定できる。
【0058】
また、疲労度推定部206は、操舵角速度から操舵角加速度を算出し、一定時間内に操舵角加速度が所定のしきい値を超えた回数に基づいてドライバ20の疲労度を推定することもできる。操舵角加速度が所定のしきい値を超えた回数が多いほど、急激なステアリング操作が行われている度合いが高くなる。つまり、一定時間内に操舵角加速度が所定のしきい値を超えた回数に基づいて操舵の滑らかさを判定することができ、これに基づいてドライバ20の疲労度を推定することが可能である。
【0059】
以上のようにして疲労度推定部206によりドライバ20の疲労度が推定されると、表示制御部410は、ドライバ20の疲労度に応じて、実際の操舵速度に対する模様12の動く速度を変更する。
【0060】
ドライバ20の操作によるステアリングホイール10の実際の操舵速度は、操舵角センサ200の検出値から求めることができる。操舵角速度算出部408は、操舵角センサ200による操舵角の検出値に基づいて、所定の周期毎にステアリングホイール10の操舵角速度を求める。例えば、所定の周期を500[ms]とした場合、500[ms]の間にθ[rad]だけ操舵角が変化した場合は、操舵角速度はθ/0.5=2θ[rad/s]となる。
【0061】
表示制御部410は、操舵角速度算出部408が算出した操舵角速度に対し、ステアリングホイール10上で模様12が動く速さを制御し、模様12をステアリングホイール10上に表示するように表示装置500を制御する。模様12が動く速さは、表示制御部410により、上述した所定の周期毎に制御される。ステアリングホイール10の実際の操舵速度に対して模様12の動きを速くする場合は、操舵角速度算出部10が算出した操舵角速度よりもステアリングホイール10上で動く模様12の角速度が速くなるように模様12の表示が制御される。また、ステアリングホイール10の実際の操舵速度に対して模様12の動きを遅くする場合は、操舵角速度算出部410が算出した操舵角速度よりもステアリングホイール10上で動く模様12の角速度が遅くなるように模様12の表示が制御される。これにより、実際のステアリングホイール10の操舵角速度に対して、模様12の動きを速くしたり遅くしたりすることが可能となる。
【0062】
また、制御装置400は、ドライバ20の疲労度に応じて、パワーステアリング装置700による転舵のアシスト力を制御しても良い。この場合、制御部400は、疲労度が大きい場合は疲労度が小さい場合に比べてアシスト力が大きくなるように制御を行う。
【0063】
図11は、本実施形態の運転支援システム1000で行われる処理を示すフローチャートである。
図11の処理は、主に制御装置400において所定の周期毎に行われる。
図11の処理では、疲労度推定部406が推定したドライバの疲労度に基づいて、模様12の動きを変化させる。具体的に、ドライバ20の疲労度が高い場合は、模様12の動きを速くして操舵感を軽く感じさせる。また、ドライバ20の疲労度が低い場合は、模様12の動きを遅くし、操舵感を重く感じさせ、操舵感を向上させても良い。
【0064】
先ず、ステップS10では、疲労度推定部406がドライバの疲労度を推定する。次のステップS12では、ドライバ20がステアリングホイール10を操作した際の速度(操舵角速度)が取得される。
【0065】
次のステップS14では、ドライバ20の疲労度が一定値以上であるかを判定する。具体的に、疲労度推定部406は、推定した疲労度を数値化(規格化)して疲労度レベルを求め、疲労度レベルが所定のしきい値xよりも大きいか否かを判定する。
【0066】
ステップS14で疲労度が一定値以上の場合は、ステップS16へ進み、ステアリングホイール10上に模様12を表示させる。一方、ステップS14で疲労度が一定値以上でない場合は、処理を終了する。
【0067】
ステップS16の後はステップS18へ進み、ドライバ20のステアリングホイール10の操作による操舵角が一定値以上であるか否かを判定する。具体的に、ステップS18では、操舵角センサ200から得られる操舵角の情報に基づいて、操舵角が所定のしきい値θthを超えているか否かを判定する。
【0068】
ステップS18で操舵角が所定のしきい値θthを超えている場合は、ステップS20へ進む。ステップS20へ進んだ場合は、操舵角が所定のしきい値θthを超えているため、ドライバ20によりステアリングホイール10が操作されていると判断できる。このため、ステップS20では、ドライバ20の操作によるステアリングホイール10の実際の操舵角速度に対して、ステアリングホイール10上で模様12が動く際の角速度が速くなるように模様12の動きが制御される。ステップS20の後は処理を終了する。また、ステップS18で操舵角が所定のしきい値θthを超えていない場合は、処理を終了する。
【0069】
以上のように、ドライバ20の疲労度が一定値以上の場合、ステアリングホイール10の操舵感を軽くしてステアリング操作をし易くすることが望ましい。このため、ステップS14では、ドライバ20の疲労度が一定値以上であるかを判定する。制御装置400の疲労度推定部206は、疲労度レベルが所定のしきい値xよりも大きいか否かを判定する。そして、制御装置400の表示制御部410は、疲労度レベルが所定のしきい値xよりも大きい場合は、ステアリングホイール10の実際の操舵速度に対して、ステアリングホイール10上での模様12が動く速度を速くするように制御を行う。これにより、ドライバ20がステアリングホイール10を操作した際に、ドライバ20が体感する操舵感が軽くなり、ドライバ20が疲労状態であってもステアリング操作を軽快に行うことが可能となる。これにより、ドライバ20の疲労時においても安定して車両を運転することが可能となる。
【0070】
なお、上述した実施形態では、模様12をステアリングホイール10上に表示する例を示したが、模様12をステアリングホイール10以外の場所に表示しても良い。例えば、ダッシュパネルや、フロントガラスに模様12を表示しても良い。
図12は、HUD装置600によりフロントガラス602上に模様12を表示した例を示す模式図である。HUD装置600は、表示制御部410の制御により、ドライバ20の操作によるステアリングホイール10の実際の操舵速度に対して、フロントガラス602上での模様12の動く速さを変更することで、ステアリングホイール10の操舵力感を変化させる。
【0071】
具体的に、
図12に示す模様12は、ステアリングホイール10と同心円上に配置されており、ステアリングホイール10の実際の操舵角速度に対してステアリングホイール10の回転中心軸を中心とする模様12の角速度が制御される。これにより、模様12をステアリングホイール10上に表示した場合と同様に、フロントガラス602上で模様12の動きを制御することで、ドライバ20の操舵力感を最適にすることが可能となる。
【0072】
また、
図13に示すように、HUD装置600によりフロントガラス602上に水平方向に移動する模様12を表示しても良い。この場合、ステアリングホイール10の操舵角速度と対応する模様12の基準の速度を設定し、ドライバ20の操作によるステアリングホイール10の実際の操舵角速度に対して、フロントガラス602上で模様12が動く速度を基準の速度に対して変更する。これにより、模様12を円周方向に移動させる場合と同様に、操舵力感を調整することが可能である。
【0073】
以上説明したように本実施形態によれば、ドライバ20の疲労度を推定し、疲労度が所定のしきい値を超える場合は、ステアリングホイール10に模様12を表示し、実際のステアリングホイール10の操舵角速度よりも模様12の動きが速くなるように制御を行う。これにより、ドライバ20の操舵力感を低下することができ、ドライバ20が疲労している場合であってもステアリング操作を促進することが可能となる。
【0074】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。