特許第6948211号(P6948211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948211
(24)【登録日】2021年9月22日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/22 20060101AFI20210930BHJP
   H01Q 1/20 20060101ALI20210930BHJP
   H01Q 1/10 20060101ALI20210930BHJP
   H01Q 1/12 20060101ALI20210930BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20210930BHJP
   B60R 13/04 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   H01Q1/22 B
   H01Q1/20
   H01Q1/10 D
   H01Q1/12 Z
   B60R11/02 A
   B60R13/04 A
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-192370(P2017-192370)
(22)【出願日】2017年10月2日
(65)【公開番号】特開2019-68278(P2019-68278A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】椎名 岳人
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2016/0082880(US,A1)
【文献】 特開2004−357249(JP,A)
【文献】 特開2017−007577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
B60R 13/04
H01Q 1/00− 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を送受信するアンテナエレメントを車両のルーフレールの上端よりも高い位置に配置して収容する本体部と、
前記車両に設けられた前記本体部を前記車両の高さ方向に移動させる本体部移動機構と、を有し、
前記本体部移動機構は、前記本体部に与えられる外力であって、前記高さ方向における前記車両に近づく方向の外力に応じて、前記本体部を前記高さ方向における前記車両側に移動させ、前記外力が減少するに連れて、前記本体部を前記高さ方向における前記車両から離れる方向に移動させるアンテナ装置。
【請求項2】
前記本体部移動機構は、前記高さ方向における前記車両に近づく方向の前記外力に応じて前記車両側に移動された前記本体部の上端が前記ルーフレールの上端よりも低くなる位置まで前記本体部を収容可能な収容部を有する請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記本体部移動機構は、前記本体部の下方に設けられ、前記高さ方向における前記車両から離れる方向に前記本体部を付勢する弾性部材を有する請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記本体部移動機構は、前記アンテナエレメントが前記ルーフレールの上端よりも高い位置に配置された前記本体部の移動を妨げるロック機構を有する請求項1から3のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記ロック機構は、
前記本体部の後面に設けられた略椀状の窪み部と、
前記窪み部に組み合わされる突起部と、
前記車両に支持され、前記突起部を前記本体部に向かう方向に付勢する第2弾性部材と、
を有する請求項4に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置、特に、ルーフレールを備えた車両に搭載されるアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両のルーフに取り付けられるアンテナ装置が開示されている。特許文献1のアンテナ装置は、車両から突出している高さが低く(例えば、約70mm以下)、先端に行くほど低くなるとともに側面も内側に絞った流線形のアンテナケースにアンテナ部が収容されている。これにより、このアンテナ装置は、車庫入れ時や洗車時にアンテナ部が破損することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5237617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ルーフレールを備えた車両のルーフに特許文献1のアンテナ装置を取り付けた場合、アンテナ装置から送受信される電波がルーフレールによって干渉し、アンテナ装置による車両の水平方向の全方位通信が阻害されるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、ルーフレールによる電波の干渉を抑制し、全方位通信が可能なアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のアンテナ装置は、電波を送受信するアンテナエレメントを車両のルーフレールの上端よりも高い位置に配置して収容する本体部と、車両に設けられた本体部を車両の高さ方向に移動させる本体部移動機構と、を有し、本体部移動機構は、本体部に与えられる外力であって、高さ方向における車両に近づく方向の外力に応じて、本体部を高さ方向における車両側に移動させ、外力が減少するに連れて、本体部を高さ方向における車両から離れる方向に移動させる。
【0007】
本体部移動機構は、高さ方向における車両に近づく方向の外力に応じて車両側に移動された本体部の上端がルーフレールの上端よりも低くなる位置まで本体部を収容可能な収容部を有してもよい。
【0008】
本体部移動機構は、本体部の下方に設けられ、高さ方向における車両から離れる方向に本体部を付勢する弾性部材を有してもよい。
【0009】
本体部移動機構は、アンテナエレメントがルーフレールの上端よりも高い位置に配置された本体部の移動を妨げるロック機構を有してもよい。
【0010】
ロック機構は、本体部の後面に設けられた略椀状の窪み部と、窪み部に組み合わされる突起部と、車両に支持され、突起部を本体部に向かう方向に付勢する第2弾性部材と、を有してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ルーフレールによる電波の干渉を抑制し、全方位通信が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態によるアンテナ装置が設けられた車両の構成を示す平面概略図である。
図2】本実施形態によるアンテナ装置が設けられた車両の構成を示す部分側面図である。
図3】ルーフレールが使用される場合の車両の構成を示す平面概略図である。
図4】ルーフレールが使用される場合の車両の構成を示す部分側面図である。
図5】アンテナ装置の構成を示す断面図である。
図6】アンテナ装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1および図2は、本実施形態によるアンテナ装置1が設けられた車両2の構成を示す平面概略図および部分側面図である。図2は、車両2のルーフ3付近を示している。以下、車両2を基準として、進行方向を前方向とし、後進方向を後方向とし、進行方向に対して左の方向を左方向とし、進行方向に対して右の方向を右方向とする。
【0015】
車両2のルーフ3には、2本のルーフレール10L、10Rが設けられている。ルーフレール10L、10Rは、車幅方向に離隔して車両2の前後方向に延在している。ルーフレール10Lは、ルーフ3上において、左側端付近に配置されており、ルーフレール10Rは、ルーフ3上において、右側端付近に配置されている。ルーフレール10L、10Rを区別しないときは、ルーフレール10と表記する。
【0016】
ルーフレール10は、ルーフレール本体部11、クロスバー12、軸部13およびクロスバー状態スイッチ14を含んで構成される。ルーフレール本体部11は、車両の前後方向に延在する略棒状に形成されており、ルーフ3上に固定される。
【0017】
クロスバー12は、ルーフレール本体部11よりも短く、ルーフレール10Lとルーフレール10Rとの間よりも長い略棒状に形成されており、ルーフレール本体部11上に設けられる。クロスバー12の一端は、軸部13によってルーフレール本体部11に軸支されている。クロスバー12は、軸部13を支点として、ルーフ3と平行な面に沿って回転可能となっている。
【0018】
クロスバー12の他端は、ルーフレール本体部11に対して、着脱可能となっている。クロスバー12の他端には、クロスバー状態スイッチ14が設けられている。クロスバー状態スイッチ14は、押し込み操作されると、ルーフレール本体部11に支持されているクロスバー12の他端をルーフレール本体部11から離脱させる。例えば、クロスバー12を挟持する爪部がルーフレール本体部11に設けられており、クロスバー状態スイッチ14は、押し込み操作されると爪部を開いてルーフレール本体部11からクロスバー12の他端を離脱させる。
【0019】
左側のルーフレール10Lでは、軸部13が後方側の端部に設けられており、クロスバー状態スイッチ14が前方側の端部に設けられている。右側のルーフレール10Rでは、軸部13が前方側の端部に設けられており、クロスバー状態スイッチ14が後方側の端部に設けられている。
【0020】
図1では、ルーフレール10Lのクロスバー12が、ルーフレール10Lのルーフレール本体部11に支持されている。また、ルーフレール10Rのクロスバー12がルーフレール10Rのルーフレール本体部11に支持されている。すなわち、図1では、クロスバー12とルーフレール本体部11とが平行となっており、クロスバー12がルーフレール本体部11に対して閉じが状態となっている。ルーフレール10が使用されない(すなわち、ルーフレール10に荷物を積載しない)場合には、図1のように、クロスバー12とルーフレール本体部11とが平行な状態となる。
【0021】
図3および図4は、ルーフレール10が使用される(すなわち、ルーフレール10に荷物が積載される)場合の車両2の構成を示す平面概略図および部分側面図である。図4は、車両2のルーフ3付近を示している。図3では、クロスバー12とルーフレール本体部11とが垂直に交差しており、クロスバー12がルーフレール本体部11に対して開いた状態となっている。具体的には、左側のルーフレール10Lのクロスバー12のクロスバー状態スイッチ14側の端部(軸部13とは反対側の端部)が、右側のルーフレール10Rのルーフレール本体部11に支持されている。また、右側のルーフレール10Rのクロスバー12のクロスバー状態スイッチ14側の端部(軸部13とは反対側の端部)が、左側のルーフレール10Lのルーフレール本体部11に支持されている。
【0022】
ルーフレール10の使用を開始する場合には、クロスバー12を図1に示す姿勢から図3に示す姿勢に変える。具体的には、一方のルーフレール10においてクロスバー状態スイッチ14が押し込み操作され、ルーフレール本体部11から離脱したクロスバー12が、他方のルーフレール10に向かう方向に回転操作される。回転操作されたクロスバー12のクロスバー状態スイッチ14側の端部が、当該他方のルーフレール10の爪部に挟持される。これにより、クロスバー12は、両方のルーフレール10によって保持される。ルーフレール10の使用を終了する場合には、使用を開始する場合の逆の操作を行えばよい。
【0023】
アンテナ装置1は、ルーフ3上において、ルーフレール10Lとルーフレール10Rとの間であり、車両2の後方中央付近に配置されている。
【0024】
図5および図6は、アンテナ装置1の構成を示す断面図である。図5は、ルーフレール10に荷物が積載されない場合が示されている。図6は、ルーフレール10に荷物が積載される場合が示されている。アンテナ装置1は、本体部20、本体部移動機構30を含んで構成される。
【0025】
本体部20は、内部に空間が形成されたケースである。本体部20は、上部21と下部22とに区分される。本体部20の上部21は、前後方向の長さに対して幅が短くなっており、上方の先端および前方の先端に行くほど幅が漸減している。上部21は、前方の先端に行くほど高さ寸法が漸減している。すなわち、上部21は、流線形のシャークフィンのような形状となっている。本体部20の下部22は、上部21における下方の縁から鉛直下方に連続して形成される。本体部20は、高さ寸法がルーフレール10の高さ寸法よりも大きくなっている。
【0026】
本体部20内には、アンテナエレメント23および台座24が収容されている。台座24は、ブロック状に形成されており、本体部20の底部25上に配置されている。台座24の上には、アンテナエレメント23が配置されている。アンテナエレメント23は、本体部20内において、本体部20の上端26付近に配置されている。アンテナエレメント23は、制御部(図示略)に電気的に接続されており、電波の送受信を行う。
【0027】
制御部は、車両2に搭載される車車間通信ユニットであり、CPU、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路で構成される。制御部は、アンテナエレメント23が受信した電波による信号を受け取るとともに、信号をアンテナエレメント23に出力して電波を送信させる。このようにして、制御部は、周囲の車両(例えば、先行車両など)と通信を行う。
【0028】
本体部移動機構30は、本体部20を車両2の高さ方向に移動させる。本体部移動機構30は、収容部40、弾性部材50およびロック機構60を含んで構成される。
【0029】
収容部40は、ルーフ3における後方中央において、ルーフ3の一部を鉛直下方に窪ませて形成される。収容部40は、側面41および底面42によって囲まれた収容空間43を形成する。収容空間43は、ルーフ3の上面に開口する。収容部40は、収容空間43に本体部20を収容することが可能となっている。例えば、収容部40の深さ寸法は、本体部20の下部22の高さ寸法よりも大きくなっている。本体部20は、収容部40の側面41に沿って、車両2の高さ方向に摺動可能となっている。
【0030】
弾性部材50は、例えば、スプリングである。弾性部材50は、本体部20の下方に設けられている。具体的には、弾性部材50は、収容空間43に収容されており、一端が収容部40の底面42に固定されており、他端が本体部20の底部25に固定されている。弾性部材50は、底部25における前方および後方の2箇所に設けられている。弾性部材50は、車両2の高さ方向における車両2から離れる方向(すなわち、鉛直上方向。以下、単に上方向という)に本体部20を付勢する。換言すると、弾性部材50は、本体部20を収容部40から押し出す方向に付勢する。
【0031】
ロック機構60は、窪み部61、支持体62、突起部63および弾性部材64を含んで構成される。窪み部61は、本体部20の後面27に設けられている。窪み部61は、後面27において、底部25寄りに設けられている。窪み部61は、後面27の一部を前方に窪ませて形成される。窪み部61は、略椀状に形成されている。窪み部61よりも上方の後面27は、車両2の高さ方向に沿って概ね平坦となっている。
【0032】
支持体62は、ルーフ3上に固定されるブロックである。支持体62は、ルーフ3上において本体部20よりも後方に配置されており、本体部20の後面27に近接している。支持体62には、本体部20の後面27に対向する面に開口する窪み部65が形成されている。窪み部65は、支持体62内に空間を形成する。
【0033】
窪み部65によって形成される空間には、突起部63および弾性部材64が収容される。突起部63は、短い略棒状に形成されている。突起部63における本体部20の後面27に対向する先端66は、本体部20に向かって滑らかに突出する突曲面状に形成されている。突起部63の先端66は、窪み部61に組み合わされる。突起部63は、窪み部65内において車両2の前後方向に摺動可能となっている。
【0034】
弾性部材64は、例えば、スプリングである。弾性部材64は、一端が支持体62の窪み部65の底面に固定されており、他端が突起部63における先端66とは反対側の端部に固定されている。弾性部材64は、突起部63を本体部20に向かう方向に付勢する。突起部63の先端66は、弾性部材64の付勢力によって、本体部20に押し付けられる。
【0035】
ここで、ルーフレール10に荷物が積載される場合、荷物の大きさや積載の仕方などによっては、荷物が本体部20上に積まれることがある。荷物が本体部20上に積まれると、本体部20には、車両2の高さ方向における車両2に近づく方向(すなわち、鉛直下方向。以下、単に下方向という)の外力Fが与えられることとなる。この外力Fは、荷物の重さに応じた大きさとなる。
【0036】
下方向の外力Fが本体部20に与えられていない場合、図5に示すように、突起部63の先端66は、窪み部61に収容された状態で本体部20に押し付けられる。本体部20は、弾性部材50、64の付勢力に抗する外力Fが与えられない限り、ロック機構60によって移動が妨げられる。
【0037】
ロック機構60によって本体部20の移動が妨げられている場合、底部25が収容部40の開口面付近に位置し、本体部20は、収容部40から大きく突出する。このとき、アンテナエレメント23は、ルーフレール10の上端15よりも高い位置に配置される。
【0038】
ここで、図2に示すように、アンテナエレメント23と、ルーフレール10における車両2の前方側の上端15とを結ぶ仮想線Lを想定する。本体部20は、アンテナエレメント23を通るルーフ3に平行な面(水平面)Sに対する仮想線Lの角度AEが6度以上となる位置に配置される。すなわち、アンテナエレメント23は、前方に仰角でマイナス6度の方向に電波を放射したときに、放射した電波がルーフレール10に当たらないような高さに配置される。この角度は、先行車両との車車間通信を行う際の路面の勾配等を考慮して決定されている。例えば、ルーフレール10の長さが約1600mmでルーフレール10の高さが約70mmの場合、ルーフ3からアンテナエレメント23までの高さHHは、約180mmとなる。
【0039】
荷物の積載により、下方向の外力Fが本体部20に与えられ、この外力Fが弾性部材50、64の付勢力に打ち勝ったとする。このとき、図6に示すように、ロック機構60は、本体部20の移動を妨げることを解除する。そして、本体部移動機構30は、外力Fに応じて、本体部20を下方向に移動させる。
【0040】
具体的には、ロック機構60の突起部63の先端66は、外力Fに応じて窪み部61の曲面に沿って移動していく。ロック機構60の弾性部材64は、突起部63の先端66の移動に合わせて、収縮していく。すなわち、突起部63の先端66は、本体部20に対して相対的に上方および後方にずれる。これにより、突起部63の先端66は、窪み部61内から出て、窪み部61よりも上方の後面27に押し当てられることになる。先端66が窪み部61内から出ると、本体部20は、下方向に摺動可能となる。
【0041】
また、本体部移動機構30の弾性部材50は、外力Fに応じて収縮していき、その結果、本体部20が収容空間43に引き込まれる方向に摺動する。図4に示すように、本体部移動機構30の弾性部材50は、外力Fに応じて車両2側に移動された本体部20の上端26が、ルーフレール10の上端15よりも低くなる位置まで、本体部20を収容空間43に引き込むことができる。
【0042】
積載された荷物をルーフレール10から下ろすと、本体部20上から荷物が取り除かれる。荷物が本体部20上から取り除かれる際、本体部20に与えられていた外力Fが減少していくこととなる。
【0043】
外力Fが減少するに連れて、本体部移動機構30は、本体部20を上方向に移動させる。具体的には、外力Fが減少して弾性部材50の付勢力が外力Fに打ち勝つようになると、弾性部材50は、伸長し、その結果、本体部20が収容空間43から押し出される方向に摺動する。また、外力Fが減少するに連れて、ロック機構60の突起部63の先端66は、本体部20に対して相対的に下方に移動し、窪み部61に近づく。
【0044】
外力Fがなくなる直前になると、本体部20の底部25が収容部40の開口面付近に配置され、突起部63の先端66が窪み部61内に収容される。そして、突起部63は、先端66を窪み部61に収容した状態で、弾性部材64の付勢力によって本体部20に押し付けられる。
【0045】
本体部20上から荷物が完全に取り除かれると、外力Fが本体部20に与えられないようになる。外力Fが与えられないようになると、本体部20は、アンテナエレメント23がルーフレール10の上端15よりも高い位置に配置された状態に保持される。
【0046】
以上のように、本実施形態によるアンテナ装置1は、ルーフレール10が使用されない場合、アンテナエレメント23がルーフレール10の上端15よりも高い位置に配置される。したがって、本実施形態によるアンテナ装置1は、ルーフレール10による電波の干渉を抑制し、車両2の水平方向の全方位通信が可能となる。
【0047】
例えば、アンテナエレメント23がルーフレール10の上端15よりも低い位置にある場合、アンテナエレメント23から放射された電波がルーフレール10に当たり易くなる。ルーフレール10に当たった電波は、ルーフレール10によって屈折および反射される。屈折および反射された電波は、アンテナエレメント23から直進する電波と干渉する。屈折および反射された電波の位相が直進する電波の位相から約半波長ずれると、屈折および反射された電波と直進する電波とが互いに打ち消し合うように作用する。これにより、車両2の水平方向のうちの電波が打ち消し合うように作用した方向において、アンテナエレメント23から放射された電波の利得が低下する。その結果、電波の利得が低下する方向の車両に電波が届かないおそれがある。
【0048】
これに対し、本実施形態によるアンテナ装置1は、アンテナエレメント23がルーフレール10の上端15よりも高い位置に配置されるため、アンテナエレメント23から放射された電波はルーフレール10に当たり難くなる。ルーフレール10によって屈折および反射される電波が少なくなるため、アンテナ装置1は、アンテナエレメント23から放射された電波の利得の低下が抑制される。その結果、アンテナ装置1は、車両2の水平方向の全方位の車両に電波を届けることができる。
【0049】
また、アンテナ装置1の本体部20は、角度AEが、路面の勾配等を考慮して決定された6度以上となる位置に配置される。このため、アンテナ装置1を備える車両2は、先行車両などとの間で、車車間通信をより確実に行うことができる。
【0050】
また、ルーフレール10が使用されてルーフレール10に荷物が積載されると、アンテナ装置1の本体部20は、その荷物の重力による外力Fによって下方向に移動して収容部40に収容される。このため、アンテナ装置1は、ルーフレール10に荷物が積載されることを阻害しない。
【0051】
また、アンテナ装置1には、アンテナエレメント23がルーフレール10の上端15よりも高い位置に配置された本体部20の移動を妨げるロック機構60が設けられている。このため、アンテナ装置1は、荷物が本体部20上に積まれていない状態において、本体部20が過度に移動することを防止することができる。その結果、アンテナ装置1は、通信に不具合が生じることを防止したり、外観が損なわれることを防止することができる。
【0052】
なお、本体部移動機構30の具体的な構成は、弾性部材64を含む構成に限らない。また、ロック機構60は、窪み部61、突起部63、弾性部材64を含む構成に限らない。
【0053】
なお、弾性部材50、64は、スプリングに限らず、例えば、ゴムによって構成された部材であってもよい。また、弾性部材50の数および位置は、前後2箇所に設けられる態様に限らない。また、ロック機構60は、複数箇所に設けられていてもよい。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、アンテナ装置、特に、ルーフレールを備えた車両に搭載されるアンテナ装置に利用できる。
【符号の説明】
【0056】
1 アンテナ装置
2 車両
20 本体部
23 アンテナエレメント
30 本体部移動機構
F 外力
図1
図2
図3
図4
図5
図6