特許第6948212号(P6948212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6948212クロロゲン酸ラクトン類を含む容器詰めコーヒー飲料
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  • 特許6948212-クロロゲン酸ラクトン類を含む容器詰めコーヒー飲料 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948212
(24)【登録日】2021年9月22日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】クロロゲン酸ラクトン類を含む容器詰めコーヒー飲料
(51)【国際特許分類】
   A23F 5/24 20060101AFI20210930BHJP
【FI】
   A23F5/24
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-193858(P2017-193858)
(22)【出願日】2017年10月3日
(65)【公開番号】特開2019-62848(P2019-62848A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年3月26日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年4月4日 発明製品を全国に販売
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年10月3日 発明製品を全国に販売
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】矢野 太朗
(72)【発明者】
【氏名】杉野 良介
(72)【発明者】
【氏名】指宿 大悟
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 千絢
【審査官】 茅根 文子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/072114(WO,A1)
【文献】 特開2010−273674(JP,A)
【文献】 特開2006−296414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/00−5/50
CAplus/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロゲン酸ラクトン類(b)及びグアイアコール(a)を含有し、[(b)の含有量(mg/L)/(a)の含有量(μg/L)]>0.020を満たし、グアイアコール(a)の含有量が500μg/L以下である、容器詰めコーヒー飲料。
【請求項2】
さらに、フェノール(c)を含有し、[(b)の含有量(mg/L)/{(a)+(c)}の含有量(μg/L)]>0.0080を満たす、請求項1に記載の容器詰めコーヒー飲料。
【請求項3】
さらに、p−エチルフェノール(d)、p−クレゾール(e)及び2−アセチルピロール(f)を含有し、[(b)の含有量(mg/L)/{(a)+(c)+(d)+(e)+(f)}の含有量(μg/L)]≧0.0050を満たす、請求項2に記載の容器詰めコーヒー飲料。
【請求項4】
グアイアコール(a)の含有量が、100μg/L〜500μg/Lである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の容器詰めコーヒー飲料。
【請求項5】
クロロゲン酸ラクトン類(b)の含有量が、3.0mg/L〜15.0mg/Lである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の容器詰めコーヒー飲料
【請求項6】
ブラックコーヒーである、請求項1〜のいずれか一項に記載の容器詰めコーヒー飲料。
【請求項7】
飲料のBrix値が0.4以上である、請求項1〜のいずれか一項に記載の容器詰めコーヒー飲料。
【請求項8】
再栓可能な蓋付き容器に充填された、請求項1〜のいずれか一項に記載の容器詰めコーヒー飲料。
【請求項9】
容器詰めコーヒー飲料の製造方法であって、
(i)[クロロゲン酸ラクトン類(b)の含有量(mg/L)/グアイアコール(a)の含有量(μg/L)]>0.020、およびグアイアコール(a)の含有量が500μg/L以下の要件を満たすように、(a)及び(b)の含有量を調整する工程、及び、
(ii)容器詰めする工程、
を含む、前記製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容器詰めコーヒー飲料に関する。より詳細には、開栓後に経時的に発生する後味の悪さが改善された容器詰めコーヒー飲料及び前記容器詰めコーヒー飲料の製造方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒー飲料は嗜好品として広く愛好され、その需要もますます増大すると共にニーズの多様化が進んでいる。例えば、コーヒー特有の苦味や重厚な味わいを有するコーヒー飲料のニーズが存在する一方で、コーヒー特有の苦味が抑制され、後味のよいコーヒー飲料のニーズも存在する。また、コーヒー飲料の商品形態も、要冷蔵タイプから常温保存可能品まで多種多様に存在している。こうした状況の下、消費者は、自らの嗜好性や飲用の場所等の消費態様に応じた商品形態のコーヒーを選択することができる。
【0003】
レギュラーコーヒーと異なり、容器詰めコーヒー飲料は、特に再栓可能な容器詰め飲料においては、歩きながらコーヒー飲料を飲んだり、仕事中や休憩中に少しずつ長時間かけてコーヒー飲料を飲む態様も広く見受けられる。しかし、開栓から長時間経過すると、酸化と揮発の影響による成分変化によって、後味の悪さが生じていた。保存中の酸化の影響による香味変化は考慮されていたものの、開栓後の経時変化による後味の悪さの増大を考慮して、容器詰めコーヒー飲料を製造するという発想は知られていない。
【0004】
コーヒー飲料では製造後の時間経過に伴い、一部の香気成分が減少し、コーヒー飲料の香気バランスが変化することが報告されており(非特許文献1)、コーヒー飲料の香気に寄与する成分を添加することで、時間経過に伴うコーヒー飲料の香気バランスの変化を抑える試みも報告されている。例えば、特許文献1では、コーヒー飲料中のピラジン類とグアイアコール類との含有質量比を特定の範囲に制御することで、甘い香りが豊かで、かつ後味のキレの良好なコーヒー抽出物が得られることなどが報告されており、引用文献2では、低揮発性コーヒーアロマ化合物(グアイアコール等)に対する高揮発性コーヒーアロマ化合物(メタンチオール等)の比を高くすることで、コーヒー飲料の開封及び消費時のアロマが知覚されやすくなることが報告されている。また、特許文献3には、クロロゲン酸ラクトン類を選択的に低減して苦味を抑えた、焙煎豆コーヒー抽出物の製法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−125289号公報
【特許文献2】特表2016−540512号公報
【特許文献3】特開2013−046641号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】European Food Research and Technology, 211, 272-276 (2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、いずれの文献にも、容器詰めコーヒー飲料の経時変化による後味の悪さの増大を考慮することは記載されていない。本発明の課題は、開栓後に経時的に発生する後味の悪さが改善された容器詰めコーヒー飲料を提供することなどである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、クロロゲン酸ラクトン類(b)の含有量(mg/L)とグアイアコール(a)の含有量(μg/L)との含有量比[(b)/(a)]が特定の範囲となるように、コーヒー飲料中の(b)及び(a)の含有量を調整することで、容器詰めコーヒー飲料の開栓後に経時的に発生する後味の悪さを改善できることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は以下に関するが、これらに限定されない。
(1)クロロゲン酸ラクトン類(b)及びグアイアコール(a)を含有し、[(b)の含有量(mg/L)/(a)の含有量(μg/L)]>0.020を満たす、容器詰めコーヒー飲料。
(2)さらに、フェノール(c)を含有し、[(b)の含有量(mg/L)/{(a)+(c)}の含有量(μg/L)]>0.0080を満たす、(1)に記載の容器詰めコーヒー飲料。
(3)さらに、p−エチルフェノール(d)、p−クレゾール(e)及び2−アセチルピロール(f)を含有し、[(b)の含有量(mg/L)/{(a)+(c)+(d)+(e)+(f)}の含有量(μg/L)]≧0.0050を満たす、(2)に記載の容器詰めコーヒー飲料。
(4)グアイアコール(a)の含有量が、100μg/L〜500μg/Lである、(1)〜(3)のいずれかに記載の容器詰めコーヒー飲料。
(5)ブラックコーヒーである、(1)〜(4)のいずれかに記載の容器詰めコーヒー飲料。
(6)飲料のBrix値が0.4以上である、(1)〜(5)のいずれかに記載の容器詰めコーヒー飲料。
(7)再栓可能な蓋付き容器に充填された、(1)〜(6)のいずれかに記載の容器詰めコーヒー飲料。
(8)容器詰めコーヒー飲料の製造方法であって、
(i)[クロロゲン酸ラクトン類(b)の含有量(mg/L)/グアイアコール(a)の含有量(μg/L)]>0.020を満たすように、(a)及び(b)の含有量を調整する工程、及び、
(ii)容器詰めする工程、
を含む、前記製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、開栓後に経時的に発生する後味の悪さが改善された容器詰めコーヒー飲料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1には、標準品のクロロゲン酸ラクトン類のLC−MSクロマトグラムを示す。
図2図2には、サンプルコーヒー飲料(実施例1)中のクロロゲン酸ラクトン類のLC−MSクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.容器詰めコーヒー飲料
本発明の容器詰めコーヒー飲料は、クロロゲン酸ラクトン類(b)及びグアイアコール(a)を含有し、[(b)の含有量(mg/L)/(a)の含有量(μg/L)]>0.020を満たすものである。これにより、容器詰めコーヒー飲料の開栓後に経時的に発生する後味の悪さを改善することができる。なお、本明細書において「後味の悪さ」とは、コーヒーの苦みが飲用後に持続的に舌に違和感が残ることであり、後引きともいう。一方、コーヒーの苦味であっても、キレのある苦味は「後味の悪さ」とは異なるものである。
【0013】
1−1.クロロゲン酸ラクトン類
クロロゲン酸ラクトン類は、クロロゲン酸類のキナ酸残基の一部に、環状の構造ができた形をした化合物の総称であり、5−カフェオイル−1,3−キノラクトン、3−カフェオイル−1,5−キノラクトン、4−カフェオイル−1,3−キノラクトン、4−カフェオイル−1,5−キノラクトン、5−カフェオイル−1,4−キノラクトンなどが含まれる。本発明のクロロゲン酸ラクトン類の含有量は、実施例記載の方法によって測定された値をいう。クロロゲン酸ラクトン類は、コーヒーの苦味に寄与する成分であり、コーヒー生豆にはほとんど含まれておらず、焙煎によってクロロゲン酸類から生成することが知られている。なお、本明細書ではクロロゲン酸ラクトン類を(b)で表す場合がある。
【0014】
本発明のコーヒー飲料におけるクロロゲン酸ラクトン類の含有量は特に限定されないが、後味の悪さを改善するという観点から、好ましくは3.0mg/L〜15.0mg/L、より好ましくは4.0mg/L〜13.5mg/L、さらに好ましくは4.5mg/L〜12.5mg/Lである。なお、本明細書においてクロロゲン酸ラクトン類の含有量は、5−カフェオイル−1,3−キノラクトン、3−カフェオイル−1,5−キノラクトン、4−カフェオイル−1,3−キノラクトン、4−カフェオイル−1,5−キノラクトン、5−カフェオイル−1,4−キノラクトンの含有量の合計を意味する。
【0015】
1−2.グアイアコール
本発明において、グアイアコールはコーヒー特有の後引きする苦味に寄与する成分である。なお、本明細書ではグアイアコールを(a)と表記する場合がある。
【0016】
本発明のコーヒー飲料はグアイアコールを含有するが、その含有量は特に限定されない。例えば、本発明のコーヒー飲料におけるグアイアコールの含有量は、好ましくは100μg/L〜500μg/L、より好ましくは150μg/L〜470μg/L、さらに好ましくは210μg/L〜370μg/Lである。なお、コーヒー飲料中のグアイアコール含有量が高いと、容器詰めコーヒー飲料の開栓後に経時的に発生する後味の悪さを改善効果が十分に得られないことがある。
【0017】
グアイアコールの含有量はGC−MS法によりに測定することができる。
1−3.クロロゲン酸ラクトン類とグアイアコールとの含有量比
本発明のコーヒー飲料は、開栓後に経時的に発生する後味の悪さをより改善するという観点から、クロロゲン酸ラクトン類(b)の含有量とグアイアコール(a)の含有量との含有量比[(b)/(a)]が、[(b)/(a)]>0.020であり、好ましくは0.100>[(b)/(a)]>0.020であり、より好ましくは0.050>[(b)/(a)]>0.020である。
【0018】
1−4.フェノール、p−エチルフェノール、p−クレゾール及び2−アセチルピロール
本発明において、フェノール、p−エチルフェノール、p−クレゾール及び2−アセチルピロールは、いずれもコーヒー特有の後引きする苦味に寄与する成分である。本発明のコーヒー飲料では、開栓後に経時的に発生する後味の悪さを効果的に抑制する観点から、さらに、フェノール、p−エチルフェノール、p−クレゾール及び2−アセチルピロールからなる群から選択される一以上の成分の含有量を調整することもできる。なお、本明細書ではフェノール、p−エチルフェノール、p−クレゾール及び2−アセチルピロールをそれぞれ、(c)、(d)、(e)及び(f)と表記する場合がある。
【0019】
本発明のコーヒー飲料中のフェノールの含有量は特に限定されないが、好ましくは50μg/L〜700μg/L、より好ましくは100μg/L〜500μg/L、さらに好ましくは120μg/L〜370μg/Lである。また、本発明のコーヒー飲料中のp−エチルフェノールの含有量は、好ましくは0.5μg/L〜15.0μg/L、より好ましくは1.0μg/L〜10.0μg/L、さらに好ましくは2.0μg/L〜6.5μg/Lである。また、本発明のコーヒー飲料中のp−クレゾールの含有量は、好ましくは3.0μg/L〜19.0μg/L、より好ましくは5.0μg/L〜16.0μg/L、さらに好ましくは7.0μg/L〜13.0μg/Lである。また、本発明のコーヒー飲料中の2−アセチルピロールの含有量は、好ましくは200μg/L〜1450μg/L、より好ましくは400μg/L〜1250μg/L、さらに好ましくは600μg/L〜1100μg/Lである。
【0020】
なお、フェノール、p−エチルフェノール、p−クレゾール及び2−アセチルピロールの含有量はそれぞれGC−MS法によりに測定することができる。
1−5.クロロゲン酸ラクトン類と、グアイアコール及びフェノールの含有量の合計との比
本発明のコーヒー飲料は、開栓後に経時的に発生する後味の悪さをより改善するという観点から、クロロゲン酸ラクトン類(b)の含有量と、グアイアコール(a)及びフェノール(c)の含有量の合計との比[(b)/{(a)+(c)}]が、[(b)/{(a)+(c)}]>0.0080であることが好ましく、0.050>[(b)/{(a)+(c)}]>0.008であることがより好ましく、0.025>[(b)/{(a)+(c)}]>0.012であることがさらにより好ましい。
【0021】
1−6.クロロゲン酸ラクトン類と、グアイアコール、フェノール、p−エチルフェノール、p−クレゾール及び2−アセチルピロールの含有量の合計との比
本発明のコーヒー飲料は、開栓後に経時的に発生する後味の悪さをより効果的に改善するという観点から、クロロゲン酸ラクトン類(b)の含有量と、グアイアコール(a)、フェノール(c)、p−エチルフェノール(d)、p−クレゾール(e)及び2−アセチルピロール(f)の含有量の合計との比[(b)/{(a)+(c)+(d)+(e)+(f)}]が、[(b)/{(a)+(c)+(d)+(e)+(f)}]≧0.0050であることが好ましく、0.050>[(b)/{(a)+(c)+(d)+(e)+(f)}]≧0.0050であることがより好ましく、0.010>[(b)/{(a)+(c)+(d)+(e)+(f)}]≧0.0050であることがさらにより好ましい。
【0022】
1−7.コーヒー飲料
本明細書において「コーヒー飲料」とは、コーヒー分を原料として使用し、加熱殺菌処理がなされた飲料製品のことをいう。製品の種類は特に限定されないが、1977年に認定された「コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約」の定義である「コーヒー」、「コーヒー飲料」、及び「コーヒー入り清涼飲料」が主に挙げられる。また、コーヒー分を原料とした飲料においても、乳固形分が3.0重量%以上のものは「飲用乳の表示に関する公正競争規約」の適用を受け、「乳飲料」として取り扱われるが、これも、本発明におけるコーヒー飲料とする。ここで、コーヒー分とは、コーヒー豆由来の成分を含有するものをいい、例えば、コーヒー抽出液、即ち、焙煎、粉砕されたコーヒー豆を水や温水などを用いて抽出した溶液が挙げられる。また、コーヒー抽出液を濃縮したコーヒーエキス、コーヒー抽出液を乾燥したインスタントコーヒーなどを、水や温水などで適量に調整した溶液も、コーヒー分として挙げられる。
【0023】
本発明のコーヒー飲料に用いるコーヒー豆の栽培樹種は、特に限定されず、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種などが挙げられるが、アラビカ種を用いることが好ましい。また、品種名も特に限定されず、モカ、ブラジル、コロンビア、グアテマラ、ブルーマウンテン、コナ、マンデリン、キリマンジャロなどが挙げられる。コーヒー豆は1種でもよいし、複数種をブレンドして用いてもよい。コーヒー豆の焙煎方法に関して、焙煎温度や焙煎環境に特に制限はなく、通常の方法を採用できる。さらに、その焙煎コーヒー豆からの抽出方法についても何ら制限はなく、例えば焙煎コーヒー豆を粗挽き、中挽き、細挽き等に粉砕した粉砕物から水や温水(0〜200℃)を用いて抽出する方法が挙げられる。抽出方法は、ドリップ式、サイフォン式、ボイリング式、ジェット式、連続式などがある。
【0024】
本発明のコーヒー飲料には、必要に応じて乳、牛乳及び乳製品等の乳分を添加してもよいが、乳分を含まないブラックコーヒーであることが好ましい。
また、本発明のコーヒー飲料は任意の容器に充填された容器詰めコーヒー飲料である。本発明のコーヒー飲料が充填される容器としては、殺菌方法や保存方法に合わせて適宜選択すればよく、アルミ缶、スチール缶、PETボトル、ガラス瓶、紙容器など、通常用いられる容器のいずれも用いることができる。また、本発明のコーヒー飲料は長時間かけて飲用する形態に適していることから、再栓可能な蓋付き容器、すなわちボトル缶やPETボトルが好ましい。本発明のコーヒー飲料の容量は、特に限定されないが、160〜600gが好ましく、長時間かけて飲用するという点で、250g以上が好ましい。また、本発明のコーヒー飲料を容器詰めする場合は、ホットパック充填法又は無菌充填法のいずれも用いることができるが、無菌充填法を用いることが好ましい。なお、ホットパック充填法は一般に、60℃以上に加熱された飲料を容器に充填後、直ちに密封する方法をいう。また、無菌充填装置とは一般に、高温短時間殺菌した内容物を滅菌済み容器に無菌環境下で充填、密封する装置をいう。
【0025】
本発明のコーヒー飲料の加熱滅菌処理の方法は特に限定されない。例えば、各地の法規(日本にあっては食品衛生法)に従って加熱滅菌処理を行うことができる。具体的には、高温で短時間殺菌した後、無菌条件下で殺菌処理された保存容器に充填する方法(UHT殺菌法)と、調合液を缶等の保存容器に充填した後、レトルト処理を行うレトルト殺菌法が挙げられる。UHT殺菌法の場合、通常120〜150℃で1〜120秒間程度、好ましくは130〜145℃で30〜120秒間程度の条件であり、レトルト殺菌法の場合、通常110〜130℃で10〜30分程度、好ましくは120〜125℃で10〜20分間程度の条件である。
【0026】
1−8.Brix値
Brix値は、糖度計や屈折計などを用いて20℃で測定された屈折率を、ICUMSA(国際砂糖分析法統一委員会)の換算表に基づいてショ糖溶液の質量/質量パーセントに換算した値であり、飲料中の可溶性固形分含有量を表す。単位は「Bx」、「%」又は「度」と表記する場合もある。飲料のBrix値が低ければ、糖質を含めた飲料中の可溶性固形分の含有量が低いこととなる。
【0027】
本発明のコーヒー飲料のBrix値は特に限定されないが、0.4以上であることが好ましく、0.4〜3.0であることがより好ましく、0.4〜1.8であることがより好ましい。
【0028】
1−9.その他の成分
本発明のコーヒー飲料では、上記成分の他、本発明の効果を損なわない限りで、甘味料(ショ糖、異性化糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、キシロース、異性化乳糖、フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー、パラチノース、マルチトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、パラチニット、還元デンプン糖化物、ステビア、グリチルリチン、タウマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテーム、サッカリン、アセスルファムK、スクラロース、ズルチンなど)、酸化防止剤(ビタミンC、エリソルビン酸ナトリウムなど)、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなど)、カゼインNa、香料(コーヒーフレーバー、ミルクフレーバーなど)等を適宜配合することができる。本発明のコーヒー飲料では、クロロゲン酸ラクトン類とグアイアコールの含有量比率を特定の範囲に調整するという観点から、特に香料を配合することが好ましい。また、本発明の飲料は甘味料により本発明の効果が損なわれる可能性があるので、甘味料を含有しないコーヒー飲料が好ましい。
【0029】
1−10.pH
本発明のコーヒー飲料は、所定の範囲内のpHを有することが好ましい。pHの調整には一般的なpH調整剤を使用することができ、そのようなpH調整剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基や、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、L−アスコルビン酸ナトリウムなどの有機酸のナトリウム又はカリウム塩、および、その他食品衛生法上使用可能なpH調整剤又は酸味料が挙げられる。また、pHの異なるコーヒー抽出液を混合することにより所定のpHに調整することも可能である。
【0030】
本実施の形態に係る発明において、pHは4.0〜7.0の範囲が好ましく、5.0〜6.5の範囲がより好ましく、5.2〜6.2の範囲がさらにより好ましい。
2.容器詰めコーヒー飲料の製造方法
ある態様では、本発明は容器詰めコーヒー飲料の製造方法である。より具体的には、本発明の一態様は容器詰めコーヒー飲料の製造方法であって、(i)[クロロゲン酸ラクトン類(b)の含有量(mg/L)/グアイアコール(a)の含有量(μg/L)]>0.020を満たすように、(a)及び(b)の含有量を調整する工程、及び、(ii)容器詰めする工程、を含む、前記製造方法である。
【0031】
前記方法は、さらにフェノール(c)、p−エチルフェノール(d)、p−クレゾール(e)及び2−アセチルピロール(f)からなる群から選択される一以上の成分を配合し、その含有量を調整する工程を含めることもできる。また、(b)の含有量と、(a)+(c)の含有量との比を調整する工程や、(b)の含有量と、(a)+(c)+(d)+(e)+(f)の含有量との比を調整する工程を含めることもできる。さらに、前記方法は、通常のコーヒー飲料において用いることができる成分を配合する工程や、pHを調整する工程、加熱殺菌処理工程を含めることもできる。
【0032】
なお、前記方法では、上記の各工程をどの順序で行ってもよく、最終的に得られたコーヒー飲料における含有量などが所要の範囲にあればよい。
また、コーヒー飲料や原料となるコーヒー豆の品種や産地等については、上述した通りである。また、(b)〜(f)の含有量範囲や、(b)の含有量と(a)の含有量との比の範囲、(b)の含有量と(a)+(c)の含有量との比の範囲、(b)の含有量と(a)+(c)+(d)+(e)+(f)の含有量との比の範囲、pHの範囲、並びに他の成分等についても上述した通りである。さらに、各種成分の測定法についても上述の通りである。
【実施例】
【0033】
以下、実施例をもって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.サンプルコーヒー飲料の製造
本実施例では、グアイアコール、クロロゲン酸ラクトン類、フェノール、p−エチルフェノール、p−クレゾール及び2−アセチルピロールの含有量が異なるサンプル飲料(実施例1〜7及び比較例1〜3)を調製した。各サンプル飲料の具体的な調製方法を以下に記載する。なお、各成分の標準品も準備し、必要に応じて、添加した。
<実施例1>
中煎りに焙煎したコーヒー豆(グアテマラ種:L値20)を粉砕し、コーヒー豆の量に対して9倍の質量の湯を抽出湯として用い、抽出機で50℃にて抽出を行った。また、抽出工程の途中で蒸らし時間を3分間設けた。そして、回収する抽出湯量がコーヒー豆量の約3倍の質量となったところで抽出を終了した。その後、抽出液に対して遠心分離、膜ろ過を実施した。その後、得られた抽出液を約3倍希釈し、さらに重曹を添加して実施例1用の調合液を得た。前記ベース飲料を缶に充填し、F0=4以上でレトルト殺菌を実施して、実施例1のコーヒー飲料を得た
<実施例2>
実施例1用の調合液を10/12倍希釈して、実施例2用の調合液を調製した。その後、実施例2用の調合液を400g容量のボトル缶に充填し、F0=4以上でレトルト殺菌を実施して、実施例2のコーヒー飲料を得た。
<実施例3、実施例4、比較例2>
実施例2の調合液に、グアイアコールを所定の含有量となるように配合して、実施例3、4及び比較例2用の調合液を調製した。その後、実施例3、4及び比較例2用の調合液を缶に充填し、F0=4以上でレトルト殺菌を実施して、実施例3、4及び比較例2のコーヒー飲料を得た。
<実施例5>
実施例3用の調合液を7/10倍希釈して、実施例5用の調合液を調製した。その後、実施例5用の調合液を缶に充填し、F0=4以上でレトルト殺菌を実施して、実施例5のコーヒー飲料を得た。
<実施例6>
実施例5用の調合液に、グアイアコールを所定の含有量となるように配合して、実施例6用の調合液を調製した。その後、実施例6用の調合液を缶に充填し、F0=4以上でレトルト殺菌を実施して、実施例6のコーヒー飲料を得た。
<実施例7>
実施例6用の調合液を4.7/8倍希釈して、実施例7用の調合液を調製した。その後、実施例7用の調合液を缶に充填し、F0=4以上でレトルト殺菌を実施して、実施例7のコーヒー飲料を得た。
<比較例3>
実施例7用の調合液に、グアイアコールを所定の含有量となるように配合して、比較例3用の調合液を調製した。その後、比較例3用の調合液を缶に充填し、F0=4以上でレトルト殺菌を実施して、比較例3のコーヒー飲料を得た。
<比較例1>
超深煎りに焙煎したコーヒー豆(グアテマラ種:L値16)を粉砕し、コーヒー豆の量に対して9倍の質量の水を抽出水として用い、抽出機で20℃の低温で抽出を行った。また、抽出工程の途中で蒸らし時間を3分設けた。そして、回収する抽出湯量がコーヒー豆量の約3倍の質量となったところで抽出を終了した。その後、得られた抽出液を約3倍希釈し、さらに重曹を添加して調合液を得た。前記調合液を缶に充填し、F0=4以上でレトルト殺菌を実施して、比較例1のコーヒー飲料を得た。
【0034】
2.クロロゲン酸ラクトン類、グアイアコール、フェノール、p−エチルフェノール、p−クレゾール及び2−アセチルピロール含有量の測定
上記1で調製したレトルト殺菌後の容器詰めコーヒー飲料のサンプル(実施例1〜7及び比較例1〜3)を開栓し、各コーヒー飲料中のクロロゲン酸ラクトン類、グアイアコール、フェノール、p−エチルフェノール、p−クレゾール及び2−アセチルピロール含有量を以下の分析条件で測定した。また、市販の缶コーヒー1〜3(市販品1:コカコーラエメラルドマウンテンコーヒー、市販品2:ワンダ極コーヒー、及び市販品3:KIRIN Fire燻製珈琲Black)中の各成分含有量も同様に分析した。結果を表1に示す。
<クロロゲン酸ラクトン類の分析条件(LC/MS)>
クロロゲン酸ラクトン類は、LC/MSを用いて分析した。
(LC分離条件)
HPLC装置:Agilent 1290シリーズ(アジレントテクノロジーズ社製)
送液ポンプ:G4220A
オートサンプラー:G4226A(サーモスタット G1330B付き)
カラムオーブン:G1316C
DAD検出器:G4212A
カラム:Cortecs UPLC T3(粒径1.6μm、内径2.1mm×150mm、Waters社製)
移動相A:ギ酸0.1%水溶液
移動相B:アセトニトリル
流量:0.4mL/min
濃度勾配条件:0.0〜2.0分(10%B)→8.0分(25%B)→8.5〜10.0分(100%B)、初期移動相による平衡化5.0分
カラム温度:40℃
試料注入:注入量2.0μL
質量分析装置への試料導入:1.35〜8.49分
(質量分析条件)
質量分析装置:Q Exactive(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
イオン化方法:HESI、ネガティブモード
イオン化部条件:
Sheath gas flow rate:50
Aux gas flow rate:10
Sweep gas flow rate:0
Spray voltage:2.50kV
Capilary temp:350℃
Aux gas heater temp:300℃
検出条件:
Resolution:140000
AGC Target:1e6
Maximum IT:100ms
Scan Range:200 to 500 m/z
(標準品の調製)
クロロゲン酸ラクトン類の標準品はTetrahedron Lett.,Vol.52,2011,7175−7177に記載の方法を参考に合成した。方法は以下の通り。クロロゲン酸(シグマアルドリッチ社製、0.9g)とp−トルエンスルホン酸(ナカライテスク社製、0.05g)を還流フラスコに測りとり、無水N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業社製、5mL)とトルエン(ナカライテスク社製、18mL)を加えてよく振り混ぜ、Dean−Stark装置にて12時間加熱還流した。これを室温まで冷却し、ロータリーエバポレーターで溶媒を溜去し、残留物を酢酸エチル(和光純薬工業社製、20mL)とともに4時間加熱還流した。得られた液をロータリーエバポレーターで溶媒溜去し、残留物をHPLC用メタノールに溶解した。この溶液の1/20量を取り、予めメタノールで平衡化した陰イオン交換カラム(Sep−Pak Vac QMA 6cc、Waters社製)に通液した。
【0035】
これを上記のLC分離条件と質量分析条件を用いて分析したところ、図1に記載の通り、335.07556〜335.07892 m/zの抽出イオンクロマトグラムにおいて5.4分〜6.6分に複数のピークが検出された。これらの成分は、精密質量および参考文献(Eur. Food Res. Technol.,Vol.222,2006,492−508)から、クロロゲン酸ラクトン類と考えられた。クロロゲン酸とクロロゲン酸ラクトン類は、いずれも分子内にカフェ酸を有するため、吸光度280nmにおけるモル吸光係数が同一である。そこで、同分析条件の吸光度280nm(DAD検出器 G4212A)にて濃度既知のクロロゲン酸標準液とピーク面積を比較し、得られた調製液のクロロゲン酸ラクトン類の含有量を算出した。すなわち、吸光度280nmのクロマトグラムにおいて、1mmol/Lのクロロゲン酸標準溶液の分析で得られるピーク面積(溶出時間約3.2分)と、クロロゲン酸ラクトン類を含む溶液の分析で得られるピーク面積(溶出時間5.4〜6.6分)が同一であれば、クロロゲン酸ラクトン類の濃度が1mmol/Lであることを意味する。
(サンプルの調製)
分析用サンプルは、以下の方法で調製した。まず、コーヒー試料をクロマトグラフィー用蒸留水で正確に10倍に希釈した。これを予め蒸留水で洗浄したPTFE製フィルター(東洋濾紙社製、ADVANTEC DISMIC−25HP 25HP020AN,孔径0.20μm、直径25mm)で濾過し、分析試料とした。
(定量解析条件)
335.07556〜335.07892 m/zの抽出イオンクロマトグラムにおいて5.4分〜6.6分に検出される複数のピークの面積値の合計を用い、分析用サンプルと標準品を比較して定量値を算出した。サンプルコーヒー飲料(実施例1)から調製した分析用サンプルのクロマトグラムを図2に示す。各サンプルコーヒー飲料のクロマトグラムにおける5.4分〜6.6分の複数のピークが、本発明におけるクロロゲン酸ラクトン類、すなわち、5−カフェオイル−1,3−キノラクトン、3−カフェオイル−1,5−キノラクトン、4−カフェオイル−1,3−キノラクトン、4−カフェオイル−1,5−キノラクトン、および5−カフェオイル−1,4−キノラクトンの各成分であり、前記各成分の含有量の合計を各サンプルコーヒー飲料中のクロロゲン酸ラクトン類含有量として示した。
【0036】
なお、標準品のクロロゲン酸ラクトン類のクロマトグラム(図1)とサンプルコーヒー飲料中のクロロゲン酸ラクトン類のクロマトグラム(図2)でピーク数及びピーク高さが異なるが、これは標準品とサンプルコーヒー飲料とで前記5種類の成分の存在比率が異なることによるものである。しかしながら、上述の通り、本発明では、飲料中の前記5種類の成分の含有量の合計が飲料中のクロロゲン酸ラクトン類含有量であり、前記クロロゲン酸ラクトン類の含有量はピーク面積から算出されるため、前記ピーク数及びピーク高さの違いは、本実施例における含有量測定の精度に実質的に影響を及ぼすものではない。
<グアイアコール、フェノール、p−エチルフェノール、p−クレゾール、及び2−アセチルピロールの分析条件(GC/MS)>
試料液5mlをネジ付き20ml容ガラス瓶(直径18mm,ゲステル社製)に入れてPTFE製セプタム付き金属蓋(ゲステル社製)にて密栓し、固相マイクロ抽出法(SPME)にて香気成分の抽出を行った。定量は、GC/MSのEICモードにて検出されたピーク面積を用い、標準添加法にて行った。使用した機器および条件を以下に示す。
【0037】
SPMEファイバー:StableFlex/SS,50/30μm DVB/CAR/PDMS,(スペルコ社製)
全自動揮発性成分抽出導入装置:MultiPurposeSampler MPS2XL(ゲステル社製)
予備加温:40℃5分間
攪拌:なし
揮発性成分抽出:40℃30分間
揮発性成分の脱着時間:3分間
GCオーブン:GC7890A(アジレントテクノロジーズ社製)
カラム:VF−WAXms,60m×0.25mmi.d. df=0.50μm(アジレントテクノロジーズ社製)
GC温度条件:40℃(5分間)→5℃/分→260℃(11分間)
キャリアーガス:ヘリウム,1.2ml/分,流量一定モード
インジェクション:スプリットレス法
インレット温度:250℃
質量分析装置:GC/MS Triple Ouad7000(アジレントテクノロジーズ社製)
イオン化方式:EI(70eV)
測定方式:スキャン測定、またはスキャン&SIM同時測定
スキャンパラメータ:m/z35〜350
定量イオンは以下に示すイオンから、検出感度、ピーク形状およびピーク分離が良好なものを選択できる:グアイアコール m/z109、124または81(本実施例においては81);p−エチルフェノール m/z107、122または77(本実施例においては107);p−クレゾール m/z107、108、77または79(本実施例においては107);フェノール m/z94、66または65(本実施例においては94);2−アセチルピロール m/z94、109または66(本実施例においては94)。
【0038】
なお、上記イオンのいずれを用いてもピーク形状または感度が良好でない場合は、試料液を蒸留水で適切な倍率に希釈するか、SIMモードを用いることができる。
3.官能評価
3名の訓練された専門パネラー間で、官能評価結果(市販品1の常温開栓時)を使用してそれに対応する点数との関係を確認し、点数付けがなるべく共通化するようにした後、上記1で調製したコーヒー飲料及び市販品1〜3の官能評価を3名の専門パネラーによって行い、コーヒー飲料の後味の悪さについて評価した。具体的には、各専門パネラーごとに下記基準に基づいて0.1点刻みで点数付けを行い、その平均点を表1に示した。なお、官能評価においては、グアイコール含有量がある程度低い市販品1の常温開栓時の官能評価結果(官能評価点:4.0点)を基準とし、平均点4.0点を超えるものが好ましいコーヒー飲料であると判定した。
【0039】
<評価点の基準>
5.0点:後味の悪さが全くない。
4.0点:後味の悪さがほとんどない。
【0040】
3.0点:後味の悪さが少しある。
2.0点:後味の悪さがある。
1.0点:後味の悪さが強すぎて、飲料として適さない。
【0041】
結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に記載の通り、クロロゲン酸ラクトン類(b)の含有量とグアイアコール(a)の含有量との含有量比((b)/(a))が本発明の所定の範囲内にあるコーヒー飲料(実施例1〜7)では、常温2時間後における官能評価点がいずれも4.0点を超えており、後引きする苦味が抑制され、後味の悪さも改善されていることが示された。従って、本発明によると、コーヒー飲料中のクロロゲン酸ラクトン類(b)の含有量(mg/L)とグアイアコール(a)の含有量(μg/L)との含有量比((b)/(a))が特定の範囲となるように、クロロゲン酸ラクトン類及びグアイアコールの含有量を調整することで、液温にかかわらずコーヒー特有の後引きする苦味が抑制され、良好な後味を有する容器詰めコーヒー飲料を実現できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、開栓後に発生する後味の悪さが改善された容器詰めコーヒー飲料を提供するものであるため、産業上の利用可能性が高い。
図1
図2