特許第6948219号(P6948219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948219
(24)【登録日】2021年9月22日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】乗り物用衝撃吸収機構
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20210930BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20210930BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20210930BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20210930BHJP
   B60N 2/52 20060101ALI20210930BHJP
   B60N 2/54 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   F16F15/04 D
   B60N2/42
   F16F15/02 E
   F16F7/00 J
   B60N2/52
   B60N2/54
【請求項の数】13
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-199775(P2017-199775)
(22)【出願日】2017年10月13日
(65)【公開番号】特開2019-74126(P2019-74126A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2020年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沼尻 浩行
(72)【発明者】
【氏名】磯村 雄也
(72)【発明者】
【氏名】金子 亮平
(72)【発明者】
【氏名】宮田 浩太郎
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−035673(JP,A)
【文献】 実開平05−064367(JP,U)
【文献】 特開平06−064465(JP,A)
【文献】 特開2007−261388(JP,A)
【文献】 特開2015−003547(JP,A)
【文献】 特開2016−050637(JP,A)
【文献】 実公昭38−007229(JP,Y1)
【文献】 欧州特許出願公開第0816710(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/04
B60N 2/42
F16F 15/02
F16F 7/00
B60N 2/52
B60N 2/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物に設けられ乗員が着座するように構成されたシート部と、該シート部とは別体の前記乗り物の構造部分を構成する支持部と、該支持部と前記シート部との間に設けられたダンパとを備え、
前記ダンパは、直線状に延びる摺動部材と、該摺動部材を収納する収納部とを備え、該収納部に前記摺動部材との間に摩擦力を発生させる摩擦発生手段を備え、
前記摩擦発生手段は、前記摺動部材の外側面と、該外側面に当接する複数の当接部材と、前記収納部に設けられ前記複数の当接部材のそれぞれに前記摺動部材の軸線に向かって付勢力を作用させることで前記複数の当接部材のそれぞれを前記摺動部材に押し付ける複数の付勢手段とを備え、
前記付勢手段及び前記当接部材は、前記摺動部材の長手方向について、それぞれ複数設けられ、同じ位置に配置されており、
前記摺動部材の横断面において、前記複数の付勢手段のうち少なくとも一対の付勢手段のそれぞれから前記複数の当接部材のそれぞれに作用する前記付勢力のベクトルの内積が0 又は負になるように、前記複数の当接部材と前記複数の付勢手段とが配置されていることを特徴とする乗り物用衝撃吸収機構。
【請求項2】
請求項1に記載の乗り物用衝撃吸収機構であって、
前記乗り物は、前記支持部から離間して前記シート部が設置される独立フロアパネルを備え、
前記乗り物の支持部に、前記ダンパの一端が接続され、
前記ダンパの他端に、前記独立フロアパネルが接続されていることを特徴とする乗り物用衝撃吸収機構。
【請求項3】
請求項1に記載の乗り物用衝撃吸収機構であって、
前記支持部は、前記シート部が設置されるフロアパネルであり、
前記シート部は、前記乗員が着座する着座部の前記フロアパネルに対する高さを調整可能なリンク機構を備え、
該リンク機構は、前記着座部の左右のフレームを構成するサイドフレームと、該サイドフレームに回動可能に接続されたリンクとしての前記ダンパと、前記フロアパネルに設けられ前記ダンパの下端部を回動可能に接続する接続部と、前記ダンパを回動させることで高さを調整する操作部とを備えていることを特徴とする乗り物用衝撃吸収機構。
【請求項4】
請求項1に記載の乗り物用衝撃吸収機構であって、
前記支持部は、前記シート部が設置されるフロアパネルであり、
前記シート部は、着座部の左右のフレームを構成するサイドフレームを備え、
前記フロアパネルに、前記ダンパの下端部が支持され、
前記ダンパの上端部に前記サイドフレームが支持されていることを特徴とする乗り物用衝撃吸収機構。
【請求項5】
請求項1に記載の乗り物用衝撃吸収機構であって、
前記支持部は、前記シート部が設置されるフロアパネルであり、
前記シート部は、着座部の左右のフレームを構成するサイドフレームと、該サイドフレームを支持するスライドレールと、前記フロアパネルに固定され前記スライドレールを前後移動可能に支持する固定レールとを備え、
該固定レール又は前記フロアパネルに、前記ダンパの一端が支持され、
前記ダンパの他端に、前記スライドレールが支持される又は前記スライドレールが移動されて当接することを特徴とする乗り物用衝撃吸収機構。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の乗り物用衝撃吸収機構であって、
前記複数の付勢手段及び前記複数の当接部材のそれぞれは、前記摺動部材の横断面において、前記軸線の周りに回転対称性を有するように配置されていることを特徴とする乗り物用衝撃吸収機構。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の乗り物用衝撃吸収機構であって、
前記摺動部材は筒状であり、
前記収納部の内側には、該収納部の軸線に沿って延び少なくとも前記摩擦発生手段が配置される前記収納部の内側に位置するとともに前記摺動部材の内周面を摺動可能に支持する内筒が備えられていることを特徴とする乗り物用衝撃吸収機構。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の乗り物用衝撃吸収機構であって、
前記収納部は、筒状又は有底筒状のシリンダであり、
前記摺動部材は、角筒状のピストンロッドであり、
前記摩擦発生手段は、前記角筒状の前記外側面を構成する複数の平面のそれぞれに対して配置されていることを特徴とする乗り物用衝撃吸収機構。
【請求項9】
請求項1から請求項いずれか1項に記載の乗り物用衝撃吸収機構であって、
前記収納部は、筒状又は有底筒状のシリンダであり、
前記摺動部材は、角柱状のピストンロッドであり、
前記摩擦発生手段は、前記角柱状の前記外側面を構成する複数の平面のそれぞれに対し
て配置されていることを特徴とする乗り物用衝撃吸収機構。
【請求項10】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の乗り物用衝撃吸収機構であって、
前記摩擦発生手段における前記当接部材は、前記収納部の前記摺動部材挿入側の端部に設けられており、
前記収納部の表面から径方向外側に突出する台座部と、
該台座部の外端面から内周面に貫通し、前記当接部材が摺動可能に設けられるとともに前記外端面側に前記付勢手段が設けられる貫通孔とを備えていることを特徴とする乗り物用衝撃吸収機構。
【請求項11】
請求項10に記載の乗り物用衝撃吸収機構であって、
前記付勢手段は、前記貫通孔に設けられた雌ねじ部と、該雌ねじ部に螺合される雄ねじ部と、該雄ねじ部と前記当接部材との間で前記貫通孔に収納されるとともに圧縮されることで反発力が大きくなる第1弾性部材であることを特徴とする乗り物用衝撃吸収機構。
【請求項12】
請求項1から請求項11に記載の乗り物用衝撃吸収機構であって、
前記収納部の内側に、ばね座が設けられ、
該ばね座に、前記摺動部材を伸び方向に付勢する第2 弾性部材が設けられていることを特徴とする乗り物用衝撃吸収機構。
【請求項13】
乗り物に設けられ乗員が着座するように構成されたシート部と、該シート部とは別体の前記乗り物の構造部分を構成する支持部と、該支持部と前記シート部との間に設けられたダンパとを備え、
前記ダンパは、直線状に延びる摺動部材と、該摺動部材を収納する収納部とを備え、該摺動部材に前記収納部との間に摩擦力を発生させる摩擦発生手段を備え、
前記摩擦発生手段は、前記収納部の内周面と、該内周面に当接する複数の当接部材と、前記摺動部材に設けられ前記複数の当接部材のそれぞれに前記内周面に向かって付勢力を作用させることで前記複数の当接部材のそれぞれを前記内周面に押し付ける付勢手段とを備え、
前記付勢手段及び前記当接部材は、前記摺動部材の長手方向について、それぞれ複数設けられ、同じ位置に配置されており、
前記摺動部材の横断面において、前記複数の付勢手段のうち少なくとも一対の付勢手段のそれぞれから前記複数の当接部材のそれぞれに作用する前記付勢力のベクトルの内積が0又は負になるように、前記複数の当接部材と前記複数の付勢手段とが配置されていることを特徴とする乗り物用衝撃吸収機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物などに加わる衝撃を吸収する乗り物用衝撃吸収機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの乗り物には、走行時などに受ける衝撃を吸収するために、ダンパが備えられている。ダンパには、オイルによる抵抗力を利用したオイルダンパや、部材同士の摩擦力を利用した摩擦ダンパなどがあるが、オイルを取り扱うことが好ましくない場所では摩擦ダンパが使用されることがある。
【0003】
このような摩擦ダンパとして、摺動部材と、摺動部材を収納する収納部と、摺動部材との間に摩擦力を発生させる摩擦発生手段を備えた摩擦ダンパが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の摩擦ダンパは、板状の摺動部材と、該摺動部材を収納する四角筒状の収納部とを備え、収納部には、摺動部材との間に摩擦力を発生させる摩擦発生手段が備えられている。摩擦発生手段は、板状の摺動部材の表面及び裏面にそれぞれ当接する複数の摩擦部材と、収納部の内側に設けられ複数の摩擦部材のそれぞれを摺動部材に押し付ける複数の付勢部材と、摩擦力を調整する調整手段とを備えている。
【0005】
調整手段は、摺動部材の表面側の付勢部材に対向して収納部に形成されたねじ孔と、収納部の外側からねじ孔にねじ込むことで摩擦部材を摺動部材に対して垂直方向に押し付けるボルトとを備えており、ボルトのねじ込み量を調整することで、摩擦部材を摺動部材に対して垂直方向に押し付ける付勢力によって作用する摩擦力が調整される。摩擦ダンパの両端を結ぶ直線に対して真っすぐに衝撃力が入力された場合に、調整された付勢力が作用し、所定の摩擦力が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−353813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、乗り物への衝撃力が摩擦ダンパに入力される際、摩擦ダンパの取付場所によって、摩擦ダンパの両端部を結ぶ直線に対して衝撃力が真っすぐに入力されずに傾いて入力されることがある。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の摩擦ダンパによれば、調整手段が摺動部材の表面側にのみに配置されており、一方向からしか付勢力を調整できないため、衝撃力が異なった傾きで入力される場合に、所定の摩擦力を得ることが難しい。
【0009】
また、自動車等の乗り物には、乗員が着座するシート部が備えられている。乗員への衝撃を吸収するためには、路面等の外部から乗り物が受ける衝撃をサスペンションのダンパによって吸収するだけでなく、乗り物の構造部分を構成する支持部からシート部が受ける衝撃を吸収することでも乗員への衝撃が吸収される。
【0010】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題に鑑み、乗り物の支持部から受けるシート部の衝撃を吸収するとともに、取付場所によらず所定の摩擦力を得ることができるダンパを備えた乗り物用衝撃吸収機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[ 1 ] 上記目的を達成するため、本発明の乗り物用衝撃吸収機構は、
乗り物に設けられ乗員が着座するように構成されたシート部と、該シート部とは別体の前記乗り物の構造部分を構成する支持部と、該支持部と前記シート部との間に設けられたダンパとを備え、
前記ダンパは、直線状に延びる摺動部材と、該摺動部材を収納する収納部とを備え、該収納部に前記摺動部材との間に摩擦力を発生させる摩擦発生手段を備え、
前記摩擦発生手段は、前記摺動部材の外側面と、該外側面に当接する複数の当接部材と、前記収納部に設けられ前記複数の当接部材のそれぞれに前記摺動部材の軸線に向かって付勢力を作用させることで前記複数の当接部材のそれぞれを前記摺動部材に押し付ける複数の付勢手段とを備え、
前記付勢手段及び前記当接部材は、前記摺動部材の長手方向について、それぞれ複数設けられ、同じ位置に配置されており、
前記摺動部材の横断面において、前記複数の付勢手段のうち少なくとも一対の付勢手段のそれぞれから前記複数の当接部材のそれぞれに作用する前記付勢力のベクトルの内積が0又は負になるように、前記複数の当接部材と前記複数の付勢手段とが配置されていることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、乗り物に設けられ乗員が着座するように構成したシート部と、該シート部とは別体の前記乗り物の構造部分を構成する支持部と、該支持部とシート部との間に設けられたダンパとを備える。このため、乗り物の支持部からシート部に衝撃が加わる時、支持部からシート部に対して伝達される衝撃がダンパによって吸収される。
【0013】
具体的には、ダンパに衝撃力が入力される際、摺動部材が収納部に収納されて、摩擦発生手段によって摺動部材との間に摩擦力が発生する。摩擦発生手段は、摺動部材の外側面に当接する複数の当接部材のそれぞれを、収納部に設けられた複数の付勢手段で摺動部材に押し付けて付勢力を作用させることで、複数の方向から当接部材と摺動部材の間に摩擦力を発生させることができる。また、付勢手段の付勢力の調整を、摺動部材の長手方向における付勢力の作用の違いを考慮せずに、摺動部材の長手方向の同じ位置のみで容易に行うことができる。さらに、複数の当接部材と複数の付勢手段とは、摺動部材の横断面において、少なくとも一対の付勢手段のそれぞれから複数の当接部材のそれぞれに作用する付勢力のベクトルの内積が0又は負になるように、配置されているので、一方向のみだけではなく、いずれの方向に対しても付勢力を作用させることができる。このため、乗り物への衝撃力がダンパに入力される際に、ダンパの両端部を結ぶ直線に対して衝撃力がいずれの方向に傾いて入力された場合であっても、摺動部材の横断面において、入力が逃げて摩擦力が小さくなる位置での付勢手段の付勢力を大きくすることで摩擦力を大きくし、摩擦発生手段全体として所定の摩擦力にすることができる。結果、ダンパの取付場所によらず所定の摩擦力に調整することができる。
【0014】
[2]また、本発明のダンパにおいて、
前記乗り物は、前記支持部から離間して前記シート部が設置される独立フロアパネルを備え、
前記乗り物の支持部に、前記ダンパの一端が接続され、
前記ダンパの他端に、前記独立フロアパネルが接続されていることが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、乗り物の支持部から独立フロアパネルに伝達される衝撃がダンパによって吸収される。このため、独立フロアパネルと一体的に設けられたシート部に伝達される衝撃を吸収することができる。
【0016】
[3]また、本発明のダンパにおいて、
前記支持部は、前記シート部が設置されるフロアパネルであり、
前記シート部は、前記乗員が着座する着座部の前記フロアパネルに対する高さを調整可能なリンク機構を備え、
該リンク機構は、前記着座部の左右のフレームを構成するサイドフレームと、該サイドフレームに回動可能に接続されたリンクとしての前記ダンパと、前記フロアパネルに設けられ前記ダンパの下端部を回動可能に接続する接続部と、前記ダンパを回動させることで高さを調整する操作部とを備えていることが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、サイドフレーム、リンクとしてのダンパ及び接続部からなるリンク機構のリンク部分をダンパとしたので、着座部の高さ調整のためのリンク機構を利用してフロアパネルからシート部に伝達される衝撃をダンパによって吸収することができる。
【0018】
[4]また、本発明のダンパにおいて、
前記支持部は、前記シート部が設置されるフロアパネルであり、
前記シート部は、着座部の左右のフレームを構成するサイドフレームを備え、
前記フロアパネルに、前記ダンパの下端部が支持され、
前記ダンパの上端部に前記サイドフレームが支持されていることが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、着座部を構成するサイドフレームとフロアパネルとの間に、脚部の代わりにダンパを設けたので、フロアパネルからシート部に伝わる衝撃をダンパによって吸収することができる。
【0020】
[5]また、本発明のダンパにおいて、
前記支持部は、前記シート部が設置されるフロアパネルであり、
前記シート部は、着座部の左右のフレームを構成するサイドフレームと、該サイドフレームを支持するスライドレールと、前記フロアパネルに固定され前記スライドレールを前後移動可能に支持する固定レールとを備え、
該固定レール又は前記フロアパネルに、前記ダンパの一端が支持され、
前記ダンパの他端に、前記スライドレールが支持される又は前記スライドレールが移動されて当接することが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、フロアパネルに固定された固定レール又はフロアパネルと、固定レールに前後移動可能に設けられたスライドレールとの間にダンパを設けたので、スライドレールと一体的に移動する着座部に加わる前後方向の衝撃をダンパによって吸収することができる。
【0022】
[6]また、本発明のダンパにおいて、
前記複数の付勢手段及び前記複数の当接部材のそれぞれは、前記摺動部材の横断面において、前記軸線の周りに回転対称性を有するように配置されていることが好ましい。
【0023】
かかる構成によれば、付勢手段が軸線のまわりに回転対称性を有するように配置されているので、衝撃力の入力がいずれの方向に傾いても、付勢力を大きくしたい位置又は付勢力を大きくしたい位置に近い位置に付勢手段が配置され、付勢手段の付勢力の調整を行い易くすることができる。
【0026】
] また、本発明のダンパにおいて、
前記摺動部材は筒状であり、
前記収納部の内側には、該収納部の軸線に沿って延び少なくとも前記摩擦発生手段が配置される前記収納部の内側に位置するとともに前記摺動部材の内周面を摺動可能に支持する内筒が備えられていることが好ましい。
【0027】
かかる構成によれば、付勢手段の付勢力を受ける摺動部材を内側から内筒で摺動可能に支持するので、摺動部材が内側に逃げずに大きな付勢力でも受けるようにすることができる。
【0028】
] また、本発明のダンパにおいて、
前記収納部は、筒状又は有底筒状のシリンダであり、
前記摺動部材は、角筒状のピストンロッドであり、
前記摩擦発生手段は、前記角筒状の前記外側面を構成する複数の平面のそれぞれに対し
て配置されていることが好ましい。
【0029】
かかる構成によれば、収納部は、筒状又は有底筒状のシリンダであり、摺動部材は、角筒状のピストンロッドであるので、ピストンロッド及びシリンダを容易に構成することができる。さらに、摩擦発生手段は、角筒状の外側面を構成する複数の平面のそれぞれに対して配置されているので、外側面に摩擦発生手段の当接部材が当接する面積を確保しやすくできる。
【0030】
] また、本発明のダンパにおいて、
前記収納部は、筒状又は有底筒状のシリンダであり、
前記摺動部材は、角柱状のピストンロッドであり、
前記摩擦発生手段は、前記角柱状の前記外側面を構成する複数の平面のそれぞれに対して配置されていることが好ましい。
【0031】
かかる構成によれば、収納部は、筒状又は有底筒状のシリンダであり、摺動部材は、角柱状のピストンロッドであるので、ピストンロッド及びシリンダを容易に構成することができる。さらに、摩擦発生手段は、角柱状の外側面を構成する複数の平面のそれぞれに対して配置されているので、外側面に摩擦発生手段の当接部材が当接する面積を確保しやすくできる。
【0032】
[ 1 ] また、本発明のダンパにおいて、
前記摩擦発生手段における前記当接部材は、前記収納部の前記摺動部材挿入側の端部に設けられており、
前記収納部の表面から径方向外側に突出する台座部と、
該台座部の外端面から内周面に貫通し、前記当接部材が摺動可能に設けられるとともに
前記外端面側に前記付勢手段が設けられる貫通孔とを備えていることが好ましい。
【0033】
かかる構成によれば、摩擦発生手段を、収納部の摺動部材挿入側の端部に設けることで、限られた摺動部材のストロークで、摩擦を発生させるストロークを最大限にすることができる。さらに、収納部の表面から径方向外側に突出する台座部に、外端面から内周面に貫通する貫通孔を形成し、該貫通孔に当接部材を設けて外端面側に付勢手段を設けるので構成を簡単にすることができる。
【0034】
[ 1 ] また、本発明のダンパにおいて、
前記付勢手段は、前記貫通孔に設けられた雌ねじ部と、該雌ねじ部に螺合される雄ねじ部と、該雄ねじ部と前記当接部材との間で前記貫通孔に収納されるとともに圧縮されることで反発力が大きくなる第1弾性部材であることが好ましい。
【0035】
かかる構成によれば、貫通孔に設けた雌ねじ部に雄ねじ部を螺合し、雄ねじ部によって第1弾性部材を圧縮し、当接部材を付勢するので、付勢力の調整を容易に行うことができる。
【0036】
[ 1 ] また、本発明のダンパにおいて、
前記収納部の内側に、ばね座が設けられ、
該ばね座に、前記摺動部材を伸び方向に付勢する第2 弾性部材が設けられていることが好ましい。
【0037】
かかる構成によれば、摺動部材が第2弾性部材によっても付勢されるので、より大きな衝撃力に対応することができる。
【0038】
[ 1 ] また、本発明のダンパにおいて、
乗り物に設けられ乗員が着座するように構成されたシート部と、該シート部とは別体の前記乗り物の構造部分を構成する支持部と、該支持部と前記シート部との間に設けられたダンパとを備え、
前記ダンパは、直線状に延びる摺動部材と、該摺動部材を収納する収納部とを備え、該摺動部材に前記収納部との間に摩擦力を発生させる摩擦発生手段を備え、
前記摩擦発生手段は、前記収納部の内周面と、該内周面に当接する複数の当接部材と、前記摺動部材に設けられ前記複数の当接部材のそれぞれに前記内周面に向かって付勢力を作用させることで前記複数の当接部材のそれぞれを前記内周面に押し付ける付勢手段とを備え、
前記付勢手段及び前記当接部材は、前記摺動部材の長手方向について、それぞれ複数設けられ、同じ位置に配置されており、
前記摺動部材の横断面において、前記複数の付勢手段のうち少なくとも一対の付勢手段のそれぞれから前記複数の当接部材のそれぞれに作用する前記付勢力のベクトルの内積が0又は負になるように、前記複数の当接部材と前記複数の付勢手段とが配置されていることが好ましい。
【0039】
かかる構成によれば、乗り物に設けられ乗員が着座するように構成したシート部と、該シート部とは別体の前記乗り物の外側構造部分を構成する支持部と、該支持部とシート部との間に設けられたダンパとを備える。このため、乗り物の支持部からシート部に衝撃が加わる時、支持部からシート部に対して伝達される衝撃がダンパによって吸収される。
具体的には、ダンパに衝撃力が入力される際、摺動部材が収納部に収納されて、摩擦発生手段によって摺動部材との間に摩擦力が発生する。摩擦発生手段は、収納部の内周面に当接する複数の当接部材のそれぞれを、摺動部材に設けられた複数の付勢手段で収納部の内周面に押し付けて付勢力を作用させることで、複数の方向から当接部材と内周面の間に摩擦力を発生させることができる。また、付勢手段の付勢力の調整を、摺動部材の長手方向における付勢力の作用の違いを考慮せずに、摺動部材の長手方向の同じ位置のみで容易に行うことができる。さらに、複数の当接部材と複数の付勢手段とは、摺動部材の横断面において、少なくとも一対の付勢手段のそれぞれから複数の当接部材のそれぞれに作用する付勢力のベクトルの内積が0又は負になるように、配置されているので、一方向のみだけではなく、いずれの方向に対しても付勢力を作用させることができる。このため、乗り物への衝撃力がダンパに入力される際に、ダンパの両端部を結ぶ直線に対して衝撃力がいずれの方向に傾いて入力された場合であっても、摺動部材の横断面においてそのままであれば摩擦力が小さくなるような位置で、付勢手段の付勢力を大きくすることで摩擦力を大きくし、摩擦発生手段全体として所定の摩擦力にすることができる。結果、ダンパの取付場所によらず所定の摩擦力に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の第1実施形態に係る乗り物用衝撃吸収機構を示す平面図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る乗り物用衝撃吸収機構を示す側面図である。
図3】本発明の第3実施形態に係る乗り物用衝撃吸収機構を示す斜視図である。
図4】本発明の第4実施形態に係る乗り物用衝撃吸収機構を示す側面図である。
図5】本発明に係るダンパを示す斜視図である。
図6図6A図5の摺動部材が収納部に収納されてダンパが縮んだ状態を示す正面図である。図6B図5の摺動部材が収納部から出てダンパが伸びた状態の作用図である。
図7図6BのVII−VII線断面図である。
図8図6BのVIII−VIII線断面図である。
図9図7のダンパの要部拡大図である。
図10図10Aは本発明に係るダンパの衝撃力が加わった際の作用図である。図10Bはダンパが縮んだ際の作用図である。
図11図11Aは摩擦発生手段を調整する前の図10Aのダンパの入力状態における断面図である。図11Bは摩擦発生手段を調整した後の図10Aのダンパの入力状態における作用図である。
図12図8の別態様のダンパを示す断面図である。
図13図8の更なる別態様のダンパを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(第1実施形態)
以下、図面を用いて本発明の第1実施形態を説明する。図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る乗り物用衝撃吸収機構は、例えば遊園地のアトラクション等に使用される乗り物1に設けられ乗員が着座するように構成されたシート部6と、該シート部6とは別体の乗り物1の構造部分を構成する支持部3と、該支持部3とシート部6との間に設けられたダンパ10とを備えている。
【0042】
乗り物1は、支持部3から離間してシート部6が設置される独立フロアパネル2を備え、乗り物1の支持部3にダンパ10の一端が接続され、ダンパ10の他端に独立フロアパネル2が接続されている。
【0043】
詳細には、乗り物1は、支持部3と、該支持部3に設けられダンパ10の一端を揺動可能に接続する第1接続部4と、ダンパ10と、独立フロアパネル2に設けられダンパ10の他端を揺動可能に接続する第2接続部5と、該第2接続部5を介して複数のダンパ10に接続される独立フロアパネル2と、独立フロアパネル2に設けられ乗員を支持するシート部6とを備えている。
【0044】
乗り物1は、急発進時や急停止時に衝撃力を受ける。上記構成によれば、乗り物1の支持部3から独立フロアパネル2に伝達される衝撃がダンパ10によって吸収される。このため、独立フロアパネル2と一体的に設けられたシート部6に伝達される衝撃を吸収することができる。なお、ダンパ10の具体的な構成は後述する。
【0045】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態を説明する。図2に示すように、乗り物1は、自動車などの車両である。また、支持部3は、シート部6が設置されるフロアパネルである。シート部6は、乗員が着座する着座部41の支持部(フロアパネル)3に対する高さを調整可能なリンク機構51を備える。
【0046】
リンク機構51は、着座部41の左右のフレームを構成するサイドフレーム42と、該サイドフレーム42に回動可能に接続された前後のリンクとしてのダンパ10と、支持部(フロアパネル)3に固定レール52及びスライドレール53を介して設けられダンパ10の下端部を回動可能に接続する接続部54と、ダンパ10を回動させることで着座部41の高さを調整する操作部55とを備えている。
【0047】
固定レール52は支持部(フロアパネル)3に固定されており、固定レール52にスライドレール53が前後移動可能に設けられており、スライドレール53に該スライドレール53の位置を調整するためのレバー56が設けられている。
【0048】
操作部55は、サイドフレーム42に回動可能に設けられた操作ノブ57と、該操作ノブ57の軸に設けられたピニオンギヤ58と、該ピニオンギヤ58に噛み合うセクタギヤ61が形成されるとともにサイドフレーム42に回動可能に設けられた回動プレート62とを備えている。
【0049】
後ろのリンクとしてのダンパ10は、その上端部が回動プレート62に締結部材63によって締結されている。
【0050】
このため、後ろのリンクとしてのダンパ10は、回動プレート62と一体的に回動する操作ノブ57を回動させることで、ピニオンギヤ58及びセクタギヤ61を介して回動プレート62が回動し、後ろのリンクとしてのダンパ10が起き上がる又は倒れることで、着座部41の高さが調整される。
【0051】
上記構成によれば、サイドフレーム42、前後のリンクとしてのダンパ10及び接続部54からなるリンク機構51の、リンク部分をダンパ10としたので、着座部41の高さ調整のためのリンク機構51を利用して支持部(フロアパネル)3からシート部6に伝達される衝撃をダンパ10によって吸収することができる。
【0052】
なお、第2実施形態では、サイドフレーム42の前後共にリンクとしてのダンパ10を接続したが、これに限定されず、前側をダンパ10ではない単なる支持機能のみ有するリンクとし、後側のみダンパ10とする構成や、逆に、前側のみダンパ10とし、後ろ側をダンパ10ではない単なる支持機能のみ有するリンクとする構成としてもよい。なお、ダンパ10の具体的な構成は後述する。
【0053】
(第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態を説明する。図3に示すように、乗り物1は、自動車などの車両である。また、支持部3は、シート部6が設置されるフロアパネルである。シート部6は、着座部41の左右のフレームを構成するサイドフレーム42と、該サイドフレームを支持するベースフレーム43と、該ベースフレーム43を支持するスライドレール53と、該スライドレール53を前後移動可能に支持する固定フレーム52と、スライドレール53の位置を調整するためのレバー56とを備えている。
【0054】
また、支持部(フロアパネル)3に接続部54が設けられ、該接続部54にダンパ10の下端部が支持され、ダンパ10の上端部に接続部64を介して固定レール52が支持されている。
【0055】
上記構成によれば、着座部41を構成するサイドフレーム42と支持部(フロアパネル)3との間に、脚部の代わりにダンパ10を設けたので、支持部(フロアパネル)3からシート部6に伝わる衝撃をダンパ10によって吸収することができる。さらに、着座部41を支持する脚部の代わりにダンパ10を設けただけであるので、構成を簡単にすることができる。
【0056】
なお、第3実施形態では、サイドフレーム42の前後共に脚部の代わりにダンパ10を設けたが、これに限定されず、前側をダンパ10ではない単なる支持機能のみ有する脚部とし、後側のみダンパ10とする構成や、逆に、前側のみダンパ10とし、後ろ側をダンパ10ではない単なる支持機能のみ有する脚部とする構成としてもよい。なお、ダンパ10の具体的な構成は後述する。
【0057】
(第4実施形態)
次に本発明の第4実施形態を説明する。図4に示すように、乗り物1は、自動車などの車両である。また、支持部3は、シート部6が設置されるフロアパネルである。シート部6は、着座部41の左右のフレームを構成するサイドフレーム42と、該サイドフレーム42を支持すると共に着座部41の高さを調整する回動リンク65と、該回動リンク65の下部を回動可能に支持するスライドレール53と、支持部(フロアパネル)3に固定されスライドレール53を前後移動可能に支持する固定レール52と、スライドレール53の位置を調整するためのレバー56とを備える。
【0058】
また、固定レール52は支持部(フロアパネル)3に固定されており、該固定レール52にダンパ10の一端を支持する接続部66が設けられ、ダンパ10の他端がスライドレール53に支持されている。
【0059】
上記構成によれば、支持部(フロアパネル)3に固定された固定レール52と、該固定レール52に前後移動可能に設けられたスライドレール53との間にダンパ10を設けたので、スライドレール53と一体的に移動する着座部41に加わる前後方向の衝撃をダンパ10によって吸収することができる。
【0060】
なお、実施形態では、ダンパ10の一端を固定レールに設けた接続部66に接続した状態で支持し、ダンパ10の他端をスライドレール53に接続した状態で支持したが、これに限定されず、ダンパ10の一端を接続部66に接続した状態で支持し、ダンパ10の他端をスライドレール53の端部から離間させておき、衝撃を受けてスライドレール53が移動したときにダンパ10の他端にスライドレール53を当接させることで着座部41への衝撃を吸収する形態としても差し支えない。また、ダンパ10の他端をスライドレール53の端部に接続しない場合は、ダンパ10をスライドレール53の前後両方に又は前後いずれか一方に配置してもよい。なお、ダンパ10の具体的な構成は後述する。
【0061】
以上に述べた第1から第4実施形態に共通のダンパ10の構成について説明する。便宜上ダンパ10を第1実施形態に取付けたものとして説明するが、ダンパ10の構成は第2〜第4実施形態についても同様である。図1及び図5に示すように、ダンパ10は、直線状に延びる摺動部材11と、該摺動部材11を収納する収納部20とを備え、該収納部20に摺動部材11との間に摩擦力を発生させる摩擦発生手段30を備えている。
【0062】
摺動部材11は、角筒状のピストンロッドであり、端部には第1支持部4に取付けられる第1取付部12が設けられている。第1取付部12は、摺動部材11の端部から該摺動部材11の軸方向に突出する板状の部材であり、その中心部に第1貫通孔13が形成されている。第1支持部4に設けられた軸が第1貫通孔13に通されることで、第1取付部12が第1支持部4に支持される。
【0063】
収納部20は、有底筒状のシリンダであり、底部21には第2支持部5に取付けられる第2取付部22が設けられている。第2取付部22は、底部21から収納部20の軸方向に突出する板状の部材であり、その中心部に第2貫通孔23が形成されている。第2支持部5に設けられた軸が第2貫通孔23に通されることで、第2取付部22が第2支持部5に支持される。
【0064】
図7及び図8に示すように、摩擦発生手段30は、収納部20の摺動部材11挿入側の端部に設けられており、収納部20の表面から径方向外側に突出する8つの台座部31を備えている。摩擦発生手段30を、収納部20の摺動部材11挿入側の端部に設けることで、限られた摺動部材11のストロークで、摩擦を発生させるストロークを最大限にすることができる。さらに、収納部20の表面から傾方向外側に突出する台座部31に、外端面34から内周面に貫通する貫通孔35を形成し、該貫通孔35に当接部材32を設けて外端面34側に付勢手段33を設けるので構成を簡単にすることができる。
【0065】
次にダンパ10の摺動部材11の状態について説明する。
図6Aは摺動部材11が収納部20に収納された状態であり、摺動部材11の端部と収納部20の端部が面一になっており、ダンパ10が全体として最も縮んだ状態である。図6Bは摺動部材11が収納部20から最も出ており、ダンパ10が全体として最も伸びた状態である。
【0066】
次にダンパ10の構成について詳細に説明する。
図5図7及び図9に示すように、摺動部材11は筒状であり、端部に蓋部14が設けられている。摺動部材11の内側には、蓋部14から摺動部材11の挿入側の端部近傍まで該摺動部材11の軸線に沿って第1の内筒15が延びている。
【0067】
収納部20は、筒状であり、端部に底部21が設けられている。収納部20の内側には、底部21から収納部20の開口端部近傍まで該収納部20の軸線に沿って第2の内筒24が延びている。第2の内筒24は、摺動部材11の内周面16を摺動可能に支持している。この第2の内筒24の内側に、第1の内筒15が摺動可能に挿入されている。
【0068】
摺動部材11の先端部の内周面16には、第2の内筒24を案内するガイド部18が設けられている。第2の内筒24の先端部の内周面27には、第1の内筒15を案内するガイド部28が設けられている。
【0069】
付勢手段33の付勢力を受ける摺動部材11を内側から第2の内筒24で摺動可能に支持するので、摺動部材11が内側に逃げずに大きな付勢力でも受けるようにすることができる。
【0070】
収納部20の内側に配置された第2の内筒24の内側の底部21にばね座25が設けられている。該ばね座25には、第1の内筒15に当接することで摺動部材11を伸び方向に付勢する第2弾性部材26が設けられている。この構成により、摺動部材11が第2弾性部材26によっても付勢されるので、より大きな衝撃力にも対応することができる。
【0071】
なお、実施形態では、第2の内筒24は、底部21から収納部20の開口端部近傍まで延びるように形成されているが、これに限定されず、第2の内筒24は該収納部20の軸線に沿って延び少なくとも摩擦発生手段30が配置される収納部20の内側に位置するとともに摺動部材11の内周面16を摺動可能に支持していればよい。また、底部21は収納部20の端部に設けたが、これに限定されず、第2の内筒24を支持できれば底部21は、収納部20の長手方向の途中に設けても差し支えない。さらに実施形態では、摺動部材11を角筒状としたが、これに限定されず、中実の角柱としてもよく、この場合は、収納部20の内側から第2の内筒24を取り除くことで摺動部材11を収納部20に収納することができ、構造を簡単にすることができる。
【0072】
次に摩擦発生手段30について説明する。
図7から図9に示すように、摩擦発生手段30は、摺動部材11の角筒状の外側面17を構成する複数の平面のそれぞれに対して配置されている。
【0073】
摩擦発生手段30は、摺動部材11の外側面17と、該外側面17に当接する複数の当接部材32と、収納部20から突出する台座部31に設けられ複数の当接部材32のそれぞれに摺動部材11の軸線に向かって付勢力を作用させることで複数の当接部材32のそれぞれを摺動部材11に押し付ける複数の付勢手段33とを備えている。
【0074】
勢手段33及び当接部材32は、摺動部材11の長手方向について、それぞれ複数設けられ、同じ位置に配置されている。このような構成にすることで、付勢手段33の付勢力の調整を、摺動部材11の長手方向における付勢力の作用の違いを考慮せずに、摺動部材11の長手方向の同じ位置のみで容易に行うことができる。また、摩擦発生手段30は、角柱状又は角筒状の外側面17を構成する複数の平面のそれぞれに対して配置されているので、外側面17に摩擦発生手段30の当接部材32が当接する面積を確保しやすくできる。
【0075】
なお、実施形態では、複数の付勢手段33及び複数の当接部材32のそれぞれは、摺動部材11の長手方向について同じ位置に配置したが、これに限定されず、複数の付勢手段33及び複数の当接部材32のそれぞれを、摺動方向11の長手方向にずらして配置してもよく、この場合は長手方向の位置の違いによる付勢力の作用の違いも考慮した摩擦力の調整が可能となる。
【0076】
摺動部材11の横断面において、複数の付勢手段33のうち少なくとも一対の付勢手段33のそれぞれから複数の当接部材32のそれぞれに作用する付勢力のベクトルの内積が0又は負になるように、複数の当接部材32と複数の付勢手段33とが配置されている。詳細には、複数の付勢手段33及び複数の当接部材32のそれぞれは、摺動部材11の横断面において、摺動部材11の軸線の周りに回転対称性を有するように配置されている。
【0077】
具体例として、図8に示す3つの付勢手段33を便宜上、付勢手段33a、33b、33cとして示し、付勢手段33a、33b、33cのそれぞれから3つの当接部材32に作用する付勢力のベクトルをそれぞれベクトルa、ベクトルb、ベクトルcとして説明する。
【0078】
一対の付勢手段33a及び付勢手段33bのそれぞれから2つの当接部材32のそれぞれに作用するベクトルa及びベクトルbについて説明すると、ベクトルaとベクトルbの成す角は90°であり、ベクトルaとベクトルbの内積は、|ベクトルa|・|ベクトルb|cos90°で示され、内積の値は0となる。
【0079】
一対の付勢手段33a及び付勢手段33cのそれぞれから2つの当接部材32のそれぞれに作用するベクトルa及びベクトルcについて説明すると、ベクトルaとベクトルcの成す角は180°であり、ベクトルaとベクトルcの内積は、|ベクトルa|・|ベクトルc|cos180°で示され、内積の値は負となる。
【0080】
このように少なくとも一対の付勢手段33のそれぞれから複数の当接部材32のそれぞれに作用する付勢力のベクトルの成す角が90°や180°でもよく、ベクトルの内積が0又は負になる位置に付勢部材33及び当接部材32がそれぞれ配置されていればよい。
【0081】
また、摩擦発生手段30は、複数の台座部31と、該複数の台座部31の外端面34から内周面に貫通し、当接部材が摺動可能に設けられるとともに外端面34側に付勢手段33が設けられる貫通孔35とを備えている。
【0082】
次に付勢手段33について説明する。
付勢手段33は、貫通孔35に設けられた雌ねじ部36と、該雌ねじ部36に螺合される雄ねじ部37と、該雄ねじ部37と当接部材32との間で貫通孔35に収納されるとともに圧縮されることで反発力が大きくなる第1弾性部材38である。
【0083】
かかる構成によれば、貫通孔35に設けた雌ねじ部36に雄ねじ部37を螺合し、雄ねじ部37によって第1弾性部材38を圧縮し、当接部材32を付勢するので、付勢力の調整を容易に行うことができる。
【0084】
なお、第1弾性部材38は、圧縮ばねであることが好ましいが、これに限定されず、ゴム、板ばね等、圧縮されることで反発力が大きくなる部材であれば他の一般的な部材であっても差し支えない。
【0085】
次に以上に述べたダンパ10の作用について説明する。
図10Aはダンパ10が伸びた状態であり、第1取付部12の第1貫通孔13と第2取付部22の第2貫通孔23を結ぶ直線Lに対して、ダンパ10への衝撃力が矢印(1)のように傾斜角θで傾斜して入力される。図10Bに示すように、ダンパ10が所定の摩擦力を得て衝撃力を吸収し、摺動部材11が収納部20に収納されてダンパ10が縮む。
【0086】
図11Aに示すように、調整前の摩擦発生手段30の横断面において、図上部の付勢手段33及び図下部の付勢手段33の雄ねじ部36のねじ込み量が同じ場合には、図上部の当接部材32が受ける矢印(2)の垂直抗力が、図下部の当接部材32が受ける矢印(3)の垂直抗力よりも大きくなり、摩擦発生手段30は所定の摩擦力を得ることができない。
【0087】
そこで、摩擦発生手段30の調整を行う。図下部の付勢部材32の雄ねじ部37を矢印(4)のようにねじ込み、図11Bに示すように、図下部の付勢手段33の付勢力による当接部材32が受ける垂直抗力を矢印(5)のように大きくし、摩擦発生手段30全体の摩擦力を調整することで、所定の摩擦力を得る。
【0088】
ダンパ10に衝撃力が入力される際、摺動部材11が収納部20に収納されて、摩擦発生手段30によって摺動部材11との間に摩擦力が発生するが、摩擦発生手段30は、摺動部材11の外側面17に当接する複数の当接部材32のそれぞれを、収納部20に設けられた複数の付勢手段33で摺動部材11に押し付けて付勢力を作用させることで、複数の方向から当接部材32と摺動部材11の間に摩擦力を発生させることができる。
【0089】
さらに、複数の当接部材32と複数の付勢手段33とは、摺動部材11の横断面において、少なくとも一対の付勢手段33のそれぞれから複数の当接部材32のそれぞれに作用する付勢力のベクトルの内積が0又は負になるように、配置されているので、一方向のみだけではなく、いずれの方向に対しても付勢力を作用させることができる。
【0090】
このため、乗り物1への衝撃力がダンパ10に入力される際に、ダンパ10の両端部を結ぶ直線Lに対して衝撃力がいずれの方向に傾いて入力された場合であっても、摺動部材11の横断面において、入力が逃げて摩擦力が小さくなる位置での付勢手段33の付勢力を大きくすることで摩擦力を大きくし、摩擦発生手段30全体として所定の摩擦力にすることができる。結果、ダンパ10の取付場所によらず所定の摩擦力に調整することができる。
【0091】
さらに、付勢手段33が軸線のまわりに回転対称性を有するように配置されているので、衝撃力の入力がいずれの方向に傾いても、付勢力を大きくしたい位置又は付勢力を大きくしたい位置に近い位置に付勢手段33が配置され、付勢手段33の付勢力の調整を行い易くすることができる。
【0092】
次に図8のダンパ10の別態様について説明する。
図12に示すように、摺動部材11の外形は正八角形であり、摺動部材11の横断面において、摺動部材11の外側面17のうち、一対の付勢手段33のそれぞれから2つの当接部材32のそれぞれに作用する付勢力のベクトルの成す角が180°になる位置に2つの付勢手段33が配置され、これら2つの付勢手段33に隣接するようにさらに2つの付勢手段33が配置されている。
【0093】
図13に示すように、摺動部材11の外形は円形であり、摺動部材11の横断面において、3つの付勢部材11が回転対称に配置され、当接部材32の摺動部材11との当接面が円弧上に形成されている。
【0094】
なお、図8に示す実施形態では、複数の付勢手段33及び複数の当接部材32のそれぞれを、摺動部材11の軸線の周りに回転対称性を有するように配置したが、これに限定されず、複数の付勢手段33のうち少なくとも一対の付勢手段33のそれぞれから複数の当接部材32のそれぞれに作用する付勢力のベクトルの内積が0又は負になるように、複数の当接部材32と複数の付勢手段33とが配置されていれば、摺動部材11の軸線の周りに回転対称性を有さずに不均一に配置してもよい。さらには、摺動部材11の外形を円形にして、付勢手段33の数を3つ、4つ等にしてもよい。
【0095】
(別態様)
次に本発明に係るダンパ10の別態様を説明する。なお、上述したダンパ10と同様の構成については、説明を省略し、符号を流用するものとする。
本発明の第2実施形態に係るダンパ10は、直線状に延びる摺動部材11と、該摺動部材11を収納する収納部20とを備え、該摺動部材11に収納部20との間に摩擦力を発生させる摩擦発生手段30を備えている。
【0096】
摩擦発生手段30は、収納部11の内周面29と、該内周面29に当接する複数の当接部材と、摺動部材11に設けられ複数の当接部材のそれぞれに内周面29に向かって付勢力を作用させることで複数の当接部材のそれぞれを内周面29に押し付ける付勢手段とを備えている。摺動部材11の横断面において、複数の付勢手段のうち少なくとも一対の付勢手段のそれぞれから複数の当接部材のそれぞれに作用する付勢力のベクトルの内積が0又は負になるように、複数の当接部材と複数の付勢手段とが配置されている。
【0097】
かかる構成によれば、ダンパ10に衝撃力が入力される際、摺動部材11が収納部20に収納されて、摩擦発生手段によって摺動部材11との間に摩擦力が発生する。摩擦発生手段は、収納部20の内周面29に当接する複数の当接部材のそれぞれを、摺動部材11に設けられた複数の付勢手段で収納部20の内周面に押し付けて付勢力を作用させることで、複数の方向から当接部材と内周面29の間に摩擦力を発生させることができる。
【0098】
さらに、複数の当接部材と複数の付勢手段とは、摺動部材11の横断面において、少なくとも一対の付勢手段のそれぞれから複数の当接部材のそれぞれに作用する付勢力のベクトルの内積が0又は負になるように、配置されているので、一方向のみだけではなく、いずれの方向に対しても付勢力を作用させることができる。
【0099】
このため乗り物1への衝撃力がダンパ10に入力される際に、ダンパ10の両端部を結ぶ直線に対して衝撃力がいずれの方向に傾いて入力された場合であっても、摺動部材11の横断面においてそのままであれば摩擦力が小さくなるような位置で、付勢手段の付勢力を大きくすることで摩擦力を大きくし、摩擦発生手段全体として所定の摩擦力にすることができる。結果、ダンパ10の取付場所によらず所定の摩擦力に調整することができる。
【0100】
なお、図8に示した実施形態では、摺動部材11を横断面正八角形としたがこれに限定されず、三角形、四角形などでもよく、当接部材32の当接面を平面として、摺動部材11の外側面17を構成する平面のそれぞれに当接部材を当接させれば、多角形であればいずれであってもよい。さらには、摺動部材11は円柱であってもよく、この場合は、当接部材32の当接面を円柱の表面に沿う形状にすればよい。
【0101】
なお、実施形態では、衝撃を受けたときにダンパ10が圧縮される場合を説明し易くするためにダンパ10の伸長方向のストロークを最大にした状態で主に説明が、これに限定されず、ダンパ10は引っ張りを受ける場合もあり、この場合も考慮し、ダンパ10を取り付ける際に伸長方向のストロークをある程度圧縮された状態で取り付けてよい。
【0102】
なお、実施形態では、乗り物1を遊園地のアトラクション等で使用される乗り物1又は自動車としたが、これに限定されず、乗り物1は、列車、船、特殊車両、飛行機等、衝撃を吸収する必要があるものであれば他の乗り物1であっても差し支えない。
【符号の説明】
【0103】
1 … 乗り物
2 … 独立フロアパネル
3 … 支持部(フロアパネル)
4 … 第1接続部
5 … 第2接続部
6 … シート部
10… ダンパ
11… 摺動部材(ピストンロッド)
16… 内周面
17… 外側面
20… 収納部(シリンダ)
24… 内筒
26… 第2弾性部材
30… 摩擦発生手段
31… 台座部
32… 当接部材
33、33a、33b、33c… 付勢手段
34… 外端面
35… 貫通孔
36… 雌ねじ部
37… 雄ねじ部
38… 第1弾性部材
41… 着座部
42… サイドフレーム
51… リンク機構
52… 固定レール
53… スライドレール
55… 操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13