【課題を解決するための手段】
【0011】
[ 1 ] 上記目的を達成するため、本発明の乗り物用衝撃吸収機構は、
乗り物に設けられ乗員が着座するように構成されたシート部と、該シート部とは別体の前記乗り物の構造部分を構成する支持部と、該支持部と前記シート部との間に設けられたダンパとを備え、
前記ダンパは、直線状に延びる摺動部材と、該摺動部材を収納する収納部とを備え、該収納部に前記摺動部材との間に摩擦力を発生させる摩擦発生手段を備え、
前記摩擦発生手段は、前記摺動部材の外側面と、該外側面に当接する複数の当接部材と、前記収納部に設けられ前記複数の当接部材のそれぞれに前記摺動部材の軸線に向かって付勢力を作用させることで前記複数の当接部材のそれぞれを前記摺動部材に押し付ける複数の付勢手段とを備え、
前記付勢手段及び前記当接部材は、前記摺動部材の長手方向について、それぞれ複数設けられ、同じ位置に配置されており、
前記摺動部材の横断面において、前記複数の付勢手段のうち少なくとも一対の付勢手段のそれぞれから前記複数の当接部材のそれぞれに作用する前記付勢力のベクトルの内積が0又は負になるように、前記複数の当接部材と前記複数の付勢手段とが配置されていることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、乗り物に設けられ乗員が着座するように構成したシート部と、該シート部とは別体の前記乗り物の構造部分を構成する支持部と、該支持部とシート部との間に設けられたダンパとを備える。このため、乗り物の支持部からシート部に衝撃が加わる時、支持部からシート部に対して伝達される衝撃がダンパによって吸収される。
【0013】
具体的には、ダンパに衝撃力が入力される際、摺動部材が収納部に収納されて、摩擦発生手段によって摺動部材との間に摩擦力が発生する。摩擦発生手段は、摺動部材の外側面に当接する複数の当接部材のそれぞれを、収納部に設けられた複数の付勢手段で摺動部材に押し付けて付勢力を作用させることで、複数の方向から当接部材と摺動部材の間に摩擦力を発生させることができる。
また、付勢手段の付勢力の調整を、摺動部材の長手方向における付勢力の作用の違いを考慮せずに、摺動部材の長手方向の同じ位置のみで容易に行うことができる。さらに、複数の当接部材と複数の付勢手段とは、摺動部材の横断面において、少なくとも一対の付勢手段のそれぞれから複数の当接部材のそれぞれに作用する付勢力のベクトルの内積が0又は負になるように、配置されているので、一方向のみだけではなく、いずれの方向に対しても付勢力を作用させることができる。このため、乗り物への衝撃力がダンパに入力される際に、ダンパの両端部を結ぶ直線に対して衝撃力がいずれの方向に傾いて入力された場合であっても、摺動部材の横断面において、入力が逃げて摩擦力が小さくなる位置での付勢手段の付勢力を大きくすることで摩擦力を大きくし、摩擦発生手段全体として所定の摩擦力にすることができる。結果、ダンパの取付場所によらず所定の摩擦力に調整することができる。
【0014】
[2]また、本発明のダンパにおいて、
前記乗り物は、前記支持部から離間して前記シート部が設置される独立フロアパネルを備え、
前記乗り物の支持部に、前記ダンパの一端が接続され、
前記ダンパの他端に、前記独立フロアパネルが接続されていることが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、乗り物の支持部から独立フロアパネルに伝達される衝撃がダンパによって吸収される。このため、独立フロアパネルと一体的に設けられたシート部に伝達される衝撃を吸収することができる。
【0016】
[3]また、本発明のダンパにおいて、
前記支持部は、前記シート部が設置されるフロアパネルであり、
前記シート部は、前記乗員が着座する着座部の前記フロアパネルに対する高さを調整可能なリンク機構を備え、
該リンク機構は、前記着座部の左右のフレームを構成するサイドフレームと、該サイドフレームに回動可能に接続されたリンクとしての前記ダンパと、前記フロアパネルに設けられ前記ダンパの下端部を回動可能に接続する接続部と、前記ダンパを回動させることで高さを調整する操作部とを備えていることが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、サイドフレーム、リンクとしてのダンパ及び接続部からなるリンク機構のリンク部分をダンパとしたので、着座部の高さ調整のためのリンク機構を利用してフロアパネルからシート部に伝達される衝撃をダンパによって吸収することができる。
【0018】
[4]また、本発明のダンパにおいて、
前記支持部は、前記シート部が設置されるフロアパネルであり、
前記シート部は、着座部の左右のフレームを構成するサイドフレームを備え、
前記フロアパネルに、前記ダンパの下端部が支持され、
前記ダンパの上端部に前記サイドフレームが支持されていることが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、着座部を構成するサイドフレームとフロアパネルとの間に、脚部の代わりにダンパを設けたので、フロアパネルからシート部に伝わる衝撃をダンパによって吸収することができる。
【0020】
[5]また、本発明のダンパにおいて、
前記支持部は、前記シート部が設置されるフロアパネルであり、
前記シート部は、着座部の左右のフレームを構成するサイドフレームと、該サイドフレームを支持するスライドレールと、前記フロアパネルに固定され前記スライドレールを前後移動可能に支持する固定レールとを備え、
該固定レール又は前記フロアパネルに、前記ダンパの一端が支持され、
前記ダンパの他端に、前記スライドレールが支持される又は前記スライドレールが移動されて当接することが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、フロアパネルに固定された固定レール又はフロアパネルと、固定レールに前後移動可能に設けられたスライドレールとの間にダンパを設けたので、スライドレールと一体的に移動する着座部に加わる前後方向の衝撃をダンパによって吸収することができる。
【0022】
[6]また、本発明のダンパにおいて、
前記複数の付勢手段及び前記複数の当接部材のそれぞれは、前記摺動部材の横断面において、前記軸線の周りに回転対称性を有するように配置されていることが好ましい。
【0023】
かかる構成によれば、付勢手段が軸線のまわりに回転対称性を有するように配置されているので、衝撃力の入力がいずれの方向に傾いても、付勢力を大きくしたい位置又は付勢力を大きくしたい位置に近い位置に付勢手段が配置され、付勢手段の付勢力の調整を行い易くすることができる。
【0026】
[
7 ] また、本発明のダンパにおいて、
前記摺動部材は筒状であり、
前記収納部の内側には、該収納部の軸線に沿って延び少なくとも前記摩擦発生手段が配置される前記収納部の内側に位置するとともに前記摺動部材の内周面を摺動可能に支持する内筒が備えられていることが好ましい。
【0027】
かかる構成によれば、付勢手段の付勢力を受ける摺動部材を内側から内筒で摺動可能に支持するので、摺動部材が内側に逃げずに大きな付勢力でも受けるようにすることができる。
【0028】
[
8 ] また、本発明のダンパにおいて、
前記収納部は、筒状又は有底筒状のシリンダであり、
前記摺動部材は、角筒状のピストンロッドであり、
前記摩擦発生手段は、前記角筒状の前記外側面を構成する複数の平面のそれぞれに対し
て配置されていることが好ましい。
【0029】
かかる構成によれば、収納部は、筒状又は有底筒状のシリンダであり、摺動部材は、角筒状のピストンロッドであるので、ピストンロッド及びシリンダを容易に構成することができる。さらに、摩擦発生手段は、角筒状の外側面を構成する複数の平面のそれぞれに対して配置されているので、外側面に摩擦発生手段の当接部材が当接する面積を確保しやすくできる。
【0030】
[
9 ] また、本発明のダンパにおいて、
前記収納部は、筒状又は有底筒状のシリンダであり、
前記摺動部材は、角柱状のピストンロッドであり、
前記摩擦発生手段は、前記角柱状の前記外側面を構成する複数の平面のそれぞれに対して配置されていることが好ましい。
【0031】
かかる構成によれば、収納部は、筒状又は有底筒状のシリンダであり、摺動部材は、角柱状のピストンロッドであるので、ピストンロッド及びシリンダを容易に構成することができる。さらに、摩擦発生手段は、角柱状の外側面を構成する複数の平面のそれぞれに対して配置されているので、外側面に摩擦発生手段の当接部材が当接する面積を確保しやすくできる。
【0032】
[ 1
0 ] また、本発明のダンパにおいて、
前記摩擦発生手段
における前記当接部材は、前記収納部の前記摺動部材挿入側の端部に設けられており、
前記収納部の表面から径方向外側に突出する台座部と、
該台座部の外端面から内周面に貫通し、前記当接部材が摺動可能に設けられるとともに
前記外端面側に前記付勢手段が設けられる貫通孔とを備えていることが好ましい。
【0033】
かかる構成によれば、摩擦発生手段を、収納部の摺動部材挿入側の端部に設けることで、限られた摺動部材のストロークで、摩擦を発生させるストロークを最大限にすることができる。さらに、収納部の表面から径方向外側に突出する台座部に、外端面から内周面に貫通する貫通孔を形成し、該貫通孔に当接部材を設けて外端面側に付勢手段を設けるので構成を簡単にすることができる。
【0034】
[ 1
1 ] また、本発明のダンパにおいて、
前記付勢手段は、前記貫通孔に設けられた雌ねじ部と、該雌ねじ部に螺合される雄ねじ部と、該雄ねじ部と前記当接部材との間で前記貫通孔に収納されるとともに圧縮されることで反発力が大きくなる第1弾性部材であることが好ましい。
【0035】
かかる構成によれば、貫通孔に設けた雌ねじ部に雄ねじ部を螺合し、雄ねじ部によって第1弾性部材を圧縮し、当接部材を付勢するので、付勢力の調整を容易に行うことができる。
【0036】
[ 1
2 ] また、本発明のダンパにおいて、
前記収納部の内側に、ばね座が設けられ、
該ばね座に、前記摺動部材を伸び方向に付勢する第2 弾性部材が設けられていることが好ましい。
【0037】
かかる構成によれば、摺動部材が第2弾性部材によっても付勢されるので、より大きな衝撃力に対応することができる。
【0038】
[ 1
3 ] また、本発明のダンパにおいて、
乗り物に設けられ乗員が着座するように構成されたシート部と、該シート部とは別体の前記乗り物の構造部分を構成する支持部と、該支持部と前記シート部との間に設けられたダンパとを備え、
前記ダンパは、直線状に延びる摺動部材と、該摺動部材を収納する収納部とを備え、該摺動部材に前記収納部との間に摩擦力を発生させる摩擦発生手段を備え、
前記摩擦発生手段は、前記収納部の内周面と、該内周面に当接する複数の当接部材と、前記摺動部材に設けられ前記複数の当接部材のそれぞれに前記内周面に向かって付勢力を作用させることで前記複数の当接部材のそれぞれを前記内周面に押し付ける付勢手段とを備え、
前記付勢手段及び前記当接部材は、前記摺動部材の長手方向について、それぞれ複数設けられ、同じ位置に配置されており、
前記摺動部材の横断面において、前記複数の付勢手段のうち少なくとも一対の付勢手段のそれぞれから前記複数の当接部材のそれぞれに作用する前記付勢力のベクトルの内積が0又は負になるように、前記複数の当接部材と前記複数の付勢手段とが配置されていることが好ましい。
【0039】
かかる構成によれば、乗り物に設けられ乗員が着座するように構成したシート部と、該シート部とは別体の前記乗り物の外側構造部分を構成する支持部と、該支持部とシート部との間に設けられたダンパとを備える。このため、乗り物の支持部からシート部に衝撃が加わる時、支持部からシート部に対して伝達される衝撃がダンパによって吸収される。
具体的には、ダンパに衝撃力が入力される際、摺動部材が収納部に収納されて、摩擦発生手段によって摺動部材との間に摩擦力が発生する。摩擦発生手段は、収納部の内周面に当接する複数の当接部材のそれぞれを、摺動部材に設けられた複数の付勢手段で収納部の内周面に押し付けて付勢力を作用させることで、複数の方向から当接部材と内周面の間に摩擦力を発生させることができる。
また、付勢手段の付勢力の調整を、摺動部材の長手方向における付勢力の作用の違いを考慮せずに、摺動部材の長手方向の同じ位置のみで容易に行うことができる。さらに、複数の当接部材と複数の付勢手段とは、摺動部材の横断面において、少なくとも一対の付勢手段のそれぞれから複数の当接部材のそれぞれに作用する付勢力のベクトルの内積が0又は負になるように、配置されているので、一方向のみだけではなく、いずれの方向に対しても付勢力を作用させることができる。このため、乗り物への衝撃力がダンパに入力される際に、ダンパの両端部を結ぶ直線に対して衝撃力がいずれの方向に傾いて入力された場合であっても、摺動部材の横断面においてそのままであれば摩擦力が小さくなるような位置で、付勢手段の付勢力を大きくすることで摩擦力を大きくし、摩擦発生手段全体として所定の摩擦力にすることができる。結果、ダンパの取付場所によらず所定の摩擦力に調整することができる。