【実施例】
【0029】
<医療情報管理システムの概要>
まず、本実施例に係る医療情報管理システムの概要について説明する。
図1は、本実施例に係る医療情報管理サーバ1を含む医療情報管理システムの概要を説明するための説明図である。
【0030】
図1に示すように、この医療情報管理システムは、クラウド2上の医療情報管理サーバ1と、医療機関A,B内の管理サーバ3,4と、患者Cの端末装置5と、研究機関D内の医療情報利用装置6とを有し、管理サーバ3,4、端末装置5、及び医療情報利用装置6は、それぞれ医療情報管理サーバ1に接続される。なお、「医療機関」は、例えば病院、診療所であり、本実施例では医師を含む概念である。また、「研究機関」は、大学や企業などの研究機関であり、本実施例では、個人の研究者を含む概念である。
【0031】
管理サーバ3,4は、それぞれの医療機関A,B内で生成した医療情報を医療情報管理サーバ1にアップロードする(ステップS1)。なお、「医療情報」には、例えば、医師の診断書、診断画像情報、投薬情報、さらには患者自身側が登録する情報が含まれる。
【0032】
医療情報管理サーバ1は、アップロードされた医療情報D1の所有の権限を、アップロードした医療情報D1に帰属させる。例えば、管理サーバ3がアップロードした医療情報D1の所有の権限は、医療機関Aに帰属される。ここで、医療機関Aで医療行為を受けた患者Cは、患者自身の医療情報D1の移譲について医療機関Aとの合意を得た後、管理サーバ3から医療情報管理サーバ1に対して患者自身の医療情報D1の移譲の申込みを行う(ステップS2)。移譲の申込みを受けた医療情報管理サーバ1は、患者Cと医療機関Aとの合意内容に対応して患者自身の医療情報D1の所有の権限を、医療情報管理サーバ1に蓄積した状態で、医療機関Aから患者Cに委譲する管理を行う(ステップS3)。これにより、患者Cは、患者Cと医療機関Aとの合意内容に基づいて患者自身の医療情報D1を、患者C自身の権限のもとに自由に利用することができる。なお、患者Cと医療機関Aとの合意内容による医療情報D1の移譲には、例えば医療機関Aによる医療情報D1の閲覧の権限を残したままの委譲、医療機関Aによる医療情報D1の閲覧の権限を持たせない移譲、医療情報D1の一部のみの移譲、医療機関A側の関係者名が匿名化された医療情報D1の委譲などがある。
【0033】
例えば、患者Cは、管理サーバ4あるいは端末装置5から、医療情報管理サーバ1に対して、所有の権限が患者Cに付与された患者自身の医療情報D1を医療機関Bが利用できる利用設定を依頼することにより、医療機関Bの管理サーバ4が患者自身の医療情報D1を利用できる(ステップS4)。
【0034】
これにより、患者Cは、例えば、医療機関Aの診療に対して、医療機関Bにセカンドオピニオンを求めることができる。また、このセカンドオピニオンを行う際、医療機関Bは、医療機関Aの診療結果を利用することができ、効率的な診療判断を行うことができる。また、患者Cは、医療機関Aでは診療できないが医療機関Bでは診療できる医療分野に対する診療を医療機関Bに依頼する場合、他の医療分野ではあるが、医療機関Aの診断結果を参考にすることができ、効率的かつ多面的な診療判断を行うことができる。
【0035】
また、研究機関Dの医療情報利用装置6は、研究に必要な所望の医療情報の検索利用申込みを医療情報管理サーバ1に対して行い、医療情報管理サーバ1は、所望の医療情報に合致する医療情報を検索し、所望の医療情報に合致する医療情報を所有する所有者(例えば患者C)を出力する(ステップS5)。医療情報利用装置6は、例えば患者Cが所有する医療情報D1を特定し、患者Cに対する利用依頼情報を医療情報管理サーバ1に送信し、医療情報管理サーバ1は、利用依頼情報を患者Cの端末装置5に通知する(ステップS6)。利用依頼情報を受けた端末装置5は、医療情報管理サーバ1に対して医療情報D1の利用条件を設定する(ステップS7)。そして、医療情報利用装置6は、利用条件下で医療情報D1を利用することができる(ステップS8)。
【0036】
医療情報管理サーバ1が蓄積する医療情報は膨大であるため、研究機関Dは、質が高く、かつ、情報量の大きい医療情報を利用することができる。なお、この場合における医療情報の利用は、患者Cによる利用ではなく、医療情報の利用を希望する研究機関などの第三者としての医療情報利用者による利用であるため、利用依頼情報内には、利用できた場合における報酬等の情報を付加してもよい。
【0037】
なお、患者Cは、後見人等の代理人であってもよい。また、利用条件とは、例えば、個人情報の匿名化、利用範囲、及び利用期間などである。利用範囲は、例えば、医師の診断書部分の範囲は利用できず、画像情報の範囲のみの利用を許可する。また、医療情報の利用には、例えば医療情報の閲覧、複写、移動、削除を含む。さらに、医療情報の利用には、複数の医療情報から得られる統計情報などの利用も含まれる。なお、医療情報管理サーバ1から医療情報を取り出す複写の場合であって利用期間が設定されている場合、利用期間経過時に医療情報を消去する。この医療情報の消去は、例えば、複写した医療情報に、利用期間を経過した場合に医療情報を自動削除するプログラムを付加して利用させればよい。また、医療情報管理サーバ1にアクセスする場合、医療機関A,B、患者C、患者Cの代理人、研究機関Dの認証処理を行う。
【0038】
このように、本実施例に係る医療情報管理システムでは、患者自身の医療情報D1は、医療機関A,Bの所有の権限から、患者Cの所有の権限に移譲することができるので、患者Cの所有の権限のもとに、患者Cによる利用、他の医療機関の利用、研究機関などの医療情報利用者による利用を自由に行うことができる。また、患者Cの医療情報は、患者C自身が一元化して管理することが可能であり、しかも過去の医療情報を消滅せずに維持することができるので、患者Cに対する診療の質を高めることができる。
【0039】
<医療情報管理サーバの構成>
次に、
図1に示した医療情報管理サーバ1の構成について説明する。
図2は、
図1に示した医療情報管理サーバ1の構成を示す機能ブロック図である。医療情報管理サーバ1は、入力部11、表示部12、通信部13、データベース部14及び制御部15を有する。
【0040】
入力部11は、キーボード又はマウス等の入力デバイスであり、表示部12は、液晶パネル等の表示デバイスであり、通信部13は、クラウド2内の医療情報管理サーバ1に接続するための通信インタフェース部である。
【0041】
データベース部14は、ハードディスク装置や不揮発性メモリ等からなる記憶デバイスであり、医療情報D1、所有権限情報D2、利用条件情報D3、認証情報D4及び情報分析結果情報D5を記憶する。
【0042】
制御部15は、医療情報管理サーバ1の全体を制御する制御部であり、要求受付部21、情報処理制御部22、移譲管理部23、利用管理部24、匿名化処理部25、認証部26、情報付加処理部27、利用依頼情報通知部28及び情報分析処理部29を有する。制御部15は、これらの機能部に対応するプログラムを不揮発性メモリや磁気ディスク装置などの記憶装置に記憶しておき、これらのプログラムをメモリにロードして、CPUで実行することで、対応するプロセスを実行させることになる。
【0043】
要求受付部21は、入力部11あるいは通信部13を介して入力された情報を受け付ける。情報処理制御部22は、医療情報D1の蓄積、閲覧、複写、移動、削除、さらに特定情報の削除、特定情報の切り出しなどの情報処理を行う。また、情報処理制御部22は、図示しない外部のサービス提供者のサーバシステム内に登録管理される情報を、外部のサービス提供者のサーバシステムに連携して情報を取得し、医療情報として記憶し、あるいは更新する。
【0044】
移譲管理部23は、医療情報D1の蓄積時に医療情報D1の所有の権限を医療機関A,B毎に帰属させ、患者Cから患者自身の医療情報D1の移譲の申込みがあった場合、患者Cと医療機関A,Bとの合意内容に対応して医療情報D1の所有の権限を患者Cに委譲する管理を行う。この医療情報D1の所有の権限の委譲結果は、所有権限情報D2として保持する。
【0045】
利用管理部24は、患者Cに移譲された医療情報D1の利用を管理する。利用管理部24は、患者からの設定依頼によって、患者と利用者との間の利用条件の設定内容を利用条件情報D3として保持させる。利用管理部24は、医療情報D1の利用がある場合、利用条件情報D3に基づいて管理する。
【0046】
匿名化処理部25は、医師、医療機関、患者などの情報の匿名化処理を行う。匿名化処理部25は、利用条件情報D3に基づいて匿名化処理を行う。
【0047】
認証部26は、認証情報D4に基づいて、医療機関A,B、患者C、患者Cの代理人、研究機関Dに対する認証処理を行う。情報付加処理部27は、医療情報D1の蓄積時に医療情報D1の特徴を抽出し、この特徴を属性情報として医療情報D1に付加する。この属性情報は、例えばラベルであり、医療情報の検索を高速に行うことができる。利用依頼情報通知部28は、研究機関Dが医療情報を利用する場合に研究機関Dが送信する利用依頼情報を、医療情報D1の所有者である患者Cに通知する処理を行う。
【0048】
情報分析処理部29は、利用が可能な複数の医療情報を用いて予め設定された所望の分析内容に対する分析を行い、統計情報を含む情報分析結果情報D5に加工する処理を行う。この情報分析結果情報D5は、データベース部14に記憶されるとともに逐次更新される。例えば、情報分析処理部29は、同一の病状を持つ患者の数、同一の病状を持つ年齢の分布などの統計情報を情報分析結果情報D5して記憶する。患者自身は、この情報分析結果情報D5を参照することによって自分の情報につき統計的に検証することが可能になる。
【0049】
また、情報分析処理部29は、医療情報利用装置6から依頼された所望の分析内容に対応して分析処理を行い、この分析処理結果である情報分析結果情報D5を医療情報利用装置6に送信するWEBサービスを行う。
【0050】
<管理サーバの構成>
次に、
図1に示した管理サーバ3,4の構成について説明する。管理サーバ3,4の構成は同じであるため、説明の便宜上、管理サーバ3について説明する。
図3は、
図1に示した管理サーバ3の構成を示す機能ブロック図である。管理サーバ3は、入力部31、表示部32、通信部33、記憶部34及び制御部35を有する。
【0051】
入力部31は、キーボード又はマウス等の入力デバイスであり、表示部32は、液晶パネル等の表示デバイスであり、通信部33は、クラウド2内の医療情報管理サーバ1に接続するための通信インタフェース部である。
【0052】
記憶部34は、ハードディスク装置や不揮発性メモリ等からなる記憶デバイスであり、医療情報D1、所有権限情報D2、利用条件情報D3、認証情報D4を記憶する。医療情報D1は、医療情報管理サーバ1にアップロードする医療情報である。所有権限情報D2及び利用条件情報D3は、管理サーバ3が所有の権限を有する医療情報に関する所有権限情報及び利用条件情報である。認証情報D4は、管理サーバ3が医療情報管理サーバ1にアクセスする場合に医療情報管理サーバ1に送信する認証情報である。
【0053】
制御部35は、管理サーバ3の全体を制御する制御部であり、要求受付部41、情報処理制御部42、移譲申込み部43及び利用管理部44を有する。制御部35は、これらの機能部に対応するプログラムを不揮発性メモリや磁気ディスク装置などの記憶装置に記憶しておき、これらのプログラムをメモリにロードして、CPUで実行することで、対応するプロセスを実行させることになる。
【0054】
要求受付部41は、入力部31あるいは通信部33を介して入力された情報を受け付ける。情報処理制御部42は、医療情報管理サーバ1に対して医療情報D1の蓄積、閲覧、複写、移動、削除などの情報処理を行う。
【0055】
移譲申込み部43は、医療機関A,Bが所有の権限を有する患者自身の医療情報D1の患者への移譲の申込みを、医療情報管理サーバ1に対して行う。移譲の申込みには、患者Cと医療機関A,Bとの合意内容が含まれる。
【0056】
利用管理部44は、患者が所有の権限を有する医療情報D1の利用を管理する。利用管理部44は、医療情報D1を所有する患者と医療機関Aとの間の利用条件の設定内容を利用条件情報D3として保持する。利用管理部44は、医療情報D1を所有する患者の医療情報D1を利用する場合、利用条件情報D3を参照する。
【0057】
<端末装置の構成>
次に、
図1に示した端末装置5の構成について説明する。
図4は、
図1に示した端末装置5の構成を示す機能ブロック図である。端末装置5は、入力部51、表示部52、通信部53、記憶部54及び制御部55を有する。
【0058】
入力部51は、キーボード又はマウス等の入力デバイスであり、表示部52は、液晶パネル等の表示デバイスであり、通信部53は、クラウド2内の医療情報管理サーバ1に接続するための通信インタフェース部である。なお、入力部51及び表示部52は、タッチパネルを用いた一体型の入出力部であってもよい。また、端末装置5は、携帯端末装置であってもよい。
【0059】
記憶部54は、ハードディスク装置や不揮発性メモリ等からなる記憶デバイスであり、医療情報D1、所有権限情報D2、利用条件情報D3、認証情報D4を記憶する。医療情報D1は、医療情報D1の移動などの利用を行う場合に一時記憶される情報である。所有権限情報D2及び利用条件情報D3は、端末装置5の患者Cが所有の権限を有する医療情報D1に関する所有権限情報及び利用条件情報である。認証情報D4は、端末装置5が医療情報管理サーバ1にアクセスする場合に医療情報管理サーバ1に送信する認証情報である。
【0060】
制御部55は、端末装置5の全体を制御する制御部であり、要求受付部56、情報処理制御部57及び利用管理部58を有する。制御部55は、これらの機能部に対応するプログラムを不揮発性メモリや磁気ディスク装置などの記憶装置に記憶しておき、これらのプログラムをメモリにロードして、CPUで実行することで、対応するプロセスを実行させることになる。
【0061】
要求受付部56は、入力部51あるいは通信部53を介して入力された情報を受け付ける。情報処理制御部57は、医療情報管理サーバ1に対して医療情報D1の蓄積、閲覧、複写、移動、削除などの情報処理を行う。
【0062】
利用管理部58は、患者Cが所有の権限を有する医療情報D1の利用を管理する。利用管理部58は、患者Cと、医療機関A,B及び研究機関Dとの間の利用条件の設定内容を利用条件情報D3として保持する。利用管理部58は、患者Cが所有する医療情報D1を医療機関A,Bまたは研究機関Dが利用する場合、利用条件情報D3を参照する。
【0063】
<医療情報利用装置の構成>
次に、
図1に示した医療情報利用装置6の構成について説明する。
図5は、
図1に示した医療情報利用装置6の構成を示す機能ブロック図である。医療情報利用装置6は、入力部61、表示部62、通信部63、記憶部64及び制御部65を有する。
【0064】
入力部61は、キーボード又はマウス等の入力デバイスであり、表示部62は、液晶パネル等の表示デバイスであり、通信部63は、クラウド2内の医療情報管理サーバ1に接続するための通信インタフェース部である。
【0065】
記憶部64は、ハードディスク装置や不揮発性メモリ等からなる記憶デバイスであり、医療情報D1、利用条件情報D3、認証情報D4を記憶する。医療情報D1は、医療情報D1の移動などの利用を行う場合に一時記憶される情報である。利用条件情報D3は、端末装置5の患者Cが所有の権限を有する医療情報D1に関する利用条件情報である。認証情報D4は、医療情報利用装置6が医療情報管理サーバ1にアクセスする場合に医療情報管理サーバ1に送信する認証情報である。
【0066】
制御部65は、医療情報利用装置6の全体を制御する制御部であり、要求受付部66、情報処理制御部67、検索利用申込み部68及び利用管理部69を有する。制御部65は、これらの機能部に対応するプログラムを不揮発性メモリや磁気ディスク装置などの記憶装置に記憶しておき、これらのプログラムをメモリにロードして、CPUで実行することで、対応するプロセスを実行させることになる。
【0067】
要求受付部66は、入力部61あるいは通信部63を介して入力された情報を受け付ける。情報処理制御部67は、医療情報管理サーバ1に対して医療情報D1の蓄積、閲覧、複写、移動、削除、さらに特定情報の削除、特定情報の切り出しなどの情報処理要求を行う。
【0068】
検索利用申込み部68は、利用を希望する所望の医療情報の検索利用申込みを医療情報管理サーバ1に対して行う。検索利用申込み部68は、検索の結果、例えば、所望の医療情報に合致する医療情報を所有する所有者である患者Cに対する利用を依頼する利用依頼情報を医療情報管理サーバ1に送信する。また、検索利用申込み部68は、情報分析処理部29を用いた医療情報の情報分析利用の申込みを行う。
【0069】
利用管理部69は、患者Cが所有の権限を有する医療情報D1の利用を管理する。利用管理部69は、患者Cと研究機関Dとの間の利用条件の設定内容を利用条件情報D3として保持する。利用管理部69は、患者Cが所有する医療情報D1を利用する場合、利用条件情報D3を参照する。
【0070】
<管理サーバから医療情報管理サーバへの医療情報の蓄積及び医療情報の患者への移譲の制御処理>
次に、管理サーバ3から医療情報管理サーバ1への医療情報D1の蓄積及び医療情報D1の患者Cへの移譲の制御処理手順について説明する。
図6は、管理サーバ3から医療情報管理サーバ1への医療情報D1の蓄積及び医療情報D1の患者Cへの移譲の制御処理手順を示すシーケンス図である。
【0071】
図6に示すように、まず、管理サーバ3は、医療機関Aが生成した医療情報D1を医療情報管理サーバ1にアップロードする(ステップS101)。これに対し、医療情報管理サーバ1は、アップロードされた医療情報D1に、医療情報D1の特徴を示す属性情報を付加してデータベース部14に蓄積する(ステップS102)。そして、医療機関Aに、アップロードした医療情報D1に対する所有の権限を帰属させる(ステップS103)。
【0072】
その後、管理サーバ3は、患者C自身の医療情報である医療情報D1に対する移譲の申込みを、患者Cの依頼によって、医療情報管理サーバ1に対して行う(ステップS104)。この移譲の申込みには、患者Cと、現在、所有の権限を有する医療機関Aとの合意内容を含む。移譲の申込みを受けた医療情報管理サーバ1は、医療機関Aと患者Cとの合意内容に対応して、医療情報D1の所有の権限を患者Cに移譲し(ステップS105)、本処理を終了する。
【0073】
<他の医療機関による医療情報の利用の制御処理>
次に、他の医療機関Bが医療情報D1を利用する場合の制御処理手順について説明する。
図7は、他の医療機関Bの管理サーバ4が医療情報D1を利用する場合の制御処理手順を示すシーケンス図である。
図7に示すように、まず、端末装置5は、患者Cが所有する医療情報D1を医療機関Bが利用できる利用設定を医療情報管理サーバ1に送信する(ステップS201)。利用設定を受けた医療情報管理サーバ1は、医療機関Bによる患者Cの医療情報D1の利用許可設定を行う(ステップS202)。
【0074】
これにより、医療機関Bの管理サーバ4は、患者Cの医療情報D1の利用が可能となり、医療情報管理サーバ1との間で、患者Cの医療情報D1を利用する処理を行い(ステップS203)、本処理を終了する。
【0075】
<研究機関による医療情報の利用の制御処理>
次に、研究機関Dが医療情報D1を利用する場合の制御処理手順について説明する。
図8は、研究機関Dの医療情報利用装置6が医療情報D1を利用する場合の制御処理手順を示すシーケンス図である。
図8に示すように、まず、医療情報利用装置6は、所望の医療情報の検索によって医療情報を利用する申込みである検索利用申込みを医療情報管理サーバ1に送信する(ステップS301)。
【0076】
検索利用申込みを受けた医療情報管理サーバ1は、医療情報の属性情報を用いて所望の医療情報の検索を行う(ステップS302)。その後、医療情報管理サーバ1は、所望の医療情報に合致する医療情報を所有する所有者(患者C)をリストとして医療情報利用装置6に提示出力する(ステップS303)。医療情報利用装置6は、所有者リストの中から利用したい所有者を特定し、特定した所有者に対する利用依頼情報を医療情報管理サーバ1に送信する(ステップS304)。
【0077】
利用依頼情報を受けた医療情報管理サーバ1は、この利用医療情報を、所有者(患者C)の端末装置5に通知する(ステップS305)。端末装置5は、利用依頼情報の通知を受けて、医療情報の利用条件の設定を医療情報管理サーバ1に依頼する(ステップS306)。医療情報の利用設定を受けた医療情報管理サーバ1は、研究機関Dによる、患者Cの医療情報D1の利用許可設定を行う(ステップS307)。
【0078】
これにより、研究機関Dの医療情報利用装置6は、患者Cの医療情報D1の利用が可能となり、医療情報管理サーバ1との間で、患者Cの医療情報D1を利用する処理を行い(ステップS308)、本処理を終了する。
【0079】
<研究機関による医療情報管理サーバを用いた医療情報の情報分析処理手順>
次に、医療情報管理サーバ1を用いた医療情報の情報分析処理手順について説明する。
図9は、研究機関による医療情報管理サーバ1を用いた医療情報の情報分析処理手順を示すシーケンス図である。
【0080】
図9に示すように、まず、医療情報利用装置6の検索利用申込み部68は、医療情報管理サーバ1に対して情報分析利用の申込みを行う(ステップS401)。その後、所望の分析内容の情報を医療情報管理サーバ1に送信する(ステップS402)。
【0081】
所望の分析内容の情報を受信した医療情報管理サーバ1の情報分析処理部29は、所望の分析内容に対応する医療情報を検索し、検索した医療情報を用いて所望の分析内容に対応した分析処理を行う(ステップS403)。その後、この分析処理結果は、情報分析結果情報D5として医療情報利用装置6に出力される(ステップS404)。
【0082】
この場合、医療情報管理サーバ1は、医療情報利用装置6に対して、医療情報D1そのものの完全複写等による外部提供を行わず、医療情報D1を加工して得られた所望の分析処理結果情報を外部出力するのみとなる。医療情報管理サーバ1は、医療情報利用装置6に対して、加工しない医療情報D1の外部出力を行わず、医療情報D1が加工された分析処理結果情報のみを外部出力するように管理してもよい。
【0083】
なお、上記の実施例において、他の医療機関などが接続される他の医療情報管理サーバが存在し、医療情報管理サーバ1から他の医療情報管理サーバに医療情報を移動する場合、医療情報の移動先を示すインデックス情報をデータベース部14内に保持させておいてもよい。
【0084】
また、上記の実施例では、医療情報がクラウド2などのネットワーク内に保持され、あるいは移動することが前提であった。すなわち、医療情報管理サーバ1に蓄積した状態で、医療情報の所有の権限が移譲されていたが、これに限定されず、患者Cに医療情報が移譲された後は、例えば、装置に対して着脱可能なUSBメモリなどの外部メモリに医療情報を移動してもよい。患者Cは、この外部メモリを保持し、管理することによって医療情報の所有者となる。
【0085】
本実施例では、医療機関が所有の権限を有していた患者自身の医療情報を、患者に所有の権限を移譲することができるので、患者の所有の権限のもとに、患者自身による利用、他の医療機関の利用、医療情報の利用を希望する研究機関などの医療情報利用者による利用を自由に行うことができる。患者の医療情報を他の医療機関で利用する場合、セカンドオピニオンを求める診療における質を高めることができる。また、患者本人による明確な公開利用の意思表示に基づき、医療情報利用者による利用が促進されることによって医療分野の研究開発が促進される。
【0086】
また、従来、医療機関は患者の医療情報を一定期間経過した場合、破棄する場合があり、その場合、患者は患者自身の医療情報を利用することが不可能となっていたが、本実施例では、患者自身が医療情報を所有して管理しているので、医療情報が勝手に破棄されることなく、有効活用することができる。
【0087】
なお、上記の実施例で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。