【実施例1】
【0039】
図1は本発明を適用した一実施例の冷凍装置Rを含む集中管理装置1の通信回線と冷凍装置Rの配管構成を示している。
(1)冷凍装置R
図1において、実施例の冷凍装置Rは、例えばコンビニエンスストア等の店舗の店内壁際に設置された複数台のショーケース(機器)2と、圧縮機3等を備えて店外に設置された冷凍機4(機器)とから構成されている。各ショーケース2はそれぞれ蒸発器6、膨張弁(電子膨張弁)7及び図示しない冷気循環用送風機等を備えており、冷凍機4には圧縮機3の他に図示しない凝縮器や凝縮器用送風機等が設けられている。尚、実施例では単一の圧縮機3で示すが、複数台の圧縮機で
図1の冷凍機4の圧縮機3を構成しても良い。
【0040】
冷凍機4の圧縮機3の吐出側には前述した凝縮器が接続され、この凝縮器に高圧配管(冷媒配管)8が接続されている。各ショーケース2は所謂別置型のショーケースであり、各ショーケース2の蒸発器6の入口はそれぞれ膨張弁7を介して高圧配管(冷媒配管)8に並列に接続され、蒸発器6の出口は低圧配管(冷媒配管)9を介して圧縮機3の吸入側に接続される。高圧配管8と低圧配管9は、店外に設置された冷凍機4から店内に設置された各ショーケース2に渡って配設されており、これらにより、冷凍装置Rの冷媒回路RCが構成されている。
【0041】
そして、圧縮機3から吐出された高温高圧の冷媒(例えば、R404a等)は凝縮器にて空冷された後、冷凍機4から出て高圧配管8に入り、この高圧配管8を経て各ショーケース2に分配供給される。この共通の圧縮機3から各ショーケース2に分配供給された冷媒は、各膨張弁7にて絞られた後、蒸発器6に流入してそれぞれ蒸発する。このときの吸熱作用で前記冷気循環用送風機により循環される空気を冷却し、この冷却された冷気を庫内に循環させることにより、各ショーケース2の庫内は冷却される。蒸発器6で蒸発した冷媒は、その後低圧配管9を経て冷凍機4に入り、圧縮機3に吸い込まれる循環を繰り返す。
【0042】
(2)接続ケースコントローラ12
冷凍装置Rを構成する各ショーケース2にはプロセッサを備えたコンピュータの一例であるマイクロコンピュータから構成された接続ケースコントローラ12(機器コントローラ。本発明における制御装置の一部を構成する)がそれぞれ設けられている。
図2はこの接続ケースコントローラ12の機能ブロック図を示している。接続ケースコントローラ12は、ショーケース2の膨張弁7及び冷気循環用送風機の運転制御や後述するメインコントローラ11との間の通信制御を司る制御部21と、各種情報(データ)を記憶する記憶部22と、庫内温度等を検出する温度センサ25等が接続される信号入力部23と、各種データ等を表示する表示部24と、設定切換等を行う入力部26と、上記各機器を駆動する機器駆動部27と、後述するメインコントローラ11と後述する通信線14を介して情報(データ)の送受信を行う通信部28から構成されている。
【0043】
各接続ケースコントローラ12の制御部21は、後述するメインコントローラ11から各ショーケース2宛に送信される指示情報(運転指示データ)を通信部28を介して受信し、この受信した指示情報(設定温度)と自らの庫内温度を検出する温度センサ25の出力に基づき、機器駆動部27により膨張弁7の弁開度や前記冷気循環用送風機の運転を制御する。
【0044】
この場合、ショーケース2は、弁当、麺類、総菜、デザート、アイス等の商品を冷却しながら陳列販売する什器であり、ショーケース2の接続ケースコントローラ12の制御部21は、庫内温度が平均として各設定温度(指示情報)となるように全閉から制御上限開度の間で機器駆動部27により膨張弁7の弁開度を制御し、冷気循環用送風機の運転を制御する。
【0045】
(3)冷凍機コントローラ13
また、冷凍機4にもプロセッサを備えたコンピュータの一例であるマイクロコンピュータから構成された冷凍機コントローラ13(機器コントローラ。本発明における制御装置の一部を構成する)が設けられている。この冷凍機コントローラ13の構成は基本的に
図2と同様であるが、信号入力部23には圧縮機3の吐出冷媒温度PTdを検出する吐出温度センサ30や、圧縮機3の吸入冷媒温度PTsを検出する吸入温度センサ35、圧力センサ40等が接続され、機器駆動部27が駆動する機器は圧縮機3等となる。そして、この冷凍機コントローラ13の制御部21は、後述するメインコントローラ11から冷凍機コントローラ13宛の指示情報(運転指示データ)を通信部28を介して受信し、この指示情報(低圧圧力設定値)と低圧配管9から圧縮機3の吸込側に至る冷媒回路RCの低圧圧力を検出する前記圧力センサ40の出力に基づき、機器駆動部27により圧縮機3の回転数(運転周波数Hz)を制御する。
【0046】
この場合、冷凍機コントローラ13の制御部21はメインコントローラ11から送信された低圧圧力設定値(指示情報)と圧力センサ40が検出した低圧圧力(実測値)とに基づき、低圧圧力が低圧圧力設定値より高い場合は機器駆動部27により圧縮機3の回転数(運転周波数Hz)を上昇させ、低い場合には低下させる方向で圧縮機3の運転を制御することにより、低圧圧力を低圧圧力設定値に制御すると共に、全ショーケース2の膨張弁7が全閉とされた場合には機器駆動部27により圧縮機3を停止する。
【0047】
また、冷凍機コントローラ13の吐出温度センサ30と吸入温度センサ35が検出した吐出冷媒温度PTdと吸入冷媒温度PTs、及び、圧縮機3の回転数(Hz)は制御部21により、通信部28と通信線14を介し、メインコントローラ11に送信される構成とされている。
【0048】
(4)メインコントローラ11
前記メインコントローラ11は、店舗の管理室等に設置されたストアマスターと称される集中制御装置(これも本発明における制御装置の一部を構成する)であり、プロセッサを備えたコンピュータの一例であるマイクロコンピュータから構成される。
図4はこのメインコントローラ11の機能ブロック図を示している。メインコントローラ11は、各機器の制御や通信制御を司る制御部31と、各種情報(データ)を記憶する記憶部32と、外気温度(店外の温度)を検出する外気温度センサ45が接続される信号入力部33と、各種データ等を表示するカラー液晶ディスプレイ等から成る表示部34と、キースイッチ等から成る入力部36と、ブザー等から成る出力部37と、インターネット回線を介してデータの送受信を行うモデム38と、前述した接続ケースコントローラ12や冷凍機コントローラ13と通信線14を介して情報(データ)の送受信を行う通信部39と、後述するタブレット端末(携帯端末装置)41に無線LANを介してデータを無線通信する無線通信部42から構成されている。
【0049】
そして、メインコントローラ11の通信部39には、通信線14により各接続ケースコントローラ12の通信部28及び冷凍機コントローラ13の通信部28が接続され、この通信線14を介してメインコントローラ11と各接続ケースコントローラ12との間、及び、メインコントローラ11と冷凍機コントローラ13との間で情報(データ)の送受信が行われる。これらメインコントローラ11、各接続ケースコントローラ12及び冷凍機コントローラ13により、通信線14にて接続された店舗の集中管理システムが構築されると共に、各コントローラ11、12、13や後述するタブレット端末41がこの実施例における冷凍装置Rの制御装置を構成することになる。
【0050】
この場合、メインコントローラ11の制御部31は各接続ケースコントローラ12及び冷凍機コントローラ13に予め割り付けられたIDを用いてそれら各接続ケースコントローラ12、冷凍機コントローラ13を識別する。そして、各接続ケースコントローラ12及び冷凍機コントローラ13からIDと共に送信されて来る運転情報に関するデータを受信し、それらを記憶部32に格納して管理する。各接続ケースコントローラ12から送信されて来る運転情報には、当該ショーケース2の庫内温度、蒸発器6の霜取運転の状況に関する情報、当該ショーケース2に発生しているエラー(異常)に関する警報情報が含まれ、冷凍機4から送信されて来る運転情報には、圧縮機3の運転状況(回転数の値)や低圧圧力の値、前述した吐出冷媒温度PTdと吸入冷媒温度PTsの値、冷凍機4に発生しているエラー(異常)に関する警報情報が含まれている。
【0051】
また、メインコントローラ11からは各接続ケースコントローラ12及び冷凍機コントローラ13宛に前述したIDと共に指示情報に関するデータを送信する。この指示情報には、ショーケース2宛ての場合には前述した設定温度、冷凍機4宛ての場合には前述した低圧圧力設定値等が含まれる。各接続ケースコントローラ12や冷凍機コントローラ13の制御部21は受信したデータを記憶部22に格納して各機器の運転を制御する。これらによりメインコントローラ11は冷凍装置Rを構成する各ショーケース2及び冷凍機4の運転を集中して管理する。
【0052】
また、メインコントローラ11の制御部31は、その機能として基準吐出温度演算部71、基準吸入温度演算部72、冷媒漏洩判定部73、及び、報知部74を有しているが(
図4)、これらの機能については後に詳述する。
【0053】
(5)非接続のショーケース2
次に、
図1において冷凍装置Rに接続されていない非接続のショーケース2は、例えばアイスクリームを冷却しながら陳列販売する冷凍ショーケース(アイスケース)であり、店舗の通路等に島状に設置されている。このショーケース2は所謂内蔵型のショーケースであり、圧縮機43と、図示しない凝縮器、キャピラリチューブ等の減圧装置44、蒸発器46から成る周知の冷媒回路を備えている。圧縮機43から吐出された冷媒は、減圧装置44にて絞られた後、蒸発器46に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で図示しない冷気循環用送風機により循環される空気を冷却し、この冷却された冷気を庫内に循環させることにより、このショーケース2の庫内は冷却される。蒸発器46で蒸発した冷媒は圧縮機43に吸い込まれる循環を繰り返す。
【0054】
(6)非接続ケースコントローラ47
この非接続のショーケース2にもプロセッサを備えたコンピュータの一例であるマイクロコンピュータから構成された非接続ケースコントローラ47(機器コントローラ)が設けられている。但し、この非接続ケースコントローラ47は通信線14を介してメインコントローラ11には接続されていない。
【0055】
図5はこの非接続ケースコントローラ47の機能ブロック図を示している。非接続ケースコントローラ47は、当該非接続のショーケース2の圧縮機43や冷気循環用送風機の運転制御や後述するタブレット端末(携帯端末装置)41との間の通信制御を司る制御部48と、各種情報(データ)を記憶する記憶部49と、庫内温度を検出する庫内温度センサ50、前述同様に圧縮機43の吐出冷媒温度を検出する吐出温度センサ30、同じく圧縮機43の吸入冷媒温度を検出する吸入温度センサ35が接続される信号入力部51と、各種データ等を表示する表示部52と、設定切換等を行う入力部53と、上記各機器を駆動する機器駆動部54と、後述するタブレット端末41と無線LANを介して情報(データ)の無線通信を行う無線通信部56から構成されている。
【0056】
非接続ケースコントローラ47の制御部48は、後述するタブレット端末41から当該ショーケース2宛に送信される指示情報(運転指示データ)を無線通信部56を介して受信し、この受信した指示情報(設定温度)と自らの庫内温度を検出する庫内温度センサ50の出力に基づき、機器駆動部54により圧縮機43や前記冷気循環用送風機の運転を制御し、指示情報に強制除霜指示情報が含まれている場合には、蒸発器46の除霜を強制的に実行する。
【0057】
(7)タブレット端末41(携帯端末装置)
次に、
図1に示した41は前述したタブレット端末である。このタブレット端末41は携帯可能な端末装置(携帯端末装置)であり、
図10に示す如き比較的大型の液晶ディスプレイから成る表示部61とこの表示部61に設けられたタッチスイッチから成る入力部62を備えて情報の入出力が可能とされている(
図6)。
【0058】
図6はこのタブレット端末41の機能ブロック図を示している。タブレット端末41もプロセッサを備えたコンピュータの一例であるマイクロコンピュータから構成され、通信を含む各種制御を司る制御部63と、後述するメンテナンス情報を含む各種情報(データ)を保有する記憶部64と、前述した表示部61及び入力部62と、前述したメインコントローラ11や非接続ケースコントローラ47との間で無線LANを介した無線通信によりデータを送受信する無線通信部66から構成されている。
【0059】
ここで、
図1において、76は店舗に設けられて当該店舗の在庫管理や売上管理を行うPOS端末であり、77は当該店舗に設けられたショーケース2や冷凍機4等の機器のメンテナンス管理を行うことを契約している外部のメンテナンスセンターである。また、
図1において、67は店舗内に無線LANを構築する無線LANルータであり、この無線LANルータ67はブロードバンドモデム68を介してインターネット回線に接続されている。
【0060】
そして、タブレット端末41とメインコントローラ11、タブレット端末41と非接続ケースコントローラ47、及び、タブレット端末41とPOS端末76は、実施例ではこの無線LANルータ67を介して情報(データ)の送受信を行う(尚、係る無線LANルータを用いずに直接相互に送受信できるようにしてもよい)。また、タブレット端末41は無線LANルータ67とインターネット回線を介して外部のメンテナンスセンター77と情報(データ)の送受信を行う。
【0061】
この場合も、タブレット端末41の制御部63は非接続ケースコントローラ47及びメインコントローラ11に予め割り付けられたIDを用いてそれら非接続ケースコントローラ47、メインコントローラ11を識別する。そして、タブレット端末41はメインコントローラ11からIDと共に送信されて来る運転情報に関するデータを無線通信部66により受信し、記憶部64に格納して管理する。このメインコントローラ11から送られてくる運転情報には、当該メインコントローラ11が管理している各ショーケース2や冷凍機4の運転情報(警報情報を含む)等、店内外の温度/湿度等の情報:メインコントローラ情報)が含まれる。
【0062】
また、タブレット端末41は非接続ケースコントローラ47からIDと共に送信されて来る運転情報に関するデータを無線通信部66により受信し、記憶部64に格納して管理する。この非接続ケースコントローラ47から送られてくる運転情報には、非接続のショーケース2の庫内温度、蒸発器46の霜取運転の状況の情報、当該ショーケース2に発生しているエラー(異常)に関する警報情報等が含まれる。
【0063】
一方、タブレット端末41からは無線通信部66によりメインコントローラ11や非接続のショーケース2宛に指示情報(運転指示データ)が送信される。タブレット端末41では収集した情報を適宜表示部61に表示できるので、これらにより、タブレット端末41では非接続のショーケース2に加え、メインコントローラ11が集中管理している各ショーケース2、冷凍機4の運転状況も集中して管理することができるように構成されている。
【0064】
(8)メインコントローラ11による冷凍装置Rの冷媒回路RCからの冷媒漏洩予兆判定制御
次に、
図7〜
図11、
図13、
図14を用いて冷凍装置Rの冷媒回路RCからの冷媒漏洩予兆の判定制御について説明する。前述した如く冷凍装置Rの冷媒回路RCを構成する冷凍機4と各ショーケース2は店外から店内に渡る高圧配管8と低圧配管9により接続されているため、冷媒回路RCからは経年使用により、それらの接続箇所等から冷媒が漏洩する。冷媒回路RCから冷媒が漏洩すると、前述した如く圧縮機3の吐出冷媒温度PTdと吸入冷媒温度PTsが上昇してくる。
【0065】
そこで、この実施例ではメインコントローラ11は、冷凍装置Rの冷媒回路RCに冷媒漏洩の予兆が有るか否かを一日に一回判定する。
図7はこのメインコントローラ11による冷媒漏洩予兆判定制御の一実施例のフローチャートを示している。メインコントローラ11の制御部31は、冷凍機コントローラ13から送られてくるその時点の吐出冷媒温度PTdと吸入冷媒温度PTs(吐出温度センサ30と吸入温度センサ35が検出する)を所定のサンプリング周期(例えば10分毎)で記憶部32に格納する。
【0066】
その場合、制御部31は同時に冷凍機コントローラ13から送られてくるその時点の圧縮機3の回転数(Hz)と、その時点で外気温度センサ45が検出している外気温度(店外の温度)を対応させて吐出冷媒温度PTdと吸入冷媒温度PTsを格納することで、
図8に示す検出データテーブルを記憶部32内に構成する。尚、この実施例では前述同様に外気温度センサ45が検出する外気温度を、低温(例えば10℃以下の温度帯)と、中温(例えば10℃より高く20℃以下の温度帯)と、高温(例えば20℃より高い温度帯)の各温度帯に区分し、これら各温度帯と各温度PTd、PTs及び回転数(Hz)を対応させて検出データテーブルを構成している(
図8)。
【0067】
次に、制御部31の基準吐出温度演算部71は、
図7のステップS1で吐出温度Tdを算出する。実施例の場合、基準吐出温度演算部71は圧縮機3の回転数80Hz(制御上の最大周波数)を基準回転数RNcとし、この基準回転数RNc(80Hz)における吐出冷媒温度PTdの1日(所定期間T1)分の平均値を吐出温度Tdとして決定する。また、基準吐出温度演算部71はこの吐出温度Tdを、前述した低温、中温、高温の各温度帯毎にそれぞれ算出して決定する。
【0068】
また、制御部31の基準吸入温度演算部72は、同じくステップS1で吸入温度Tsを算出する。実施例の場合、基準吸入温度演算部72は圧縮機3の基準回転数RNc(80Hz)における吸入冷媒温度PTsの1日(所定期間T1)分の平均値を吸入温度Tsとして決定する。また、基準吸入温度演算部72はこの吸入温度Tsを、前述した低温、中温、高温の各温度帯毎にそれぞれ算出して決定する。
【0069】
次に、基準吐出温度演算部71は、
図7のステップS2で基準吐出温度RTdの算出と更新を行う(基準温度更新処理)。実施例の場合、基準吐出温度演算部71は前述した如く決定された外気温度帯毎の吐出温度Tdを、実施例では7日(所定期間T2。前記所定期間T1は所定期間T2より短い)分集計し、この7日分の吐出温度Tdを移動平均することで、吐出温度平均値(移動平均値)を外気温度帯毎に連続して算出し、デフォルトでは最初に算出された吐出温度平均値を基準吐出温度RTdとして記憶部32に書き込む。そして、前回の吐出温度平均値よりも最新の吐出温度平均値が低下した場合、当該最新の吐出温度平均値を基準吐出温度RTdとして書き換えることで更新する。即ち、基準吐出温度RTdは吐出温度平均値(移動平均値)の最低値となる。
【0070】
図9は係る吐出温度平均値の集計・算出と、基準吐出温度RTdの更新処理を説明する図である。
図9中に過去7日間の移動平均値としているのが最新の吐出温度平均値である。この例の場合、5月3日時点の高温の外気温度帯の基準吐出温度RTdは80℃であったが、5月4日に集計した高温の外気温度帯の吐出温度平均値が79℃に低下したため、基準吐出温度RTdを80℃から79℃に更新しているのが分かる。また、5月5日時点の低温の外気温度帯の基準吐出温度RTdは60℃であったが、5月6日に集計した低温の外気温度帯の吐出温度平均値が59℃に低下したため、基準吐出温度RTdを60℃から59℃に更新しているのが分かる。
【0071】
また、基準吸入温度演算部72は、同じくステップS2で基準吸入温度RTsの算出と更新を行う(基準温度更新処理)。実施例の場合、基準吸入温度演算部72は前述した如く決定された外気温度帯毎の吸入温度Tsを、実施例では7日(所定期間T2。前記所定期間T1は所定期間T2より短い)分集計し、この7日分の吸入温度Tsを移動平均することで、吸入温度平均値(移動平均値)を外気温度帯毎に連続して算出し、デフォルトでは最初に算出された吸入温度平均値を基準吸入温度RTsとして記憶部32に書き込む。そして、この場合も前回の吸入温度平均値よりも最新の吸入温度平均値が低下した場合、当該最新の吸入温度平均値を基準吸入温度RTsとして書き換えることで更新する。即ち、基準吸入温度RTsは同様に吸入温度平均値(移動平均値)の最低値となる。
【0072】
次に、制御部31はステップS3で所定の冷媒漏洩予兆フラグがセットされているか否か判断し、ここではリセットされているものとするとステップS4に進んで記憶部32から外気温度帯毎の基準吐出温度RTdと基準吸入温度RTsを取得(読出)する。次に、ステップS5で所定の判定開始条件が満たされているか否か判断する。実施例の場合の判定開始条件とは、基準吐出温度RTdと基準吸入温度RTsが記憶部32に記録されているか否かである。
【0073】
ここでは既に運転開始から7日間が経過して基準吐出温度RTdと基準吸入温度RTsが記憶部32に記録されているものとすると制御部31はステップS6に進む。このステップS6では、制御部31の冷媒漏洩判定部73が吐出温度Tdと基準吐出温度RTd、及び、吸入温度Tsと基準吸入温度RTsとを比較し、冷媒漏洩予兆判定のための所定の検知条件が満たされているか否かを判断する。実施例の場合の冷媒漏洩予兆判定のための検知条件は、以下の通りである。
(吐出温度Td−基準吐出温度RTd)≧吐出温度閾値STd、且つ、(吸入温度Ts−基準吸入温度RTs)≧吸入温度閾値STs、となった状態が一定期間T3以上継続していること。
【0074】
前記検知条件中の(吐出温度Td−基準吐出温度RTd)は吐出温度Tdと基準吐出温度RTdとの差であり、基準吐出温度RTdに対して吐出温度Tdが上昇した変化度合を示している。また、吐出温度閾値STdはデフォルトでは例えば8℃に設定している。このデフォルトの吐出温度閾値STd(8℃)は、前述した
図13で示した中温の外気温度帯における冷媒量50%のときと満量のときの温度差7.0℃に、所定の閾値オフセットO(余裕度:実施例では1℃)を加算して設定したものである。
【0075】
冷凍装置Rの冷媒回路RC内の冷媒量が同じであっても、季節やその日の来店客数によって吐出温度Tdにはバラツキが生じる。そのため、誤判定を未然に回避するためにデフォルトでは吐出温度閾値STdに所定の閾値オフセットO(実施例では1℃)が加算される。尚、本発明ではこの吐出温度閾値STdは、基準吐出温度RTdに対する吐出温度Tdの変化度合(上記吐出温度Td−基準吐出温度RTd)の散らばり具合(バラツキの度合い)に応じて変更され、適正な値に調整されるが、これについては後に述べる。
【0076】
また、検知条件中の(吸入温度Ts−基準吸入温度RTs)は吸入温度Tsと基準吸入温度RTsとの差であり、基準吸入温度RTsに対して吸入温度Tsが上昇した変化度合を示している。また、吸入温度閾値STsは前述した低温(例えば10℃以下の温度帯)と、中温(例えば10℃より高く20℃以下の温度帯)と、高温(例えば20℃より高い温度帯)の各温度帯に外気温度を区分し、低温の外気温度帯ではデフォルトで例えば6℃、中温の外気温度帯ではデフォルトで例えば8℃、高温の外気温度帯ではデフォルトで例えば10℃に設定している。
【0077】
これらの値は前述した
図14で示した冷媒量50%のときと満量のときの温度差に、所定の閾値オフセットO(これも余裕度:実施例では1℃)を加算して設定したものである。
図14に示した実測値では、外気温度10℃のときの温度差は5.0℃、20℃では7.0℃、30℃では9.0℃となったため、冷媒漏洩判定部73は外気温度が高い程、高くする方向で吸入温度閾値STsを変更する。
【0078】
また、この吸入温度Tsにも前述同様に季節やその日の来店客数によってバラツキが生じる(冷媒回路RC内の冷媒量が同じであっても)。そのため、この場合も誤判定を未然に回避するためにデフォルトでは各温度帯の吸入温度閾値STsに所定の閾値オフセットO(実施例では1℃)が加算され、低温の外気温度帯ではデフォルトで6℃、中温の外気温度帯ではデフォルトで8℃、高温の外気温度帯ではデフォルトで10℃とされる。尚、本発明ではこの吸入温度閾値STsも、基準吸入温度RTsに対する吸入温度Tsの変化度合の散らばり具合(バラツキの度合い)に応じて変更され、適正な値に調整されるが、これについても後に述べる。
【0079】
また、検知条件中の一定期間T3は、実施例では3日に設定している。そして、例えば低温の外気温度帯での吐出温度Tdと基準吐出温度RTdとの差(Td−RTd)が7℃(STd)以上となり、且つ、吸入温度Tsと基準吸入温度RTsとの差(Ts−RTs)が5℃(STs)となった状態が3日間(T3)以上継続し、ステップS6で検知条件が満たされた場合、冷媒漏洩判定部73は冷媒回路RCからの冷媒漏洩の予兆有り(冷媒漏洩予兆を検知)と判定し、ステップS7に進んで前述した冷媒漏洩予兆フラグをセットする。
【0080】
例えば、
図9の例の場合、5月15日の低温の外気温度帯での吐出温度平均値(過去7日間平均値)が67℃となっているので、吐出温度Tdもこの時点で同様の67℃になっているものと考えられる。そして、5月15日の低温の外気温度帯の基準吐出温度RTdは59℃であるので、それらの差は8℃となり、吐出温度閾値STd(実施例では8℃)となる。以後、5月16日は差が9℃、5月17日は差が8℃となって3日間連続して吐出温度閾値STd以上となり、吸入温度Tsも同様に3日間連続して吸入温度閾値STs以上となっていれば、5月17日の時点で冷媒漏洩判定部73が冷媒漏洩予兆フラグをセットすることになる。
【0081】
ステップS7で冷媒漏洩判定部73がこの冷媒漏洩予兆フラグをセットすると、制御部31の報知部74は所定の報知動作を実行する。この場合の報知動作の一例を
図10と
図11に示している。尚、
図10、
図11はタブレット端末41の表示部61で示しているが、メインコントローラ11の表示部34にも同様若しくは同等の報知動作が行われるものとする。
【0082】
実施例の場合、メインコントローラ11の制御部31の報知部74は、自らの表示部34に警報表示(報知動作)を行うと共に、タブレット端末41に通知を行い、タブレット端末41の表示部61にも
図10や
図11の警報表示を行う。尚、
図10、
図11はタブレット端末41の表示部61で示しているが、メインコントローラ11の表示部34にも同様若しくは同等の警報表示が行われるものとする。
【0083】
この場合、制御部31の報知部74は、冷媒漏洩判定部73が冷媒漏洩の予兆有りとして冷媒漏洩予兆フラグをセットした時期に応じて緊急度を変更し、当該緊急度に応じて警報表示(報知動作)を変更する。例えば、冷媒漏洩予兆フラグがセットされた時期が、冷凍負荷が比較的小さくなる冬季であった場合や、次回の定期点検の期日(記憶部32に設定しておく)に近い時期であった場合、
図10に示す如く「冷媒が漏れている可能性があります。次回の定期点検時に確認してください。」の警報表示を行う。一方、冷媒漏洩予兆フラグがセットされた時期が、冷凍負荷が比較的大きくなる夏季であった場合や、次回の定期点検の期日までに長い期間が空く場合、
図11に示す如く「冷媒が漏れている可能性があります。至急点検してください。」の警報表示を行う。
【0084】
ステップS7で冷媒漏洩予兆フラグをセットした後は、制御部31はステップS3からステップS8に進むようになる。このステップS8では所定の復帰条件が満たされているか否か判断する。実施例ではこの復帰条件は、冷媒漏洩予兆フラグがセットされてから24時間経過したか否かとされている。そして、このステップS8で復帰条件が満たされた場合、即ち、冷媒漏洩判定部73が冷媒漏洩の予兆有りと判定してから24時間経過した場合、制御部31はステップS9に進んで冷媒漏洩予兆フラグをリセットする。報知部74はこのリセットを受けて上述した警報表示(報知動作)を停止する(復帰)。
【0085】
以上の如く実施例では、メインコントローラ11の制御部31の基準吐出温度演算部71が、圧縮機3の所定の回転数を基準回転数RNcとし、当該基準回転数RNcにおいて冷凍機コントローラ13の吐出温度センサ30が検出した値に基づいて決定された吐出温度Tdを所定期間T2分平均することで吐出温度平均値を連続して算出し、前回の吐出温度平均値よりも最新の吐出温度平均値が低下した場合、当該最新の吐出温度平均値を基準吐出温度RTdとして更新し、基準吸入温度演算部72が、基準回転数RNcにおいて冷凍機コントローラ13の吸入温度センサ35が検出した値に基づいて決定された吸入温度Tsを所定期間T2分平均することで吸入温度平均値を連続して算出し、前回の吸入温度平均値よりも最新の吸入温度平均値が低下した場合、当該最新の吸入温度平均値を基準吸入温度RTsとして更新し、冷媒漏洩判定部73が、吐出温度Tdと基準吐出温度RTd、及び、吸入温度Tsと基準吸入温度RTsとを比較し、基準吐出温度RTdに対して吐出温度Tdが上昇し、その変化度合(Td−RTd)が所定の吐出温度閾値STd以上となり、且つ、基準吸入温度RTsに対して吸入温度Tsが上昇し、その変化度合(Ts−RTs)が所定の吸入温度閾値STs以上となったことに基づき、冷媒回路RCからの冷媒漏洩の予兆有りと判定するようにしたので、冷媒回路RCから徐々に冷媒が漏洩しているような場合にも、冷媒漏洩の予兆を早期に判定し、報知部74により報知することができるようになる。
【0086】
特に、基準吐出温度演算部71が算出する基準吐出温度RTdと、基準吸入温度演算部72が算出する基準吸入温度RTsは、圧縮機3の基準回転数RNcにおける吐出温度Tdや吸入温度Tsの所定期間T2分の平均値であり、しかも連続して算出された前回の平均値よりも最新の平均値が低下したときに更新された値であるので、冷媒漏洩判定部73は的確に冷媒漏洩の予兆を判定することができるようになる。
【0087】
この場合、基準吐出温度RTdに対する吐出温度Tdの変化度合としては、実施例の如き吐出温度Tdと基準吐出温度RTdとの差(Td−RTd)が採用できるが、それに限らず、吐出温度Tdと基準吐出温度RTdとの比(Td/RTd)も採用可能である。また、基準吸入温度RTsに対する吸入温度Tsの変化度合としては、実施例の如き吸入温度Tsと基準吸入温度RTsとの差(Ts−RTs)が採用できるが、吸入温度Tsと基準吸入温度RTsとの比(Ts/RTs)も採用可能である。
【0088】
また、実施例では基準吐出温度演算部71が、吐出温度Tdを所定期間T2分移動平均することで吐出温度平均値を算出し、基準吸入温度演算部72が、吸入温度Tsを所定期間T2分移動平均することで吸入温度平均値を算出するようにしているので、更に迅速に冷媒回路RCからの冷媒漏洩の予兆を判定することができるようになる。
【0089】
また、実施例では基準吐出温度演算部71が、基準回転数RNcにおいて吐出温度センサ30が検出した値を所定期間T2より短い所定期間T1分平均した値を吐出温度Tdとして決定し、基準吸入温度演算部72が、基準回転数RNcにおいて吸入温度センサ35が検出した値を所定期間T2より短い所定期間T1分平均した値を吸入温度Tsとして決定するようにしているので、外乱の影響を廃してより的確な冷媒漏洩予兆判定を行うことができるようになる。
【0090】
更に、実施例では冷媒漏洩判定部73が、基準吐出温度RTdに対する吐出温度Tdの変化度合(Td−RTd)が吐出温度閾値STd以上となり、且つ、基準吸入温度RTsに対する吸入温度Tsの変化度合(Ts−RTs)が吸入温度閾値STs以上となった状態が一定期間T3以上継続した場合、冷媒回路RCからの冷媒漏洩の予兆有りと判定するようにしているので、外乱の影響を廃してより的確な冷媒漏洩予兆判定を行うことができるようになる。
【0091】
また、実施例では基準吐出温度演算部71が、外気温度毎に吐出温度Tdを決定し、基準吐出温度RTdを算出し、基準吸入温度演算部72も、外気温度毎に吸入温度Tsを決定し、基準吸入温度RTsを算出すると共に、冷媒漏洩判定部73が、外気温度毎に吐出温度Tdと基準吐出温度RTd、及び、吸入温度Tsと基準吸入温度RTsとの比較を行って、冷媒回路RCからの冷媒漏洩の予兆有りか否かを判定するようにしているので、外気温度による影響を廃して的確な冷媒漏洩予兆判定を行うことができるようになる。
【0092】
また、実施例では冷媒漏洩判定部73が、外気温度が高い程、高くする方向で吸入温度閾値STsを変更しているので、より迅速、且つ、的確な冷媒漏洩予兆判定を行うことができるようになる。尚、実施例では吐出温度閾値STdを外気温度毎に変更せず、中温の温度帯の温度差を参考にした値(8℃)に設定したが、
図13に示すように吐出温度Tdの温度差も、外気温度が高くなる程、縮小しているので、吐出温度閾値STdも外気温度が高い程、低くする方向で変更するようにしてもよい。
【0093】
その場合は、吐出温度閾値STdを例えば前述した低温(例えば10℃以下の温度帯)と、中温(例えば10℃より高く20℃以下の温度帯)と、高温(例えば20℃より高い温度帯)の各温度帯に外気温度を区分し、低温の外気温度帯では例えば11℃、中温の外気温度帯では例えば8℃、高温の外気温度帯では例えば6℃に設定する。これらの値は前述した
図13で示した冷媒量50%のときと満量のときの温度差に、閾値オフセットO(1℃)を加算した値である。
図13に示した実測値では、外気温度10℃のときの温度差は10.0℃、20℃では7.0℃、30℃では5.0℃となったため、冷媒漏洩判定部73が外気温度が高い程、低くする方向で吐出温度閾値STdを変更することになる。即ち、吸入温度閾値STsと吐出温度閾値STdの双方若しくは何れか一方を外気温度で変更するものでもよい。
【0094】
また、実施例では制御部31の報知部74が、冷媒漏洩判定部73が冷媒漏洩の予兆有りと判定した時期に応じ、対応の緊急度を変更して報知するようにしているので、冷凍負荷が比較的小さくなる冬季等には余裕を持った対応を許容する報知を行い(
図10)、冷凍負荷が大きくなる夏季等には迅速な対応を要求する報知を行う(
図11)等により、不必要に早急な対応を求める結果となる不都合を未然に回避することができるようになる。
【0095】
そして、本発明は実施例の如く蒸発器6を備えた複数台のショーケース2と、圧縮機3を備えた冷凍機4を備え、冷媒配管(高圧配管8、低圧配管9)により圧縮機3から各蒸発器6に冷媒を分配供給すると共に、メインコントローラ11が、各ショーケース2及び冷凍機4の運転を集中制御する冷凍装置Rにおける冷媒漏洩の予兆判定と報知に極めて有効である。
【0096】
(9)基準吐出温度RTdに対する吐出温度Tdの変化度合の散らばり具合と、基準吸入温度RTsに対する吸入温度Tsの変化度合の散らばり具合に基づく吐出温度閾値STdと吸入温度閾値STsの変更制御
次に、
図15、
図16を参照しながら、メインコントローラ11による基準吐出温度RTdに対する吐出温度Tdの変化度合の散らばり具合と、基準吸入温度RTsに対する吸入温度Tsの変化度合の散らばり具合に基づく吐出温度閾値STdと吸入温度閾値STsの変更制御について説明する。
【0097】
前述した如く冷媒回路RC内の冷媒量が同じであっても、季節やその日の来店客数によって吐出冷媒温度や吸入冷媒温度にはバラツキが生じ、前述の如く算出される吐出温度Tdと基準吐出温度RTdとの差(Td−RTd:基準吐出温度RTdに対する吐出温度Tdの変化度合)や、吸入温度Tsと基準吸入温度RTsとの差(Ts−RTs:基準吸入温度RTsに対する吸入温度Tsの変化度合)の散らばり具合(バラツキの度合い)も店舗(冷凍装置Rが使用される使用状況)によって異なってくる。
【0098】
そこで、実施例では各店舗のメインコントローラ11の冷媒漏洩判定部73が、当該店舗における基準吐出温度RTdに対する吐出温度Tdの変化度合の散らばり具合(バラツキの度合)、及び、基準吸入温度RTsに対する吸入温度Tsの変化度合の散らばり具合(バラツキの度合い)に基づいて、前述したデフォルトの吐出温度閾値STdと吸入温度閾値STsを下記の如く変更する。
【0099】
尚、前述した如く基準吐出温度RTdに対する吐出温度Tdの変化度合としては、吐出温度Tdと基準吐出温度RTdとの差(Td−RTd)や、吐出温度Tdと基準吐出温度RTdとの比(Td/RTd)が採用可能であり、基準吸入温度RTsに対する吸入温度Tsの変化度合としては、吸入温度Tsと基準吸入温度RTsとの差(Ts−RTs)や、吸入温度Tsと基準吸入温度RTsとの比(Ts/RTs)が採用可能であるが、この実施例では、吐出温度Tdと基準吐出温度RTdとの差(Td−RTd)、及び、吸入温度Tsと基準吸入温度RTsとの差(Ts−RTs)を採用する。
【0100】
そして、実施例では冷媒漏洩判定部73は、吐出温度Tdと基準吐出温度RTdとの差(Td−RTd)と、吸入温度Tsと基準吸入温度RTsとの差(Ts−RTs)を、当該店舗に冷凍装置Rが設置された後の所定期間(例えば、一年間)分、外気温度AT毎に記憶部32に記憶している。
【0101】
次に、冷媒漏洩判定部73は、一年分の差(Td−RTd)及び差(Ts−RTs)のデータが蓄積されたとき、この一年分の差(Td−RTd)の平均値Mとその標準偏差σ、差(Ts−RTs)の平均値Mとその標準偏差σを外気温度AT毎にそれぞれ算出する。即ち、実施例では散らばり具合(バラツキの度合)を判断する指標として、一般的な標準偏差σを使用する。また、実施例では外気温度ATを前述した低温(10℃以下の温度帯)と、中温(10℃より高く20℃以下の温度帯)と、高温(20℃より高い温度帯)の各温度帯に区分し、低温の温度帯に含まれる10℃と、中温の温度帯に含まれる20℃と、高温の温度帯に含まれる30℃の各外気温度AT毎に各平均値Mと各標準偏差σを算出するものとする。
【0102】
以下、吸入温度Tsと基準吸入温度RTsとの差(Ts−RTs)について説明するが、吐出温度Tdと基準吐出温度RTdとの差(Td−RTd)についても同様とする。
図15には外気温度ATが10℃、20℃、30℃における差(Ts−RTs)の一年分の分布状態の一例をそれぞれ示している。
【0103】
そして、冷媒漏洩判定部73は、算出した一年分の差(Ts−RTs)の平均値Mとその標準偏差σ(散らばり具合)を用い、下記式(I)により、新たな吸入温度閾値STsを算出する。
新吸入温度閾値STs=平均値M+3×標準偏差σ+閾値オフセットO ・・(I)
尚、式(I)中の平均値Mは
図15中の山型の頂点となる。また、標準偏差σに3を乗算している意味は、散らばった差(Ts−RTs)のうちの約99.7%が含まれるようにするということである。更に、この場合も安全を考慮して所定の余裕度である閾値オフセットO(実施例では設定値1℃)を加える。
【0104】
この例の場合、外気温度ATが10℃(低温の温度帯)のときの差(Ts−RTs)の平均値Mは1.8で、差(Ts−RTs)の標準偏差σは0.56であった。即ち、標準偏差σが比較的大きく、散らばり具合が大きかったことを意味する。また、外気温度ATが20℃(中温の温度帯)のときの差(Ts−RTs)の平均値Mは4.0で、差(Ts−RTs)の標準偏差σは0.49であった。即ち、標準偏差σが外気温度ATが10℃のときよりも小さく、散らばり具合が少許小さかったことを意味する。また、外気温度ATが30℃(高温の温度帯)のときの差(Ts−RTs)の平均値Mは6.3で、差(Ts−RTs)の標準偏差σは0.21であった。即ち、標準偏差σが他の外気温度ATのときより小さく、散らばり具合が最も小さかったことを意味する。
【0105】
そして、式(I)により算出される外気温度ATが10℃(低温の温度帯)のときの計算結果は4.48となるので、冷媒漏洩判定部73は端数を繰り上げて4.5を新たな吸入温度閾値STsとする。即ち、前述した外気温度ATが10℃のときのデフォルトの吸入温度閾値STs=6℃を、4.5℃に下げる。同様に冷媒漏洩判定部73は外気温度ATが20℃(中温の温度帯)のときの計算結果から新たな吸入温度閾値STsを6.5とし、前述した外気温度ATが20℃のときのデフォルトの吸入温度閾値STs=8℃を、6.5℃に下げる。また、同様に冷媒漏洩判定部73は外気温度ATが30℃(高温の温度帯)のときの計算結果から新たな吸入温度閾値STsを8.0とし、前述した外気温度ATが30℃のときのデフォルトの吸入温度閾値STs=10℃を、8.0℃に下げる。
【0106】
従って、この例では外気温度ATが10℃のときと20℃のときは吸入温度閾値が1.5℃下がる方向で変更され、外気温度ATが30℃のときは吸入温度閾値が2.0℃下がる方向で変更される。即ち、冷媒漏洩判定部73は、差(Ts−RTs)の標準偏差σ(散らばり具合)が小さい外気温度ATが30℃のとき程、より低くする方向で吸入温度閾値STsを変更することになる。
【0107】
また、式(I)から明らかな如く、冷媒漏洩判定部73は次の一年分の差(Ts−RTs)の平均値Mが前の一年間よりも高くなったときは吸入温度閾値STsを上げ、低くなったときは下げる方向に補正することになるが、次の一年分の差(Ts−RTs)の平均値Mが同じであっても、差(Ts−RTs)の標準偏差σ(散らばり具合)が前の一年間のときよりも小さくなったときは、吸入温度閾値STsを更に低くする方向で変更することになる。これにより、より迅速に冷媒漏洩の予兆を判定して報知することが可能となる
【0108】
一方、次の一年分の差(Ts−RTs)の平均値Mが同じであっても、差(Ts−RTs)の標準偏差σ(散らばり具合)が前の一年間のときよりも大きくなったときは、冷媒漏洩判定部73は吸入温度閾値STsを高くする方向で変更することになる。これにより、誤報知の発生を防止若しくは抑制することができるようになる。そして、冷媒漏洩判定部73は以上の変更制御を吐出温度閾値STdについても、吐出温度Tdと基準吐出温度RTdとの差(Td−RTd)の散らばり具合に基づいて同様に行うものとする。
【0109】
以上、詳述した如く、メインコントローラ11の冷媒漏洩判定部73が、基準吐出温度RTdに対する吐出温度Tdの変化度合(実施例では差(Td−RTd))の散らばり具合と、基準吸入温度RTsに対する吸入温度Tsの変化度合(実施例では差(Ts−RTs))の散らばり具合に基づき、吐出温度閾値STdと、吸入温度閾値STsを変更するようにしたので、実施例の如く、基準吐出温度RTdに対する吐出温度Tdの変化度合の散らばり具合が小さい程、低くする方向で吐出温度閾値STdを変更すると共に、基準吸入温度RTsに対する吸入温度Tsの変化度合の散らばり具合が小さい程、低くする方向で吸入温度閾値STsを変更し、更に、基準吐出温度RTdに対する吐出温度Tdの変化度合の散らばり具合が大きい程、高くする方向で吐出温度閾値STdを変更すると共に、基準吸入温度RTsに対する吸入温度Tsの変化度合の散らばり具合が大きい程、高くする方向で吸入温度閾値STsを変更することにより、基準吐出温度RTdに対する吐出温度Tdの変化度合の散らばり具合と、基準吸入温度RTsに対する吸入温度Tsの変化度合の散らばり具合に応じて吐出温度閾値STdと吸入温度閾値STsを適切に調整し、散らばり具合が大きい状況では誤報知の発生を防止若しくは抑制し、散らばり具合が小さい状況では、より迅速に冷媒漏洩の予兆を判定して報知することが可能となる。
【0110】
また、実施例では冷媒漏洩判定部73が、外気温度AT毎の基準吐出温度RTdに対する吐出温度Tdの変化度合(実施例では差(Td−RTd))の散らばり具合と、外気温度AT毎の基準吸入温度RTsに対する吸入温度Tsの変化度合(実施例では差(Ts−RTs))の散らばり具合に基づき、外気温度AT毎に吐出温度閾値STdと吸入温度閾値STsを変更するようにしているので、外気温度ATによる影響を廃して吐出温度閾値STdと吸入温度閾値STsを的確に調整することができるようになる。