(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記先端筒状部は、第1筒状部と、前記第1筒状部よりも先端側に位置し前記第1筒状部よりも薄い肉厚の第2筒状部と、前記第1筒状部と前記第2筒状部の境界に形成された段差面を含み、
前記可撓板状部は、前記段差面に固定され、
前記第2筒状部は、その先端において縮径した開口を画定する先端環状部を有し、
前記遮熱用球状体は、前記先端環状部により保持されている、
ことを特徴とする請求項1ないし7いずれか一つに記載の圧力センサ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
第1実施形態に係る圧力センサは、エンジンのシリンダヘッドHに取り付けられて、圧力媒体として、燃焼室内の燃焼ガスの圧力を検出するものである。
この圧力センサは、
図1及び
図2に示すように、ハウジング10、ダイヤフラム20、圧力計測部30、押え部材40、リード線50、コネクタ60、遮熱用球状体70を備えている。
【0022】
ハウジング10は、析出硬化系やフェライト系のステンレス鋼等の金属材料を用いて、軸線S方向に伸長する内部空間Aを画定する多段円筒状に形成されている。
そして、ハウジング10は、先端筒状部11、シール部12、雄ネジ部13、開口端部14、内壁面15,16、雌ネジ部17を備えている。
【0023】
先端筒状部11は、シール部12から軸線S方向の先端側に位置する領域で、二段肉厚の円筒状に形成され、第1筒状部11a、第2筒状部11b、段差面11c、先端環状部11d、先端環状部11dにより画定された開口11eを備えている。
【0024】
第1筒状部11aは、円筒状の内壁面11a1を画定し、又、その外壁面がシリンダヘッドHの取付け孔の内周面H1に近接又は密接して配置され、燃焼ガスに曝され難いようになっている。
第2筒状部11bは、折り曲げ加工される前の状態で、第1筒状部11aの肉厚よりも薄い肉厚をなす円筒状の内壁面11b1を画定している。
内壁面11b1の内径寸法は、遮熱用球状体70の外径Dよりも僅かに大きく形成されている。
段差面11cは、第1筒状部11aと第2筒状部11bの境界において、軸線Sに垂直な環状平面として形成されている。
そして、段差面11cは、ダイヤフラム20の可撓板状部21を溶接等により固定する固定面として機能する。
【0025】
先端環状部11dは、第2筒状部11bの開口縁領域を内側に折り曲げて遮熱用球状体70に接触する円錐壁として形成され、その中央領域において円形の開口11eを画定している。
開口11eは、遮熱用球状体70の外径Dよりも縮径してすなわち小さい内径に形成されている。
すなわち、先端環状部11dは、第2筒状部11bの内側に収容された遮熱用球状体70を脱落しないように保持する役割をなす。
【0026】
シール部12は、先端筒状部11の先端から軸線S方向に後退した所定位置において円錐面状に形成されており、シリンダヘッドHのシール面H2に当接して燃焼室CH内の燃焼ガスが漏れるのを防止する役割をなす。
雄ネジ部13は、シリンダヘッドHに設けられた取付け孔の雌ネジ部H3と螺合させてハウジング10を固定するべく、シール部12から軸線S方向に後退した拡径領域に形成されている。
開口端部14は、押え部材40等を取り付ける際の挿入口として機能すると共に、スペーサ61を介してコネクタ60が固定されるように形成されている。
【0027】
内壁面15は、押え部材40を挿入し得る内径寸法をなす円筒状の内周面として形成されている。
内壁面16は、内壁面15よりも縮径した内径寸法をなす円筒状の内周面として形成され、この領域において圧力計測部30が収容されるようになっている。
雌ネジ部17は、押え部材40を螺合させて固定するべく、内壁面15と内壁面16の間の領域に形成されている。
【0028】
ダイヤフラム20は、析出硬化性を有するステンレス鋼等の金属材料を用いて形成されている。
そして、ダイヤフラム20は、可撓板状部21、可撓板状部21に連続して形成されたロッド部22を備えている。
【0029】
可撓板状部21は、板厚t1の円板状に形成され、その外縁領域が先端筒状部11の段差面11cに対して溶接等により固定されている。
可撓板状部21は、遮熱用球状体70を介して燃焼ガスの圧力に応じた荷重が伝達され、その荷重に応じて軸線S方向に弾性変形する領域である。
ここで、可撓板状部21の板厚t1は、0.2mm〜0.6mm程度である。
【0030】
ロッド部22は、可撓板状部21の略中央領域から軸線S方向に伸長する円柱状に形成されている。
そして、ロッド部22の外周面は、ハウジング10の内壁面11a1,16と所定の隙間をおいて配置され、ロッド部22の端面は、圧力計測部30の圧電体32に当接するように配置されている。
すなわち、ロッド部22は、可撓板状部21と圧力計測部30の圧電体32との間に介在し、可撓板状部21が受けた力を圧電体32に伝達する機能をなす。
【0031】
圧力計測部30は、圧電素子として機能するものであり、
図2に示すように、先端筒状部11の先端側から軸線S方向に順次積層された、第1電極31、圧電体32、第2電極33を備えている。
【0032】
第1電極31は、導電性の金属材料により形成され、この実施形態においては、ダイヤフラム20がその役割を兼ねている。
そして、第1電極31すなわちダイヤフラム20は、ロッド部22が圧電体32と密接して配置され、ハウジング10とシリンダヘッドHを介して、電気的にグランド(マイナス側)に接続される。
【0033】
圧電体32は、四角柱状に形成され、第1電極31すなわちダイヤフラム20のロッド部22と第2電極33の間に挟み込まれて、軸線S方向において受けた荷重による歪に基づいて電気信号を出力するものであり、ピエゾ素子、酸化亜鉛、水晶等が適用される。
第2電極33は、導電性の金属材料により円柱又は円板状に形成され、圧電体32と密接して配置され、リード線50を介して、電気的にプラス側に接続される。
【0034】
上記の圧力計測部30では、ダイヤフラム20が第1電極31を兼ねるため、専用の電極を設ける場合に比べて、部品点数を削減でき、構造を簡素化できる。
尚、この構成に限るものではなく、第1電極31として、ダイヤフラム20とは別の電極を介在させてもよい。
【0035】
押え部材40は、
図2に示すように、ネジ部材41、絶縁部材42により構成されている。
ネジ部材41は、析出硬化系やフェライト系のステンレス鋼等の金属材料を用いて略円柱状に形成され、ハウジング10の雌ネジ部17に螺合される雄ネジ部41a、リード線50を通す貫通孔41b、絶縁部材42に当接する当接面41cを備えている。
絶縁部材42は、電気的に絶縁性の高い絶縁材料、例えば、アルミナ等を用いて略円柱状に形成され、ネジ部材41の当接面41cに当接する端面42a、第2電極33に当接する端面42b、リード線50を通す貫通孔42cを備えている。
【0036】
そして、
図1及び
図2に示すように、圧力計測部30が所定位置に配置された状態で、絶縁部材42が嵌め込まれ、絶縁部材42の上方からネジ部材41が捩じ込まれることにより、圧力計測部30に対して軸線S方向に予荷重が加えられ、又、圧力計測部30がハウジング10内の所定位置に位置決めされて保持されるようになっている。
【0037】
リード線50は、
図1に示すように、圧力計測部30の第2電極33に電気的に接続され、絶縁部材42の貫通孔42c、ネジ部材41の貫通孔41b及びハウジング10の内部空間Aを通り、コネクタ60に導かれている。
コネクタ60は、レセプタクルとして形成され、スペーサ61を介してハウジング10の開口端部14に結合されており、外部のコネクタ(プラグ)と着脱自在に接続されるようになっている。
【0038】
遮熱用球状体70は、ダイヤフラム20を圧力媒体である燃焼ガスから遮蔽するべく先端筒状部11の内側に配置されるものであり、耐熱性及び低熱伝導性を備えた材料を用いて形成されている。
ここで、遮熱用球状体70の材料としては、熱伝導性が低く、耐久性に優れ、剛性の高い材料が好ましく、ステンレス鋼の他に、ニッケルメッキが施された炭素鋼、ニッケル合金、鉄系合金、チタン合金、あるいは、セラミックス等を使用することができる。
【0039】
また、遮熱用球状体70は、先端筒状部11(第2筒状部11b)の内壁面11b1の内径よりも僅かに小さい外径Dをなす球体として形成されている。
ここで、遮熱用球状体70は、球体に限るものではなく、一方向に伸びた又は一方向に潰れた球状の形態をなすものであってもよい。
このように、遮熱用球状体70を採用することにより、燃焼ガスの熱を遮断しつつ燃焼ガスの圧力のみを可撓板状部21に伝達する機能を発揮させることができる。
【0040】
遮熱用球状体70は、
図4に示すように、先端筒状部11の第2筒状部11bの内側に挿入された後に、折り曲げ加工機Mを用いて、第2筒状部11bの開口縁領域が内側に折り曲げて形成された先端環状部11dにより、外部に脱落しないように第2筒状部11bの内側に保持される。
【0041】
ここで、遮熱用球状体70は、燃焼ガスの圧力を受けない状態において、可撓板状部21に対して非荷重にて接触するように、先端環状部12の円錐壁に接触して保持される。
また、遮熱用球状体70が第2筒状部11bの内側において、かじり、固着等により不動とならないように、その外径Dはダイヤフラムとして機能する可撓板状部21の有効径よりも大きくかつ第2筒状部11bの内径よりも小さい。
【0042】
尚、遮熱用球状体70は、可撓板状部21に対して非荷重にて接触するように保持されているが、可撓板状部21に対して溶接等により固定されてもよい。
この場合、遮熱用球状体70が燃焼ガスの圧力を受けて振動するのを防止できる。これにより、圧力計測部30のセンサ出力において、その振動に伴うノイズが発生するのを防止できる。
このように、遮熱用球状体70を可撓板状部21に対して溶接により固定する構成において、遮熱用球状体70をセラミックスで形成する場合は、セラミックスの球体を金属層で覆うメタライジングを施すことにより、溶接加工を容易に施すことができる。
【0043】
次に、上記構成をなす圧力センサの組み立てについて説明する。
先ず、ハウジング10、ダイヤフラム20、圧電体32、リード線50が接続された第2電極33、ネジ部材41、絶縁部材42、コネクタ60及びスペーサ61、遮熱用球状体70が準備される。
【0044】
続いて、ダイヤフラム20がハウジング10に組み付けられる。すなわち、可撓板状部21が先端筒状部11の段差面11cに接合されて溶接等により固定される。
続いて、圧電体32、第2電極33、絶縁部材42、及びネジ部材41が、順次重なるように開口端部14からハウジング10内に挿入される。
尚、圧電体32、第2電極33、及び絶縁部材42は、予め積層されて仮組付けされていてもよい。
【0045】
そして、ネジ部材41が適宜捩じ込まれ、圧力計測部30にセンサとしての直線特性を与えるべく所定の予荷重が加えられる。
続いて、スペーサ61がハウジング10の開口端部14に固定され、導出されたリード線50がコネクタ60に接続され、コネクタ60がスペーサ61に連結される。
【0046】
続いて、遮熱用球状体70がハウジング10の先端筒状部11の内側に保持されるように組み付けられる。ここで、「保持」とは、先端筒状部11内に固着されるのではなく、脱落しないように支持されることを意味する。
すなわち、遮熱用球状体70が、先端筒状部11の第2筒状部11bの内側に配置される。
続いて、所定の折り曲げ加工機Mを用いて、
図4に示すように、第2筒状部11bの開口縁領域が内側に折り曲げられて、先端環状部11dが形成される。ここで、先端環状部11dにより、遮熱用球状体70の外径Dよりも縮径した開口11eが画定される。
【0047】
以上により、圧力センサの組付けが完了する。
尚、上記組み付け手順は、一例であって、これに限定されるものではなく、その他の組付け手順を採用してもよい。
【0048】
上記構成をなす圧力センサにおいて、先端筒状部11、ダイヤフラム20、及び遮熱用球状体70は、
図3に示される配置関係となる。
すなわち、遮熱用球状体70は、燃焼ガスの圧力を受けない状態において、先端環状部12の円錐壁に接触して、可撓板状部21に対して非荷重にて接触するように、先端筒状部11の内側に保持されてダイヤフラム20の外側に配置される。
したがって、遮熱用球状体70が開口11eを通して燃焼ガスの圧力を受けると、その圧力に応じた荷重は遮熱用球状体70を介して可撓板状部21に即座に加わる。そして、ダイヤフラム20は、遮熱用球状体70により燃焼ガスから遮蔽されると共に、受けた荷重に応じて変形する。
【0049】
これにより、燃焼ガスの熱は、実質的に遮熱用球状体70により遮断されて、ダイヤフラム20側への伝熱が抑制ないし防止される。したがって、ダイヤフラム20の可撓板状部21は、燃焼ガスによる熱の影響が抑制ないし防止されて、実質的に燃焼ガスの圧力のみを受けることになる。
また、遮熱用球状体70は可撓板状部21に対して接触するように配置されるため、その移動に伴う衝撃力や衝撃音等が抑制ないし防止され、又、ダイヤフラム20の特性に影響を及ぼすこともない。
【0050】
以上により、高温の圧力媒体に曝される測定環境下においても、ダイヤフラム20の熱による変形を抑制することができ、ダイヤフラム20のロッド部22と圧力計測部30の圧電体32との接触位置を所期の設定状態に維持することができる。
したがって、圧力計測部30に付与されている予荷重の変動を防止して、予荷重の変動に起因する圧電体32からの出力ノイズを防止することができる。
それ故に、熱変形等による測定誤差を抑制して、エンジンの燃焼室CH内の燃焼ガスの圧力を高精度に検出することができる。
【0051】
すなわち、メカニズムとしては、仮に、ダイヤフラム20が熱により変形すると、圧力計測部30に付与されている予荷重が変動し、検出される圧力の精度が低下することになるが、本発明では、遮熱用球状体70によりダイヤフラム20の熱よる変形が抑制されるため、熱遮断→ダイヤフラム20の熱変形を抑制→予荷重の変動防止により、圧力を高精度に検出できる、というものである。
【0052】
図5は、上記実施形態において、ダイヤフラム20の可撓板状部21に位置決め部を設けた変形例を示すものである。
この変形例において、可撓板状部21には、軸線S上に中心をもつ位置決め部としての円錐状凹部23が設けられている。
円錐状凹部23は、遮熱用球状体70を受け入れて、遮熱用球状体70の中心を軸線S上に位置決めするようになっている。
これにより、遮熱用球状体70の位置決め及び組付けを容易に行うことができる。
尚、遮熱用球状体70は、円錐状凹部23に位置決めされた状態で、可撓板状部21に溶接等により固定されてもよい。
【0053】
図6ないし
図9は、本発明に係る圧力センサの第2実施形態を示すものであり、前述の遮熱用球状体70を保持する第2筒状部11bを変更した以外は、前述の実施形態と同一の構成をなすものである。したがって、同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
この実施形態に係る圧力センサは、ハウジング100、ダイヤフラム20、圧力計測部30、押え部材40、リード線50、コネクタ60、遮熱用球状体70を備えている。
【0054】
ハウジング100は、析出硬化系やフェライト系のステンレス鋼等の金属材料を用いて、軸線S方向に伸長する内部空間Aを画定する多段円筒状に形成されている。
そして、ハウジング100は、先端筒状部110、シール部12、雄ネジ部13、開口端部14、内壁面15,16、雌ネジ部17、先端筒状部110に結合された結合部材120を備えている。
【0055】
先端筒状部110は、シール部12から軸線S方向の先端側に位置する領域で、二段肉厚の円筒状に形成され、第1筒状部111、端面112、端面112に結合された結合部材120を備えている。
そして、結合部材120は、第1筒状部111と外周壁が連続するように結合される第2筒状部121、第2筒状部121の先端側に形成された先端環状部122、第2筒状部121の後端側に形成された端面123、先端環状部122により画定された開口124を備えている。
【0056】
第1筒状部111は、円筒状の内壁面111aを画定し、又、その外壁面がシリンダヘッドHの取付け孔の内周面H1に近接又は密接して配置され、燃焼ガスに曝され難いようになっている。
端面112は、第1筒状部111と第2筒状部121が結合された状態で両者の境界において、軸線Sに垂直な円環状平面をなす段差面を画定する。
そして、端面112の内縁領域に位置する段差面は、ダイヤフラム20の可撓板状部21を溶接等により固定する固定面として機能する。
【0057】
第2筒状部121は、第1筒状部111の肉厚よりも薄い肉厚をなす円筒状の内壁面121aを画定している。内周壁121aの内径は、遮熱用球状体70の外径Dよりも僅かに大きい。
先端環状部122は、第2筒状部121の先端側において円環平板状に形成され、その中央領域において円形の開口124を画定している。
端面123は、端面112の外周縁領域と接合される円環状平面に形成されている。
開口124は、遮熱用球状体70の外径Dよりも小さい内径となるように、先端筒状部としての第2筒状部121の内径よりも縮径して形成されている。
すなわち、先端環状部122は、第2筒状部121の内側に収容された遮熱用球状体70を脱落しないように保持する役割をなす。
【0058】
ここで、遮熱用球状体70は、燃焼ガスの圧力を受けない状態において、可撓板状部21に対して非荷重にて接触するように、先端環状部122の開口124の内縁に接触して保持される。
また、遮熱用球状体70が第2筒状部121の内側において、かじり、固着等により不動とならないように、その外径Dはダイヤフラムとして機能する可撓板状部21の有効径よりも大きくかつ第2筒状部121の内径よりも小さい。
尚、遮熱用球状体70は、可撓板状部21に対して非荷重にて接触するように保持されているが、可撓板状部21に対して溶接等により固定されてもよい。
【0059】
次に、上記構成をなす圧力センサの組み立てについて説明する。
先ず、ハウジング100、結合部材120、ダイヤフラム20、圧電体32、リード線50が接続された第2電極33、ネジ部材41、絶縁部材42、コネクタ60及びスペーサ61、遮熱用球状体70が準備される。
【0060】
続いて、ダイヤフラム20がハウジング100に組み付けられる。すなわち、可撓板状部21が先端筒状部110の端面112に接合されて溶接等により固定される。
続いて、圧電体32、第2電極33、絶縁部材42、及びネジ部材41が、順次重なるように開口端部14からハウジング100内に挿入される。
尚、圧電体32、第2電極33、及び絶縁部材42は、予め積層されて仮組付けされていてもよい。
【0061】
そして、ネジ部材41が適宜捩じ込まれ、圧力計測部30にセンサとしての直線特性を与えるべく所定の予荷重が加えられる。
続いて、スペーサ61がハウジング100の開口端部14に固定され、導出されたリード線50がコネクタ60に接続され、コネクタ60がスペーサ61に連結される。
【0062】
続いて、
図9に示すように、遮熱用球状体70が結合部材120の内側に収容された状態で、結合部材120の端面123が先端筒状部110の端面112に接合されて溶接等により固定される。
これにより、遮熱用球状体70は、ハウジング100の先端筒状部110の内側に保持されるように組み付けられる。
ここで、「保持」とは、先端筒状部110内に固着されるのではなく、脱落しないように支持されることを意味する。
【0063】
以上により、圧力センサの組付けが完了する。
尚、上記組み付け手順は、一例であって、これに限定されるものではなく、その他の組付け手順を採用してもよい。
【0064】
上記構成をなす圧力センサにおいて、先端筒状部110、ダイヤフラム20、及び遮熱用球状体70は、
図8に示される配置関係となる。
すなわち、遮熱用球状体70は、燃焼ガスの圧力を受けない状態において、先端環状部122の開口124の内縁に接触して、可撓板状部21に対して非荷重にて接触するように、先端筒状部110の内側に保持されてダイヤフラム20の外側に配置される。
したがって、遮熱用球状体70が開口124を通して燃焼ガスの圧力を受けると、その圧力に応じた荷重は遮熱用球状体70を介して可撓板状部21に即座に加わる。そして、ダイヤフラム20は、遮熱用球状体70により燃焼ガスから遮蔽されると共に、受けた荷重に応じて変形する。
【0065】
これにより、燃焼ガスの熱は、実質的に遮熱用球状体70により遮断されて、ダイヤフラム20側への伝熱が抑制ないし防止される。したがって、ダイヤフラム20の可撓板状部21は、燃焼ガスによる熱の影響が抑制ないし防止されて、実質的に燃焼ガスの圧力のみを受けることになる。
また、遮熱用球状体70は可撓板状部21に対して接触するように配置されるため、その移動に伴う衝撃力や衝撃音等が抑制ないし防止され、又、ダイヤフラム20の特性に影響を及ぼすこともない。
【0066】
以上により、高温の圧力媒体に曝される測定環境下においても、ダイヤフラム20の熱による変形を抑制することができ、ダイヤフラム20のロッド部22と圧力計測部30の圧電体32との接触位置を所期の設定状態に維持することができる。
したがって、圧力計測部30に付与されている予荷重の変動を防止して、予荷重の変動に起因する圧電体32からの出力ノイズを防止することができる。
それ故に、熱変形等による測定誤差を抑制して、エンジンの燃焼室CH内の燃焼ガスの圧力を高精度に検出することができる。
【0067】
図10ないし
図12は、本発明に係る圧力センサの第3実施形態を示すものであり、前述の第2実施形態に係る遮熱用球状体70及び結合部材120を変更した以外は、前述の実施形態と同一の構成をなすものである。したがって、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略し、又、組付け手順についても同様であるため省略する。
この実施形態に係る圧力センサは、ハウジング100、ダイヤフラム20、圧力計測部30、押え部材40、リード線50、コネクタ60、遮熱用球状体71を備えている。
【0068】
ハウジング100は、先端筒状部110、シール部12、雄ネジ部13、開口端部14、内壁面15,16、雌ネジ部17、先端筒状部110に結合された結合部材130を備えている。
【0069】
遮熱用球状体71は、遮熱用球状体70よりも小さい球体として形成されている。したがって、遮熱用球状体71は、遮熱用球状体70に比べて、重量が軽く、圧力を受けた際に他の部材に及ぼす衝撃力等も小さくなる。
【0070】
先端筒状部110は、第1筒状部111、端面112、端面112に結合された結合部材130を備えている。
結合部材130は、第1筒状部111の肉厚よりも薄い肉厚をなす二段筒状の第2筒状部131、先端環状部132、端面133、開口124を備えている。
第2筒状部131は、第1筒状部111と同径の同径領域と縮径された縮径領域を含み、縮径領域において円筒状の内壁面131aを画定している。内周壁131aの内径は、遮熱用球状体71の外径Dよりも僅かに大きい。
【0071】
先端環状部132は、第2筒状部131の先端側において円環平板状に形成され、その中央領域において円形の開口134を画定している。
端面133は、端面112の外周縁領域と接合される円環状平面に形成されている。
開口134は、遮熱用球状体71の外径Dよりも小さい内径となるように、先端筒状部としての第2筒状部131の内径よりも縮径して形成されている。
すなわち、先端環状部132は、第2筒状部131の内側に収容された遮熱用球状体71を脱落しないように保持する役割をなす。
【0072】
ここで、遮熱用球状体71は、燃焼ガスの圧力を受けない状態において、可撓板状部21に対して非荷重にて接触するように、先端環状部132の開口134の内縁に接触して保持される。
また、遮熱用球状体71が第2筒状部131の内側において、かじり、固着等により不動とならないように、その外径Dはダイヤフラムとして機能する可撓板状部21の有効径よりも大きくかつ第2筒状部131(内壁面131a)の内径よりも小さい。
尚、遮熱用球状体71は、可撓板状部21に対して非荷重にて接触するように保持されているが、可撓板状部21に対して溶接等により固定されてもよい。
【0073】
上記構成をなす圧力センサにおいて、先端筒状部110、ダイヤフラム20、及び遮熱用球状体71は、
図12に示される配置関係となる。
すなわち、遮熱用球状体71は、燃焼ガスの圧力を受けない状態において、先端環状部132の開口134の内縁に接触して、可撓板状部21に対して非荷重にて接触するように、先端筒状部110の内側に保持されてダイヤフラム20の外側に配置される。
したがって、遮熱用球状体71が開口134を通して燃焼ガスの圧力を受けると、その圧力に応じた荷重は遮熱用球状体71を介して可撓板状部21に即座に加わる。そして、ダイヤフラム20は、遮熱用球状体71により燃焼ガスから遮蔽されると共に、受けた荷重に応じて変形する。
ここでは、特に、遮熱用球状体71が小さいため、衝撃力等をさらに抑制ないし防止でき、遮熱作用を確保しつつ、燃焼ガスの圧力のみを可撓板状部21に伝達することができる。
【0074】
すなわち、燃焼ガスの熱は、実質的に遮熱用球状体71により遮断されて、ダイヤフラム20側への伝熱が抑制ないし防止される。したがって、ダイヤフラム20の可撓板状部21は、燃焼ガスによる熱の影響が抑制ないし防止されて、実質的に燃焼ガスの圧力のみを受けることになる。
また、遮熱用球状体71は、遮熱用球状体70に比べて小さく、可撓板状部21に対して接触するように配置されるため、その移動に伴う衝撃力や衝撃音等が抑制ないし防止され、又、ダイヤフラム20の特性に影響を及ぼすこともない。
【0075】
以上により、高温の圧力媒体に曝される測定環境下においても、ダイヤフラム20の熱による変形を抑制することができ、ダイヤフラム20のロッド部22と圧力計測部30の圧電体32との接触位置を所期の設定状態に維持することができる。
したがって、圧力計測部30に付与されている予荷重の変動を防止して、予荷重の変動に起因する圧電体32からの出力ノイズを防止することができる。
それ故に、熱変形等による測定誤差を抑制して、エンジンの燃焼室CH内の燃焼ガスの圧力を高精度に検出することができる。
【0076】
図13は、本発明に係る圧力センサと、従来の圧力センサとで、エンジンの燃焼室における燃焼ガスの圧力を測定した比較試験データを示すグラフである。
・使用エンジン:二気筒ガソリンエンジン、排気量1000cc
・運転条件:エンジン回転数5000rpm、全負荷
・基準センサ:精密分析用センサ(AVL社製)
・結果データ:点線→精密分析用センサ(実際の燃焼圧力)、実線→本発明の圧力センサ、一点鎖線→従来の圧力センサ
図13に示される結果から明らかなように、遮熱用球状体70を備えた本発明の圧力センサでは、従来の圧力センサに比べて、実際の燃焼圧力からのズレ量、すなわち、測定誤差が小さくなっている。
尚、遮熱用球状体71を備えた本発明でも、
図13に示す結果と同様の効果が得られる。
このように、本発明の圧力センサによれば、センサ精度が改善されて、エンジンの燃焼室内の燃焼ガス等の圧力媒体の圧力を高精度に検出することができる。
【0077】
上記実施形態においては、ダイヤフラムとして、可撓板状部21及びロッド部22を一体的に備えたダイヤフラム20を示したが、これに限定されるものではなく、可撓板状部21とロッド部22が別個に形成されて、可撓板状部21がダイヤフラムとして機能し、ロッド部22が力伝達部材として機能する構成を採用してもよい。
【0078】
上記実施形態においては、ダイヤフラム20が圧力計測部30の第1電極31を兼ねる構成を示したが、これに限定されるものではなく、第1電極31として専用の電極を設ける構成を採用してもよい。
【0079】
以上述べたように、本発明の圧力センサは、熱の影響を抑制して、高温の圧力媒体の圧力を高精度に検出できるため、特にエンジンの燃焼室内の燃焼ガス等の高温圧力媒体の圧力を検出する圧力センサとして適用できるのは勿論のこと、燃焼ガス以外の高温の圧力媒体あるいはその他の圧力媒体の圧力を検出する圧力センサとしても有用である。