(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の共重合体は、炭素数1〜6のフルオロアルキルを有する(メタ)アクリレート化合物(A)および(メタ)アクリレート基を3つ以上有する化合物(B)を含むモノマーを重合してなる。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0015】
本発明における炭素数1〜6のフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート化合物(A)としては、例えば、フルオロアルキル(メタ)アクリレート、フルオロアルキルアルキレン(メタ)アクリレート、フルオロアルキルポリオキシフルオロアルキレン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのうち、撥水性および撥油性がより優れ、水や油性成分の滑落角がより小さくなることから、フルオロアルキル(メタ)アクリレートおよびフルオロアルキルアルキレン(メタ)アクリレートが好ましく、フルオロアルキルアルキレン(メタ)アクリレートがより好ましい。また、撥水性および撥油性がより優れ、水の滑落角がより小さくなることから、上記フルオロアルキル基は、炭素数2〜6のフルオロアルキル基であることが好ましく、炭素数4〜6のフルオロアルキル基であることがより好ましい。また、上記フルオロアルキル基は、撥水性および撥油性がより優れ、水の滑落角がより小さくなることから、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。なお、本明細書において、「(パー)フルオロ」は、パーフルオロまたはフルオロを意味する。
【0016】
フルオロアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、(パー)フルオロメチル(メタ)アクリレート、(パー)フルオロエチル(メタ)アクリレート、(パー)フルオロプロピル(メタ)アクリレート、(パー)フルオロブチル(メタ)アクリレート、(パー)フルオロペンチル(メタ)アクリレート、(パー)フルオロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、フルオロアルキル(メタ)アクリレートは、下記一般式(1)で表すこともできる。
Rf−X ・・・(1)
ただし、Rfはフルオロアルキル基であり、Xはアクリロイル基またはメタクリロイル基である。
【0017】
フルオロアルキルアルキレン(メタ)アクリレートとしては、例えば、(パー)フルオロメチルメチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロメチルエチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロエチルメチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロエチルエチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロプロピルメチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロプロピルエチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロブチルメチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロブチルエチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロメチルペンチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロペンチルエチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロヘキシルメチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロヘキシルエチレン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、フルオロアルキルアルキレン(メタ)アクリレートは、下記一般式(2)で表すこともできる。
Rf−Y−X ・・・(2)
ただし、Rfはフルオロアルキル基であり、Yはアルキレン基であり、Xはアクリロイル基またはメタクリロイル基である。
【0018】
フルオロアルキルポリオキシフルオロアルキレン(メタ)アクリレートとしては、例えば、(パー)フルオロメチルポリオキシフルオロエチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロエチルポリオキシフルオロエチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロプロピルポリオキシフルオロエチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロブチルポリオキシフルオロエチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロペンチルポリオキシフルオロエチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロヘキシルポリオキシフルオロエチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロヘキシルポリオキシフルオロプロピレン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、フルオロアルキルポリオキシフルオロアルキレン(メタ)アクリレートは、下記一般式(3)で表すこともできる。
Rf−Z−X ・・・(3)
ただし、Rfはフルオロアルキル基であり、Zはポリオキシフルオロアルキレン基である、Xはアクリロイル基またはメタクリロイル基である。
【0019】
本発明における(メタ)アクリレート基を3つ以上有する化合物(B)としては、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ソルビタントリ(メタ)アクリレートおよびソルビトールトリ(メタ)アクリレートなどのポリオールトリ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレングリセリントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレントリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレンペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレンソルビタントリ(メタ)アクリレートおよびポリオキシアルキレンソルビトールトリ(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレンポリオールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロキシメチルイソシアヌレート、トリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレートおよびトリス(メタ)アクリロキシプロピルイソシアヌレートなどのトリス(メタ)アクリロキシアルキルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビタンテトラ(メタ)アクリレートおよびソルビトールテトラ(メタ)アクリレートなどのポリオールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどのポリオールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、およびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのポリオールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのうち、撥水性および撥油性がより優れ、水の滑落角がより小さくなることから、ポリオールトリ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレンポリオールトリ(メタ)アクリレートおよびトリス(メタ)アクリロキシアルキルイソシアヌレートが好ましく、トリス(メタ)アクリロキシアルキルイソシアヌレートがより好ましい。
【0020】
(メタ)アクリレート基を3つ以上有する化合物(B)は、安定性、撥水性および撥油性がより優れ、水の滑落角がより小さくなることから、フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート化合物(A)100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることがさらに好ましい。また、100質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましい。
【0021】
(メタ)アクリレート基を3つ以上有する化合物(B)は、安定性、撥水性および撥油性がより優れ、水の滑落角がより小さくなることから、フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート化合物(A)1モルに対して、0.001モル以上であることが好ましく、0.03モル以上であることがより好ましく、0.08モル以上であることがさらに好ましい。また、1.0モル以下であることが好ましく、0.5モル以下であることがより好ましく、0.2モル以下であることがさらに好ましい。
【0022】
本発明の共重合体に用いるモノマーは、さらに、炭化水素環構造を有する(メタ)アクリレート化合物(C)を含むことが好ましい。炭化水素環構造を有する(メタ)アクリレート化合物(C)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレートなどの脂環族炭化水素基含有(メタ)アクリレート化合物、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。これらのうち、安定性、撥水性および撥油性がより優れ、水の滑落角がより小さくなることから、脂環族炭化水素基含有(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0023】
炭化水素環構造を有する(メタ)アクリレート化合物(C)は、撥水性および撥油性がより優れ、水の滑落角がより小さくなることから、フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート化合物(A)100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましい。また、300質量部以下であることが好ましく、200質量部以下であることがより好ましく、150質量部以下であることがさらに好ましい。
【0024】
炭化水素環構造を有する(メタ)アクリレート化合物(C)は、撥水性および撥油性がより優れ、水の滑落角がより小さくなることから、フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート化合物(A)1モルに対して、0.1モル以上であることが好ましく、0.3モル以上であることがより好ましく、0.5モル以上であることがさらに好ましい。また、10モル以下であることが好ましく、7モル以下であることがより好ましく、5モル以下であることがさらに好ましい。
【0025】
炭化水素環構造を有する(メタ)アクリレート化合物(C)は、撥水性および撥油性がより優れ、水の滑落角がより小さくなることから、(メタ)アクリレート基を3つ有する化合物(B)100質量部対して、100質量部以上であることが好ましく、200質量部以上であることがより好ましく、300質量部以上であることがさらに好ましい。また、5000質量部以下であることが好ましく、4000質量部以下であることがより好ましく、3000質量部以下であることがさらに好ましい。
【0026】
炭化水素環構造を有する(メタ)アクリレート化合物(C)は、安定性、撥水性および撥油性がより優れ、水の滑落角がより小さくなることから、(メタ)アクリレート基を3つ有する化合物(B)1モルに対して、1.0モル以上であることが好ましく、5.0モル以上であることがより好ましく、10モル以上であることがさらに好ましい。また、500モル以下であることが好ましく、100モル以下であることがより好ましく、50モル以下であることがさらに好ましい。
【0027】
本発明の共重合体に用いるモノマーは、さらに、前記(A)〜(C)以外の(メタ)アクリレート化合物(D)を含むことができる。このような化合物としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、オキシアルキレン基含有(メタ)アクリレートモノマーなどが挙げられる。
【0028】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートおよびイソアミル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0029】
オキシアルキレン基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0030】
また、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アミド、N−メチロール(メタ)アクリル酸アミド、ジアセトン(メタ)アクリル酸アミド、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、ポリシロキサンを有する(メタ)アクリレート、2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレートなども使用できる。
【0031】
前記(A)〜(C)以外の(メタ)アクリレート化合物(D)は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、溶剤への溶解性、樹脂との相溶性および基材との密着性などを調整するために使用することができる。撥水性および撥油性がより優れ、水の滑落角がより低くなることから、前記(A)〜(C)以外の(メタ)アクリレート化合物(D)は、前記(A)〜(C)の合計100質量部対して、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましい。また、100質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましい。
【0032】
炭化水素環構造を有する(メタ)アクリレート化合物(C)は、撥水性および撥油性がより優れ、水の滑落角がより小さくなることから、(メタ)アクリレート基を3つ有する化合物(B)1モルに対して、0.01モル以上であることが好ましく、0.1モル以上であることがより好ましい。また、1モル以下であることが好ましく、0.8モル以下であることがより好ましい。
【0033】
本発明の共重合体は、撥水性および撥油性がより優れ、水の滑落角がより小さくなることから、重量平均分子量が5,000〜100,000であることが好ましく、10,000〜60,000であることがより好ましく、15,000〜50,000であることがさらに好ましく、20,000〜40,000であることが特に好ましい。なお、重量平均分子量は、GPCカラムクロマトグラフィ法を用いて、下記の条件で測定することができる。なお、標準サンプルとして分子量2000、8250、及び19700のポリエチレングリコールで校正したものを用いた。
・GPC装置:システムコントローラー:SCL−10A(島津製作所社製)
・検出器:RID−10A(島津製作所社製)
・カラム:Shodex GPC KF−G、KF−803、KF802.5、KF−80
2、KF−801を連結したもの(いずれも昭和電工社製)
・溶離液:テトラヒドロフラン
・サンプル注入:0.5重量%溶液、80μL
・流速:0.8mL/min
・温度:25℃。
【0034】
本発明の共重合体の製造方法としては、例えば、パーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート化合物(A)、(メタ)アクリレート基を3つ以上有する化合物(B)、必要により、炭化水素環構造を有する(メタ)アクリレート化合物(C)、(A)〜(C)以外の(メタ)アクリレート化合物(D)、有機溶媒および重合開始剤を混合する工程、得られた混合物を40〜120℃に加熱して、(A)〜(D)の重合反応を行う工程、とを有する。
【0035】
重合方法は、溶液重合が好ましい。重合温度は、特に限定されないが、通常は40〜120℃の範囲が好ましい。重合時間は、特に限定されないが、通常は4〜15時間程度である。
【0036】
有機溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、脂肪族炭化水素、ジオール化合物誘導体、芳香族炭化水素などを使用することができる。
【0037】
脂肪族炭化水素としては、例えば、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等のアルカン、プロピルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、t−ブチルシクロヘキサン、1,1,3,5−テトラメチルシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、デカヒドロナフタレン等のシクロアルカン、ナフテン系溶剤(脂肪族環構造を有する飽和炭化水素の混合物)、パラフィン系炭化水素(脂肪族炭化水素の混合物)などが挙げられる。
【0038】
ジオール化合物誘導体としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、などのモノアルキルエーテルモノアルキルエステルジオール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、などのジアルキルエーテルジオール、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジプロピオネートなどのジアルキルエステルジオールなどが挙げられる。
【0039】
重合開始剤としては、従来公知のものを使用でき、例えば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。その使用量は特に限定されないが、通常は、モノマー(A)と(B)との合計量100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましい。
【0040】
本発明の撥水撥油剤は、前記共重合体を含有するものであり、さらに、有機溶剤を含むことが出来る。このような有機溶媒としては、例えば、上記例示した脂肪族炭化水素、ジオール化合物誘導体、などが挙げられる。なお、有機溶媒は、共重合体の製造時に用いた有機溶媒をそのまま用いてもよく、必要に応じて有機溶媒で希釈してもよく、他の有機溶媒に置換してもよい。
【0041】
本発明の撥水撥油剤には、発明の目的に反しない範囲で、他の撥水剤、その他の撥油剤、架橋剤、防虫剤、難燃剤、防シワ剤、帯電防止剤、柔軟仕上げ剤、防腐剤、芳香剤、酸化防止剤を必要に応じ含有させることができる。
【0042】
撥水撥油剤における共重合体の含有量は、特に限定されないが、1〜50質量%であることが好ましい。
【0043】
本発明の物品は、本発明の撥水撥油剤を用いて処理されたものである。処理方法としては、特に限定されず、塗布法、スプレー法、浸漬法などを適宜選択することができる。撥水撥油剤で処理される物品としては、特に限定されず、繊維、皮革、石材、木材、紙、ガラス、プラスチック、金属、電子基板などが挙げられる。なお、これらの物品を処理する方法は、各物品に応じた処理方法を適宜選択することができる。
【0044】
本発明のコーティング剤は、本発明の共重合体と樹脂とを含有する。このような樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、シリコン樹脂などが挙げられる。これらのうち、アクリル樹脂が好ましい。
【0045】
本発明のコーティング剤における本発明の共重合体の含有量は、特に限定されないが、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.3〜7質量%であることがより好ましい。
【0046】
本発明のコーティング剤における本発明の樹脂の含有量は、特に限定されないが、1〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。
【0047】
本発明のコーティング剤は、さらに有機溶媒を含むことができる。有機溶媒の含有量は特に限定されないが、10〜98.9質量%であることが好ましく、20〜94質量%であることがより好ましい。
【0048】
本発明のコーティング剤には、発明の目的に反しない範囲で、他の撥水剤、その他の撥油剤、架橋剤、難燃剤、帯電防止剤、防腐剤、酸化防止剤、顔料、レベリング剤、可塑剤、分散剤、を必要に応じ含有させることができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、「部」又は「%」とあるのは特に指定しない限り、質量基準とする。
【0050】
(使用原料)
・フッ素含有モノマー(A)
(A−1)パーフルオロブチルエチルメタクリレート
(A−2)パーフルオロヘキシルエチルメタクリレート
(A−3)パーフルオロヘキシルメタクリレート
【0051】
・(メタ)アクリレート基を3つ以上有する化合物(B)
(B−1)トリスアクリロキシエチルイソシアヌレート(商品名:GX−8430、第一工業製薬社製)
(B−2)トリスアクリロキシプロピルイソシアヌレート
(B−3)ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
【0052】
・炭化水素環構造を有する(メタ)アクリレート化合物(C)
(C―1)シクロヘキシルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名:ビスコート#155)
(C−2)イソボルニルアクリレート(共栄社化学(株)製、商品名:ライトアクリレートIB−XA)
(C−3)ベンジルメタクリレート(共栄社化学(株)製、商品名:ライトエステルBZ)
【0053】
・(A)〜(C)以外の(メタ)アクリレート化合物(D)
(D−1)ステアリルメタクリレート(共栄社化学(株)製、商品名:ライトエステルS)
(D−2)2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学(株)製、商品名:ライトエステルP−1M)
【0054】
・有機溶媒
(E−1)酢酸エチル
(E−2)ジエチレングリコールジエチルエーテル
【0055】
[実施例1〜11、比較例1〜2]
撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流管を備えた反応容器に、表1に記載の割合で(A)〜(E)の(メタ)アクリレート化合物及び有機溶媒を加え、窒素置換を行った。続いて、t−ブチルパーオキシピバレート(日油(株)製、商品名:パーブチルPV)を、上記(A)〜(E)の(メタ)アクリレート化合物の合計量100質量部に対して3質量部となるように加え、65℃で8時間反応させることにより、共重合体(固形分25質量%)を得た。
【0056】
<試験片1(撥水撥油剤)>
得られた共重合体(固形分25質量%)を、反応に用いたものと同じ有機溶媒で25倍に希釈することにより、撥水撥油剤を作製した。この希釈液を、アルミ板上に膜厚1μmとなるようにスピンコート法により塗布し、100℃のオーブンで1時間乾燥することにより、試験片1を作製した。
【0057】
<試験片2(コーティング剤)>
得られた撥水撥油剤4質量部、アクリル樹脂(三菱レイヨン(株)製、商品名アクリペットVH)9質量部および酢酸エチル87質量部を混合することにより、コーティング剤を作製した。このコーティング剤を、ガラス板上に膜厚1μmになるようにバーコーター法により塗布し、100℃のオーブンで1時間乾燥することにより、試験片2を作製した。
【0058】
上記撥水撥油剤およびコーティング剤を用いて、外観および安定性を下記の方法により評価した。また、上記試験片1および2を用いて、接触角(水およびヘキサデカン)および滑落角を下記の方法により評価した。結果を表1に示す。
【0059】
(外観)
20℃で24時間静置した撥水撥油剤を目視で確認し、下記の基準で評価した。
○:濁りがみられない。
×:濁りが見られる。
【0060】
(安定性)
−5℃および−20℃で24時間静置した撥水撥油剤を目視で確認し、下記の基準で評価した。
○:液の分離が見られない。
×:液の分離が見られる。
【0061】
(接触角)
接触角測定装置(協和界面科学社製、商品名:接触角計Drop Master 500)を用いて、塗布面における水およびヘキサデカンの接触角を測定し下記の基準で評価した。なお、水およびヘキサデカンの液滴容量は2μLとした。
<水の接触角>
A:110°以上
B:90°以上110°未満
C:90°未満
<ヘキサデカンの接触角>
A:50°以上
B:30°以上50°未満
C:30°未満
【0062】
(滑落角)
接触角測定装置(協和界面科学社製、商品名:接触角計Drop Master 500)を用いて、、水平状態の塗布面に水を20μl滴下したあと、試験片の傾斜角を徐々に大きくし、水液が滑り始めた時の傾斜角を滑落角として測定し、下記の基準で評価した。
A:30°未満
B:30°以上40°未満
C:40°以上70°未満
D:70°以上90°未満
E:90°でも滑落しない
【0063】
【表1】
【0064】
表1から明らかな通り、実施例1〜11の共重合体を含む撥水撥油剤およびコーティング剤は、滑落角が小さいことがわかる。一方、比較例1および2は、傾斜角が90°でも水滴が滑落しないことがわかる。