【文献】
Juan D. Garcia-Martinez et al.,Urinary clusterin as a renal marker in dogs,Journal of Veterinary Diagnostic Invenstigation,米国,2012年,24(2),301-306
【文献】
Jeffrey Dvergsten et al.,Expression of clusterin in human renal diseases,Kidney International,米国,1994年,45(3),828-835
【文献】
Alan Kang-Wai Mu et al.,Identification of O-glycosylated proteins that are aberrantly excreted i the urine of patients with early stage ovarian cancer,International Journal of Molecular Sciences,米国,2013年,14(4),7923-7931
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
腎臓特異的クラステリンを検出する方法であって、クラステリンと特異的に結合する1つ以上の抗体またはその抗原結合性フラグメントおよび腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、非腎臓特異的で、血液由来のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の分子と、試料とを接触させること、ならびに腎臓特異的クラステリンと、前記クラステリンと特異的に結合する1つ以上の抗体またはその抗原結合性フラグメントと、前記腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、非腎臓特異的で、血液由来のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の分子との複合体を検出することを含んでなる、方法。
前記腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、非腎臓特異的で、血液由来のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の分子が1つ以上のレクチンである、請求項1に記載の方法。
前記腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、非腎臓特異的で、血液由来のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に結合しない1つ以上の分子が、N−アセチルグルコサミンに特異的に結合する分子である、請求項1に記載の方法。
前記1つ以上のレクチンが、インゲンマメ白血球凝集素(PHA−L)、小麦胚芽凝集素(WGA)、WGA1、WGA2、WGA3、インゲンマメ凝集素−E(PHA−E)、トマトレクチン(LEL)、シロバナヨウシュチョウセンアサガオレクチン(DSL)、インゲンマメ凝集素(PSA)、ジャカリンレクチン、LCAレクチン(レンズマメ)、アメリカデイゴレクチン(ECL)、トウゴマレクチン(RCA)、SBAレクチン(ダイズ)、CONAレクチン(コンカナバリン)、またはドリコスレクチン(DBA)である請求項2に記載の方法。
前記試料および腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、非腎臓特異的で、血液由来のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合しない検出可能にラベルされた1つ以上の分子が、前記支持体に加えられている、請求項6に記載の方法。
前記腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、非腎臓特異的で、血液由来のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合しない検出可能にラベルされた1つ以上の分子がレクチンである、請求項7に記載の方法。
前記腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、非腎臓特異的で、血液由来のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の分子が支持体に固相化されている、請求項1に記載の方法。
前記腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、非腎臓特異的で、血液由来のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の分子がレクチンである、請求項9に記載の方法。
前記1つ以上の抗体もしくはその抗原結合性フラグメント、前記腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、非腎臓特異的で、血液由来のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に結合しない1つ以上の分子、または両方が、検出可能な標識で標識されている、請求項1に記載の方法。
前記検出することが、ラテラルフローアッセイ、化学発光標識サンドイッチアッセイ、および酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、競合アッセイ、凝集アッセイ、化学発光アッセイ、生物発光アッセイ、ゲル電気泳動免疫アッセイ法、免疫組織化学アッセイ、放射免疫定量アッセイ(RIA)、無標識のバイオセンサーアッセイ、または免疫放射定量アッセイからなる群より選択される方法によって達成される、請求項1に記載の方法。
前記抗体が、血漿クラステリン、血清クラステリン、組換えクラステリン、腎臓特異的クラステリン、またはMDCK由来クラステリンに特異的に結合する請求項1に記載の方法。
哺乳類の腎疾患、腎障害、または腎損傷を検出するための方法であって、クラステリンと特異的に結合する1つ以上の抗体またはその抗原結合性フラグメントおよび腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、非腎臓特異的で、血液由来のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の分子と、哺乳類の試料を接触させること、ならびに腎臓特異的クラステリンと、クラステリンと特異的に結合する1つ以上の抗体またはその抗原結合性フラグメントと、腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、非腎臓特異的で、血液由来のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の分子との複合体を検出することを含んでなり、前記複合体の検出が、前記哺乳類が腎疾患、腎障害、または腎損傷を有することを示す、方法{但し、ヒトに対する医療行為を除く}。
前記哺乳類が非ヒト哺乳類であり、前記哺乳類が腎疾患、腎障害、または腎損傷を有する場合に、腎治療または腎治療薬を前記哺乳類に施行することをさらに含んでなる、請求項18に記載の方法。
腎臓特異的クラステリンアイソフォームを血清クラステリンまたは血漿クラステリンアイソフォームと識別する方法であって、クラステリンと特異的に結合する1つ以上の抗体またはその抗原結合性フラグメントおよび前記腎臓特異的クラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合し、前記血清クラステリンまたは血漿クラステリンアイソフォームの炭水化物部分に結合しない1つ以上の分子と、試料を接触させること、ならびに前記腎臓特異的クラステリンアイソフォームと、クラステリンと特異的に結合する1つ以上の抗体またはその抗原結合性フラグメントと、前記腎臓特異的クラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合し、前記血清クラステリンまたは血漿クラステリンアイソフォームの炭水化物部分に結合しない前記1つ以上の分子との複合体を検出することを含んでなる、方法。
腎臓特異的クラステリン分子と、腎臓特異的クラステリンと特異的に結合する1つ以上の抗体またはその抗原結合性フラグメントと、腎臓特異的クラステリンと結合し、血清クラステリンまたは血漿クラステリンと結合しない1つ以上のレクチンとを含んでなる複合体。
1つ以上の腎臓特異的クラステリン分子と、クラステリンと特異的に結合する1つ以上の抗体またはその抗原結合性フラグメントと、腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、血清クラステリンまたは血漿クラステリンと結合しない1つ以上の分子とを含んでなる、請求項24に記載の複合体。
前記1つ以上の抗体もしくはその抗原結合性フラグメント、前記腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、非腎臓特異的で、血液由来のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に結合しない1つ以上の分子、または両方が、検出可能な標識で標識されている、請求項27に記載のキット。
腎臓特異的クラステリンおよび腎臓特異的クラステリンアイソフォームの検出を向上させる方法であって、1つ以上の腎臓特異的クラステリン抗体またはその特異的結合性フラグメント、および腎臓特異的クラステリンの1つ以上の炭水化物部分に特異的に結合し、非腎臓特異的で、血液由来のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に結合しない1つ以上の分子と、試料を接触させることを含んでなる、方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で使用される場合、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「その(the)」は、文脈から明らかにそうでないことが示されていない限り複数の指示対象を含む。数値に伴う「約」という用語は、その数値のプラスマイナス5%またはそれ未満の範囲でその数値が変動する可能性があることを意味する。
【0018】
腎臓特異的クラステリンは、イヌ、ネコ、およびヒトなどの哺乳類において腎障害の間に増加し、且つ腎障害の結果として増加する急性腎障害(AKI)バイオマーカーである。バイオベンダー社の市販EIAキットが血清と尿の両方のイヌクラステリンの定量に利用可能である。最近の研究はリーシュマニア症のイヌでこのキットを用いてバイオマーカーの有効性を実証した。しかし、血清中の高濃度のクラステリンのため尿試料への血清の混入は偽陽性の結果をもたらす可能性がある。尿試料への血清の混入は、血清クラステリンによる混入に起因して腎臓特異的クラステリンの検出の特異性を欠く結果となる。
【0019】
一般的な総クラステリン測定の偽陽性の問題を示すのに、陰性のイヌ尿試料を、市販キット(バイオベンダー社)を用いて値を代入し、次いで陰性イヌ血清(0.002%〜10体積%)でスパイクした。結果として生じた混合物を市販キットで分析した。得られた結果を下表に示す。
【0021】
市販のキットのカットオフ値は約70ng/mlである。総クラステリン(すべてのアイソフォーム)が測定される場合、裸眼では見えない微量の血液または従来の検尿(ディップスティック)では検出できない微量の血液でさえ、偽陽性を生じさせる可能性がある。これは、少しでも血液混入がある患者試料は、誤った臨床診断につながる偽陽性の可能性が上がるので非常に慎重に評価する必要があることを意味する。本発明は、体液中のクラステリンの特異的アイソフォームを同定する、例えば、血清クラステリンに干渉されることなく腎臓特異的クラステリンの有無および/または量を決定する方法を提供する。すなわち、本発明を使用して、他のクラステリンアイソフォームの存在下で特異的なクラステリンアイソフォーム、例えば、腎臓特異的クラステリンを検出および/または定量することができる。
【0022】
すべてのクラステリンアイソフォームの一次構造には高い相同性がある。しかし、相異なるクラステリンアイソフォームの間には翻訳後修飾パターンの違いがあると考えられている。クラステリンアイソフォームの特異的なオリゴ糖構造は、組織源、生理学的状態、病態、および種に関連する。本発明の方法は、患者試料(例えば、尿試料)中に存在する特有のクラステリンアイソフォーム(例えば、腎障害特異的クラステリンアイソフォーム)を検出する方法の開発にこれらの違いをうまく活用する。
【0023】
クラステリンアイソフォーム
本明細書において使用される場合、「クラステリンアイソフォーム」は、グリコシル化されている、遺伝子スプライシングまたは重複事象の産物であるクラステリン分子である(例えば、Rizzi et al., Adv. Cancer Res. 104:9 (2009); Prochnow et al., PLOS One, 8:e75303 (2013)を参照されたい)。クラステリンアイソフォームは、核型、細胞質型、および分泌型を含む。また「クラステリンアイソフォーム」は、例えば、特異的な組織タイプでの発現、特異的な生理学的状態での発現、特異的な種タイプでの発現、特異的な病態での発現に起因するか、または細胞損傷の状態の下で、差次的にグリコシル化されているクラステリンの型であるクラステリングリコ型を含んでなる。
【0024】
「腎臓特異的クラステリン」または「腎臓特異的クラステリンアイソフォーム」は、腎臓系(すなわち、腎臓、尿管、尿道、および膀胱)で産生される、腎臓系、例えば、尿に存在する可能性があるクラステリンである。しかし、少量の腎臓特異的クラステリンは、血液、血清、または血漿に漏れる可能性がある。腎障害、腎損傷、および/または腎疾患のない動物およびヒトと比較して、腎障害、腎損傷、および/または腎疾患をもつ動物およびヒトの尿を含む腎臓系には、腎臓特異的クラステリンレベルが増加して存在する可能性がある。
【0025】
「血清クラステリン」および「血漿クラステリン」は、心臓、肝臓、および肺などの組織で合成され循環に放出される、血液、血漿、またはその画分のクラステリンアイソフォームである。「血清クラステリン」および「血漿クラステリン」は、腎臓系に由来する腎臓特異的クラステリンも、腎臓系に由来し、後に循環血、血清、血漿、またはその画分に漏れた腎臓特異的クラステリンも含まない。非腎臓特異的クラステリンアイソフォームは、腎臓系(例えば、血清クラステリンまたは血漿クラステリン)で産生されないクラステリンアイソフォームである。血液由来クラステリンアイソフォームは、循環血、血漿、血清、またはその画分に存在するものである。
【0026】
分泌クラステリンは初期タンパク質前駆体から作られ、前分泌psCLU(〜60kDa)、グリコシル化を多く受け、次いで小胞体(ER)で切断される。結果として生じるアルファペプチド鎖およびベータペプチド鎖は、成熟分泌ヘテロ二量体タンパク質(〜75〜80kDa)の形で5つのジスルフィド結合で結合されている。
【0027】
クラステリンのグリコシレーションは、異なるアイソフォームのクラステリンによって異なる。例えば、腎臓特異的クラステリンおよび血清クラステリンまたは血漿クラステリンは相異なるグリコシレーションパータンをもつことができる。このクラステリンのアイソフォーム間のグリコシレーションの違いは、クラステリンのあるアイソフォームをクラステリンの他のアイソフォームと識別するのに使用することができる。
【0028】
クラステリンアイソフォームは、例えば、哺乳類、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、サル、および他の動物において、本発明の方法を用いて識別することができる。識別は、例えば、1つ以上の第2のタイプのクラステリンアイソフォームの存在下で第1のクラステリンアイソフォームの存在または不在を決定することを含む。
【0029】
抗体
本発明の抗体はクラステリンに特異的に結合する抗体分子またはその抗原結合性フラグメントである。抗体またはその抗原結合性フラグメントは、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、またはサルのクラステリンに特異的であることができる。抗体またはその抗原結合性フラグメントは、どのタイプのクラステリンアイソフォーム(例えば、腎臓特異的クラステリン、血漿クラステリン、または血清クラステリン)に対しても特異的であることができる。本発明の実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントは腎臓特異的クラステリンに特異的に結合する。その他の実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、クラステリンの1つ以上のアイソフォーム、クラステリンのすべてのアイソフォーム、血清クラステリン、または血漿クラステリンに特異的に結合する。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、二重特異性抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、一価抗体、二価抗体、多価抗体、抗イディオタイプ抗体、または抗体の抗原もしくは特異的結合性フラグメントであることができる。抗体の抗原結合性フラグメントまたは特異的結合性フラグメントは、完全な抗体の抗原結合部位または可変領域を含んでなる完全な抗体の部分である。抗原結合抗体フラグメントとしては、例えば、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)
2、Fd、単鎖Fv(scFv)、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、V
LもしくはV
H領域またはV
L領域およびV
H領域を含んでなるフラグメント、ならびにF
vフラグメントが挙げられる。
【0030】
本発明の抗体は、例えば、IgG(IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgG4)、IgM、IgA(IgA1、IgA2)、IgD、およびIgEを含むいずれの抗体クラスとすることもできる。抗体またはその抗原結合性フラグメントは、腎臓特異的クラステリン分子、血漿クラステリン分子、または血清クラステリン分子などのクラステリン分子の1つ以上のエピトープに結合する。抗体は、好適な実験動物において生体内で作製でき、または組換えDNA技術を用いてインビトロで作製することができる。抗体を調製し、特徴づける手段するは当該技術分野において周知である。例えば、Dean, Methods Mol. Biol. 80:23-37 (1998); Dean, Methods Mol. Biol. 32:361-79 (1994); Baileg, Methods Mol. Biol. 32:381-88 (1994); Gullick, Methods Mol. Biol. 32:389-99 (1994); Drenckhahn et al. Methods Cell. Biol. 37:7-56 (1993); Morrison, Ann. Rev. Immunol. 10:239-65 (1992); Wright et al. Crit. Rev. Immunol. 12:125-68 (1992)を参照されたい。例えば、ポリクローナル抗体は、クラステリン分子またはクラステリン分子の一部をヒトもしくは他の霊長類、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヤギ、ブタ、イヌ、ウシ、ヒツジ、ロバ、またはウマなどの動物に投与することによって作製することができる。免疫した動物の血清が採取され、抗体は、例えば、硫酸アンモニウムを用いて沈殿させた後にアフィニティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーにかけることによって血漿から精製される。ポリクローナル抗体を作成および加工する方法は当該技術分野において公知である。
【0031】
「特異的に結合する」または「に特異的な」とは、第1の抗原、例えば、クラステリンまたはその部分が、他の非特異的な分子に比べて大きいアフィニティーで抗体またはその抗原結合性フラグメントを認識し、それに結合することを意味する。非特異的な分子は第1の抗原と共通するエピトープを共有しない抗原である。本発明の実施形態では、非特異的な分子はクラステリンアイソフォームでなく、且つクラステリンに関連しない。例えば、非特異的な抗原と比べて効率的に結合する第1の抗原(例えば、クラステリン分子)に対して作製された抗体は、第1の抗原に特異的に結合すると称することができる。本発明の実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、10
7l/mol以上の結合親和力K
aで結合するときクラステリン分子またはその部分に特異的に結合する。本発明では、抗体または抗原結合性フラグメントはクラステリンの2つ以上のアイソフォームに特異的に結合することができ、またはクラステリンの1つのアイソフォーム、例えば、腎臓特異的クラステリンにのみに特異的に結合することができる。特異的な結合は、当該技術分野において周知である方法論を用いて、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫定量アッセイ(RIA)、またはウェスタンブロットアッセイで調べることができる。
【0032】
本発明の抗体は、キメラ抗体(例えば、米国特許第5,482,856号を参照されたい)、ヒト化抗体(例えば、Jones et al., Nature 321:522 (1986); Reichmann et al., Nature 332:323 (1988); Presta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593 (1992)を参照されたい)、イヌ化抗体、イヌ抗体、ヒト抗体であることができる。ヒト抗体は、例えば、直接的な不死化、ファージディスプレイ、トランスジェニックマウス、またはトリメラ方法論によって作製することができ、例えば、Reisener et al., Trends Biotechnol. 16:242-246 (1998)を参照されたい。
【0033】
クラステリン分子を検出するためのアッセイは、1個の抗体もしくはその抗原結合性フラグメントまたは1個以上の抗体もしくはフラグメント(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、または10個以上の抗体)を用いることができる。クラステリン用のアッセイには、例えば、クラステリンエピトープに特異的なモノクローナル抗体、1つのクラステリン分子のエピトープに特異的なモノクローナル抗体の組合せ、相異なるクラステリンのエピトープに特異的なモノクローナル抗体、同一クラステリンエピトープに特異的なポリクローナル抗体、相異なるクラステリンエピトープに特異的なポリクローナル抗体、またはモノクローナル抗体とポリクローナル抗体との組合せを使用することができる。アッセイプロトコールは、例えば、標識抗体を用いて、例えば、競合、直接反応、またはサンドイッチタイプアッセイに基づくことができる。
【0034】
本発明の抗体は、例えば、蛍光標識、化学発光標識、放射性標識、酵素標識、金属コロイド標識、放射性同位体標識、および生物発光標識を含む当該技術分野において公知であるどのタイプの標識でも標識することができる。
【0035】
クラステリンに特異的に結合する抗体としては、例えば、9H7、3A4、2F2、クラステリンのアルファ鎖に特異的な抗体、クラステリンのベータ鎖に特異的な抗体、抗クラステリン尿アイソフォーム、Hs−3;3R3−2;CLI−9;1A11;2F12;A4;7D1;3R3/2、クラステリンC末端抗体、クラステリンアイソフォームI抗体、CLU(AA1〜333)(N末端)抗体、CLU N末端(AA79〜99)抗体、CLU(AA312〜325)抗体、CLU(AA44〜58)抗体、CLU(AA402〜501)抗体、CLU(AA75〜501)抗体、CLU(AA312〜325)抗体;抗体LS−B6759、抗体LS−B3762、抗体LS−B2937およびLS−B2852、抗体16B5が挙げられる。抗体は、腎臓特異的クラステリンに、または腎臓特異的クラステリンと他の型のクラステリン(例えば、血清クラステリンまたは血漿クラステリン)との両方に特異的に結合することができる。
【0036】
レクチン
レクチンは、特異的な単糖またはオリゴ糖構造(炭水化物)を認識し、結合するタンパク質である。通常、レクチンは炭水化物ユニットに対する2つ以上の結合部位を含有する。あるレクチンの炭水化物結合特異性は、炭水化物に結合するアミノ酸残基によって決まる。レクチンの炭水化物に対する結合強度は、分子の相互作用の数とともに増加する可能性がある。レクチンの炭水化物に対する結合の解離定数は、K
dが約10
-5〜10
-7である。「特異的に結合する」または「に特異的な」とは、第1のレクチン、例えば、WGAが、他の非特異的なタイプの炭水化物に比べて強いアフィニティーで特異的なタイプの炭水化物(例えば、WGAについてはN−アセチルグルコサミン)を認識し、結合することを意味する。特異的なタイプの炭水化物は特異的なクラステリンアイソフォーム(例えば、腎臓特異的クラステリンまたは種特異的クラステリン)と関連し、1つ以上の他のクラステリンアイソフォーム(例えば、血清クラステリン)と顕著には関連しない。例えば、非特異的な炭水化物に比べて第1の特異的なタイプの炭水化物に効率的に結合するレクチンは、第1の特異的なタイプの炭水化物に特異的に結合すると称することができる。本発明の実施形態では、レクチンが、非特異的な炭水化物の結合に比較して約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%以上低いK
dで第1の特異的なタイプの炭水化物に結合するとき、レクチンは非特異的な炭水化物に比べて第1の特異的なタイプの炭水化物に効率的に結合する。本発明の実施形態では、レクチンが約10
-5〜10
-7の解離定数K
dで結合するとき、レクチンは特異的なタイプの炭水化物に特異的に結合する。本発明では、レクチンは2つ以上の特異的なタイプの炭水化物に特異的に結合することができ、または1つの特異的なタイプの炭水化物にのみ特異的に結合することができる。
【0037】
レクチンは、例えば、蛍光標識、化学発光標識、放射性標識、酵素標識、金属コロイド標識、放射性同位体標識、および生物発光標識を含む当該技術分野において公知であるどのタイプの標識でも標識することができる。
【0038】
本発明の実施形態では、腎臓特異的クラステリンに特異的に結合し、血漿または血清クラステリンに特異的に結合しないレクチンが使用される。本発明の実施形態では、N−アセチルグルコサミンに特異的に結合するレクチンが本発明で有用である。そのようなレクチンとしては、例えば、WGA(小麦胚芽凝集素)、WGA1、WGA2、WGA3、sWGA、DSLレクチン(シロバナヨウシュチョウセンアサガオレクチン)、マンノース結合レクチン、PHA−L(インゲンマメ白血球凝集素)、PHA−E(インゲンマメ赤血球凝集素)、およびLEL(トマトレクチン)が挙げられる。使用できる他のレクチンとしては、例えば、ジャカリン、STLレクチン(ジャガイモ)、LCAレクチン(レンズマメ)、PSAレクチン(
インゲンマメ凝集素)、ECLレクチン(アメリカデイゴ)、RCAレクチン(トウゴマ)、DBAレクチン(ドリコス)、SBAレクチン(ダイズ)、およびCONAレクチン(コンカナバリン)が挙げられる。レクチンは、例えば、Vector Laboratories社から市販されている。
【0039】
ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、またはサルのクラステリンアイソフォームの炭水化物に特異的に結合するレクチンを使用することができる。また、1つ以上の血漿、血清、または腎臓クラステリンアイソフォームに特異的に結合し、他のクラステリンアイソフォームに結合しないレクチンも使用することができる。
【0040】
第1のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合し、他のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合しない分子
本発明の実施形態では、第1のクラステリンアイソフォーム(例えば、腎臓特異的クラステリンまたは種特異的クラステリン、例えば、イヌ、ネコ、またはヒト腎臓特異的クラステリン)の炭水化物部分に特異的に結合し、他のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の分子を本発明のアッセイに使用することができる。他のクラステリンアイソフォームは、例えば、血清クラステリンまたは血漿クラステリンであることができる。例では、腎臓特異的クラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合し、血液由来、非腎臓特異的クラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の分子を本発明のアッセイに使用することができる。そのような分子としては、例えば、上で論じたレクチンおよびN−アセチルグルコサミンに特異的に結合する分子が挙げられる。
【0041】
「特異的に結合する」または「に特異的な」とは、第1の分子が、第1のクラステリンアイソフォーム(例えば、腎臓特異的クラステリンまたは種特異的クラステリン)の炭水化物部分に特異的に結合し、1つ以上の他のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合しないことを意味する。第1の分子は、第1のクラステリンアイソフォームで生じ、1つ以上の第2のクラステリンアイソフォームで顕著に生じない特異的なタイプの炭水化物(例えば、細菌のキチン結合ドメイン3タンパク質のN−アセチルグルコサミン、そこにおいて、N−アセチルグルコサミンは、腎臓特異的クラステリンアイソフォームで生じ、血清クラステリンアイソフォームで顕著に生じない炭水化物である)を他の非特異的な炭水化物と比べて強いアフィニティーで認識し、結合する。例えば、非特異的な炭水化物に比べて第1の特異的なタイプの炭水化物に効率的に結合する第1の分子は、第1の特異的なタイプの炭水化物に特異的に結合すると称することができる。
【0042】
本発明の実施形態では、第1のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合し、他のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合しない第1の分子は、非特異的な炭水化物への結合に比較して約5%、10%、20%、30%、40%、50%、または60%以上低いK
dで第1の特異的なタイプの炭水化物に結合するとき、非特異的な炭水化物に比べて第1の特異的なタイプの炭水化物に効率的に結合する。他のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合しない第1の分子とは、その分子が、第1のクラステリンアイソフォームの特異的な炭水化物部分を介して特異的に結合し、第2のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合せず、その結果、第1のクラステリンアイソフォームへの結合が第2のクラステリンアイソフォームの存在下で検出および/または定量でき、第2のクラステリンアイソフォームの存在が第1のクラステリンアイソフォームの検出および/または定量を著しく妨げないことを意味する。本発明の実施形態では、第1の分子が約10
-5〜10
-7の解離定数K
dで結合するとき、第1の分子は特異的なタイプの炭水化物に特異的に結合する。本発明では、第1の分子は2つ以上の特異的なタイプの炭水化物に特異的に結合することができ、または1つの特異的なタイプの炭水化物にのみ特異的に結合することができる。
【0043】
本発明の実施形態では、N−アセチルグルコサミンに結合する1つ以上の分子が、腎臓特異的クラステリンに特異的に結合するのに使用することができる。N−アセチルグルコサミンに結合する1つ以上の分子としては、例えば、野生型WGA(小麦胚芽凝集素)、変異型のWGA(例えば、WGA1、WGA2、WGA3、Parasuraman et al. J. Mol. Recognit. (2014) 27:482-92を参照されたい)、大麦レクチン(BL)、米レクチン、セイヨウイラクサ凝集素(
Uritica dioica agglutinin, UDA)、ヘベイン、インゲンマメキチナーゼ(PVC)、ポテト傷害誘導性タンパク質1(potato wound-inducible protein 1, WIN1)、ポテト傷害誘導性タンパク質2(potato wound-inducible protein 2, WIN2)、ジャガイモキチナーゼ(STC)、タバコキチナーゼ(TC)、ポプラ傷害誘導性タンパク質(poplar wound-inducible protein, POP)、(例えば、コレラ菌(
Vibrio cholera)、シェワネラ・オネイデンシス(
Shewanella onedensis)、シェワネラ・バルティカ(
Shewanella baltica)、ビブリオ・フィシェリ(
Vibrio fascheri)、ビブリオ・タペティス(
Vibrio tapetis)、ビブリオ・バルニフィカス(
Vibrio vulnificus)、エルシニア・モラレッティイ(
Yersinia mollaretii)、エルシニア・アルドバーエ(
Yersinia aldovae)の)細菌N−アセチルグルコサミン結合タンパク質A(GbpA)、CBP70、熱帯熱マラリア原虫(
Plasmodium falciparum)Pf120、Pf83、およびPf45 GlcNAc結合タンパク質、アルセノフォナス・ナソニエア(
Arsenophonus nasonieae)n−アセチルグルコサミン結合タンパク質、(例えば、バチルス・チューリンゲンシス(
Bacillus thuringiensis)、バチルス・セレウス(
Bacillus cereus)、バークホルデリア・アンビファリア(
Burkholderia ambifaria)の)細菌キチン結合ドメイン3タンパク質、タマリンドのN‐アセチルグルコサミンキチナーゼ様レクチン、シロイヌナズナの師部タンパク質2(phloem protein 2, PP2、PP2−1A1)、ストレプトマイセス・オリバセオビリディス(
Streptomyces olivaceoviridis)NgcE、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化受容体関連タンパク質(urokinase plasminogen activation receptor-associated protein)/ENDO180、アメロゲニン、ならびに弱毒化マウスサイトメガロウイルスが挙げられる。
【0044】
アッセイ
本発明の方法は、生体試料または実験室試料などの試験試料中のクラステリンアイソフォーム(例えば、腎臓特異的クラステリンまたは種特異的クラステリン、例えば、イヌ、ヒト、またはネコの腎臓特異的クラステリン)を検出するのに使用することができる。試験試料は潜在的に(1)腎臓特異的クラステリン、(2)腎臓特異的クラステリンおよび血清クラステリン、(3)腎臓特異的クラステリンおよび1つ以上のタイプの他の非腎臓特異的クラステリン、(4)1つ以上のタイプの他の非腎臓特異的クラステリンを含むものであり得、または(5)クラステリンを含まないものであり得る。生体試料としては、例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、サル、またはヒトなどの哺乳類の組織、尿、血液、血清、血漿、唾液、喀痰、糞便、脳脊髄液、羊水、または創傷滲出液を挙げることができる。試験試料は、未処理であってもよく、または沈殿させられていても、分画されていても、分離されていても、希釈されていても、濃縮されていても、精製されていてもよい。本発明の実施形態では、腎臓特異的クラステリンは血液、血漿、または血清に漏れて、そこで検出することができる。
【0045】
本発明の方法は、クラステリンの1つ以上の炭水化物部分に特異的に結合する分子(例えば、レクチン)と組み合わせてクラステリン抗体またはその特異的結合性フラグメントを用いるアッセイを提供することによってクラステリンおよびクラステリンアイソフォームの検出を向上させるのに使用することができる。該方法は、1つ以上のクラステリン抗体またはその特異的結合性フラグメントおよびクラステリンの1つ以上の炭水化物部分に特異的に結合する1つ以上の分子と、試料を接触させることを含んでなる。1つ以上のクラステリン抗体またはその特異的結合性フラグメントとクラステリンの1つ以上の炭水化物部分に特異的に結合する1つ以上の分子との複合体は、感度、特異性、または両方が向上して検出される。感度または特異性は、約2%、5%、10%、20%、30%、40%、または50%以上向上することができる。
【0046】
ある実施形態では、本発明の方法は、特異的クラステリンアイソフォーム(例えば、腎臓特異的クラステリンまたは種特異的クラステリン)を検出するのに使用することができる。該方法は、クラステリンと特異的に結合する1つ以上の抗体またはその抗原結合性フラグメントおよび腎臓特異的クラステリンに特異的に結合する1つ以上の他の分子(例えば、腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、他のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に結合しない分子)を、腎臓特異的クラステリンと、抗体またはその抗原結合性フラグメントと、腎臓特異的クラステリンに特異的に結合する1つ以上の他の分子との複合体が形成できる条件下で試験試料と、接触させることを含んでなる。複合体はその後検出される。複合体の存在は腎臓特異的クラステリンの存在を示す。複合体が存在しないことは腎臓特異的クラステリンが存在しないことを示す。当業者は、複合体結合を検出するのに使用されるアッセイおよび条件に精通している。複合体は、例えば、1つ以上の腎臓特異的クラステリン分子、クラステリンに特異的に結合する1つ以上の抗体、および腎臓特異的クラステリンに特異的に結合し、他のアイソフォームのクラステリンに特異的に結合しない1つ以上の他の分子は含んでなることができる。他の型のクラステリンは、例えば、血液由来の、非腎臓特異的クラステリンアイソフォームであることができる。複合体の量を決定することができ、疾患の重症度を確立するのに用いることができる。
【0047】
本発明のアッセイは、例えば、腎臓特異的クラステリンを他のタイプのクラステリンアイソフォームと識別する、試料中の腎臓特異的クラステリンを検出する、試料中の腎臓特異的クラステリンを定量する、1つ以上のクラステリンアイソフォーム(例えば、腎臓特異的クラステリン、血清クラステリン、血漿クラステリン、種特異的クラステリンアイソフォーム)を他のクラステリンアイソフォームと識別する、試料中のクラステリンアイソフォームを定量する、または試料中の特異的クラステリンアイソフォームを検出するのに使用することができる。
【0048】
本発明の実施形態は、1つ以上のクラステリンアイソフォームを他のタイプのクラステリンアイソフォームと識別する方法を提供する。該方法は、クラステリンと特異的に結合する1つ以上の抗体またはその抗原結合性フラグメントおよび1つ以上のクラステリンアイソフォーム(例えば、腎臓特異的クラステリン)の炭水化物部分に特異的に結合し、他のクラステリンアイソフォーム(例えば、血漿クラステリン、血清クラステリン、または血液由来、非腎臓特異的クラステリンアイソフォーム)の炭水化物部分に結合しない1つ以上の分子と、試料を接触させることを含んでなる。クラステリンの1つ以上のアイソフォーム、クラステリンと特異的に結合する1つ以上の抗体またはその抗原結合性フラグメントおよび1つ以上のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合し、他のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に結合しない1つ以上の分子を含んでなる複合体が検出される。1つ以上のクラステリンアイソフォームは、哺乳類、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、またはサルクラステリンアイソフォームであることができる。
【0049】
競合アッセイを本発明の方法で使用することができる。例えば、クラステリンと特異的に結合する1つ以上の抗体またはその抗原結合性フラグメントを支持体に固相化することができる。検出可能に標識されたレクチンに結合された腎臓特異的クラステリンおよび腎臓特異的クラステリンに特異的に結合する非標識のレクチンで処理された試料が支持体に加えられる。1つ以上の抗体またはその抗原結合性フラグメントに結合していない検出可能に標識されたレクチン−腎臓特異的クラステリンの量が検出される。1つ以上の抗体または抗原結合性フラグメントに結合していない検出可能に標識されたレクチン−腎臓特異的クラステリンの量は、試料中の腎臓特異的クラステリンの量に比例する。代替的に、1つ以上の抗体または抗原結合性フラグメントに結合していない検出可能に標識されたレクチン−腎臓特異的クラステリンは洗い落とされ、残留する検出可能に標識されたレクチン−腎臓特異的クラステリンが検出される。代替的に、アッセイは支持体に固相化しているクラステリンアイソフォームに特異的に結合する1つ以上のレクチンで始めることができる。クラステリンに特異的に結合する1つ以上の検出可能に標識された抗体またはその抗原結合性フラグメントに結合された腎臓特異的クラステリンは、腎臓特異的クラステリンに特異的に結合する非標識の抗体で処理された試料とともに支持体に加えられる。検出は上記のように達成される。
【0050】
本発明の方法は、例えば、腎疾患または腎損傷の疑いがあるヒトまたは哺乳類から試験試料を得ることによって、腎疾患、腎障害、または腎損傷の診断または検出に使用することができる。該方法は、クラステリンに特異的に結合する1つ以上の抗体および1つ以上のクラステリンアイソフォーム(例えば、腎臓特異的クラステリン)の炭水化物部分に特異的に結合し、他のクラステリンアイソフォーム(例えば、血漿クラステリン、血清クラステリン、または血液由来、非腎臓特異的クラステリンアイソフォーム)に特異的に結合しない1つ以上の分子と、哺乳類の試料を接触させることを含んでなる。当業者は複合体の形成を可能にし、その形成に適した条件を知っている。腎臓特異的クラステリンと、クラステリンに特異的に結合する1つ以上の抗体と、クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、腎臓特異的クラステリンに特異的に結合する他のクラステリンアイソフォームに特異的に結合しない1つ以上の分子との複合体が検出される。複合体が検出された場合、哺乳類は腎疾患、腎障害、または腎損傷と診断される。複合体の量は当該技術分野において公知であるいずれの方法論でも決定することができる。対照試料で形成されるレベルより高いレベルは、腎損傷、腎障害、または腎疾患を示す。対照試料は、腎臓特異的クラステリンを含有しない試料、または腎疾患、腎障害、もしくは腎損傷のないヒトまたは哺乳類で見られるレベルで腎臓特異的クラステリンを含有する試料のいずれかである。両方のタイプの対照試料がアッセイで使用することができる。哺乳類に腎疾患または腎損傷がある場合、腎治療法または腎治療薬を哺乳類に施行することができる。
【0051】
ある実施形態では、イヌ腎臓特異的クラステリンは、1つ以上のクラステリン抗体またはその抗原結合性フラグメントおよび1つ以上のPHA−L、WGA、sWGA、STL、LEL、PHA−E、またはDSLレクチンで検出することができる。ある実施形態では、ネコ腎臓特異的クラステリンは、1つ以上のクラステリン抗体またはその抗原結合性フラグメントおよび1つ以上のジャカリン、ECL、LCA、RCA、PHA−E、WGA、PSA、DSL、DBA、PHA−L、SBA、またはCONAレクチンで検出することができる。ある実施形態では、ネコおよびイヌ腎臓特異的クラステリンは、1つ以上のクラステリン抗体またはその抗原結合性フラグメントおよび1つ以上のWGA、sWGA、DSL、PHA−L、またはPHA−Eレクチンで検出することができる。ある実施形態では、ヒトおよびネコ腎臓特異的クラステリンは、1つ以上のクラステリン抗体またはその抗原結合性フラグメントおよび1つ以上のPSAまたはDBAレクチンで検出することができる。
【0052】
腎損傷、腎障害、および腎疾患としては、例えば、急性腎障害(AKI;3か月未満の血液検査および尿検査もしくは組織像のいかなる異常を含む腎損傷の機能的かつ構造的障害もしくは徴候)、進行もしくは悪化する急性腎障害、初期AKI、軽度AKI、中等度AKI、重症AKI、慢性腎臓病(chronic renal/kidney disease)、糖尿病性腎症、急性尿細管壊死、急性間質性腎炎、糸球体腎症、糸球体腎炎、近位尿細管損傷および遠位尿細管損傷、腎血管炎、腎動脈の閉塞、腎虚血障害、腫瘍崩壊症候群、横紋筋融解症、尿路閉塞、腎前性高窒素血症、腎静脈血栓症、心腎症候群、肝腎症候群、肺腎症候群、腹部コンパートメント症候群、尿路感染症、上部尿路感染症、下部尿路感染症、腎毒性薬剤による損傷、膀胱がん、腎臓がん、泌尿器がん、または造影剤による腎障害が挙げられる。
【0053】
本発明の方法は、腎疾患、腎障害、および腎損傷を既知の方法(例えば、血清クレアチニンアッセイ)に比べて早期に検出することができる。本発明の方法は、腎疾患、腎障害、および腎損傷の発症の約5日、4日、3日、2日、1日、またはそれ未満のうちに腎疾患、腎障害、および腎損傷を検出することができる。
【0054】
本発明の実施形態では、1つ以上の抗体、腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、他のアイソフォームのクラステリン(例えば、血清クラステリン、血漿クラステリン、または血液由来、非腎臓特異的クラステリンアイソフォーム)の炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の他の分子、または両方に結合されている酵素結合体または他の検出可能な標識などの検出可能な標識が検出可能な反応を触媒または形成するとき、複合体が検出される。随意に、シグナル生成化合物を含んでなる1つ以上の検出可能な標識は、検出可能な標識複合体の形成を可能にする条件下で複合体に適用することができる。検出可能な標識複合体は、クラステリン、クラステリンと特異的に結合する1つ以上の抗体またはその抗原結合性フラグメント、クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、他のアイソフォームのクラステリンの炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の他の分子、および1つ以上の検出可能な標識分子を含んでなる。検出可能な標識複合体が検出される。随意に、1つ以上の抗体またはクラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、他のアイソフォームのクラステリンの炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の他の分子は、検出可能な標識複合体の形成前に検出可能な標識でラベルすることができる。該方法は随意に陽性対照群または陰性対照を含んでなることができる。
【0055】
また、クラステリン、クラステリンに特異的に結合する1つ以上の抗体、腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、他のアイソフォームのクラステリン(例えば、血漿クラステリン、血清クラステリン、または血液由来、非腎臓特異的クラステリンアイソフォーム)の炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の他の分子を含んでなる複合体は、標識または検出可能な標識試薬を必要としない方法を用いても検出することができる。例えば、表面プラズモン共鳴バイオセンサー、コーニングEPIC(商標)バイオセンサー、または比色共鳴反射(colorimetric resonant reflectance)バイオセンサーが使用されて、標識することなく本発明の複合体を検出することができる。
【0056】
本発明の1つの実施形態は、1つ以上のクラステリン分子、クラステリンと特異的に結合する1つ以上の抗体またはその抗原結合性フラグメント、および1つ以上のレクチンを含んでなる複合体を含んでなる。複合体は、1つ以上の腎臓特異的クラステリン分子、クラステリンに特異的に結合する1つ以上の抗体または抗原結合性フラグメント、および腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、他のクラステリンアイソフォーム(例えば、血漿クラステリン、血清クラステリン、または血液由来、非腎臓特異的クラステリンアイソフォーム)の炭水化物部分に結合しない1つ以上の分子を含んでなることができる。複合体は随意に、複合体のいずれかの構成要素に共有結合的または非共有結合的に結合される1つ以上の検出可能な標識を含んでなることができる。複合体は固体支持体に固相化することができる。
【0057】
本発明の実施形態では、クラステリンに特異的に結合する1つ以上の抗体は固相または基材に固相化される。試験試料は基材に加えられる。腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、他のアイソフォームのクラステリン(例えば、血漿クラステリン、血清クラステリン、または血液由来、非腎臓特異的クラステリンアイソフォーム)の炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の他の分子は、試験試料が基材に加えられる前、試験試料とともに、または試験試料が基材に加えられた後に基材に加えられる。腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、他のアイソフォームのクラステリンの炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の他の分子は検出可能に標識することができる。洗浄ステップを基材への各添加の前に行うことができる。検出可能な標識は、例えば、検出可能な標識と反応するように加えられた発色団または酵素基質を介して直接的に検出または間接的に検出することができる。検出可能な反応(例えば、発色)が進む。反応を止め、検出可能な反応は、例えば、分光光度計を用いて定量することができる。このタイプのアッセイは試験試料中の腎臓特異的クラステリンの量を定量することができる。
【0058】
本発明の実施形態では、腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、他のアイソフォームのクラステリン(例えば、血漿クラステリン、血清クラステリン、または血液由来、非腎臓特異的クラステリンアイソフォーム)の炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の他の分子は固相または基材に付けられる。試験試料は基材に加えられる。腎臓特異的クラステリンに特異的に結合する1つ以上の抗体は、試験試料が基材に加えられる前、試験試料とともに、または試験試料が基材に加えられた後に、基材に加えられる。1つ以上の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、検出可能に標識することができる。洗浄ステップを基材への各添加の前に行うことができる。抗体標識は、例えば、検出可能な標識と反応するように基材に加えられた発色団または酵素基質を介して直接的に検出または間接的に検出することができる。検出可能な反応(例えば、発色)が進む。検出可能な反応を止め、反応は、例えば、分光光度計を用いて定量することができる。このタイプのアッセイは試験試料中の腎臓特異的クラステリンの量を定量することができる。
【0059】
本発明の実施形態では、第2のクラステリンアイソフォーム(または複数の他のクラステリンアイソフォーム)をより良好に検出するために、試料から第1のクラステリンアイソフォーム(または複数のクラステリンアイソフォーム)を枯渇させる。試料は、第1のクラステリンアイソフォームに特異的に結合する1つ以上のレクチンと接触し、その結果1つ以上のレクチンと1つ以上の第1のクラステリンアイソフォームとの複合体が形成される。1つの例では、DC−SIGNレクチンは、精液クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合するが、血清クラステリンの炭水化物部分に結合しない。代替的に、試料は、第1のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合し、第2のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の分子と接触し、その結果、第1のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合し、第2のクラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の分子と、1つ以上の第1のクラステリンアイソフォームとの複合体が形成することができる。次いで、複合体は随意に、例えば、沈殿によって試料から除去することができる。第2のクラステリンのためのアッセイは、例えば、本発明のいずれのアッセイを用いても行うことができる。代替的に、第2のクラステリンアイソフォームのためのいずれのアッセイも、第1のクラステリンアイソフォームが試料から枯渇した時点で行うことができる(例えば、試料を1つ以上のクラステリン特異的抗体と接触させることおよびクラステリン/抗体複合体の検出)。2つの抗体を用いるサンドイッチアッセイまたは1つの抗体を用いる直接アッセイを使用することができる。
【0060】
本発明の実施形態では、腎臓特異的クラステリンをより良好に検出するために、試料から非腎臓特異的クラステリンを枯渇させる。試料は、1つ以上の非腎臓特異的クラステリンアイソフォーム(例えば、血清クラステリンまたは血漿クラステリンアイソフォーム)に特異的に結合する1つ以上のレクチンと接触し、その結果1つ以上のレクチンと1つ以上の非腎臓特異的クラステリンアイソフォームとの複合体が形成される。WGAは血漿クラステリンに結合せず、腎臓特異的クラステリンに結合する。代替的に、試料は、非腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、腎臓特異的クラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の分子と接触し、その結果、非腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分アイソフォームに特異的に結合し、腎臓特異的クラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の分子と、1つ以上の非腎臓特異的クラステリンアイソフォームとの複合体が形成することができる。次いで、複合体は試料から除去することができる。腎臓特異的クラステリンのためのアッセイは、例えば、本発明のいずれのアッセイを用いても行うことができる。代替的に、腎臓特異的クラステリンのためのいずれのアッセイも、非腎臓特異的クラステリンアイソフォームが試料から枯渇した時点で行うことができる(例えば、試料を1つ以上のクラステリン特異的抗体と接触させることおよびクラステリン/抗体複合体の検出)。2つの抗体を用いるサンドイッチアッセイまたは1つの抗体を用いる直接アッセイを使用することができる。
【0061】
本発明のアッセイとしては、限定されないが、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、競合アッセイ、ウェスタンブロッティング、IFA、放射免疫定量アッセイ(RIA)、赤血球凝集アッセイ(HA)、凝集アッセイ、蛍光偏光免疫測定法(FPIA)、およびマイクロタイタープレートアッセイ(マイクロタイタープレートの1つ以上のウェルで行われるいずれのアッセイ)を含む競合、直接反応、またはサンドイッチタイプアッセイに基づいたものが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の1つのアッセイは、可逆フロークロマトグラフィー結合アッセイ(reversible flow chromatographic binding assay)、例えば、SNAP(商標)アッセイを含んでなる。米国特許第5,726,010号を参照されたい。
【0062】
アッセイは固相、基材、もしくは支持体を用いることができ、または免疫沈降もしくは支持体を用いない他のいずれの方法によって行うことができる。固相、基材、または支持体が使用される場合、1つ以上の抗体、腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、他のアイソフォームのクラステリンの炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の他の分子、またはその組合せは、マイクロタイターウェル、磁気ビーズ、非磁気ビーズ、カラム、マトリックス、膜、ガラス、ポリスチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および改変セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、マグネタイト、合成または天然繊維から成る繊維マット(例えば、ガラスもしくはセルロース系材料またはポリエチレン、ポリプロピレン、もしくはポリエステルなどの熱可塑性ポリマー)、粒子材料から成る焼結構造体(例えば、ガラスもしくはさまざまな熱可塑性ポリマー)、またはニトロセルロース、ナイロン、ポリスルホンなどから構成されるキャスト膜フィルム(一般に天然で合成)などの支持体または基材に直接的または間接的に付けられる。本発明の実施形態では、基材は焼結され、多孔性ポリエチレンとして一般に知られているポリエチレンの微粒子、例えば、Chromex Corporation社(アルバカーキ、ニューメキシコ州)の10〜15マイクロメートル(micron)多孔性ポリエチレンである。これらの基材材料のすべては、フィルム、シート、またはプレートなどの好適な形状で使用することができ、または紙、ガラス、プラスチックフィルム、もしくは織物などの適切な不活性担体にコーティングもしくは結合もしくはラミネートされてもよい。抗体、タンパク質、およびレクチンを固相に固相化する好適な方法としては、イオン性相互作用、疎水性相互作用、共有結合性相互作用などが挙げられる。
【0063】
1つ以上のクラステリンアイソフォーム(例えば、腎臓特異的クラステリン)の炭水化物部分に特異的に結合し、他のクラステリンアイソフォーム(例えば、血漿クラステリン、血清クラステリン、または血液由来、非腎臓特異的クラステリンアイソフォーム)の炭水化物部分に特異的に結合しない抗体、レクチン、または分子は、分子がその選択的結合活性を保持するように、例えば、吸着によって、または共有結合によって固体支持体に固定することができる。随意に、分子の結合部位がアクセス可能な状態で残るようにスペーサー基を含むことができる。固相化された分子は、唾液、血清、喀痰、血液、尿、糞便、脳脊髄液、羊水、創傷滲出液、または組織を含む生体試料などの試料のクラステリン分子に結合するのに使用することができる。
【0064】
複合体(例えば、以下の1つ以上の複合体:(1)クラステリン、抗体またはその抗原結合性フラグメント、1つ以上のクラステリンアイソフォーム(例えば、腎臓特異的アイソフォーム)の炭水化物部分に特異的に結合し、他のアイソフォームのクラステリン(例えば、血漿クラステリン、血清クラステリン、または血液由来、非腎臓特異的クラステリンアイソフォーム)の炭水化物部分に特異的に結合しない分子;(2)検出可能な標識、クラステリン、抗体またはその抗原結合性フラグメント、1つ以上のクラステリンアイソフォーム(例えば、腎臓特異的クラステリン)の炭水化物部分に特異的に結合し、他のアイソフォームのクラステリン(例えば、血漿クラステリン、血清クラステリン、または血液由来、非腎臓特異的クラステリンアイソフォーム)の炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の他の分子)の形成は、例えば、放射測定、比色分析、蛍光定量、サイズ分離、バイオセンサー法、沈殿法、または標識を用いない方法によって検出することができる。随意に、複合体の検出は検出可能な標識に結合している二次抗体の添加によって行うことができる。複合体に結合するシグナル生成化合物を含んでなる検出可能な標識は上記の方法を用いて検出でき、発色物質、酵素結合体などの触媒、フルオレセインおよびローダミンなどの蛍光組成物、ジオキセタン、アクリジニウム、フェナントリジニウム、ルテニウム、およびルミノールなどの化学発光化合物、放射性元素、直接的可視標識、ならびに補因子、阻害剤、磁性粒子などが挙げられる。酵素結合体としては、例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ベータガラクトシダーゼなどが挙げられる。特定の標識の選択は決定的には重要ではないが、単独または1つ以上のさらなる物質と併せてシグナルを発生できることになる。
【0065】
複合体の形成は、試験試料中の1つ以上のクラステリンアイソフォーム(例えば、腎臓特異的クラステリン)の存在を示す。本発明の方法は試験試料中の1つ以上のクラステリンアイソフォーム(例えば、腎臓特異的クラステリン)の量または数量を示すことができる。酵素結合体などの多くの検出可能な標識では、存在するクラステリンの量は生成されたシグナルに比例する。試験試料のタイプに応じて、試験試料は、好適なバッファー試薬で希釈したり、濃縮したり、または一切の操作なしに固相と接触させることができる。例えば、クラステリンの有無および/または量を決定するために、試験試料を希釈または濃縮することができる。
【0066】
また、本発明のアッセイは、腎疾患、腎障害、または腎損傷の改善の経過をモニターするのにも使用することができる。対象の検査試料中の腎臓特異的クラステリン増加または減少を測定することによって、疾患または損傷の改善を目的とした特定の治療計画が有効か否かを決定することができる。
【0067】
キット
さらに本発明は、腎臓特異的クラステリンを検出するためのアッセイキット(例えば、製品)を含んでなる。キットは、本発明の1つ以上の抗体またはその抗原結合性フラグメント、1つ以上のクラステリンアイソフォーム(例えば、腎臓特異的クラステリン)の炭水化物部分に特異的に結合し、他のアイソフォームのクラステリン(例えば、血漿クラステリン、血清クラステリン、または血液由来、非腎臓特異的クラステリンアイソフォーム)の炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の他の分子、ならびに抗体、1つ以上の他の分子、および試料中のクラステリンの特異的結合を決定するための組成物を含んでなることができる。これらの構成要素は1つ以上の検出可能な標識を含んでなることができ(すなわち、検出可能な標識は1つ以上の構成要素に固相化することができる)、または検出可能な標識は別に用意することができる。キットは、本発明の1つ以上の抗体またはその抗原結合性フラグメントおよび1つ以上のクラステリンアイソフォーム(例えば、腎臓特異的アイソフォーム)の炭水化物部分に特異的に結合し、他のアイソフォームのクラステリン(例えば、血清クラステリンまたは血漿クラステリン)の炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の他の分子を含有する装置、ならびに、例えば、哺乳類の腎疾患、腎障害、または腎損傷の特定にこれらの分子を使用するための取扱説明書を含んでなることができる。キットは、1つ以上の抗体もしくはその抗原結合性フラグメントを含む支持体、またはクラステリンの1つ以上のアイソフォーム(例えば、腎臓特異的クラステリン)の炭水化物部分に特異的に結合し、他のアイソフォームのクラステリン(例えば、血漿もしくは血清クラステリン)の炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の他の分子を含む支持体、または支持体に固相化された両者を含んでなることができる。またキットは、腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、他のアイソフォームのクラステリンの炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の他の分子およびキットの抗体が、腎疾患、腎障害、または腎損傷を特定するのに使用できることを示すラベルを含んでなる包装材料を含んでなることができる。当業者に既知のバッファー、対照(例えば、腎臓特異的クラステリンといった陽性対照;血漿クラステリン、血清クラステリン、またはバッファーといった陰性対照)などの他の構成要素をそのような検査キットに含むことができる。本発明の、腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、他のアイソフォームのクラステリンの炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の他の分子、抗体、アッセイ、およびキットは、例えば、患者における腎疾患、腎障害、または腎損傷の個々の事例の診断および腎疾患、腎障害、または腎損傷の疫学研究に有用である。
【0068】
またキットは、1つ以上のレクチンと1つ以上の非腎臓特異的クラステリンアイソフォームとでの複合体の形成のための1つ以上の非腎臓特異的クラステリンアイソフォーム(例えば、血清クラステリンまたは血漿クラステリンアイソフォーム)に特異的に結合する1つ以上のレクチンを含んでなることができる。またキットは、1つ以上の非腎臓特異的クラステリンアイソフォームと1つ以上の分子との間での複合体形成のための非腎臓特異的クラステリンの炭水化物部分に特異的に結合し、腎臓特異的クラステリンアイソフォームの炭水化物部分に特異的に結合しない1つ以上の分子を含んでなることができる。
【0069】
本明細書においていずれに言及されている特許、特許出願、および他の科学文書または技術文書は、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる。本明細書に例示的に記載されている本発明は、本明細書で具体的に開示されていない、いずれの要素または複数の要素、限定または複数の限定の不在下において適切に実行することができる。よって、例えば、本明細書の各例では、「含んでなること(comprising)」、「から本質的になること(consisting essentially of)」、および「からなること(consisting of)」という用語は、それらの通常の意味を保持しつつ、他の2つの用語のいずれかと置換しうる。使用されている用語および表現は限定の用語としてではなく説明の用語として使用されており、そのような用語および表現の使用において、図示および記載された特徴のいずれの等価物またはその一部を除外する意図はなく、さまざまな修正が、特許請求されている本発明の範囲内で可能であることが理解される。よって、本発明は実施形態によって具体的に開示されているが、本明細書で開示された概念の随意の特徴、修正、変形が当業者によって用いられ、そのような修正および変形は明細書および添付の請求項によって規定された本発明の範囲内にあると見なされることが理解されるべきである。
【0070】
くわえて、本発明の特徴または態様が代替案のマーカッシュ群または他のグルーピングの点から記載されている場合、それによって本発明はマーカッシュ群または他の群のいずれの個々の構成要素または構成要素の部分群(subgroup)の点からも記載されていることを当業者なら理解するであろう。
【0071】
以下は例示目的でのみ提供され、上記で大まかに記載された本発明の範囲を限定することを意図されていない。
【実施例】
【0072】
実施例1
血液混入
正常イヌ血清を陰性尿(すなわち、健康なイヌの尿)にスパイクし、クラステリンの量を市販のクラステリンEIA(バイオベンダー社)を用いて測定した。
図1A〜Bに示されるように、1:1000希釈(1mlに1μl)においてでさえも顕著なクラステリンレベルが測定される。したがって、血清クラステリンまたは血漿クラステリンアイソフォームのいかなる検出も排除する一方で、腎臓特異的クラステリンアイソフォームが検出できることが重要である。
【0073】
実施例2:材料
クラステリン分子の単離
イヌクラステリンの配列を使用して、組換えヒスチジンタグ付きイヌクラステリン分子を発現するベクター(ライフテクノロジーズ社)を設計および合成した。タンパク質を発現および精製した後、配列をLC−MSで確認した。本明細書においてこの分子を組換えクラステリンまたはヒスチジンタグ組換えクラステリンと呼ぶ。
【0074】
血漿クラステリンは30頭のイヌのプールした血漿からアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。メイディン・ダービー・イヌ腎臓(MDCK)細胞由来クラステリン(腎臓特異的クラステリンである)を、MDCK細胞を125mlのTフラスコ中で37℃、7.5%CO
2にて抗生物質を含む1×MEM補充培地でコンフルエント状態まで培養することによって得た。上清を回収し、クラステリンを、AKTAクロマトグラフィーシステム(GEヘルスケア社)を用いて抗クラステリンカラムに通してアフィニティー精製した。
【0075】
腎臓特異的クラステリンは腎臓に急性損傷の疑いがあるイヌからプールした尿からアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。
【0076】
抗体調製
血漿由来クラステリンに対するポリクローナル抗血清をウサギで作製した。モノクローナル抗体は複数の型のクラステリンを免疫原として用いてマウスで生成した(Immunoprecise,Inc社、バンクーバー、ブリティッシュコロンビア州)。さまざまな型には、組換え全分子クラステリン、クラステリンのアルファ鎖、クラステリンのベータ鎖、血漿由来クラステリン、MDCK由来クラステリン、および(腎臓特異的クラステリンである)尿由来クラステリンが含まれた。
【0077】
免疫アフィニティークロマトグラフィー
組換えクラステリンを使用してウサギを免疫した。抗クラステリンIgGをプロテインAクロマトグラフィーによって精製した。抗組換えクラステリンIgG抗体を使用してイヌ血漿プールから天然血漿クラステリンをアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。モノクローナル抗体はマウスを血漿クラステリンで免疫することによって作製し、結果として得た抗クラステリンIgG抗体をプロテインAクロマトグラフィーで精製した。
【0078】
検出抗体
抗クラステリン(血漿固有)モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を標準的なSMCC化学(サーモ−ピアス社)によって西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識した。
【0079】
クラステリン標準
MDCK細胞株(ATCC)の培養上清またはプールしたイヌ血漿からクラステリンをアフィニティークロマトグラフィーで精製した。結果として得たクラステリンをLCMSで定量した。値(mg/ml)を代入し、標準曲線および対照を作成した。
【0080】
実施例3:一般的なクラステリンアッセイプロトコール
アッセイバッファー(1%BSAおよび0.5%Tween(商標)(ポリソルベート)20)を含有する1×PBS)で500ng/mlの標準を連続希釈してクラステリンの標準曲線を作成した。尿試料をアッセイバッファーで1:100に希釈して、プレート上で100μlを2つ組で周囲温度にて1時間インキュベーションした。3回洗った後、PetChek(商標)バッファー(IDEXX Laboratories社)、100μlの、西洋ワサビペルオキシダーゼでラベルした抗クラステリン抗体を周囲温度で30分間インキュベーションした。上記のように3回洗った後、50μlのTMB基質(IDEXX Laboratories社)を加え、5分間発色させた。100μlの酸(1N HCL)を添加することによって発色反応を止めた。すぐにプレートを450nmで読んだ。
【0081】
クラステリンコーティングプレート
マイクロタイタープレートを、5μg/mlの血漿クラステリン、MDCK由来クラステリン、組換えヒスチジンタグクラステリン、およびBSAで、0.05M炭酸塩バッファー、pH9.5中にて4℃で一晩コーティングした。PBS−Tween(商標)(ポリソルベート)20(0.1%)で3回洗った後、プレートをPBST中の1%ウシ血清アルブミン(BSA)で2時間ブロックした。さらにPBSTで3回洗った後にプレートを真空下で4時間乾燥した。
【0082】
レクチンコーティングプレート
ビオチン標識レクチン(Vector Labs社、バーリンゲーム、カリフォルニア州)をPBS、pH7.4中に5μg/mlに希釈し、100μlをストレプトアビジンでコーティングされたプレート(IDEXX Laboratories社)のウェルに加えた。4℃で一晩結合させた後、プレートをPBSTで3回洗った。プレートはすべて、使用するまで4℃で保存、乾燥した。
【0083】
実施例4:クラステリンレクチン特異性
クラステリンでコーティングしたマイクロタイタープレートをPBST中1μg/mlのビオチン標識レクチンで1時間インキュベーションした。PBSTで3回洗った後、100μlのHRP標識ストレプトアビジンをプレート振とう器上で周囲温度にて30分間インキュベーションした。PBSTでさらに3回洗った後、100μlのTMB基質を加え、5分間インキュベーションし、100μlの1N HCLで反応を止めた。プレートを450で読んだ。
【0084】
【表2】
【0085】
表2に、クラステリン調製物の特異的なレクチンに対する反応性をO.D.450ユニットで示す。OD>0.5をレクチンに対する陽性反応として使用した。非グリコシル化されたタンパク質、ヒスチジンタグクラステリン、およびBSAの結合が値<0.4O.D.ユニットという結果になったので、このO.D.を選んだ。MDCK/血漿結合の比をとり、比>2.0をさらなる特徴付けに選んだ。4つのレクチン、PHA−E、PHA−L、WGA、およびLELがこの基準を満たした。小麦胚芽レクチン(WGA)をさらなる特徴付けに選んだ。
【0086】
実施例5:腎臓特異的クラステリンの検出の実現可能性
さまざまな型のクラステリン(MDCK由来クラステリン、天然血漿クラステリン、および組換えヒスチジンタグクラステリン)をアッセイバッファーに連続希釈し、HRP標識抗クラステリンモノクローナル抗体で検出した。
図2は、用量依存的にMDCK由来クラステリン調製物のみが結合することを示す。炭水化物をもたないヒスチジンタグを付けた組換えクラステリンおよび炭水化物を含有する天然血漿クラステリンは、試験したどの濃度でもレクチン固相に結合しない。
【0087】
腎臓特異的クラステリンに対するレクチンの特異性
天然血漿クラステリン、MDCK由来クラステリン、および尿由来クラステリン試料をアッセイバッファーに1μg/mlに希釈し、相異なるレクチン固相上で抗クラステリンHRPモノクローナル抗体を用いて検出した。下記表3は、MDCK由来クラステリンおよび尿から精製したクラステリンのみがWGA固相に結合することを示す。サクシニル化WGA(sWGA)に対する結合の減少があり、シアル酸残基は結合に関与していないことを示唆した。
【0088】
【表3】
【0089】
血漿由来クラステリンはレクチン固相に結合できないので、ポリクローナル抗クラステリン抗体およびモノクローナル抗クラステリン抗体はともに、複数のレクチン固相に結合されたMDCK由来クラステリンに結合でき、血漿源由来のクラステリンに結合しない。WGAは腎臓特異的クラステリン(MDCK由来および尿)に特異的である。
【0090】
次いで、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体によって固相に捕捉されたクラステリン抗原についてレクチンをスクリーニングした。3A4モノクローナル抗体、9H7モノクローナル抗体、2E2モノクローナル抗体、2F2モノクローナル抗体、抗アルファ鎖クラステリンポリクローナル抗体、抗ベータ鎖クラステリンポリクローナル抗体、または抗尿クラステリンポリクローナル抗体を固相に固相化した。MDCK由来クラステリンまたは血漿由来クラステリン(1μg/ml)を、ビオチン標識したWGA、sWGA、Pha−L、Pha−E、またはバッファー対照とともに固相に加えた。結果を表4に示す。
【0091】
【表4】
【0092】
モノクローナル抗体、および9H7ポリクローナルクラステリン抗ベータ鎖、およびポリクローナルクラステリン抗尿が、最も良好な感度を示す。WGA、Pha−L、Pha−Eは特異的にMDCK由来クラステリンに結合し、特異的に血漿由来クラステリンに結合しなかった。
【0093】
WGA(5μg/ml)、sWGA(5μg/ml)、ポリクローナル抗血漿クラステリン抗体、またはバッファーを固相に結合させた。血漿由来クラステリン(1μg/ml)、MDKC由来クラステリン(1μg/ml)、尿由来クラステリン(1μg/ml)、またはバッファーを加えた。結果を表5に示す。次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合させたモノクローナル抗体9H7(100ng/ml)を加えた。特異的結合が検出された。MDCK由来クラステリンおよび尿由来クラステリンは、固相化されたWGAに特異的に結合し、9H7抗体によって検出された。血漿由来クラステリンは、固相化されたWGAに特異的に結合せず、9H7抗体によって検出されなかった。結果を表5に示す。
【0094】
【表5】
【0095】
新鮮に調製した血清を尿にスパイクし、サンドイッチ免疫複合体の形成を、固相化されたWGAレクチンおよびsWGAレクチンを含んでなる固相を用いて調べた。レクチンおよび腎臓特異的クラステリン複合体がHRP結合9H7モノクローナル抗体で検出された。結果を表6に示す。MDCK由来クラステリンが尿にスパイクされた場合のみ、複合体(WGA、腎臓特異的クラステリン、および抗体)が形成され、血清が尿に0.1〜10%スパイクされた場合は、顕著な反応性がないことを結果は示唆する。したがって、血清クラステリンはそのアッセイで検出されない。
【0096】
【表6】
【0097】
ヒスチジンタグ組換えクラステリン、血漿由来クラステリン、およびMDCK由来クラステリン試料を、DDTを用いて還元してクラステリンのアルファ鎖とベータ鎖を分離させるか、または非還元のまま残した。ウェスタンブロットでは、モノクローナル抗体9H7はMDCK由来クラステリンと血漿由来クラステリンの両方に結合することを示した。しかし、WGAレクチンは非還元または還元MDCK由来クラステリンにのみ結合する。表7を参照されたい。WGAは、非還元または還元ヒスチジンタグ組換えクラステリンにも、非還元または還元血漿由来クラステリンにも結合しなかった。
【0098】
【表7】
【0099】
実施例6:血尿症の猟犬(Field Dogs)におけるクラステリンレベル
健康なイヌの尿を血液の有無についてUAディップスティック(IDEXX Laboratories,Inc.社)で調べた。腎臓特異的クラステリンレベルを製造業者の取扱説明書(Biovendor Research and Diagnostic Products社)に従って市販のクラステリンEIAを用いて測定した。下に示されるように(表8)、尿に検出可能な血液がない健康なイヌはクラステリンのレベルが基準範囲(70ng/ml)内であった一方で、血液混入があったイヌ(試料5〜8)はクラステリンレベルが10〜100倍正常基準範囲を超えていた。この結果は、尿中の血液の存在が高いクラステリン測定結果をもたらし、偽陽性につながりうることを示す。
【0100】
【表8】
【0101】
実施例7:腎臓特異的クラステリン免疫アッセイの特異性
血漿から精製したイヌクラステリンに対して作製したモノクローナル抗体(IgG2a、カッパ)および小麦胚芽レクチン(WGA)を用いて腎臓特異的クラステリン免疫アッセイ(KSCI)を設計した。WGAをマイクロタイタープレートのウェルにコーティングした。モノクローナル抗体をHRPで標識した。KSCIの特異性を示すために、健康なイヌの新鮮な全血または血漿をバッファーにスパイクし、KSCIと市販のクラステリンEIA(バイオベンダー社)アッセイの両方を用いて分析した。
【0102】
図3に示されるように、クラステリンは全血でも血清でも市販のクラステリンEIAによって高濃度で検出されたが、KSCIでは検出されなかった。高い割合の健康なイヌおよびネコの尿試料に血液混入があることを考慮すると、クラステリンを正確に測定する唯一の方法は腎臓特異的クラステリン免疫アッセイを使用することである。
【0103】
実施例8:イヌゲンタマイシンモデルにおける腎臓特異的クラステリン
腎臓特異的クラステリンをイヌゲンタマイシンモデルの尿で測定した(
図4)。該モデル系では、イヌに5日間、毎日40mg/kgのゲンタマイシンを与えた。このイヌモデルでは、血清クレアチニンが試験を通してずっと本質的に変わらなかった一方で、尿中の腎臓特異的クラステリンは急速に増加し、投与終了時には、ベースラインの約5倍に達し、11日目にはベースラインの約10倍でピークとなった。このことから、活動性腎障害に関して、血清クレアチニンと比べて腎臓特異的クラステリンのほうが、より早期で且つより感度の高いマーカーであることが示された。
【0104】
実施例9:活動性腎臓障害の患者における腎臓特異的クラステリン
腎臓特異的クラステリンを炎症または虚血によって誘発された活動性腎障害で病院に受診したイヌの尿で測定した(
図5)。データは、健康な患者と活動性腎障害と診断されたものとの間の腎臓特異的クラステリンの濃度の明らかな隔たりを示す。結論として、腎臓特異的クラステリンは、感度が高く且つ特異的な活動性腎障害のマーカーである。
【0105】
実施例10:尿路感染症患者における腎臓特異的クラステリン
腎臓特異的クラステリンを尿路感染症(UTI)のネコおよびイヌで測定した(
図6)。腎臓特異的クラステリンレベルはUTI患者のサブセットで劇的に増加した。腎臓特異的クラステリンはUTIのマーカーである。
【0106】
実施例11:ネコにおける腎臓特異的クラステリン
ネコクラステリンはネコ腎臓CRFK細胞(ATCC、マナサス、バージニア州)から単離した。可溶性ネコクラステリンの分析を、SDS−PAGEウェスタンブロッティングおよびレクチンスクリーニングアレイを用いて行った。
【0107】
イヌ腎臓細胞株およびネコ腎臓細胞株(それぞれ、MDCKおよびCRFK)からの上清ならびにイヌ血漿から精製したクラステリン調製物をSDS−PAGEに流し、ニトロセルロースにブロットした。ブロットをイヌクラステリンに対して作製した抗クラステリンモノクローナル抗体でプローブした。結果(
図7)は、モノクローナル抗体はCRFKによって産生されたネコクラステリンと交差反応したことを示す。よって、モノクローナル抗体は、ツーサイト(two site)免疫アッセイ(ELISA)フォーマットでネコ腎臓クラステリンの検出に使用することができる。
【0108】
ネコの臨床試料に対するレクチンのスクリーニング
ビオチン標識レクチン(Vector Labs社)をPBST(0.01%ツイーン20(商標)(ポリソルベート))中で1μg/mlで、ストレプトアビジンでコーティングされたプレートに4℃にて一晩コーティングした。プレートを3回洗い、血漿からアフィニティー精製したネコクラステリン(1μg/ml)または1:10に希釈したネコの臨床尿を周囲温度で1時間インキュベーションした。3回洗った後、HRPで標識した、イヌクラステリンに対して作製したモノクローナル抗体(250ng/ml)を100μl加え、上記のように30分間インキュベーションした。さらに3回洗った後、100μlのTMBを加え、5分間発色させた後、100μlの1N HCLを加えて反応を止めた。吸光度を450nmで読んだ。結果を表9に示す。
【0109】
【表9】
【0110】
12個のレクチン(太字)がネコクラステリンおよび抗クラステリンモノクローナル抗体とサンドイッチを形成することができた。図に示されるように、WGAはネコクラステリンに結合する。よって、KSCIアッセイを使用してイヌもネコもクラステリンを検出することができる。
【0111】
レクチンフォーマット(format)を用いた臨床試料中の尿クラステリンの検出
地域動物病院を受診していたネコから尿を採取し、1:100に希釈し、KSCIアッセイに供した。図に示されるように、動物はアッセイの範囲の典型となり、イヌ用に開発したKSCIアッセイがネコ臨床試料と交差反応することを示す(<LOD=検出の限界未満;>ULOQ=定量の上限超)。表10を参照されたい。
【0112】
【表10】
【0113】
実施例12:ヒトにおける腎臓特異的クラステリン
付着性ヒト胎児上皮腎細胞株HEK293、イヌ腎細胞株MDCK、およびミドリサル腎上皮細胞株ベロ(ATCC、マナサス、バージニア州)を供給元の取扱説明書に従って培養した。細胞がコンフルエントな状態に達したとき、細胞を腎毒性薬物、ゲンタマイシン0.2mg/mlを用いてストレスをかけるか、40℃で加熱するか、または熱と薬物との組合せで処理するかした。上清を採り、市販のヒトクラステリンELISA(バイオベンダー社)で細胞の反応性を調べた。その結果(表11)はELISAがHEK293細胞に発現するクラステリンと反応することを示す。
【0114】
【表11】
【0115】
腎細胞株に、腎毒性薬物であるゲンタマイシン0.2mg/ml、40℃の熱、24時間、または薬物(0.2mg/ml)と熱(40℃、24時間)との組み合わせでストレスをかけた。上清を1:100に希釈し、ヒトクラステリンELISA(バイオベンダー社)を行った。
図8で下に示されるように、イヌ腎細胞対照(MDCK)で反応性は見られなかった。ミドリザル腎ベロ細胞株ではわずかな反応性が見られた。ヒト細胞株、HEK293は最も強い反応性を示した。このことから、HEK293細胞株がさまざまな条件で培養されたときにヒトクラステリンを分泌することが確かめられた。
【0116】
ヒト腎発現クラステリンと反応する抗体
ツーサイトELISA(サンドイッチELISA)を開発するために、組換えイヌクラステリンに対して作製したモノクローナルおよびポリクローナル抗イヌクラステリン抗体のライブラリーをスクリーニングしてそれらの抗体のヒトクラステリンへの結合を決定した。その結果は、組換えイヌクラステリンに対する抗クラステリン抗体の複数がヒトクラステリンに結合できることを示した。ウェスタンブロットによる確認、
図9は、ウサギ抗ベータ鎖クラステリンが、MDCK(レーン2、4)、HEK293細胞上清(レーン3)、および陽性対照組換えイヌクラステリンベータ鎖抗原(レーン5)由来のクラステリンに結合することを示す。
【0117】
ヒトクラステリンELISA
プレートを10μg/mlの精製抗ベータ鎖クラステリンポリクローナル抗体で4℃にて一晩コーティングした。プレートを3回洗い、0.1%BSAで一晩ブロックし、最後に3回洗った。プレートを真空下で2時間乾燥し、使用するまで4℃で保存した。ヒト腎細胞株およびMDCK(イヌ)対照の上清をPBSで1:10に希釈し、100μlを2つ組でウェルに入れた。上清を周囲温度で1時間振盪しながらインキュベーションした。3回洗った後、PBS中で100μlのビオチン標識レクチン(1μg/ml)を加え、上記のように1時間インキュベーションした。さらに3回洗った後、プレートをPBS中でストレプトアビジン−HRP(1:5000)と30分間インキュベーションした。最後に3回洗った後、プレートを100μl TMB基質で5分間発色させ、反応を100μlの1M HCLで止めた。吸光度を450nmで読んだ。表12を参照されたい。2つのレクチン(PSA、DBA)がヒトクラステリンおよびイヌ抗ベータ鎖ポリクローナル抗体とサンドイッチを形成することを示した。
【0118】
【表12】