特許第6948269号(P6948269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 高砂香料工業株式会社の特許一覧

特許6948269トリフェニルアミン誘導体、それを用いた電荷輸送材料及び電子写真感光体
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948269
(24)【登録日】2021年9月22日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】トリフェニルアミン誘導体、それを用いた電荷輸送材料及び電子写真感光体
(51)【国際特許分類】
   C07C 211/54 20060101AFI20210930BHJP
   C07C 217/92 20060101ALI20210930BHJP
   G03G 5/06 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   C07C211/54CSP
   C07C217/92
   G03G5/06 312
   G03G5/06 313
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-566978(P2017-566978)
(86)(22)【出願日】2017年2月8日
(86)【国際出願番号】JP2017004586
(87)【国際公開番号】WO2017138566
(87)【国際公開日】20170817
【審査請求日】2020年1月14日
(31)【優先権主張番号】特願2016-22109(P2016-22109)
(32)【優先日】2016年2月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000169466
【氏名又は名称】高砂香料工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】中村 純士
【審査官】 小堀 麻子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−114728(JP,A)
【文献】 特開2000−239236(JP,A)
【文献】 特開2005−154319(JP,A)
【文献】 特開2014−144927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 211/00
C07C 217/00
G03G 5/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1’)で表わされるリフェニルアミン誘導体。
【化2】
(式中、R1、R2、R5、R9、R12、R13、R14、およびR15はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基を表わす。ただし、R5又はR14の一方は水素ではなく、R9又はR15の一方は水素ではない。
【請求項2】
請求項に記載のトリフェニルアミン誘導体を含有する電荷輸送材料。
【請求項3】
請求項記載の電荷輸送材料を含有する電子写真感光体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は応答性の高い電子写真感光体を得るための有機光導電体としてトリフェニルアミン誘導体を提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を用いた情報処理システム機の発展には目覚ましいものがある。特に、情報をデジタル信号に変換して光によって情報記録を行なうレーザープリンターやデジタル複写機は、そのプリント品質、信頼性において向上が著しい。さらに、それらは高速化技術との融合によりフルカラー印刷が可能なレーザープリンターあるいはデジタル複写機へと応用されてきている。
【0003】
これらの電子写真方式のレーザープリンターやデジタル複写機等に使用される感光体としては、有機系の感光材料(OPC)を用いたものが、コスト、生産性及び無公害性等の理由から一般に広く応用されている。
近年では電子写真装置の高速化あるいは装置の小型化に伴う感光体の小径化(露光−現像間の短時間化)によって、電子写真感光体の電荷輸送材料に対する高速応答性がより一層重要な課題となっている。
【0004】
電荷輸送材料としては、テトラフェニルブタジエン誘導体、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン誘導体及びスチルベン誘導体などが用いられている。さらにスチルベン誘導体より共役系を伸ばした4,4−ジフェニル−1,3−ブタジエニル基を有するトリフェニルアミン誘導体(例えば、4,4’,4’’−トリス(4’’’,4’’’−ジフェニル−1’’’,3’’’−ブタジエニル)トリフェニルアミン(特開平8−295655号公報)および4,4’,4’’−トリス((4’’’−(4’’’’,4’’’’−ジフェニル−1’’’’,3’’’’− ブタジエニル)スチリル)フェニル)アミン(特開2014−144927号公報))などは、高い電荷輸送能を示している。同様に、ブタジエニル誘導体の特許が多く出願されている(特開平9−34142号公報、特開2004−252066号公報、特開2005−289877号公報および特開2008−63230号公報)。また、ジスチリルベンゼンを有するジアミン誘導体の特許も出願されている(特開平3−149560号公報および特開2000−66419号公報)。
【0005】
一般的な電荷輸送層はこれら低分子電荷輸送材料をバインダー樹脂中に分子分散させた約10〜30μm程度の固溶体膜である。また、このバインダー樹脂として、ほとんどの電子写真感光体においてビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、もしくはこれらと他の樹脂との共重合体が用いられている。
【0006】
電荷輸送層を製膜するには、上記のバインダー樹脂と低分子電荷輸送材料を有機溶剤に溶解して製膜を行う。しかしながら、従来の低分子電荷輸送材料では、バインダー樹脂と有機溶剤に十分に溶解性があるとは言いがたかった。さらに、たとえ溶解性があって製膜できたとしても、従来の低分子電荷輸送材料を用いた電荷輸送層はキャリア移動度が十分高いものではなかった。
【0007】
したがって、高感度で残留電位が少ない優れた電子写真感光体特性を有し、電荷輸送層の製膜工程が容易で、さらに膜の状態が安定な電子写真感光体が得られていたとはいいがたいものであった。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、電子写真感光体の電荷輸送材料として従来から望まれる特性を十分に満足する、すなわちバインダー樹脂への溶解性がよく、安定な高濃度の有機薄膜を形成でき、さらに応答性の高い、すなわちキャリア移動度が高い電荷輸送材料およびこの材料を用いた電子写真感光体を提供することである。
【0009】
このような現状において、本発明者らは様々な化合物について鋭意研究を行った結果、ジスチリルベンゼン骨格を有するジアミン誘導体において、さらにジフェニルブタジエニルスチリル骨格の置換基を有する次の一般式(1)で表される新規なトリフェニルアミン誘導体が、上記課題を解決できること、即ち、一般式(1)のトリフェニルアミン誘導体が、バインダー樹脂への溶解性が良く、結晶の析出やピンホールの生成が起こらず、高いキャリア移動度を発現でき、また、これを使用した感光体は高感度にして残留電位が低いことを見出し、本発明を完成した。
【化1】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、およびR15は、は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基を表わす。)
【0010】
すなわち、本発明は、以下を提供する。
[1]一般式(1)で表わされるトリフェニルアミン誘導体。
【化2】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、およびR15は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアルコキシ基を表わす。)
[2] 一般式(1’)で表わされる[1]記載のトリフェニルアミン誘導体。
【化3】
(式中、R1、R2、R5、R9、R12、R13、R14、およびR15は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基を表わす。)
[3][1]または[2]に記載のトリフェニルアミン誘導体を含有する電荷輸送材料。
[4][3]に記載の電荷輸送材料を含有する電子写真感光体。
【0011】
本発明の前記一般式(1)で表わされる新規なトリフェニルアミン誘導体は、有機エレクトロルミネッセンス、有機トランジスタ、有機太陽電池などの導電性素材として有用であり、とくに電子写真用感光体における素材として有用である。さらに、本発明のトリフェニルアミン誘導体は、有機顔料あるいは無機顔料を電荷発生材料とする、電子写真感光体における電荷輸送材料として極めて有用であり、電子写真感光体としたときに高いキャリア移動度を発現することができ、高感度でありかつ残留電位が低いといった特性もあり、工業的に優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明のトリフェニルアミン誘導体は一般式(1)で表される。
【化4】
一般式(1)中のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、およびR15は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアルコキシ基を表わす。
【0013】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、およびR15における置換もしくは無置換のアルキル基、および置換もしくは無置換のアルコキシ基について説明する。
【0014】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。好ましくは炭素数1〜3のアルキル基、さらに好ましくはメチル基が挙げられる。
【0015】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられる。好ましくは炭素数1〜3のアルコキシ基、さらに好ましくはメトキシ基が挙げられる。
【0016】
アルキル基およびアルコキシ基における置換基としては、アルコキシ基、フェニル基、フェニルオキシ基などが挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられる。
【0017】
とくに、R1、R2、R5、R9、R12、R13、R14、およびR15は、水素原子、メチル基、またはメトキシ基が好ましく、R3、R4、R6、R7、R8、R10およびR11は、水素原子が好ましい。
【0018】
一般式(1)で表されるトリフェニルアミン誘導体は、好ましくは一般式(1’)で表されるトリフェニルアミン誘導体である。
【化5】
(式中、R1、R2、R5、R9、R12、R13、R14、およびR15は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基を表わす。)
一般式(1’)中、R1、R2、R5、R9、R12、R13、R14、およびR15の具体的な説明は、上記説明したとおりである。
【0019】
一般式(1)で表されるトリフェニルアミン誘導体は、複数の二重結合が存在するなかでトランス型が好ましく、全てトランス型がより好ましいが、これら二重結合の幾何異性に関しては限定するものではなく、シス型との混合体でもよい。
【0020】
一般式(1)の好ましい例として以下の化合物を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化6】




【0021】
これらの中でも、化合物(1−1)、(1−4)、(1−7)、(1−9)、(1−13)、および(1−17)が好ましい。
【0022】
本発明の一般式(1)で表されるトリフェニルアミン誘導体は、例えば次のようにして合成することができるが、これらに限定されるものではない。
本発明の一般式(1)
【化7】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、およびR15は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアルコキシ基を表わす。)は、特開2014−144927号公報記載の方法により得られる一般式(2)で表わされるハロゲン化合物を経由して合成する事ができる。
【化8】
(式中、Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を表わす。)
【0023】
以下、具体的に説明する。
スキーム
【化9】

(式中、X’は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を表わす。)
スキーム中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、およびR15は、一般式(1)の定義と同じである。
【0024】
Buchwaldらの方法(J. Org. Chem., 2000, 65, 5327.)に準じて、アニリン誘導体(3)をパラジウム錯体および塩基の存在下において、またはPdのような金属とリン原子を含む配位子および塩基の存在下において、一般式(2)で表されるハロゲン化合物と反応させることにより一般式(4)で表わされる中間体を得ることができる。さらにビス(ハロスチリル)ベンゼン化合物(5)と反応させることにより本発明の化合物である一般式(1)を合成することができる。
【0025】
上記説明した合成法で使用される塩基としては、水酸化ナトリウム、ナトリウムアミド、ナトリウムメトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド、カリウム−tert−ブトキシド等の金属アルコキシドなどを挙げることができる。ただし、塩基はこれらに限定されるものではない。
【0026】
上記説明した合成法で使用される溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の炭化水素、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒、又はこれらの溶媒の混合物を用いることができる。ただし、溶媒はこれらに限定されるものではない。
【0027】
上記説明した合成法で使用されるパラジウム錯体としては、PdCl2、Pd(OAc)2、[PdCl(allyl)]2、Pd2(dba)3などを挙げることができる。ここで、「Ac」はアセチル基を、「dba」はジベンジリデンアセトンを表す。ただし、パラジウム錯体はこれらに限定されるものではない。
【0028】
上記説明した合成法で使用されるリン原子を含む配位子としては、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィンなどのトリアリールホスフィン系、トリ−t−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン系、2−(ジシクロヘキシル)ホスフィノビフェニル、2−(ジ−t−ブチルホスフィノ)ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’,4’,6’−トリ−イソプロピル−1,1’−ビフェニル、2−(ジ−t−ブチルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニルなどの2−ホスフィノビフェニル系、1,1−ジフェニル−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロペン、1,1−ジフェニル−2−(ジ−t−ブチルホスフィノ)プロペンなどのオレフィン置換ホスフィン系、(ジ−t−ブチル)(1−メチル−2,2−ジフェニルシクロプロピル)ホスフィン、(ジシクロヘキシル)(1−メチル−2,2−ジフェニルシクロプロピル)ホスフィンなどのシクロプロパン環置換ホスフィン系の配位子を挙げることができる。ただし、リン原子を含む配位子はこれらに限定されるものではない。
本発明の一般式(1)で表わされる新規なトリフェニルアミン誘導体の合成法としては、上記カップリング反応に限定されるものではない。即ち、ウルマン反応等で製造することができる。
【0029】
本発明の一般式(1)で表わされる新規なトリフェニルアミン誘導体は、有機トランジスタ、有機太陽電池などの導電性素材として有用であり、とくに電子写真用感光体における光導電性素材として有用である。
【0030】
本発明の電子写真感光体としては、具体的には導電性支持体上に、感光層が電荷発生層と電荷輸送層に機能分離された、いわゆる機能分離型積層電子写真感光体と、導電性支持体上に電荷発生剤及び電荷輸送剤を含有する単一の感光層を設けた、いわゆる単層型電子写真感光体が挙げられる。
【0031】
機能分離型積層電子写真感光体において、本発明の一般式(1)で表されるトリフェニルアミン誘導体を電荷輸送剤として用いた電荷輸送層は、本発明の一般式(1)で表されるトリフェニルアミン誘導体をそのまま導電性支持体または電荷発生層に蒸着させるか、本発明の一般式(1)で表されるトリフェニルアミン誘導体とバインダー樹脂とを適当な溶剤に溶解させた溶液を導電性支持体または電荷発生層に塗布して乾燥させることにより形成される。
【0032】
一方、単層型電子写真感光体においては、電荷発生剤および本発明の一般式(1)で表されるトリフェニルアミン誘導体等をバインダー樹脂とともに適当な溶剤に溶解または分散させた溶液を導電性支持体に塗布して乾燥させることにより形成される。尚、単層型電子写真感光体中には、必要に応じて電子輸送材料を含有させても良い。
【0033】
バインダー樹脂としては、例えばポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアミド、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリアリレート(芳香族ポリエステル)樹脂、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリスチレンあるいはこれらの共重合体等の絶縁性ポリマーを挙げることができる。また、これらの絶縁性ポリマーの他に、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセンやポリビニレン等の有機光導電性ポリマーも使用できる。これらのバインダー樹脂の中で、ポリアリレート樹脂またはポリカーボネートを用いるのが特に好ましい。
【0034】
好適に使用できるポリアリレート樹脂としては、例えばユニチカ株式会社製の品番Uシリーズもしくは共重合ポリアリレート樹脂などがあげられる。好適に使用できるポリカーボネートとしては、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)のポリカーボネート樹脂(例えば、三菱ガス化学株式会社製のユーピロンEシリーズ)、ビスフェノールZ(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン)のポリカーボネート樹脂(例えば、帝人化成社製のパンライトシリーズ、三菱ガス化学株式会社製のユーピロンZシリーズ)、特開平4−179961号公報に開示されているビスフェノール/ビフェノール共重合ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
【0035】
また、上述したポリカーボネートの他にも特開平6−214412号公報及び特開平6−222581号公報に開示されているポリカーボネートを使用することができる。
さらに特開平5−297620号公報及び特開平05−158249公報に開示されている滑り性や耐摩耗性が優れるバインダー樹脂としてポリシロキサン共重合ポリカーボネート樹脂も使用することができる。
【0036】
これらのバインダー樹脂と本発明の一般式(1)で表されるトリフェニルアミン誘導体との配合割合は、バインダー樹脂100重量部当たり、本発明の一般式(1)で表されるトリフェニルアミン誘導体を含有する全ての電荷輸送物質を1〜1000重量部、好ましくは30〜500重量部、さらに好ましくは40〜200重量部添加することができる。さらに、全ての電荷輸送物質の全重量に対して、本発明の一般式(1)で表されるトリフェニルアミン誘導体を0.1〜100重量%、好ましくは1〜100重量%、さらに好ましくは10〜100重量%添加することができる。
【0037】
用いる溶剤としては、特に限定されないが、有機溶剤が使用できる。有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロエチレン、四塩化炭素、トリクロロエチレン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素、あるいはベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族化合物等が挙げられ、これらの溶媒を単独で、またはこれらの混合物の形で用いることができる。
【0038】
本発明の感光体に用いられる導電性支持体としては、銅、アルミニウム、銀、鉄、亜鉛、ニッケル等の金属や合金の箔ないしは板をシート状またはドラム状にしたものが使用される。あるいは、これらの金属をプラスチックのフィルムや円筒等に真空蒸着、電解メッキしたもの、あるいは導電性ポリマー、酸化インジウム、酸化スズ等の導電性化合物の層をガラス、紙、あるいはプラスチックフィルム等の支持体上に塗布もしくは蒸着によって設けられたものが用いられる。
【0039】
塗布は、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、カーテンコーティング法等のコーティング法を用いて行うことができる。
【0040】
乾燥は、室温における乾燥の後、加熱乾燥する方法が好ましい。加熱乾燥は30〜200℃の温度で5分〜5時間の範囲で無風または送風下で行うことが好ましい。
【0041】
さらに、本発明の電子写真感光体においては、電荷輸送材料として本発明の一般式(1)で表されるトリフェニルアミン誘導体の他に必要に応じて他の電荷輸送材料及び種々の添加剤を含有させて用いることができる。他の電荷輸送材料としては、例えば米国特許第4150987号、特開昭61−23154号等に記載されているヒドラゾン化合物、特公昭58−32372号等に記載されているトリフェニルアミンダイマー、米国特許第3873312号等に記載されているジスチリル化合物、置換もしくは無置換のテトラフェニルブタジエン系化合物、α−フェニルスチルベン、置換もしくは無置換のポリビニルカルバゾール、置換基もしくは無置換のトリフェニルアミン、置換基もしくは無置換のトリフェニルメタン等が挙げられる。
さらに2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、有機ポリシラン化合物、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物等の含窒素環式化合物、縮合多環式化合物等が挙げられる。
電荷輸送材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0042】
種々の添加剤としては、例えばビフェニレン系化合物(例えば、特開平6‐332206号公報に開示されたもの)、m−ターフェニル、ジブチルフタレート等の可塑剤、シリコーンオイル、グラフト型シリコーンポリマー、各種フルオロカーボン類等の表面潤滑剤、ジシアノビニル化合物、カルバゾール誘導体等の電位安定剤、2−tert‐ブチル−4−メトキシフェノール、2,6−ジ−tert‐ブチル−4−メチルフェノール等のモノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等のアミン系酸化防止剤、サリチル酸系酸化防止剤、トコフェロール等を挙げることができる。
【0043】
本発明の電子写真感光体が機能分離型積層電子写真感光体である場合、得られる電荷輸送層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは5〜50μmであり、より好ましくは10〜30μmである。上述のようにして得られる電荷輸送層は、電荷発生層と電気的に接続されることにより、電界の存在下で電荷発生層から注入されたキャリアを受け取ると共に、これらのキャリアを、電荷輸送層を横切って電荷発生層と接している面とは反対の面まで輸送する機能を有する。この際、この電荷輸送層は電荷発生層の上層に積層されていても良く、また電荷発生層の下層に積層されていても良いが、電荷発生層の上層に積層されていることが望ましい。このように作製した感光層上には、必要に応じて保護層を塗布・形成することができる。また、導電性支持体と感光層との間にバリアー機能と接着機能を有する下引き層を設けることもできる。下引き層を形成する材料としては、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、ガゼイン、エチレン−アクリル酸共重合体、ナイロンなどのポリアミド、ポリウレタン、ゼラチン、酸化アルミニウムなどが挙げられる。下引き層の膜厚は、好ましくは0.1〜5μmであり、より好ましくは0.5〜3μmである。
【0044】
本発明の電子写真感光体が単層型電子写真感光体である場合、得られる感光層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは5〜100μmであり、より好ましくは10〜50μmである。上述のようにして得られる感光層は、電界の存在下で電荷発生剤から発生した電荷を、導電性支持体および表面に輸送する機能を有する。このように作製した感光層上には、必要に応じて保護層を塗布・形成することができる。また、導電性支持体と感光層との間にバリアー機能と接着機能を有する下引き層を設けることもできる。下引き層を形成する材料としては、積層電子写真感光体について説明したものと同様のものが使用できる。
【0045】
電荷発生層としては、さまざまな有機顔料が使用できる。
有機顔料としては、シーアイピグメントブルー25(カラーインデックスCI 21180)、シーアイピグメントレッド41(CI 21200)、シーアイアシッドレッド52(CI 45100)、シーアイベーシックレッド3(CI 45210)、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−95033号公報)、ジスチリルベンゼン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−133445号公報)、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−132347号公報)、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−21728号公報)、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−12742号公報)、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−22834号公報)、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−17733号公報)、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−2129号公報)、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−14967号公報)、ベンズアントロン骨格を有するアゾ顔料などのアゾ顔料などが挙げられる。さらには、シーアイピグメントブルー16(CI 74100)、Y型オキソチタニウムフタロシアニン(特開昭64−17066号公報)、A(β)型オキソチタニウムフタロシアニン、B(α)型オキソチタニウムフタロシアニン、I型オキソチタニウムフタロシアニン(特開平11−21466号公報)、II型クロロガリウムフタロシアニン(飯島他,日本化学会第67春季年回,1B4,04(1994))、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン(大門他,日本化学会第67春季年回,1B4,05(1994))、X型無金属フタロシアニン(米国特許第3816118号)などのフタロシアニン系顔料、シーアイバットブラウン5(CI 73410)、シーアイバットダイ(CI 73030)などのインジコ系顔料、アルゴスカーレットB(バイエル社製)、インタンスレンスカーレットR(バイエル社製)などのペリレン顔料などが挙げられる。なお、これらの材料は、単独あるいは2種類以上が併用されても良い。
また、セレン、セレン−テルル、硫化カドミウム、α−シリコン等の無機顔料も使用できる。
これら以外の電荷発生剤でも、光を吸収し高い効率で電荷を発生する材料であれば、いずれの材料でも使用することができる。
【0046】
以上のようにして本発明の一般式(1)で表されるトリフェニルアミン誘導体を含有した電子写真感光体を得ることができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中において用いる測定機器及び測定条件を以下に示す。
(1)1H−NMR機器;ブルッカー社製、DRX−500型装置(500MHz)
内部標準物質;テトラメチルシラン
重クロロホルム又中で測定
(2)質量分析機器;日本電子株式会社製、JMS−T100GCV
【0048】
(実施例1)
化合物(1−1)の合成
窒素雰囲気下、キシレン40mlに、4−(4’−(4’’,4’’−ジフェニル−1’’,3’’−ブタジエニル)スチリル)クロロベンゼン8.38g(20mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド2.4g(25mmol)、p−トルイジン2.1g(20mmol)、[PdCl(allyl)]23.7mg(0.010mmol)、および1,1−ジフェニル−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロペン16mg(0.040mmol)を加え、100℃に加熱した。3時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。水洗を行った後、濃縮を行ない、これをトルエン、メタノール溶媒にて再結晶操作を行なう事により、黄色固体8.0gを得た。このうち7.5gをキシレン40mlと混ぜ、さらにナトリウム−tert−ブトキシド1.8g(19mmol)、1,4−ビス(4−クロロスチリル)ベンゼン2.6g(7.5mmol)、[PdCl(allyl)]22.7mg(0.008mmol)、および1,1−ジフェニル−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロペン12mg(0.030mmol)を加え、120℃に加熱した。8時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。水洗を行った後、濃縮を行ない、これをトルエン、酢酸エチル溶媒にて再結晶操作を行なう事により、黄色固体5.0g(化合物1−1)を得た。収率は43%であった。
1H NMR(CDCl3):δ;2.33(s,6H)、6.69 − 6.76(m,2H)、6.86 − 7.16(m,30H)、7.23 − 7.32(m,16H)、7.35 − 7.45(m,22H).
FD−MS([M]+): found m/z 1256.6032 [C96H76N2]+ (calculated;1256.6008, 1.87 ppm)
mp 178−180℃
【0049】
(実施例2)
化合物(1−4)の合成
窒素雰囲気下、キシレン40mlに、4−(4’−(4’’,4’’−ジフェニル−1’’,3’’−ブタジエニル)スチリル)クロロベンゼン5.2g(12mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド2.9g(30mmol)、アニリン1.1g(12mmol)、[PdCl(allyl)]24.4mg(0.012mmol)、および1,1−ジフェニル−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロペン19mg(0.048mmol)を加え、100℃に加熱した。2時間攪拌後、1,4−ビス(4−クロロスチリル)ベンゼン2.1g(6.0mmol)を加え、さらに110℃に加熱した。2時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。水洗を行った後、濃縮を行ない、これをトルエン、酢酸エチル溶媒にて再結晶操作を行なう事により、黄色固体5.3g(化合物1−4)を得た。収率は72%であった。
1H NMR(CDCl3):δ;6.69 − 6.76(m,2H)、6.89 − 7.13(m,30H)、7.23 − 7.32(m,22H)、7.36 − 7.45(m,18H)、7.47(s,4H).
FD−MS([M]+): found m/z 1228.5647 [C94H72N2]+ (calculated;1228.5695, −3.95 ppm)
mp 162−164℃
【0050】
(実施例3)
化合物(1−7)の合成
窒素雰囲気下、キシレン40mlに、4−(4’−(4’’,4’’−ジフェニル−1’’,3’’−ブタジエニル)スチリル)クロロベンゼン6.3g(15mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド1.8g(19mmol)、2,4−ジメチルアニリン2.0g(17mmol)、[PdCl(allyl)]25.5mg(0.015mmol)、および1,1−ジフェニル−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロペン23mg(0.060mmol)を加え、100℃に加熱した。2時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。水洗を行った後、濃縮を行ない、これをトルエン、メタノール溶媒にて再結晶操作を行なう事により、黄色固体5.3gを得た。このうち5.2gをキシレン40mlと混ぜ、さらにナトリウム−tert−ブトキシド1.2g(13mmol)、1,4−ビス(4−クロロスチリル)ベンゼン1.8g(5.0mmol)、[PdCl(allyl)]21.8mg(0.005mmol)、および1,1−ジフェニル−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロペン7.8mg(0.020mmol)を加え、110℃に加熱した。4時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。水洗を行った後、濃縮を行ない、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて不純物を除いたところ、黄色固体(化合物(1−7))4.5gを得た。収率は48%であった。
1H NMR(CDCl3):δ;2.00(s,6H)、2.35(s,6H)、6.69 − 6.76(m,2H)、6.89 − 7.08(m,26H)、7.15 − 7.43(m,36H)、7.44(s,4H).
FD−MS([M]+): found m/z 1284.6371 [C98H88N2]+ (calculated;1284.6321, 3.85 ppm)
mp 161−163℃
【0051】
(実施例4)
化合物(1−9)の合成
窒素雰囲気下、キシレン40mlに、4−(4’−(4’’,4’’−ジフェニル−1’’,3’’−ブタジエニル)スチリル)クロロベンゼン8.4g(20mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド2.4g(25mmol)、p−メトキシアニリン2.5g(20mmol)、[PdCl(allyl)]23.7mg(0.010mmol)、および1,1−ジフェニル−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロペン16mg(0.040mmol)を加え、100℃に加熱した。3時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。水洗を行った後、濃縮を行ない、これをトルエン、メタノール溶媒にて再結晶操作を行なう事により、黄色固体5.6gを得た。このうち5.2gをキシレン40mlと混ぜ、さらにナトリウム−tert−ブトキシド1.2g(13mmol)、1,4−ビス(4−クロロスチリル)ベンゼン1.8g(5.0mmol)、[PdCl(allyl)]23.6mg(0.010mmol)、および1,1−ジフェニル−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロペン16mg(0.040mmol)を加え、120℃に加熱した。4時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。水洗を行った後、濃縮を行ない、これをトルエン、酢酸エチル溶媒にて再結晶操作を行なう事により、黄色固体4.7g(化合物1−9)を得た。収率は41%であった。
1H NMR(CDCl3):δ;3.81(s,6H)、6.69 − 6.76(m,2H)、6.84 − 7.11(m,28H)、7.23 − 7.33(m,18H)、7.34 − 7.40(m,14H)、7.41− 7.46(m,8H).
FD−MS([M]+): found m/z 1288.5935 [C96H76N2O2]+ (calculated;1288.5907, 2.18 ppm)
mp 222−224℃
【0052】
(実施例5)
化合物(1−13)の合成
窒素雰囲気下、キシレン40mlに、4−(4’−(4’’,4’’−ビス(4’’’−メチルフェニル)−1’’,3’’−ブタジエニル)スチリル)クロロベンゼン9.2g(21mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド4.8g(50mmol)、p−トルイジン2.2g(20mmol)、[PdCl(allyl)]23.7mg(0.010mmol)、および1,1−ジフェニル−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロペン16mg(0.040mmol)を加え、100℃に加熱した。4時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。水洗を行った後、濃縮を行ない、これをトルエン、メタノール溶媒にて再結晶操作を行なう事により、黄色固体8.6gを得た。このうち8.4gをキシレン60mlと混ぜ、さらにナトリウム−tert−ブトキシド1.9g(20mmol)、1,4−ビス(4−クロロスチリル)ベンゼン2.8g(8.0mmol)、[PdCl(allyl)]22.9mg(0.008mmol)、および1,1−ジフェニル−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロペン13mg(0.032mmol)を加え、120℃に加熱した。4時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。水洗を行った後、濃縮を行ない、これをトルエン、酢酸エチル溶媒にて再結晶操作を行なう事により、黄色固体9.5g(化合物1−13)を得た。収率は61%であった。
1H NMR(CDCl3):δ;2.33(s,6H)、2.34(s,6H)、2.43(s,6H)、6.69(d,J=15.3Hz,2H)、6.82(d,J=11.1Hz,2H)、6.90 - 7.08(m,22H)、7.10(d,J=8.6Hz,8H)7.16 − 7.24(m,12H)、7.28(d,J=8.4Hz,4H)、7.35 − 7.39(m,12H)、7.46(s,4H).
FD−MS([M]+): found m/z 1312.6634 [C100H84N2]+ (calculated;1312.6523, −8.49 ppm)
mp 170−172℃
【0053】
(実施例6)
化合物(1−17)の合成
窒素雰囲気下、キシレン40mlに、4−(4’−(4’’,4’’−ビス(4’’’−メチルフェニル)−1’’,3’’−ブタジエニル)スチリル)クロロベンゼン8.9g(20mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド2.4g(25mmol)、2,4−ジメチルアニリン2.7g(20mmol)、[PdCl(allyl)]27.3mg(0.020mmol)、および1,1−ジフェニル−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロペン31mg(0.080mmol)を加え、110℃に加熱した。3時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。水洗を行った後、濃縮を行ない、これをトルエン、メタノール溶媒にて再結晶操作を行なう事により、黄色固体8.5gを得た。このうち6.5gをキシレン40mlと混ぜ、さらにナトリウム−tert−ブトキシド1.4g(15mmol)、1,4−ビス(4−クロロスチリル)ベンゼン2.1g(6.0mmol)、[PdCl(allyl)]24.4mg(0.012mmol)、および1,1−ジフェニル−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロペン19mg(0.048mmol)を加え、120℃に加熱した。7時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。水洗を行った後、濃縮を行ない、これをトルエン、酢酸エチル溶媒にて再結晶操作を行なう事により、黄色固体5.0g(化合物1−17)を得た。収率は50%であった。
1H NMR(CDCl3):δ;2.00(s,6H)、2.34(s,6H)、2.35(s,6H)、2.43(s,6H)、6.68(d,J=15.3Hz,2H)、6.82(d,J=11.1Hz,2H)、6.90 - 7.23(m,40H)、7.27(d,J=8.4Hz,4H)7.33 − 7.38(m,12H)、7.44(s,4H).
FD−MS([M]+): found m/z 1340.6928 [C102H88N2]+ (calculated;1340.6947, −1.45 ppm)mp 255−257℃
【0054】
(実施例7)
バインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂「TS−2020」(帝人化成株式会社製)15重量部と実施例1で得られた化合物(1−1)15重量部をテトラヒドロフラン85重量部中で混合溶解させた。この溶液を、ドクターブレードで、ポリエチレンフタレート(PET)フィルム上にアルミを蒸着したシート上に塗布し、80℃で3時間乾燥させて電荷輸送層を形成した(厚み:約18μm)。
この電荷輸送層上に半透明金電極を蒸着して電荷キャリア移動度を測定した。キャリア移動度の測定は、光源としてパルス半値幅0.9sec、波長337nmの窒素ガスレーザーを用い、タイム−オブ−フライト法(田中聡明、山口康浩、横山正明:電子写真、29、366(1990))にて行なった。25℃、25V/μmでの測定結果を表1に示す。
【0055】
(実施例8〜10)
実施例7と同様に、実施例3で得られた化合物(1−7)、実施例4で得られた化合物(1−9)および実施例6で得られた化合物(1−17)を用いて電荷輸送層を作成し、電荷キャリア移動度を測定した。この結果を表1に示す。
【0056】
(比較例1および2)
実施例7と同様に、比較化合物(1)または比較化合物(2)を用いて電荷輸送層を作成し、電荷キャリア移動度を測定した。この結果を表1に示す。
なお、比較化合物(1)は特公平7−21646号公報記載の方法により合成した。比較化合物(2)は文献(J.Org.Chem.,2000,65,5327)記載の方法により合成した。
【化10】
【0057】
【表1】
【0058】
表1から明らかなように、本発明の化合物は、一般に広く電子写真感光体として使用されている化合物(比較化合物(1)および比較化合物(2))よりも電荷キャリア移動度が大きく、大きなホール輸送能を有していることがわかる。
【0059】
(実施例11)
ポリアミド樹脂「ファインレジンFR−104」(株式会社鉛市製)0.375重量部をメタノールに溶解させて全体を25重量部とした溶液を、アルミニウム板上に塗布し、105℃で1時間乾燥して、下引き層を形成した。
ブチラール樹脂「エスレックBH−3」(積水化学工業株式会社製)15重量部を、シクロヘキサノン750重量部に溶解させて得たバインダー溶液に、フタロシアニン「Fastogen Blue 8120BS」(大日本インキ化学工業株式会社製)22.5重量部を加え、ガラスビーズと共に4日間振動ミルを用いて分散させた。この分散液を、下引き層上に塗布し、105℃で1時間乾燥して、電荷発生層を形成した。
バインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂「ユーピロンZ−200」(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製)12重量部、実施例1で得られた化合物(1−1)8重量部、テトラヒドロフランを加えて100重量部とし、混合溶解させた。この溶液を、ドクターブレードで電荷発生層上に塗布し、80℃で2時間乾燥させて電荷輸送層を形成した。得られた電荷発生層と電荷輸送層を用いて、機能分離型積層型の電子写真感光体を得た。
【0060】
このようにして得られた電子写真感光体の感光体特性を静電記録試験装置「EPA−8300A」(株式会社川口電機製作所製)を用いてスタティック方式により測定した。すなわち、電子写真感光体を−6kvのコロナ放電を行なって帯電せしめ、表面電位V0(単位は−v)を測定し、これを暗所で5秒間保持して(表面電位Vi(単位は−v))暗減衰保持率L/D(Vi/V0(単位は%))を求めた。この後、0.2μWの780nmのレーザー光を照射し、表面電位Viを半減させるのに必要な露光量すなわち半減露光量E1/2(mJ/cm2)および表面電位Viを1/6まで減少させるのに必要な露光量E1/6(mJ/cm2)を求め、続いて5秒間照射後の表面残留電位Vr(単位は−v)を求めた。この結果を表2に示す。
【0061】
(実施例12および13)
化合物(1−9)および化合物(1−17)を用いて電荷輸送層を作製したこと以外は実施例11と同様にして電子写真感光体を作製し、感光体特性を測定した。この結果を表2に示す。
【0062】
(比較例3および4)
比較化合物(3)(高砂香料工業株式会社製、「CTC−191」)または比較化合物(4)(高砂香料工業株式会社製、「CT−4」)を用いて電荷輸送層を作製したこと以外は実施例11と同様にして電子写真感光体を作製し、感光体特性を測定した。この結果を表2に示す。
【0063】
【化11】
比較化合物(3) 比較化合物(4)
【0064】
【表2】
【0065】
表2から明らかなように、本発明の化合物を用いた電子写真感光体の方が、比較化合物(3)および比較化合物(4)を用いた電子写真感光体よりも感度が良く(E1/2値およびE1/6値が小さい)、残留電位(Vr)が小さいことがわかる。
【0066】
(実施例14)
25℃において化合物(1−1)をテトラヒドロフラン1gに溶解させた。完全に溶解する化合物の重量を第3表に示す。
【0067】
(実施例15および16)
実施例14と同様に、化合物(1−4)または(1−9)を用いて実験を行なった。結果を第4表に示す。
【0068】
(比較例5)
実施例14と同様に、特開平3−149560記載の化合物である比較化合物(5)を用いて実験を行なった。結果を第3表に示す。
【化12】
比較化合物(5)
【0069】
【表3】
【0070】
表3から明らかなように、本発明の化合物は溶解性に優れており、高濃度の有機薄膜を形成する事が出来る。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の一般式(1)で表されるトリフェニルアミン誘導体は、電荷輸送材料として有用であり、さらには、高いキャリア移動度を発現し、高感度であり、かつ残留電位の低いといった良好な機械的特性を有する電子写真感光体を提供することができ、工業的に優れたものである。
本発明の一般式(1)で表されるトリフェニルアミン誘導体は、高い電荷輸送能を有する事から、有機エレクトロルミネッセンス、有機トランジスタ、有機太陽電池等にも利用可能である。