【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中において用いる測定機器及び測定条件を以下に示す。
(1)
1H−NMR機器;ブルッカー社製、DRX−500型装置(500MHz)
内部標準物質;テトラメチルシラン
重クロロホルム又中で測定
(2)質量分析機器;日本電子株式会社製、JMS−T100GCV
【0048】
(実施例1)
化合物(1−1)の合成
窒素雰囲気下、キシレン40mlに、4−(4’−(4’’,4’’−ジフェニル−1’’,3’’−ブタジエニル)スチリル)クロロベンゼン8.38g(20mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド2.4g(25mmol)、p−トルイジン2.1g(20mmol)、[PdCl(allyl)]
23.7mg(0.010mmol)、および1,1−ジフェニル−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロペン16mg(0.040mmol)を加え、100℃に加熱した。3時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。水洗を行った後、濃縮を行ない、これをトルエン、メタノール溶媒にて再結晶操作を行なう事により、黄色固体8.0gを得た。このうち7.5gをキシレン40mlと混ぜ、さらにナトリウム−tert−ブトキシド1.8g(19mmol)、1,4−ビス(4−クロロスチリル)ベンゼン2.6g(7.5mmol)、[PdCl(allyl)]
22.7mg(0.008mmol)、および1,1−ジフェニル−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロペン12mg(0.030mmol)を加え、120℃に加熱した。8時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。水洗を行った後、濃縮を行ない、これをトルエン、酢酸エチル溶媒にて再結晶操作を行なう事により、黄色固体5.0g(化合物1−1)を得た。収率は43%であった。
1H NMR(CDCl
3):δ;2.33(s,6H)、6.69 − 6.76(m,2H)、6.86 − 7.16(m,30H)、7.23 − 7.32(m,16H)、7.35 − 7.45(m,22H).
FD−MS([M]+): found m/z 1256.6032 [C96H76N2]+ (calculated;1256.6008, 1.87 ppm)
mp 178−180℃
【0049】
(実施例2)
化合物(1−4)の合成
窒素雰囲気下、キシレン40mlに、4−(4’−(4’’,4’’−ジフェニル−1’’,3’’−ブタジエニル)スチリル)クロロベンゼン5.2g(12mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド2.9g(30mmol)、アニリン1.1g(12mmol)、[PdCl(allyl)]
24.4mg(0.012mmol)、および1,1−ジフェニル−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロペン19mg(0.048mmol)を加え、100℃に加熱した。2時間攪拌後、1,4−ビス(4−クロロスチリル)ベンゼン2.1g(6.0mmol)を加え、さらに110℃に加熱した。2時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。水洗を行った後、濃縮を行ない、これをトルエン、酢酸エチル溶媒にて再結晶操作を行なう事により、黄色固体5.3g(化合物1−4)を得た。収率は72%であった。
1H NMR(CDCl
3):δ;6.69 − 6.76(m,2H)、6.89 − 7.13(m,30H)、7.23 − 7.32(m,22H)、7.36 − 7.45(m,18H)、7.47(s,4H).
FD−MS([M]+): found m/z 1228.5647 [C94H72N2]+ (calculated;1228.5695, −3.95 ppm)
mp 162−164℃
【0050】
(実施例3)
化合物(1−7)の合成
窒素雰囲気下、キシレン40mlに、4−(4’−(4’’,4’’−ジフェニル−1’’,3’’−ブタジエニル)スチリル)クロロベンゼン6.3g(15mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド1.8g(19mmol)、2,4−ジメチルアニリン2.0g(17mmol)、[PdCl(allyl)]
25.5mg(0.015mmol)、および1,1−ジフェニル−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロペン23mg(0.060mmol)を加え、100℃に加熱した。2時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。水洗を行った後、濃縮を行ない、これをトルエン、メタノール溶媒にて再結晶操作を行なう事により、黄色固体5.3gを得た。このうち5.2gをキシレン40mlと混ぜ、さらにナトリウム−tert−ブトキシド1.2g(13mmol)、1,4−ビス(4−クロロスチリル)ベンゼン1.8g(5.0mmol)、[PdCl(allyl)]
21.8mg(0.005mmol)、および1,1−ジフェニル−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロペン7.8mg(0.020mmol)を加え、110℃に加熱した。4時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。水洗を行った後、濃縮を行ない、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて不純物を除いたところ、黄色固体(化合物(1−7))4.5gを得た。収率は48%であった。
1H NMR(CDCl
3):δ;2.00(s,6H)、2.35(s,6H)、6.69 − 6.76(m,2H)、6.89 − 7.08(m,26H)、7.15 − 7.43(m,36H)、7.44(s,4H).
FD−MS([M]+): found m/z 1284.6371 [C98H88N2]+ (calculated;1284.6321, 3.85 ppm)
mp 161−163℃
【0051】
(実施例4)
化合物(1−9)の合成
窒素雰囲気下、キシレン40mlに、4−(4’−(4’’,4’’−ジフェニル−1’’,3’’−ブタジエニル)スチリル)クロロベンゼン8.4g(20mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド2.4g(25mmol)、p−メトキシアニリン2.5g(20mmol)、[PdCl(allyl)]
23.7mg(0.010mmol)、および1,1−ジフェニル−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロペン16mg(0.040mmol)を加え、100℃に加熱した。3時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。水洗を行った後、濃縮を行ない、これをトルエン、メタノール溶媒にて再結晶操作を行なう事により、黄色固体5.6gを得た。このうち5.2gをキシレン40mlと混ぜ、さらにナトリウム−tert−ブトキシド1.2g(13mmol)、1,4−ビス(4−クロロスチリル)ベンゼン1.8g(5.0mmol)、[PdCl(allyl)]
23.6mg(0.010mmol)、および1,1−ジフェニル−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロペン16mg(0.040mmol)を加え、120℃に加熱した。4時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。水洗を行った後、濃縮を行ない、これをトルエン、酢酸エチル溶媒にて再結晶操作を行なう事により、黄色固体4.7g(化合物1−9)を得た。収率は41%であった。
1H NMR(CDCl
3):δ;3.81(s,6H)、6.69 − 6.76(m,2H)、6.84 − 7.11(m,28H)、7.23 − 7.33(m,18H)、7.34 − 7.40(m,14H)、7.41− 7.46(m,8H).
FD−MS([M]+): found m/z 1288.5935 [C96H76N2O2]+ (calculated;1288.5907, 2.18 ppm)
mp 222−224℃
【0052】
(実施例5)
化合物(1−13)の合成
窒素雰囲気下、キシレン40mlに、4−(4’−(4’’,4’’−ビス(4’’’−メチルフェニル)−1’’,3’’−ブタジエニル)スチリル)クロロベンゼン9.2g(21mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド4.8g(50mmol)、p−トルイジン2.2g(20mmol)、[PdCl(allyl)]
23.7mg(0.010mmol)、および1,1−ジフェニル−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロペン16mg(0.040mmol)を加え、100℃に加熱した。4時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。水洗を行った後、濃縮を行ない、これをトルエン、メタノール溶媒にて再結晶操作を行なう事により、黄色固体8.6gを得た。このうち8.4gをキシレン60mlと混ぜ、さらにナトリウム−tert−ブトキシド1.9g(20mmol)、1,4−ビス(4−クロロスチリル)ベンゼン2.8g(8.0mmol)、[PdCl(allyl)]
22.9mg(0.008mmol)、および1,1−ジフェニル−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロペン13mg(0.032mmol)を加え、120℃に加熱した。4時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。水洗を行った後、濃縮を行ない、これをトルエン、酢酸エチル溶媒にて再結晶操作を行なう事により、黄色固体9.5g(化合物1−13)を得た。収率は61%であった。
1H NMR(CDCl
3):δ;2.33(s,6H)、2.34(s,6H)、2.43(s,6H)、6.69(d,J=15.3Hz,2H)、6.82(d,J=11.1Hz,2H)、6.90 - 7.08(m,22H)、7.10(d,J=8.6Hz,8H)7.16 − 7.24(m,12H)、7.28(d,J=8.4Hz,4H)、7.35 − 7.39(m,12H)、7.46(s,4H).
FD−MS([M]+): found m/z 1312.6634 [C100H84N2]+ (calculated;1312.6523, −8.49 ppm)
mp 170−172℃
【0053】
(実施例6)
化合物(1−17)の合成
窒素雰囲気下、キシレン40mlに、4−(4’−(4’’,4’’−ビス(4’’’−メチルフェニル)−1’’,3’’−ブタジエニル)スチリル)クロロベンゼン8.9g(20mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド2.4g(25mmol)、2,4−ジメチルアニリン2.7g(20mmol)、[PdCl(allyl)]
27.3mg(0.020mmol)、および1,1−ジフェニル−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロペン31mg(0.080mmol)を加え、110℃に加熱した。3時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。水洗を行った後、濃縮を行ない、これをトルエン、メタノール溶媒にて再結晶操作を行なう事により、黄色固体8.5gを得た。このうち6.5gをキシレン40mlと混ぜ、さらにナトリウム−tert−ブトキシド1.4g(15mmol)、1,4−ビス(4−クロロスチリル)ベンゼン2.1g(6.0mmol)、[PdCl(allyl)]
24.4mg(0.012mmol)、および1,1−ジフェニル−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロペン19mg(0.048mmol)を加え、120℃に加熱した。7時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。水洗を行った後、濃縮を行ない、これをトルエン、酢酸エチル溶媒にて再結晶操作を行なう事により、黄色固体5.0g(化合物1−17)を得た。収率は50%であった。
1H NMR(CDCl
3):δ;2.00(s,6H)、2.34(s,6H)、2.35(s,6H)、2.43(s,6H)、6.68(d,J=15.3Hz,2H)、6.82(d,J=11.1Hz,2H)、6.90 - 7.23(m,40H)、7.27(d,J=8.4Hz,4H)7.33 − 7.38(m,12H)、7.44(s,4H).
FD−MS([M]+): found m/z 1340.6928 [C102H88N2]+ (calculated;1340.6947, −1.45 ppm)mp 255−257℃
【0054】
(実施例7)
バインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂「TS−2020」(帝人化成株式会社製)15重量部と実施例1で得られた化合物(1−1)15重量部をテトラヒドロフラン85重量部中で混合溶解させた。この溶液を、ドクターブレードで、ポリエチレンフタレート(PET)フィルム上にアルミを蒸着したシート上に塗布し、80℃で3時間乾燥させて電荷輸送層を形成した(厚み:約18μm)。
この電荷輸送層上に半透明金電極を蒸着して電荷キャリア移動度を測定した。キャリア移動度の測定は、光源としてパルス半値幅0.9sec、波長337nmの窒素ガスレーザーを用い、タイム−オブ−フライト法(田中聡明、山口康浩、横山正明:電子写真、29、366(1990))にて行なった。25℃、25V/μmでの測定結果を表1に示す。
【0055】
(実施例8〜10)
実施例7と同様に、実施例3で得られた化合物(1−7)、実施例4で得られた化合物(1−9)および実施例6で得られた化合物(1−17)を用いて電荷輸送層を作成し、電荷キャリア移動度を測定した。この結果を表1に示す。
【0056】
(比較例1および2)
実施例7と同様に、比較化合物(1)または比較化合物(2)を用いて電荷輸送層を作成し、電荷キャリア移動度を測定した。この結果を表1に示す。
なお、比較化合物(1)は特公平7−21646号公報記載の方法により合成した。比較化合物(2)は文献(J.Org.Chem.,2000,65,5327)記載の方法により合成した。
【化10】
【0057】
【表1】
【0058】
表1から明らかなように、本発明の化合物は、一般に広く電子写真感光体として使用されている化合物(比較化合物(1)および比較化合物(2))よりも電荷キャリア移動度が大きく、大きなホール輸送能を有していることがわかる。
【0059】
(実施例11)
ポリアミド樹脂「ファインレジンFR−104」(株式会社鉛市製)0.375重量部をメタノールに溶解させて全体を25重量部とした溶液を、アルミニウム板上に塗布し、105℃で1時間乾燥して、下引き層を形成した。
ブチラール樹脂「エスレックBH−3」(積水化学工業株式会社製)15重量部を、シクロヘキサノン750重量部に溶解させて得たバインダー溶液に、フタロシアニン「Fastogen Blue 8120BS」(大日本インキ化学工業株式会社製)22.5重量部を加え、ガラスビーズと共に4日間振動ミルを用いて分散させた。この分散液を、下引き層上に塗布し、105℃で1時間乾燥して、電荷発生層を形成した。
バインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂「ユーピロンZ−200」(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製)12重量部、実施例1で得られた化合物(1−1)8重量部、テトラヒドロフランを加えて100重量部とし、混合溶解させた。この溶液を、ドクターブレードで電荷発生層上に塗布し、80℃で2時間乾燥させて電荷輸送層を形成した。得られた電荷発生層と電荷輸送層を用いて、機能分離型積層型の電子写真感光体を得た。
【0060】
このようにして得られた電子写真感光体の感光体特性を静電記録試験装置「EPA−8300A」(株式会社川口電機製作所製)を用いてスタティック方式により測定した。すなわち、電子写真感光体を−6kvのコロナ放電を行なって帯電せしめ、表面電位V
0(単位は−v)を測定し、これを暗所で5秒間保持して(表面電位V
i(単位は−v))暗減衰保持率L/D(V
i/V
0(単位は%))を求めた。この後、0.2μWの780nmのレーザー光を照射し、表面電位V
iを半減させるのに必要な露光量すなわち半減露光量E
1/2(mJ/cm
2)および表面電位V
iを1/6まで減少させるのに必要な露光量E
1/6(mJ/cm
2)を求め、続いて5秒間照射後の表面残留電位V
r(単位は−v)を求めた。この結果を表2に示す。
【0061】
(実施例12および13)
化合物(1−9)および化合物(1−17)を用いて電荷輸送層を作製したこと以外は実施例11と同様にして電子写真感光体を作製し、感光体特性を測定した。この結果を表2に示す。
【0062】
(比較例3および4)
比較化合物(3)(高砂香料工業株式会社製、「CTC−191」)または比較化合物(4)(高砂香料工業株式会社製、「CT−4」)を用いて電荷輸送層を作製したこと以外は実施例11と同様にして電子写真感光体を作製し、感光体特性を測定した。この結果を表2に示す。
【0063】
【化11】
比較化合物(3) 比較化合物(4)
【0064】
【表2】
【0065】
表2から明らかなように、本発明の化合物を用いた電子写真感光体の方が、比較化合物(3)および比較化合物(4)を用いた電子写真感光体よりも感度が良く(E
1/2値およびE
1/6値が小さい)、残留電位(V
r)が小さいことがわかる。
【0066】
(実施例14)
25℃において化合物(1−1)をテトラヒドロフラン1gに溶解させた。完全に溶解する化合物の重量を第3表に示す。
【0067】
(実施例15および16)
実施例14と同様に、化合物(1−4)または(1−9)を用いて実験を行なった。結果を第4表に示す。
【0068】
(比較例5)
実施例14と同様に、特開平3−149560記載の化合物である比較化合物(5)を用いて実験を行なった。結果を第3表に示す。
【化12】
比較化合物(5)
【0069】
【表3】
【0070】
表3から明らかなように、本発明の化合物は溶解性に優れており、高濃度の有機薄膜を形成する事が出来る。