(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の脚部と、前記複数の脚部の両端部に配置されるヨーク部と、を備えるコアを備え、前記脚部が磁性粉末と樹脂とを含む複合磁性材料で構成されたリアクトルの製造方法であって、
樹脂部材にコイルを装着する装着工程と、
前記脚部を被覆する前記樹脂部材の中に粘土状の前記複合磁性材料を充填する充填工程と、
前記樹脂部材の中に注入された前記複合磁性材料を加圧する加圧工程と、
前記樹脂を硬化させる硬化工程と、
を有し、
前記加圧工程では、前記ヨーク部を構成するコアによって前記複合磁性材料を加圧していること、
を特徴とするリアクトルの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
(構成)
以下、図面を参照しつつ本実施形態に係るリアクトルについて説明する。
図1は、第1の実施形態に係るリアクトルの全体構成を示す斜視図である。
図2は、第1の実施形態に係るリアクトルの全体構成を示す分解斜視図である。
【0016】
リアクトル1は、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品であり、電圧の昇降圧等に使用される。本実施形態のリアクトル1は、コア2、コイル3、樹脂部材4を備える。
【0017】
コア2は、複数の脚部21とこの複数の脚部21の両端部に配置された一対のヨーク部22とを有する。本実施形態では、脚部21は2つ有し、形状はこれに限定するものではないが、円柱形状となっている。脚部21の外周面は樹脂部材4で覆われている。2つの脚部21は、円柱軸が平行となるように配置されている。脚部21とヨーク部22の少なくともいずれか一方は、磁性粉末と樹脂とを含む複合磁性材料によって構成されたメタルコンポジットコア(MCコア)である。本実施形態では、脚部21が複合磁性材料によって構成される。
【0018】
MCコアの外表面は、全て非摺動面となっている。MCコアは、磁性粉末と樹脂とを含む複合磁性材料を所定形状の容器にいれ、樹脂を硬化させてコアとして成形する。換言すれば、圧粉磁心の成形のように加圧することは、MCコアの成形において必須要件ではない。また、加圧する場合があっても、数ton〜数十tonで絶縁被膜で覆った磁性粉末を押し固めて成形する圧粉磁心とは異なり、MCコアの密度を向上させるために加圧するものであり、加圧する力も数kg〜数十kgと低い圧力をかければ足りる。
【0019】
このように、MCコアは、加圧しない、又は、低い圧力で加圧するため、型とコアが擦れながら移動することでコア表面に形成される複数の線状の痕を有する摺動面が形成されない。したがって、MCコアの外周面は、全て非摺動面となる。また、圧粉磁心は、磁性粉末を、数ton〜数十tonで加圧するため、磁性粉末が変形するが、MCコアは、加圧した場合でも、数kg〜数十kgで加圧するので、磁性粉末は変形しない。
【0020】
磁性粉末としては、軟磁性粉末が使用でき、特に、Fe粉末、Fe−Si合金粉末、Fe−Al合金粉末、Fe−Si−Al合金粉末(センダスト)、又はこれら2種以上の粉末の混合粉などが使用できる。Fe−Si合金粉末としては、例えば、Fe−6.5%Si合金粉末、Fe−3.5%Si合金粉末を使用できる。軟磁性粉末の平均粒子径(D50)は20μm〜150μmが好ましい。なお、本明細書において「平均粒子径」とは、特に断りがない限り、D50、すなわちメジアン径を指すものとする。
【0021】
樹脂は、磁性粉末と混合され、磁性粉末を保持する。樹脂としては、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、又は熱可塑性樹脂が使用できる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂などが使用できる。紫外線硬化性樹脂としては、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系の樹脂を使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリイミドやフッ素樹脂などの耐熱性に優れた樹脂を使用することが好ましい。硬化剤を添加することにより硬化するエポキシ樹脂は、硬化剤の添加量などによってその粘度を調整できる。
【0022】
樹脂は、磁性粉末に対して3〜5wt%含有されていることが好ましい。樹脂の含有量が3wt%より少ないと、磁性粉末の接合力が不足し、コアの機械的強度が低下する。また、樹脂の含有量が5wt%より多いと、磁性粉末を隙間なく保持することができなくなるなど、コアの密度が低下し、透磁率が低下する。
【0023】
ヨーク部22は、圧粉磁心、フェライト磁心及び積層鋼板を用いることができる。本実施形態では、ヨーク部22は、圧粉磁心を用いている。ヨーク部22は、ブロック状のコアである。ヨーク部22の脚部21と接合する反対側の端面は平坦であることが好ましい。後述するように、ヨーク部22を構成する圧粉磁心は、複合磁性材料を押圧する押圧部材となる。したがって、ヨーク部22の脚部21と接合する反対側の端面を平坦にすることで、複合磁性材料を均等な力で押圧することができるからである。
【0024】
また、ヨーク部22の透磁率は、脚部21の透磁率よりも大きいものを用いている方が好ましい。ヨーク部22の透磁率が脚部21の透磁率よりも大きいことにより、コイル3が巻回された脚部21によって発生した磁束をより多く捕捉することができる。
【0025】
ヨーク部22は、脚部21の両端部に配置される。ヨーク部22は、脚部21の複合磁性材料の樹脂によって、脚部21の端部と接合している。換言すれば、脚部21とヨーク部22は、接着剤等を用いることなく接合している。ヨーク部22と脚部21は、継ぎ目無く一続きに接合されている。ヨーク部22には、脚部21を構成する複合磁性材料の樹脂が浸透している。具体的には、複合磁性材料の樹脂が圧粉磁心の内部に浸み込んでいる。また、ヨーク部22の脚部21と接合する端面には、複数の細かい凹凸がある。この凹凸は、例えば、数十ミクロン程度の大きさである。
【0026】
この凹凸は、圧粉磁心、フェライトなどの成形体をプレス成形する際に、磁性粉末等の粉末によって形成される凹凸であってもよいし、成型後にやすり、サンドブラストなどにより成形体の表面を粗くすることで形成させた凹凸であってもよい。また、積層鋼板の場合には、積層による段差によって形成される凹凸であってもよいし、積層後の成形体の表面に形成させた凹凸であってもよい。この凹凸の凹部に複合磁性材料の樹脂が入り込んでいる。
【0027】
図2に示すように、コイル3は2つ有している。コイル3は、エナメルなどの絶縁被覆した2本の導電性部材により構成される。導電性部材としては、銅線やアルミニウム線を用いることができる。本実施形態では、銅線を用いている。コイル3は、銅線が巻回された両端部が開口した円筒形状を有する。コイル3の両端部からは、引出線が引き出されている。2つのコイル3は、コイル3の巻軸方向が平行になるように配置される。コイル3の内周面は、樹脂部材4によって覆われている。即ち、コイル3は、樹脂部材4を介して脚部21に巻回されている。
【0028】
なお、本実施形態では、コイル3は円筒形状であったが、コイル3の形状はこれに限定されるものではなく、矩形状であってもよい。また、コイル3の数は2つに限られず、1つでもよいし、3つ以上有していてもよい。
【0029】
樹脂部材4は、コア2の周囲を覆い、コア2とコイル3を絶縁する。樹脂部材4を構成する樹脂の種類としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)等が挙げられる。
【0030】
図2に示すように、樹脂部材4は、2分割されている。2分割された樹脂部材4は、概略U字型形状を有する。樹脂部材4は、コイル3を装着する一対の直線部41と、この一対の直線部41を繋ぐ連結部42を有する。樹脂部材4は、互いの直線部41の端部を接着剤等で接合することにより2分割された樹脂部材4が一体に形成される。
【0031】
直線部41は、円筒形状を有する。直線部41の内周面には、脚部21が配置される。複合磁性材料で構成される脚部21と直線部41は、複合磁性材料の樹脂によって一体に成型されている。即ち、脚部21と直線部41の間に隙間はなく、接触している。また、直線部41の外周面には、コイル3が巻回されている。連結部42は、直線部41を繋ぐ端面には、直線部21の内周と概略同一径の2つの開口を有する。また、連結部42は、直線部41を繋ぐ端面と反対側の端面が開口している。この開口から成形されたヨーク部22が挿入される。つまり、この開口の大きさは、ヨーク部22と概略同一の大きさとなっている。
【0032】
(リアクトルの製造方法)
本実施形態に係るリアクトル1の製造方法について図面を参照しつつ説明する。本実施形態のリアクトルは、
図3に示すように、(1)装着工程、(2)充填工程、(3)加圧工程、(4)硬化工程を有する。
【0033】
(1)装着工程(ステップS01)
装着工程は、樹脂部材4にコイル3を装着する工程である。コイル3の両端の開口から樹脂部材4の直線部41を挿入する。直線部41の端部には接着剤が塗布されており、コイルの開口から挿入された互いの樹脂部材4の直線部41がコイル3の中で接合される。即ち、2分割されていた樹脂部材4は、一体となる。
【0034】
(2)充填工程(ステップS02)
充填工程は、磁性粉末と樹脂とを含む複合磁性材料を直線部41内部に充填する工程である。本工程では、まず、磁性粉末と樹脂とを混合し、粘土状の複合磁性材料を作製する。この粘土状の複合磁性材料は、添加する樹脂の粘度で所望の粘性を得る。添加する樹脂の粘度は、磁性粉末との混合時において50〜5000mPa・sであることが好ましい。粘度が50mPa・s未満であると、混合時において樹脂が磁性粉末に絡みつくことがなく、容器内で磁性粉末と樹脂とが分離しやすくなり、コアの密度又は強度にバラツキが生じる。粘度が5000mPa・sを超えると、粘度が高くなりすぎ、例えば、第1の磁性粉末間に形成された樹脂が入り込み、その隙間を第2の磁性粉末が埋めることができなくなるなど、コアの密度が低下し、透磁率が低下する。
【0035】
磁性粉末と樹脂の混合は、所定の混合器を用いて自動で、又は、手動で行うことができる。混合する時間は、適宜設定することができ、特にこれに限定するものではないが、例えば2分間とする。このように、磁性粉末と樹脂とを混合することにより、粘土状の複合磁性材料を得ることができる。この粘土状の複合磁性材料を連結部42の開口から直線部41の内部に所定量を充填する。
【0036】
(3)加圧工程(ステップS03)
加圧工程は、ヨーク部22を構成する圧粉磁心で複合磁性材料を押圧する工程である。圧粉磁心は、事前にブロック状に成型されている。圧粉磁心は、ヨーク部22を構成する複合磁性材料が接合する面に凹凸を設けて形成されている。この凹凸のある面が複合磁性材料と接触するように圧粉磁心を各連結部42に挿入する。そして、各連結部42に挿入した圧粉磁心で直線部41内に充填された複合磁性材料を押圧する。即ち、ヨーク部22を構成する圧粉磁心が押圧部材の役割を担っている。複合磁性材料は、直線部41の両端から加圧される。複合磁性材料を押圧する時間は、樹脂の含有量や粘性によって適宜変更することができるが、例えば10秒である。圧粉磁心によって押圧することで、直線部41の内部形状に複合磁性材料を押し広げるとともに、複合磁性材料に含まれていた空隙を減少させ、見かけ密度を向上させる。
【0037】
複合磁性材料を押圧する圧力は、6.3kg/cm
2以上であることが好ましい。この値未満であれば、押圧する圧力が小さく、見かけ密度を向上させる効果が小さい。また、当該値以上であっても、15.7kg/cm
2以下であることが好ましい。この値を超えて押圧しても、見かけ密度を向上させる効果が小さいからである。また、この値を超えて押圧すると、樹脂のみが押圧されて、磁性粉末間の絶縁性が悪化するからである。
【0038】
(4)硬化工程(ステップS04)
硬化工程は、充填工程で脚部21に充填した複合磁性材料に含まれる樹脂を硬化させる工程である。脚部21に充填された樹脂の乾燥により硬化させる場合、乾燥雰囲気は、大気雰囲気とすることができる。乾燥時間は、樹脂の種類、含有量、乾燥温度等に応じて適宜変更可能であり、例えば、1時間〜4時間とすることができるが、これに限定されない。乾燥温度は、樹脂の種類、含有量、乾燥時間等に応じて適宜変更可能であり、例えば、85℃〜150℃とすることができるが、これに限定されない。なお、乾燥温度は、乾燥雰囲気の温度である。
【0039】
また、樹脂の硬化は、乾燥に限られず、樹脂の種類によって硬化方法は異なる。例えば、樹脂が熱硬化性樹脂であれば、熱を加えることにより樹脂を硬化させ、樹脂が紫外線硬化性樹脂であれば、成型体に紫外線を照射させることで樹脂を硬化させる。
【0040】
硬化工程は、所定の温度で所定時間成型体を硬化させる工程を複数回繰り返しても良い。また、例えば、樹脂の乾燥により硬化させる場合、複数回繰り返す毎に、乾燥温度又は乾燥時間を異ならせてもよい。
【0041】
なお、本実施形態では、脚部21を複合磁性材料で構成させたが、ヨーク部22を複合磁性材料で構成させてもよい。この場合には、脚部21を構成するコアを事前に成型しておき、装着工程において、コイル3に直線部41を挿入するとともに直線部41の内部に成型された脚部21を挿入する。充填工程では、連結部42の開口から粘土状の複合磁性材料を充填する。その後、加圧工程で、押圧部材を用いて、連結部42に充填された複合磁性材料を加圧し、硬化工程で、複合磁性材料に含まれる樹脂を硬化させる。
【0042】
(効果)
本実施形態のリアクトル1は、複数の脚部21と、複数の脚部21の両端部に配置される一対のヨーク部22と、を有するコア2と、コア2に巻回されるコイル3と、を備え、脚部21とヨーク部22のいずれか一方は、磁性粉末と樹脂とを含む複合磁性材料で構成され、脚部21とヨーク部22は複合磁性材料の樹脂により接合されるようにした。これにより、脚部21とヨーク部22は、継ぎ目無く一続きに接合されるので、接合箇所にギャップがなく、脚部21とヨーク部22の接合箇所から生じる漏れ磁束を抑制することができる。
【0043】
また、脚部21とヨーク部22は、複合磁性材料の樹脂によって接合されている。換言すれば、この樹脂が接着剤等の代わりとなっており、脚部21とヨーク部22の接合に接着剤等を用いる必要がない。よって、脚部21とヨーク部22を接着剤等で接合する工程を削減できるとともに、接着剤等を使用しない分、コスト削減を図ることができる。
【0044】
ヨーク部22の透磁率は、脚部21の透磁率より大きくなるようにした。これにより、ヨーク部22は、コイル3が巻回された脚部21によって発生した磁束をより多く捕捉する。よって、ヨーク部22からの漏れ磁束を抑制することができる。
【0045】
複合磁性材料により構成されていない脚部21又はヨーク部22は、脚部21とヨーク部22が接合する端面に凹凸があるようにした。これにより、複合磁性材料に含まれる樹脂が、この凹凸に入り込むため、アンカー効果により脚部21とヨーク部22をより強固に接合させることができる。よって、より密に接合されるので、漏れ磁束を抑制することができる。
【0046】
脚部21と直線部41は、隙間なく脚部21を構成する複合磁性材料によって一体に成型されている。これにより、脚部21と直線部41の寸法公差を考慮して、直線部41の内周を脚部21より大きめに成形する必要がなくなるので、リアクトル1の小型化を図ることができる。また、寸法公差を考慮して直線部41を脚部21より大きく成形していた分の脚部21と直線部41の隙間の分、脚部21、即ち、コア2を大きくすることができ、リアクトル1の特性を向上させることができる。
【0047】
本実施形態のリアクトルの製造方法は、樹脂部材4にコイル3を装着する装着工程と、コイル3が装着された樹脂部材4の中に複合磁性材料を充填する充填工程と、ヨーク部22によって樹脂部材4の中に注入された複合磁性材料を加圧する加圧工程と、樹脂を硬化させる硬化工程と、を有するようにした。つまり、ヨーク部22を構成するコア2を押圧部材として、脚部21を構成する複合磁性材料を加圧している。
【0048】
これにより、別途押圧部材を用意する必要がなくなり、リアクトル1の製造における部品点数を削減することができる。また、脚部21とヨーク部22の接合は、複合磁性材料に含まれる樹脂によって行われ、脚部21とヨーク部22を接合するために接着剤等を塗布する工程が必要がなくなるので、リアクトル1の製造工程を削減することができる。
【0049】
(変形例)
変形例に係るリアクトルについて図面を参照しつつ説明する。
図4は、変形例に係るリアクトルの全体構成を示す斜視図である。
図5は、変形例に係るリアクトルの全体構成を示す分解斜視図である。
図4、
図5に示すように、第1の実施形態では、全ての脚部にコイルが巻回されていたが、変形例では、コイル3が巻回されていない脚部21を有する。
【0050】
具体的には、脚部21を3つ有する。3つの脚部21はコイル3の巻軸方向と平行に並んでいる。平行に並んでいる3つの脚部21のうち、真ん中に配置されているのが、コイル3が巻回される中脚23である。中脚23の両サイドに配置されるのが、コイル3が巻回されていない外脚24である。中脚23及び2つの外脚24は、MCコアである。
【0051】
ヨーク部22は、中脚23と2つの外脚24を連結する。ヨーク部22は、圧粉磁心である。ヨーク部22は、中脚23及び外脚24の複合磁性材料の樹脂によって、中脚23及び外脚24の端部と接合している。ヨーク部22と中脚23及び外脚24は、継ぎ目無く一続きに接合されている。
【0052】
以上のように、変形例では、ヨーク部22と脚部21の接合箇所が第1の実施形態よりも2つ多い。つまり、第1の実施形態では、2つの脚部21の両端の合計4つの接合箇所であった。一方、変形例では、中脚23の両端と2つの外脚24の両端の合計6つの接合箇所を有する。
【0053】
この6つの接合箇所それぞれを接着剤等によって接合すると、各接合箇所にギャップが生じ、より多くの漏れ磁束が生じてしまう。しかし、本変形例では、中脚23及び外脚24とヨーク部22は、複合磁性材料の樹脂により接合している。即ち、中脚23及び外脚24とヨーク部22との各接合箇所は、継ぎ目無く一続きとなり、ギャップがなく接合している。したがって、中脚23及び外脚24とヨーク部22の各接合箇所から生じる漏れ磁束を抑制することができる。このように、脚部21とヨーク部22の接合箇所が多い場合に、より顕著に漏れ磁束の抑制を図ることができる。
【0054】
(実施例1)
本発明の実施例1について表1を参照しつつ説明する。実施例1では、実施例と比較例におけるコアのサンプルを同一の条件で3つずつ作成し、各サンプルのせん断強度を測定した。実施例及び比較例のサンプルの作成方法は下記のとおりである。実施例と比較例の違いとしては、実施例は、圧粉磁心と複合磁性材料で構成されたMCコアを複合磁性材料の樹脂で接合させているが、比較例は、MCコアの成形体を作成し、圧粉磁心とMCコアを接着剤で接合させた点にある。なお、実施例の3つのサンプルは同一のものであり、比較例の3つのサンプルは同一のものである。
【0055】
(実施例のサンプルの作成方法)
実施例のサンプルの作成方法は、まず、成形された圧粉磁心(POCO社 NPSシリーズ)の上に複合磁性材料を充填する枠を配置する。次に、この枠内に粘土状の複合磁性材料を充填する。複合磁性材料は、磁性粉末としてFe6.5%Siにエポキシ樹脂を4wt%添加したものである。充填した複合磁性材料を圧粉磁心に向けて、400Nで加圧した。その後、大気中において温度150℃で8時間熱し、樹脂を硬化させ、圧粉磁心と接合させた。このように、実施例のサンプルは、圧粉磁心とMCコアとが複合磁性材料の樹脂により接合されている。
【0056】
(比較例のサンプルの作成方法)
比較例のサンプルの作成方法は、まず、圧粉磁心とMCコアの成形体を用意する。圧粉磁心の成形体は、実施例と同様のものである。MCコアの成形体は、以下のとおり、作成した。複合磁性材料の磁性粉末及び樹脂の種類、樹脂の添加量は実施例と同様である。まず、所定の容器に粘土状の複合磁性材料を充填し、大気中において150℃の温度で8時間熱し、樹脂を硬化させ、MCコアの成形体を得た。そして、接着剤によって、圧粉磁心とMCコアを接合させた。接着剤には、エポキシ樹脂を用いて、120℃で1時間熱し、硬化させた。
【0057】
実施例及び比較例のサンプルについて、下記装置を用いて、測定条件としては、5mm/minでせん断強度を測定した。測定結果を表1に示す。
会社名:日本計測システム(株)
装置名:MAX-20
【0059】
表1に示すように、せん断強度が1番高い比較例のサンプル3よりも、実施例の全てのサンプル1〜3のせん断強度の方が高い結果となった。また、比較例のサンプル1〜3は、接着剤の凝集破壊を起こした。即ち、脚部とヨーク部の接合箇所から分断された。一方、実施例のサンプル1〜3は、ヨーク部22である圧粉磁心が母材破壊を起こした。即ち、ヨーク部22と脚部21の接合箇所からは分断していない。
【0060】
これは、比較例のように接着剤で接合する場合、接合箇所にギャップが生じるためそこが起点となり、接着剤が凝集破壊を起こしたものと思われる。一方、実施例は、接着剤を用いることなく、MCコアを構成する複合磁性材料の樹脂によって接合しているので、ギャップなく接合している。つまり、圧粉磁心とMCコアは接着剤で接合させるより、より密に接合している。よって、実施例は、ギャップなく接合していることで接合箇所の強度が高まり、接合箇所から分断するのではなく、圧粉磁心が母材破壊したものと考えられる。
【0061】
このように、実施例は、脚部21とヨーク部22とをMCコアの樹脂により接合させることで、ギャップを生じさせることなく、強固に接合させることができる。したがって、ギャップから生じる漏れ磁束を抑制することができる。
【0062】
(実施例2)
本発明の実施例2を表2、3及び
図6を参照しつつ説明する。実施例2では、実施例、比較例1、2のリアクトルを作成し、損失及びインダクタンス値(L値)を測定した。実施例、比較例1、2のリアクトルは、コアの材質や接合手法が異なるのみで、コアの断面積、コイルの巻き数やリアクトルの大きさなどは同一である。
【0063】
実施例のコア2は、脚部21にMCコア(透磁率μ30)、ヨーク部22に圧粉磁心(透磁率μ147)を用いて、脚部21とヨーク部22は、MCコアの樹脂によって接合した。比較例1は、脚部に圧粉磁心(透磁率μ60)、ヨーク部に圧粉磁心(透磁率μ147)を用いて、脚部とヨーク部は接着剤によって接合した。比較例2は、脚部にMCコア(透磁率μ30)、ヨーク部にMCコア(透磁率μ30)を用いて、脚部とヨーク部は接着剤によって接合した。接着剤によって接合した比較例1及び比較例2には、接着剤膜厚である50μmのギャップが4箇所存在していた。
【0064】
実施例、比較例1及び2のリアクトルの損失、インダクタンス値の結果を表2及び3、
図6に示す。
【表2】
【表3】
【0065】
表2に示すように、実施例の損失である鉄損及び銅損は、比較例1及び2の数値と比較しても、それほど変わりない数値であった。即ち、実施例は、比較例1及び2と同様の低損失特性を有する。また、表3及び
図6に示すように、実施例は、比較例1及び2のインダクタンス値と比較してもそれほど変わりない数値であった。特に、30〜40Aにおけるインダクタンス値は、実施例と比較例1及び2との差異はほとんどなく、実施例におけるリアクトルは、直流重畳特性が良好であることが示されている。
【0066】
以上の実施例1及び実施例2に示すとおり、本発明のように複合磁性材料の樹脂によって接合させることで、ギャップなく脚部21とヨーク部22とを接合できるので、漏れ磁束の発生を抑制することができる。また、本発明のように複合磁性材料の樹脂によって脚部21とヨーク部22を接合しても、損失特性及び直流重畳特性は良好な数値を保っている。即ち、本発明は、良好な損失特性及び直流重畳特性を保った状態で、漏れ磁束の発生を抑制できる。
【0067】
(他の実施形態)
本明細書においては、本発明に係る実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。上記のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0068】
複合磁性材料の磁性粉末は、平均粒子径の異なる2種類以上の磁性粉末から構成してもよい。この場合、磁性粉末は、第1の磁性粉末と、第1の磁性粉末より平均粒子径の小さい第2の磁性粉末とから構成し、その重量比率は、第1の磁性粉末:第2の磁性粉末=80:20〜60:40とすることが好ましい。この範囲とすることで密度及び透磁率が向上するとともに、鉄損を小さくすることができる。
【0069】
第1の磁性粉末の平均粒子径は100μm〜200μm、第2の磁性粉末は、3μm〜10μmが好ましい。第1の磁性粉末同士の隙間に平均粒子径の小さい第2の磁性粉末が入り込み、密度及び透磁率の向上と低鉄損化を図ることができるからである。
【0070】
第1の磁性粉末及び第2の磁性粉末は、球形であることが好ましい。第1の磁性粉末の円形度は、0.90以上であり、第2の磁性粉末の円形度は、0.90以上であることが好ましい。第1の磁性粉末同士の隙間が少なくなり、かつ、当該隙間により多くの第2の磁性粉末が入り込み易くなり、密度及び透磁率の向上を図ることができるからである。
【0071】
なお、第1の磁性粉末と第2の磁性粉末の種類は同じでも良いし、異なっていてもよい。異なる場合は3種以上であってもよい。3種類以上の粉末により磁性粉末を構成する場合、各種類で平均粒子径を異ならせてもよい。
【0072】
樹脂には、粘度調整材料として、SiO
2、Al
2O
3、Fe
2O
3、BN、AlN、ZnO、TiO
2などを使用することができる。粘度調整材料の平均粒子径は、第2の磁性粉末の平均粒子径以下、好ましくは第2の磁性粉末の平均粒子径の1/3以下が良い。粘度調整材料の平均粒子径が大きいと、磁性粉末を隙間なく保持することができず、得られたコアの密度が低下するからである。また、樹脂には、Al
2O
3、BN、AlNなどの高熱伝導率材料を添加することができる。
【0073】
コアの見かけ密度の、磁性粉末の真密度に対する割合は、76.47%超であることが好ましく、77.5%以上であると更に好ましい。当該割合が76.47%超であると、透磁率を高くすることができる。逆に、当該割合が76.47%以下であると、低密度により低透磁率となる。
【0074】
本実施形態では、脚部21にMCコアを、ヨーク部22に圧粉磁心を用いたが、これに限定されず、脚部21、ヨーク部22ともにMCコアを用いてもよい。この場合、まず、脚部21、ヨーク部22の何れか一方のMCコアを、硬化させた成形体として作製する。そして、この成形体を、他方のMCコアとなる粘土状の複合磁性材料の樹脂によって接合させればよい。
【0075】
また、本実施形態では、
図2に示すように、コイル3の巻軸方向と直交する脚部21の端面でヨーク部22を接合させたが、これに限定されず、複合磁性材料の樹脂によってコア2を接合できるのであれば種々の形態において適用できる。例えば、ブロック状に成型された2つの脚部21の長手方向が平行になるよう配置し、その脚部21の間に複合磁性材料で構成された一対のヨーク部22を設けてもよい。具体的には、脚部21の両端はコイル3が巻回されていない部分を有し、このコイル3が巻回されていない脚部21の間にヨーク部22が設けられ、複合磁性材料の樹脂により脚部21とヨーク部22が接合されていてもよい。